(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014476
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】半導体モジュールおよび半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20250123BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117058
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河西 翔平
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA04
4M109CA02
4M109DB04
4M109DB09
4M109EA10
4M109EB19
4M109EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体モジュールの絶縁破壊を防ぎつつ、防水性を高める。
【解決手段】半導体モジュール200は、積層基板150と、積層基板上に設けられた複数の半導体チップ100と、複数の半導体チップに接続されたボンディングワイヤ240と、複数の半導体チップ、ボンディングワイヤおよび積層基板を収容する筐体210と、筐体の内部において、複数の半導体チップ、ボンディングワイヤおよび前記積層基板を覆う第1封止層221と、第1封止層の上方に設けられた第2封止層222と、第2封止層の上方に設けられた第3封止層223と、を備える。第1封止層は、筐体の内部において、ボンディングワイヤの上面よりも高い位置まで充填され、第2封止層の硬度は、第1封止層の硬度よりも大きく、第3封止層の硬度よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールであって、
積層基板と、
前記積層基板上に設けられた複数の半導体チップと、
前記複数の半導体チップに接続されたボンディングワイヤと、
前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を収容する筐体と、
前記筐体の内部において、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を覆う第1封止層と、
前記第1封止層の上方に設けられた第2封止層と、
前記第2封止層の上方に設けられた第3封止層と
を備え、
前記第1封止層は、前記筐体の内部において、前記ボンディングワイヤの上面よりも高い位置まで充填され、
前記第2封止層の硬度は、前記第1封止層の硬度よりも大きく、前記第3封止層の硬度よりも小さい
半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1封止層の上端と、前記ボンディングワイヤの上端との距離は、0.5mm以上、1.5mm以下である
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第1封止層の膜厚は、3.5mm以上、4.5mm以下である
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第1封止層は、シリコーンゲル材料またはフッ素ゲル材料を含む
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記第2封止層は、シリコーンエラストマー材料を含む
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第2封止層の厚さは、前記第1封止層の厚さよりも薄い
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記第3封止層は、シリコーンゲル材料を含む
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記第3封止層の厚さは、前記第1封止層の厚さよりも薄い
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記第3封止層の厚さは、前記第2封止層の厚さと同一である
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記第2封止層の熱膨張率は、前記第1封止層の熱膨張率よりも小さく、前記第3封止層の熱膨張率よりも大きい
請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記第1封止層と、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板との間に設けられたプライマ層を備える
請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項12】
半導体モジュールの製造方法であって、
積層基板を設ける段階と、
前記積層基板上に複数の半導体チップを設ける段階と、
前記複数の半導体チップにボンディングワイヤを接続する段階と、
前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を筐体の内部に収容する段階と、
前記筐体の内部において、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を覆うように第1封止層を充填する段階と、
前記第1封止層の上方を覆うように第2封止層を充填する段階と、
前記第2封止層の上方を覆うように第3封止層を充填する段階と
を備え、
前記第1封止層は、前記筐体の内部において、前記ボンディングワイヤの上面よりも高い位置まで充填され、
前記第2封止層の硬度は、前記第1封止層の硬度よりも大きく、前記第3封止層の硬度よりも小さい
半導体モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記第1封止層を充填する段階の後であって、前記第2封止層を充填する段階の前に、前記第1封止層を硬化させるための第1アニール段階と、
前記第2封止層を充填する段階の後であって、前記第3封止層を充填する段階の前に、前記第2封止層を硬化させるための第2アニール段階と、
前記第3封止層を充填する段階の後に、前記第3封止層を硬化させるための第3アニール段階と
を備える、請求項12に記載の半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールおよび半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「第1封止材7を被覆する態様で、第1実施形態による樹脂組成物を含んでなる第2封止材8」が設けられた半導体モジュールが、特許文献2には「封止層20と接触して、保護層21が設けられている」構成の半導体モジュールが、特許文献3には第1樹脂42より相対的に柔らかい第2樹脂44と、第2樹脂44より相対的に硬い第3樹脂46とを含む半導体モジュールが、それぞれ記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2017-171714号公報
