(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014462
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】こんろ用ガスバーナ及び加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20250123BHJP
F23Q 3/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F23D14/06 A
F23Q3/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117037
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷野 涼
(72)【発明者】
【氏名】横山 敬仁
(72)【発明者】
【氏名】平田 健
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AA02
3K017AB01
3K017AB07
3K017AB08
3K017AB09
3K017AD01
(57)【要約】
【課題】こんろ用ガスバーナの点火性能を高める。
【解決手段】こんろ用ガスバーナ1は、複数の炎孔3を外周部に有する環状のバーナキャップ2と、バーナキャップ2が載置される上面45を有したバーナ本体4と、を備える。複数の炎孔3は、点火用炎孔31と、点火用炎孔31を挟んで周方向の両側に位置する一対の炎孔32と、を含む。一対の炎孔32の少なくとも一方は、混合ガスを斜め下方に噴出するように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炎孔を外周部に有する環状のバーナキャップと、
前記バーナキャップが載置される上面を有したバーナ本体と、を備え、
前記複数の炎孔は、点火用炎孔と、前記点火用炎孔を挟んで周方向の両側に位置する一対の炎孔と、を含み、
前記一対の炎孔の少なくとも一方は、混合ガスを斜め下方に噴出するように構成された下向き炎孔である、
こんろ用ガスバーナ。
【請求項2】
前記下向き炎孔には、混合ガスを斜め下方に噴出するための傾斜面が形成されている、
請求項1のこんろ用ガスバーナ。
【請求項3】
前記バーナ本体の前記上面の一部は、前記下向き炎孔よりも、前記バーナキャップの径方向外側にはみ出して位置する、
請求項1のこんろ用ガスバーナ。
【請求項4】
前記バーナ本体の前記上面は、前記バーナキャップが載置される載置面と、前記バーナキャップの前記複数の炎孔間の火移りを誘導する誘導面と、を含み、
前記下向き炎孔は、前記下向き炎孔から斜め下方に噴出した混合ガスが、前記誘導面に当たるように構成されている、
請求項1のこんろ用ガスバーナ。
【請求項5】
前記下向き炎孔の噴出口の上端は、前記複数の炎孔のうち前記点火用炎孔及び前記下向き炎孔を除いたものの噴出口の上端よりも、低い位置にある、
請求項1のこんろ用ガスバーナ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項のこんろ用ガスバーナと、
前記こんろ用ガスバーナが装着された調理器本体と、を備えた、
加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、こんろ用ガスバーナと、これを備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたこんろ用ガスバーナは、複数の炎孔を外周部に有する環状のバーナキャップを備え、これら複数の炎孔には、点火用炎孔が含まれている。
【0003】
上記のこんろ用ガスバーナにおいては、点火ターゲット部と点火プラグとの間でスパークを生じさせ、該スパークによって、点火用炎孔から噴出した混合ガスに点火を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のこんろ用ガスバーナにおいて、風の影響が及ぶ有風時には、点火用炎孔から噴出した混合ガスが飛ばされる場合があり、この場合には点火を失敗する可能性が高くなる。
