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  • 特開-電気機器収納用筐体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025144275
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】電気機器収納用筐体
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/56 20060101AFI20250925BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
H02B1/56 A
H02B1/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043978
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典夫
【テーマコード(参考)】
5G016
【Fターム(参考)】
5G016AA04
5G016CG08
5G016CG21
(57)【要約】
【課題】 自然換気による排気がスムーズに行われる構造の電気機器収納用筐体を提供する。
【解決手段】 収容した変圧器8の発熱により熱せられた空気を放出するための開口部41を天板4に設け、開口部41の周囲には一定の高さを有する枠体11が縁部に沿って配置され、開口部の縁部が嵩上げされて成る一方、天板4上には開口部41を覆う覆設体7が配置され、覆設体7は開口部41の上方を覆う平坦な遮蔽板13、開口部41及び遮蔽板13の周囲を覆うスカート部7a、更にスカート部7aの上部から遮蔽板13の上方を覆うよう配設されて天面を形成する天枠部7bを有している。天枠部7bにより囲まれた天面中央には、開口部41から上昇した空気を上方に放出するための排気口71が形成されている。遮蔽板13は略水平に配置された平坦な板体であり、遮蔽板13の周囲には空気を上方に通過させる通気孔13bが形成されている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容した電気機器の発熱により熱せられた空気を放出するために、天板に開口部を設けた電気機器収納用筐体であって、
前記開口部の周囲には一定の高さを有する枠体が縁部に沿って配置され、前記開口部の縁部が嵩上げされて成る一方、
前記天板上には、前記開口部を覆う覆設体が配置され、
前記覆設体は、前記開口部の上方を覆う遮蔽板、前記開口部及び前記遮蔽板の周囲を覆うスカート部、更に前記スカート部の上部から前記遮蔽板の上方を覆うよう配設されて天面を形成する天枠部を有し、
前記天枠部により囲まれた天面中央には、前記開口部から上昇した熱せられた空気を上方に放出するための排気口が形成されると共に、
前記遮蔽板は略水平に配置された平坦な板体であり、当該遮蔽板の前記開口部の外側となる前記スカート部近傍には、空気を上方に通過させる通気穴が周設されていることを特徴とする電気機器収納用筐体。
【請求項2】
前記電気機器は変圧器であり、前記開口部は前記変圧器の横幅及び奥行きと同等の寸法かそれより大きく、前記変圧器の真上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置されて収容されている電気機器を自然換気で冷却する電気機器収納用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器等の発熱する電気機器を収納する筐体は、発生する熱により内部温度が上昇しないよう換気機能を備えている。屋外に設置されるこのような筐体の場合、ファン等を設けて強制排気する構成とするのが望ましいが、定期的な点検が必要となるし、部材の交換等のメンテナンスが面倒なため、自然換気が採用される場合が多い。
自然換気させる場合は、下部に吸気口、上部に排気口を設けて空気の自然対流を利用して放熱させることになる。この場合、上部に設けた排気口は、雨水や塵が侵入しないように、また落ち葉等が排気口を塞がない構造とする必要がある。
例えば、特許文献1では、筐体の天面に排気のための開口部を設け、開口部の上方に開口部より広く形成した上板を配置すると共に、開口部周囲は枠状に起立形成した第1折れ部を設けて、雨水や粉塵が排気口から侵入するのを防止した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-38227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上方特許文献1の排気構造は、開口部周囲に立ち上げた第1折れ部と上板の周囲に下方に折り曲げた第2折れ部とにより、雨水や粉塵の浸入を防ぐことができた。