[特許文献2] 特開2022-148684号公報
[特許文献3] 特開2022-64191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体モジュールの絶縁破壊を防ぎつつ、防水性を高めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体モジュールであって、積層基板と、前記積層基板上に設けられた複数の半導体チップと、前記複数の半導体チップに接続されたボンディングワイヤと、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を収容する筐体と、前記筐体の内部において、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を覆う第1封止層と、前記第1封止層の上方に設けられた第2封止層と、前記第2封止層の上方に設けられた第3封止層とを備え、前記第1封止層は、前記筐体の内部において、前記ボンディングワイヤの上面よりも高い位置まで充填され、前記第2封止層の硬度は、前記第1封止層の硬度よりも大きく、前記第3封止層の硬度よりも小さい半導体モジュールを提供する。
【0005】
上記半導体モジュールにおいて、前記第1封止層の上端と、前記ボンディングワイヤの上端との距離は、0.5mm以上であってよく、1.5mm以下であってよい。
【0006】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1封止層の膜厚は、3.5mm以上であってよく、4.5mm以下であってよい。
【0007】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1封止層は、シリコーンゲル材料またはフッ素ゲル材料を含んでよい。
【0008】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2封止層は、シリコーンエラストマー材料を含んでよい。
【0009】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2封止層の厚さは、前記第1封止層の厚さよりも薄くてよい。
【0010】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第3封止層は、シリコーンゲル材料を含んでよい。
【0011】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第3封止層の厚さは、前記第1封止層の厚さよりも薄くてよい。
【0012】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第3封止層の膜厚は、前記第2封止層の膜厚と同一であってよい。
【0013】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第2封止層の熱膨張率は、前記第1封止層の熱膨張率よりも小さくてよく、前記第3封止層の熱膨張率よりも大きくてよい。
【0014】
上記いずれかの半導体モジュールにおいて、前記第1封止層と、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板との間に設けられたプライマ層を備えてよい。
【0015】
本発明の第2の態様においては、半導体モジュールの製造方法であって、積層基板を設ける段階と、前記積層基板上に複数の半導体チップを設ける段階と、前記複数の半導体チップにボンディングワイヤを接続する段階と、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を筐体の内部に収容する段階と、前記筐体の内部において、前記複数の半導体チップ、前記ボンディングワイヤおよび前記積層基板を覆うように第1封止層を充填する段階と、前記第1封止層の上方を覆うように第2封止層を充填する段階と、前記第2封止層の上方を覆うように第3封止層を充填する段階とを備え、前記第1封止層は、前記筐体の内部において、前記ボンディングワイヤの上面よりも高い位置まで充填され、前記第2封止層の硬度は、前記第1封止層の硬度よりも大きく、前記第3封止層の硬度よりも小さい半導体モジュールの製造方法を提供する。
【0016】
上記半導体モジュールの製造方法において、前記第1封止層を充填する段階の後であって、前記第2封止層を充填する段階の前に、前記第1封止層を硬化させるための第1アニール段階と、前記第2封止層を充填する段階の後であって、前記第3封止層を充填する段階の前に、前記第2封止層を硬化させるための第2アニール段階と、前記第3封止層を充填する段階の後に、前記第3封止層を硬化させるための第3アニール段階とを備えてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】実施例1に係る半導体チップ100の上面図の一例を示す。
【
図1B】半導体チップ100の上面図の一例を示す。
【
図2】半導体モジュール200の構成の一例を示す。
【
図3A】半導体モジュール200の製造方法の一例を示す。
【
図3B】封止樹脂220を充填する段階の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
本明細書においては、半導体チップ100の厚み方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。素子、基板、層、膜またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向に限定されない。本例では、上下方向をZ軸方向、Z軸方向と垂直な面内において直交する2つの方向をX軸方向およびY軸方向と称する。XYZ軸は右手系を構成する。上面視とは、半導体チップ100をZ軸正方向から見た場合をいう。
【0021】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。NまたはPを冠記した層および領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NおよびPに付す+および-は、それぞれ、それが付されていない層または領域よりも高ドーピング濃度および低ドーピング濃度であることを意味する。
【0022】
図1Aは、実施例1に係る半導体チップ100の上面図の一例を示す。半導体チップ100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を備える半導体チップである。
【0023】