【0006】
本開示が解決しようとする課題は、こんろ用ガスバーナの点火性能を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一様態に係るこんろ用ガスバーナは、複数の炎孔を外周部に有する環状のバーナキャップと、前記バーナキャップが載置される上面を有したバーナ本体と、を備える。前記複数の炎孔は、点火用炎孔と、前記点火用炎孔を挟んで周方向の両側に位置する一対の炎孔と、を含む。前記一対の炎孔の少なくとも一方は、混合ガスを斜め下方に噴出するように構成された下向き炎孔である。
【0008】
本開示の一態様に係る加熱調理器は、前記こんろ用ガスバーナと、前記こんろ用ガスバーナが装着された調理器本体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、こんろ用ガスバーナの点火性能を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態の加熱調理器の平面図である。
【
図2】
図2は、同上の加熱調理器が備えるこんろ用ガスバーナの平面図である。
【
図5】
図5は、同上のこんろ用ガスバーナの正面図である。
【
図7】
図7は、同上のこんろ用ガスバーナが備えるバーナキャップの斜視図である。
【
図8】
図8は、同上のバーナキャップの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.一実施形態
図1には、一実施形態の加熱調理器9が示されている。一実施形態の加熱調理器9は、ガスこんろであって、詳しくは、図示略のキッチンカウンターに設置されるドロップイン型のガスこんろである。以下の文中で用いる方向は、加熱調理器9が設置された状態を基準とする。
【0012】
(加熱調理器)
一実施形態の加熱調理器9は、こんろ用ガスバーナ1(以下、単に「ガスバーナ1」という。)と、ガスバーナ1が装着された調理器本体8と、を備える。
【0013】
調理器本体8は、ケーシング82及び天板84を有する。調理器本体8の箱型の外殻は、ケーシング82及び天板84で構成されている。ケーシング82は、上方に開放された開口を有する矩形箱型のケーシングである。天板84は、ケーシング82の開口を覆うように、ケーシング82上に設置されている。
【0014】
天板84には複数の孔86が上下に貫通形成されており、各孔86を通じて、対応するガスバーナ1の一部が上方に突出している。一実施形態の加熱調理器9においては、ガスバーナ1が左右に2つ設置され、これら左右のガスバーナ1の後ろに、別のガスバーナ1が1つ設置されている。左右のガスバーナ1は高火力のガスバーナであり、後ろのガスバーナ1は小火力のガスバーナである。
【0015】
調理器本体8は、複数の操作部88を更に有する。一実施形態の加熱調理器9においては、複数の操作部88のうち少なくとも1つが操作されることで、対応するガスバーナ1の点火及び消火の切換えや、対応するガスバーナ1の火力調整が行われる。
【0016】
更に、一実施形態の加熱調理器9は、調理器本体8の上面に設置される複数の五徳89を備える。複数の五徳89は、3つガスバーナ1に一対一で対応する3つの五徳89である。各五徳89は、対応するガスバーナ1の一部を囲んで位置するように、天板84の上面に設置されている。
【0017】
(ガスバーナ)
図2から
図6に示されるガスバーナ1は、3つのガスバーナ1に含まれる1つのガスバーナ1である。3つのガスバーナ1は、基本的に共通の構成を有する。
【0018】
ガスバーナ1は、複数の炎孔3を外周部に有する環状のバーナキャップ2と、バーナキャップ2が載置されるバーナ本体4と、鍋底温度センサ5と、ガス混合管6と、点火プラグ7と、を備える。
