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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014441
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】作業ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20250123BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250123BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20250123BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
G05D1/02 H
H02J7/00 B
A01D34/64 A
A01D34/64 M
A01D34/78 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116998
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳川 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩克
【テーマコード(参考)】
2B083
5G503
5H301
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083DA03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB13
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB08
5G503GD06
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB12
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE13
5H301FF03
5H301HH10
5H301QQ04
(57)【要約】
【課題】作業ロボットによる作業を円滑に進行させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】作業ロボットは、作業を行う作業機構と、作業ロボットを移動させる移動機構と、作業機構を駆動する作業用モータと、移動機構を駆動する移動用モータと、再充電可能であり、作業用モータおよび移動用モータに電力を供給するバッテリと、バッテリの電圧値を検出する電圧検出部と、制御部を備える。制御部は、作業用モータと移動用モータのうち少なくとも一方である対象モータについて、対象モータが動作している状態での電圧検出部の検出値を第1段階電圧値として取得し、その後に対象モータを停止させ、対象モータが停止している状態での電圧検出部の検出値を第2段階電圧値として取得する二段階取得処理と、第1段階電圧値と第2段階電圧値に基づいて作業ロボットを充電ステーションに帰還させるか否かを判定する帰還判定処理と、を実行可能に構成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律移動しながら作業を行う作業ロボットであって、
作業を行う作業機構と、
前記作業ロボットを移動させる移動機構と、
前記作業機構を駆動する作業用モータと、
前記移動機構を駆動する移動用モータと、
再充電可能であり、前記作業用モータおよび前記移動用モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの電圧値を検出する電圧検出部と、
制御部と、を備えており、
前記制御部は、
前記作業用モータと前記移動用モータのうち少なくとも一方である対象モータについて、前記対象モータが動作している状態での前記電圧検出部の検出値を第1段階電圧値として取得し、その後に前記対象モータを停止させ、前記対象モータが停止している状態での前記電圧検出部の検出値を第2段階電圧値として取得する二段階取得処理と、
前記第1段階電圧値と前記第2段階電圧値に基づいて、前記作業ロボットを充電ステーションに帰還させるか否かを判定する帰還判定処理と、を実行可能に構成されている、作業ロボット。
【請求項2】
前記制御部は、前記電圧検出部の検出値を第1判定用電圧値として取得し、前記第1判定用電圧値が所定値以下である場合に前記二段階取得処理を実行し、前記第1判定用電圧値が前記所定値を上回る場合には前記二段階取得処理を実行しないように構成されている、請求項1の作業ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、所定の帰還用閾値を記憶しており、
前記制御部は、前記第1段階電圧値と前記第2段階電圧値に基づいて前記帰還用閾値を補正する閾値補正処理をさらに実行可能に構成されており、
前記帰還判定処理は、前記電圧検出部の検出値を第2判定用電圧値として取得し、前記第2判定用電圧値が補正後の前記帰還用閾値以下であるか否かに応じて、前記作業ロボットを前記充電ステーションに帰還させるか否かを判定する処理を含む、請求項1の作業ロボット。
【請求項4】
前記制御部は、前記電圧検出部の検出値を第3判定用電圧値として取得し、前記第3判定用電圧値が前記帰還用閾値以下である場合に前記二段階取得処理を実行し、前記第3判定用電圧値が前記帰還用閾値を上回る場合には前記二段階取得処理を実行しないように構成されている、請求項3の作業ロボット。
【請求項5】
前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記第2段階電圧値から前記第1段階電圧値を減算して得られる回復電圧値に基づいて、前記帰還用閾値を補正する、請求項3または4の作業ロボット。
【請求項6】
前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記帰還用閾値から前記回復電圧値を減算することにより、前記帰還用閾値を補正する、請求項5の作業ロボット。
【請求項7】
前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記回復電圧値が所定の上限値以上である場合、前記帰還用閾値から前記回復電圧値を減算する代わりに、前記帰還用閾値から前記上限値を減算する、請求項6の作業ロボット。
【請求項8】
前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記回復電圧値が所定の下限値以下である場合、補正前の前記帰還用閾値を補正後の前記帰還用閾値とする、請求項5から7の何れか一項の作業ロボット。
【請求項9】
前記作業用モータと前記移動用モータの一方が、前記対象モータであり、
前記作業用モータと前記移動用モータの他方が、前記対象モータでない対象外モータであり、
前記制御部は、前記対象外モータが停止している状況で、前記二段階取得処理を実行する、請求項1から8の何れか一項の作業ロボット。
【請求項10】
前記制御部は、前記対象外モータが停止している状況で、前記帰還判定処理を実行する、請求項9の作業ロボット。
【請求項11】
前記制御部は、前記対象外モータが動作している状態が所定時間継続すると、前記対象外モータを停止させる、請求項9または10の作業ロボット。
【請求項12】
前記作業用モータは前記対象モータであり、前記移動用モータは前記対象外モータである、請求項9から11の何れか一項の作業ロボット。
【請求項13】
前記作業機構は、芝生を刈り込むための刈刃を備えており、
自律移動可能なロボット芝刈機として機能する、請求項1から12の何れか一項の作業ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、作業ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自律移動しながら作業を行う作業ロボットが開示される。前記作業ロボットは、作業を行う作業機構と、前記作業ロボットを移動させる移動機構と、前記作業機構を駆動する作業用モータと、前記移動機構を駆動する移動用モータと、再充電可能であり、前記作業用モータおよび前記移動用モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリの電圧値を検出する電圧検出部と、制御部と、を備える。前記制御部は、前記電圧検出部の検出値が所定値以下となると、前記作業ロボットを充電ステーションに帰還させる。前記作業ロボットは、前記充電ステーションに帰還することで、前記バッテリの充電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-10382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業ロボットを充電ステーションに帰還させるタイミングが遅すぎると、作業ロボットが帰還している途中にバッテリが残量切れとなってしまう。作業ロボットが帰還している途中にバッテリが残量切れになると、作業ロボットが充電ステーションに辿り着く前に停止してしまう。この状況となると、ユーザの助けがない限り、バッテリを再充電することができず、作業ロボットによる作業を行うこともできない。その結果、作業ロボットによる作業が円滑に進行しない可能性がある。一方、作業ロボットを充電ステーションに帰還させるタイミングが早すぎると、作業ロボットが作業を継続してもよい程にバッテリの残量が余っているにもかかわらず、作業ロボットが充電ステーションに帰還してしまう。その結果、作業ロボットによる作業が頻繁に中断されることとなり、作業ロボットによる作業が円滑に進行しない可能性がある。本明細書では、作業ロボットによる作業を円滑に進行させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する作業ロボットは、自律移動しながら作業を行う。前記作業ロボットは、作業を行う作業機構と、前記作業ロボットを移動させる移動機構と、前記作業機構を駆動する作業用モータと、前記移動機構を駆動する移動用モータと、再充電可能であり、前記作業用モータおよび前記移動用モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリの電圧値を検出する電圧検出部と、制御部と、を備える。前記制御部は、前記作業用モータと前記移動用モータのうち少なくとも一方である対象モータについて、前記対象モータが動作している状態での前記電圧検出部の検出値を第1段階電圧値として取得し、その後に前記対象モータを停止させ、前記対象モータが停止している状態での前記電圧検出部の検出値を第2段階電圧値として取得する二段階取得処理と、前記第1段階電圧値と前記第2段階電圧値に基づいて、前記作業ロボットを充電ステーションに帰還させるか否かを判定する帰還判定処理と、を実行可能に構成されている。
