(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025144423
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20250925BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20250925BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20250925BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250925BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250925BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250925BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250925BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60L3/00 J
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044184
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 友和
(72)【発明者】
【氏名】飯島 政善
(72)【発明者】
【氏名】草野 大
(72)【発明者】
【氏名】金田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓貴
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 義高
(72)【発明者】
【氏名】西村 信也
(72)【発明者】
【氏名】永井 智裕
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB08
3D202BB16
3D202CC55
3D202DD29
3D202FF04
3D202FF12
3D202FF13
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CA08
5H125EE16
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】永久磁石形のモータジェネレータで構成された走行用の動力源とインバータとを接続するケーブルの焼損の発生を抑止するとともに、退避走行の走行距離の延長を図ることができる、車両の制御装置を提供する。
【解決手段】電動機MGは、永久磁石形のモータジェネレータで構成され且つエンジン走行中は連れ回される。電子制御装置90は、(a)エンジン制御ECU92と、電動機MGを駆動するMG制御用インバータ50を制御し且つエンジン制御ECU92とは異なるMG制御ECU94と、を含み、(b)MG制御ECU94が故障したとエンジン制御ECU92が判定した場合には、電動機MGを非駆動状態にするとともにエンジン12による退避走行を実行し、(c)電動機MGとMG制御用インバータ50とを接続するMGケーブル60の温度であるケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過する場合には、退避走行を中止させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の第1の動力源と、永久磁石形のモータジェネレータで構成され且つ前記第1の動力源を用いた走行中において非駆動状態の場合に連れ回される走行用の第2の動力源と、を備える車両の、制御装置であって、
第1の制御装置部と、前記第2の動力源を駆動するインバータを制御し且つ前記第1の制御装置部とは異なる第2の制御装置部と、を含み、
前記第2の制御装置部が故障したと前記第1の制御装置部が判定した場合には、前記第2の動力源を非駆動状態にするとともに前記第1の動力源による退避走行を実行し、
前記第2の動力源と前記インバータとを接続するケーブルの温度が所定の判定温度を超過する場合には、前記退避走行を中止させる
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記ケーブルは、前記第2の動力源の相数に対応して複数のケーブル線を含み、
前記ケーブルの温度が前記判定温度を超過するか否かは、複数の前記ケーブル線のそれぞれにおいて判定される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記ケーブルは、前記第2の動力源の相数に対応して複数のケーブル線を含み、
前記ケーブルの温度が前記判定温度を超過するか否かは、複数の前記ケーブル線の温度のうちの一部に基づいて判定される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
複数の前記ケーブル線の温度をそれぞれ検出する温度センサのうちの一部が故障した場合に、前記ケーブルの温度が前記判定温度を超過するか否かが、前記ケーブル線の温度のうち故障していない前記温度センサで検出された一部に基づいて判定される
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