トランジスタ部70は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、還流ダイオード(FWD:Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。本例の半導体チップ100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を同一のチップに有する逆導通IGBT(RC-IGBT:Reverse Conducting IGBT)である。
【0024】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10は、シリコン基板である。半導体基板10は、活性領域110および外周領域120を有する。
【0025】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面側に設けられたコレクタ領域を半導体基板10の上面に投影した領域である。コレクタ領域は、第2導電型を有する。コレクタ領域は、一例としてP+型である。
【0026】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面側に設けられたカソード領域を半導体基板10の上面に投影した領域である。カソード領域は、第1導電型を有する。本例のカソード領域は、一例としてN+型である。
【0027】
トランジスタ部70およびダイオード部80は、XY平面内において交互に周期的に配列されてよい。本例のトランジスタ部70およびダイオード部80は、トランジスタ部およびダイオード部を複数有する。トランジスタ部70およびダイオード部80の間の領域において、半導体基板10の上方には、ゲート金属層50が設けられてよい。
【0028】
なお、本例のトランジスタ部70およびダイオード部80は、Y軸方向に延伸するトレンチ部を有する。但し、トランジスタ部70およびダイオード部80は、X軸方向に延伸するトレンチ部を有していてもよい。
【0029】
活性領域110は、トランジスタ部70およびダイオード部80を有する。活性領域110は、半導体チップ100をオン状態に制御した場合に、半導体基板10の上面と下面との間で主電流が流れる領域である。即ち、半導体基板10の上面から下面、または下面から上面に、半導体基板10の内部を深さ方向に電流が流れる領域である。本明細書では、トランジスタ部70およびダイオード部80をそれぞれ素子部または素子領域と称する。
【0030】
なお、上面視において、2つの素子部に挟まれた領域も活性領域110とする。本例では、素子部に挟まれてゲート金属層50が設けられている領域も活性領域110に含めている。
【0031】
ゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、ゲート金属層50は、アルミニウム、アルミニウム‐シリコン合金、またはアルミニウム‐シリコン-銅合金で形成される。ゲート金属層50は、トランジスタ部70のゲート導電部と電気的に接続され、トランジスタ部70にゲート電圧を供給する。ゲート金属層50は、上面視で、活性領域110の外周を囲うように設けられる。ゲート金属層50は、外周領域120に設けられるゲートパッド130と電気的に接続される。ゲート金属層50は、半導体基板10の外周端に沿って設けられてよい。また、ゲート金属層50は、上面視で、トランジスタ部70およびダイオード部80の間に設けられてよい。
【0032】
外周領域120は、上面視において、活性領域110と半導体基板10の外周端との間の領域である。外周領域120は、上面視において、活性領域110を囲んで設けられる。外周領域120には、半導体チップ100と外部の装置とをワイヤ等で接続するための1つ以上の金属のパッドが配置されてよい。なお、外周領域120は、エッジ終端構造部を有してよい。エッジ終端構造部は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。例えば、エッジ終端構造部は、ガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0033】
ゲートパッド130は、ゲート金属層50を介してトランジスタ部70のゲート導電部と電気的に接続される。ゲートパッド130は、ゲート電位に設定されている。本例のゲートパッド130は、上面視で矩形である。
【0034】
図1Bは、半導体チップ100の上面図の一例を示す。本例では、活性領域110の端部の拡大図を示している。
【0035】
トランジスタ部70は、半導体基板10の裏面側に設けられたコレクタ領域22を半導体基板10の上面に投影した領域である。コレクタ領域22は、第2導電型を有する。本例のコレクタ領域22は、一例としてP+型である。トランジスタ部70は、トランジスタ部70とダイオード部80の境界に位置する境界部90を含む。
【0036】
ダイオード部80は、半導体基板10の裏面側に設けられたカソード領域82を半導体基板10の上面に投影した領域である。カソード領域82は、第1導電型を有する。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。
【0037】
本例の半導体チップ100は、半導体基板10のおもて面において、ゲートトレンチ部40と、ダミートレンチ部30と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ウェル領域17とを備える。また、本例の半導体チップ100は、半導体基板10のおもて面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。
【0038】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15およびウェル領域17の上方に設けられている。また、ゲート金属層50は、ゲートトレンチ部40およびウェル領域17の上方に設けられている。本例のエミッタ電極52は、トランジスタ部70のエミッタ電位に設定されている。エミッタ電極52は、半導体基板10の上方に設けられ、トランジスタ部70およびダイオード部80と電気的に接続される、おもて面電極の一例である。
【0039】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム、アルミニウム‐シリコン合金、またはアルミニウム‐シリコン-銅合金で形成されてよい。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
【0040】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、層間絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上方に設けられる。層間絶縁膜38は、
図1Bでは省略されている。層間絶縁膜38には、コンタクトホール54、コンタクトホール55およびコンタクトホール56が貫通して設けられている。