【0006】
モータが動作している状況では、モータが停止している状況と比較して、モータの内部抵抗がある分、バッテリの電圧値は低下する。このため、作業ロボットを帰還させるタイミングを適切に特定するには、モータの動作状況ごとに電圧検出部の検出値を取得することが好ましい。上記の構成によれば、作業ロボットの制御部は、モータの動作状況ごとに電圧検出部の検出値を取得することができるので、作業ロボットを帰還させるタイミングを適切に特定することができる。即ち、作業ロボットを帰還させるタイミングが遅くなりすぎたり、早くなりすぎたりすることを抑制できる。このため、作業ロボットが帰還している途中にバッテリが残量切れとなることを抑制しつつ、作業ロボットによる作業が頻繁に中断されることを抑制できる。これにより、作業ロボットによる作業を円滑に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係るロボット芝刈機2の使用例を示す図である。
図2】実施例1に係るロボット芝刈機2の左側面図である。
図3】実施例1に係るロボット芝刈機2の背面図である。
図4】実施例1に係るロボット芝刈機2の概略構成図である。
図5】実施例1に係るロボット芝刈機2の制御部8が実行するバッテリ電圧管理処理のフローチャートである。
図6】実施例1に係るロボット芝刈機2の制御部8が実行するバッテリ電圧管理処理のフローチャートである。
図7】実施例1に係るロボット芝刈機2において、帰還用閾値Vreを補正することなく充電ステーション110への帰還判定が行われたと仮定した場合の、バッテリ18の電圧値の時間変化を概略的に示す図である。
図8】実施例1に係るロボット芝刈機2が、バッテリ電圧管理処理に従って充電ステーション110に帰還する場合の、バッテリ18の電圧値の時間変化を概略的に示す図である。
図9】実施例1に係るロボット芝刈機2の制御部8が実行するモータ焼損回避処理のフローチャートである。
図10】実施例2に係るロボット芝刈機202の概略構成図である。
図11】変形例に係るロボット芝刈機2が、バッテリ電圧管理処理に従って充電ステーション110に帰還する場合の、バッテリ18の電圧値の時間変化を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、開示された追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された作業ロボットを提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0009】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、以下の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、特許請求の範囲に記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0010】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記制御部は、前記電圧検出部の検出値を第1判定用電圧値として取得し、前記第1判定用電圧値が所定値以下である場合に前記二段階取得処理を実行し、前記第1判定用電圧値が前記所定値を上回る場合には前記二段階取得処理を実行しないように構成されてもよい。
【0012】
バッテリの電圧値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行するまでもなく、作業ロボットを帰還させる必要がないことは明白である。バッテリの電圧値がある程度高い場合にまで二段階取得処理が実行されると、対象モータ(即ち、作業用モータおよび移動用モータの少なくとも一方)が不要に一時停止されるので、作業ロボットによる作業が円滑に進行しない可能性がある。上記の構成によれば、制御部は、バッテリの電圧値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行しないように構成される。これにより、対象モータが不要に中断されることを抑制できるので、作業ロボットによる作業を円滑に進行させることができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記制御部は、所定の帰還用閾値を記憶していてもよい。前記制御部は、前記第1段階電圧値と前記第2段階電圧値に基づいて前記帰還用閾値を補正する閾値補正処理をさらに実行可能に構成されてもよい。前記帰還判定処理は、前記電圧検出部の検出値を第2判定用電圧値として取得し、前記第2判定用電圧値が補正後の前記帰還用閾値以下であるか否かに応じて、前記作業ロボットを前記充電ステーションに帰還させるか否かを判定する処理を含んでもよい。
【0014】
上記の構成によれば、制御部は、第1段階電圧値と第2段階電圧値のみならず、所定の帰還用閾値にも基づいて、作業ロボットを充電ステーションに帰還させるか否かを判定する。これにより、作業ロボットを充電ステーションに帰還させるタイミングをより適切に特定することができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記制御部は、前記電圧検出部の検出値を第3判定用電圧値として取得し、前記第3判定用電圧値が前記帰還用閾値以下である場合に前記二段階取得処理を実行し、前記第3判定用電圧値が前記帰還用閾値を上回る場合には前記二段階取得処理を実行しないように構成されてもよい。
【0016】
バッテリの電圧値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行するまでもなく、作業ロボットを帰還させる必要がないことは明白である。バッテリの電圧値がある程度高い場合にまで二段階取得処理が実行されると、対象モータ(即ち、作業用モータおよび移動用モータの少なくとも一方)が不要に一時停止されるので、作業ロボットによる作業が円滑に進行しない可能性がある。上記の構成によれば、制御部は、バッテリの電圧値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行しないように構成される。これにより、対象モータが不要に中断されることを抑制できるので、作業ロボットによる作業を円滑に進行させることができる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記第2段階電圧値から前記第1段階電圧値を減算して得られる回復電圧値に基づいて、前記帰還用閾値を補正してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、簡素な手段によって、帰還用閾値を補正することができる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記帰還用閾値から前記回復電圧値を減算することにより、前記帰還用閾値を補正してもよい。
【0020】
対象モータが、作業ロボットが作業を行っている間は動作して、作業ロボットが充電ステーションに帰還している間は停止するように構成されることがある。この場合、作業ロボットが作業を終了して帰還を開始する際に、回復電圧値だけバッテリの電圧値が回復することが予想される。このため、作業ロボットを帰還させるか否かを判定する際には、その後に回復電圧値だけバッテリの電圧値が回復することを考慮することが好ましい。上記の構成によれば、作業ロボットを帰還させるか否かを判定する際に、その後に回復電圧値だけバッテリの電圧値が回復することを考慮することができる。従って、作業ロボットを充電ステーションに帰還させるタイミングを適切に特定することができる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記回復電圧値が所定の上限値以上である場合、前記帰還用閾値から前記回復電圧値を減算する代わりに、前記帰還用閾値から前記上限値を減算してもよい。
【0022】
閾値補正処理で算出された回復電圧値が大きい場合、作業ロボットが作業を終了して帰還を開始するタイミングでのバッテリの電圧値の回復量が、算出された回復電圧値を下回ることがある。このため、閾値補正処理で算出された回復電圧値が大きい場合にまで帰還用閾値から回復電圧値を減算して補正を行うと、作業ロボットが帰還を開始するタイミングでのバッテリの電圧値が、予想以上に小さくなってしまう。その結果、作業ロボットが帰還している途中にバッテリが残量切れとなるおそれがある。上記の構成によれば、閾値補正処理で算出された回復電圧値が上限値を上回る場合、帰還用閾値から回復電圧値を減算した値ではなく、帰還用閾値から上限値を減算した値が、補正後の帰還用閾値となる。これにより、作業ロボットが帰還を開始するタイミングでのバッテリの電圧値が予想以上に小さくなることを抑制できる。これにより、作業ロボットが帰還している途中にバッテリが残量切れとなることを抑制できる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記閾値補正処理において、前記制御部は、前記回復電圧値が所定の下限値以下である場合、補正前の前記帰還用閾値を補正後の前記帰還用閾値としてもよい。