走行用の第1の動力源と、永久磁石形のモータジェネレータで構成された走行用の第2の動力源と、を備える車両の、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用の動力源としてエンジン及びモータジェネレータを備える車両であって、エンジンと一対の駆動輪との間の動力伝達経路にモータジェネレータが動力伝達可能に接続され且つ前記動力伝達経路に自動変速機が接続されているものが知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。特許文献1に記載の車両の制御装置では、動力源をエンジンとする退避走行中において、モータジェネレータの回転速度が所定の閾値以上となった場合には、自動変速機がアップシフトされてモータジェネレータの回転速度の低下が図られる。自動変速機がアップシフトされてもモータジェネレータの回転速度が所定の閾値以上となっている状態が所定の時間を超過する場合には、退避走行が停止させられる。これにより、モータジェネレータが故障に至るような昇温が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータジェネレータを駆動するインバータを制御するECU(Electronic Control Unit)が故障した場合には、故障したECUの機能を停止させてモータジェネレータを非駆動状態にすることで永久磁石形のモータジェネレータが故障に至る昇温を抑制することが考えられる。この場合、モータジェネレータを非駆動状態に制御しているインバータでの短絡故障が検出できなくなってしまう。そのため、ECUの故障とともにインバータでの短絡故障が二重に発生した場合には、過電流が流れることでモータジェネレータとインバータとを接続するケーブルが焼損するおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、永久磁石形のモータジェネレータで構成された走行用の動力源とインバータとを接続するケーブルの焼損の発生を抑止するとともに、退避走行の走行距離の延長を図ることができる、車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、走行用の第1の動力源と、永久磁石形のモータジェネレータで構成され且つ前記第1の動力源を用いた走行中において非駆動状態の場合に連れ回される走行用の第2の動力源と、を備える車両の、制御装置であって、(a)第1の制御装置部と、前記第2の動力源を駆動するインバータを制御し且つ前記第1の制御装置部とは異なる第2の制御装置部と、を含み、(b)前記第2の制御装置部が故障したと前記第1の制御装置部が判定した場合には、前記第2の動力源を非駆動状態にするとともに前記第1の動力源による退避走行を実行し、(c)前記第2の動力源と前記インバータとを接続するケーブルの温度が所定の判定温度を超過する場合には、前記退避走行を中止させることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の制御装置によれば、(a)第1の制御装置部と、前記第2の動力源を駆動するインバータを制御し且つ前記第1の制御装置部とは異なる第2の制御装置部と、が含まれ、(b)前記第2の制御装置部が故障したと前記第1の制御装置部が判定した場合には、前記第2の動力源が非駆動状態にされるとともに前記第1の動力源による退避走行が実行され、(c)前記第2の動力源と前記インバータとを接続するケーブルの温度が所定の判定温度を超過する場合には、前記退避走行が中止される。第2の動力源である永久磁石形のモータジェネレータが退避走行中に連れ回される場合、第2の動力源に設けられたステータコイルには逆起電力が発生する。この場合、インバータのスイッチング素子のうちいずれかで短絡故障が発生すると、ケーブルには過電流が流れるおそれがある。第2の動力源及びインバータは冷却油や冷却ファン等で冷却されやすい構造にできる一方、それらに比較してケーブルは冷却しにくい構造とせざるを得ない。ケーブルの温度が所定の判定温度以下の場合には退避走行が継続されて退避走行の走行距離の延長が図られるとともに、ケーブルの温度が所定の判定温度を超過する場合には退避走行が中止されてケーブルの焼損の発生が抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係る電子制御装置を備える車両の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す、MG制御用インバータ、バッテリ、電動機、MGケーブル、電子制御装置について説明する図である。
【
図3】
図1に示す電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
【
図4】本発明の実施例2に係る電子制御装置を備える車両の概略構成図である。
【
図5】
図4に示す電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0010】
図1は、本発明の実施例1に係る電子制御装置90を備える車両10の概略構成図である。
【0011】
車両10は、走行用の動力源であるエンジン12と、走行用の動力源である電動機MGと、を備える。車両10は、エンジン12と一対の駆動輪14との間の動力伝達経路PTに動力伝達装置16を備える。動力伝達装置16は、エンジン12側から順に、クラッチK0、電動機MG、クラッチWSC、自動変速機26、デフ30が設けられ、これらは周知の構成である。また、車両10は、油圧制御回路40、MG制御用インバータ50、バッテリ70、及び電子制御装置90を備える。
【0012】
エンジン12は、周知の内燃機関であって、本発明における「第1の動力源」に相当する。電動機MGは、電動機機能と発電機機能とを有する永久磁石形のモータジェネレータで構成されている。例えば、電動機MGは、表面磁石形或いは埋込磁石形の永久磁石がロータに設けられた三相同期電動機である。電動機MGは、バッテリ70に蓄えられた電力によりMG制御用インバータ50を介して回転駆動される。MGケーブル60は、電動機MGのステータコイルCs(