【0019】
(バーナキャップ)
図7等に示されるように、バーナキャップ2は、上下に貫通した円環状の部材である。バーナキャップ2は、例えばアルミニウム合金で形成されている。バーナキャップ2は、上下に貫通した貫通孔20を自身の中心部に有し、かつ複数の炎孔3を外周部に有する。
【0020】
複数の炎孔3は、バーナキャップ2の周方向において、互いに距離をあけて形成されている。本開示において単に「周方向」というときは、バーナキャップ2の周方向を意味する。
【0021】
バーナキャップ2は、中心部に貫通孔20が設けられた円筒状の内筒部21と、内筒部21よりも径方向外側に位置する円筒状の外筒部23と、内筒部21及び外筒部23の互いの上部をつなぐ連結部22と、を備える。本開示において単に「径方向」というときは、バーナキャップ2の径方向を意味する。
【0022】
内筒部21及び外筒部23は、平面視において同心円状に位置する。ここでの平面視は、バーナキャップ2の貫通孔20の軸線に沿った向きで見たときを意味する。
【0023】
内筒部21の下部は、外筒部23よりも下方に位置している。外筒部23の上部は、内筒部21よりも上方に位置している。外筒部23は、内筒部21よりも径方向において肉厚に形成されている。
【0024】
バーナキャップ2の連結部22は、上側の部分ほど径方向外側に位置するように、全体が傾斜している(
図3等を参照)。連結部22は、上側の部分ほど漸次的に勾配が小さくなるように形成されている。
【0025】
バーナキャップ2の上端部には、キャップカバー29が固定されている。キャップカバー29の外径寸法は、バーナキャップ2の外径寸法よりも大きい。
【0026】
(複数の炎孔)
複数の炎孔3は、バーナキャップ2の外筒部23に形成されている。複数の炎孔3は、周方向に互いに距離をあけて並んでいる。
【0027】
図7等に示されるように、各炎孔3は、外筒部23において上方に凹んだ形状を有する。各炎孔3は、径方向外側に向けて開口し、径方向内側に向けて開口し、かつ下側に向けて開口している。
【0028】
バーナキャップ2がバーナ本体4の上面45に載置された状態(以下、これを「バーナキャップ2の載置状態」という。)において、各炎孔3の下側の開口は、バーナ本体4の上面45によって下側から覆われる(
図6を参照)。バーナキャップ2の載置状態において、各炎孔3は、外筒部23を径方向内側及び外側に貫通する。
【0029】
一実施形態のガスバーナ1では、複数の炎孔3の向きは、径方向外側の向きを基準として、周方向の同一側に傾いている(
図8を参照)。
【0030】
そのため、一実施形態のガスバーナ1では、複数の炎孔3からの炎が、周方向の同一側に傾いて噴出する。これにより、ガスバーナ1から噴出する炎と、鍋等の調理容器(図示略)と、の接触範囲が広くなり、加熱調理における熱効率の向上や熱分布の改善が図られる。上記の傾きの角度は、例えば20°から27°の範囲内で設定されることが好ましい。
【0031】
バーナキャップ2が有する複数の炎孔3は、点火用炎孔31を含む。更に、複数の炎孔3は、点火用炎孔31の左右両側に位置する一対の炎孔32と、複数の他の炎孔33と、を含む。複数の他の炎孔33は、バーナキャップ2に設けられた複数の炎孔3のうち、点火用炎孔31及び一対の炎孔32を除いたものである。
【0032】
(点火用炎孔)
一実施形態のガスバーナ1においては、バーナキャップ2に、2つの点火用炎孔31が設けられている。周方向に並んだ2つの点火用炎孔31は、外筒部23の周方向の一部を構成する仕切部231(
図4等を参照)を介して、周方向に距離をあけて仕切られている。
【0033】
点火用炎孔31は、複数の炎孔3のなかで最も小さな炎孔である。点火用炎孔31は、その両側に位置する一対の炎孔32よりも小さく形成され、また、複数の他の炎孔33よりも小さく形成されている。
【0034】
点火用炎孔31が上方に凹んだ寸法は、一対の炎孔32が上方に凹んだ寸法よりも小さく、また、複数の他の炎孔33が上方に凹んだ寸法よりも小さい。
