(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025144368
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20250925BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
H01F17/04 N
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044113
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070BA11
5E070DA03
5E070DB06
(57)【要約】
【課題】本発明は、ケース内のコアに応力が発生することを抑制して、当該コアが割れることを抑制できるコイル装置を提供する。
【解決手段】コイル装置100は、板状に形成されたコア1と、コア1の板厚方向A1の一方側に開口し、コア1が収容されるコアケース2と、コイル3及びコイル3が収容されるコイルケース8を有し、コアケース2に対して板厚方向A1の一方側に重ねて配置されるコイルユニット4と、弾性変形可能な材料からなり、コア1及びコアケース2の間に挟まれる弾性部材30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成されたコアと、
前記コアの板厚方向の一方側に開口し、前記コアが収容されるコアケースと、
コイル及び前記コイルが収容されるコイルケースを有し、前記コアケースに対して前記板厚方向の一方側に重ねて配置されるコイルユニットと、
弾性変形可能な材料からなり、前記コアと前記コアケースとの間に挟まれる弾性部材と、を備えるコイル装置。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記板厚方向において前記コアと前記コアケースとの間に挟まれる弾性シートである請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
弾性変形可能な材料からなり、前記板厚方向において前記コアと前記コイルケースとの間に挟まれる弾性シートからなる第二弾性部材がさらに設けられる請求項1に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記弾性シートは、放熱シートである請求項2又は請求項3に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁誘導を利用して、非接触で対象物に電力を供給する給電装置、又は非接触で対象物から電力の供給を受ける受電装置等に適用可能なコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で対象物に電気を供給する給電装置として、特許文献1に示されるIH(Induction Heating)式誘導加熱調理器が知られている。この誘導加熱調理器は、調理容器が載置されるトッププレートと、調理容器を加熱する加熱コイルと、当該加熱コイルが載置されるコイルベースと、を有する。コイルベースには、フェライトコアを保持するための複数のフェライト保持部がさらに備えられている。非接触で対象物に電気を供給する給電装置としては、上記した誘導加熱調理器の他に、スマートフォン用のワイヤレス充電装置などもある。
また、給電装置と対をなすものとして、非接触で対象物から電気の供給を受ける受電装置もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した給電装置や受電装置などのコイル装置は、ケース内にコア(フェライトコア)を備えている。このため、上記のコイル装置では、ケースを通じてコアに対して外力が作用した際に、当該外力に基づいてコアに大きな応力が生じると、当該コアが割れてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ケース内のコアに応力が発生することを抑制して、当該コアが割れることを抑制できるコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明は、板状に形成されたコアと、前記コアの板厚方向の一方側に開口し前記コアが収容されるコアケースと、コイル及び該コイルが収容されるコイルケースを有し前記コアケースに対して前記板厚方向の一方側に重ねて配置されるコイルユニットと、弾性変形可能な材料からなり前記コア及び前記コアケースの間に挟まれる弾性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、コアケースとコアケース内に収容されたコアとの間に、弾性変形可能な材料からなる弾性部材が設置されている。このため、コイル装置に外力が作用することでコアケースが変形しても、当該コアケースの変形を、コアケースとコアとの間に介在する弾性部材において吸収することができる。これにより、コアケースの変形がコアに伝わることを抑制できる。したがって、コイル装置に作用する外力に基づいて、該コアケース内のコアに応力が生じて当該コアが割れてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1及び
図2を参照して本発明の一実施形態に係るコイル装置100について説明する。