図2参照)と、ステータコイルCsに対して電力を授受するMG制御用インバータ50と、の間を電気的に接続している。電動機MGは、本発明における「第2の動力源」に相当する。MGケーブル60は、本発明における「ケーブル」に相当する。
【0013】
油圧制御回路40は、例えば不図示のオイルポンプから吐出された作動油OILの油圧を元圧として、動力伝達装置16の各部に必要な作動油OILを供給することで動力伝達装置16の各部を制御する。動力伝達装置16の各部を制御には、例えばクラッチK0の断接制御、クラッチWSCの断接制御、自動変速機26の変速制御、潤滑油の供給量の制御などが含まれる。
【0014】
MG制御用インバータ50は、電動機MGとバッテリ70との間に設けられ、電子制御装置90によって制御されることにより直流を交流に変換したり交流を直流に変換したりする電源回路である。MG制御用インバータ50は、本発明における「インバータ」に相当する。
【0015】
バッテリ70は、充放電可能な二次電池である。バッテリ70は、電動機MGを駆動するための電力を供給したり、回生により電動機MGで発電された電力を充電したりするのに用いられる。
【0016】
電子制御装置90は、例えばエンジン12の作動状態(=運転状態或いは停止状態)を主に制御するエンジン制御ECU92と、MG制御用インバータ50を介して電動機MGの作動状態(=駆動状態或いは非駆動状態)を主に制御するMG制御ECU94と、油圧制御回路40を制御する油圧制御ECU96と、それらを協調させて制御する統合ECU98と、を含む。統合ECU98は、例えば運転者により要求された要求駆動トルクTrdem[N・m]が一対の駆動輪14に伝達されるように、エンジン制御ECU92、MG制御ECU94、油圧制御ECU96を介してエンジン12、電動機MG、及び動力伝達装置16の作動状態をそれぞれ制御する。例えば、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc[%]及び車速V[km/h]に基づいて、運転者が一対の駆動輪14に対して要求した要求駆動トルクTrdemが算出される。電子制御装置90内のエンジン制御ECU92、MG制御ECU94、油圧制御ECU96、統合ECU98の各ECU間は、例えば周知のCAN(Controller AreaNetwork)通信回路を用いた通信ネットワークにそれぞれ接続されている。これにより、各ECUは互いにデータの入出力が可能となっている。各ECUは、例えば所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。なお、電子制御装置90は、本発明における「制御装置」に相当する。
【0017】
電子制御装置90には、各種センサ(例えばアクセル開度センサ80、車速センサ82など)による検出値に基づく各種信号(例えば、アクセル開度θacc、車速Vなど)が、それぞれ入力される。エンジン制御ECU92には、例えばMGケーブル60の温度を検出する温度センサ86からケーブル温度THcb[℃]が入力される。ケーブル温度THcbは、MGケーブル60の温度である。なお、後述するように、MGケーブル60は、U相ケーブル線60u,V相ケーブル線60v,W相ケーブル線60wの3本のケーブル線を含み、ケーブル温度THcbは、これら3本のケーブル線のそれぞれの温度であるケーブル線温度THcbu[℃],THcbv[℃],THcbw[℃]を代表する温度である。温度センサ86は、本発明における「温度センサ」に相当する。エンジン制御ECU92からは、エンジン12を運転制御するためのエンジン制御信号Seが出力される。MG制御ECU94には、例えばMG制御用インバータ50の正極線と負極線との間の電圧を検出する電圧センサ84からインバータ電圧Vinv[V](
図2参照)が入力される。MG制御ECU94からは、電動機MGを回転制御するためのMG制御信号Smgが出力される。油圧制御ECU96からは、クラッチK0の断接制御、クラッチWSCの断接制御、自動変速機26の変速制御、潤滑油の供給量の制御などをするための油圧制御信号Spが出力される。
【0018】
車両10においては、電動機MGのみを動力源に用いて走行するBEV(Battery Electric Vehicle)走行を実現するBEV走行モードと、エンジン12及び電動機MGを動力源に用いて走行するHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行を実現するHEV走行モードと、エンジン12のみを動力源に用いて走行するエンジン走行を実現するエンジン走行モードと、が選択的に切り替えられる。BEV走行中では、クラッチK0が解放状態とされ且つクラッチWSCが係合状態とされる。HEV走行中及びエンジン走行中では、クラッチWSC及びクラッチWSCの両方が係合状態とされる。エンジン走行中は、電動機MGのロータはエンジン12から出力された動力により回転させられる。すなわち、電動機MGは、非駆動状態の場合でもエンジン走行中は連れ回される構成である。「非駆動状態」とは、MG制御用インバータ50により回転駆動するようには、電動機MGが制御されていない状態である。具体的には、後述するMG制御用インバータ50が備えるスイッチング素子56a~56fは、全てオフ状態となるように制御される。
【0019】
図2は、
図1に示す、MG制御用インバータ50、バッテリ70、電動機MG、MGケーブル60、電子制御装置90について説明する図である。
【0020】
