(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025144465
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20250925BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044264
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】高畑 周作
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA04
2H200GA01
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA45
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA02
2H200JA21
2H200JA28
2H200JA29
2H200JC03
2H200JC15
2H200JC19
2H200JC20
2H200LB15
2H200MA04
2H200NA02
2H200NA09
2H200PA02
2H200PA05
2H200PB03
(57)【要約】
【課題】画像形成に用いられる記録材に応じて、記録材が転写部に到達する前に記録材のトナー像が転写される面を適切にトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させることを可能とする。
【解決手段】画像形成装置100は、像担持体70と、転写部N2を形成する転写部材71、81と、転写部N2に転写バイアスを印加する第1の印加部E4と、記録材Sのトナー像転写面をトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させる記録材帯電部材84と、記録材帯電部材84に記録材帯電バイアスを印加する第2の印加部E5と、転写部N2に流れる電流を検知する検知部25bと、記録材Sが転写部N2を通過している際の検知部25bによる検知結果に基づいて、記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行する制御部120と、を有する構成とされる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から記録材にトナー像を転写する転写部を形成する転写部材と、
前記転写部に転写バイアスを印加する第1の印加部と、
記録材の搬送方向における前記転写部よりも上流において、前記転写部へと搬送される記録材のトナー像が転写される面であるトナー像転写面をトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させる記録材帯電部材と、
前記記録材帯電部材に記録材の前記トナー像転写面を帯電させるための記録材帯電バイアスを印加する第2の印加部と、
前記転写部に流れる電流又は前記転写部に印加される電圧を検知する検知部と、
記録材が前記転写部を通過している際の前記検知部による検知結果に基づいて、前記記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行する制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、単数又は複数の記録材に画像を形成して出力する一連の動作であるジョブの実行中に、記録材が前記転写部を通過している際の前記検知部による検知結果に基づいて、前記記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知部により検知された電流の絶対値が第1の値である場合に前記記録材帯電バイアスの設定を変更せず、前記検知部により検知された電流の絶対値が前記第1の値よりも小さい第2の値である場合に前記記録材帯電バイアスの絶対値を大きくするように、前記記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検知部により検知された電流の絶対値が第1の値である場合に前記記録材帯電バイアスの設定を変更せず、前記検知部により検知された電流の絶対値が前記第1の値よりも大きい第2の値である場合に前記記録材帯電バイアスの絶対値を小さくするように、前記記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検知部による電流の検知時に、前記転写部には前記第1の印加部により定電圧制御されたバイアスが印加されることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検知部により検知された電圧の絶対値が第1の値である場合に前記記録材帯電バイアスの設定を変更せず、前記検知部により検知された電圧の絶対値が前記第1の値よりも大きい第2の値である場合に前記記録材帯電バイアスの絶対値を大きくするように、前記記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検知部により検知された電圧の絶対値が第1の値である場合に前記記録材帯電バイアスの設定を変更せず、前記検知部により検知された電圧の絶対値が前記第1の値よりも小さい第2の値である場合に前記記録材帯電バイアスの絶対値を小さくするように、前記記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記検知部による電圧の検知時に、前記転写部には前記第1の印加部により定電流制御されたバイアスが印加されることを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体は、別の像担持体からトナー像が転写される中間転写体であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、又はこれらの機能のうち複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いた複写機などの画像形成装置では、感光体や中間転写体などの像担持体から紙などの記録材へトナー像を静電的に転写することが行われる。転写は、像担持体に転写ローラなどの転写部材を当接させて転写部を形成し、転写部に転写バイアスを印加することで行われることが多い。転写バイアスにより転写部に供給される転写電流が不足すると、転写が十分に行われずに所望の画像濃度が得られない「転写抜け」や「濃度薄」などの画像不良が発生することがある。また、転写バイアスにより転写部に供給される転写電流が過剰であると、転写部で放電が発生し、その放電の影響でトナー像のトナーの電荷の極性が反転するなどして、トナー像が部分的に転写されない「白抜け」などの画像不良が発生することがある。そのため、高品質の画像を形成するためには、転写部に適切な転写バイアスを印加することが求められる。
【0003】
特許文献1では、転写部に記録材が無い状態で転写部に試験バイアスを印加して電圧電流特性を取得し、所定の目標電流が得られる電圧値を求め、この電圧値に記録材の種類に応じた記録材分担電圧を加算して転写バイアスの電圧値を設定することが開示されている。
【0004】
ここで、記録材の種類には、例えば、上質紙、コート紙のような記録材の表面の平滑性の違いによる種類や、薄紙、厚紙のような記録材の厚さの違いによる種類などがある。記録材分担電圧は、例えばこのような記録材の種類に応じて予め求めておくことができる。しかし、記録材の仕様によっては、記録材の電気抵抗が高いことにより、例えば低湿環境において必要な転写電流を流すための転写バイアスの電圧の絶対値が高圧容量を超えて、転写電流不足による画像不良が発生する可能性がある。
【0005】
特許文献2では、記録材が転写部に到達する前に記録材のトナー像が転写される面を予めトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-117920号公報
【特許文献2】特開2013-171282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昨今、プロダクション機などにおいて、画像形成に用いられる記録材の種類が増える傾向にある。例えば、合成紙(プラスチックを主成分とする記録材)や超厚紙(坪量250gsmを超えるような厚紙)などの電気抵抗の高い記録材にトナー像を適正に転写するためには、電圧の絶対値がより大きな転写バイアスの印加が必要になる。生産性(画像形成速度)を落とさずにこのような記録材に適正にトナー像を転写するためには、記録材のトナー像が転写される面を予めトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させて転写電流不足を補うことが有効である。
【0008】
しかし、流通している記録材の種類は非常に多い。また、記録材の電気抵抗は環境(温度・湿度)が同じでも環境に置かれた時間などによって変動する。これらのことなどから、転写前に記録材に付与することが必要な電荷を予め精度よく求めることが困難な場合がある。そして、例えば電気抵抗の高い記録材の場合、小さな電気抵抗の変化があっても、転写前に記録材に付与することが必要な電荷が大きく変化する場合がある。
【0009】
また、ユーザーなどにより設定された記録材の種類の情報と実際に画像形成に用いられる記録材の種類(特性)との不一致などにより、転写前に記録材に付与する電荷が不足したり過剰であったりすることが想定される。
【0010】
転写前に記録材に付与する電荷が不足して転写電流が不足すると、上述のように転写抜けや濃度薄などの画像不良が発生する可能性がある。また、転写前に記録材に付与する電荷が過剰であり転写電流が過剰となると、上述のように白抜けなどの画像不良が発生する可能性がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、画像形成に用いられる記録材に応じて、記録材が転写部に到達する前に記録材のトナー像が転写される面を適切にトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させることを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体から記録材にトナー像を転写する転写部を形成する転写部材と、前記転写部に転写バイアスを印加する第1の印加部と、記録材の搬送方向における前記転写部よりも上流において、前記転写部へと搬送される記録材のトナー像が転写される面であるトナー像転写面をトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させる記録材帯電部材と、前記記録材帯電部材に記録材の前記トナー像転写面を帯電させるための記録材帯電バイアスを印加する第2の印加部と、前記転写部に流れる電流又は前記転写部に印加される電圧を検知する検知部と、記録材が前記転写部を通過している際の前記検知部による検知結果に基づいて、前記記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行する制御部と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像形成に用いられる記録材に応じて、記録材が転写部に到達する前に記録材のトナー像が転写される面を適切にトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】画像形成装置の制御構成の概略を示すブロック図である。
【
図4】二次転写部の近傍の構成を示す概略断面図である。
【
図5】記録材の帯電量の推移の一例を示すグラフ図である。
【
図8】二次転写部の近傍の構成の他の例を示す概略断面図である。
【
図9】二次転写部の近傍の構成の他の例を示す概略断面図である。
【