しかしながら、第2折れ部により排気される空気の流れを下向きにする部位が発生するため、空気の流路にあたかも壁が形成された状態となり、排気がスムーズに行われず熱だまりが発生し易い問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、自然換気による排気がスムーズに行われる構造の電気機器収納用筐体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明の第1の構成は、収容した電気機器の発熱により熱せられた空気を放出するために、天板に開口部を設けた電気機器収納用筐体であって、開口部の周囲には一定の高さを有する枠体が縁部に沿って配置され、開口部の縁部が嵩上げされて成る一方、天板上には、開口部を覆う覆設体が配置され、覆設体は、開口部の上方を覆う遮蔽板、開口部及び遮蔽板の周囲を覆うスカート部、更にスカート部の上部から遮蔽板の上方を覆うよう配設されて天面を形成する天枠部を有し、天枠部により囲まれた天面中央には、開口部から上昇した熱せられた空気を上方に放出するための排気口が形成されると共に、遮蔽板は略水平に配置された平坦な板体であり、当該遮蔽板の開口部の外側となるスカート部近傍には、空気を上方に通過させる通気穴が周設されていることを特徴とする。
この構成によれば、開口部から排気口に至る空気の流路には、略水平方向に平坦な遮蔽板があるだけであり、空気の流路は横方向と上方へ移動する空間により構成され、途中に空気の下方への移動を強制する場所がないため、流れを遮る遮蔽物が無く熱だまりが発生しない。よって、電気機器により熱せられた空気をスムーズに排気口から外部に放出させることができる。また排気口に雨水が入っても、遮蔽板が開口部に雨水が入るのを防止するため、筐体内に雨水は入り込まない。
【0007】
本発明の別の態様は、上記構成において、電気機器は変圧器であり、開口部は変圧器の横幅及び奥行きと同等の寸法かそれより大きく、変圧器の真上に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、開口部の大きさは収納した変圧器と同等かそれ以上であり、且つ変圧器の真上に形成されているため、発変圧器により熱せられて上昇した空気は、スムーズに開口部から外に放出される。よって、熱だまりの発生を防止できるし、箱内部の温度上昇を効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開口部から排気口に至る空気の流路には、平坦な遮蔽板があるだけであり、空気は横方向と上方へ移動する流路により構成され、途中に空気の下方への移動を強制する場所がないため、流れを遮る遮蔽物が無く熱だまりが発生しない。よって、電気機器により熱せられた空気をスムーズに排気口から外部に放出させることができる。また排気口に雨水が入っても、遮蔽板が開口部に雨水が入るのを防止するため、筐体内に雨水は入り込まない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る電気機器収納用筐体の一例を示す斜視図である。
図2】電気機器収納用筐体の側面説明図である。
図3】天板の斜視図であり、(a)は開口部を露出させた状態、(b)は中板を開口部上に配置した状態を示している。
図4】天板及び覆設体を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5図4のA-A線端面図である。
図6】開口部上に遮蔽板を配置した天板の斜視図である。
図7図5のB部を拡大した断面説明図である。
図8】覆設体を除いた電気機器収納用筐体の平面説明図であり、内部電気機器と開口部の関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,2は本発明に係る電気機器収納用筐体の一例を示し、図1は斜視図、図2は右側面図である。尚、図2では収容している電気機器を破線で示している。
電気機器収納用筐体(以下、単に「筐体」と称する。)1は、四角形の金属製箱体であり、左右側板2、背板3、天板4、底板5を有し、開放された前面には扉6を備えており、内部の電気機器収容部を閉塞するよう形成されている。そして、天板4の上には内部の熱せられた空気を排気するための覆設体7が配置されている。また、8は変圧器を示し、電気機器として変圧器8を収容した構成を示している。
尚、筐体1は基台9に載置された状態を示している。
【0011】
以下、天板4及び覆設体7の構造を、図3-6を参照して説明する。
図3は天板4の斜視図であり、(a)は開口部を露出させた状態、(b)は中板を開口部上に配置した状態を示している。図4は覆設体を取り付けた天板を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。図5図4のA-A線端面図である。尚、ここでは、天板4の天面4aを基準に平面図等を記載しているが、天板4の天面4aは図2に示すように後方に向けてなだらかな下り傾斜となっている。
【0012】
天板4には、図3に示すように変圧器8の熱で熱せられた内部空気を排気するための開口部41が形成されている。そして開口部41の端部には、一定の幅(高さ)を有する枠体11が縁部に沿って配置されている。結果、枠体11により開口部41が補強されると共に、開口部41を天板4に対して一定の高さ嵩上げしている。
この嵩上げにより、天板4上に降り注いだ雨水が開口部41に入り込むのを防止している。
【0013】
天板4は、後方に向けてなだらかな下り傾斜(1/30或いはそれ以上の傾斜)を有して形成され、雨水が留まることなく後方に流れ出るよう形成されている。そして、開口部41には異物の入り込みを防止する網目状の中板12が配置されている。
【0014】