MG制御用インバータ50は、スイッチング素子56a~56f、ダイオード58a~58fを備える、周知の構成である。以下、スイッチング素子56a~56fを特に区別しない場合には、スイッチング素子56と記すこととする。MG制御用インバータ50は、バッテリ70からの電力が供給される正極線と負極線との間において、一対のスイッチング素子56a,56b、一対のスイッチング素子56c,56d、及び一対のスイッチング素子56e,56fがそれぞれ直列に接続されている。スイッチング素子56は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、パワーMOSFETなどであり、本実施例ではNチャネル型のパワーMOSFETである。スイッチング素子56a~56fには、ダイオード58a~58fがそれぞれ並列に接続されている。
【0021】
MG制御用インバータ50における上アーム52は、正極線から負荷である電動機MGへ電流を供給する回路であり、スイッチング素子56a,56c,56e及びダイオード58a,58c,58eで構成されている。MG制御用インバータ50における下アーム54は、負荷である電動機MGから負極線へ電流を引き込む回路であり、スイッチング素子56b,56d,56f及びダイオード58b,58d,58fで構成されている。
【0022】
スイッチング素子56aとスイッチング素子56bとの接続点、スイッチング素子56cとスイッチング素子56dとの接続点、及びスイッチング素子56eとスイッチング素子56fとの接続点が、電動機MGにおけるU相、V相、W相の接続端子にそれぞれ電気的に接続されている。本実施例では、電動機MGの相数は、「3」である。例えば、MGケーブル60は、電動機MGの相数に対応して3本のケーブル線であるU相ケーブル線60u,V相ケーブル線60v,W相ケーブル線60wを含む。以下、本実施例において、MGケーブル60のU相ケーブル線60u,V相ケーブル線60v,W相ケーブル線60wを特に区別しない場合には、単に「3本のケーブル線」と記すこととする。3本のケーブル線は、MG制御用インバータ50と電動機MGにおけるU相、V相、W相との電気的な接続をそれぞれ行うものである。なお、「3本のケーブル線」は、本発明における「複数のケーブル線」に相当する。
【0023】
温度センサ86は、3本のケーブル線のそれぞれに設けられた温度センサ86u,86v,86wを含む。温度センサ86u,86v,86wで検出された温度を、それぞれケーブル線温度THcbu,THcbv,THcbwということとする。
【0024】
電子制御装置90は、MG制御ECU94が故障しているか否かを判定する。例えば、MG制御ECU94とは異なる他のECU(本実施例では、エンジン制御ECU92)は、CAN通信回路を介してMG制御ECU94から受け取るデータが異常である場合には、MG制御ECU94が故障していると判定する。MG制御ECU94が故障していると判定されると、電子制御装置90は、MG制御ECU94の機能を停止させて電動機MGを非駆動状態にするとともに、エンジン走行モードでの退避走行が可能となるように制御する。エンジン制御ECU92は、本発明における「第1の制御装置部」に相当し、MG制御ECU94は、本発明における「第2の制御装置部」に相当する。
【0025】
ここから、従来例について述べる。従来、MG制御ECU94の機能が作動している場合には、MG制御ECU94は、電動機MGを駆動状態に制御している場合においてMG制御用インバータ50のスイッチング素子56のうちいずれかで短絡故障が発生している否かを判定する。「短絡故障」とは、常時オン状態となる故障である。「駆動状態」とは、MG制御用インバータ50により回転駆動するように、電動機MGが制御されている状態である。駆動状態では、一対のスイッチング素子56a,56b、一対のスイッチング素子56c,56d、及び一対のスイッチング素子56e,56fのそれぞれにおいて上アーム52側及び下アーム54側の両方が同時にオン状態にならないように制御されつつ、MG制御用インバータ50により三相交流が生成される。スイッチング素子56のうちいずれかで短絡故障が発生すると、一対のスイッチング素子56a,56b、一対のスイッチング素子56c,56d、及び一対のスイッチング素子56e,56fのいずれかにおいて上アーム52側及び下アーム54側の両方が同時にオン状態となるため、インバータ電圧Vinvが低下する。例えば、MG制御ECU94は、電動機MGが駆動状態に制御されている場合においてインバータ電圧Vinvが判定電圧Vinv_jdg未満となると、短絡故障が発生していると判定する。判定電圧Vinv_jdgは、短絡故障の発生を判定するために、実験的に或いは設計的に予め定められた所定の判定値である。
【0026】
MG制御ECU94の機能が停止している場合には、電動機MGが非駆動状態に制御されてスイッチング素子56が全てオフ状態とされる。そのため、インバータ電圧Vinvが低下することはなく、短絡故障が発生しているか否かを判定することができない。これにより、エンジン走行モードによる退避走行を電子制御装置90が実行した場合には、MG制御用インバータ50での短絡故障によりMGケーブル60の焼損が発生するおそれがある一方、MGケーブル60の焼損の発生を抑止するには、電子制御装置90は退避走行を不実行とするしかなかった。
【0027】
本実施例に戻る。エンジン走行モードでの退避走行中において、エンジン制御ECU92は、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdg[℃]を超過しているか否かを判定する。判定温度THcb_jdgは、MGケーブル60が焼損しない温度として、実験的に或いは設計的に予め定められた所定の温度である。ケーブル温度THcbは、本発明における「ケーブルの温度」に相当し、判定温度THcb_jdgは、本発明における「所定の判定温度」に相当する。