図10】二次転写部の近傍の構成の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0016】
[実施例1]
1.画像形成装置の構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から入力された画像情報や画像形成装置100に設けられた操作部130を介して入力された画像情報などに基づいて、シート状の記録材Sに画像を形成して出力することが可能である。なお、画像形成装置100では、記録材Sとして主に紙が用いられるため、記録材Sのことを紙ということがあるが、記録材Sは紙に限定されるものではない。記録材Sとしては、例えば、合成樹脂を主体とする材料で構成された合成紙やフィルム、金属層を有する蒸着紙などの特殊紙などの、紙以外の材料又は紙以外の材料を含む材料で構成されたものも用いられる。
【0017】
画像形成装置100は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。各画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、後述する中間転写ベルト70の略水平に配置される画像転写面の移動方向に沿って直列状に配置されている。なお、各色用に設けられた同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部10は、後述する感光ドラム1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、ドラムクリーニング装置6などを有して構成される。
図2は、画像形成部10の概略断面図である。
【0018】
第1の像担持体としてのドラム型(円筒形)の感光ドラム1は、静電像(静電潜像)やトナー像を担持して移動可能(回転可能)である。感光ドラム1は、基体としてのアルミニウム製シリンダと、その表面に形成された表面層(感光層)と、を有する。画像形成動作が開始されると、感光ドラム1は、駆動手段としてのドラム駆動モータD1(
図3)によって、図中矢印R1方向(反時計回り方向)に、所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としての帯電装置2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に均一に帯電処理される。本実施例では、帯電装置2は、感光ドラム1に対向して配置されたスコロトロン帯電器である。帯電処理時に、帯電装置2の帯電ワイヤーには、帯電電圧印加手段(帯電電圧印加部)としての帯電電源E1(
図3)により、所定の帯電バイアス(帯電電圧)が印加される。これにより、帯電装置2は放電を発生させ、この放電により発生した電子が感光ドラム1の表面を帯電させる。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置3によって画像情報(画像信号)に基づいて走査露光され、感光ドラム1上に静電像が形成される。本実施例では、露光装置3は、レーザースキャナーである。露光装置3は、制御部120(
図3)から出力される分解色の画像情報に従ってレーザー光を発し、感光ドラム1の表面(外周面)を走査露光する。
【0019】
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によってトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(トナー画像、現像剤像)が形成される。本実施例では、現像装置4は、現像剤として非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを備えた二成分現像剤を用いて静電像を現像する。現像装置4は、現像剤担持体(現像部材)としての現像スリーブ41と、現像剤を収容する現像容器42と、を有する。現像スリーブ41は、現像容器42内の現像剤を担持して、感光ドラム1と対向する現像領域へと搬送する。現像時に、現像スリーブ41には、現像電圧印加手段(現像電圧印加部)としての現像電源E2(
図3)により、所定の現像バイアス(現像電圧)が印加される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーが付着する(反転現像方式)。本実施例では、現像時のトナーの主要な帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
【0020】
4個の感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向するように、中間転写ユニット7が配置されている。中間転写ユニット7は、中間転写ベルト70、二次転写内ローラ71、駆動ローラ72、テンションローラ73、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kなどを有して構成される。第1の像担持体としての無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト70は、トナー像を担持して移動可能(回転可能)である。中間転写ベルト70は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての二次転写内ローラ71、駆動ローラ72及びテンションローラ73に掛け渡されて所定の張力で張架されている。駆動ローラ72は、駆動手段としての中間転写ベルト駆動モータD2(
図3)によって回転駆動される。中間転写ベルト70は、駆動ローラ72によって駆動力が伝達されて、図中矢印R2方向(時計回り方向)に、感光ドラム1の周速度に対応する所定の周速度(プロセススピード)で回転(周回移動)する。テンションローラ73は、中間転写ベルト70に所定の張力(テンション)を付与する。二次転写内ローラ71は、後述する二次転写外ローラ81と協働して二次転写部N2を形成する。中間転写ベルト70の内周面側には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kがそれぞれ配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト70を感光ドラム1に向けて押圧し、感光ドラム1と中間転写ベルト70との接触部である一次転写部(一次転写ニップ部)N1を形成する。駆動ローラ72以外の中間転写ベルト70の張架ローラ及び各一次転写ローラ5は、中間転写ベルト70の回転に伴って従動回転する。
【0021】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト70上に転写(一次転写)される。一次転写時に、一次転写ローラ5には、一次転写電圧印加手段(一次転写電圧印加部)としての一次転写電源E3(
図3)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である一次転写バイアス(一次転写電圧)が印加される。一次転写ローラ5に正極性の一次転写バイアスが印加されることにより、感光ドラム1上の負極性のトナーからなるトナー像が、中間転写ベルト70上に転写される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト70上に重ね合わされるようにして順次転写されて、中間転写ベルト70上に多重トナー像が形成される。
【0022】
ここで、本実施例では、一次転写ローラ5は、芯金と、芯金の外周を被覆するように形成されたイオン導電系発泡ゴム(NBRゴム(ニトリルゴム)及びECOゴム(エピクロルヒドリンゴム))の弾性層と、を有する。一次転写ローラ5の外径は、例えば、15~20mmである。なお、数値範囲に関して「~」は、その前後の数値を含むことを意味する。また、一次転写ローラ5としては、電気抵抗値が1×105~1×108Ω(N/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加)のローラを好適に使用することができる。
【0023】
また、本実施例では、中間転写ベルト70は、内周面側から基層、弾性層、表層の3層構造を有する無端状のベルトで構成されている。基層を構成する材料としては、ポリイミドやポリカーボネートなどの樹脂又は各種ゴムなどに帯電防止剤としてカーボンブラックなどを適当量含有させた材料を好適に用いることができる。基層の厚さは、例えば、0.05~0.15mmである。弾性層を構成する材料としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロスルホン化ゴム、アクリレートゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。本実施例では、ウレタンゴムを使用した。弾性層の厚さは、その柔軟性を十分に活かして例えば凹凸を有する記録材Sなどに対するトナー像の転写性を向上させるために、100~2000μmが好ましく、200~800μmがより好ましい。表層を構成する材料としては、フッ素樹脂などの樹脂を好適に用いることができる。表層は、中間転写ベルト70の表面へのトナーの付着力を小さくして、二次転写部N2でトナーを記録材Sへ転写しやすくする。表層の厚さは、例えば、0.0002~0.020mmである。また、表層の基材として、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂などの1種類の樹脂材料か、例えば弾性ゴム、ポリウレタン樹脂などのエラストマーなどの弾性材料のうち2種類以上の材料を使用することができる。そして、この基材に対して、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料として、例えばPTFE、PVDF、PFAなどのフッ素樹脂やシリコーン樹脂などの粉体や粒子を、1種類又は2種類以上、あるいは粒径を異ならせて分散させることができる。これにより、表層を形成することができる。本実施例では、中間転写ベルト70は、体積抵抗率が1×108~1×1014Ω・cm(23℃、50%RH)である。なお、中間転写ベルト70は、本実施例では3層構造としたが、例えば、上記基層に相当する材料の単層構成や、上記基層と上記表層との2層構成などとしてもよい。
【0024】
中間転写ベルト70の外周面側には、二次転写内ローラ71に対向するように、二次転写ユニット8が配置されている。二次転写ユニット8は、無端状のベルトで構成された二次転写ベルト80と、二次転写ベルト80の内周面側において二次転写内ローラ71に対向する位置に配置された二次転写外ローラ(二次転写ローラ)81と、を有する。二次転写外ローラ81は、二次転写内ローラ71に向けて押圧され、二次転写ベルト80及び中間転写ベルト70を介して二次転写内ローラ71に当接する。これにより、二次転写外ローラ81は、中間転写ベルト70と二次転写ベルト80との接触部である二次転写部(二次転写ニップ部)N2を形成する。二次転写内ローラ71、二次転写外ローラ81は、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材の一例である。中間転写ベルト70上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、中間転写ベルト70と二次転写ベルト80とに挟持されて搬送されている記録材S上に転写(二次転写)される。本実施例では、二次転写時に、二次転写内ローラ71には、二次転写電圧印加手段(二次転写電圧印加部)としての二次転写電源E4により、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の直流電圧である二次転写バイアス(二次転写電圧)が印加される。また、本実施例では、二次転写外ローラ81は、グランド(接地電位)に接続(電気的に接地)されている。二次転写ユニット8の詳細については後述する。