【0035】
バーナキャップ2の載置状態において、点火用炎孔31の下流端開口を構成する噴出口の上端は、バーナキャップ2が有する複数の炎孔3のなかで最も低く位置する。つまり、点火用炎孔31の噴出口の上端は、一対の炎孔32の下流端開口を構成する噴出口の上端よりも低く位置し、また、複数の他の炎孔33の下流端開口を構成する噴出口の上端よりも低く位置する。
【0036】
(一対の炎孔)
一対の炎孔32は、2つの点火用炎孔31を挟んだ周方向の両側に位置している。言い換えれば、周方向において、一対の炎孔32の間に2つの点火用炎孔31が位置している。
【0037】
一対の炎孔32と、その間に位置する2つの点火用炎孔31と、の間には、外筒部23の周方向の一部を構成する2つの仕切部232,233が介在している。一対の炎孔32の一方と、2つの点火用炎孔31のうちこれに近い側の点火用炎孔31と、は仕切部232を介して仕切られている。一対の炎孔32の他方と、2つの点火用炎孔31のうちこれに近い側の点火用炎孔31と、は仕切部233を介して仕切られている。
【0038】
一対の炎孔32はともに、混合ガスを斜め下方に噴出するように構成された炎孔であり、本開示ではこれを「下向き炎孔」という。
【0039】
具体的には、一対の炎孔32のそれぞれに、混合ガスを斜め下方に噴出するための傾斜面325が形成されている(
図6、
図9、及び
図10等を参照)。傾斜面325は、炎孔32の上端面の少なくとも一部を構成する面であり、炎孔32の噴出口に向けて、斜め下方に傾斜している。
【0040】
一実施形態のガスバーナ1では、傾斜面325は、炎孔32の噴出口に向けて一様に傾斜している。具体的には、仮想的な水平面P1を基準としたときに、炎孔32の傾斜面325は所定の角度θ1だけ傾いている(
図9及び
図10を参照)。角度θ1は、図示のものに限定されず、例えば60°程度に設定されることや、70°から50°の範囲内で設定されることや、65°から55°の範囲内で設定されることも好ましい。
【0041】
一対の炎孔32の噴出口の上端は、2つの点火用炎孔31の噴出口の上端よりも高く位置し、かつ、複数の他の炎孔33の噴出口の上端よりも低く位置する。
【0042】
(複数の他の炎孔)
複数の他の炎孔33は、バーナキャップ2の外筒部23のうち、2つの点火用炎孔31及び一対の炎孔32が設けられた部分を除いた部分に、周方向に互いに距離をあけて形成されている。
【0043】
複数の他の炎孔33のそれぞれには、混合ガスを斜め上方に噴出するための傾斜面335が形成されている(
図11を参照)。傾斜面335は、他の炎孔33の下流端開口を構成する噴出口に向けて、斜め上方に傾斜した面である。
【0044】
一実施形態のガスバーナ1では、傾斜面335は、他の炎孔33の噴出口に向けて一様に傾斜している。具体的には、仮想的な水平面P1を基準としたときに、他の炎孔33の傾斜面335は所定の角度θ2だけ傾いている。角度θ2は、例えば17°程度である。なお、傾斜面335が傾斜する角度θ2はこれに限定されず、例えば角度θ2が20°から15°の範囲内で設定されることや、25°から10°の範囲内で設定されることも好ましい。
【0045】
(点火ターゲット部)
一実施形態のガスバーナ1では、バーナキャップ2の周方向の一部から、径方向外側に向けて庇部25が突出し、庇部25から下方に点火ターゲット部26が突出している(
図4及び
図7等を参照)。
【0046】
庇部25は、バーナキャップ2の上端部から径方向外側に向けて突出した庇部本体251と、庇部本体251の周縁部から垂下した周壁253と、を含む。
【0047】
点火ターゲット部26は、平板状である庇部本体251の下面から、下方に突出している。周壁253と、周壁253に囲まれて位置する点火ターゲット部26と、の間には隙間が設けられている。
【0048】