【0028】
退避走行中においては、電動機MGのロータが回転させられることでステータコイルCsには逆起電力が発生する。例えば、スイッチング素子56aで短絡故障が発生した場合には、
図2に一点鎖線で示すように、この逆起電力によりMGケーブル60に過電流が流れることでMGケーブル60が焼損するおそれがある。この場合、U相ケーブル線60uに流れる電流は、V相ケーブル線60vに流れる電流とW相ケーブル線60wに流れる電流との合計となっている。このように、スイッチング素子56のうちいずれで短絡故障が発生したかによって、3本のケーブル線のそれぞれに流れる電流は不均等となる。
【0029】
例えば、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過するか否かは、ケーブル線温度THcbu,THcbv,THcbwのそれぞれにおいて判定される。スイッチング素子56のうち短絡故障が発生したものが異なることにより、3本のケーブル線のそれぞれに流れる電流が不均等となるためである。好適には、ケーブル線温度THcbu,THcbv,THcbwは、3本のケーブル線のそれぞれにおいて、最も耐熱性が低い部位で検出されたものである。最も耐熱性が低い部位は、実験的に或いは設計的に予め定められた所定の部位である。
【0030】
例えば、温度センサ86uが故障した場合には、ケーブル線温度THcbv及びケーブル線温度THcbwに基づいて、ケーブル線温度THcbuが算出され、その算出されたケーブル線温度THcbuが判定温度THcb_jdgを超過するか否かが判定されても良い。例えば、U相ケーブル線60uに流れる電流がV相ケーブル線60vに流れる電流とW相ケーブル線60wに流れる電流との合計となっているものとして、ケーブル線温度THcbv及びケーブル線温度THcbwと、ケーブル線温度THcbuと、の間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップに、実際のケーブル線温度THcbv及びケーブル線温度THcbwを適用することで、ケーブル線温度THcbuが算出可能である。
【0031】
例えば、温度センサ86u及び温度センサ86vが故障した場合には、ケーブル線温度THcbwに基づいて、ケーブル線温度THcbuが算出され、その算出されたケーブル線温度THcbuが判定温度THcb_jdgを超過するか否かが判定されても良い。例えば、U相ケーブル線60uに流れる電流がW相ケーブル線60wに流れる電流の2倍となっているものとして、ケーブル線温度THcbwとケーブル線温度THcbuとの間の関係が実験的に或いは設計的に予め定められて記憶されたマップに、実際のケーブル線温度THcbwを適用することで、ケーブル線温度THcbuが算出可能である。
【0032】
このように、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過するか否かは、3本のケーブル線の温度のうちの一部に基づいて判定されても良い。なお、温度センサ86u,86v,86wによってケーブル線温度THcbu、THcbv、THcbwがそれぞれ検出された場合には、ケーブル線温度THcbuは、実際の温度に対し誤差がない。これに比較して、ケーブル線温度THcbv及びケーブル線温度THcbwに基づいて算出されたケーブル線温度THcbuは実際の温度に対し誤差があり、ケーブル線温度THcbwのみに基づいて算出されたケーブル線温度THcbuは実際の温度に対し誤差が更に大きい。MGケーブル60の焼損の発生を確実に抑止するには、ケーブル線温度THcbuと実際の温度との誤差が大きいほど、判定温度THcb_jdgを下げる必要がある。
【0033】
エンジン走行モードでの退避走行中において、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過しているとエンジン制御ECU92が判定すると、電子制御装置90は、退避走行を中止して車両10を停止させる。
【0034】
図3は、
図1に示す電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
【0035】
まず、ステップ(以下、ステップを省略する)S10において、MG制御ECU94が故障しているか否かが判定される。S10の判定がNOの場合、リターンとなる。S10の判定がYESの場合、S20において、電動機MGが非駆動状態とされ、エンジン走行モードによる退避走行が実行される。好適には、この場合、退避走行が開始されたことが運転者に報知される。S20の実行後、S30において、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過しているか否かが判定される。S30の判定がNOの場合、S20が再度実行される、すなわち退避走行が継続される。好適には、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgに接近して超過しそうな場合、退避走行が中止される可能性があることが運転者に報知される。S30の判定がYESの場合、S40において、退避走行が中止され車両10が停止させられる。好適には、この場合、退避走行が中止されたことが運転者に報知される。S40の実行後、終了となる。
【0036】
