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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014488
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】円板状基板の支持構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20250123BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250123BHJP
   B65G 47/80 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/68 N
B65G47/80 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117080
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】赤松 勝
(72)【発明者】
【氏名】古田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西田 洸人
(72)【発明者】
【氏名】米田 奈生
(72)【発明者】
【氏名】日野 綾
(72)【発明者】
【氏名】越智 元隆
【テーマコード(参考)】
3F072
5F131
【Fターム(参考)】
3F072AA16
3F072GE06
3F072GG01
3F072KB05
3F072KB06
3F072KE04
3F072KE07
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA00
5F131CA09
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB15
5F131EB32
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によって円板状基板を支持することが可能であり、かつ、円板状基板が損傷することを抑制できる円板状基板の支持構造を提供する。
【解決手段】円板状基板Dの支持構造1は、上下方向に沿って延びる中心線C1周りに配置され前記中心線C1に向かって下方向に傾斜する支持面であって前記円板状基板Dの円周部D1に下方から当接して前記円板状基板Dの自重を支える支持面を有する支持部20を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状基板を支持する支持構造であって、
上下方向に沿って延びる中心線周りに配置され前記中心線に向かって下方向に傾斜する支持面であって前記円板状基板の円周部に下方から当接して前記円板状基板の自重を支える支持面を有する支持部を備える、円板状基板の支持構造。
【請求項2】
前記支持面は、前記円板状基板の滑りを防止する滑り止め部を含む、請求項1に記載の円板状基板の支持構造。
【請求項3】
前記滑り止め部は、前記中心線を含む断面で見た場合、前記支持面に形成された凹凸形状を有する、請求項2に記載の円板状基板の支持構造。
【請求項4】
前記中心線を中心とする円の径方向に対する前記支持面の傾斜角度は、15°以上、30°以下である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の円板状基板の支持構造。
【請求項5】
前記円板状基板の前記円周部は、前記円板状基板の中心に向かって下方向に傾斜し前記支持面によって支持されることが可能な被支持面を有しており、
前記支持面は、前記被支持面に対して平行に延びるように傾斜している、請求項1乃至3の何れか1項に記載の円板状基板の支持構造。
【請求項6】
前記支持部は、前記中心線周りに間隔をおいて配置された複数の支持部材を有しており、
前記複数の支持部材の各々は前記支持面を構成する上面を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載の円板状基板の支持構造。
【請求項7】
前記複数の支持部材は、少なくとも3つの支持部材を有している、請求項6に記載の円板状基板の支持構造。
【請求項8】
前記複数の支持部材は、前記中心線周りに等間隔に配置されている、請求項6に記載の円板状基板の支持構造。
【請求項9】