点火ターゲット部26は、庇部25から下方に突出した主体部261と、主体部261の一部から更に下方に突出した突先部265と、を含む。主体部261は、水平断面が矩形状をなすブロック状の部分である。
【0049】
突先部265は、点火ターゲット部26の最も下側の部分であり、言い換えれば、点火ターゲット部26の下端部である。突先部265は、先側の部分ほど(つまり下側の部分ほど)水平断面が小さくなるように形成されている。
【0050】
一実施形態のガスバーナ1において、点火ターゲット部26は、2つの突先部265を含む。2つの突先部265は、周方向に互いに距離をあけて位置する。各突先部265は、バーナキャップ2の点火用炎孔31よりも径方向外側に位置し、かつ、点火用炎孔31よりも上方に位置する。
【0051】
2つの突先部265と、2つの点火用炎孔31と、は一対一に対応している。2つの突先部265のうち周方向の第1側に位置する突先部265は、2つの点火用炎孔31のうち周方向の第1側に位置する点火用炎孔31に対して、対向する位置にある。同様に、2つの突先部265のうち周方向の第2側に位置する突先部265は、2つの点火用炎孔31のうち周方向の第2側に位置する点火用炎孔31に対して、対向する位置にある。
【0052】
(バーナ本体)
図3等に示されるように、バーナ本体4は、円筒状の外形を有する。バーナ本体4は、ともに円筒状をなす内側カバー41及び外側カバー43を含み、内側カバー41及び外側カバー43の間に、流路42が形成されている。流路42は、ガス混合管6につながり、かつ上方に開放された流路である。
【0053】
内側カバー41及び外側カバー43は、互いに結合されている。内側カバー41の内側には、上下に貫通する貫通孔410が形成されている。外側カバー43は、外側カバー43よりも背が低い内側カバー41を、全周にわたって囲むように位置する。
【0054】
外側カバー43の上端部は、内側カバー41の上端部よりも高く位置する。外側カバー43の上端部が、バーナ本体4の上端部を構成し、外側カバー43の上面が、バーナ本体4の上面45を構成する。
【0055】
バーナ本体4の上面45は、バーナ本体4の全周にわたって円環状に形成されている。バーナ本体4の上面45は、バーナキャップ2が着脱可能に載置される載置面452と、載置面452の径方向外側に位置する誘導面454と、を含む(
図6を参照)。載置面452と誘導面454は、ともにバーナ本体4の全周にわたって形成されている。
【0056】
載置面452は、上面45の径方向内側の部分を構成する円環状の面である。載置面452は、径方向外側の部分ほど上に位置するように、全体が傾斜している。
【0057】
誘導面454は、上面45の径方向外側の部分を構成する円環状の面である。誘導面454は、バーナキャップ2が有する複数の炎孔3間の火移りを誘導するように構成されている。誘導面454は、円環状の平坦面であり、また、円環状の水平面である。
【0058】
載置面452と誘導面454は、段差部453を介して、径方向において連続して位置する。段差部453は、バーナ本体4の全周にわたって形成されている。段差部453は、平面視において円環状である。
【0059】
図6に示されるように、段差部453の表面は、径方向外側の部分ほど下に位置するように、全体が傾斜している。誘導面454は、載置面452の径方向外側の端部よりも下に位置する。
【0060】
バーナキャップ2の載置状態において、各々が下向き炎孔である一対の炎孔32の傾斜面325は、バーナ本体4の載置面452の真上に位置する。一対の炎孔32は、それぞれ径方向外側の部分ほど開口面積が小さくなるように形成されている。
【0061】
また、炎孔32の傾斜面325を含む仮想的な平面P5(
図6を参照)を基準としたとき、バーナキャップ2の載置状態において、バーナ本体4の上面45は平面P5よりも下に位置する。点火プラグ7と点火ターゲット部26の間のスパークを生じる空間は、平面P5よりも上に位置する。
【0062】