本実施例によれば、(a)電子制御装置90には、エンジン制御ECU92と、電動機MGを駆動するMG制御用インバータ50を制御し且つエンジン制御ECU92とは異なるMG制御ECU94と、が含まれ、(b)MG制御ECU94が故障したとエンジン制御ECU92が判定した場合には、電動機MGが非駆動状態にされるとともにエンジン走行モードによる退避走行が実行され、(c)ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過する場合には、退避走行が中止させられる。永久磁石形のモータジェネレータで構成された電動機MGが退避走行中に連れ回される場合、ステータコイルCsには逆起電力が発生する。この場合、スイッチング素子56のうちいずれかで短絡故障が発生すると、MGケーブル60には過電流が流れるおそれがある。電動機MG及びMG制御用インバータ50は冷却油や冷却ファン等で冷却されやすい構造にできる一方、それらに比較してMGケーブル60は冷却しにくい構造とせざるを得ない。ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdg以下の場合には退避走行が継続されて退避走行の走行距離の延長が図られるとともに、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過する場合には退避走行が中止されてMGケーブル60の焼損の発生が抑止される。
【0037】
本実施例によれば、(a)MGケーブル60は、電動機MGの相数に対応して3本のケーブル線を含み、(b)ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過するか否かは、3本のケーブル線のそれぞれにおいて判定される。短絡故障の発生により3本のケーブル線に流れる電流が不均等であっても3本のケーブル線のそれぞれにおいて判定されることで、3本のケーブル線の全てにおいて焼損の発生が抑止される。
【0038】
本実施例によれば、(a)MGケーブル60は、電動機MGの相数に対応して3本のケーブル線を含み、(b)温度センサ86uが故障した場合や温度センサ86u及び温度センサ86vが故障した場合には、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過するか否かは、故障していない温度センサ86で検出された3本のケーブル線の温度のうちの一部に基づいて判定される。このように、3本のケーブル線の温度を検出する温度センサ86のうちの一部が故障した場合であっても、残りのケーブル線で検出された温度に基づいて判定することができる。
車両110は、走行用の動力源である前輪駆動電動機MGfと後輪駆動電動機MGrとを備える。前輪駆動電動機MGfは、前輪用出力軸28f及び前輪用デフ30fを介して一対の前輪14fに接続され、これらは周知の構成である。後輪駆動電動機MGrは、後輪用出力軸28r及び後輪用デフ30rを介して一対の後輪14rに接続され、これらは周知の構成である。また、車両110は、MGf制御用インバータ50f、MGr制御用インバータ50r、バッテリ70、及び電子制御装置190を備える。
前輪駆動電動機MGf及び後輪駆動電動機MGrは、前述の実施例1における電動機MGと同様の構成であって、電動機機能と発電機機能とを有する永久磁石形のモータジェネレータでそれぞれ構成されている。前輪駆動電動機MGf及び後輪駆動電動機MGrは、バッテリ70に蓄えられた電力によりMGf制御用インバータ50f及びMGr制御用インバータ50rを介してそれぞれ回転駆動される。MGfケーブル60fは、前輪駆動電動機MGfにおける不図示のステータコイルと、そのステータコイルに対して電力を授受するMGf制御用インバータ50fと、の間を電気的に接続している。前輪駆動電動機MGfは、本発明における「第2の動力源」に相当する。MGfケーブル60fは、本発明における「ケーブル」に相当する。MGrケーブル60rは、後輪駆動電動機MGrにおける不図示のステータコイルと、そのステータコイルに対して電力を授受するMGr制御用インバータ50rと、の間を電気的に接続している。後輪駆動電動機MGrは、本発明における「第1の動力源」に相当する。例えば前述のMGケーブル60と同様に、MGfケーブル60fは、前輪駆動電動機MGfの相数に対応して3本のケーブル線を含む。MGfケーブル60fの3本のケーブル線は、MGf制御用インバータ50fと前輪駆動電動機MGfにおけるU相、V相、W相との電気的な接続をそれぞれ行うものである。同様に、MGrケーブル60rも、後輪駆動電動機MGrの相数に対応して3本のケーブル線を含む。なお、MGfケーブル60fの3本のケーブル線は、本発明における「複数のケーブル線」に相当する。以下、本実施例において、MGfケーブル60fの3本のケーブル線を、単に「3本のケーブル線」と記すこととする。
MGf制御用インバータ50fは、前輪駆動電動機MGfとバッテリ70との間に設けられ、電子制御装置190によって制御されることにより直流を交流に変換したり交流を直流に変換したりする電源回路である。MGr制御用インバータ50rは、後輪駆動電動機MGrとバッテリ70との間に設けられ、電子制御装置190によって制御されることにより直流を交流に変換したり交流を直流に変換したりする電源回路である。本実施例に係るMGf制御用インバータ50fは、本発明における「インバータ」に相当する。
油圧制御回路140は、例えば不図示のオイルポンプから吐出された作動油OILの油圧を元圧として、例えば前輪駆動電動機MGfや後輪駆動電動機MGrを冷却する潤滑油の供給量の制御を行う制御回路である。