前記円板状基板が前記支持部に支持された状態では、前記支持部のうち前記支持面以外の部分は、前記円板状基板に対して離間して配置されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載の円板状基板の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状基板の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ(円板状基板)の製造工程においては、ウェハの搬送のために、ウェハを支持する機構を必要としている。ウェハを支持する機構の一例として、デバイス製造の対象とならない部分であるウェハの円周部、いわゆるエッジ部分を保持する機構が用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウェハが載置される定置ステージと、ウェハのエッジを把持するための複数の把持部と、各把持部をウェハの中心方向に向けて移動させる把持機構と、を有するアライナー装置が開示されている。特許文献1に係るアライナー装置では、定置ステージ上に載置されているウェハのエッジに各把持部が係止するように、把持機構が各把持部をウェハの中心方向へと動作させる。これにより、ウェハが保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-243294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、各把持部をウェハの中心に向けて近接させる把持機構を必要とする。このため、前記技術では、アライナー装置の構成が複雑化する。
【0006】
また、前記技術では、各把持部がウェハのエッジ部に対して力を加えることにより、ウェハを保持している。このため、ウェハのエッジ部に過剰な力が作用し、これによりエッジ部が損傷する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成によって円板状基板を支持することが可能であり、かつ、円板状基板が損傷することを抑制できる円板状基板の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるのは、円板状基板を支持する支持構造であって、当該支持構造は、上下方向に沿って延びる中心線周りに配置され前記中心線に向かって下方向に傾斜する支持面であって前記円板状基板の円周部に下方から当接して前記円板状基板の自重を支える支持面を有する支持部を備える。
【0009】
本構成によれば、円板状基板の円周部が支持部の支持面によって下方から支持されるため、複雑な機構を必要とせず、円板状基板を支持することができる。また、支持面が前記円板状基板の自重を支えることにより円板状基板が支持されるため、前記自重より大きい力が円板状基板に作用することが抑制される。すなわち、円板状基板に過剰な力が作用することが抑制される。したがって、簡易な構成によって円板状基板を支持することが可能であり、かつ、円板状基板が損傷することを抑制できる。
【0010】
また、本構成では、支持面が傾斜しているため、円板状基板の中心位置を支持部の中心線に合わせた状態で円板状基板を支持し、支持部上で円板状基板が水平方向に移動することを防止することができる。
【0011】
加えて、仮に、円板状基板の円周部に面取りが形成されており、円周部のうち支持面に支持される被支持面が傾斜していたとしても、支持面が傾斜しているため、支持面と被支持面とを面接触させることができる。これにより、支持面は、被支持面を安定して支持することができる。
【0012】
上記の構成において、前記支持面は、前記円板状基板の滑りを防止する滑り止め部を含んでいてもよい。
【0013】
本構成によれば、円板状基板の円周部が支持面に対して滑ることが抑制される。このため、円板状基板の姿勢が安定した状態で円板状基板を支持することができる。
【0014】
上記の構成において、前記滑り止め部は、前記中心線を含む断面で見た場合、前記支持面に形成された凹凸形状を有していてもよい。
【0015】
本構成によれば、凹凸形状によって滑り止め部の表面粗さが向上する。これにより、滑り止め部が凹凸形状を有していない場合と比較して、支持面と円周部との静止摩擦係数が増加するため、円周部が支持面に対して滑ることがより一層抑制される。
【0016】
上記の構成において、前記中心線を中心とする円の径方向に対する前記支持面の傾斜角度は、15°以上、30°以下であってもよい。
【0017】
一般的に、円板状基板のエッジ部が面取り加工などによって傾斜面を有する場合、デバイス製造に用いられる機能面と前記傾斜面とがなす外角は、15°から30°の範囲内に設定されることが多い。このため、上記構成によれば、上記の傾斜面を被支持面とし、支持面によって支持することで、支持面と被支持面との接触面積を大きくすることができる。この結果、支持面によって、被支持面を安定的に支持することが可能になる。
【0018】
上記の構成において、前記円板状基板の前記円周部は、前記円板状基板の中心に向かって下方向に傾斜し前記支持面によって支持されることが可能な被支持面を有しており、前記支持面は、前記被支持面に対して平行に延びるように傾斜していてもよい。