(鍋底温度センサ)
図3等に示されるように、鍋底温度センサ5は、バーナキャップ2よりも上方に突出するように、バーナキャップ2の貫通孔20に挿通されている。鍋底温度センサ5は、ガスバーナ1によって加熱される調理容器の底面に当接して、温度を検出するように構成されている。鍋底温度センサ5のうち調理容器に当接するように構成された面50は、バーナキャップ2よりも上方に位置する。
【0063】
(ガス混合管)
図2に示されるガス混合管6は、バーナ本体4の外側カバー43から水平方向に突出するように、外側カバー43と一体に設けられている。
【0064】
ガス混合管6は、バーナ本体4の流路42に連通する内部流路60と、内部流路60の上流端を構成する上流端開口61と、を有する。
【0065】
一実施形態のガスバーナ1では、上流端開口61に挿し込まれたガスノズル68を通じて、ガス混合管6に燃料ガスが供給されるとともに、上流端開口61とガスノズル68の隙間を通じて、周囲の空気が一次空気としてガス混合管6に供給される。ガス混合管6に供給された燃料ガスと一次空気は、ガス混合管6の内部流路60において混合された後に、混合ガスとしてバーナ本体4の流路42に供給される。
【0066】
(点火プラグ)
図5等に示されるように、点火プラグ7は、バーナ本体4の外周面に沿って起立するように設置されている。点火プラグ7の先端部には、放電電極71が設けられている。放電電極71は、バーナキャップ2が有する点火ターゲット部26と対向する位置にある。放電電極71は、点火ターゲット部26よりも径方向外側に位置し、かつ、点火ターゲット部26よりも下方に位置している。
【0067】
点火プラグ7は、点火ターゲット部26に設けられた2つの突先部265のそれぞれとの間で、スパークを生じさせる。
【0068】
一実施形態のガスバーナ1においては、点火プラグ7の放電電極71が、点火ターゲット部26の2つの突先部265との間でスパークを生じさせることで、2つの点火用炎孔31から噴出した混合ガスがそれぞれ点火される。その後、バーナ本体4の誘導面454に沿って火移りを生じることで、バーナキャップ2の各炎孔3から火炎が噴出する燃焼状態に至る。
【0069】
(作用効果)
上記の構成を備える一実施形態のガスバーナ1では、バーナキャップ2の載置状態において、バーナ本体4の上面45の一部(具体的には誘導面454)が、バーナキャップ2が有する複数の炎孔3よりも、径方向外側にはみ出して位置する。
【0070】
つまり、バーナキャップ2の載置状態においては、バーナ本体4の誘導面454が、一対の炎孔32(つまり一対の下向き炎孔)のそれぞれの噴出口よりも、径方向外側に位置する。誘導面454が、一対の炎孔32から径方向外側にはみ出す寸法は、例えば、1.5mmから3.0mmの範囲内で設置されることが好ましい。
【0071】
バーナ本体4の誘導面454は、一対の炎孔32のそれぞれの噴出口より下に位置する。すなわち、バーナ本体4の誘導面454は、一対の炎孔32のそれぞれの噴出口の斜め下方に位置する。
【0072】
一実施形態のガスバーナ1では、ガス混合管6を通じてバーナ本体4の流路42に混合ガスが供給されると、流路42を介してバーナキャップ2の複数の炎孔3に混合ガスが送り込まれる。複数の炎孔3を流れた混合ガスは、バーナキャップ2の径方向外側に噴出される。
【0073】
このとき、複数の炎孔3に含まれる複数の他の炎孔33からは、混合ガスが傾斜面335に沿って斜め上向きに噴出するのに対して、複数の炎孔3に含まれる一対の炎孔32からは、混合ガスが傾斜面325に沿って斜め下向きに噴出する(
図6の白抜き矢印を参照)。
【0074】
一対の炎孔32の噴出口を通じて斜め下方に噴出した混合ガスは、バーナ本体4の誘導面454のうち、各炎孔32の噴出口の斜め下方に位置する部分に当たり、その部分から斜め上方へと拡がる。
【0075】