【0024】
バッテリの電圧値が帰還用閾値の付近まで低下した状態で二段階取得処理および閾値補正処理が実行された時に、算出された回復電圧値が小さい場合がある。この場合、二段階取得処理において停止された対象モータ(即ち、作業用モータおよび移動用モータの少なくとも一方)を再び動作させて、作業ロボットの作業を再開したとしても、その後すぐに作業ロボットが帰還を開始するタイミングが到来する。従って、作業が再開されてから帰還が開始されるまでの作業ロボットの動作は、作業の進行具合に変化を及ぼす程のものではなく、不要な動作と考えられる。作業ロボットの不要な動作が行われる時間が長いと、作業ロボットの作業効率を低下させてしまう。上記の構成によれば、閾値補正処理において算出される回復電圧値が小さい場合、補正後の帰還用閾値が、補正前の帰還用閾値と同値になる。即ち、補正後の帰還用閾値は、帰還用閾値から回復電圧値を減算した値よりも大きい値となる。その結果、作業ロボットが帰還を開始するタイミングが早まるので、作業ロボットの不要な動作が行われる時間を短縮することができる。これにより、作業ロボットの作業効率を向上させることができる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記作業用モータと前記移動用モータの一方が、前記対象モータであってもよい。前記作業用モータと前記移動用モータの他方が、前記対象モータでない対象外モータであってもよい。前記制御部は、前記対象外モータが停止している状況で、前記二段階取得処理を実行してもよい。
【0026】
二段階取得処理は、対象モータの動作状況の変化に起因するバッテリの電圧値の変化を観測する処理である。ただし、バッテリの電圧値は、対象外モータの動作状況によっても変化し得る。従って、二段階取得処理の実行中に対象外モータの動作状況が変化すると、対象モータの動作状況の変化に起因するバッテリの電圧値の変化を正しく観測できない可能性がある。上記の構成によれば、二段階取得処理の実行中に対象外モータの動作状況が変化しないので、対象モータの動作状況の変化に起因するバッテリの電圧値の変化を正しく観測できる。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記制御部は、前記対象外モータが停止している状況で、前記帰還判定処理を実行してもよい。
【0028】
二段階取得処理と帰還判定処理の間で対象外モータの動作状況が揃っていないと、作業ロボットを充電ステーションに帰還させるタイミングを適切に特定できない可能性がある。上記の構成によれば、二段階取得処理と帰還判定処理の間で対象外モータの動作状況が揃うので、作業ロボットを充電ステーションに帰還させるタイミングを適切に特定することができる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記制御部は、前記対象外モータが動作している状態が所定時間継続すると、前記対象外モータを停止させてもよい。
【0030】
作業ロボットを帰還させるタイミングが特定されるまでの間、二段階取得処理(または帰還判定処理)は、適度な時間間隔で繰り返し実行されることが好ましい。ただし、対象外モータが停止している状況で二段階取得処理(または帰還判定処理)が実行される構成では、対象外モータが動作している間は、二段階取得処理(または帰還判定処理)を実行できない。上記の構成によれば、対象外モータが動作している状態が所定時間継続すると、対象外モータが強制的に停止される。これにより、二段階取得処理(または帰還判定処理)を、適度な時間間隔で繰り返し実行することができる。
【0031】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記作業用モータは前記対象モータであってもよい。前記移動用モータは前記対象外モータであってもよい。
【0032】
作業用モータは、作業ロボットが作業を行っている間は動作して、作業ロボットが充電ステーションに帰還している間は停止していることが予想される。従って、作業ロボットを帰還させるタイミングを特定する上で、作業用モータの動作状況ごとにバッテリの電圧値を取得する必要性は高い。一方、移動用モータは、作業ロボットが作業を行っている間も、作業ロボットが充電ステーションに帰還している間も、基本的に動作していることが予想される。従って、作業ロボットを帰還させるタイミングを特定する上で、移動用モータの動作状況ごとにバッテリの電圧値を取得する必要性は低い。それにも関わらず移動用モータの動作状況ごとにバッテリの電圧値を取得する構成を採用すると、制御部の処理負荷が不要に増大してしまう。上記の構成によれば、作業用モータの動作状況ごとにバッテリの電圧値を取得する一方で、移動用モータの動作状況ごとにはバッテリの電圧値を取得しない。従って、制御部の処理負荷を低減しつつ、作業ロボットを充電ステーションに帰還させるタイミングを適切に特定することができる。
【0033】
1つまたはそれ以上の実施形態では、前記作業機構は、芝生を刈り込むための刈刃を備えてもよい。前記作業ロボットは、自律移動可能なロボット芝刈機として機能してもよい。
【0034】
上記の構成によれば、ロボット芝刈機を適切なタイミングで充電ステーションに帰還させることができる。
【0035】
(実施例1)
図1に示すように、本実施例の作業ロボットは、例えば、芝生が敷設された敷地100内で使用されるロボット芝刈機2である。敷地100には、例えば、家屋102と、池104と、道路106と、塀108が設けられる。また、敷地100には、外部電源(例えば、商用電源)に接続された充電ステーション110と、ロボット芝刈機2の作業エリアWAを規定するワイヤ112が設置されている。ここでいう作業エリアWAとは、ワイヤ112によって囲われたエリアである。ロボット芝刈機2の作業エリアWAは、充電ステーション110を含むメインエリアMAと、充電ステーション110を含まないサブエリアSAに区別される。ロボット芝刈機2は、ワイヤ112の位置を検出して、ロボット芝刈機2が位置する作業エリアWA(図1の例では、メインエリアMA)から逸脱しないように自律移動することができる。これにより、ロボット芝刈機2は、家屋102、池104、道路106、および塀108を避けるように芝生の上を移動しながら、芝刈作業を行うことができる。
【0036】
図2図3図4に示すように、ロボット芝刈機2は、ロボット本体4と、電源部6と、制御部8と、操作部10と、移動部12と、作業部14と、検出部16を備える。電源部6と、制御部8と、操作部10と、移動部12と、作業部14と、検出部16は、それぞれ、ロボット本体4に支持される。
【0037】
図4に示す電源部6は、制御部8の電源回路26を介して、ロボット芝刈機2の各部に電力を供給可能となっている。電源部6は、リチウムイオンバッテリなどの再充電可能なバッテリ18と、バッテリ18に電気的に接続する充電インターフェース20を備える。バッテリ18の公称容量は、例えば5.0Ahである。バッテリ18の公称電圧は、例えば18Vである。ロボット芝刈機2は、充電インターフェース20を介して、充電ステーション110(図1参照)にドッキング可能である。ロボット芝刈機2が充電ステーション110にドッキングした状態では、充電ステーション110から供給される電力によって、バッテリ18を充電可能である。バッテリ18の充電方式は、ワイヤード充電であってもよい。具体的には、充電ステーション110に設けられた端子と、充電インターフェース20に設けられた端子と、が互いに接続された状態で、バッテリ18の充電が行われてもよい。あるいは、バッテリ18の充電方式は、ワイヤレス充電であってもよい。具体的には、充電ステーション110に設けられた送電用コイルによって充電インターフェース20に設けられた受電用コイルに誘導起電力を発生させることにより、バッテリ18の充電が行われてもよい。
【0038】
制御部8は、プロセッサ22と、メモリ24と、電源回路26を備える。メモリ24は、ROM、RAM等を含む。メモリ24には、ロボット芝刈機2を自律制御するためのプログラムが記憶されている。プロセッサ22は、メモリ24に記憶されたプログラムに従って、ロボット芝刈機2を自律制御するように構成されている。また、メモリ24には、ロボット芝刈機2に係る設定(例えば、芝生の刈り込み高さ)が記憶される。ロボット芝刈機2に係る設定の中には、ロボット芝刈機2の動作モードに係る設定も含まれる。ロボット芝刈機2の動作モードは、メインエリアMA(図1参照)に対応したメインエリア対応モードと、サブエリアSA(図1参照)に対応したサブエリア対応モードと、を含む複数のモードのうちいずれか一つに設定される。
【0039】
操作部10は、例えばロボット本体4(図2参照)の外面に設けられており、ユーザが操作可能なスイッチ等を備える。ユーザは、操作部10を介して、ロボット芝刈機2に係る様々な操作を行なうことができる。ここでいう様々な操作とは、例えば、ロボット芝刈機2の主電源のオン/オフを切り替える操作、ロボット芝刈機2に対する指示を入力する操作、ロボット芝刈機2に係る設定を変更する操作である。
【0040】
