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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014503
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】押圧ばね装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/02 20060101AFI20250123BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F16F1/02 B
F16F1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117107
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝充
(72)【発明者】
【氏名】上津原 才司
(72)【発明者】
【氏名】今村 勝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓斗
【テーマコード(参考)】
3J059
【Fターム(参考)】
3J059AB11
3J059AC04
3J059AC05
3J059AD05
3J059BA13
3J059BB05
3J059BC02
3J059BD01
3J059EA02
(57)【要約】
【課題】省スペースで高荷重を出力することができる押圧ばね装置が得られる。
【解決手段】長さ方向Xに延びる第1板ばね11、および第2板ばね12を備え、板幅方向Yから見た、第2板ばねの表面に沿う第2板ばねの中間部24の長さが、板幅方向から見た、第1板ばねの表面に沿う第1板ばねの中間部23の長さより短くなっている、押圧ばね装置1の製造方法であって、第1板ばねを形成する第1板ばね形成工程と、第1板ばねの長さ方向の両端部21を、第2板ばねの長さ方向の両端部22に接合する接合工程と、を有し、第1板ばね形成工程は、第1板ばねを、長さ方向の大きさが第2板ばねの長さ方向の大きさより大きくなるように形成し、接合工程は、第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、第1板ばねを弾性変形させた状態で、第1板ばねの長さ方向の両端部を、第2板ばねの長さ方向の両端部に接合する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に延びる第1板ばね、および第2板ばねを備え、
前記第1板ばねの長さ方向の両端部が、前記第2板ばねの長さ方向の両端部に板厚方向に積層されて接合され、
前記第1板ばね、および前記第2板ばねそれぞれにおける長さ方向の中間部同士が、板厚方向に離間した状態で対向し、
板幅方向から見た、前記第2板ばねの表面に沿う前記第2板ばねの中間部の長さが、板幅方向から見た、前記第1板ばねの表面に沿う前記第1板ばねの中間部の長さより短く、
前記第1板ばねの中間部は、板幅方向から見て、板厚方向に沿って前記第2板ばねの中間部から離れる側に向けて突の曲線状を呈するように湾曲している、押圧ばね装置の製造方法であって、
前記第1板ばねを形成する第1板ばね形成工程と、
前記第1板ばねの長さ方向の両端部を、前記第2板ばねの長さ方向の両端部に接合する接合工程と、を有し、
前記第1板ばね形成工程は、前記第1板ばねを、長さ方向の大きさが前記第2板ばねの長さ方向の大きさより大きくなるように形成し、
前記接合工程は、前記第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、前記第1板ばねを弾性変形させた状態で、前記第1板ばねの長さ方向の両端部を、前記第2板ばねの長さ方向の両端部に接合する、押圧ばね装置の製造方法。
【請求項2】
前記接合工程は、前記第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、前記第1板ばねを弾性変形させるときに、前記第1板ばねの長さ方向の両端部に、互いが長さ方向に近付く向きの長さ方向の圧縮力を加える、請求項1に記載の押圧ばね装置の製造方法。
【請求項3】
前記接合工程は、前記第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、前記第1板ばねを弾性変形させるときに、前記第1板ばねの中間部において、長さ方向の中央部を長さ方向に挟む両側に位置する各部分の、板厚方向に沿う前記第2板ばねの反対側を向く外面を支持した状態で、前記第1板ばねの中間部における長さ方向の中央部に、板厚方向に沿う前記第2板ばねの反対側に向けた荷重を付与する、請求項1または2に記載の押圧ばね装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧ばね装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、湾曲した第1板ばねおよび第2板ばねの各頂部により、被押圧体を板厚方向に挟んで押圧する押圧ばね装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5040228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の押圧ばね装置では、高荷重を出力するためには、必要となるスペースがかさ張りやすく、省スペースで高荷重を出力することが困難であった。
【0005】