【0025】
記録材(転写材、記録媒体、用紙、シート)Sは、給送部としての記録材収容部であるカセット11a、11bに収容されている。記録材Sは、カセット11a、11bのいずれかから給送部材12a、12bによって記録材搬送路としての給送搬送路13に送り出されて、搬送部材としてのレジストローラ対14へと搬送される。この記録材Sは、レジストローラ対14によって、中間転写ベルト70上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部N2に向けて搬送される。レジストローラ対14は、駆動手段としての搬送駆動モータD4(
図3)から駆動力が伝達されて回転駆動される。また、本実施例では、記録材Sの搬送方向において二次転写部N2よりも上流(レジストローラ対14よりも下流)に、記録材Sが二次転写部N2に到達する前に記録材Sのトナー像が転写される面を予めトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させるプレ帯電装置9が設けられている。プレ帯電装置9の詳細については後述する。
【0026】
トナー像が転写された記録材Sは、搬送部材としての搬送ベルト19によって、定着手段としての定着装置15へと搬送される。定着装置15は、定着ローラ15aと、加圧ベルトユニット15bと、を有する。定着ローラ15aは、加熱手段としてのヒータを内蔵している。未定着のトナー像を担持した記録材Sは、定着ローラ15aと加圧ベルトユニット15bとの間に挟持されて搬送されることによって加熱及び加圧される。これによって、トナー像が記録材S上に定着(溶融、固着)される。
【0027】
片面印刷モードの場合は、上述のようにして片面にトナー像が定着された記録材Sは、記録材搬送路としての排出搬送経路16を通り、後処理部20を経由して、排出部として排出トレイ21に排出(出力)される。両面印刷モードの場合は、上述のようにして1面目にトナー像が定着された記録材Sは、2面目にトナー像を転写するために再度二次転写部N2へと搬送される。つまり、両面印刷モードでは、1面目にトナー像が定着された記録材Sは、記録材搬送路としての反転搬送路17へと送り込まれ、反転搬送路17でスイッチバック動作が行われることで先後端が入れ替えられて、再度、給送搬送路13へと搬送される。給送搬送路13に搬送された記録材Sは、レジストローラ対14へと搬送され、再度二次転写部N2へと搬送される。そして、この記録材Sは、上述と同様にして2面目にトナー像が転写され、トナー像が定着された後に、排出トレイ21に排出される。
【0028】
また、一次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。また、二次転写後に中間転写ベルト70上に残留したトナー(二次転写残トナー)などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置74によって中間転写ベルト70上から除去されて回収される。
【0029】
2.制御構成
図3は、本実施例における画像形成装置100の制御構成の概略を示すブロック図である。画像形成装置100は、画像形成装置100を制御する制御部(制御回路)120を有する。制御部120は、演算処理手段(演算処理部)としてのCPU121、記憶手段(記憶部)としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)122、制御部120の外部の機器との間の情報の入出力を行うための入出力部(図示せず)などを有して構成される。CPU121とメモリ122とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。書き換え可能なメモリであるRAMには、制御部120に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納される。
【0030】
制御部120には、画像形成装置100の各部が接続されている。制御部120は、画像形成装置100の各部の動作を制御して、画像形成装置100に画像形成動作などの各種動作を実行させる。
【0031】
例えば、制御部120には、帯電電源E1、現像電源E2、一次転写電源E3、二次転写電源E4、後述するプレ帯電電源E5などの各種電源が接続されている。また、制御部120には、ドラム駆動モータD1、中間転写ベルト駆動モータD2、後述する二次転写ベルト駆動モータD3などの各種駆動部が接続されている。
【0032】
また、制御部120には、環境センサ18が接続されている。環境センサ18は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方である環境(画像形成装置100の設置環境)を検知する環境検知手段の一例である。本実施例では、環境センサ18は、画像形成装置100の内部(カセット11a、11b内又はカセット11a、11bの近傍)の温度及び湿度(相対湿度)を検知する温湿度センサで構成されている。環境センサ18は、温度及び湿度の検知結果を示す信号を制御部120に入力する。制御部120は、環境センサ18により検知された温度及び湿度に基づいて、環境の温湿度情報としての絶対水分量(絶対湿度)を算出して制御に用いることができる。画像形成装置100の雰囲気環境が急激に変化しても、記録材Sの電気抵抗値は急激には変化しないことが多い。そのため、環境センサ18をカセット11a、11b内又はカセット11a、11bの近傍に設置することで、記録材Sの電気抵抗の変化をより正確に把握することができる。
【0033】
二次転写電源E4には、その出力電圧を検知する電圧検知手段(電圧検知部)としての電圧検知センサ25aと、その出力電流を検知する電流検知手段(電流検知部)としての電流検知センサ25bと、が接続されている。電圧検知センサ25aは、二次転写内ローラ71(二次転写部N2)に印加される電圧を検知することができる。電流検知センサ25bは、二次転写内ローラ71(二次転写部N2)に流れる電流を検知することができる。電圧検知センサ25a、電流検知センサ25bは、それぞれ電圧、電流の検知結果を示す信号を制御部120に入力する。制御部120は、電圧検知センサ25a、電流検知センサ25bの検知結果に基づいて、後述する二次転写電圧決定制御などを実行することができる。また、制御部120は、電流検知センサ25bの検知結果に基づいて、後述するプレ帯電バイアス調整制御などを実行することができる。
【0034】
また、画像形成装置100は、二次転写部N2への記録材Sの搬送タイミングあるいは画像形成タイミングを制御するための記録材検知手段としての搬送センサ26を有する。搬送センサ26は、例えば、記録材Sの搬送方向においてレジストローラ対14の下流側に隣接して配置されている。搬送センサ26は、記録材Sの搬送方向における先端が到達したこと、又は記録材Sの搬送方向における後端が通過したことの少なくとも一方を検知することができる。搬送センサ26は、記録材Sの検知結果を示す信号を制御部120に入力する。制御部120は、搬送センサ26の検知結果に基づいて、搬送駆動モータD4によるレジストローラ対14の駆動の制御や、後述するプレ帯電バイアス調整制御における電流検知タイミングの制御を実行することができる。
【0035】
また、制御部120には、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル)130が接続されている。操作部130は、制御部120の制御によりユーザーやサービス担当者などの操作者に各種情報を表示する表示部と、操作者が画像形成に関する各種設定などを制御部120に入力するための入力部と、を有して構成される。操作部130は、表示部の機能と入力部の機能とを備えたタッチパネルなどで構成されていてよい。また、制御部120には、画像形成装置100に設けられるか又は画像形成装置100に接続された画像読み取り装置(図示せず)や、パーソナルコンピュータなどの外部装置が接続されていてよい。
【0036】
なお、本実施例では、図示は省略しているが、帯電電源E1、現像電源E2、一次転写電源E3は、各画像形成部10に対して独立して設けられている。また、ドラム駆動モータD1は、各感光ドラム1に対して独立して設けられていてもよいし、全部又は一部の感光ドラム1に対して共通化されていてよい。また、ドラム駆動モータD1、中間転写ベルト駆動モータD2、二次転写ベルト駆動モータD3、搬送駆動モータD4の全部又は一部は共通化されていてもよい。
【0037】
画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単数又は複数の記録材Sに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(印刷ジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Sに形成して出力する画像の静電像の形成(露光)、トナー像の形成(現像)、トナー像の転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Sに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Sと記録材Sとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。
【0038】
3.二次転写ユニット
次に、本実施例における二次転写ユニット(二次転写装置)8について更に説明する。
図4は、本実施例における二次転写部N2の近傍を示す概略断面図である(感光ドラム1の回転軸線方向あるいは二次転写ベルト80の張架ローラの回転軸線方向と略直交する断面を示す。)。なお、二次転写ベルト80や二次転写ベルト80の張架ローラに関して、「上流」、「下流」とは、それぞれ二次転写ベルト80の回転方向(表面の移動方向)における「上流」、「下流」をいうものである。
【0039】
二次転写ユニット8は、記録材担持体としての無端状のベルトで構成された二次転写ベルト80を有する。二次転写ベルト80は、複数の張架ローラ(支持ローラ)に掛け渡されて所定の張力で張架されている。本実施例では、二次転写ユニット8は、二次転写ベルト80の内周面側に配置された張架ローラとして、二次転写外ローラ81と、分離ローラ82と、テンションローラ83と、駆動ローラ(二次転写ベルト駆動ローラ)84と、を有する。また、本実施例では、二次転写ユニット8は、二次転写ベルト80の内周面側に配置された張架ローラとして、第1、第2のクリーニング対向ローラ85、86を有する。二次転写外ローラ81、分離ローラ82、テンションローラ83、駆動ローラ84、第1、第2のクリーニング対向ローラ85、86の回転軸線方向は略平行である。また、これら二次転写ベルト80の張架ローラの回転軸線方向は、感光ドラム1の回転軸線方向及び中間転写ベルト70の張架ローラの回転軸線方向と略平行である。
【0040】
二次転写ベルト80は、樹脂材料又は金属材料で形成された層を有する無端状のベルト部材で構成することができる。例えば、二次転写ベルト80は、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂に帯電防止剤としてカーボンブラックなどを適当量含有させて体積抵抗率を1×109~1×1014Ω・cm(23℃、50%RH)に調整した樹脂材料で形成される。二次転写ベルト80は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。二次転写ベルト80の厚さは、例えば0.07~0.1mm程度である。また、二次転写ベルト80の周長は、例えば300mm程度である。
【0041】