電子制御装置190は、MGf制御用インバータ50fを介して前輪駆動電動機MGfの作動状態を主に制御するMGf制御ECU94fと、MGr制御用インバータ50rを介して後輪駆動電動機MGrの作動状態を主に制御するMGr制御ECU94rと、油圧制御回路140を制御する油圧制御ECU196と、それらを協調させて制御する統合ECU198と、を含む。統合ECU198は、例えば運転者により要求された要求駆動トルクTrdemが駆動輪(一対の前輪14f及び/又は一対の後輪14r)に伝達されるように、MGf制御ECU94f、MGr制御ECU94rを介して前輪駆動電動機MGf及び後輪駆動電動機MGrの作動状態をそれぞれ制御する。電子制御装置190内のMGf制御ECU94f、MGr制御ECU94r、油圧制御ECU196、統合ECU198の各ECU間は、例えばCAN通信回路を用いた通信ネットワークにそれぞれ接続されている。なお、電子制御装置190は、本発明における「制御装置」に相当する。
電子制御装置190には、各種センサ(例えばアクセル開度センサ80、車速センサ82など)による検出値に基づく各種信号(例えば、アクセル開度θacc、車速Vなど)が、それぞれ入力される。MGf制御ECU94fには、MGrケーブル60rの温度を検出する温度センサ86rからケーブル温度THcbr[℃]が入力される。MGr制御ECU94rには、MGfケーブル60fの温度を検出する温度センサ86fからケーブル温度THcbf[℃]が入力される。温度センサ86fは、本発明における「温度センサ」に相当する。ケーブル温度THcbfは、MGfケーブル60fの温度であって、前述したMGfケーブル60fの3本のケーブル線のそれぞれの温度を代表する温度である。ケーブル温度THcbrは、MGrケーブル60rの温度であって、前述したMGrケーブル60rの3本のケーブル線のそれぞれの温度を代表する温度である。MGf制御ECU94fからは、前輪駆動電動機MGfを回転制御するためのMGf制御信号Smgfが出力される。MGr制御ECU94rからは、後輪駆動電動機MGrを回転制御するためのMGr制御信号Smgrが出力される。MGf制御ECU94fには、例えばMGf制御用インバータ50fの正極線と負極線との間の電圧を検出する電圧センサ84fからインバータ電圧Vinvf[V]が入力される。MGr制御ECU94rには、例えばMGr制御用インバータ50rの正極線と負極線との間の電圧を検出する電圧センサ84rからインバータ電圧Vinvr[V]が入力される。油圧制御ECU196からは、潤滑油の供給量の制御などをするための油圧制御信号Spが出力される。
車両110においては、前輪駆動電動機MGfのみを動力源に用いて走行する前輪駆動走行を実現する前輪駆動走行モードと、後輪駆動電動機MGrのみを動力源に用いて走行する後輪駆動走行を実現する後輪駆動走行モードと、前輪駆動電動機MGf及び後輪駆動電動機MGrの両方を動力源に用いて走行する四輪駆動走行を実現する四輪駆動走行モードと、が選択的に切り替えられる。これら前輪駆動走行モード、後輪駆動走行モード、及び四輪駆動走行モードは、いずれもBEV走行モードである。
後輪駆動走行モードでは、前輪駆動電動機MGfは非駆動状態とされる。後輪駆動走行中においては前輪駆動電動機MGfが非駆動状態とされるが、前輪駆動電動機MGfのロータは後輪駆動電動機MGrから出力される動力が一対の前輪14f及び前輪用デフ30fを介して伝達されて回転状態とされる。すなわち、前輪駆動電動機MGfは、非駆動状態の場合でも後輪駆動走行中において連れ回される構成である。前輪駆動走行モードでは、後輪駆動電動機MGrは非駆動状態とされる。後輪駆動電動機MGrは、非駆動状態の場合でも前輪駆動走行中において連れ回される構成である。「非駆動状態」とは、MGf制御用インバータ50f又はMGr制御用インバータ50rにより回転駆動するようには、前輪駆動電動機MGf又は後輪駆動電動機MGrがそれぞれ制御されていない状態である。
ここから、MGf制御ECU94fが故障した場合の電子制御装置190の制御について説明する。なお、MGr制御ECU94rが故障した場合の電子制御装置190の制御は、一対の前輪14fに対する制御と一対の後輪14rに対する制御とを入れ替えれば良いため、その説明は省略する。
電子制御装置190は、MGf制御ECU94fが故障しているか否かを判定する。例えば、MGf制御ECU94fとは異なる他のECU(本実施例では、MGr制御ECU94r)は、CAN通信回路を介してMGf制御ECU94fから受け取るデータが異常である場合には、MGf制御ECU94fが故障していると判定する。MGf制御ECU94fが故障していると判定されると、電子制御装置190は、MGf制御ECU94fの機能を停止させて前輪駆動電動機MGfを非駆動状態にするとともに、後輪駆動走行モードでの退避走行が可能となるように制御する。MGr制御ECU94rは、本発明における「第1の制御装置部」に相当し、MGf制御ECU94fは、本発明における「第2の制御装置部」に相当する。
後輪駆動走行モードでの退避走行中において、MGr制御ECU94rは、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdg[℃]を超過しているか否かを判定する。判定温度THcbf_jdgは、MGfケーブル60fが焼損しない温度として、実験的に或いは設計的に予め定められた所定の温度である。ケーブル温度THcbfは、本発明における「ケーブルの温度」に相当し、判定温度THcbf_jdgは、本発明における「所定の判定温度」に相当する。詳細な説明は省略するが、前述の実施例1と同様に、(a)ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過するか否かは、3本のケーブル線のそれぞれにおいて判定されたり、(b)3本のケーブル線の温度を検出する温度センサ86fのうちの一部が故障した場合には、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過するか否かは、故障していない温度センサ86fで検出されたケーブル線の温度のうちの一部に基づいて判定されたりしても良い。後輪駆動走行モードでの退避走行中において、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過していると判定すると、電子制御装置190は、退避走行を中止して車両110を停止させる。