【0019】
本構成によれば、支持面と被支持面との傾斜角度が一致するため、支持面と被支持面との接触面積を増加させることができる。これにより、支持面に、被支持面を安定的に支持させることが可能になる。
【0020】
上記の構成において、前記支持部は、前記中心線周りに間隔をおいて配置された複数の支持部材を有しており、前記複数の支持部材の各々は前記支持面を構成する上面を含んでいてもよい。
【0021】
本構成によれば、各支持部材同士の間に空間が形成されるため、この空間を利用してセンサなどの機器を配置することが可能になる。すなわち、円板状基板の支持構造の設計の自由度が向上する。
【0022】
上記の構成において、前記複数の支持部材は、少なくとも3つの支持部材を有していてもよい。
【0023】
本構成によれば、円板状基板を2点で支持する場合と比較して、バランスよく円板状基板を支持することができる。これにより、円板状基板の姿勢が崩れた際などに、円板状基板が支持部材から脱落することを抑制できる。
【0024】
上記の構成において、前記複数の支持部材は、前記中心線周りに互いに等間隔に配置されていてもよい。
【0025】
本構成によれば、互いに等間隔に配置されている複数の支持部材によって円周部が支持されるため、円板状基板をバランスよく支持することができる。
【0026】
上記の構成において、前記円板状基板が前記支持部に支持された状態では、前記支持部のうち前記支持面以外の部分は、前記円板状基板に対して離間して配置されていてもよい。
【0027】
本構成によれば、円板状基板において、円周部以外の部分が支持部によって支持されることが防止される。具体的には、円板状基板におけるデバイス製造に用いられる機能面が支持されることが防止される。これにより、前記機能面に異物等が付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る支持構造の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る円板状基板の拡大側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る支持構造の支持部周辺の上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る支持構造の本体部の上面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る支持構造の本体部の断面図である。
図6図5の領域VIを拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る支持構造1について説明する。図1は、支持構造1の断面図である。図2は、円板状基板Dの拡大側面図である。なお、以下では、各図におけるZ方向を上下方向といい、特に+Z方向を上方向、-Z方向を下方向という。
【0030】
本実施形態に係る支持構造1は、所定の方向(ここではX方向)に搬送される円板状基板Dを支持する。
【0031】
図2を参照して、本実施形態に係る円板状基板Dについて説明する。円板状基板Dは、例えば、半導体チップの原料となるシリコーン製のウェハである。円板状基板Dは、その円周部D1に、上方を向く上側傾斜面と、下方を向く下側傾斜面D11(被支持面の一例)と、を有している。上側傾斜面は、円板状基板Dの中心Oに向かって上方向に傾斜している平面である。下側傾斜面D11は、円板状基板Dの中心Oに向かって下方向に傾斜している平面である。本実施形態において、円板状基板Dの下側傾斜面傾斜角度θ1は、22.5°に設定されている。下側傾斜面傾斜角度θ1は、下側傾斜面D11と、デバイス製造に用いられる機能面D12であって下側傾斜面D11と交差する機能面D12と、がなす外角である。上側傾斜面及び下側傾斜面D11は、円周部D1に面取り加工を施すことにより形成される。
【0032】
支持構造1は、図1に示すように、テーブルユニット10と、テーブルユニット10に着脱可能に固定されており、円板状基板Dを支持する支持部20と、テーブルユニット10をX方向に搬送する搬送機構40と、を有している。
【0033】
テーブルユニット10は、支持部20に支持されている円板状基板Dを昇降及び回転させる。テーブルユニット10は、テーブル本体11と、ウェイト部12と、テーブル支持部13と、駆動部14と、ケーシング15と、を有している。
【0034】
図3は、支持構造1の支持部20周辺の上面図である。テーブル本体11は、円形板状を有しており、中心線C1回りに回転可能な回転テーブルである。テーブル本体11は、上方向を向く上面部を有しており、当該上面部に支持部20及びウェイト部12が着脱可能に固定されている。なお、図3の紙面左側において、ウェイト部12の図示は省略している。