移動部12は、左右一対のキャスター28L、28Rと、左右一対の駆動輪30L、30Rと、左右一対の移動用モータ32L、32Rを備える。移動用モータ32L、32Rは、例えばブラシレスDCモータである。移動用モータ32L、32Rの出力軸には、それぞれ、駆動輪30L、30Rが連結される。図2図3に示すように、ロボット芝刈機2は、キャスター28L、28Rと駆動輪30L、30Rを地面Gに当接させた状態で、地面Gに載置される。移動部12は、移動用モータ32L、32R(図4参照)を動作させて、駆動輪30L、30Rを回転させることにより、ロボット本体4を前進、後退、および旋回させることができる。
【0041】
図2に示すように、作業部14は、刈刃34と作業用モータ36を備える。刈刃34は、略円板形状に形成された回転刃である。作業用モータ36は、例えばブラシレスDCモータである。作業用モータ36は、出力軸が上方から下方に向かうにつれて前方から後方に向かうように傾斜した状態で、ロボット本体4に支持されている。作業用モータ36の出力軸には、刈刃34が連結される。作業部14は、作業用モータ36を動作させて、刈刃34を回転させることにより、芝生を刈りこむことができる。
【0042】
図4に示すように、検出部16は、ワイヤ検出センサ38と、モータ電流検出回路40と、バッテリ電圧検出回路42を備える。
【0043】
ワイヤ検出センサ38は、ワイヤ112(図1参照)を検出するためのセンサである。ワイヤ検出センサ38は、例えば磁気センサである。本実施例では、ワイヤ112には、充電ステーション110(図1参照)から、所定の電気信号が印加される。このため、ワイヤ112の周辺では、所定の電気信号に対応した磁気信号が発生する。ワイヤ検出センサ38は、この磁気信号を検出して、プロセッサ22に出力するように構成されている。プロセッサ22は、ワイヤ検出センサ38で検出される磁気信号の信号パターンや信号強度に基づいて、ロボット芝刈機2がワイヤ112に近づいていることや、ロボット芝刈機2がワイヤ112の上に位置していること等を把握することができる。
【0044】
モータ電流検出回路40は、移動用モータ32L、32Rおよび作業用モータ36のそれぞれに供給される電流値を検出して、プロセッサ22に出力するように構成されている。
【0045】
バッテリ電圧検出回路42は、バッテリ18の電圧値を検出して、プロセッサ22に出力するように構成されている。これにより、プロセッサ22は、バッテリ18の電圧値を把握することができる。
【0046】
以下では、制御部8(具体的には、プロセッサ22)が実行する運転または処理について説明する。
【0047】
(芝刈運転)
芝刈運転は、ロボット芝刈機2(図1参照)のメイン運転である。芝刈運転は、例えば、ロボット芝刈機2の電源がオンとなった状態で、操作部10(図4参照)を介して芝刈運転の開始が指示される場合に、開始される。芝刈運転が開始されると、制御部8は、ロボット芝刈機2に異常が発生していないことを確認した上で、ロボット芝刈機2による芝刈作業を開始する。即ち、制御部8は、作業用モータ36(図2参照)によって刈刃34(図2参照)を駆動させながら、移動用モータ32L、32R(図4参照)によって駆動輪30L、30R(図2参照)を駆動させて、芝生を刈り込んでいく。芝刈運転の実行中、制御部8は、状況に応じてロボット芝刈機2による芝刈作業を中断または終了して、別の動作を行うこともある。制御部8は、所定の運転終了条件が成立すると、芝刈運転を終了する。ここでいう運転終了条件は、例えば、芝刈運転を開始してからの経過時間が、ユーザが予め設定した時間に達することを含む。
【0048】
(バッテリ電圧管理処理;図5図6
バッテリ電圧管理処理は、ロボット芝刈機2(図1参照)の動作モードがメインエリア対応モードに設定される場合であって、前述の芝刈運転が実行されている間、繰り返し実行される。バッテリ電圧管理処理は、バッテリ18の電圧値が少ない場合に、ロボット芝刈機2を充電ステーション110(図1参照)に帰還させて、バッテリ18(図4参照)の充電を行うための処理である。メモリ24(図4参照)には、ロボット芝刈機2を充電ステーション110に帰還させるために確保すべきバッテリ18の電圧値(帰還用閾値Vre)が、予め記憶されている。本実施例では、帰還用閾値Vreは、17.5Vに設定されている。バッテリ電圧管理処理は、主に、帰還用閾値Vreを補正する処理と、補正後の帰還用閾値Vre´に基づいてロボット芝刈機2を充電ステーション110に帰還させる処理と、を含む。
【0049】
図5に示すように、S2では、制御部8は、補正フラグがオンとなっているか否かを判定する。補正フラグは、メモリ24に含まれるステータスレジスタである。補正フラグは、補正後の帰還用閾値Vre´が取得されていない場合にはオフとなっている。補正フラグがオフとなっている場合(NOの場合)、処理はS4へ進む。
【0050】
S4では、制御部8は、移動用モータ32L、32R(図4参照)が停止しているか否かを判定する。ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っている間、基本的に移動用モータ32L、32Rは動作しているが、例えばロボット芝刈機2が方向転換を行う際、移動用モータ32L、32Rが停止することがある。移動用モータ32L、32Rが停止していない場合(NOの場合)、処理はS6へ進む。
【0051】
S6では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rの動作継続時間が第1上限時間(例えば、2分)以上であるか否かを判定する。ここでいう移動用モータ32L、32Rの動作継続時間とは、移動用モータ32L、32Rの直近の動作開始時からの経過時間を意味する。移動用モータ32L、32Rの動作継続時間が第1上限時間未満である場合(NOの場合)、処理はS2に戻る。移動用モータ32L、32Rの動作継続時間が第1上限時間以上である場合(YESの場合)、処理はS8へ進む。
【0052】
S8では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rを停止する。
【0053】
S4において移動用モータ32L、32Rが停止していると判定される場合(YESの場合)、または、S8の後、処理はS10へ進む。S10では、制御部8は、バッテリ電圧検出回路42(図4参照)の検出値を判定用電圧値として取得し、取得した判定用電圧値が帰還用閾値Vre以下であるか否かを判定する。なお、ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っている間、基本的に作業用モータ36(図4参照)が停止することはない。このため、S10では、作業用モータ36が動作し、移動用モータ32L、32Rが停止した状況でのバッテリ18の電圧値が、判定用電圧値として取得される。判定用電圧値が帰還用閾値Vreを上回る場合(NOの場合)、処理はS2に戻る。なお、S8で移動用モータ32L、32Rを停止した後にS10でNOとなる場合には、制御部8は移動用モータ32L、32Rを再び動作させる。判定用電圧値が帰還用閾値Vre以下である場合(YESの場合)、処理はS12へ進む。
【0054】
S12では、制御部8は、バッテリ電圧検出回路42の検出値を第1段階電圧値V1として取得する。S12では、作業用モータ36が動作し、移動用モータ32L、32Rが停止した状況でのバッテリ18の電圧値が、第1段階電圧値V1として取得される。S12の後、処理はS14へ進む。
【0055】
S14では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rに加えて、作業用モータ36を停止させる。即ち、制御部8は、ロボット芝刈機2による芝刈作業を中断する。そして、制御部8は、作業用モータ36と移動用モータ32L、32Rが停止した状態で、所定時間(例えば、2秒)だけ待機する。これにより、バッテリ18の電圧値は、芝刈作業が中断される直前と比較して、作業用モータ36の内部抵抗に起因する電圧降下分だけ回復する。S14の後、処理はS16へ進む。
【0056】
S16では、制御部8は、ロボット芝刈機2による芝刈作業を中断した状態で、バッテリ電圧検出回路42の検出値を第2段階電圧値V2として取得する。S16では、作業用モータ36および移動用モータ32L、32Rが停止した状況でのバッテリ18の電圧値が、第2段階電圧値V2として取得される。また、制御部8は、第2段階電圧値V2を取得した後、移動用モータ32L、32Rおよび作業用モータ36を再び動作させて、ロボット芝刈機2による芝刈作業を再開する。S16の後、処理はS18へ進む。
【0057】
S18では、制御部8は、第2段階電圧値V2から第1段階電圧値V1を減算して、回復電圧値Vdiffを算出する。従って、回復電圧値Vdiff=V2-V1となる。S18の後、処理はS20へ進む。
【0058】
S20では、制御部8は、S18で算出された回復電圧値Vdiffが、所定の下限値(例えば0.1V)以下であるか否かを判定する。回復電圧値Vdiffが下限値以下である場合(YESの場合)、処理はS22へ進む。
【0059】
S22では、制御部8は、回復電圧値Vdiffを修正して、0Vとする。
【0060】
S20において回復電圧値Vdiffが下限値以下でないと判定される場合(NOの場合)、処理はS24へ進む。S24では、制御部8は、S18で算出された回復電圧値Vdiffが、所定の上限値(例えば0.5V)以上であるか否かを判定する。回復電圧値Vdiffが上限値以下である場合(YESの場合)、処理はS26へ進む。
【0061】
S26では、制御部8は、回復電圧値Vdiffを修正して、S24の判定で使用した上限値(例えば0.5V)と同値にする。
【0062】
S24において回復電圧値Vdiffが上限値以下でないと判定される場合(NOの場合)、S22の後、または、S26の後、処理はS28へ進む。S28では、制御部8は、帰還用閾値Vreから回復電圧値Vdiffを減算することにより、帰還用閾値Vreを補正する。従って、補正後の帰還用閾値Vre´=Vre-Vdiffとなる。また、制御部8は、補正後の帰還用閾値Vre´をメモリ24に記憶するとともに、補正フラグをオンに切り替える。S28の後、処理はS2に戻る。
