(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014473
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】着火具
(51)【国際特許分類】
F23Q 1/06 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
F23Q1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117054
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】501459181
【氏名又は名称】有限会社天研工業
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】天池 俊男
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電源を必要としない着火具を提供する
【解決手段】着火具1は、着火材に着火する着火棒11を、カード状の筐体21に収容するものである。または、本発明の実施の形態に係る着火具1は、少なくとも着火材を切るカンナ13と、着火材に着火する着火棒11と、を、カード状の筐体21に収容するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着火具であって、
着火材に着火する着火棒を、
カード状の筐体に収容する
着火具。
【請求項2】
着火具であって、
少なくとも着火材を切るカンナと、
前記着火材に着火する着火棒と、を、
カード状の筐体に収容する、
着火具。
【請求項3】
前記カンナは、
前記カード状の筐体の一方の面から、前記一方の面とは逆側の他方の面へと貫通しながら、前記カード状の筐体に固定することが可能で、
前記他方の面に一部はみ出した、前記カンナの刃部が、前記着火材を切ることを可能にする、
請求項2に記載の着火具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の着火具であって、
前記着火具が、さらに、前記着火材を切るノコギリを有する、
着火具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着火具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の着火具としては、合成樹脂部材等にて形成したカード本体と、そのカード本体に埋設する扁平型乾電池と、その乾電池に配線されるヒーター等の発熱体をカード本体の一部に配すると共に、発熱体ON,OFF用スイッチを備えたカード型ライターが、提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなカード型ライターは、乾電池をヒーター等の電源として使うため、アウトドアで使用する際には、アウトドアの醍醐味である、電源の無い環境を実現できない。また、停電などの際の非常用着火具として、このカード型ライターを使用する際には、乾電池が切れてしまっている場合があり、このカード型ライターを使えない。停電などの非常用着火具は、そんなに頻繁に使用するものではないため、長期間使用しない間に、乾電池が自己放電を起こしてしまい、知らぬ間に乾電池が切れているといったことは、十分に考えられる事態である。
【0005】
そこで本発明の目的は、電源を必要としない着火具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の着火具は、着火材に着火する着火棒を、カード状の筐体に収容する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の着火具は、少なくとも着火材を切るカンナと、着火材に着火する着火棒と、を、カード状の筐体に収容する。
【0008】
ここで、カンナは、カード状の筐体の一方の面から、一方の面とは逆側の他方の面へと貫通しながら、カード状の筐体に固定することが可能で、他方の面に一部はみ出した、カンナの刃部が、着火材を切ることを可能としても良い。
【0009】
また、着火具が、さらに、着火材を切るノコギリを有することとしても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、電源を必要としない着火具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る着火具の一方の面、つまり表面側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る着火具の他方の面、つまり裏面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る着火具の4つの収容物、それぞれの斜視図である。
【
図4】