【0035】
ウェイト部12は、テーブル本体11の上面部上に配置されており、テーブル本体11の回転のバランスを調整する。ウェイト部12は、円板の平板からなり、複数のウェイト締結具31を介してテーブル本体11に固定されている。複数のウェイト締結具31は、例えばダウエルピン、又は、ボルトなどによって構成される。図3に示すように、ウェイト部12には、テーブル本体11の径方向に沿って切り欠かれている複数の切り欠き部12Aが設けられている。
【0036】
図1に戻って、テーブル支持部13は、テーブル本体11を回転及び昇降可能な状態で支持する。具体的に、テーブル支持部13は、上端部と下端部とを有する。前記上端部は、テーブル本体11のうち下方を向く下面部に接続されている。前記下端部は、駆動部14に接続され、駆動部14によって駆動される。テーブル支持部13は、ケーシング15の天井部を貫通してテーブル本体11と駆動部14との間で上下方向に延在している。
【0037】
駆動部14は、ケーシング15の内部に配置されており、テーブル本体11を昇降させる駆動力と、テーブル本体11を回転させる駆動力とを発生させる。例えば、駆動部14は、図示しないサーボモータと、図示しない空気圧シリンダとを含んでいる。
【0038】
支持部20は、テーブル本体11の上面部上において、上下方向に沿って延びる中心線C1周りに配置されて、円板状基板Dを水平に支持する。図3に示すように、本実施形態に係る支持部20は、3つの支持部材200を有している。他の実施形態において、支持部20は、2つの支持部材200、あるいは、4つ以上の支持部材200を有しても良い。
【0039】
3つの支持部材200は、支持部20の中心線C1と円板状基板Dの中心Oとが同心となるように、中心線C1周りに間隔をおいて等間隔に配置されて円板状基板Dを支持する。具体的に、3つの支持部材200のそれぞれは、前記中心線C1を中心とする円(仮想円)の径方向において、前記中心Oと前記各支持部材200との間の距離がそれぞれ等しくなるように配置される。この構成によれば、各支持部材200に円板状基板Dを水平に支持させることが可能になる。各支持部材200の材料としては、円板状基板Dを傷つけず、かつ、円板状基板Dを汚染することがないものが用いられることが好ましい。例えば、ポリエーテルエーテルケトンや、ポリアセタールなどの樹脂材が用いられることが好ましい。
【0040】
次に、図3図6を参照して、3つの支持部材200の詳細な構成について説明する。図4は、支持部材200が有する本体部220の上面図である。詳細には、図4は、図3に示す3つの支持部材200のうち、中央上側に図示されている支持部材200が有する本体部220の上面図である。図5は、本体部220の断面図である。詳細には、図5は、図3の中央上側に図示されている本体部220を、中心線C1を含む断面で見た場合の断面図である。図6は、図5に示す領域VIを拡大した断面図である。本実施形態において、3つの支持部材200のそれぞれの構成は同一である。したがって、以下では、一の支持部材200の構成について説明し、残りの支持部材200についての説明は省略する。図3に示すように、支持部材200は、接続部210と、接続部210に着脱可能に固定されている本体部220と、を有している。
【0041】
接続部210は、テーブル本体11に着脱可能に固定されており、本体部220を支持する。具体的に、接続部210は、接続基部211と、延在部212と、を有する。
【0042】
接続基部211は、テーブル本体11上における前記切り欠き部12Aに囲まれた領域に配置されている。接続基部211は、複数の接続基部締結具32によってテーブル本体11に固定されている。つまり、接続基部211は、ウェイト部12を介することなく、テーブル本体11に直接的に固定されている。この構成によれば、接続基部211又はウェイト部12のテーブル本体11からの取り外しが容易になる。すなわち、接続基部211がテーブル本体11に固定されている状態でウェイト部12を取り外すこと、及び、ウェイト部12がテーブル本体11に固定されている状態で接続基部211を取り外すことが容易になる。複数の接続基部締結具32は、例えば図示しない頭部と軸部とを有するボルトによって構成される。図3に示すように、複数の接続基部締結具32は、径方向に沿って並ぶように配置されている。
【0043】
延在部212は、接続基部211から径方向外側に延びて、本体部220を下支えする。具体的に、延在部212は、その径方向における外側端部がテーブル本体11の外縁よりも径方向外側に位置するように、接続基部211から延びている。
【0044】
本体部220は、延在部212に着脱可能に固定されており、円板状基板Dを下支えする。図4及び図5に示すように、本体部220は、台部221と、支持体222とを有している。
【0045】