本発明は、省スペースで高荷重を出力することができる押圧ばね装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る押圧ばね装置の製造方法は、長さ方向に延びる第1板ばね、および第2板ばねを備え、前記第1板ばねの長さ方向の両端部が、前記第2板ばねの長さ方向の両端部に板厚方向に積層されて接合され、前記第1板ばね、および前記第2板ばねそれぞれにおける長さ方向の中間部同士が、板厚方向に離間した状態で対向し、板幅方向から見た、前記第2板ばねの表面に沿う前記第2板ばねの中間部の長さが、板幅方向から見た、前記第1板ばねの表面に沿う前記第1板ばねの中間部の長さより短く、前記第1板ばねの中間部は、板幅方向から見て、板厚方向に沿って前記第2板ばねの中間部から離れる側に向けて突の曲線状を呈するように湾曲している、押圧ばね装置の製造方法であって、前記第1板ばねを形成する第1板ばね形成工程と、前記第1板ばねの長さ方向の両端部を、前記第2板ばねの長さ方向の両端部に接合する接合工程と、を有し、前記第1板ばね形成工程は、前記第1板ばねを、長さ方向の大きさが前記第2板ばねの長さ方向の大きさより大きくなるように形成し、前記接合工程は、前記第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、前記第1板ばねを弾性変形させた状態で、前記第1板ばねの長さ方向の両端部を、前記第2板ばねの長さ方向の両端部に接合する。
【0007】
押圧ばね装置が、第1板ばねおよび第2板ばねを備えているので、押圧ばね装置が一対の被押圧体により板厚方向に挟まれて、第1板ばねの中間部に、板厚方向に沿う第2板ばね側の押込み荷重が加えられると、第1板ばねの長さ方向の両端部を介して、第2板ばねに長さ方向の引張力が加えられる。
この際、板幅方向から見た、第2板ばねの表面に沿う第2板ばねの中間部の長さが、板幅方向から見た、第1板ばねの表面に沿う第1板ばねの中間部の長さより短くなっているので、第2板ばねの材質等に依らず、第2板ばねが第1板ばねの変形を抑止することとなり、発現する押圧ばね装置のばね定数を高くすることが可能になり、省スペースで高荷重を出力することができる。
【0008】
押圧ばね装置の製造方法が、第1板ばねを、長さ方向の大きさが第2板ばねの長さ方向の大きさより大きくなるように形成する第1板ばね形成工程と、第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、第1板ばねを弾性変形させた状態で、第1板ばねの長さ方向の両端部を、第2板ばねの長さ方向の両端部に接合する接合工程と、を有しているので、製造される押圧ばね装置では、第1板ばねの中間部において、板厚方向に沿う第2板ばねの反対側である外面側に、板幅方向から見て第1板ばねの外面に沿う方向(以下、第1特定方向という)の引張応力が付与されることとなる。
したがって、第1板ばねの中間部の外面側に、板厚方向に沿う第2板ばね側の押込み荷重が加えられたときに生ずる前記第1特定方向の圧縮応力が緩和されることとなり、押圧ばね装置が板厚方向に大きく圧縮変形しても、第1板ばねの中間部に生ずる負荷を抑えることが可能になり、耐久性を向上させることができる。
【0009】
前記接合工程は、前記第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、前記第1板ばねを弾性変形させるときに、前記第1板ばねの長さ方向の両端部に、互いが長さ方向に近付く向きの長さ方向の圧縮力を加えてもよい。
【0010】
接合工程時に、第1板ばねの長さ方向の両端部に、互いが長さ方向に近付く向きの長さ方向の圧縮力を加えるので、第1板ばねの中間部の外面側に、前記第1特定方向の引張応力が付与されている押圧ばね装置を容易かつ確実に製造することができる。
【0011】
前記接合工程は、前記第1板ばねの長さ方向の大きさが縮小するように、前記第1板ばねを弾性変形させるときに、前記第1板ばねの中間部において、長さ方向の中央部を長さ方向に挟む両側に位置する各部分の、板厚方向に沿う前記第2板ばねの反対側を向く外面を支持した状態で、前記第1板ばねの中間部における長さ方向の中央部に、板厚方向に沿う前記第2板ばねの反対側に向けた荷重を付与してもよい。
【0012】
接合工程時に、第1板ばねの中間部において、長さ方向の中央部を長さ方向に挟む両側に位置する各部分の外面を支持した状態で、長さ方向の中央部に、板厚方向に沿う第2板ばねの反対側に向けた荷重を付与するので、第1板ばねの中間部が3点曲げされることとなり、第1板ばねの中間部の外面側に、前記第1特定方向の引張応力が付与されている押圧ばね装置を容易かつ精度よく製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記態様によれば、省スペースで高荷重を出力することができる押圧ばね装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の押圧ばね装置の斜視図である。
図2図1の押圧ばね装置を板幅方向から見た図である。
図3】第1実施形態の押圧ばね装置の製造方法を説明する図である。
図4】第2実施形態の押圧ばね装置の製造方法を説明する図である。
図5】変形例の押圧ばね装置を板幅方向から見た図である。
図6】変形例の押圧ばね装置を第1実施形態の製造方法で製造する方法を示す図である。
図7】変形例の押圧ばね装置を第2実施形態の製造方法で製造する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、押圧ばね装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