まず、S110において、MGf制御ECU94fが故障しているか否かが判定される。S110の判定がYESの場合、S120において、前輪駆動電動機MGfが非駆動状態とされ、後輪駆動走行モードによる退避走行が実行される。好適には、この場合、退避走行が開始されたことが運転者に報知される。S120の実行後、S130において、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過しているか否かが判定される。S130の判定がNOの場合、S120が再度実行される、すなわち後輪駆動走行モードによる退避走行が継続される。好適には、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgに接近して超過しそうな場合、退避走行が中止される可能性があることが運転者に報知される。S130の判定がYESの場合、S140において、退避走行が中止され車両110が停止させられる。好適には、この場合、退避走行が中止されたことが運転者に報知される。S140の実行後、終了となる。S110の判定がNOの場合、リターンとなる。
本実施例によれば、(a)電子制御装置190には、MGr制御ECU94rと、前輪駆動電動機MGfを駆動するMGf制御用インバータ50fを制御し且つMGr制御ECU94rとは異なるMGf制御ECU94fと、が含まれ、(b)MGf制御ECU94fが故障したとMGr制御ECU94rが判定した場合には、前輪駆動電動機MGfが非駆動状態にされるとともに後輪駆動走行モードによる退避走行が実行され、(c)ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過する場合には、退避走行が中止させられる。これにより、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdg以下の場合には退避走行が継続されて退避走行の走行距離の延長が図られるとともに、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過する場合には退避走行が中止されてMGfケーブル60fの焼損の発生が抑止される。
本実施例によれば、MGfケーブル60fは、前輪駆動電動機MGfの相数に対応して3本のケーブル線を含み、前述の実施例1と同様に、(a)ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過するか否かは、3本のケーブル線のそれぞれにおいて判定されたり、(b)3本のケーブル線の温度を検出する温度センサ86fのうちの一部が故障した場合には、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過するか否かは、故障していない温度センサ86fで検出されたケーブル線の温度のうちの一部に基づいて判定されたりしても良い。これにより、実施例1と同様の効果を奏する。
なお、上述したのは本発明の各実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
前述の実施例1では、MG制御ECU94が故障しているか否かを判定したのはエンジン制御ECU92であり、前述の実施例2では、MGf制御ECU94fが故障しているか否かを判定したのはMGr制御ECU94rであったが、これに限らない。故障が判断されるECUとは異なる他のECUであれば、例えば油圧制御ECU96、統合ECU98、油圧制御ECU196、統合ECU198などであっても良い。
前述の実施例2では、MGf制御ECU94fが故障した場合の電子制御装置190の制御について説明したが、本発明は、MGr制御ECU94rが故障した場合にも適用可能である。
前述の実施例1では、3本のケーブル線の温度が全て温度センサ86により検出されて、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過するか否かは、3本のケーブル線のそれぞれにおいて判定される態様であった。また、前述の実施例2では、3本のケーブル線の温度が全て温度センサ86fにより検出されて、ケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過するか否かは、3本のケーブル線のそれぞれにおいて判定される態様であった。しかし、本発明はこれらの態様に限らない。例えば、3本のケーブル線の温度のうちの一部のみが温度センサ86,86fにより検出されて、ケーブル温度THcbが判定温度THcb_jdgを超過するか否かやケーブル温度THcbfが判定温度THcbf_jdgを超過するか否かは、3本のケーブル線の温度のうちの検出された一部に基づいて判定されても良い。この場合、前述の実施例1,2で説明した温度センサ86,86fのうちの一部が故障した場合と同様の方法で判定される。これにより、3本のケーブル線の全てに温度センサが設けられる場合に比較して、温度センサの個数が削減されるためコストが削減される。
前述の実施例1,2では、電動機MG,前輪駆動電動機MGf,後輪駆動電動機MGrは、それぞれ相数が「3」である態様であったが、これに限らず、他の相数であっても良い。
前述の実施例1,2では、各ECUは、CAN通信回路を用いて通信するネットワークにそれぞれ接続された態様であったが、各ECU間で必要なデータが入出力されるのであれば、どのように接続された態様であっても良い。