二次転写外ローラ81は、二次転写ベルト80及び中間転写ベルト70を挟んで二次転写内ローラ71に対向して配置されている。二次転写外ローラ81(二次転写ユニット8)は、加圧機構(図示せず)によって二次転写内ローラ32に向けて押圧される。二次転写外ローラ81は、二次転写ベルト80及び中間転写ベルト70を介して二次転写内ローラ71に当接する。これにより、二次転写外ローラ81と二次転写内ローラ71とで二次転写ベルト80及び中間転写ベルト70が挟持され、中間転写ベルト70と二次転写ベルト80との接触部である二次転写部N2が形成される。本実施例では、二次転写外ローラ81は、芯金と、芯金の外周を被覆するように形成されたイオン導電系発泡ゴム(NBRゴム及びECOゴム)の弾性層と、を有する。二次転写外ローラ81の外径は、例えば、15~35mmである。これにより、二次転写部N2に十分なニップ部(二次転写部)N2を形成することができる。また、二次転写外ローラ81としては、電気抵抗値が1×107~1×108Ω(N/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加)のローラを好適に使用することができる。中間転写ベルト70及び二次転写ベルト80を介した二次転写内ローラ71と二次転写外ローラ81との当接部では、その当接力により二次転写内ローラ71よりも低硬度である二次転写外ローラ81の弾性層が弾性変形する。
【0042】
分離ローラ82は、二次転写外ローラ81の下流側に隣接して(直下流に)配置されている。分離ローラ82と二次転写外ローラ81とで、記録材Sを担持して搬送する二次転写ベルト80の外周面である記録材担持面(搬送面)が形成される。二次転写部N2を通過した、二次転写ベルト80の記録材担持面上に静電吸着されている記録材Sは、二次転写ベルト80によって搬送された後に、分離ローラ82の曲率を利用して二次転写ベルト80から引き剥がされる。これにより、記録材Sは、二次転写ベルト80から搬送ベルト19へと受け渡される。本実施例では、分離ローラ82は、金属ローラで構成されている。
【0043】
テンションローラ(二次転写ベルトテンションローラ)83は、分離ローラ82の下流側に隣接して(直下流)に配置されている。テンションローラ83は、付勢手段としての付勢部材である押圧バネ89によって二次転写ベルト80の内周面側から外周面側に向けて押圧され、二次転写ベルト80に所定の張力(テンション)を付与する。本実施例では、テンションローラ83は、金属ローラで構成されている。
【0044】
駆動ローラ(二次転写ベルト駆動ローラ)84は、二次転写外ローラ81の上流側に隣接して(直上流に)配置されている。二次転写外ローラ81と駆動ローラ84とで、記録材Sを担持して搬送する二次転写ベルト80の外周面である記録材担持面(搬送面)が形成される。本実施例では、駆動ローラ84は、芯金と、芯金の外周を被覆するように形成された電気抵抗が十分に低いEPDMゴム(エチレンプロピレンゴム)の弾性層と、を有する。これにより、駆動ローラ84と後述するプレ帯電対向ローラ91との間の電気的な導通がとられている。本実施例では、駆動ローラ84の芯金の外径は20mmである。また、本実施例では、駆動ローラ84の弾性層を構成するEPDMゴムの厚さは0.5mmであり、その表面は研磨されて粗さが略一定に管理されている。駆動ローラ84は、駆動手段としての二次転写ベルト駆動モータD3(
図3)によって回転駆動される。二次転写ベルト80は、駆動ローラ84によって駆動力が伝達されて、図中矢印R3方向(反時計回り方向)に、中間転写ベルト70の周速度に対応する所定の周速度で回転(周回移動)する。駆動ローラ84以外の二次転写ベルト80の張架ローラは、二次転写ベルト80の回転に伴って従動回転する。なお、二次転写ベルト80を搬送するための駆動手段が連結されるローラは、本実施例における駆動ローラ84に限定されるものではなく、二次転写ベルト80の内周面に接触するローラのいずれかであればよい。また、二次転写ユニット8は、二次転写ベルト80が中間転写ベルト70の回転に伴って従動回転する構成とされていてもよい。
【0045】
第1、第2のクリーニング対向ローラ85、86は、テンションローラ83よりも下流側、かつ、駆動ローラ84よりも上流側に配置されており、第1のクリーニング対向ローラ85の方が第2のクリーニング対向ローラ86よりも上流側に配置されている。そして、二次転写ユニット8は、二次転写ベルト80の外周面側において、第1、第2のクリーニング対向ローラ85、86のそれぞれに対向する位置に、第1、第2の二次転写ベルトクリーニング部材としての第1、第2のブラシローラ87、88を有する。第1のブラシローラ87には、第1のクリーニング電源E6からトナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)のクリーニングバイアス(クリーニング電圧)が印加される。また、第2のブラシローラ88には、第2のクリーニング電源E7からトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)のクリーニングバイアス(クリーニング電圧)が印加される。第1、第2のクリーニング対向ローラ85、86は、それぞれ電気的に接地されている。これにより、二次転写ベルト80の表面に付着したトナーの正規の帯電極性とは逆極性のトナーなどの付着物は、第1のブラシローラ87によって回収される。また、二次転写ベルト80の表面に付着したトナーの正規の帯電極性と同極性のトナーなどの付着物は、第2のブラシローラ88によって回収される。第1、第2のブラシローラ87、88によって回収された付着物は、回収部材(図示せず)などによって第1、第2のブラシローラ87、88から除去されて、回収容器(図示せず)に収容される。このようにして、二次転写ベルト80の表面を静電的にクリーニングすることができる。
【0046】
本実施例では、二次転写内ローラ71の芯金には、二次転写電源E4が接続されている。そして、二次転写内ローラ71には、二次転写電源E4により、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の二次転写バイアスが印加される。また、本実施例では、二次転写外ローラ81の芯金はグランドに接続されており、二次転写外ローラ81は電気的に接地されている。ここでは、このような記録材Sのトナー像が転写される面側から二次転写バイアスを印加する給電方式を「内給電方式」という。これに対して、記録材Sのトナー像が転写される面とは反対の面側から二次転写バイアスを印加する給電方式を「外給電方式」という。外給電方式の場合、例えば、二次転写内ローラ71を電気的に接地して、二次転写外ローラ81にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の二次転写バイアスを印加する。
【0047】
内給電方式は、例えば、メタル調の箔紙などの電気抵抗の低い記録材S(低抵抗記録材)に対するトナー像の転写性が、外給電方式に比べて向上する。これは、次のような理由による。外給電方式では、記録材Sの電気抵抗が低く、記録材Sを介して二次転写部N2の近傍の部材などへの転写電流のリークが生じた場合、転写電流は記録材Sと中間転写ベルト70との間で転写に寄与することなく上記部材などに逃げる。これに対して、内給電方式では、記録材Sの電気抵抗が低く、記録材Sを介して二次転写部N2の近傍の部材などへの転写電流のリークが生じた場合でも、転写電流は記録材Sと中間転写ベルト70との間で転写に寄与した後に上記部材などに逃げる。そのため、内給電方式は、例えば、電気抵抗の低い記録材Sに対するトナー像の転写性が、外給電方式に比べて向上する。
【0048】
本実施例では、二次転写バイアスは、定電圧制御により印加される。二次転写バイアスの電圧値(目標電圧)は、所定の転写電流を得るための基底電圧Vbと、記録材Sの種類によって決まる記録材分担電圧Vpと、を足し合わせた電圧値に決定される。記録材分担電圧Vpは、記録材Sの種類、更には環境(例えば絶対水分量)に応じて予め設定されてテーブルデータなどとしてメモリ122に記憶されている。
【0049】
基底電圧Vbは、例えば、二次転写部N2にトナー像及び記録材Sが無い状態で、二次転写部N2に単数又は複数の値の試験バイアス(試験電流又は試験電圧)を印加した際の、電流又は電圧の検知結果に基づいて求めることができる。例えば、二次転写部N2にトナー像及び記録材Sが無い状態で、電流検知センサ25bにより検知される電流が所定の転写電流に対応する目標電流となるように、定電流制御で二次転写部N2(二次転写内ローラ71)に試験バイアスを印加する。そして、その際に発生した電圧を電圧検知センサ25aにより検知した結果に基づいて、基底電圧Vbを求めることができる。あるいは、二次転写部N2にトナー像及び記録材Sが無い状態で、複数の試験バイアスを定電流制御又は定電圧制御で二次転写部N2(二次転写内ローラ71)に印加する。また、その際に発生した電圧又は流れた電流を電圧検知センサ25a又は電流検知センサ25bにより検知した結果に基づいて、電圧電流特性(直線又は曲線)を取得する。そして、その電圧電流特性に基づいて、所定の転写電流が得られる基底電圧Vbを求めることができる。所定の転写電流は、例えば、環境(例えば絶対水分量)などに応じて予め設定されてテーブルデータなどとしてメモリ122に記憶されている。このような制御は、二次転写電圧決定制御、あるいはATVC(Active Transfer Voltage Control)などと呼ばれる。これにより、環境や二次転写に係る部材の使用状況(累積使用量)などの変化により逐次変化する二次転写部N2の電気抵抗に応じて、二次転写バイアスを変更することができる。二次転写に係る部材は、二次転写内ローラ71、二次転写外ローラ81、中間転写ベルト70、二次転写ベルト80などである。二次転写電圧決定制御は、制御部120によって制御されて実行される。二次転写電圧決定制御は、典型的には、ジョブごとに前回転工程や前多回転工程において実行されるが、二次転写部N2にトナー像や記録材Sが無い非画像形成時であれば任意のタイミング(紙間工程など)で実行することができる。
【0050】
ここで、定電流制御とは、供給対象に供給される電流が目標電流で略一定となるように電源の出力を調整する制御である。また、定電圧制御とは、印加対象に印加される電圧が目標電圧で略一定となるように電源の出力を調整する制御である。また、記録材Sの種類とは、普通紙、コート紙、厚紙、合成紙といった一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量や厚さなどの数値や数値範囲、銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材Sを区別可能な任意の情報を含む。一般に、記録材Sの種類は、紙種カテゴリー及び厚さ(又は坪量)によって特定されることが多い。
【0051】
4.プレ帯電装置
次に、本実施例におけるプレ帯電装置(記録材帯電装置)8について更に説明する。
【0052】
前述のように、画像形成装置では、記録材の仕様などによっては、転写電流不足による転写抜けや濃度薄などの画像劣化が起こる可能性がある。昨今、例えば中間転写方式のプロダクション機においては、画像形成に用いられる記録材の種類が増える傾向にある。例えば、画像形成速度の速いプロダクション機において、電気抵抗の高い超厚紙(高抵抗紙)や樹脂層を持つために電気抵抗の高い合成紙などの記録材(高抵抗記録材)に、生産性を落とさずに適正にトナー像を二次転写することが難しい場合がある。
【0053】