台部221は、延在部212の径方向における外側端部に固定されている。図4及び図5に示すように、台部221は、略直方体形状を有する土台であり、複数の台部固定用孔Hを有している。各台部固定用孔Hは、延在部212の上部に形成されている図示しない固定用穴に連通することができる。各台部固定用孔Hは、座ぐり形状を有しており、台部締結具33(図3)が上下方向に挿通されることを許容する。台部締結具33は、例えば頭部と軸部とを有するボルトである。図3に示すように、台部締結具33のそれぞれは、径方向に沿って並ぶように配置されている。台部締結具33のそれぞれは、台部固定用孔Hを上下方向に貫通するとともに前記固定用穴に螺合されることにより、台部221と延在部212とを締結する。
【0046】
支持体222は、図4及び図5に示すように、前記台部221に連接する略三角柱形状の構造体であり、上面222aを有している。具体的に、支持体222の径方向内側を向く平面が、上面222aを構成している。上面222aは、中心線C1周りに配置されて円板状基板Dの下側傾斜面D11に下方から当接して円板状基板Dの自重を支える支持面を構成する。図5に示すように、上面222aは、中心線C1に向かって下方に傾斜している。本実施形態において、上面222aの径方向(水平面)に対する上面傾斜角度θ2(図5参照)は、15°以上、30°以下に設定されている。より詳細には、上面傾斜角度θ2は、22.5°に設定されている。つまり、上面222aは、円板状基板Dの下側傾斜面D11に対して平行に延びるように傾斜している。また、図1及び図5に示すように、円板状基板Dが支持部20に支持された状態では、支持部20のうち上面222a以外の部分は、円板状基板Dに対して離間して配置されている。なお、本実施形態では、中心線C1から各支持部材200の上面222aに向かって径方向に沿って延びる仮想線のそれぞれの長さが同一となるように、各支持部材200が配置されている。
【0047】
上面222aは、円板状基板Dの滑りを防止する滑り止め部Kを含む。具体的に、本実施形態に係る滑り止め部Kは、図6に示すような段差形状からなる凹凸形状を有する。滑り止め部Kは、上面222aと下側傾斜面D11との間における静止摩擦係数を増加させる機能を有する。なお、円板状基板Dの端部が上記の凹凸形状に引っかかることで、滑りが防止されるものでもよい。滑り止め部Kは、上面222aに対して例えばエンボス加工又はシボ加工などの加工を施すことにより形成されてもよいし、上面222aに細い線状の溝を多数形成する、いわゆるヘアライン加工を施すことにより形成されてもよい。
【0048】
図1に戻って、搬送機構40は、支持部20に支持されている円板状基板Dを所定の方向(ここではX方向)に搬送する機能を有する。本実施形態に係る搬送機構40は、ローラー部41と、シリンダ部42とを有している。
【0049】
ローラー部41は、テーブルユニット10の下方に配置され、テーブルユニット10のX方向への移動をガイドすることが可能な状態で、テーブルユニット10を支持する。
【0050】
シリンダ部42は、図示しないエアポンプから吐出されるエアの供給を受けることに応じてX方向に伸縮し、ケーシング15を押圧することにより、当該伸縮方向にテーブルユニット10(ケーシング15)を動かすエアシリンダを含んでいる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る構成によれば、円板状基板Dの円周部D1が支持部20の支持面を構成する上面222aによって下方から支持される。このため、例えば、円板状基板Dの円周部D1に係止させる複数の把持部と、各把持部を円板状基板Dの中心Oに向けて移動させる把持機構と、によって円板状基板Dをグリップする装置を用いる場合と比較して、簡易な構成によって円板状基板Dを支持することができる。すなわち、複雑な機構を必要とせず、円板状基板Dを支持することができる。また、上面222aが前記円板状基板Dの自重を支えることにより円板状基板Dが支持されるため、前記自重より大きい力が円板状基板Dに作用することが抑制される。すなわち、円板状基板Dに過剰な力が作用することが抑制される。したがって、簡易な構成によって円板状基板Dを支持することが可能であり、かつ、円板状基板Dが損傷することを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態では、支持部材200の上面222aが傾斜しているため、円板状基板Dの中心Oの位置を支持部20の中心線C1に合わせた状態で円板状基板Dを支持し、支持部20上で円板状基板Dが水平方向に移動することを防止することができる。
【0053】