【0063】
S2において補正フラグがオンになっていると判定される場合(YESの場合)、処理は図6に示すS30へ進む。S30では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rが停止しているか否かを判定する。移動用モータ32L、32Rが停止していない場合(NOの場合)、処理はS32へ進む。
【0064】
S32では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rの動作継続時間が第2上限時間(例えば、1分)以上であるか否かを判定する。移動用モータ32L、32Rの動作継続時間が第2上限時間未満である場合(NOの場合)、処理はS2(図5参照)に戻る。移動用モータ32L、32Rの動作継続時間が第2上限時間以上である場合(YESの場合)、処理はS34へ進む。
【0065】
S34では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rを停止する。
【0066】
S30において移動用モータ32L、32Rが動作していると判定される場合(YESの場合)、または、S34の後、処理はS36へ進む。S36では、制御部8は、バッテリ電圧検出回路42の検出値を判定用電圧値として取得し、取得した判定用電圧値が補正後の帰還用閾値Vre´以下であるか否かを判定する。なお、S36では、作業用モータ36が動作し、移動用モータ32L、32Rが停止した状況でのバッテリ18の電圧値が、判定用電圧値として取得される。判定用電圧値が補正後の帰還用閾値Vre´を上回る場合(NOの場合)、処理はS2(図5参照)に戻る。なお、S34で移動用モータ32L、32Rを停止した後にS36でNOとなる場合には、制御部8は移動用モータ32L、32Rを再び動作させる。判定用電圧値が補正後の帰還用閾値Vre´以下である場合(YESの場合)、処理はS38へ進む。
【0067】
S38では、制御部8は、ロボット芝刈機2による芝刈作業を終了し、ロボット芝刈機2を充電ステーション110に帰還させる。具体的には、制御部8は、作業用モータ36を停止した状態で、ロボット芝刈機2がワイヤ112を辿って充電ステーション110に至るように、移動用モータ32L、32Rを動作させる。S38の後、処理はS40へ進む。
【0068】
S40では、制御部8は、ロボット芝刈機2を充電ステーション110にドッキングさせて、バッテリ18の充電を開始する。また、制御部8は、ロボット芝刈機2が充電ステーション110にドッキングしたことに応じて、補正後の帰還用閾値Vre´をメモリ24から消去するとともに、補正フラグをオフに切り替える。なお、メモリ24に記憶された補正後の帰還用閾値Vre´は、バッテリ電圧管理処理のS40とは無関係にロボット芝刈機2が充電ステーション110にドッキングした場合であっても、メモリ24から消去されることに留意されたい。同様に、補正フラグは、バッテリ電圧管理処理のS40とは無関係にロボット芝刈機2が充電ステーション110にドッキングした場合であっても、オフへと切り替わることに留意されたい。S40の後、処理はS42へ進む。
【0069】
S42では、制御部8は、所定の通常時復帰条件が成立したか否かを判定する。通常時復帰条件は、例えば、バッテリ電圧検出回路42で検出されるバッテリ18の電圧値が所定値(例えば20V)以上となることを含む。通常時復帰条件が成立しない場合(NOの場合)、処理はS42を繰り返し実行する。通常時復帰条件が成立する場合(YESの場合)、処理はS44へ進む。
【0070】
S44では、制御部8は、バッテリ18の充電を終了するとともに、ロボット芝刈機2と充電ステーション110のドッキングを解除して、移動用モータ32L、32Rおよび作業用モータ36を再び動作させる。即ち、制御部8は、ロボット芝刈機2による芝刈作業を再開する。S44の後、図5図6に示すバッテリ電圧管理処理は終了する。
【0071】
(バッテリ電圧管理処理の利点)
ロボット芝刈機2は、芝刈作業を行っている間には作業用モータ36(図4参照)を動作させるものの、充電ステーション110(図1参照)に帰還している間には作業用モータ36を停止させる。このため、ロボット芝刈機2が芝刈作業を終了して帰還を開始するタイミングで、作業用モータ36の内部抵抗に起因する電圧降下分だけ、バッテリ18(図4参照)の電圧値が回復する。仮に、図7に示すように、ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っている間のバッテリ18の電圧値が帰還用閾値Vreとなるタイミングでロボット芝刈機2が帰還を開始すると、その直後にバッテリ18の電圧値が回復して、帰還用閾値Vreを大幅に上回ってしまう。従って、ロボット芝刈機2が芝刈作業を継続してもよい程にバッテリ18の残量が余っているにもかかわらず、ロボット芝刈機2が充電ステーション110へと帰還してしまう。これによって、ロボット芝刈機2が頻繁に充電ステーション110に帰還することになるので、ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っている時間に対して、ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っていない時間(例えば、充電ステーション110に帰還している時間やバッテリ18の充電を行っている時間)の割合が大きくなってしまう。その結果、ロボット芝刈機2の作業効率が低くなるおそれがある。
【0072】
図8に示すように、バッテリ電圧管理処理によれば、作業用モータ36の内部抵抗に起因する電圧降下分が回復電圧値Vdiffとして特定される。そして、予め決められた帰還用閾値Vreから回復電圧値Vdiffを減算することにより、帰還用閾値Vre´が取得される。そして、ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っている間のバッテリ18の電圧値が帰還用閾値Vre´となるタイミングで、ロボット芝刈機2が帰還を開始する。これにより、ロボット芝刈機2が帰還を開始した直後のバッテリ18の電圧値は、帰還用閾値Vreの付近の値まで回復する。従って、ロボット芝刈機2が芝刈作業を継続できる限界までバッテリ18の残量が低下したタイミングで、ロボット芝刈機2を充電ステーション110に帰還させることができる。これによって、ロボット芝刈機2が充電ステーション110に帰還する頻度を可能な限り低くすることができるので、ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っている時間に対して、ロボット芝刈機2が芝刈作業を行っていない時間の割合を小さくすることができる。その結果、ロボット芝刈機2の作業効率を向上させることができる。
【0073】
(モータ焼損回避処理;図9
モータ焼損回避処理は、ロボット芝刈機2(図1参照)の動作モードにかかわらず、前述の芝刈運転が実行されている間、繰り返し実行される。なお、モータ焼損回避処理は、ロボット芝刈機2による芝刈作業が開始される前の、ロボット芝刈機2に異常が発生していないことを確認する段階においても実行されることに留意されたい。
【0074】
S52では、制御部8は、作業用モータ36(図2参照)がオーバーヒートしているか否かを判定する。ここでいうオーバーヒートとは、作業用モータ36の温度が、過度に高い温度(例えば、150℃以上の温度)となること、作業用モータ36の焼損(巻線の被膜を溶かし、ショートすること)を引き起こすような温度となること、または、作業用モータ36の寿命に影響を与えるような温度となることを意味する。制御部8は、例えば、モータ電流検出回路40(図4参照)の検出値(即ち、作業用モータ36に供給される電流)が第1電流値(例えば5A)以上となる状況が第1継続時間(例えば55分)以上継続する場合、作業用モータ36の温度が過度に高い温度になったと推定し、作業用モータ36がオーバーヒートしたと判定する。また、制御部8は、モータ電流検出回路40の検出値が第1電流値よりも高い第2電流値(例えば6A)以上となる状況が、第1継続時間よりも短い第2継続時間(例えば22分)以上継続する場合にも、作業用モータ36がオーバーヒートしたと判定する。また、制御部8は、モータ電流検出回路40の検出値が第2電流値よりも高い第3電流値(例えば7A)以上となる状況が、第2継続時間よりも短い第3継続時間(例えば10分)以上継続する場合にも、作業用モータ36がオーバーヒートしたと判定する。作業用モータ36がオーバーヒートしている場合(YESの場合)、処理はS54へ進む。
【0075】
S54では、制御部8は、ロボット芝刈機2がメインエリアMA(図1参照)内にあるか否かを判定する。制御部8は、ロボット芝刈機2の動作モードがメインエリア対応モードに設定されている場合、ロボット芝刈機2がメインエリアMA内にある(YES)と判定する。制御部8は、ロボット芝刈機2の動作モードがメインエリア対応モード以外のモードに設定されている場合、ロボット芝刈機2がメインエリアMA内にない(NO)と判定する。ロボット芝刈機2がメインエリアMA内にある場合(YESの場合)、処理はS56へ進む。
【0076】
S56では、制御部8は、ロボット芝刈機2を充電ステーション110(図1参照)に帰還させる。具体的には、制御部8は、作業用モータ36を停止した状態で、ロボット芝刈機2がワイヤ112を辿って充電ステーション110に至るように、移動用モータ32L、32R(図4参照)を動作させる。また、制御部8は、ロボット本体4に設けられた光源装置やブザー(図示せず)を動作させて、異常が発生したことを音や光によって報知する。S56の後、処理はS58へ進む。
【0077】