例えば、低湿環境においては、二次転写外ローラの電気抵抗が高くなるため、必要な転写電流を流すための二次転写バイアスの電圧の絶対値を大きくする必要がある。記録材の種類によっては二次転写バイアスの電圧の絶対値を10kV以上とすることが必要になる場合がある。このような二次転写バイアスが高圧容量を超える場合は、転写電流不足による転写抜けや濃度薄が発生する可能性がある。この転写抜けや濃度薄は、例えば、2次色のトナー像において発生することがある。また、このような二次転写バイアスを印加できる高圧電源は高価であり、画像形成装置のコスト上昇の要因となる可能性がある。また、このような高圧電源を用いようとしても、配置の都合から沿面をとることができない場合があり、上述のような電圧の絶対値が大きい二次転写バイアスを印加できない場合がある。また、二次転写バイアスの電圧の絶対値を大きくすると、二次転写部で放電現象による画像不良が発生し、適正な画像を得ることが難しい場合がある。この放電現象による画像不良としては、トナー像の一部が転写されないこと、あるいはトナー像の一部が乱れる(飛び散る)ことによる、スジ状の画像不良や、白花又は突き抜けなどと呼ばれる画像不良が発生することがある。このように、例えば、樹脂層を持つ合成紙や超厚紙などの高抵抗紙などの体積抵抗率の高い記録材では、特に低湿環境において二次転写部N2での二次転写バイアスのみではトナーを記録材Sに十分に転写することが難しく、転写不良が発生してしまう可能性がある。また、二次転写バイアスの電圧の絶対値が10kV以上必要になる場合、二次転写部N2の付近の沿面距離などに鑑みると、二次転写電源の出力を上げると、画像形成装置の大型化につながる。
【0054】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Sが二次転写部N2に到達する前に記録材Sのトナー像が転写される面(「トナー像転写面」ともいう。)を予めトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させておくことができるように構成されている。これにより、二次転写バイアスの電圧の絶対値を比較的小さくしても、転写電流不足を補うことでトナー像を適正に記録材Sに転写することが可能になる。
【0055】
図4に示すように、本実施例では、記録材Sの搬送方向において二次転写部N2よりも上流(レジストローラ対14よりも下流)に、記録材Sが二次転写部N2に到達する前に記録材Sのトナー像が転写される面を予めトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させるプレ帯電装置9が設けられている。これにより、超厚紙や合成紙に対するトナー像の転写性を向上させることができる。
【0056】
本実施例では、プレ帯電装置9は、二次転写ベルト80の内周面側に配置された駆動ローラ(二次転写ベルト駆動ローラ)84と、二次転写ベルト80を挟んで駆動ローラ84に対向して配置されたプレ帯電対向ローラ91と、を有して構成される。本実施例における駆動ローラ(記録材帯電ローラ)84は、記録材帯電部材(プレ帯電部材)の一例である。駆動ローラ84は、二次転写ベルト80の張架ローラであって二次転写ベルト80を駆動する駆動ローラの機能と、記録材帯電部材の機能と、を兼ね備えている。また、本実施例におけるプレ帯電対向ローラ91は、対向部材(プレ帯電対向部材)の一例である。プレ帯電対向ローラ91は、駆動ローラ84と所望のニップ状態を形成して、記録材Sを挟み込む。つまり、駆動ローラ84は、二次転写ベルト80を介してプレ帯電対向ローラ91に当接する。これにより、駆動ローラ84とプレ帯電対向ローラ91とで二次転写ベルト80が挟持され、二次転写ベルト80とプレ帯電対向ローラ91との接触部であるプレ帯電部(プレ帯電ニップ部、記録材帯電部)N3が形成される。なお、駆動ローラ84、プレ帯電対向ローラ1の回転軸線方向における、これらのローラの記録材Sと接触可能な部分の長さは、画像形成装置100において使用可能な記録材Sの同方向の長さよりも長い(各ローラの回転軸線方向の長さの範囲に記録材Sが収まる。)。
【0057】
本実施例では、プレ帯電対向ローラ91は、芯金と、芯金の外周を被覆するように形成された電気抵抗が十分に低いイオン導電系発泡ゴム(NBRゴム及びECOゴム)の弾性発泡体層と、を有する弾性スポンジローラである。本実施例では、プレ帯電対向ローラ91の外径は15mmである。プレ帯電対向ローラ91の外径は、例えば5~30mm程度であり、10~20mmであることがより好ましい。このようにプレ帯電対向ローラ91を比較的小径のローラで構成することにより、プレ帯電対向ローラ91の表面と中間転写ベルト70の表面との間の距離を十分にとることができる。記録材Sの搬送方向におけるプレ帯電部N3から二次転写部N2までの距離は、例えば10~100mm程度であり、30mm以下であることがより好ましい。これにより、プレ帯電部N3において記録材Sのトナー像が転写される面が帯電させられた場合に、記録材Sが二次転写部N2に搬送されるまでの間における記録材Sのトナー像が転写される面の帯電量の減衰を抑制することができる。
【0058】
本実施例では、駆動ローラ84の芯金には、プレ帯電電圧印加手段(プレ帯電電圧印加部)としてのプレ帯電電源E5が接続されている。そして、駆動ローラ84には、プレ帯電電源E5により、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)のプレ帯電バイアス(記録材帯電バイアス、プレ帯電電圧)が印加される。また、本実施例では、プレ帯電対向ローラ91の芯金はグランドに接続されており、プレ帯電対向ローラ91は電気的に接地されている。記録材Sのトナー像が転写される面とは反対側の面にトナーの正規の帯電極性と同極性のプレ帯電バイアスを印加することで、記録材Sのトナー像が転写される面とは反対側の面がトナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電する。これにより、記録材Sのトナー像が転写される面がグランドから誘起された電荷によりトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)に帯電する。このとき、プレ帯電部N3には見かけ上電流が流れる。プレ帯電バイアスの制御の詳細については後述する。
【0059】
レジストローラ対14により搬送された記録材Sは、プレ帯電対向ローラ91と駆動ローラ84に掛け回された二次転写ベルト82との間のニップ部(プレ帯電部)N3に搬送される。なお、本実施例では、記録材Sの搬送方向においてプレ帯電部N3よりも上流かつレジストローラ対14よりも下流に、記録材Sを案内するガイド部材22(上ガイド部材22a、下ガイド部材22b)が設けられている。レジストローラ対14により搬送された記録材Sは、ガイド部材22により案内されながらプレ帯電部N3へと搬送される。そして、プレ帯電部N3において、記録材Sが帯電(プレ帯電)させられると共に、記録材Sが二次転写ベルト80に静電的に(静電気力によって)吸着される。二次転写ベルト80に吸着された記録材Sは二次転写部N2に搬送され、その記録材S上にトナー像が転写(二次転写)される。
【0060】
5.プレ帯電バイアスの制御
本実施例では、プレ帯電バイアスは、定電流制御で印加される。プレ帯電電源E5は、電流検知手段としての電流検知部(図示せず)を内蔵しており、この電流検知部により検知される電流の値が略一定となるように出力電圧の定電流制御を行うことが可能である。ここで、記録材Sの種類、環境、更には印字面(プレ帯電部N3を通過した直後に二次転写部N2でトナー像が転写される面。片面印刷又は両面印刷の1面目であるか、両面印刷の2面目であるか。)によって適正なプレ帯電バイアスの目標電流が異なることがある。そのため、記録材Sの種類、環境、印字面のうちの少なくとも1つに基づいて、プレ帯電バイアスを印加するか否か、あるいはプレ帯電バイアスの目標電流を変更することができる。例えば、プレ帯電バイアスの目標電流は、記録材Sの種類や環境(例えば絶対水分量)に応じて、記録材Sのトナー像が転写される面が適正な帯電量になるように、予め設定されてテーブルデータなどとしてメモリ122に記憶されていてよい。記録材Sのトナー像が転写される面の適正な帯電量は、適切な転写性が得られる適切な帯電量として予め実験などにより求めることができる。また、例えば、所定の種類の記録材Sが用いられる場合にのみ、あるいは所定の種類の記録材Sが用いられると共に絶対水分量が所定の範囲の場合(例えば所定の値よりも小さい場合)にのみ、プレ帯電バイアスを印加するなどしてもよい。
【0061】
本実施例では、本発明の理解を容易とするために、ジョブが開始される際に、記録材Sの種類に応じて駆動ローラ84へのプレ帯電バイアスの印加の要否(プレ帯電の要否)が決定されるものとする。一例として、本実施例では、ジョブが開始される際に、合成紙又は所定の高抵抗紙(超厚紙など)の紙種カテゴリーが選択された場合に、プレ帯電が必要と判断されるものとする。本実施例では、上記合成紙又は所定の高抵抗紙(超厚紙など)以外の紙種カテゴリーが選択された場合は、プレ帯電が不要と判断される。
【0062】
本実施例の構成では、例えば記録材Sとして合成紙であるユポYPI250(株式会社ユポ・コーポレーションの製品名)が用いられる場合、例えば温度23℃、湿度5%RHの環境において、二次転写バイアスだけでは転写電流が不足する。そのため、この場合には、プレ帯電バイアスを駆動ローラ84に印加して-60μAの電流を駆動ローラ84に供給する。これにより、記録材Sのトナー像転写面を約5kVに帯電させることができる。
【0063】
図5は、記録材SとしてのユポYPI250のトナー像転写面の帯電量の推移を示すグラフ図である。同図には、温度23℃、湿度5%RHの環境と、温度23℃、湿度60%RHの環境において、記録材Sのトナー像転写面を5kVに帯電させた直後からの帯電量の時間経過による変化がプロットされている。温度23℃、湿度5%RHの環境では、記録材Sのトナー像転写面は5kVに帯電した状態を維持している。これに対して、温度23℃、湿度60%RHの環境では、記録材Sのトナー像転写面の帯電量(絶対値)は時間の経過により5kVから急速に減少していることがわかる。これは、記録材Sに蓄えられた電荷が、自然放電による中和や、記録材Sと接する搬送部やローラ対への流れ込みによって減少することで、生じていると考えられる。そのため、例えば、温度23℃、湿度5%RHの環境に対して設定された目標電流でプレ帯電を行った場合、温度23℃、湿度60%RHの環境では転写電流が不足することになる。
【0064】
ここで、前述のように、
図5に示すような特性に基づいて、環境に応じて適切な転写性が得られるようにプレ帯電バイアスの目標電流を予め設定することができる。例えば、記録材Sの水分量が減少する傾向がある低温低湿環境では、記録材Sの体積抵抗率が上昇して、記録材Sに対する電荷注入が発生しにくくなり、電荷付与が困難になる。また、例えば、記録材Sが水分を吸収する傾向がある高温高湿環境では、記録材Sの体積抵抗率が低下して、電荷がリークしやすくなる。このような変化が起こることに基づいて、温湿度環境の状態によって、プレ帯電バイアスの目標電流を段階的に変えることができる。例えば、絶対水分量が第1の値である場合のプレ帯電バイアスの目標電流の絶対値よりも、絶対水分量が第1の値よりも大きい第2の値である場合のプレ帯電バイアスの目標電流の絶対値を大きくするように設定することができる。なお、このような環境に応じたプレ帯電バイアスの目標電流の設定は、常温低湿環境(あるいは低温低湿環境)、常温常湿環境、高温高湿環境というように所定の温湿度環境(絶対水分量など)の範囲ごとに行うことができる。また、このような環境に応じたプレ帯電バイアスの目標電流の設定は、記録材Sの種類ごとに行うことができる。このように環境に応じて、プレ帯電の要否の決定や、プレ帯電バイアスの目標電流の設定を行うことで、例えば、低温低湿環境では二次転写バイアスの電圧の絶対値を大きくし、高温高湿環境では二次転写バイアスの電圧の絶対値を小さく抑えるといったような制御を行うことができる。
【0065】
しかし、