図1に示した、着火具の表面のうち、それぞれ4つの収容物が、どのように収容されているかがわかるように、筐体の一部を外した平面模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る着火具のうちの収容物である、カンナを筐体に取り付けた状態の斜視図である。
【
図6】
図5に示す斜視図である、カンナを筐体に取り付けた状態の着火具の、平面図(左側)のA-A断面図(右側)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、金属マグネシウム等の棒のことを、「着火棒」と言う。金属マグネシウムの棒は、その表面を、刃物等で削って火花を発生させることができることから、着火材等を着火させることができる。また、本明細書では、カード状の収容容器であって、複数の収容部を凹ませたり、切り欠いて収容物を収容可能とし、必要に応じて収容部に覆い等を設けたものを、「カード状の筐体」と言うこととする。さらに、本明細書では、簡単に燃焼するものであって、木材、木屑を圧縮したもの、ティッシュペーパーまたは段ボール片等の紙材、麻等の植物の繊維等、蝋等を固めた固形燃料等を「着火材」と言うこととする。さらに、着火材を「削る」ことは、「切る」ことに含まれる。
【0013】
(本発明の実施の形態に係る着火具の構成)
本発明の実施の形態に係る着火具の構成を、
図1,
図2,
図3,
図4,
図5,および
図6に基づいて、以下に説明する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る着火具1は、着火材に着火する着火棒11を、カード状の筐体21に収容するものである。カード状の筐体21は、種々の収容物を収容する機能を有している。または、本発明の実施の形態に係る着火具1は、少なくとも着火材を切るカンナ13と、着火材に着火する着火棒11と、を、カード状の筐体21に収容するものである。さらには、本発明の実施の形態に係る着火具1は、前述したこれらの着火具1に、さらに、着火材を切るノコギリを有するものである。
【0015】
樹脂製のカード状の筐体21の一つの短辺の第1の端面21aは、収容物である着火棒11を収容している。また、カード状の筐体21の一つの長辺の第2の端面21bから、一つの長辺に隣り合う2つの短辺の第1の端面21a、第3の端面21cには、着火材等を切断するための、収容物である、ノコギリ12を収容している。また、カード状の筐体21の一つ短辺の第3の端面21cには、収容物であるカンナ13を収容している。また、カード状の筐体21の一つ短辺の第1の端面21aには、収容物である着火棒11を削って、火花を発生させる摩擦発生部材14を収容している。この摩擦発生部材14は、鉄製である。
【0016】
ここで、着火棒11は、第1の端面21aの厚み約5mmのカード状の筐体21の厚みと略同じ厚みの、着火棒11の取っ手11aと共に収容されている。また、ノコギリ12、カンナ13、摩擦発生部材14は、厚み約5mmのカード状の筐体21の、第1の端面21a、第2の端面21b、および第3の端面21cに収容され、厚みが約1mm程度の扁平なものである。
【0017】
また、着火棒11およびその取っ手11a、ノコギリ12、カンナ13、摩擦発生部材14は、第1の端面21a、第2の端面21b、および第3の端面21cに形成された溝の中に挿入されるように収容されている。その中で、ノコギリ12は、回転軸15の外周面とノコギリ12の円形穴12a,12aの一方の内周面に接触するようにする。ここで、回転軸15は、カード状の筐体21に固定されている。そして、ノコギリ12の円形穴12a,12aの一方の内周面が、回転軸15の外周面と摺接しながら回転することが可能となる。そのことにより、ノコギリ12が、カード状の筐体21の一つの長辺の第2の端面21bから、一つの長辺と隣り合う2つの短辺の第1の端面21a、第3の端面21cに、それぞれ形成された溝への挿入、およびその溝からの取り出しを可能とする。それらの溝への挿入、および溝からの取り出しは、使用者の指で露出部12bをつまみ、出し入れをすることで可能となる。
【0018】
また、着火棒11およびその取っ手11aは、使用者の指で取っ手11aをつまむことで、第1の端面21aへの挿入、および第1の端面21aからの取り出しを可能とする。カンナ13は、使用者の指で露出部13aをつまむことで、第3の端面21cへの挿入、および第3の端面21cからの取り出しを可能とする。摩擦発生部材14は、使用者の指で露出部14aをつまむことで、第1の端面21aへの挿入、および第1の端面21aからの取り出しを可能とする。
【0019】
その取り出しの方向は、着火棒11およびその取っ手11aの場合は、
図1に示す矢印A1の方向である。また、ノコギリ12の場合は、
図1に示す矢印A2の取り出し方向である。ノコギリ12の場合は、カード状の筐体21に固定された回転軸15の外周面と、ノコギリ12の円形穴12a,12aの一方の内周面との、摺接しながらの、ノコギリ12の回転を伴うため、その回転動作により、カーブを描くような取り出し方向となる。また、カンナ13の場合は、