加えて、仮に、円板状基板Dに面取りが形成されており、円周部D1のうち上面222aに支持される被支持面(下側傾斜面D11)が傾斜していたとしても、本実施形態では、上面222aが傾斜しているため、上面222aと被支持面とを面接触させることができる。これにより、上面222aは、被支持面を安定して支持することができる。
【0054】
さらに、本実施形態によれば、円板状基板Dの上方に円板状基板Dを保持するための機構を設ける場合と比較して、円板状基板Dの上方が空間的に開放される。このため、上方から円板状基板Dを撮像するなどして円板状基板Dの品質を検査することが容易になる。
【0055】
さらに、本実施形態によれば、円板状基板Dの形状が多少変形していたとしても、円板状基板Dを安定的に支持することができる。例えば、円板状基板Dが平坦な形状ではなく反っている場合、具体的には、円板状基板Dの円周部D1が、部分的に波打ち形状を有している場合を想定する。ここで、前記複数の把持部と前記把持機構とによって円板状基板Dをグリップする前記装置では、前記波打ち部分に把持部が係止した場合、円周部D1に均等に力を伝えることができず、円板状基板Dをグリップし損ねる可能性がある。これに対して、本実施形態に係る支持構造1は、円板状基板Dの自重を下方から支持するため、円板状基板Dの形状に関わりなく、円板状基板Dを安定的に支持することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上面222aが滑り止め部Kを含んでいるため、円板状基板Dの円周部D1が上面222aに対して滑ることが抑制される。この結果、円板状基板Dの姿勢が安定した状態で円板状基板Dを支持することができる。
【0057】
また、本実施形態では、凹凸形状によって滑り止め部Kの表面粗さが向上する。これにより、滑り止め部Kが凹凸形状を有していない場合と比較して、上面222aと円周部D1との静止摩擦係数が増加するため、円周部D1が上面222aに対して滑ることがより一層抑制される。
【0058】
また、一般的に、円板状基板Dのエッジ部が面取り加工などによって傾斜面(下側傾斜面D11)を有する場合、デバイス製造に用いられる機能面D12と、下側傾斜面D11とがなす外角である下側傾斜面傾斜角度θ1は、15°から30°の範囲内に設定されることが多い。これに対して、本実施形態では、上面222aの上面傾斜角度θ2が15°以上、30°以下に設定されているため、上記の下側傾斜面D11を被支持面とし、各上面222aによって支持することで、上面222aと下側傾斜面D11との接触面積を大きくすることができる。この結果、上面222aによって、下側傾斜面D11を安定的に支持することが可能になる。
【0059】
加えて、仮に、下側傾斜面傾斜角度θ1が15°より小さく設定される場合、角度が浅いため、円板状基板Dを水平方向において十分に拘束することが困難である。この場合、円板状基板Dを搬送する際に発生する衝撃によって、円板状基板Dの中心Oの位置ズレが生じ易くなる。また、仮に、下側傾斜面傾斜角度θ1が30°より大きく設定される場合、円板状基板Dが支持部20に強く嵌まり込み、円板状基板Dを支持部20から取り外すことが困難になる可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、円板状基板Dの中心Oの位置を支持部20の中心線C1に合わせつつ、円板状基板Dを支持部20から好適に取り外すことができる。
【0060】
また、本実施形態では、本体部220の上面222aと円板状基板Dの下側傾斜面D11との傾斜角度が一致するため、上面222aと下側傾斜面D11との接触面積を増加させることができる。これにより、上面222aに、下側傾斜面D11を安定的に支持させることが可能になる。
【0061】
さらに、本実施形態では、テーブル本体11と支持部20とが着脱可能に構成されている。具体的には、テーブル本体11と、各支持部材200の接続部210(接続基部211)とが、接続基部締結具32によって締結されている。この構成によれば、円板状基板Dのサイズ(直径)に応じて、支持部材200を交換することができる。すなわち、直径が比較的小さい円板状基板Dを支持する場合には、径方向における長さが比較的短い支持部材をテーブル本体11に固定すればよく、直径が比較的大きい円板状基板Dを支持する場合には、径方向における長さが比較的長い支持部材をテーブル本体11に固定すればよい。このように、本実施形態では、支持部材200を交換可能にすることにより、支持構造1の汎用性が向上している。なお、径方向における長さが比較的短い支持部材としては、例えば径方向外側に位置している台部固定用孔Hから上面222aまでの径方向における距離が比較的短い支持部材を用いることができる。また、径方向における長さが比較的長い支持部材としては、例えば径方向外側に位置している台部固定用孔Hから上面222aまでの径方向における距離が比較的長い支持部材を用いることができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、接続部210と本体部220とが着脱可能に構成されている。