本実施形態の押圧ばね装置1は、図1および図2に示されるように、長さ方向Xに延びる第1板ばね11、および第2板ばね12を備え、一対の被押圧体により板厚方向Zに挟まれて用いられる。
第1板ばね11、および第2板ばね12それぞれの長さ方向Xの両端部が、板厚方向Zに積層されて、例えば、ろう付け、接着、溶接、超音波接合等により接合されている。第1板ばね11、および第2板ばね12それぞれの長さ方向Xの両端部は、長さ方向Xに真直ぐ延びている。
以下、第1板ばね11の長さ方向Xの両端部を、第1固着部21といい、第2板ばね12の長さ方向Xの両端部を、第2固着部22という。
【0016】
第1板ばね11、および第2板ばね12それぞれの長さ方向Xの大きさは、互いに同じになっている。第1板ばね11、および第2板ばね12それぞれの長さ方向Xの両端縁は、板厚方向Zに段差無く連なっている。なお、第1板ばね11、および第2板ばね12それぞれの長さ方向Xの大きさは、互いに異なっていてもよく、また、第1板ばね11、および第2板ばね12それぞれの長さ方向Xの両端縁は、板厚方向Zに段差を介して連なっていてもよい。
第1板ばね11、および第2板ばね12それぞれにおける長さ方向Xの中間部23、24同士が、板厚方向Zに離間した状態で対向している。板幅方向Yから見た、第2板ばね12の表面に沿う第2板ばね12の中間部24の長さは、板幅方向Yから見た、第1板ばね11の表面に沿う第1板ばね11の中間部23の長さより短くなっている。
【0017】
第1板ばね11の中間部23は、板幅方向Yから見て、板厚方向Zに沿って第2板ばね12の中間部24から離れる側に向けて突の曲線状を呈するように湾曲している。
第2板ばね12は、板幅方向Yから見て、長さ方向Xの全長にわたって長さ方向Xに真直ぐ延びている。なお、第2板ばね12の中間部24は、板幅方向Yから見て、第1板ばね11の中間部23に対して、板厚方向Zに接近する向き、若しくは板厚方向Zに離間する向きに突の曲線状を呈するように湾曲する等してもよい。
【0018】
本実施形態の押圧ばね装置1は、板幅方向Yから見て、第2板ばね12の中間部24を板厚方向Zに挟む第1板ばね11の中間部23の反対側に設けられた中間部28を有する第3板ばね13を備えている。板幅方向Yから見て、第2板ばね12および第3板ばね13それぞれの中間部24、28同士は、板厚方向Zに離れている。
【0019】
図示の例では、第3板ばね13が、第1板ばね11を板幅方向Yに挟む両側に各別に設けられている。第3板ばね13の長さ方向Xの両端部は、長さ方向Xに真直ぐ延び、第1板ばね11の第1固着部21と一体に形成されるとともに、第1固着部21から板幅方向Yに張り出している。第1板ばね11および第3板ばね13は、全域にわたって板厚が同じ1枚の板体で形成されている。
以下、第3板ばね13の長さ方向Xの両端部を張出部27という。
【0020】
第3板ばね13の中間部28は、長さ方向Xの両端部に位置する張出部27を長さ方向Xに連結している。第3板ばね13の中間部28は、板幅方向Yから見て、板厚方向Zに沿って第1板ばね11の中間部23から離れる側に向けて突の曲線状を呈するように湾曲している。第3板ばね13の中間部28における長さ方向Xの中央部は、板幅方向Yから見て、第2板ばね12の中間部24を板厚方向Zに挟む、第1板ばね11の中間部23の反対側に位置している。
【0021】
第3板ばね13および第1板ばね11それぞれの中間部28、23は、板幅方向Yから見て、第1固着部21および張出部27における板厚方向Zの中央部を通り、かつ長さ方向Xに延びる直線に対して対称形状を呈する。第3板ばね13および第1板ばね11それぞれの中間部28、23の大きさは、互いに同じになっている。
【0022】
第1板ばね11および第3板ばね13が、長さ方向Xに弾性域内で圧縮変形した状態で、第1固着部21と第2固着部22とが接合されている。
これにより、第2板ばね12に全域にわたって一様に長さ方向Xの引張応力が付与され、第1板ばね11および第3板ばね13の中間部23、28それぞれにおいて、板厚方向Zに沿う第2板ばね12の反対側である外面23a、28a側に、板幅方向Yから見て外面23a、28aに沿う方向の引張応力が付与され、第1板ばね11および第3板ばね13の中間部23、28それぞれにおいて、板厚方向Zに沿う第2板ばね12側である内面23b、28b側に、板幅方向Yから見て内面23b、28bに沿う方向の圧縮応力が付与されている。
【0023】
第1板ばね11の中間部23の外面23a側に付与されている前述の引張応力は、板厚方向Zに沿って第1板ばね11の中間部23の内面23b側に向かうに従い小さくなっている。第1板ばね11の中間部23の内面23b側に付与されている前述の圧縮応力は、板厚方向Zに沿って第1板ばね11の中間部23の外面23a側に向かうに従い小さくなっている。第1板ばね11の中間部23における板厚方向Zの中間部分には、内部応力の無い領域が含まれている。
【0024】
第3板ばね13の中間部28の外面28a側に付与されている前述の引張応力は、板厚方向Zに沿って第3板ばね13の中間部28の内面28b側に向かうに従い小さくなっている。第3板ばね13の中間部28の内面28b側に付与されている前述の圧縮応力は、板厚方向Zに沿って第3板ばね13の中間部28の外面28a側に向かうに従い小さくなっている。第3板ばね13の中間部28における板厚方向Zの中間部分には、内部応力の無い領域が含まれている。
