(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025144957
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】研削盤用ワーク支持装置及びこれを備える研削盤
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20250926BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20250926BHJP
B24B 5/08 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
B24B41/06 J
B24B41/06 K
B24B5/04
B24B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044900
(22)【出願日】2024-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034AA05
3C034BB75
3C043AA01
3C043AB09
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
(57)【要約】
【課題】シューの交換時間を短縮できる研削盤用ワーク支持装置を提供する。
【解決手段】研削盤1において平置き又は縦置き姿勢で配置されるワークWを支持するワーク支持装置4であり、ワークWの外周面Wbを支持するシュ―6を保持したシューホルダ7と、シューホルダ7が分離可能に取り付けられる基板8とを備える。基板8には、第1支軸X1回りに旋回することにより、基板8との間にシューホルダ7を挟持する挟持姿勢、及びシューホルダ7を挟持しない非挟持姿勢をとることができるクランパ9と、第2支軸X2回りに旋回することにより、挟持姿勢をとったクランパ9とその旋回方向で係合してクランパ9の旋回を規制する旋回規制姿勢、及びクランパ9の旋回を許容する旋回許容姿勢をとることができるロック部材12と、が設けられる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円環状のワークの周面を研削する研削盤に平置き又は縦置き姿勢で配置される前記ワークの外周面を支持するワーク支持装置であって、
前記ワークの外周面を支持するシューが設けられたシューホルダと、このシューホルダが分離可能に取り付けられる基板とを備え、
前記基板に、第1支軸回りに旋回することにより、前記基板との間に前記シューホルダを挟持する挟持姿勢、及び前記シューホルダを挟持しない非挟持姿勢をとることができるクランパと、第2支軸回りに旋回することにより、前記挟持姿勢をとった前記クランパとその旋回方向で係合して前記クランパの旋回を規制するロック姿勢、及び前記クランパの旋回を許容するロック解除姿勢をとることができるロック部材と、を設けたことを特徴とする研削盤用ワーク支持装置。
【請求項2】
前記クランパは、これが前記挟持姿勢をとったとき、前記シューホルダとの間で弾性的に圧縮変形する弾性部を有する請求項1に記載の研削盤用ワーク支持装置。
【請求項3】
前記ロック姿勢をとった前記ロック部材は、前記クランパのうち前記第1支軸が設けられた側とは反対側の端部で前記クランパと係合する請求項1に記載の研削盤用ワーク支持装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の研削盤用ワーク支持装置を備えた研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面円環状のワークの周面に研削加工を施す研削盤において平置き又は縦置き姿勢で配置されるワークを支持するワーク支持装置に関する。なお、上記の「断面円環状のワークの周面」とは、全体としてリング状又は円筒状をなしたワークの内周面又は外周面、と同義であり、以下同様とする。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、断面円環状のワークの周面を研削(センタレス研削)する研削盤に装着されるワーク支持装置が記載されている。このワーク支持装置は、平置き又は縦置き姿勢のワークの径方向外側に周方向に間隔を空けて配置される2つのシューを備えており、これら2つのシューは、研削加工時に回転するワークの外周面を接触支持する。シューは、シューホルダ(特許文献1においては「シュー固定部材」)に保持された状態で使用され、シューホルダは、複数のボルトを用いてワーク支持装置の基板に対して固定されている。