つまり、一実施形態のガスバーナ1では、2つの点火用炎孔31を挟んだ周方向の両側において、バーナ本体4の上面45の一部に当って斜め上方へと拡散される混合ガスの流れが発生する。ここで生じる混合ガスの流れが、2つの点火用炎孔31から噴出する混合ガスに対して、横風の影響を抑える障壁のような役割を果たす。そのため、風の影響が及ぶ有風時においても、各点火用炎孔31から噴出した混合ガスが風に飛ばされて点火を失敗するという事態が、効果的に抑制される。
【0076】
点火が成功した後の燃焼状態において、一対の炎孔32から噴出する炎は、上向きに生じる自然対流の影響を受ける。そのため、混合ガスは一対の炎孔32から斜め下向きに噴出されるものの、一対の炎孔32から噴出する炎は、バーナ本体4の上面45に当たることなく安定的に形成される。
【0077】
2.変形例
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されない。本開示の意図する範囲内であれば、例えば以下に挙げる変形例のような適宜の設計変更を行うことが可能であり、また、以下の複数の変形例を適宜に組み合わせて適応することが可能である。
【0078】
一実施形態のガスバーナ1では、バーナキャップ2は2つの点火用炎孔31を有するが、点火用炎孔31の数はこれに限定されない。例えば、バーナキャップ2が1つの点火用炎孔31を有してもよい。この場合、1つの点火用炎孔31を挟んだ周方向の両側に位置するように、一対の炎孔32を設けることが好ましい。また、バーナキャップ2が3つ以上の点火用炎孔31を有する場合には、3つ以上の点火用炎孔31を挟んだ周方向の両側に位置するように、一対の炎孔32を設けることが好ましい。
【0079】
一実施形態のガスバーナ1では、一対の炎孔32の噴出口の上端が、複数の他の炎孔33の噴出口の上端よりも低く位置するが、これに限定されず、一対の炎孔32の噴出口の上端が、複数の他の炎孔33の噴出口の上端と同じ高さに位置してもよいし、あるいは、複数の他の炎孔33の噴出口の上端よりも高く位置することも有り得る。この場合であっても、一対の炎孔32から斜め下方に噴出した混合ガスは、バーナ本体4の上面45の一部に当たって拡がり、横風の影響を抑える障壁のような役割を果たし得る。
【0080】
一実施形態のガスバーナ1では、バーナキャップ2が有する複数の他の炎孔33の全てが、混合ガスを斜め上向きに噴出するように構成されているが、これに限定されず、例えば、複数の他の炎孔33のうち少なくとも1つが、混合ガスを水平又は斜め下向きに噴出するように構成されてもよい。
【0081】
一実施形態のガスバーナ1では、一対の炎孔32の両方が、混合ガスを斜め下方に噴出するように構成された下向き炎孔であるが、これに限定されず、一対の炎孔32の一方だけが下向き炎孔であってもよい。つまり、一対の炎孔32の少なくとも一方が下向き炎孔であればよい。一対の炎孔32の一方だけが下向き炎孔である場合でも、その下向き炎孔から斜め下方に噴出した混合ガスは、バーナ本体4の上面45の一部に当たって拡がり、横風の影響を抑える障壁のような役割を果たし得る。
【0082】
なお、一対の炎孔32の一方だけを下向き炎孔とする場合には、一対の炎孔32のうち、周方向の第1側の炎孔32だけを下向き炎孔とすることが好ましい。周方向の第1側は、バーナキャップ2の載置状態において、点火ターゲット部26を正面視したときの左側である。周方向の第2側は、バーナキャップ2の載置状態において、点火ターゲット部26を正面視したときの右側である。一実施形態のガスバーナ1では、バーナキャップ2の複数の炎孔3の向き(つまり、各炎孔3から混合ガスが噴出する向き)は、径方向外側の向きを基準として、周方向の第2側に傾いている。つまり、一対の炎孔32のうち、下向き炎孔をなす炎孔32が位置する側は、径方向外側の向きを基準として各炎孔3が傾く側とは反対の側であることが好ましい。
【0083】