S58では、制御部8は、ロボット芝刈機2を充電ステーション110にドッキングさせて、バッテリ18(図4参照)の充電を開始する。なお、制御部8は、バッテリ18の充電を開始した後も、異常が発生したことを報知し続ける。S58の後、処理はS60へ進む。
【0078】
S60では、制御部8は、所定の第1異常時復帰条件が成立したか否かを判定する。本実施例の第1異常時復帰条件は、作業用モータ36の温度が正常な温度(例えば、40℃以下の温度)となることが見込まれる条件を含む。例えば、第1異常時復帰条件は、バッテリ電圧検出回路42(図4参照)で検出されるバッテリ18の電圧値が所定値(例えば20V)以上となることを含む。これは、バッテリ18の充電をある程度継続すれば、その間に作業用モータ36の温度が正常な温度まで低下したと推定できるからである。あるいは、第1異常時復帰条件は、直近に実行されたS52において作業用モータ36がオーバーヒートしたと判定されてからの経過時間が所定時間(例えば、20分)に達することを含む。第1異常時復帰条件が成立しない場合(NOの場合)、処理はS60を繰り返し実行する。第1異常時復帰条件が成立する場合(YESの場合)、処理はS62へ進む。
【0079】
S62では、制御部8は、バッテリ18の充電を終了するとともに、ロボット芝刈機2と充電ステーション110のドッキングを解除して、移動用モータ32L、32Rおよび作業用モータ36を再び動作させる。即ち、制御部8は、ロボット芝刈機2による芝刈作業を再開する。また、制御部8は、動作中の光源装置やブザー(図示せず)を停止させて、異常の報知を終了する。S56の後、処理はS58へ進む。
【0080】
S54においてロボット芝刈機2がメインエリアMA内にないと判定される場合(NOの場合)、処理はS64へ進む。S64では、制御部8は、作業用モータ36および移動用モータ32L、32Rを停止させ、ロボット芝刈機2をその場に待機させる。また、制御部8は、ロボット本体4に設けられた光源装置やブザー(図示せず)を動作させて、異常が発生したことを音や光によって報知する。S64の後、処理はS66へ進む。
【0081】
S66では、制御部8は、所定の第2異常時復帰条件が成立したか否かを判定する。本実施例の第2異常時復帰条件は、作業用モータ36(図2参照)の温度が正常な温度(例えば、40℃以下の温度)となることが見込まれる条件を含む。例えば、第2異常時復帰条件は、直近に実行されたS52において作業用モータ36がオーバーヒートしたと判定されてからの経過時間が所定時間(例えば、20分)に達することを含む。第2異常時復帰条件が成立しない場合(NOの場合)、処理はS66を繰り返し実行する。従って、第2異常時復帰条件が成立しない間は、ロボット芝刈機2は、その場に待機し続ける。第2異常時復帰条件が成立する場合(YESの場合)、処理はS68へ進む。
【0082】
S68では、制御部8は、待機を終了して、移動用モータ32L、32Rおよび作業用モータ36を再び動作させる。即ち、制御部8は、ロボット芝刈機2による芝刈作業を再開する。また、制御部8は、動作中の光源装置やブザー(図示せず)を停止させて、異常の報知を終了する。
【0083】
S52において作業用モータ36がオーバーヒートしていないと判定される場合(NOの場合)、S62の後、または、S68の後、図9に示すモータ焼損回避処理は終了する。
【0084】
(実施例2)
図10に示すように、本実施例の作業ロボットは、実施例1のロボット芝刈機2と略同様の構成要素を備えるロボット芝刈機202である。ロボット芝刈機2とロボット芝刈機202の間で共通する構成要素については、共通の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
ロボット芝刈機202は、実施例1の検出部16(図4参照)の代わりに、検出部204を備える。検出部204は、モータ温度センサ206を備える点で、検出部16と相違する。モータ温度センサ206は、作業用モータ36の温度を検出して、制御部8のプロセッサ22に出力するように構成されている。ここでいう作業用モータ36の温度とは、例えば、作業用モータ36のステータの温度、作業用モータ36に設けられるホールセンサの温度、および、作業用モータ36の回転を制御するモータドライバ基板の温度を含む。
【0086】
本実施例では、制御部8は、図9に示すモータ焼損回避処理のS52において、モータ温度センサ206で検出される作業用モータ36の温度が過度に高い温度(例えば、150℃以上の温度)となる場合にも、作業用モータ36がオーバーヒートしたと判定する。また、モータ焼損回避処理のS60で用いられる第1異常時復帰条件は、モータ温度センサ206で検出される作業用モータ36の温度が正常な温度(例えば、40℃以下の温度)となることをさらに含む。また、モータ焼損回避処理のS66で用いられる第2異常時復帰条件は、モータ温度センサ206で検出される作業用モータ36の温度が正常な温度(例えば、40℃以下の温度)となることをさらに含む。
【0087】
(変形例)
作業ロボットは、ロボット芝刈機2、202以外のロボットであってもよい。例えば、作業ロボットは、埃などのゴミを収集するためのブラシおよび/または吸引機構を備えたロボット掃除機であってもよい。この場合、作業用モータ36は、ブラシおよび/または吸引機構を駆動するためのモータとして使用されてもよい。また、作業ロボットは、複数の鉄筋が交差する箇所を結束する鉄筋結束機構を備えた鉄筋結束ロボットであってもよい。この場合、作業用モータ36は、鉄筋結束機構を駆動するためのモータとして使用されてもよい。
【0088】
作業用モータ36および移動用モータ32L、32Rのうち少なくとも1つは、ブラシレスDCモータ以外のモータ(例えば、ブラシ付きDCモータ)であってもよい。
【0089】
移動部12は、キャスター28L、28Rおよび駆動輪30L、30Rを備える代わりに、左右一対のクローラを備えてもよい。移動用モータ32L、32Rは、左右一対のクローラを駆動するためのモータとして使用されてもよい。
【0090】
バッテリ18は、リチウムイオンバッテリ以外の再充電可能なバッテリ18(例えば、ニッケル水素バッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ)であってもよい。また、バッテリ18の公称容量および公称電圧は、適宜変更されてもよい。バッテリ18の公称容量は、例えば3.0Ahであってもよい。バッテリ18の公称電圧は、例えば36Vであってもよい。
【0091】
帰還用閾値Vreの設定は、適宜変更されてもよい。帰還用閾値Vreの設定は、ユーザが操作部10を介して変更可能であってもよいし、ユーザが操作部10を介して変更不能であってもよい。
【0092】
制御部8は、図5図6に示すバッテリ電圧管理処理において、S8の後、S10をスキップして、S12を実行してもよい。即ち、制御部8は、S8の後、バッテリ18の残量の多寡にかかわらず、S12以降の処理を実行するように構成されてもよい。
【0093】
制御部8は、バッテリ電圧管理処理のS10の判定処理において、帰還用閾値Vreとは異なる閾値Vth(例えば、Vth=17.6V)を用いてもよい。即ち、S10において、制御部8は、バッテリ電圧検出回路42の検出値を判定用電圧値として取得し、取得した判定用電圧値が閾値Vth以下であるか否かを判定してもよい。この例においても、図11に示すように、作業用モータ36の内部抵抗に起因する電圧降下分が回復電圧値Vdiffとして特定される。その結果、実施例と略同様に帰還用閾値Vre´が取得されるので、ロボット芝刈機2、202が帰還を開始した直後のバッテリ18の電圧値は帰還用閾値Vreの付近の値まで回復する。従って、バッテリ18の残量を適度に余らせた状態で、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させることができる。
【0094】
制御部8は、図5図6に示すバッテリ電圧管理処理において、S20でNOと判定された後、S24をスキップして、S28を実行してもよい。その結果、回復電圧値Vdiffが上限値を上回ることが許容されてもよい。あるいは、制御部8は、S18の後、S20をスキップして、S24を実行してもよい。その結果、回復電圧値Vdiffが下限値以下の値(0より大きい値)となることが許容されてもよい。あるいは、S18の後、S20、S22、S24、S26をスキップして、S28を実行してもよい。その結果、回復電圧値Vdiffが上限値を上回ることと、回復電圧値Vdiffが下限値以下の値(0より大きい値)となることの両方が許容されてもよい。
【0095】
制御部8は、バッテリ電圧管理処理のS28において、回復電圧値Vdiffに所定の係数k(例えば、k=0.8)を掛けたものを帰還用閾値Vreから減算して、帰還用閾値Vreを補正してもよい。従って、Vre´=Vre-k×Vdiffとなってもよい。
【0096】
制御部8は、バッテリ電圧管理処理において、回復電圧値Vdiffの算出および帰還用閾値Vreの補正を行うことなく、ロボット芝刈機2を充電ステーション110に帰還させるか否かを判定してもよい。例えば、制御部8は、S12で第1段階電圧値V1を取得し、S16で第2段階電圧値V2を取得した後、バッテリ電圧検出回路42の検出値(判定用電圧値)が、2×V1-V2以下であるか否かを判定してもよい。制御部8は、判定用電圧値が、2×V1-V2以下である場合(YESの場合)、S38以降の処理を実行してもよい。制御部8は、判定用電圧値が、2×V1-V2を上回る場合(NOの場合)、バッテリ電圧管理処理をスタートからやり直してもよい。この例では、補正フラグは常にオフとなっていてもよい。
【0097】
制御部8は、バッテリ電圧管理処理において、S2でNOと判定された後、S4、S6、S8をスキップして、S10を実行してもよい。その結果、移動用モータ32L、32Rが停止していない状況で(即ち、移動用モータ32L、32Rが動作している状況で)、S10以降の処理が実行されてもよい。ただし、S10、S12、S14、S16が実行される過程において、移動用モータ32L、32Rの動作状況(動作/停止)が切り替わらないことが好ましい。