図5に示すような帯電量の変化は、記録材Sの材質や層構成、記録材Sの保管状況などによって種々の特性を持つため、精度よく予測することは難しい。そのため、上述のように環境に応じて、プレ帯電の要否の決定や、プレ帯電バイアスの目標電流を設定する場合も、予め求められた設定では、転写電流が不足する場合がある。前述のように記録材Sの印字面に応じて、プレ帯電の要否の決定や、プレ帯電バイアスの目標電流を設定する場合についても同様である。
【0066】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、ジョブの実行中に記録材Sが二次転写部N2を通過している際に電流検知センサ25bによって検知された電流に基づいて、プレ帯電バイアスを調整(補正)することができるように構成されている。本実施例では、ジョブが開始される際に設定されたプレ帯電バイアスの目標電流(初期値)が、上記電流検知センサ25bの検知結果に基づいて変更される。また、ジョブが開始される際に不要と判断されてプレ帯電がOFF(0V)とされいた場合であっても、上記電流検知センサ25bの検知結果に基づいてプレ帯電がONとされることがある。この場合、プレ帯電バイアスの目標電流は、電流検知センサ25bの検知結果に基づいて設定することができる。
【0067】
本実施例では、ジョブの実行中に各記録材Sが二次転写部N2に搬送されるごとに、電流検知センサ25bによる電流の検知が行われる。そして、電流検知センサ25bの検知結果に基づいてプレ帯電バイアスの目標電流が変更された場合は、次に変更が必要と判断されるまで変更後の目標電流が維持される。
【0068】
本実施例では、記録材Sが二次転写部N2を通過している際に電流検知センサ25bの検知結果を取得するタイミングは、記録材Sの搬送方向における先端部(搬送方向における中央よりも先端側)が二次転写部N2を通過している間に設定される。このタイミングは、典型的には、記録材Sの搬送方向における先端側の画像形成領域(トナー像が転写され得る領域)外の領域(余白)が二次転写部N2を通過している間であるが、記録材Sの搬送方向における画像形成領域が二次転写部N2を通過している間でもよい。
【0069】
本実施例では、電流検知センサ25bによる電流の検知が行われる際には、トナー像を記録材Sに転写する際と実質的に同じ二次転写バイアス(同じ目標電圧で定電圧制御された二次転写バイアス)が二次転写内ローラ71に印加される。これにより、二次転写バイアスにより流れる電流と、記録材Sのトナー像転写面の帯電量に応じた電流と、が足し合わされた電流が電流検知センサ25bによって検知される。ただし、記録材Sの搬送方向における先端側の余白が二次転写部N2を通過している際に電流検知センサ25bによる電流の検知を行う場合などには、次のようにしてもよい。つまり、例えば、電流検知センサ25bによる電流の検知が行われる際に、トナー像を記録材Sに転写する際の二次転写バイアスとは異なる試験バイアスが二次転写内ローラ71に印加されてもよい。あるいは、電流検知センサ25bによる電流の検知が行われる際に、二次転写内ローラ71へのバイアスの印加は行われなくてもよい。二次転写内ローラ71へのバイアスの印加が行われない場合、記録材Sのトナー像転写面の帯電量に応じた電流が電流検知センサ25bによって検知される。つまり、記録材Sのトナー像転写面の帯電量に応じて流れる電流を検知できればよい。
【0070】
本実施例の構成では、例えば記録材SとしてユポYPI250が用いられる場合、例えば温度23℃、湿度5%RHの環境では、トナー像を記録材Sに適正に転写するためには、二次転写電流Inは-100μA以上(例えば-100~-120μA)必要である。そのため、本実施例では、電流検知センサ25bの検知結果と比較するための閾値が設定され、転写電流不足側に電流検知センサ25bの検知結果が閾値を超える(跨ぐ)場合に、プレ帯電バイアスの目標電流の変更が必要と判断される。具体的には、本実施例では、上記閾値は-100μAに設定される。なお、便宜上、電流値と閾値との大小関係については、絶対値で比較した場合の大小関係として説明する。つまり、本実施例では、電流検知センサ25bの検知結果が閾値である-100μA未満(例えば-80μA)の場合に、プレ帯電バイアスの目標電流の変更が必要と判断される。トナー像を記録材Sに適正に転写するために必要な二次転写電流Inは、記録材Sの種類、環境、更には印字面(二次転写部N2でトナー像が転写される面。片面印刷又は両面印刷の1面目であるか、両面印刷の2面目であるか。)によって異なることがある。そのため、記録材Sの種類、環境、印字面のうちの少なくとも1つに基づいて、上記閾値を変更することができる。例えば、絶対水分量が第1の値である場合の上記閾値の絶対値よりも、絶対水分量が第1の値よりも大きい第2の値である場合の上記閾値の絶対値を小さくするように設定することができる。なお、このような上記閾値の設定は、常温低湿環境(あるいは低温低湿環境)、常温常湿環境、高温高湿環境というように所定の温湿度環境(絶対水分量など)の範囲ごとに行うことができる。上記閾値は、予め設定されてテーブルデータなどとしてメモリ122に記憶されている。
【0071】
本実施例では、予め求められたプレ帯電バイアスの目標電流の変化による記録材Sのトナー像転写面の帯電量の変化の傾向を示す情報に基づいて、プレ帯電バイアスの目標電流が一度に変更される。つまり、上記情報に基づいて、電流検知センサ25bの検知結果が転写電流不足側に閾値を超えることがなくなるようにするためのプレ帯電バイアスの目標電流の変更量が求められる。具体的には、本実施例では、電流検知センサ25bの検知結果が閾値である-100μA以上(例えば-100~-120μA)となるように、プレ帯電バイアスの目標電流が一度に変更される。ただし、プレ帯電バイアスの目標電流の変更方法はこれに限定されるものではなく、プレ帯電バイアスの目標電流は徐々に変更されてもよい。プレ帯電バイアスの目標電流を徐々に変更する場合、所定の変更量(例えば絶対値で1~10μA)ごとに段階的に変更したり、直線的又は曲線的に変更したりすることができる。そして、例えば、電流検知センサ25bの検知結果が転写電流不足側に閾値を超えることがなくなった場合に、プレ帯電バイアスの目標電流の変更を終了することができる。
【0072】
本実施例では、ある記録材S(典型的にはジョブにおける1枚目の記録材S)において検知された電流に基づいてプレ帯電バイアスの目標電流の変更が必要と判断された場合、その記録材Sがプレ帯電部N3を通過している間に該変更が行われる。ただし、例えば、記録材Sのサイズ、必要なプレ帯電バイアスの目標電流の変更量などによっては、ある記録材Sにおいて検知された電流に基づいてプレ帯電バイアスの目標電流の変更が必要と判断された場合、その記録材Sがプレ帯電部N3を通過した後に該変更が行われてもよい。その記録材Sがプレ帯電部N3を通過した後とは、その記録材Sがプレ帯電部N3を通過した後のプレ帯電部N3に記録材Sがない時(紙間)、その記録材Sの後に搬送される記録材S(例えば次の記録材S)がプレ帯電部N3にある時を含む。
【0073】
また、本実施例では、上記閾値は1つ設定されているが、複数の閾値が設定されて、電流検知センサ25bの検知結果がそれぞれの閾値を超えるごとに段階的にプレ帯電バイアスの目標電流が変更されてもよい。
【0074】
6.制御手順
次に、本実施例におけるプレ帯電バイアス調整制御を含むジョブの制御手順について説明する。
図6は、本実施例におけるプレ帯電バイアス調整制御を含むジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。上述のように、本実施例では、ジョブが開始される際に、合成紙又は所定の高抵抗紙(超厚紙など)の紙種カテゴリーが選択された場合に、プレ帯電が必要と判断され、それ以外の紙種カテゴリーが選択された場合は、プレ帯電が不要と判断されるものとする。
【0075】
まず、制御部120は、ユーザーによって操作部130やパーソナルコンピュータなどの外部装置から、記録材Sの種類を指定する情報や画像情報を含むジョブの情報が入力されると(S101)、画像形成に用いられる記録材Sの種類を判定する(S102)。なお、記録材Sの種類を指定する情報は、記録材Sが収容されたいずれかのカセット11a、11bを指定する情報であってもよい。この場合、制御部120は、予め設定されたカセット11a、11bとそれに収容された記録材Sの種類との関係を示す情報から、画像形成に用いられる記録材Sの種類を判定することができる。そして、制御部120は、取得された記録材Sの種類の情報に基づいて、プレ帯電が必要であるか否かを判断する(S103)。
【0076】
制御部120は、S103でプレ帯電が必要と判断した場合、駆動ローラ84へのプレ帯電バイアスの印加を開始して(S104)、画像形成を開始する(S105)。なお、制御部120は、S103でプレ帯電が必要と判断した場合は、S104で記録材Sの種類に応じてプレ帯電バイアスの目標電流(初期値)を設定する。なお、前述のように、環境に応じてプレ帯電の要否の決定や、プレ帯電バイアスの目標電流の設定を行う場合、次のようにすればよい。つまり、制御部120は、S102において環境センサ18の検知結果を取得し、温湿度情報として例えば絶対水分量を求めて、S103、S104において温湿度情報に応じた上記決定、設定をそれぞれ行えばよい。また、前述のように、印字面に応じてプレ帯電の要否の決定や、プレ帯電バイアスの目標電流の設定を行う場合、次のようにすればよい。つまり、制御部120は、S102において印字面の情報を取得し、S103、S104において印字面に応じた上記決定、設定をそれぞれ行えばよい。また、制御部120は、S103でプレ帯電が不要と判断した場合、駆動ローラ84へのプレ帯電バイアスの印加を行わずに(0V)、画像形成を開始する(S105)。ここでは、説明の便宜上、プレ帯電バイアスの印加の開始と画像形成の開始とを直列的に記載しているが、プレ帯電バイアスの印加が開始される前に感光ドラム1上や中間転写ベルト70上へのトナー像の形成が開始されてもよい。
【0077】
制御部120は、記録材Sの搬送方向の先端が二次転写部N2に突入すると、電流検知センサ25bによる、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inの検知結果を取得する(S106)。そして、制御部120は、検知された電流値が閾値(例えば-100μA)未満であるか否かを判定する(S107)。制御部120は、S107で閾値未満であると判定した場合は、プレ帯電バイアスの目標電流を変更してプレ帯電バイアスの補正を行う(S108)。一方、制御部120は、S107で閾値以上であると判定した場合は、S109の処理に進む。
【0078】
本実施例では、記録材Sの種類として合成紙の紙種カテゴリーが選択された場合、目標電流を-60μAとしてプレ帯電バイアスの印加が行われる。これにより、記録材Sのトナー像転写面が約5kVに帯電させられる。また、本実施例の構成では、例えば記録材SとしてユポYPI250が用いられる場合、例えば温度23℃、湿度5%RHの環境では、トナー像を記録材Sに適正に転写するためには、二次転写電流Inは-100μA以上(例えば-100~-120μA)必要である。そのため、本実施例では、上記閾値は-100μAに設定されている。記録材SとしてユポYPI250が用いられる場合、温度23℃、湿度5%RHの環境では、記録材Sが二次転写部N2に到達した際の記録材Sのトナー像転写面は約5kVに帯電した状態を維持している(
図5参照)。そのため、この場合には、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inは-100μA以上(例えば-120μA)となり(表1)、プレ帯電バイアスの目標電流の変更は不要と判定される(S107のNo)。一方、記録材SとしてユポYPI250が用いられる場合、温度23℃、湿度60%RHの環境では、記録材Sが二次転写部N2に到達した際の記録材Sのトナー像転写面の帯電量は約3kVである(