図1に示す矢印A3の取り出し方向である。また、摩擦発生部材14の場合は、
図1に示す矢印A4の取り出し方向である。
【0020】
なお、摩擦発生部材14に溝部14bが設けられているのは、たとえば、麻等の植物の繊維を着火材として用いる場合に、その着火材を切断し、適切な長さにするためである。そのため、溝部14bの底部は、刃部14cとなっている。なお、着火棒11と摩擦発生部材14とで摩擦を生じさせ、火花を発生させる際に、着火棒11と擦り合わせる摩擦発生部材14の部分は、主に側面14dである。この側面14dは、表面が凸凹になっており、着火棒11と擦り合わせることで、強い摩擦を生じさせる。
【0021】
着火棒11およびその取っ手11a、ノコギリ12、カンナ13、摩擦発生部材14が、それぞれカード状の筐体21へどのように挿入されているのかが、着火具1の一方の面の斜視図である
図1と、着火具1の一方の面とは逆側の他方の面の斜視図である
図2だけでは分かりにくい。そこで、
図3には、4つの収容物の斜視図を示し、
図4には、
図2に示した、着火具1の他方の面のうち、それぞれ4つの収容物が、どのように収容されているかがわかるように、カード状の筐体21の一部を透明にしたり省略した図を示した。
【0022】
(本発明の実施の形態に係る着火具1の使い方の一例)
次の、着火具1の使い方の一例を、
図1、
図2、
図5および
図6に基づいて説明する。カンナ13は、カード状の筐体21の一方の面から、一方の面とは逆側の他方の面へと貫通しながら、カード状の筐体21に固定することが可能で、他方の面に一部はみ出した、カンナ13の刃部が、着火材を切る、あるいは削る。
【0023】
まず、
図1に示すカンナ13を、つまんで矢印A3の方向に取り出す。そして、カンナ13をカード状の筐体21の貫通孔22に貫通させる。この貫通は、カード状の筐体21の
図1に示す一方の面から、一方の面とは逆側の
図2に示す他方の面へと貫通させる貫通である。しかも、この貫通孔22は、斜め方向に貫通させるものであるため、カンナ13は、
図5および
図6に示すように斜め方向に傾斜している。
【0024】
この斜め方向の角度は、カンナ先端である刃部13bの刃の角度が、20°~45°の範囲で、着火材の削り面と接触するように調整されている。さらに、この角度は、30°~35°の範囲であることが、着火材の削り易さの観点から、より望ましい。
【0025】
そして、
図1,
図2また
図6に示す、貫通孔22の内部には、突起部(図示省略)が、貫通孔22の長手方向の両端にそれぞれ1つずつ固定されている。この2つの突起部が、カンナ13のショルダー部13c,13dにそれぞれ突き当り、一方の面から他方の面へとカンナ13が貫通するのを、阻止して定位置に留めるストッパーとしての役割を担っている。そして、2つの突起部を、カンナ13のショルダー部13c,13dにそれぞれ突き当てた状態で、カンナ13の、穴の直径が約6mmの穴部13eに、使用者の指の一部を押し当てて、カンナ13を突起部の方向に押圧したり、カンナ13の上部13fに使用者の指で抑えて、カンナ13を突起部の方向に押圧したりすることで、カンナ13を、カード状の筐体21に固定することを可能としている。
【0026】
そして、
図6に示すように、カンナ13の刃部13bが、
図2に示す他方の面に一部はみ出している。これは、一般的なカンナの刃が、カンナ本体の下端(したば)から僅かに出ているため、木材等を薄く削ることができるのと同様の機構である。本実施の形態では、木の枝等の着火材を薄く削ることができるように、このような機構を採用している。そして、着火材の削り片の一部は、
図6に示す削り片通路23を通って、
図1に示す一方の面側へと運ばれることとなる。なお、着火材の削り片の一部以外の他部は、削り片通路23を通過せずに、貫通孔22の内部に溜まるものもある。
【0027】
また、カンナの刃部13bの、カード状の筐体21の他方の面からの刃のはみ出し量は、0.3mm~2mmに調整されている。このはみ出し量は、0.5mm~1mmとすることが、着火材の削り易さの観点から、より望ましい。
【0028】
(本実施の形態によって得られる主な効果)
本実施の形態では、着火具1に着火棒11を使用しているため、乾電池等の電源を必要としない着火具1を提供することができる。また、この着火棒11は、水分があっても着火できる利点がある。たとえば、同じ乾電池等の電源を必要としない着火具として、マッチまたは、いわゆる100円ライター等を用いる着火具が考えられる。しかし、マッチは、水に濡れると、着火できない。また、100円ライターも、火打石の部分が濡れてしまうと、火花が出なくなることがあり、着火できなくなる。しかし、着火具1の着火棒は、摩擦発生部材14や鉄の刃物で着火棒11すなわちマグネシウムの棒を削り取るため、たとえば、小雨程度の水分量であれば、着火に十分な火花を出す事ができる。