図1に示すように、コイル装置100は、コア1と、コア1が収容されるコアケース2と、コイル3及びコイル3が収容されるコイルケース8を有するコイルユニット4と、第一弾性部材30及び第二弾性部材31と、を備える。また、本実施形態のコイル装置100は、これらコアケース2及びコイルユニット4が収容される筐体5も備える。
当該コイル装置100では、コイル3に通電することで非接触な状態で外部に電力を供給するための誘電磁界を周囲に発生させる、あるいは、誘電磁界内に位置することで非接触な状態で外部から電力の供給を受ける、ことが可能である。
【0010】
以下の説明において、図面の上下方向を板厚方向A1と表現し、水平方向を板面方向A2と表現する。また、これら上下方向及び水平方向は、図面内で示されるコイル装置100の方向であり、当該コイル装置100の向きが変わればこれら上下及び水平の向きが変化するのは当然である。
【0011】
図1、
図2に示すように、コアケース2はコア1の板厚方向A1の一方側(
図1、
図2において上側)に開口する開口部6を有している。コアケース2の開口部6内には、コア1が収容される凹状のコア収容部7が形成されている。
コア1はフェライトコアからなる磁性体であって、全体として板状に形成されている。当該コア1は、コアケース2内に板面方向A2に沿うように形成されたコア収容部7内に収容される。
図1においては、コアケース2に複数のコア収容部7が形成され、複数のコア1がそれぞれ個別のコア収容部7に収容されている。
【0012】
コイルユニット4は、コアケース2に対して板厚方向A1の一方側(
図1、
図2において上側)に重ねて配置される。コイル3と共にコイルユニット4を構成するコイルケース8のうち板厚方向A1の他方側(
図1、
図2において下側)には、開口部9が形成されている。コイルユニット4の開口部9内には、コイル3が収容される凹状のコイル収容部10が形成されている。
上記したコアケース2とコイルユニット4とを板厚方向A1に重ねた状態では、板厚方向A1においてコアケース2のコア収容部7がコイルユニット4側に開口する。板厚方向A1においてコイルケース8のコイル収容部10がコアケース2側に開口する。また、板厚方向A1においてコア収容部7とコイル収容部10とが対向する。
【0013】
コアケース2とコイルユニット4との間には、電気的な絶縁材料からなる絶縁板11が介在している。絶縁板11は、コアケース2内のコア1と、コイルユニット4内のコイル3とを電気的に絶縁するために当該コアケース2上に板面方向A2に沿うように配置されている。
【0014】
図1に示す本実施形態の筐体5は、底部となるアルミカバー20と、アルミカバー20上に設置されて、コアケース2及びコイルユニット4を共に覆う樹脂ケース21と、からなる。
図1においては、アルミカバー20が、板厚方向A1を厚さ方向とする平板状に形成されている。当該アルミカバー20上にコアケース2が重ねて配置される。一方、樹脂ケース21は、板厚方向A1の他方側(
図1、
図2において下側)に開口する椀状に形成されている。板厚方向A1の他方側(
図1、
図2において下側)に向く樹脂ケース21の底面は板面方向A2に沿って平坦に形成されている。当該樹脂ケース21の底面にコイルケース8が重ねて配置される。
【0015】
なお、筐体5の構成要素の材料は適宜選択可能である。また、筐体5の具体的な態様(筐体5の構成要素の形状など)は任意であってよい。また、筐体5は、コアケース2及びコイルユニット4が一定以上の強度を有するのであれば、適宜省略することも可能である。
【0016】
第一弾性部材30(弾性部材)及び第二弾性部材31は、いずれもゴムなどのように弾性変形可能な材料からなる。
第一弾性部材30は、コア1とコアケース2との間に挟まれる。本実施形態における第一弾性部材30は、板厚方向A1においてコア1とコアケース2との間に挟まれる弾性シートである。具体的に、シート状の第一弾性部材30は、板厚方向A1においてコア1の下面とコアケース2のコア収容部7の底面との間に挟まれる。また、第一弾性部材30は、コア1の下面全体を覆うように配置される。
【0017】
第二弾性部材31は、コア1とコイルケース8との間に挟まれる。本実施形態における第二弾性部材31は、板厚方向A1においてコア1の上面とコイルケース8との間に挟まれる弾性シートである。具体的に、シート状の第二弾性部材31は、コア1の上面全体を覆うように配置される。
これにより、コアケース2のコア収容部7内に収容されるコア1の下面及び上面には、コア1の上下板面の全体を、板厚方向A1の両側から挟む第一弾性部材30及び第二弾性部材31が設置されている。
【0018】
これら第一弾性部材30及び第二弾性部材31は、板厚方向A1からの外力によりコアケース2やコイルケース8が変形した場合であっても、当該変形を吸収することができる。このため、コアケース2やコイルケース8の変形がコアケース2内のコア1に伝わることを抑制できる。その結果として、コアケース2内のコア1に応力が生じること、さらには当該コア1に割れてしまうことを抑制できる。
【0019】
これら第一弾性部材30及び第二弾性部材31は、熱伝導率が高い材料を選択することで、放熱シートとしても機能させることができる。この場合、第一弾性部材30及び第二弾性部材31は、コアケース2内のコア1で発生した熱、又はコイルユニット4内のコイル3で発生した熱を、当該コアケース2及び重ねられたコイルユニット4を通じて外部に放出させることもできる。