図5参照)。そのため、この場合には、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inは-100μA未満(例えば-80μA)となり(表1)、プレ帯電バイアスの目標電流の変更が必要と判定される(S107のYes)。そして、例えば、温度23℃、湿度60%RHの環境において、検知された二次転写電流Inが-80μAである場合、プレ帯電バイアスの目標電流は、初期値の-60μAに-40μAが加算されて、-100μAに変更される(表1)。これにより、記録材Sが二次転写部N2に到達した際の記録材Sのトナー像転写面の帯電量が約5kVとなる。そのため、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inは-100μA以上(例えば-120μA)となり、トナー像を記録材Sに適正に転写することができる。つまり、プレ帯電バイアスを補正することで、記録材Sにトナー像を適正に転写するために必要な電荷をプレ帯電部N3で記録材Sのトナー像転写面に付与することができる。また、本実施例では、記録材Sの搬送方向における先端が二次転写部N2に突入したタイミングで、その記録材Sが二次転写部N2を通過している間に直ちに、プレ帯電バイアスの補正が行われる。そのため、プレ帯電バイアスが補正されたタイミング以降の画像品位の低下を軽減することができる。
【0079】
その後、制御部120は、ジョブにおいて指定された全ての画像の出力が終了したか否かを判断し(S109)、終了している場合はジョブの動作を終了し、終了していない場合はS106の処理に戻る。
【0080】
【0081】
なお、本実施例では、プレ帯電バイアス(記録材帯電バイアス)は定電流制御されるが、プレ帯電バイアスは定電圧制御されてもよい。記録材Sのトナー像転写面をトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させることができればよい。プレ帯電バイアスを定電圧制御する場合は、上述の実施例における目標電流に代えて、目標電圧を調整すればよい。
【0082】
また、本実施例では、二次転写バイアスは定電圧制御されるが、二次転写バイアスは定電流制御されてもよい。二次転写バイアスが定電流制御される場合、本実施例においてジョブの実行中に記録材Sが二次転写部N2を通過している際に電流検知センサ25bにより電流を検知したのに代えて、電圧検知センサ25aにより電圧を検知すればよい。検知される電圧の絶対値が大きいほど、プレ帯電による記録材Sのトナー像転写面の帯電量(絶対値)がより小さいことを意味する。
【0083】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、トナー像を担持する像担持体(中間転写ベルト)70と、像担持体70から記録材Sにトナー像を転写する転写部(二次転写部)N2を形成する転写部材(二次転写内ローラ71、二次転写外ローラ81)と、転写部N2に転写バイアスを印加する第1の印加部(二次転写電源)E4と、記録材Sの搬送方向における転写部N2よりも上流において、転写部N2へと搬送される記録材Sのトナー像が転写される面であるトナー像転写面をトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させる記録材帯電部材(二次転写ベルト駆動ローラ)84と、記録材帯電部材84に記録材Sのトナー像転写面を帯電させるための記録材帯電バイアス(プレ帯電バイアス)を印加する第2の印加部(プレ帯電電源)E5と、転写部N2に流れる電流又は転写部N2に印加される電圧を検知する検知部(本実施例では電流検知センサ25b)と、記録材Sが転写部N2を通過している際の検知部25bによる検知結果に基づいて、記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行する制御部120と、を有する。本実施例では、制御部120は、単数又は複数の記録材Sに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブの実行中に、記録材Sが転写部N2を通過している際の検知部25bによる検知結果に基づいて、記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行する。本実施例では、制御部120は、検知部25bにより検知された電流の絶対値が第1の値である場合に記録材帯電バイアスの設定を変更せず、検知部25bにより検知された電流の絶対値が前記第1の値よりも小さい第2の値である場合に記録材帯電バイアスの絶対値を大きくするように、記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行する。この場合、検知部25bによる電流の検知時に、転写部N2には第1の印加部E4により定電圧制御されたバイアスが印加される。また、制御部120は、検知部(電圧検知センサ)25aにより検知された電圧の絶対値が第1の値である場合に記録材帯電バイアスの設定を変更せず、検知部25aにより検知された電圧の絶対値が第1の値よりも大きい第2の値である場合に記録材帯電バイアスの絶対値を大きくするように、記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行することもできる。この場合、検知部25aによる電圧の検知時に、転写部N2には第1の印加部E4により定電流制御されたバイアスが印加される。また、本実施例では、上記像担持体70は、別の像担持体(感光ドラム)1からトナー像が転写される中間転写体(中間転写ベルト)である。
【0084】
以上説明したように、本実施例によれば、記録材Sの設定状態によらず、実際に画像形成に用いられる記録材Sに応じて、適切な転写性が得られるように、適切に転写前に記録材Sのトナー像転写面に必要な電荷を付与することができる。これにより、記録材Sが二次転写部N2に到達した際に記録材Sのトナー像転写面に必要な電荷が保持されていないことによって生じる画像品位の低下を軽減することができる。本実施例によれば、例えば、電気抵抗の高い記録材Sにおいて環境の変化などによって、転写前に記録材Sのトナー像転写面に付与することが必要な電荷が大きく変化する場合であっても、プレ帯電バイアスを補正して適切な転写性を得ることができる。このように、本実施例によれば、実際に画像形成に用いられる記録材Sに応じて、記録材Sが二次転写部N2に到達する前に記録材Sのトナー像転写面を適切にトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させることが可能となる。
【0085】
なお、本実施例における二次転写電流Inの閾値は一例であり、これに限定されるものではない。この閾値は、像担持体から記録材Sにトナー像が十分に転写されずに転写抜けや濃度薄などの画像不良が発生することを十分に抑制できる範囲で任意に設定することが可能である。
【0086】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0087】
1.本実施例の概要
実施例1では、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inの検知結果が転写電流不足側に閾値を超える場合にプレ帯電バイアスを補正した。これに対して、本実施例では、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inの検知結果が転写電流過剰側に閾値を超える場合にプレ帯電バイアスを補正する。
【0088】
例えば、実施例1と同様に、ジョブが開始される際に、合成紙又は所定の高抵抗紙(超厚紙など)の紙種カテゴリーが選択された場合に、プレ帯電が必要と判断され、それ以外の紙種カテゴリーが選択された場合は、プレ帯電が不要と判断されるものとする。本実施例の構成では、記録材Sの種類として合成紙の紙種カテゴリーが選択された場合、例えば温度23℃、湿度5%RHの環境では、二次転写バイアスだけでは転写電流が不足する。そのため、この場合、-60μAを目標電流としてプレ帯電バイアスの印加が行われる。
【0089】
しかし、設定された紙種カテゴリー情報と実際に画像形成に用いられる記録材Sの種類(特性)との不一致などにより、プレ帯電によって記録材Sのトナー像転写面に本来必要な電荷よりも過剰に電荷が付与されてしまうことが想定される。この場合、二次転写部N2で過剰な電流が流れて、二次転写部N2で放電が発生し、その放電の影響でトナー像のトナーの電荷の極性が反転するなどして、トナー像が部分的に転写されない「白抜け」などの画像不良が発生する可能性がある。
【0090】
そこで、本実施例では、実施例1と同様に、画像形成装置100は、ジョブにおいて記録材Sが二次転写部N2を通過している際に電流検知センサ25bによって検知された電流に基づいて、プレ帯電バイアスを調整(補正)することができるように構成されている。本実施例では、ジョブが開始される際に設定されたプレ帯電バイアスの目標電流(初期値)が、上記電流検知センサ25bの検知結果に基づいて変更される。また、ジョブが開始される際に必要と判断されてプレ帯電がONとされいた場合であっても、上記電流検知センサ25bの検知結果に基づいてプレ帯電がOFFとされることがある。
【0091】
本実施例の構成では、記録材Sに過剰な電流が流れて画像不良が発生することがない二次転写電流Inは-130μA未満である。そのため、本実施例では、電流検知センサ25bの検知結果と比較するための閾値が設定され、転写電流過剰側に電流検知センサ25bの検知結果が閾値を超える(跨ぐ)場合に、プレ帯電バイアスの目標電流の変更が必要と判断される。具体的には、本実施例では、上記閾値は-130μAに設定される。つまり、本実施例では、電流検知センサ25bの検知結果が閾値である-130μA以上(例えば-140μA)の場合に、プレ帯電バイアスの目標電流の変更が必要と判断される。記録材Sに過剰な電流が流れて画像不良が発生することがない二次転写電流Inは、記録材Sの種類、環境、更には印字面(二次転写部N2でトナー像が転写される面。片面印刷又は両面印刷の1面目であるか、両面印刷の2面目であるか。)によって異なることがある。そのため、記録材Sの種類、環境、印字面のうちの少なくとも1つに基づいて、上記閾値を変更することができる。例えば、絶対水分量が第1の値である場合の上記閾値の絶対値よりも、絶対水分量が第1の値よりも大きい第2の値である場合の上記閾値の絶対値を大きくするように設定することができる。なお、このような上記閾値の設定は、常温低湿環境(あるいは低温低湿環境)、常温常湿環境、高温高湿環境というように所定の温湿度環境(絶対水分量など)の範囲ごとに行うことができる。上記閾値は、予め設定されてテーブルデータなどとしてメモリ122に記憶されている。
【0092】
また、実施例1でプレ帯電バイアスの目標電流の絶対値を大きくする場合について説明した、プレ帯電バイアスの目標電流の変更方法や変更タイミングについてのその他の点は、本実施例でプレ帯電バイアスの目標電流の絶対値を小さくする場合にも当てはまる。
【0093】
2.制御手順
次に、本実施例におけるプレ帯電バイアス調整制御を含むジョブの制御手順について説明する。
図7は、本実施例におけるプレ帯電バイアス調整制御を含むジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。上述のように、本実施例では、ジョブが開始される際に、合成紙又は所定の高抵抗紙(超厚紙など)の紙種カテゴリーが選択された場合に、プレ帯電が必要と判断され、それ以外の紙種カテゴリーが選択された場合は、プレ帯電が不要と判断されるものとする。また、ここでは、環境は、温度23℃、湿度5%RHであるものとする。
【0094】
本実施例における
図7に示すS201~S209の処理は、それぞれ実施例1における
図6に示すS101~S109の処理と同様であり、S207、S208における判断内容、調整内容がそれぞれ実施例1とは異なる。