【0041】
コンタクトホール55は、ゲート金属層50とトランジスタ部70内のゲート導電部とを接続する。コンタクトホール55の内部には、タングステン等で形成されたプラグが形成されてもよい。
【0042】
コンタクトホール56は、エミッタ電極52とダミートレンチ部30内のダミー導電部とを接続する。コンタクトホール56の内部には、タングステン等で形成されたプラグが形成されてもよい。
【0043】
接続部25は、エミッタ電極52またはゲート金属層50等と、半導体基板10とを電気的に接続する。一例において、接続部25は、ゲート金属層50とゲート導電部との間に設けられる。接続部25は、エミッタ電極52とダミー導電部との間にも設けられている。接続部25は、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料である。ここでは、接続部25は、N型の不純物がドープされたポリシリコン(N+)である。接続部25は、酸化膜等の絶縁膜等を介して、半導体基板10のおもて面の上方に設けられる。
【0044】
ゲートトレンチ部40は、所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分41と、2つの延伸部分41を接続する接続部分43を有してよい。
【0045】
接続部分43は、少なくとも一部が曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分41の端部を接続することで、延伸部分41の端部における電界集中を緩和できる。ゲートトレンチ部40の接続部分43において、ゲート金属層50がゲート導電部と接続されてよい。
【0046】
ダミートレンチ部30は、エミッタ電極52と電気的に接続されたトレンチ部である。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板10のおもて面においてU字形状を有してよい。即ち、ダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分31と、2つの延伸部分31を接続する接続部分33を有してよい。
【0047】
本例のトランジスタ部70は、2つのゲートトレンチ部40と3つのダミートレンチ部30を繰り返し配列させた構造を有する。即ち、本例のトランジスタ部70は、2:3の比率でゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30を有している。例えば、トランジスタ部70は、2本の延伸部分41の間に1本の延伸部分31を有する。また、トランジスタ部70は、ゲートトレンチ部40と隣接して、2本の延伸部分31を有している。
【0048】
但し、ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は本例に限定されない。ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は、1:1であってもよく、2:4であってもよい。また、トランジスタ部70においてダミートレンチ部30を設けず、全てゲートトレンチ部40としてもよい。
【0049】
ウェル領域17は、後述するドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面側に設けられた第2導電型の領域である。ウェル領域17は、半導体チップ100のエッジ側に設けられるウェル領域の一例である。ウェル領域17は、一例としてP+型である。ウェル領域17は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲で形成される。ウェル領域17の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域17に形成される。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域17に覆われてよい。
【0050】
コンタクトホール54は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の各領域の上方に形成される。また、コンタクトホール54は、ダイオード部80において、ベース領域14の上方に設けられる。コンタクトホール54は、境界部90において、コンタクト領域15の上方に設けられる。コンタクトホール54は、ダイオード部80において、ベース領域14の上方に設けられる。いずれのコンタクトホール54も、Y軸方向両端に設けられたウェル領域17の上方には設けられていない。このように、層間絶縁膜には、1又は複数のコンタクトホール54が形成されている。1又は複数のコンタクトホール54は、延伸方向に延伸して設けられてよい。
【0051】
境界部90は、トランジスタ部70に設けられ、ダイオード部80と隣接する領域である。境界部90は、コンタクト領域15を有する。本例の境界部90は、エミッタ領域12を有さない。一例において、境界部90のトレンチ部は、ダミートレンチ部30である。本例の境界部90は、X軸方向における両端がダミートレンチ部30となるように配置されている。
【0052】
メサ部71、メサ部91およびメサ部81は、半導体基板10のおもて面と平行な面内において、トレンチ部に隣接して設けられたメサ部である。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板10の部分であって、半導体基板10のおもて面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。各トレンチ部の延伸部分を1つのトレンチ部としてよい。即ち、2つの延伸部分に挟まれる領域をメサ部としてよい。
【0053】
メサ部71は、トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30またはゲートトレンチ部40の少なくとも1つに隣接して設けられる。メサ部71は、半導体基板10のおもて面において、ウェル領域17と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15とを有する。メサ部71では、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が延伸方向において交互に設けられている。
【0054】
メサ部91は、境界部90に設けられている。メサ部91は、半導体基板10のおもて面において、コンタクト領域15およびウェル領域17を有する。
【0055】
メサ部81は、ダイオード部80において、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に設けられる。メサ部81は、半導体基板10のおもて面において、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ウェル領域17とを有する。