これによりシューホルダを基板に対してしっかりと固定することができるので、シューホルダの意図せぬ移動等に起因したワークの支持精度低下を防止し、ワークを精度良く研削することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のワーク支持装置において、シューは、支持すべきワーク(研削対象のワーク)の径方向寸法や軸方向寸法等に応じた最適なものが使用される。このため、シューを保持したシューホルダは、研削対象のワークが、径方向寸法等が異なるものに変更される都度交換される。しかしながら、特許文献1のように、シューホルダが複数のボルトを用いて基板に対して固定されていると、各ボルトの取り外し及び取り付け(再取り付け)に手間を要する分、シューホルダの交換作業に多くの時間を要し、研削盤のダウンタイムが顕著になる。
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明は、研削対象のワークの外周面を支持するために設けられるシュー(を保持したシューホルダ)の交換時間を短縮できる研削盤用ワーク支持装置を実現し、もって研削盤の稼働率向上に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、断面円環状のワークの周面に研削加工を施す研削盤において平置き又は縦置き姿勢で配置されるワークを支持するワーク支持装置であって、ワークの外周面を支持するシューを保持したシューホルダと、このシューホルダが分離可能に取り付けられる基板とを備え、
基板に、第1支軸回りに旋回することにより、基板との間にシューホルダを挟持する挟持姿勢、及びシューホルダを挟持しない非挟持姿勢をとることができるクランパと、第2支軸回りに旋回することにより、上記挟持姿勢をとったクランパとその旋回方向で係合してクランパの旋回を規制する旋回規制姿勢、及びクランパの旋回を許容する旋回許容姿勢をとることができるロック部材と、を設けたことを特徴とする。
【0007】
上記の構成を有する研削盤用ワーク支持装置によれば、平置き姿勢(水平姿勢)又は縦置き姿勢(垂直姿勢)で配置されるワークの周面を研削する際には、基板に設けたクランパを挟持姿勢にすると共にロック部材を旋回規制姿勢にすることにより、シューホルダを基板に対して固定することができる。その一方、研削対象のワーク変更等に伴ってシューホルダを交換する必要が生じた際には、まず、旋回規制姿勢をとっているロック部材を第2支軸回りに旋回(回転)させることで旋回許容姿勢とし、その後、挟持姿勢をとっているクランパを第1支軸回りに回転させることで非挟持姿勢とすれば、シューホルダを基板に対して固定していた挟持力が解放されるので、シューホルダを基板から分離させることができる。シューホルダの交換後には、上記とは逆に、非挟持姿勢をとっているクランパを旋回させて挟持姿勢とした後、旋回許容姿勢をとっているロック部材を旋回させて旋回規制姿勢とすれば、基板に対するシューベースの固定が完了する。
【0008】
要するに、本発明に係る研削盤用ワーク支持装置においては、従来(特許文献1)の支持装置でシューベースの交換時に実施されていた複数本のボルトの脱着作業がクランパ及びロック部材をそれぞれの支軸回りに旋回させるという簡単で迅速に実施可能な作業に置換される。これにより、シューベースの交換に要する時間を大幅に短縮することができ、研削盤の稼働率向上に寄与することができる。
【0009】
上記構成において、クランパには、これが挟持姿勢をとったとき、シューホルダとの間で弾性的に圧縮変形する弾性部を設けることができる。これにより、シューホルダや基板にクランパから付与される加圧力が過大になるのを可及的に防止し、基板とクランパの間に介在するシューホルダを適正な挟持力で挟持することが可能となる。
【0010】
上記構成において、旋回規制姿勢をとったロック部材は、クランパのうち第1支軸が設けられた側とは反対側の端部でクランパと係合させるのが好ましい。これにより、クランパの全域で所定の挟持力を発生させることができる。
【0011】
第1支軸の中心線(クランパの旋回中心線)と第2支軸の中心線(ロック部材の旋回中心線)とがなす角度は、例えば90°とすることができる。
【0012】
本発明に係る研削盤用ワーク支持装置によれば、上記のとおり、シューホルダの交換作業時間を短縮することができるので、このワーク支持装置を備えた研削盤は、設備稼働率に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0013】
以上に示すように、本発明に係る研削盤用ワーク支持装置によれば、研削対象のワークの外周面を支持するシューを保持したシューホルダの交換作業時間を短縮することができるので、研削盤の稼働率向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)図は、本発明の実施形態に係るワーク支持装置を装着した研削盤による内周研削の実施態様を説明するための概略平面図、(b)図は、(a)図のA-A線矢視断面図である。