【0029】
また、着火具1は、カンナ13を備えている。そのため、着火材を、カンナ13で削ることによって、着火材を一定の厚み等で薄くすることができ、着火材に火が点き易くなる
【0030】
また、着火具1が有するカンナ13は、カード状の筐体21の一方の面から、一方の面とは逆側の他方の面へと貫通しながら、カード状の筐体21に固定することが可能で、他方の面に一部はみ出した、カンナ13の刃部13bが、着火材を切ったり削ったりすることを可能にしている。このような構成にすることにより、カンナ13の寸法が小さくても、着火具1の使用者が、カンナ13の削り操作を、カンナ13の寸法よりも大きい寸法のカード状の筐体21を持って、操作することができ、操作しやすくなる。
【0031】
また、着火具1は、着火材を切るノコギリ12を有する。そのため、たとえば着火材が木の枝だった場合に、木から木の枝をノコギリ12で切り取ることができる。また、カンナ13で着火材を削るよりも、着火材をノコギリ12で細かく切り刻む方が着火が上手く行く着火材を使うのであれば、そのような選択をすることができる。
【0032】
(他の形態)
上述した本実施の形態の着火具1は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0033】
本実施の形態では、着火具1は、着火材を切るノコギリ12、着火材を削るカンナ13、摩擦発生部材14を備えている。しかし、このノコギリ12、カンナ13、および摩擦発生部材14は、必須のものではないため、省略することができる。特に、着火材として、ティッシュペーパーまたは段ボール片等の紙材、麻等の植物の繊維等、蝋等を固めた固形燃料等を用いる場合には、その着火材を切ったり削ったりする必要がない場合があるため、そのような場合は、ノコギリ12およびカンナ13を、省略することが好ましい。
【0034】
また、本実施の形態では、着火具1が有するカンナ13は、カード状の筐体の一方の面から、一方の面とは逆側の他方の面へと貫通しながら、カード状の筐体に固定することが可能で、他方の面に一部はみ出した、カンナ13の刃部13bが、着火材を切ることを可能にしている。しかし、このような構成は、必須のものではないため、省略することができる。また、カンナ13は、
図5,
図6に示すように、カード状の筐体21に固定せずに、使用者が手に持って、着火材を削る使い方をしても良い。
【0035】
また、本実施の形態では、着火具1が有する着火棒11は、金属マグネシウムの棒の表面を、摩擦発生部材14、または、鉄またはステンレス等の刃物等の表面が粗い物で削って火花を発生させるものである。しかし、この金属マグネシウムの棒は、フェロセリウム(鉄とセリウムの合金)、玉髄、チャート、石英、ジャスパー、サヌカイト、黒曜石、ホルンフェルス、フリント、黄鉄鉱、白鉄鉱等の棒等に代えても良い。また、これらの「棒」は、板状のもの、または塊状、球状等のものに代えたものを用いることができる。
【0036】
また、本実施の形態では、着火材に、木の枝を用いている。しかし、この木の枝に代えて、簡単に燃焼するものであって、木材、木屑を圧縮したもの、ティッシュペーパーまたは段ボール片等の紙材、麻等の植物の繊維等、蝋等を固めた固形燃料等を用いても良い。
【0037】
また、本実施の形態では、摩擦発生部材14に溝部14bを設けているが、溝部14bは必須の構成要素ではないため、省略することができる。また、摩擦発生部材14の役割をする部材の材質は、鉄に限らずステンレス鋼等の、他の金属材料でも良い。また、摩擦発生部材14の材料は、着火棒11よりも硬い材料が好ましく、例えばセラミック等でも良い。さらに、摩擦発生部材14の役割をする部材の形状は、ナイフの形状等の他の形状を採用しても良い。
【0038】
また、本実施の形態では、着火棒11の取っ手11aおよびカンナ13の穴部13eは、必須の構成要素ではないため、省略することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、カンナ13を、カード状の筐体21に固定するために、2つの突起部を、カンナ13のショルダー部13c,13dにそれぞれ突き当てた状態で、カンナ13の穴部13eに使用者の指の一部を押し当てて、カンナ13を突起部の方向に押圧したり、カンナ13の上部13fに使用者の指で抑えて、カンナ13を突起部の方向に押圧している。
【0040】
しかし、カンナ13を、カード状の筐体21に固定するためには、貫通孔22の孔寸法を、カンナ13の貫通孔22への貫通部の寸法と、略同じか、僅かに小さくしても良い。このような構成とすることで、カード状の筐体21が樹脂製であるため、カンナ13の押圧により、貫通孔22の孔形状を、若干変形することが可能で、その孔形状の変形によるカンナ13への締め付け力が、カンナ13を、カード状の筐体21に固定することを可能とする。
【符号の説明】
【0041】
1 着火具
11 着火棒
12 ノコギリ
13 カンナ
13b 刃部
21 カード状の筐体