【0056】
ベース領域14は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、半導体基板10のおもて面側に設けられた第2導電型の領域である。ベース領域14は、一例としてP-型である。ベース領域14は、半導体基板10のおもて面において、メサ部71およびメサ部91のY軸方向における両端部に設けられてよい。なお、
図1Bは、当該ベース領域14のY軸方向の一方の端部のみを示している。
【0057】
エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型の領域である。本例のエミッタ領域12は、一例としてN+型である。エミッタ領域12のドーパントの一例はヒ素(As)である。エミッタ領域12は、メサ部71のおもて面において、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に延伸して設けられてよい。エミッタ領域12は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。
【0058】
また、エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接している。エミッタ領域12は、境界部90のメサ部91には設けられなくてよい。
【0059】
コンタクト領域15は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。本例のコンタクト領域15は、メサ部71およびメサ部91のおもて面に設けられている。コンタクト領域15は、メサ部71またはメサ部91を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に設けられてよい。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40と接してもよいし、接しなくてもよい。また、コンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例においては、コンタクト領域15が、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40と接する。コンタクト領域15は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。なお、コンタクト領域15は、メサ部81にも設けられてよい。
【0060】
図1Cは、
図1Bにおけるa-a'断面の一例を示す図である。a-a'断面は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12を通過するXZ面である。本例の半導体チップ100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上方に形成される。
【0061】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
【0062】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下方に設けられた第1導電型の領域である。本例のバッファ領域20は、一例としてN型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、第2導電型のコレクタ領域22および第1導電型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0063】
コレクタ領域22は、トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方に設けられる。カソード領域82は、ダイオード部80において、バッファ領域20の下方に設けられる。コレクタ領域22とカソード領域82との境界は、トランジスタ部70とダイオード部80との境界である。
【0064】
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23に形成される。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。
【0065】
ベース領域14は、メサ部71、メサ部91およびメサ部81において、ドリフト領域18の上方に設けられる第2導電型の領域である。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0066】
エミッタ領域12は、メサ部71において、ベース領域14とおもて面21との間に設けられる。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。なお、エミッタ領域12は、メサ部91に設けられなくてよい。
【0067】
コンタクト領域15は、メサ部91において、ベース領域14の上方に設けられる。コンタクト領域15は、メサ部91において、ダミートレンチ部30に接して設けられる。他の断面において、コンタクト領域15は、メサ部71のおもて面21に設けられてよい。
【0068】
蓄積領域16は、ドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられる第1導電型の領域である。本例の蓄積領域16は、一例としてN+型である。蓄積領域16は、トランジスタ部70およびダイオード部80に設けられる。本例の蓄積領域16は、境界部90にも設けられている。これにより、半導体チップ100は、蓄積領域16のマスクずれを回避できる。
【0069】
また、蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に接してもよいし、接しなくてもよい。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、トランジスタ部70のオン電圧を低減できる。
【0070】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、おもて面21に設けられる。各トレンチ部は、おもて面21からドリフト領域18まで設けられる。エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられる領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0071】
ゲートトレンチ部40は、おもて面21に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0072】
ゲート導電部44は、半導体基板10の深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んでメサ部71側で隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0073】
ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、おもて面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミートレンチ部30は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0074】
層間絶縁膜38は、おもて面21に設けられている。層間絶縁膜38の上方には、エミッタ電極52が設けられている。層間絶縁膜38には、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続するための1又は複数のコンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール55およびコンタクトホール56も同様に、層間絶縁膜38を貫通して設けられてよい。
【0075】
図2は、半導体モジュール200の構成の一例を示す。本例の半導体モジュール200は、半導体チップ100と、積層基板150と、筐体210と、封止樹脂220と、リードフレーム230と、ボンディングワイヤ240と、ベース基板250とを備える。
【0076】
筐体210は、半導体チップ100を収容する。本例の筐体210の形状は直方体であるが、これに限定されない。筐体210の側壁および底部は、別々の部材で構成されていてもよい。例えば、筐体210の材料は、樹脂等の絶縁材料である。樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチルアクリレート(PBA)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ウレタンおよびシリコン等から選択されてよい。本例の筐体210は、複数の半導体チップ100、ボンディングワイヤ240および積層基板150からなる半導体組立体260を収容する。
【0077】
積層基板150は、ベース基板250の上面に設けられる。積層基板150上には、複数の半導体チップ100が設けられてよい。積層基板150は、第1金属層151、絶縁板152および第2金属層153を備える。例えば、積層基板150は、DCB(Direct Copper Bonding)基板またはAMB(Active Metal Brazing)基板であってよい。
【0078】
絶縁板152は、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)等のセラミックス等の絶縁材料で形成される。第1金属層151は、絶縁板152の下面に設けられ、はんだ部160を介して基板ベースの上面に固定されてよい。
【0079】
第2金属層153は、絶縁板152の上面に設けられた導電性の部材である。第2金属層153は、金属配線またはパッド等を含んでよい。第1金属層151および第2金属層153は、銅および銅合金などの金属材料を含む板で形成されてよい。第2金属層153の材料は、第1金属層151の材料と同一であってよく、異なっていてよい。第1金属層151および第2金属層153は、半田およびロウ等によって絶縁板152の表面に固定されてもよい。第2金属層153は、はんだ部160により半導体チップ100と電気的に接続されている。また、第2金属層153は、ボンディングワイヤ240によりリードフレーム230と電気的に接続されている。
【0080】
ベース基板250は、積層基板150の下方に設けられる。ベース基板250の下方には、ヒートシンク等の図示しない冷却装置が設けられてよい。ベース基板250には、TIM(Thermal Interface Materical)等の熱伝導性材料が塗布されてよい。
【0081】
はんだ部160は、半導体チップ100を第2金属層153に固定する。はんだ部160は、半導体チップ100および第2金属層153を、電気的および機械的に接続する。はんだ部160は、第2金属層153に含まれるパッドと、半導体チップ100のコレクタ電極24とを接続する。例えば、はんだ部160の材料は、Sn-Cu系またはSn-Sb系の半田である。
【0082】
リードフレーム230は、半導体チップ100と外部の制御装置等とを電気的に接続するために、筐体210の外部に露出して設けられる。リードフレーム230は、筐体210を貫通して、筐体210の内部まで延伸して設けられている。
【0083】
ボンディングワイヤ240は、複数の半導体チップ100に接続される。ボンディングワイヤ240は、複数の半導体チップ100同士を電気的に接続してよい。ボンディングワイヤ240は、半導体チップ100とリードフレーム230とを電気的に接続してよい。ボンディングワイヤ240は、第2金属層153とリードフレーム230とを電気的に接続してよい。
【0084】
封止樹脂220は、筐体210の内部において、複数の半導体チップ100、ボンディングワイヤ240および積層基板150からなる半導体組立体260を覆う第1封止層221を含む。封止樹脂220は、第1封止層221の上方に設けられた第2封止層222を含む。封止樹脂220は、第2封止層の上方に設けられた第3封止層223を含む。封止樹脂220は、筐体210の内部において半導体組立体260を封止し、半導体モジュール200の絶縁性を維持しつつ、防水性を保ち、半導体モジュール200の内部に水分または気体等が侵入することによる絶縁破壊を防止できる。
【0085】
本例の封止樹脂220は、互いに異なる材料で構成された第1封止層221、第2封止層222、および第3封止層223からなる3層構造を有する。封止樹脂220は、異なる材料からなる4層以上の構造を有してよい。本例の封止樹脂220は、材料の異なる3層構造を有することにより、半導体モジュール200の下方から上方に向かって、硬度および防水性が向上するように形成される。これにより、半導体モジュール200の絶縁破壊を防ぎつつ、防水性を向上することができる。封止樹脂220は、半導体モジュール200の下方から上方に向かって、ガラス転移温度および弾性率が向上するように形成されてよい。
【0086】
各封止層は、半導体モジュール200の下方から上方に向かって、硬度および防水性が徐々に変化するように設けられてよく、封止層全体で均一の特性となるように設けられてよい。これにより、封止樹脂220全体の硬度および防水性を、要求される特性に合わせて細かく調整できる。
【0087】
本例の封止樹脂220は、材料の異なる3層構造を有することにより、半導体モジュール200の下方から上方に向かって、熱膨張率が低下するように形成される。これにより、半導体モジュール200に繰り返し熱が印加された場合の封止樹脂220の割れを防ぐことができる。
【0088】
封止樹脂220は、材料として無機フィラーを含んでもよいし、含まなくてもよい。本例の封止樹脂220は、材料として無機フィラーを含まない。封止樹脂220は、SiO2を含むシリカフィラー等を材料として含まなくてよい。これにより、封止樹脂220の脆性を低く保ち、封止樹脂220に亀裂が発生することを抑制できる。