第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28における内部応力の分布、大きさは、互いに同じになっている。なお、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28における内部応力の分布、大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0025】
次に、以上のように構成された押圧ばね装置1の製造方法について説明する。
【0026】
まず、長さ方向Xの全長にわたって真直ぐ延びている第1板ばね11用平板素材および第3板ばね13用平板素材を、中間部23、28形成予定部の外面23a、28a側が突となるように曲げ加工して、第1板ばね11および第3板ばね13を形成する(第1板ばね形成工程、第3板ばね形成工程)。なお、第1板ばね11用平板素材および第3板ばね13用平板素材は、板幅方向Yに連結されて1枚の平板を構成している。
【0027】
この際、図3に示されるように、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの大きさは、第2板ばね12の長さ方向Xの大きさより大きくなっている。また、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28の板幅方向Yから見た曲率半径は、図3に2点鎖線で示されるような、第1固着部21と第2固着部22とが接合された押圧ばね装置1のときのものより大きくなっている。第1固着部21に対する第1板ばね11の中間部23の板厚方向Zに沿う膨出量は、図3に2点鎖線で示されるような、第1固着部21と第2固着部22とが接合された押圧ばね装置1のときのものより小さくなっている。張出部27に対する第3板ばね13の中間部28の板厚方向Zに沿う膨出量も、図3に2点鎖線で示されるような、押圧ばね装置1のときのものより小さくなっている。
【0028】
次に、長さ方向Xの全長にわたって真直ぐ延び、長さ方向Xに無負荷状態となっている第2板ばね12のうちの第2固着部22を、第1板ばね11の第1固着部21に接合する(接合工程)。この際、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの大きさが縮小するように、第1板ばね11および第3板ばね13を弾性変形させた状態で、第1固着部21を第2固着部22に接合する。
【0029】
これにより、第1板ばね11および第3板ばね13が、長さ方向Xに弾性域内で圧縮変形した状態で、第1固着部21と第2固着部22とが接合され、第2板ばね12に、全域にわたって一様に長さ方向Xの引張応力が付与された押圧ばね装置1が得られる。
この際、第1板ばね11および第3板ばね13が、長さ方向Xに圧縮変形することで、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28の板幅方向Yから見た曲率半径が、図3に2点鎖線で示されるように小さくなり、第1固着部21に対する第1板ばね11の中間部23の板厚方向Zに沿う膨出量が、図3に2点鎖線で示されるように大きくなり、張出部27に対する第3板ばね13の中間部28の板厚方向Zに沿う膨出量も、図3に2点鎖線で示されるように大きくなる。
【0030】
本実施形態では、接合工程において、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの大きさが縮小するように、第1板ばね11および第3板ばね13を弾性変形させるときに、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの両端部に、互いが長さ方向Xに近付く向きの長さ方向Xの圧縮力を加える。この際、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの両端縁を、長さ方向Xに押込んだ状態で、第1板ばね11および第2板ばね12それぞれの長さ方向Xの両端部、つまり第1固着部21および第2固着部22を板厚方向Zに挟み込んで接合する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態による押圧ばね装置1によれば、第1板ばね11および第2板ばね12を備えているので、押圧ばね装置1が一対の被押圧体により板厚方向Zに挟まれて、第1板ばね11の中間部23に、板厚方向Zに沿う第2板ばね12側の押込み荷重が加えられると、第1板ばね11の第1固着部21を介して、第2板ばね12に長さ方向Xの引張力が加えられる。
この際、板幅方向Yから見た、第2板ばね12の表面に沿う第2板ばね12の中間部24の長さが、板幅方向Yから見た、第1板ばね11の表面に沿う第1板ばね11の中間部23の長さより短くなっているので、第2板ばね12の材質等に依らず、第2板ばね12が第1板ばね11の変形を抑止することとなり、発現する押圧ばね装置1のばね定数を高くすることが可能になり、省スペースで高荷重を出力することができる。
【0032】
本実施形態による押圧ばね装置1の製造方法によれば、第1板ばね11および第3板ばね13を、長さ方向Xの大きさが第2板ばね12の長さ方向Xの大きさより大きくなるように形成する第1板ばね形成工程および第3板ばね形成工程と、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの大きさが縮小するように、第1板ばね11および第3板ばね13を弾性変形させた状態で、第1板ばね11の第1固着部21を、第2板ばね12の第2固着部22に接合する接合工程と、を有しているので、製造される押圧ばね装置1では、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28において、板厚方向Zに沿う第2板ばね12の反対側である外面23a、28a側に、板幅方向Yから見て外面23a、28aに沿う方向(以下、第1特定方向という)の引張応力が付与されることとなる。