【
図2】(a)図は、本発明の実施形態に係るワーク支持装置を装着した研削盤による外周研削の実施態様を説明するための概略平面図、(b)図は、(a)図のA-A線矢視断面図である。
【
図3】
図1(b)に示すワーク支持装置の分解図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るワーク支持装置の斜視図であって、クランパが挟持姿勢をとった状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るワーク支持装置の斜視図であって、クランパが非挟持姿勢をとった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本発明の実施形態に係る研削盤用ワーク支持装置(以下、単に「ワーク支持装置」と言う)は、断面円環状をなすワークの周面に研削加工を施す研削盤に装着され、研削対象のワークの外周面を支持(接触支持)する。本実施形態のワーク支持装置は、ワークの内周面を研削する内周研削を実施する際、及びワークの外周面を研削する外周研削を実施する際の何れにおいても使用可能である。断面円環状のワークとしては、例えば転がり軸受の軌道輪(となる円環状の基材)を挙げることができる。以下、研削盤による内周研削の実施態様を概念的に示す
図1(a)(b)、さらには研削盤による外周研削の実施態様を概念的に示す
図2(a)(b)に基づき、本実施形態のワーク支持装置を装着した研削盤1の概要を説明する。
【0017】
内周研削を実施するために使用される
図1(a)(b)に示す研削盤1は、回転駆動源の出力軸3に取り付けられ、ワークWの軸方向(
図1(b)の紙面上下方向)及び径方向(
図1(b)の紙面左右方向)に移動可能な研削砥石2と、ワークWの外周面を支持するワーク支持装置4と、ワークWを下方側から支持しつつその中心軸回りに回転駆動させるワーク回転機構5とを備える。この研削盤1は、ワーク回転機構5によって回転駆動されているワークWの内周面Waに、ワークWの回転方向とは反対方向に回転駆動されている研削砥石2の外周研削面2aを押し当てることにより、ワークWの内周面Waを所定の形状・精度に研削する。
【0018】
研削盤1で実施される内周研削加工は、ワークWに対して偏心した位置で回転する研削砥石2の外周研削面2aをワークWの内周面Waの周方向一部領域に押し当てるようにして行われる。このため、研削加工の実行中、ワークWには、ワークWをその径方向に移動させるような応力が作用する。ワーク支持装置4は、研削加工中のワークWに作用する上記応力(及び研削砥石2の回転力)によってワークWに意図せぬ移動が生じないように、ワークWの外周面Wbを接触支持する。
【0019】
ワーク支持装置4は、ワークWの径方向外側に配置されるシュー6を固定的に保持したシューホルダ7と、平面視略矩形状をなす板状部材からなり、シューホルダ7が分離可能に取り付けられた基板8とを備え、ワークWの外周面Wbは、シューホルダ7に保持されたシュ―6によって接触支持される。シューホルダ7は、ワークWの周方向に間隔を空けて配置された複数(ここでは2つ)のシュー6を保持しており、2つのシュー6は、周方向の位相を90°異ならせるように設けられている。
【0020】
次に、外周研削を実施する
図2(a)(b)に示す研削盤1は、研削加工の実施時における研削砥石2の配置位置のみが、内周研削を実施するために使用される
図1(a)(b)に示す研削盤1と異なり、構成部品・部材自体は
図1(a)(b)に示す研削盤1と同一である。すなわち、研削砥石2は、ワークWの径方向外側に配置され、回転中の外周研削面2aをワークWの外周面Wbの周方向一部領域に押し当てることにより、ワークWの外周面Wbを所定の形状・精度に仕上げる。
【0021】
以下、上記のワーク支持装置4で採用している特徴的構成について、
図3~
図7も参照しながら詳細に説明する。ワーク支持装置4は、前述したワーク回転機構5、シュー6(を保持したシューホルダ7)及び基板8に加え、シューホルダ7を基板8に対して取り付けるためのクランパ9及びロック部材12を備える。
【0022】
図1及び
図2に示すように、シューホルダ7は、平面視略L字状をなす板状部材からなる台座7aと、それぞれがシュー6を固定的に保持した計2つのシュー保持部7bとを備え、シュー保持部7bはボルト止め等の適宜の手段で台座7aに固定されている。