【0089】
第1封止層221は、筐体210の内部においてボンディングワイヤ240の上面よりも高い位置まで充填される。本例では、第1封止層221の上端と、ボンディングワイヤ240の上端との距離dは、0.5mm以上、1.5mm以下である。距離dは、第1封止層221の上端と、ボンディングワイヤ240の上端との最短距離であってよく、封止樹脂220の積層方向における距離であってよい。
【0090】
第1封止層221をボンディングワイヤ240の上面よりも高い位置まで充填することにより、第1封止層221および第2封止層222の界面における気泡および亀裂の発生を抑制し、半導体モジュール200の絶縁破壊を防止できる。また、第1封止層221の上端とボンディングワイヤ240の上端とを距離dだけ離間させることにより、半導体モジュール200が熱変形した場合であっても、ボンディングワイヤ240が第2封止層222に接触することを回避でき、半導体モジュール200の絶縁破壊を防止できる。
【0091】
第1封止層221の膜厚T1は、第2封止層222の膜厚T2よりも厚く、第3封止層223の膜厚T3よりも厚い。本明細書において、各封止層の膜厚とは、封止樹脂220の積層方向における膜厚の平均値であってよく、膜厚の最大値であってよい。第1封止層221の膜厚T1は、封止樹脂220の積層方向(Z軸方向)における第1封止層221の最下端から最上端までの距離の平均値であってよく、最大値であってよい。第1封止層221の膜厚T1は、封止樹脂220全体の膜厚の50%以上であってよく、70%以下であってよい。一例として、封止樹脂220全体の膜厚は6.5mmであり、第1封止層221の膜厚T1は、3.5mm以上、4.5mm以下である。
【0092】
第1封止層221は、他の封止層と比較して絶縁性の高い材料で構成される。一例では、第1封止層221は、シリコーンゲル材料またはフッ素ゲル材料を含む。第1封止層221を絶縁性の高い材料で構成することにより、半導体モジュール200が動作した際に、半導体モジュール200における導電性の構成要素間の絶縁不良を回避できる。
【0093】
第2封止層222は、第1封止層221の上面に設けられる。第2封止層222は、第1封止層221よりも硬度の大きい材料で構成される。本明細書において、硬度とは、侵入硬度であってよい。第2封止層222の硬度とは、アニール工程を経て硬化した後の状態における、第2封止層222の侵入硬度であってよい。
【0094】
第2封止層222は、第1封止層221よりも熱膨張率の小さい材料で構成される。第2封止層222は、第1封止層221よりも耐熱性および応力緩和特性に優れた材料で構成される。一例では、第2封止層222は、シリコーンエラストマー材料を含む。これにより、第1封止層221が熱変形により劣化や亀裂等が生じた場合であっても、第3封止層223にまで影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0095】
第2封止層222は、第1封止層221よりもガラス転移温度の高い材料で構成されてよい。第2封止層222は、第1封止層221よりも弾性率の高い材料で構成されてよい。これにより、繰り返しの熱履歴による割れの低減効果を達成できる。
【0096】
第2封止層222の膜厚T2は、第1封止層221の膜厚T1よりも薄い。第2封止層222の膜厚T2は、封止樹脂220の積層方向(Z軸方向)における第2封止層222の最下端から最上端までの距離の平均値であってよく、最大値であってよい。第2封止層222の膜厚T2は、第3封止層223の膜厚T3と同一であってよく、異なっていてよい。
【0097】
第3封止層223は、第2封止層222の上面に設けられる。第3封止層223は、第2封止層222よりも硬度の大きい材料で構成される。即ち、第2封止層222は、第3封止層223よりも硬度の小さい材料で構成される。第3封止層223の硬度を第1封止層221および第2封止層222の硬度よりも大きくすることにより、半導体モジュール200の内部で生じた劣化や亀裂等の影響を抑制し、半導体モジュール200の絶縁性を高めることができる。
【0098】
第3封止層223は、第2封止層222よりも熱膨張率の小さい材料で構成される。即ち、第2封止層222は、第3封止層223よりも熱膨張率の大きい材料で構成される。
【0099】
第3封止層223は、他の封止層と比較して防水性の高い材料で構成される。一例では、第3封止層223は、シリコーンゲル材料を含む。第3封止層223を防水性の高い材料で構成することにより、例えば船舶等の高湿度条件において半導体モジュール200を用いる場合であっても、半導体モジュール200の防水性を保つことができる。
【0100】
第3封止層223は、第2封止層222よりもガラス転移温度の高い材料で構成されてよい。第3封止層223は、第2封止層222よりも弾性率の高い材料で構成されてよい。これにより、繰り返しの熱履歴による割れの低減効果を達成できる。
【0101】
第3封止層223の膜厚T3は、第1封止層221の膜厚T1よりも薄い。第3封止層223の膜厚T3は、封止樹脂220の積層方向(Z軸方向)における第3封止層223の最下端から最上端までの距離の平均値であってよく、最大値であってよい。第3封止層223の膜厚T3は、第2封止層222の膜厚T2と同一であってよい。本明細書において、封止層の膜厚が同一であるとは、膜厚の差が0.5%以内であることをいう。
【0102】
半導体モジュール200は、第1封止層221と、複数の半導体チップ100、ボンディングワイヤ240および積層基板150との間に設けられたプライマ層224を備えてよい。プライマ層224は、筐体210の内側側壁に設けられてよい。プライマ層224の膜厚は、第1封止層221の膜厚T1よりも薄くてよく、第2封止層222の膜厚T2よりも薄くてよく、第3封止層223の膜厚T3よりも薄くてよい。一例では、プライマ層224の膜厚は、0μm以上、10μm以下である。
【0103】
プライマ層224は、硫化防止剤として機能する材料で構成される。一例では、プライマ層224は、ポリアミド系材料、ポリイミド系材料またはアミドイミド系材料を含む。プライマ層224を設けることにより、半導体モジュール200の動作安定性を向上できる。
【0104】
図3Aは、半導体モジュール200の製造方法の一例を示すフローチャートである。本例の製造方法は、積層基板150を設ける段階S100を備える。本例の製造方法は、積層基板150上に複数の半導体チップ100を設ける段階S110を備える。本例の製造方法は、複数の半導体チップ100にボンディングワイヤ240を接続する段階S120を備える。本例の製造方法は、複数の半導体チップ100、ボンディングワイヤ240および積層基板150からなる半導体組立体260を筐体210の内部に収容する段階S130を備える。本例の製造方法は、封止樹脂220を充填する段階S140を備える。各段階のうち、封止樹脂220を充填する段階S140以外の段階については、当業者であれば理解できる通常の方法によって実行されてよいので、本明細書では説明しない。