図7に示す手順における処理において、
図6に示す手順における処理と同様の処理については、適宜、説明を省略する。
【0095】
本実施例では、制御部120は、検知された電流値が閾値(例えば-130μA)以上であるか否かを判定する(S207)。制御部120は、S207で閾値以上であると判定した場合は、プレ帯電バイアスの目標電流を変更してプレ帯電バイアスの補正を行う(S208)。一方、制御部120は、S207で閾値未満であると判定した場合は、S209の処理に進む。
【0096】
本実施例では、記録材Sの種類として合成紙の紙種カテゴリーが選択された場合、目標電流を-60μAとしてプレ帯電バイアスの印加が行われる。これにより、記録材Sのトナー像転写面が約5kVに帯電させられる。また、本実施例の構成では、記録材Sに過剰な電流が流れて画像不良が発生することがない二次転写電流Inは-130μA未満である。そのため、本実施例では、上記閾値は-130μAに設定されている。ここで、紙種カテゴリー情報として合成紙が設定されているときに、記録材Sとして合成紙であるユポYPI250、又は合成紙ではないOKトップコート+128gsm紙(王子製紙株式会社の製品名)が用いられる場合について考える。OKトップコート+128gsm紙は、パルプを主成分とする紙の表面にコーティングが施されたコート紙(光沢紙)である。OKトップコート+128gsm紙は、ユポYPI250と同等の厚さを有するが、電気抵抗はユポYPI250よりも低い。記録材SとしてユポYPI250が用いられる場合、温度23℃、湿度5%RHの環境では、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inは-130μA未満(例えば-120μA)となり(表2)、プレ帯電バイアスの目標電流の変更は不要と判定される(S207のNo)。一方、記録材SとしてOKトップコート+128gsm紙が用いられる場合、温度23℃、湿度5%RHの環境では、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inは-130μA以上(例えば-140μA)となり(表2)、プレ帯電バイアスの目標電流の変化が必要と判定される(S207のYes)。そして、例えば、記録材SとしてOKトップコート+128gsm紙が用いられた場合において、検知された二次転写電流Inが-140μAである場合、プレ帯電バイアスの目標電流は、初期値の-60μAから-20μAが減算されて、-40μAに変更される(表2)。これにより、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inは-130μA以下(例えば-120μA)となり、過剰な電流が流れて画像不良が発生することなく、トナー像を記録材Sに適正に転写することができる。つまり、プレ帯電バイアスを補正することで、記録材Sにトナー像を適正に転写するために必要十分な電荷をプレ帯電部N3で記録材Sのトナー像転写面に付与することができる。なお、記録材SとしてOKトップコート+128gsm紙が用いられる場合に、紙種カテゴリー情報として正しくコート紙が設定された場合には、プレ帯電バイアスは印加されない(S203のNo)。そのため、温度23℃、湿度5%RHの環境では、記録材Sが二次転写部N2を通過している際の二次転写電流Inは-130μA未満(例えば-120μA)となり、プレ帯電は不要と判定される(S207のNo)。
【0097】
【0098】
なお、本実施例では、プレ帯電バイアス(記録材帯電バイアス)は定電流制御されるが、プレ帯電バイアスは定電圧制御されてもよい。記録材Sのトナー像転写面をトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させることができればよい。プレ帯電バイアスを定電圧制御する場合は、上述の実施例における目標電流に代えて、目標電圧を調整すればよい。
【0099】
また、本実施例では、二次転写バイアスは定電圧制御されるが、二次転写バイアスは定電流制御されてもよい。二次転写バイアスが定電流制御される場合、本実施例においてジョブの実行中に記録材Sが二次転写部N2を通過している際に電流検知センサ25bにより電流を検知したのに代えて、電圧検知センサ25aにより電圧を検知すればよい。検知される電圧の絶対値が小さいほど、プレ帯電による記録材Sのトナー像転写面の帯電量(絶対値)がより大きいことを意味する。
【0100】
このように、本実施例では、制御部120は、検知部(電流検知センサ)25bにより検知された電流の絶対値が第1の値である場合に記録材帯電バイアスの設定を変更せず、検知部25bにより検知された電流の絶対値が第1の値よりも大きい第2の値である場合に記録材帯電バイアスの絶対値を小さくするように、記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行する。この場合、検知部25bによる電流の検知時に、転写部N2には第1の印加部(二次転写電源)E4により定電圧制御されたバイアスが印加される。また、制御部120は、検知部(電圧検知センサ)25aにより検知された電圧の絶対値が第1の値である場合に記録材帯電バイアスの設定を変更せず、検知部25aにより検知された電圧の絶対値が第1の値よりも小さい第2の値である場合に記録材帯電バイアスの絶対値を小さくするように、記録材帯電バイアスの設定を変更する制御を実行することもできる。この場合、検知部25aによる電圧の検知時に、転写部N2には第1の印加部E4により定電流制御されたバイアスが印加される。
【0101】
以上説明したように、本実施例によれば、記録材Sの設定状態によらず、実際に画像形成に用いられる記録材Sに応じて、適切な転写性が得られるように、適切に転写前に記録材Sのトナー像転写面に必要十分な電荷を付与することができる。これにより、記録材Sが二次転写部N2に到達した際に過剰な電流が流れることにより発生する画像品位の低下を軽減することができる。本実施例によれば、例えば、紙種カテゴリー情報と実際の記録材Sの種類(特性)との不一致などにより、プレ帯電により過剰な電荷が付与される状態になっている場合であっても、プレ帯電バイアスを補正して適切な転写性を得ることができる。
【0102】
なお、本実施例における二次転写電流Inの閾値は一例であり、これに限定されるものではない。この閾値は、記録材Sが転写部を通過している際に過剰な電流が流れて転写部で放電が発生することによる、白抜けなどの画像不良の発生を十分に抑制できる範囲で、任意に設定することが可能である。
【0103】
また、実施例1における転写電流が不足する場合にプレ帯電バイアスの目標値の絶対値を大きくする制御と、本実施例における転写電流が過剰となる場合にプレ帯電バイアスの目標値の絶対値を小さくする制御と、を組み合わせて実施してもよい。
【0104】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0105】
上述の本実施例では、二次転写ベルト80の内周面側に設けられたローラ(上述の実施例では駆動ローラ84)を記録材帯電部材として用いているが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。いくつかの変形例について説明する。なお、変形例の構成についても、上述の実施例におけるものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については同一の符号を付して説明する。例えば、
図8に示すように、上述の本実施例におけるプレ帯電対向ローラ91に対応する記録材帯電部材としてのプレ帯電ローラ92に、プレ帯電電源E5によりトナーの正規の帯電極性とは逆極性(図示の例では正極性)のプレ帯電バイアスが印加される構成としてもよい。この場合、対向部材としての駆動ローラ(二次転写ベルト駆動ローラ)84は電気的に接地される。また、例えば、
図9に示すように、記録材Sの搬送方向において二次転写部N2よりも上流に、記録材Sを帯電するためのローラ対が設けられた構成としてもよい。
図9の構成では、プレ帯電装置9は、記録材Sのトナー像が転写される面とは反対側の面に接触するプレ帯電ローラ93と、記録材Sのトナー像が転写される面に接触するプレ帯電対向ローラ91と、を有して構成される。この場合も、
図8の構成と同様に、
図9の構成におけるプレ帯電対向ローラ91に対応するローラにトナーの正規の帯電極性とは逆極性のプレ帯電バイアスが印加され、
図9の構成におけるプレ帯電ローラ93に対応するローラが電気的に接地されてもよい。また、記録材Sの搬送方向において二次転写部N2よりも上流に、記録材Sを帯電するためのコロナ帯電器(記録材帯電部材としての放電部材などを有する。)などを設けてもかまわない。
【0106】
また、上述の実施例では、画像形成装置100は二次転写ベルト80を備えた二次転写ユニット8を有していたが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト70の外周面に直接接触する二次転写外ローラ81を有していてもよい。この場合、二次転写外ローラ81は、二次転写内ローラ71に向けて押圧され、中間転写ベルト70を介して二次転写内ローラ71に当接して、中間転写ベルト70と二次転写外ローラ81との接触部である二次転写部N2を形成する。また、例えば、
図10に示すように、二次転写ベルト80を備えた二次転写ユニット8を有する場合に、記録材Sの搬送方向において二次転写部N2よりも上流側に記録材Sを担持する二次転写ベルト80の面が形成されない構成とされてもよい。
【0107】
また、上述の実施例では、画像形成装置100は二次転写バイアスの給電方式として内給電方式を採用していたが、画像形成装置100は二次転写バイアスの給電方式として外給電方式を採用してもよい。つまり、例えば、上述の実施例における二次転写内ローラ71を電気的に接地して、上述の実施例における二次転写外ローラ81にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の二次転写バイアスを印加してもよい。
【0108】
また、上述の実施例では、記録材帯電部材(プレ帯電部材)、対向部材(プレ帯電対向部材)はそれぞれローラ状の部材であったが、本発明はこれに限定されるものではない。記録材帯電部材(プレ帯電部材)、対向部材(プレ帯電対向部材)は、それぞれ独立して、ローラ状の部材、ブラシ状の部材、シート状の部材、パッド状の部材などであってもよい。
【0109】
また、上述の実施例では、画像形成装置は、フルカラー画像を形成することが可能な中間転写方式を採用したタンデム型のカラー画像形成装置であった。ただし、画像形成装置は、タンデム型の画像形成装置に限定されるものではない。画像形成装置は、例えば、1つの第1の像担持体から順次第2の像担持体(中間転写体)にトナー像が転写され、第2の像担持体から記録材にトナー像が転写される構成(1ドラム型)であってもよい。また、画像形成装置は、フルカラー画像を形成することが可能な画像形成装置に限定されるものではなく、モノクロ(白黒やモノカラー)の画像のみ形成可能な画像形成装置であってもよい。この場合、例えば、像担持体(感光ドラムなど)と、転写バイアスが印加される転写部材(転写ローラなど)と、の接触部である転写部に関して、本発明が適用される。また、画像形成装置は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途の画像形成装置であってよい。
【符号の説明】
【0110】
1 感光ドラム
7 中間転写ユニット
8 二次転写ユニット
9 プレ帯電装置(記録材帯電装置)
70 中間転写ベルト
71 二次転写内ローラ
81 二次転写外ローラ
80 二次転写ベルト
84 二次転写ベルト駆動ローラ(記録材帯電部材)
91 プレ帯電対向ローラ(対向部材)
100 画像形成装置
S 記録材