【0020】
以上詳細に説明したように本実施形態のコイル装置100では、コア1とコアケース2との間に第一弾性部材30を挟んでいる。このため、コイル装置100に対して外力が作用することでコアケース2が変形しても、当該コアケース2の変形をコア1とコアケース2との間に介在する第一弾性部材30において吸収することができる。このため、コアケース2の変形がコア1に伝わることを抑制することができる。すなわち、コアケース2の変形に基づいてコア1に応力が発生することを抑制できる。したがって、コイル装置100に作用する外力に基づいてコア1が割れることを抑制することができる。
【0021】
特に、本実施形態では、第一弾性部材30が板厚方向A1においてコア1とコアケース2との間に挟まれる弾性シートである。これにより、コイル装置100に対する外力が板厚方向A1に作用する場合に、コア1が割れることをより効果的に抑制できる。
【0022】
また、第一弾性部材30はコア1とコアケース2との間に挟まれるため、コア1をコアケース2に接着固定する必要がない。コア1がコアケース2に接着固定されないことで、コイル装置100のメンテナンスなどにおいてコア1を容易にコアケース2から取り外すこともできるし、コア1を容易に交換することもできる。
【0023】
また、上記コイル装置100では、第二弾性部材31が板厚方向A1においてコア1とコイルケース8との間に挟まれることで、コア1が第一弾性部材30及び第二弾性部材31を介してコアケース2とコイルケース8との間に挟まれる。これにより、地震時の振動や輸送時の振動などによって、コア1がコアケース2内において自由に動いてコア1が割れてしまうことを防止できる。
【0024】
また、上記コイル装置100では、コア1とコイルケース8との間に弾性シートからなる第二弾性部材31がさらに介在していることで、コイル装置100に対する外力が板厚方向A1に作用することでコイルケース8が変形しても、当該コイルケース8の変形を第二弾性部材31において吸収することができる。このため、特に第二弾性部材31によってコイルケース8の変形がコア1に伝わることを効果的に抑制することができる。したがって、コイルケース8の変形に基づいてコア1に応力が発生してコア1が割れることを抑制することができる。
【0025】
以上のことから、コアケース2内に収容されたコア1の下面及び上面に弾性変形可能な材料からなる第一弾性部材30及び第二弾性部材31が設置されているので、外力によりコアケース2やコイルケース8が変形しても、当該変形をこれら弾性部材30、31において吸収することができる。その結果として、上記コイル装置100では、板厚方向A1からの外力によりコアケース2やコイルケース8が変形したとしても、当該変形がコアケース2やコイルケース8を介してコアケース2内のコア1に応力を生じさせることを抑制し、コア1が割れることを抑制できる。
【0026】
また、上記コイル装置100では、コア1が弾性部材30、31を介してコアケース2とコイルユニット4との間に挟まれる。これにより、コアケース2に接着固定することなく、当該コアケース2のコア収容部7内にコア1を収容することができる。したがって、メンテナンスなどで容易にコア1をコアケース2から取り外し、かつ交換することができる。
【0027】
また、上記コイル装置100では、コイル3に電流が流れた際(例えば送電用のコイル3への通電時)に発生するコア1の熱、又はコイル3からコア1に伝達された熱を、熱伝導率が高い放熱シートとしての第一弾性部材30及び第二弾性部材31を経由して効率良く逃がすことができる。すなわち、上記コイル装置100では、放熱シートとしての第一弾性部材30及び第二弾性部材31を経由して、コアケース2内のコア1で発生した熱、又はコイルユニット4内のコイル3で発生した熱を、効率良く外部に逃がすことができ、装置の放熱性能の向上を図ることができる。
【0028】
上記実施形態においては、例えばコア1上面に配置された第二弾性部材31が十分な電気的な絶縁機能を有してもよい。この場合、コイル装置100は、コアケース2とコイルユニット4との間に配置される絶縁板11を備えなくてもよい。
【0029】
また、コア1の下面及び上面に位置する第一弾性部材30及び第二弾性部材31は、該コア1の上下板面の全体を覆うように配置されず、例えばコア1の上下板面の部分的を覆うように配置されてもよい。
【0030】
また、第一弾性部材30は、コア1の下面とコアケース2のコア収容部7の底面との間に挟まれることに限らず、例えばコア1の側面とコア収容部7の内側面との間に挟まれてもよい。この場合、第一弾性部材30は、コア1の側面全体を覆うように配置されてもよいが、例えばコア1の側面の一部だけを覆うように配置されてもよい。
【0031】
以上、実施形態を説明したが、その構成や詳細には当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、実施形態は、適宜他の例と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 コア
2 コアケース
3 コイル
4 コイルユニット
5 筐体
6 開口部
7 コア収容部
8 コイルケース
9 開口部
10 コイル収容部
11 絶縁板
20 アルミカバー
21 樹脂ケース
30 第一弾性部材
31 第二弾性部材
100 コイル装置
A1 板厚方向
A2 板面方向