【0105】
図3Bは、封止樹脂220を充填する段階S140の一例を示すフローチャートである。封止樹脂220を充填する段階S140は、プライマ層224を形成する段階S141と、第1封止層221を充填する段階S142と、第1アニール段階S143と、第2封止層222を充填する段階S144と、第2アニール段階S145と、第3封止層223を充填する段階S146と、第3アニール段階S147とを備える。
【0106】
プライマ層224を形成する段階S141において、筐体210の内部に収容された半導体組立体260の表面にプライマ層224を積層する。プライマ層224の積層は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等で行われてよい。これにより、プライマ層224を均一に形成できる。プライマ層224を形成する段階S141は、省略されてよい。
【0107】
第1封止層221を充填する段階S142において、第1封止層221を形成するための樹脂を筐体210内に充填する。第1封止層221を充填する段階S142において、第1封止層221が筐体210の内部において、複数の半導体チップ100、ボンディングワイヤ240および積層基板150を覆うように樹脂が充填される。即ち、第1封止層は221、筐体210の内部において、ボンディングワイヤ240の上面よりも高い位置まで充填される。
【0108】
第1アニール段階S143において、第1封止層221を硬化する。第1アニール段階S143は、第1封止層221を充填する段階S142の後であって、第2封止層222を充填する段階S144よりも前に行われる。第1アニール段階S143において、第1封止層221は完全に硬化しなくてもよい。第1アニール段階S143の条件は、第1封止層221が完全に硬化する条件よりも温度が低くてもよく、完全に硬化する条件よりも加熱時間が短くてもよい。第1アニール段階S143の時間を短くすることで、封止樹脂220を形成するのに要する時間を短縮できる。第1アニール段階S143の温度は、一例として、50℃以上、65℃以下である。
【0109】
第2封止層222を充填する段階S144において、第2封止層222を形成するための樹脂を筐体210内に充填する。第1アニール段階S143において、第1封止層221が硬化または仮硬化しているので、第2封止層222を第1封止層221の上方を覆うように形成できる。
【0110】
第2アニール段階S145において、第2封止層222を硬化する。第2アニール段階S145は、第2封止層222を充填する段階S144の後であって、第3封止層223を充填する段階S146よりも前に行われる。第2アニール段階S145において、第1封止層221および第2封止層222は完全に硬化しなくてもよい。第2アニール段階S145の条件は、第1封止層221および第2封止層222が完全に硬化する条件よりも温度が低くてもよく、完全に硬化する条件よりも加熱時間が短くてもよい。第2アニール段階S145の時間を短くすることで、封止樹脂220を形成するのに要する時間を短縮できる。第2アニール段階S145の温度は、一例として、50℃以上、65℃以下である。
【0111】
第3封止層223を充填する段階S146において、第3封止層223を形成するための樹脂を筐体210内に充填する。第1アニール段階S143および第2アニール段階S145において、第2封止層222が硬化または仮硬化しているので、第3封止層223を第2封止層222の上方を覆うように形成できる。第3封止層223は、第2封止層222の上方から筐体210の上面と同一の高さまで充填されてよい。
【0112】
第3アニール段階S147において、第3封止層223を硬化する。第3アニール段階S147は、第3封止層223を充填する段階S146の後に行われる。第3アニール段階S147において、第1封止層221、第2封止層222および第3封止層223は完全に硬化しなくてもよい。第3アニール段階S147の条件は、第1封止層221、第2封止層222および第3封止層223が完全に硬化する条件よりも温度が低くてもよく、完全に硬化する条件よりも加熱時間が短くてもよい。第3アニール段階S147の時間を短くすることで、封止樹脂220を形成するのに要する時間を短縮できる。第3アニール段階S147の温度は、一例として、50℃以上、65℃以下である。
【0113】
第3アニール段階S147の後において、第1封止層221、第2封止層222および第3封止層223を硬化させるための追加のアニール段階を備えてもよい。追加のアニール段階の温度は、一例として185℃である。
【0114】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0115】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0116】
10・・・半導体基板、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・ウェル領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・おもて面、22・・・コレクタ領域、23・・・裏面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、30・・・ダミートレンチ部、31・・・延伸部分、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・接続部分、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・延伸部分、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・接続部分、44・・・ゲート導電部、50・・・ゲート金属層、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、55・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、70・・・トランジスタ部、71・・・メサ部、80・・・ダイオード部、81・・・メサ部、82・・・カソード領域、90・・・境界部、91・・・メサ部、100・・・半導体チップ、110・・・活性領域、120・・・外周領域、130・・・ゲートパッド、150・・・積層基板、151・・・第1金属層、152・・・絶縁板、153・・・第2金属層、160・・・はんだ部、200・・・半導体モジュール、210・・・筐体、220・・・封止樹脂、221・・・第1封止層、222・・・第2封止層、223・・・第3封止層、224・・・プライマ層、230・・・リードフレーム、240・・・ボンディングワイヤ、250・・・ベース基板、260・・・半導体組立体