覆設体7は、図4に示すように開口部41の周囲を覆うスカート部7aと、開口部41の上方に配置される天枠部7bとを有し、開口部41を覆うよう形成されている。そして、天枠部7bは中央が大きく開口形成され、排気口71が形成され、覆設体7の内部には、図5に示すように排気口71から進入した雨水が開口部41に入り込むのを防止するための遮蔽板13が配置されている。また、スカート部7aの下部には、排気口71に降り注いだ雨水を排出するための隙間72が各辺に設けられている。
尚、底板5には、排気口71からの排気がスムーズに成されるよう外気を導入するための開口部(図示せず)が設けられている。
【0015】
図6は、この遮蔽板13を抜き出した斜視説明図であり、覆設体7のスカート部7a及び天枠部7bを消去し、天板4の開口部41(枠体11)との位置関係を示している。
図6に示すように、遮蔽板13は略水平に配置された平坦な板体であり、開口部41に平行に配置されている。周囲の適宜部位にスカート部7aと連結するための連結片13aが設けられ、隣接する連結片13aの間には、開口部41から出てきた空気を排気口71に送出させるための切り欠き(通気穴)13bが形成されている。
通気穴13bは、開口部41の直上に掛からないようにスカート部7a近傍である遮蔽板13の端部に形成され、開口部41の上方は確実に閉塞されるよう形成されている。
【0016】
尚、図5に示すMは開口部41の中心を通る中心軸を示し、天面4aに直交する直線で示している。この中心軸Mは、遮蔽板13の中心でもあり、排気口71の中心でもある。即ち、開口部41、遮蔽板13、排気口71のそれぞれの中心が一致するように配置されている。また、遮蔽板13に形成された通気穴13bは、端部を切り欠いて形成しなくとも良く、遮蔽板13に穴を穿設して通気穴としても良い。
【0017】
図7図5のB部拡大図を示し、開口部41から筐体1の外部へ放出される空気の流れを示している。変圧器8の熱により熱せられた空気は上昇し、開口部41から上方へ出る。開口部41から出た空気は、矢印Q1に示すように横方向に移動した後、矢印Q2に示すように遮蔽板13の端部に形成された通気穴13bを通過して更に上昇する。
こうして、遮蔽板13の上方へ至った空気は、矢印Q3で示すように排気口71から上方に移動して外部に放出される。
【0018】
ここで、開口部41、通気穴13b、排気口71の位置関係を説明する。通気穴13bは、枠体11の端部から一定の角度外側に配置されるよう形成されている。具体的に、図7に示す枠体11の端部における略鉛直方向(図5に示す中心軸Mの方向)からの角度θ1が、45度以上となる位置に通気穴13bが配置されるよう形成されている。
また、通気穴13bと排気口71の位置関係も同様であり、通気穴13bは排気口71の端部から一定の角度で外側に配置されるよう形成されている。具体的に、図7に示す排気口71の端部に対する略鉛直下方(図5に示す中心軸Mの方向)からの角度θ2が、45度以上になる位置に通気穴13bは形成されている。
この角度を設けて通気穴13bを形成することで、排気口71に入り込んだ雨水や粉塵が開口部41から筐体1内部へ浸入するのが確実に防止される。
尚、枠体11と遮蔽板13との距離R1、通気穴13bの幅R2、遮蔽板13と天枠部7bとの距離R3は、空気の流れを妨げない距離(例えば50mm)で形成されている。
【0019】
図8は、覆設体7を取り外した筐体1の平面説明図であり、収容している変圧器8と開口部41の関係を示している。図8に示すように、開口部41は変圧器8の直上に形成され、且つ変圧器8の外形より大きく形成されている。具体的に、開口部41の奥行きT1は変圧器8の奥行きT2より大きく、開口部42の幅T3は変圧器8の横幅T4より大きく形成されている。
【0020】
このように、開口部41から排気口71に至る空気の流路には、略水平方向に平坦な遮蔽板13があるだけであり、空気の流路は横方向と上方へ移動する空間により構成され、途中に空気の下方への移動を強制する場所がないため、流れを遮る遮蔽物が無く熱だまりが発生しない。よって、変圧器8により熱せられた空気をスムーズに排気口71から外部に放出させることができる。また排気口71に雨水が入っても、遮蔽板13が開口部41に雨水が入るのを防止するため、筐体1内に雨水は入り込まない。
更に、開口部41の大きさは収納した変圧器8と同等かそれ以上であるため、変圧器8により熱せられて上昇した空気は、スムーズに開口部41から外に放出される。よって、熱だまりの発生を防止できるし、筐体1内部の温度上昇を効果的に防止できる。
【0021】
尚、上記実施形態では、電気機器を変圧器8としているが、変圧器8でなくとも良い。例えば、発熱する整流回路を備えた機器等の電気機器を収納する筐体として好適である。
また開口部42は、変圧器8のほぼ上方に形成されてれば良く真上でなくても良いし、大きさも変圧器8の外形より必ずしも大きく無くても良く、同程度或いは僅かに小さくても効果的な排熱を実施でき有効である。
【符号の説明】
【0022】
1・・電気機器収納用筐体、4・・天板、7・・覆設体、7a・・スカート部、7b・・天枠部、8・・変圧器(電気機器)、11・・枠体、12・・中板、13・・遮蔽板、13b・・通気穴、41・・開口部、71・・排気口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8