したがって、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28の外面23a、28a側に、板厚方向Zに沿う第2板ばね12側の押込み荷重が加えられたときに生ずる前記第1特定方向の圧縮応力が緩和されることとなり、押圧ばね装置1が板厚方向Zに大きく圧縮変形しても、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28に生ずる負荷を抑えることが可能になり、耐久性を向上させることができる。
【0033】
接合工程時に、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの両端部に、互いが長さ方向Xに近付く向きの長さ方向Xの圧縮力を加えるので、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28の外面23a、28a側に、前記第1特定方向の引張応力が付与されている押圧ばね装置1を容易かつ確実に製造することができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態に係る押圧ばね装置1の製造方法を、図4を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0035】
本実施形態の押圧ばね装置1の製造方法では、接合工程において、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの大きさが縮小するように、第1板ばね11および第3板ばね13を弾性変形させるときに、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28において、長さ方向Xの中央部を長さ方向Xに挟む両側に位置する各部分の外面23a、28aを支持した状態で、長さ方向Xの中央部に、板厚方向Zに沿う第2板ばね12の反対側に向けた荷重を付与する。
図示の例では、この際、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28における長さ方向Xの両端部の外面23a、28aを支持する。
【0036】
なお、この際、同時に、前記第1実施形態のように、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの長さ方向Xの両端縁を、長さ方向Xに押込んでもよいし、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28において、長さ方向Xの中央部を長さ方向Xに挟む両側に位置する各部分の外面23a、28aを、板幅方向Yから見て板厚方向Zに互いに近付く向きに押込んでもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態による押圧ばね装置1の製造方法によれば、接合工程時に、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28において、長さ方向Xの中央部を長さ方向Xに挟む両側に位置する各部分の外面23a、28aを支持した状態で、長さ方向Xの中央部に、板厚方向Zに沿う第2板ばね12の反対側に向けた荷重を付与するので、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28が3点曲げされることとなり、第1板ばね11および第3板ばね13それぞれの中間部23、28の外面23a、28a側に、前記第1特定方向の引張応力が付与されている押圧ばね装置1を容易かつ精度よく製造することができる。
【0038】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0039】
例えば、第3板ばね13を設けなくてもよい。
図5に示されるように、第1板ばね11、第2板ばね12、および第3板ばね13それぞれの板幅方向Yの大きさを互いに同じにし、第1板ばね11、第2板ばね12、および第3板ばね13を、別体とし、かつ板幅方向Yの同じ位置に位置させて、第2固着部22を第1固着部21と張出部27とにより板厚方向Zに挟み、第2板ばね12および第1板ばね11それぞれの中間部24、23同士を、板厚方向Zで互いに対向させ、第2板ばね12および第3板ばね13それぞれの中間部24、28同士を、板厚方向Zで互いに対向させてもよい。
図5に示される押圧ばね装置2も、図6および図7に示されるように、図3および図4で説明した方法と同じ方法で製造することができる。
【0040】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1、2 押圧ばね装置
11 第1板ばね
12 第2板ばね
21 第1固着部(第1板ばねの長さ方向の両端部)
22 第2固着部(第2板ばねの長さ方向の両端部)
23 第1板ばねの中間部
23a 外面
23b 内面
24 第2板ばねの中間部
X 長さ方向
Y 板幅方向
Z 板厚方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7