具体的に、本実施形態では、接続部210の延在部212と本体部220の台部221とが、台部締結具33によって締結されている。この構成によれば、下側傾斜面D11の下側傾斜面傾斜角度θ1に応じて、上面222aの上面傾斜角度θ2が調整されるように、本体部220を交換することができる。例えば、支持構造1が搬送する円板状基板Dの種類が変更されて、下側傾斜面D11の下側傾斜面傾斜角度θ1が30°に変更された場合を想定する。この場合、作業者は、接続部210に装着されている本体部220を取り外して、種類変更後の円板状基板Dを好適に支持することができる新たな本体部を接続部210に固定すればよい。すなわち、作業者は、上面傾斜角度θ2が、30°又はこれに近い角度に設定されている上面を有する新たな本体部を、接続部210に固定し直せばよい。これにより、下側傾斜面D11と上面との接触面積が大きくなるため、円板状基板Dをより一層安定的に支持することが可能になる。
【0063】
また、本実施形態では、各支持部材200同士の間に空間が形成されるため、この空間を利用してセンサなどの機器を配置することが可能になる。すなわち、支持構造1の設計の自由度が向上する。
【0064】
さらに、本実施形態では、各支持部材200同士の間に空間が形成されるため、仮に、円板状基板Dが平坦な形状を有していない場合であっても、円板状基板Dを安定的に支持することができる。例えば、撓み形状を有する撓み部を円板状基板Dが部分的に有していたとしても、当該撓み部を前記空間に逃がした状態で支持部20に円板状基板Dを安定的に支持させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、支持部20が3つの支持部材200を有するため、円板状基板Dを2点で支持する場合と比較して、バランスよく円板状基板Dを支持することができる。これにより、円板状基板Dの姿勢が崩れた際などに、円板状基板Dが支持部材200から脱落することを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、互いに等間隔に配置されている3つの支持部材200によって円周部D1が支持されるため、円板状基板Dをバランスよく支持することができる。
【0067】
また、本実施形態において、円板状基板Dが支持部20に支持された状態では、支持部20のうち上面222a以外の部分は、円板状基板Dに対して離間して配置されている。この結果、円板状基板Dにおいて、円周部D1以外の部分が支持部20によって支持されることが防止されている。具体的には、機能面D12が支持されることが防止されている。これにより、機能面D12に異物等が付着することが抑制されている。
【0068】
以上、本発明の一実施形態に係る支持構造1について説明した。なお、本発明は上記の形態に限定されるものではない。本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
【0069】
(1)上記の実施形態では、支持部20が3つの支持部材200を有する例について説明したが、支持部材200の数は適宜変更可能である。
【0070】
例えば、支持部20は、上部における直径が円板状基板Dの直径と略同一に設定されており、すり鉢形状を有する単一の支持部材を有していてもよい。あるいは、支持部20は、径方向において互いに対向しており、それぞれが略U字形状を有する一対の支持部材を有していてもよい。つまり、支持部20は、2つの支持部材を有していてもよい。
【0071】
(2)上記実施形態では、上面222aが平面形状を有する例について説明したが、上面222aの形状はこれに限定されるものではなく、下方又は上方に膨出する曲面形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 :支持構造(円板状基板の支持構造)
10 :テーブルユニット
11 :テーブル本体
12 :ウェイト部
12A :切り欠き部
13 :テーブル支持部
14 :駆動部
15 :ケーシング
20 :支持部
31 :ウェイト締結具
32 :接続基部締結具
33 :台部締結具
40 :搬送機構
41 :ローラー部
42 :シリンダ部
200 :支持部材
210 :接続部
211 :接続基部
212 :延在部
220 :本体部
221 :台部
222 :支持体
222a :上面
C1 :中心線
D :円板状基板
D1 :円周部
D11 :下側傾斜面(被支持面)
H :台部固定用孔
K :滑り止め部
O :中心
θ1 :下側傾斜面傾斜角度
θ2 :上面傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6