【0098】
制御部8は、バッテリ電圧管理処理において、S2でYESと判定された後、S30、S32、S34をスキップして、S36を実行してもよい。その結果、移動用モータ32L、32Rが停止していない状況で(即ち、移動用モータ32L、32Rが動作している状況で)、S36以降の処理が実行されてもよい。
【0099】
実施例1、2では、制御部8が、バッテリ電圧管理処理のS12、S14、S16において、動作している状態の作業用モータ36を停止させて、バッテリ18の電圧値の変化を観測する構成となっている。即ち、作業用モータ36が、本明細書でいう対象モータとなっており、移動用モータ32L、32Rが、本明細書でいう対象外モータとなっている。別の実施例では、制御部8は、S12、S14、S16において、動作している状態の作業用モータ36および移動用モータ32L、32Rを停止させて、バッテリ18の電圧値の変化を観測する構成となっていてもよい。即ち、作業用モータ36および移動用モータ32L、32Rの両方が対象モータとなっていてもよい。さらに別の実施例では、制御部8は、S12、S14、S16において、動作している状態の移動用モータ32L、32Rを停止させて、バッテリ18の電圧値の変化を観測する構成となっていてもよい。即ち、移動用モータ32L、32Rが対象モータとなっており、作業用モータ36が対象外モータとなっていてもよい。
【0100】
制御部8は、図9に示すモータ焼損回避処理において、S58でバッテリ18の充電を開始した後、S60以降の処理を実行する代わりに、モータ焼損回避処理を終了し、実行中の芝刈運転を終了してもよい。その後、制御部8は、例えばバッテリ18が満充電となることに応じてバッテリ18の充電を終了して、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に待機させてもよい。即ち、制御部8は、ロボット芝刈機2、202に異常(作業用モータ36のオーバーヒート)が発生した後、芝刈作業を自動的に再開しない構成となっていてもよい。
【0101】
検出部16、204は、作業用モータ36のオーバーヒートに限らず、作業部14に係る様々な異常を検出可能であってもよい。ここでいう作業部14に係る異常は、例えば、作業用モータ36に過度な負荷が掛かっていることや、刈刃34が交換を要するほどに消耗したことを含む。制御部8は、作業部14に係る異常が検出部16、204によって検出される場合、モータ焼損回避処理のS54以降の処理を実行してもよい。これにより、作業部14に係る異常が発生した場合に、異常をユーザに報知したり、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させたり、ロボット芝刈機2、202をその場に待機させたりすることができる。
【0102】
第1異常時復帰条件(または第2異常時復帰条件)は、モータ電流検出回路40の検出値(即ち、作業用モータ36に供給される電流)が所定電流値以下となる状況が所定時間以上継続することを含んでもよい。
【0103】
ロボット芝刈機2、202の動作モードは、ユーザの操作とは無関係に、自動的に変更されてもよい。例えば、制御部8は、GPSを用いてロボット芝刈機2、202が芝刈作業を行っている作業エリアWAを特定して、ロボット芝刈機2、202の動作モードを、特定した作業エリアWAに対応したモードに変更してもよい。あるいは、制御部8は、作業エリアWAのマップ情報を予め記憶しており、そのマップ情報に基づいてロボット芝刈機2、202が芝刈作業を行っている作業エリアWAを特定してもよい。
【0104】
検出部16、204は、上記した異常以外にも、様々な異常を検出可能であってもよい。例えば、検出部16、204は、ロボット本体4が横転したことや、ロボット本体4が何者かによって持ち上げられたことを検出可能であってもよい。制御部8は、これらの異常が検出部16、204によって検出される場合、ロボット本体4に設けられたブザー(図示せず)を用いて、異常が発生したことをユーザに報知してもよい。
【0105】
(実施例の特徴)
1つまたはそれ以上の実施形態では、ロボット芝刈機2、202(作業ロボットの例)は、自律移動しながら作業を行う。ロボット芝刈機2、202は、作業を行う刈刃34(作業機構の例)と、ロボット芝刈機2、202を移動させる駆動輪30L、30R(移動機構の例)と、刈刃34を駆動する作業用モータ36と、駆動輪30L、30Rを駆動する移動用モータ32L、32Rと、再充電可能であり、作業用モータ36および移動用モータ32L、32Rに電力を供給するバッテリ18と、バッテリ18の電圧値を検出するバッテリ電圧検出回路42(電圧検出部の例)と、制御部8と、を備える。制御部8は、作業用モータ36(対象モータの例)について、作業用モータ36が動作している状態でのバッテリ電圧検出回路42の検出値を第1段階電圧値V1として取得し、その後に作業用モータ36を停止させ、作業用モータ36が停止している状態でのバッテリ電圧検出回路42の検出値を第2段階電圧値V2として取得する二段階取得処理(図5のS12、S14、S16参照)と、第1段階電圧値V1と第2段階電圧値V2に基づいて、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるか否かを判定する帰還判定処理(図6のS36参照)と、を実行可能に構成されている。
【0106】
作業用モータ36が動作している状況では、作業用モータ36が停止している状況と比較して、作業用モータ36の内部抵抗がある分、バッテリ18の電圧値は低下する。このため、ロボット芝刈機2、202を帰還させるタイミングを適切に特定するには、作業用モータ36の動作状況ごとにバッテリ電圧検出回路42の検出値を取得することが好ましい。上記の構成によれば、ロボット芝刈機2、202の制御部8は、作業用モータ36の動作状況ごとにバッテリ電圧検出回路42の検出値を取得することができるので、ロボット芝刈機2、202を帰還させるタイミングを適切に特定することができる。即ち、ロボット芝刈機2、202を帰還させるタイミングが遅くなりすぎたり、早くなりすぎたりすることを抑制できる。このため、ロボット芝刈機2、202が帰還している途中にバッテリ18が残量切れとなることを抑制しつつ、ロボット芝刈機2、202による作業が頻繁に中断されることを抑制できる。これにより、ロボット芝刈機2、202による作業を円滑に進行させることができる。
【0107】
1つまたはそれ以上の実施形態では、制御部8は、バッテリ電圧検出回路42の検出値を(第1)判定用電圧値として取得し、(第1)判定用電圧値が帰還用閾値Vre(または、閾値Vth)(所定値の例)以下である場合に二段階取得処理を実行し、(第1)判定用電圧値が帰還用閾値Vre(または、閾値Vth)を上回る場合には二段階取得処理を実行しないように構成される。
【0108】
バッテリ電圧検出回路42の検出値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行するまでもなく、ロボット芝刈機2、202を帰還させる必要がないことは明白である。バッテリ18の電圧値がある程度高い場合にまで二段階取得処理が実行されると、作業用モータ36が不要に一時停止されるので、ロボット芝刈機2、202による作業が円滑に進行しない可能性がある。上記の構成によれば、制御部8は、バッテリ18の電圧値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行しないように構成される。これにより、作業用モータ36が不要に中断されることを抑制できるので、ロボット芝刈機2、202による作業を円滑に進行させることができる。
【0109】
1つまたはそれ以上の実施形態では、制御部8は、所定の帰還用閾値Vreを記憶している。制御部8は、第1段階電圧値V1と第2段階電圧値V2に基づいて帰還用閾値Vreを補正する閾値補正処理(図5のS18からS28参照)をさらに実行可能に構成される。帰還判定処理は、バッテリ電圧検出回路42の検出値を(第2)判定用電圧値として取得し、(第2)判定用電圧値が補正後の帰還用閾値Vre´以下であるか否かに応じて、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるか否かを判定する処理(図6のS36参照)を含む。
【0110】
上記の構成によれば、制御部8は、第1段階電圧値V1と第2段階電圧値V2のみならず、所定の帰還用閾値Vreにも基づいて、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるか否かを判定する。これにより、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるタイミングをより適切に特定することができる。
【0111】
1つまたはそれ以上の実施形態では、制御部8は、バッテリ電圧検出回路42の検出値を(第3)判定用電圧値として取得し、(第3)判定用電圧値が帰還用閾値Vre以下である場合に二段階取得処理を実行し、(第3)判定用電圧値が帰還用閾値Vreを上回る場合には二段階取得処理を実行しないように構成される。
【0112】
バッテリ電圧検出回路42の検出値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行するまでもなく、ロボット芝刈機2、202を帰還させる必要がないことは明白である。バッテリ18の電圧値がある程度高い場合にまで二段階取得処理が実行されると、作業用モータ36が不要に一時停止されるので、ロボット芝刈機2、202による作業が円滑に進行しない可能性がある。上記の構成によれば、制御部8は、バッテリ18の電圧値がある程度高い場合、二段階取得処理を実行しないように構成される。これにより、作業用モータ36が不要に中断されることを抑制できるので、ロボット芝刈機2、202による作業を円滑に進行させることができる。