図3に示すように、シューホルダ7(の台座7a)には複数のピン挿入孔7cが設けられており、各ピン挿入孔7cには、基板8に突設された位置決めピン8aが挿入可能となっている。これにより、シューベース7は、基板8に対する相対的な位置合わせが行われた状態で基板8に取り付け固定される。なお、図示は省略するが、これとは逆に、位置決めピンをシューベース7に設けると共に、ピン挿入孔を基板8に設けるようにしても構わない。
【0023】
図6及び
図7に示す様に、基板8には、その外周輪郭線の一辺に沿って水平姿勢で配置される支軸10を支持するための支軸ホルダ11が間隔を空けて2つ取り付けられている。支軸ホルダ11に支持された支軸10には、板状部材からなるクランパ9の一端が取り付けられている。これにより、クランパ9は、支軸10の中心軸(第1支軸X1)回りに旋回可能である。クランパ9は、第1支軸X1回りに旋回することにより、基板8との間にシューホルダ7を挟持可能な挟持姿勢(
図4及び
図5参照)と、基板8との間にシューホルダ7を挟持しない非挟持姿勢(
図6及び
図7参照)とをとることが可能となっている。本実施形態における上記の「挟持姿勢」及び「非挟持姿勢」は、それぞれ、クランパ9が基板8と平行に配置される水平姿勢、及びクランパ9が基板8に対して角度をなした傾斜姿勢、とも言える。
【0024】
本実施形態のクランパ9は、平面視略L字状の板状部材からなり、挟持姿勢をとったときにシューホルダ7よりも基板8の外縁側に配置されるベース部9aと、挟持姿勢をとったときに基板8との間にシューホルダ7を挟持する複数のクランプ部9bと、クランパ9を操作する(旋回動作させる)ときに作業者が把持可能な把手部9cとを備える。ここでは、複数のクランプ部9bを、ベース部9aの長手方向(
図4中に矢印Mで示す、基板8の外周輪郭線に沿う方向。以下、「長手方向」という場合も同様。)に沿って間隔を空けて配置しており、より具体的には、シューホルダ7の長手方向の一端部、他端部及び中間部の計3箇所を基板8との間で挟持するようにクランプ部9bを設けている。
【0025】
図6及び
図7に示すように、クランプ部9bのうち、クランパ9が挟持姿勢をとったとき(であって、かつ後述するロック部材12がロック姿勢をとったとき)にシューホルダ7と対向する対向面9dには、シューホルダ7との間で弾性的に圧縮変形する弾性部9dを設けている。弾性部9dは、コイルばねや板ばね等のばね部材、あるいはゴム製の弾性部材などで構成することができる。
【0026】
基板3に設けられたロック部材12は、特に
図5及び
図7に示すように、ボルト部12aと、ボルト部12aの頭部とは反対側の端部に取り付けられ、水平姿勢で配置された軸状又は筒状の支持部12bとからなり、第2支軸X2としての支持部12bの中心軸回りに旋回(回転)可能となっている。ロック部材12の旋回量(旋回範囲)は、ボルト部12aの軸部が基板8に設けた長孔8bに挿入され、ボルト部12aの頭部が基板8の表面側に配置されると共に、支持部12bが基板8の裏面側に配置されることによって制限されている。図示例では、ボルト部12aの中心軸が鉛直方向に沿った鉛直姿勢及び鉛直方向に対して所定角度(例えば45°程度)傾斜した傾斜姿勢をとることができる範囲でロック部材12が第2支軸X2回りに旋回可能となっている。ロック部材12の旋回中心となる第2支軸X2は、クランパ9の旋回中心となる第1支軸X1に対して直交する水平方向に延びている。従って、ロック部材12は、第1支軸X1と平行な鉛直面内でボルト部12aの姿勢を変化させるように旋回する。
【0027】
クランパ9のベース部9aのうち、クランパ9の旋回中心となる第1支軸X1から最も離れた側の端部には、クランパ9が挟持姿勢をとったときに、基板8に設けた長孔8bと上下で重なるように切欠き9fが設けられており、切欠き9fと長孔8bとが上下に重ねて配置された状態でロック部材12を構成するボルト部12aが鉛直姿勢をとると、ボルト部12aの軸部が切欠き9fに嵌合される。このように、ボルト部12aの軸部が切欠き9fに嵌合されると、ボルト部12aの頭部がクランパ9の旋回方向でクランパ9(のベース部9a)と係合するので、クランパ9の第1支軸X1回りの旋回動作が規制される。従って、ロック部材12のボルト部12aが鉛直姿勢をとることは、「ロック部材がロック姿勢をとる」ことに相当する。
【0028】
一方、
図6及び
図7に示すように、ロック部材12が第2支軸X2回りに旋回することによってボルト部12aがクランパ9の切欠き9fから離脱した傾斜姿勢になると、ロック部材12(を構成するボルト部12aの頭部)とクランパ9のクランパ旋回方向における係合状態が解消されるので、クランパ9の第1支軸X1回りの旋回動作が許容される。従って、ロック部材12のボルト部12aが傾斜姿勢をとることは、「ロック部材がロック解除姿勢をとる」ことに相当する。