一実施形態のガスバーナ1では、水平面P1を基準として、他の炎孔33の傾斜面335が傾く角度θ2が20°から15°の範囲内で設定されることや、25°から10°の範囲内で設定されることが好ましいとしているが、これに限定されず、例えば燃料ガスが従来よりも水素成分を多く含むものであった場合には、角度θ2がより広い範囲内(一例として5°から30°の範囲内)で設定されることも有り得る。
【0084】
一実施形態の加熱調理器9は、ドロップイン型のガスこんろであるが、これに限定されず、ガスバーナ1が装着される限りにおいて多様なタイプの機器を採用することが可能である。
【0085】
3.まとめ
以上、一実施形態及び各種の変形例に基づいて説明したように、第1の態様のこんろ用ガスバーナ(1)は、複数の炎孔(3)を外周部に有する環状のバーナキャップ(2)と、バーナキャップ(2)が載置される上面(45)を有したバーナ本体(4)と、を備える。複数の炎孔(3)は、点火用炎孔(31)と、点火用炎孔(31)を挟んで周方向の両側に位置する一対の炎孔(32)と、を含む。一対の炎孔(32)の少なくとも一方は、混合ガスを斜め下方に噴出するように構成された下向き炎孔である。
【0086】
この態様によれば、バーナキャップ(2)の一対の炎孔(32)の少なくとも一方から斜め下方に噴出した混合ガスが、バーナ本体(4)の上面(45)の一部に当たって拡がることで、点火用炎孔(31)から噴出する混合ガスに対して、横風の影響を抑える障壁のような役割を果たす。そのため、こんろ用ガスバーナ(1)の点火性能が高められる。
【0087】
第2の態様のこんろ用ガスバーナ(1)では、第1の態様において、下向き炎孔には、混合ガスを斜め下方に噴出するための傾斜面(325)が形成されている。
【0088】
この態様によれば、バーナキャップ(2)の下向き炎孔を流れる混合ガスは、その下向き炎孔の傾斜面(325)に沿って流れ、斜め下方へと円滑に噴出する。
【0089】
第3の態様のこんろ用ガスバーナ(1)では、第1又は第2の態様において、バーナ本体(4)の上面(45)の一部は、下向き炎孔よりも、バーナキャップ(2)の径方向外側にはみ出して位置する。
【0090】
この態様によれば、バーナキャップ(2)の下向き炎孔から噴出した混合ガスを、バーナ本体(4)の上面(45)の一部に対して効果的に当てることができる。
【0091】
第4の態様のこんろ用ガスバーナ(1)では、第1から第3のいずれか1つの態様において、バーナ本体(4)の上面(45)は、バーナキャップ(2)が載置される載置面(452)と、バーナキャップ(2)の複数の炎孔(3)間の火移りを誘導する誘導面(454)と、を含む。下向き炎孔は、その下向き炎孔から斜め下方に噴出した混合ガスが、誘導面(454)に当たるように構成されている。
【0092】
この態様によれば、バーナキャップ(2)の下向き炎孔から噴出した混合ガスを、バーナ本体(4)の誘導面(454)に当てて拡げ、横風に対する障壁の機能を有効に発揮させることができる。
【0093】
第5の態様のこんろ用ガスバーナ(1)では、第1から第4のいずれか1つの態様において、下向き炎孔の噴出口の上端は、複数の炎孔(3)のうち点火用炎孔(31)及び下向き炎孔を除いたものの噴出口の上端よりも、低い位置にある。
【0094】
この態様によれば、バーナキャップ(2)の下向き炎孔から噴出した混合ガスを、バーナ本体(4)の上面(45)の一部に対して効果的に当てることができる。
【0095】
第6の態様の加熱調理器(9)は、第1から第5の態様のいずれか1つのこんろ用ガスバーナ(1)と、こんろ用ガスバーナ(1)が装着された調理器本体(8)と、を備える。
【0096】
この態様によれば、高い点火性能を有する加熱調理器(9)を提供することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 こんろ用ガスバーナ
2 バーナキャップ
3 炎孔
31 点火用炎孔
32 炎孔
325 傾斜面
4 バーナ本体
45 上面
452 載置面
454 誘導面
8 調理器本体
9 加熱調理器