【0113】
1つまたはそれ以上の実施形態では、閾値補正処理において、制御部8は、第2段階電圧値V2から第1段階電圧値V1を減算して得られる回復電圧値Vdiffに基づいて、帰還用閾値Vreを補正する。
【0114】
上記の構成によれば、簡素な手段によって、帰還用閾値Vreを補正することができる。
【0115】
1つまたはそれ以上の実施形態では、閾値補正処理において、制御部8は、帰還用閾値Vreから回復電圧値Vdiffを減算することにより、帰還用閾値Vreを補正する。
【0116】
作業用モータ36が、ロボット芝刈機2、202が作業を行っている間は動作して、ロボット芝刈機2、202が充電ステーション110に帰還している間は停止するように構成されることがある。この場合、ロボット芝刈機2、202が作業を終了して帰還を開始する際に、回復電圧値Vdiffだけバッテリ18の電圧値が回復することが予想される。このため、ロボット芝刈機2、202を帰還させるか否かを判定する際には、その後に回復電圧値Vdiffだけバッテリ18の電圧値が回復することを考慮することが好ましい。上記の構成によれば、ロボット芝刈機2、202を帰還させるか否かを判定する際に、その後に回復電圧値Vdiffだけバッテリ18の電圧値が回復することを考慮することができる。従って、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるタイミングを適切に特定することができる。
【0117】
1つまたはそれ以上の実施形態では、閾値補正処理において、制御部8は、回復電圧値Vdiffが所定の上限値(例えば0.5V)以上である場合、帰還用閾値Vreから回復電圧値Vdiffを減算する代わりに、帰還用閾値Vreから上限値を減算する。
【0118】
閾値補正処理で算出された回復電圧値Vdiffが大きい場合、ロボット芝刈機2、202が作業を終了して帰還を開始するタイミングでのバッテリ18の電圧値の回復量が、算出された回復電圧値Vdiffを下回ることがある。このため、閾値補正処理で算出された回復電圧値Vdiffが大きい場合にまで帰還用閾値Vreから回復電圧値Vdiffを減算して補正を行うと、ロボット芝刈機2、202が帰還を開始するタイミングでのバッテリ18の電圧値が、予想以上に小さくなってしまう。その結果、ロボット芝刈機2、202が帰還している途中にバッテリ18が残量切れとなるおそれがある。上記の構成によれば、閾値補正処理で算出された回復電圧値Vdiffが上限値を上回る場合、帰還用閾値Vreから回復電圧値Vdiffを減算した値ではなく、帰還用閾値Vreから上限値を減算した値が、補正後の帰還用閾値Vre´となる。これにより、ロボット芝刈機2、202が帰還を開始するタイミングでのバッテリ18の電圧値が予想以上に小さくなることを抑制できる。これにより、ロボット芝刈機2、202が帰還している途中にバッテリ18が残量切れとなることを抑制できる。
【0119】
1つまたはそれ以上の実施形態では、閾値補正処理において、制御部8は、回復電圧値Vdiffが所定の下限値(例えば0.1V)以下である場合、補正前の帰還用閾値Vreを補正後の帰還用閾値Vre´とする。
【0120】
バッテリ18の電圧値が帰還用閾値Vreの付近まで低下した状態で二段階取得処理および閾値補正処理が実行された時に、算出された回復電圧値Vdiffが小さい場合がある。この場合、二段階取得処理において停止された作業用モータ36を再び動作させて、ロボット芝刈機2、202の作業を再開したとしても、その後すぐにロボット芝刈機2、202が帰還を開始するタイミングが到来する。従って、作業が再開されてから帰還が開始されるまでのロボット芝刈機2、202の動作は、作業の進行具合に変化を及ぼす程のものではなく、不要な動作と考えられる。ロボット芝刈機2、202の不要な動作が行われる時間が長いと、ロボット芝刈機2、202の作業効率を低下させてしまう。上記の構成によれば、閾値補正処理において算出される回復電圧値Vdiffが小さい場合、補正後の帰還用閾値Vre´が、補正前の帰還用閾値Vreと同値になる。即ち、補正後の帰還用閾値Vre´は、帰還用閾値Vreから回復電圧値Vdiffを減算した値よりも大きい値となる。その結果、ロボット芝刈機2、202が帰還を開始するタイミングが早まるので、ロボット芝刈機2、202の不要な動作が行われる時間を短縮することができる。これにより、ロボット芝刈機2、202の作業効率を向上させることができる。
【0121】
1つまたはそれ以上の実施形態では、制御部8は、移動用モータ32L、32R(対象外モータの例)が停止している状況で、二段階取得処理を実行する。
【0122】
二段階取得処理は、作業用モータ36の動作状況の変化に起因するバッテリ18の電圧値の変化を観測する処理である。ただし、バッテリ18の電圧値は、移動用モータ32L、32Rの動作状況によっても変化し得る。従って、二段階取得処理の実行中に移動用モータ32L、32Rの動作状況が変化すると、作業用モータ36の動作状況の変化に起因するバッテリ18の電圧値の変化を正しく観測できない可能性がある。上記の構成によれば、二段階取得処理の実行中に移動用モータ32L、32Rの動作状況が変化しないので、作業用モータ36の動作状況の変化に起因するバッテリ18の電圧値の変化を正しく観測できる。
【0123】
1つまたはそれ以上の実施形態では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rが停止している状況で、帰還判定処理を実行する。
【0124】
二段階取得処理と帰還判定処理の間で移動用モータ32L、32Rの動作状況が揃っていないと、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるタイミングを適切に特定できない可能性がある。上記の構成によれば、二段階取得処理と帰還判定処理の間で移動用モータ32L、32Rの動作状況が揃うので、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるタイミングを適切に特定することができる。
【0125】
1つまたはそれ以上の実施形態では、制御部8は、移動用モータ32L、32Rが動作している状態が所定時間(例えば2秒)継続すると、移動用モータ32L、32Rを停止させる。
【0126】
ロボット芝刈機2、202を帰還させるタイミングが特定されるまでの間、二段階取得処理(または帰還判定処理)は、適度な時間間隔で繰り返し実行されることが好ましい。ただし、移動用モータ32L、32Rが停止している状況で二段階取得処理(または帰還判定処理)が実行される構成では、移動用モータ32L、32Rが動作している間は、二段階取得処理(または帰還判定処理)を実行できない。上記の構成によれば、移動用モータ32L、32Rが動作している状態が所定時間継続すると、移動用モータ32L、32Rが強制的に停止される。これにより、二段階取得処理(または帰還判定処理)を、適度な時間間隔で繰り返し実行することができる。
【0127】
1つまたはそれ以上の実施形態では、作業用モータ36は対象モータである。移動用モータ32L、32Rは対象外モータである。
【0128】
作業用モータ36は、ロボット芝刈機2、202が作業を行っている間は動作して、ロボット芝刈機2、202が充電ステーション110に帰還している間は停止していることが予想される。従って、ロボット芝刈機2、202を帰還させるタイミングを特定する上で、作業用モータ36の動作状況ごとにバッテリ18の電圧値を取得する必要性は高い。一方、移動用モータ32L、32Rは、ロボット芝刈機2、202が作業を行っている間も、ロボット芝刈機2、202が充電ステーション110に帰還している間も、基本的に動作していることが予想される。従って、ロボット芝刈機2、202を帰還させるタイミングを特定する上で、移動用モータ32L、32Rの動作状況ごとにバッテリ18の電圧値を取得する必要性は低い。それにも関わらず移動用モータ32L、32Rの動作状況ごとにバッテリ18の電圧値を取得する構成を採用すると、制御部8の処理負荷が不要に増大してしまう。上記の構成によれば、作業用モータ36の動作状況ごとにバッテリ18の電圧値を取得する一方で、移動用モータ32L、32Rの動作状況ごとにはバッテリ18の電圧値を取得しない。従って、制御部8の処理負荷を低減しつつ、ロボット芝刈機2、202を充電ステーション110に帰還させるタイミングを適切に特定することができる。
【0129】
1つまたはそれ以上の実施形態では、作業機構は、芝生を刈り込むための刈刃34を備える。作業ロボットは、自律移動可能なロボット芝刈機2、202として機能する。
【0130】
上記の構成によれば、ロボット芝刈機2、202を適切なタイミングで充電ステーション110に帰還させることができる。
【符号の説明】
【0131】
2:ロボット芝刈機、4:ロボット本体、6:電源部、8:制御部、10:操作部、12:移動部、14:作業部、16:検出部、18:バッテリ、20:充電インターフェース、22:プロセッサ、24:メモリ、26:電源回路、28L:キャスター、28R:キャスター、30L:駆動輪、30R:駆動輪、32L:移動用モータ、32R:移動用モータ、34:刈刃、36:作業用モータ、38:ワイヤ検出センサ、40:モータ電流検出回路、42:バッテリ電圧検出回路、100:敷地、102:家屋、104:池、106:道路、108:塀、110:充電ステーション、112:ワイヤ、202:ロボット芝刈機、204:検出部、206:モータ温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11