【0029】
以上の構成を有する本実施形態のワーク支持装置4によれば、平置き姿勢(水平姿勢)で配置されるワークWの内周面Waを研削する際(
図1参照)、あるいはワークWの外周面Wbを研削する際(
図2参照)には、基板8に設けたクランパ9を挟持姿勢(水平姿勢)にすると共にロック部材12を旋回規制姿勢(鉛直姿勢)にすることにより、シューホルダ7を基板8に対して固定することができる(
図4及び
図5参照)。その一方、研削対象のワークW変更等に伴ってシューホルダ7(に保持されたシュー6)を交換する必要が生じた際には、まず、旋回規制姿勢をとっているロック部材12を第2支軸X2回りに旋回させることで旋回許容姿勢(傾斜姿勢)とし、その後、挟持姿勢をとっているクランパ9を第1支軸X1回りに回転させることで非挟持姿勢とすれば、シューホルダ7を基板8に対して固定していた挟持力が解放されるので、シューホルダ7を基板8から分離させることができる。シューホルダ7の交換後には、上記とは逆に、非挟持姿勢をとっているクランパ9を第1支軸X1回りに旋回させて挟持姿勢とした後、旋回許容姿勢をとっているロック部材12を第2支軸X2回りに旋回させて旋回規制姿勢とすれば、基板8に対するシューベース7の固定が完了する。
【0030】
要するに、本実施形態のワーク支持装置4においては、従来(特許文献1)の支持装置でシューベースの交換時に実施されていた複数本のボルトの脱着作業が、クランパ9及びロック部材12をそれぞれの支軸回りに旋回させるという簡単で迅速に実施可能な作業に置換される。これにより、シューベース7(シュー6)の交換に要する時間を大幅に短縮することができ、研削盤1の稼働率向上に寄与することができる。
【0031】
また、本実施形態のワーク支持装置4において、クランパ9には、これが挟持姿勢をとったとき(であって、かつロック部材12がロック姿勢をとったとき)に、シューホルダ7との間で弾性的に圧縮変形する弾性部9eを設けている。このようにすれば、シューホルダ7を基板8とクランパ9とで挟持するのに伴ってシューホルダ7や基板8にクランパ9から付与される加圧力が過大になるのを可及的に防止し、シューホルダ7を適正な挟持力で挟持することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態に係る研削盤用ワーク支持装置4について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されない。
【0033】
例えば、以上で説明したワーク支持装置4では、クランパ9の旋回動作を規制するためのロック部材12を1つだけ設けているが、研削盤1(に設けられるシューホルダ7)のサイズが大きくなる場合、ロック部材12は複数設けても構わない。ロック部材12を複数設けた場合でも、個々のロック部材12の操作はボルトの締結作業よりも遥かに簡便に行い得るので、シューホルダ7(に保持されたシュー6)の交換作業を迅速に行うことができる。但し、ロック部材12を複数設ける場合でも、1つのロック部材12は、上述した実施形態と同様に、クランパ9のうち第1支軸X1が設けられた側とは反対側の端部でクランパ9と係合させるのが好ましい。これにより、クランパ9の全域で所定の挟持力を発生させることができるので、研削加工中にシューホルダ7が位置ズレ等するのを防止する上で有利となる。
【0034】
また、以上で説明したワーク支持装置4では、ロック部材12の旋回中心となる第2支軸X2を、クランパ9の旋回中心となる第1支軸X1に対して直交する水平方向に沿って配置したが、クランパ9の旋回動作の規制/許容の切り替えを容易にかつ適正に行い得る限りにおいて第2支軸X2の配置態様は任意に選択することができる。例えば、図示は省略するが、第2支軸X2は、第1支軸X1と平行に配置しても良い。この場合、ロック部材12は、第1支軸X1に対して直交する鉛直面内でボルト部12aの姿勢を変化させるように旋回する。
【0035】
また、以上で説明したワーク支持装置4は、ワークWを平置き姿勢(水平姿勢)で支持するものとしたが、本発明に係るワーク支持装置4は、ワークWを縦置き姿勢(垂直姿勢)で支持する際に使用することもできる。この場合、ワーク回転機構5の回転軸は水平姿勢となり、基板8及び基板8に付随する部材(シューベース7等)は平置き姿勢から縦置き姿勢となる。またこのとき、基板8及び基板8に付随する部材は、クランパ9のベース部7aの長手方向が下側となるように配置する。
【符号の説明】
【0036】
1 研削盤
2 研削砥石
2a 外周研削面
4 ワーク支持装置
6 シュー
7 シューホルダ
8 基板
9 クランパ
9e 弾性部
10 支軸(第1支軸)
12 ロック部材
X1 第1支軸
X2 第2支軸