IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタホーム株式会社の特許一覧

特開2025-14510建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対
<>
  • 特開-建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対 図1
  • 特開-建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対 図2
  • 特開-建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対 図3
  • 特開-建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対 図4
  • 特開-建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対 図5
  • 特開-建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対 図6
  • 特開-建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014510
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20250123BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20250123BHJP
   B65G 7/02 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
E04G21/14
E04B1/348 F
E04B1/348 V
B65G7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117123
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓太
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174CA06
2E174CA23
(57)【要約】
【課題】生産性をより向上させることができる建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対を得る。
【解決手段】建物設備の設置方法は、建物を構成する複数の建物ユニットの外部で建物設備20を組み立てる組立工程と、建物設備20の底面に建物設備20を滑り易くする滑り層26を設ける滑り層配設工程と、滑り層26が設けられた建物設備30(20)を台車に載せる載置工程と、建物設備30(20)を台車に載せた状態で複数の建物ユニットのうちの所定の建物ユニットの床面と並ぶ位置へ案内する案内工程と、台車を上記並ぶ位置に配置した状態で、建物設備を所定の建物ユニットの予め定められた所定位置まで滑らせて移動させる移動工程と、所定位置において建物設備を所定の建物ユニットに固定する固定工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を構成する複数の建物ユニットの外部で建物設備を組み立てる組立工程と、
前記建物設備の底面に当該建物設備を滑り易くする滑り層を設ける滑り層配設工程と、
前記滑り層が設けられた前記建物設備を台車に載せる載置工程と、
前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記複数の建物ユニットのうちの所定の建物ユニットの床面と並ぶ位置へ案内する案内工程と、
前記台車を前記並ぶ位置に配置した状態で、前記建物設備を前記所定の建物ユニットの予め定められた所定位置まで滑らせて移動させる移動工程と、
前記所定位置において前記建物設備を前記所定の建物ユニットに固定する固定工程と、
を含む建物設備の設置方法。
【請求項2】
建物を構成する複数の建物ユニットの外部で建物設備を組み立てる組立工程と、
前記建物設備の底面に当該建物設備を滑り易くする滑り層を設ける滑り層配設工程と、
前記滑り層が設けられた前記建物設備を台車に載せる載置工程と、
前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記複数の建物ユニットのうちの所定の第1建物ユニットの床面と並ぶ位置へ案内する案内工程と、
前記台車を前記並ぶ位置に配置した状態で、前記建物設備を前記第1建物ユニットの内部まで滑らせて移動させる第1移動工程と、
前記内部において前記建物設備を前記第1建物ユニットに仮固定する仮固定工程と、
前記第1建物ユニットと、該第1建物ユニットと隣接して配置される第2建物ユニットとを接合する接合工程と、
仮固定された前記建物設備の仮固定を解除して、当該建物設備を前記第1建物ユニットと前記第2建物ユニットとを跨ぐ所定の位置まで滑らせて移動させる第2移動工程と、
前記所定の位置において前記建物設備を前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットに本固定する本固定工程と、
を含む建物設備の設置方法。
【請求項3】
前記移動工程において、前記建物設備は前記所定の建物ユニット内で方向転換されて前記所定位置まで移動される請求項1に記載の建物設備の設置方法。
【請求項4】
前記第1移動工程において、前記建物設備は前記所定の建物ユニット内で方向転換される請求項2に記載の建物設備の設置方法。
【請求項5】
複数の建物ユニットのうちの一の建物ユニットであって、
前記複数の建物ユニットの外部で組み立てられ、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた建物設備が、予め定められた所定位置に固定された建物ユニット。
【請求項6】
複数の建物ユニットのうちの一の建物ユニットであって、
前記複数の建物ユニットの外部で組み立てられ、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた建物設備が、予め定められた所定位置に仮固定された建物ユニット。
【請求項7】
複数の建物ユニットのうち隣接して接合された2個の建物ユニットであって、
前記複数の建物ユニットの外部で組み立てられ、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた建物設備が、前記2個の建物ユニットの床面を跨いで固定された建物ユニット対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対に関する。
【背景技術】
【0002】
建物設備を直接架台に載せて建物ユニットに搭載する場合、例えば建物設備がユニットバスである場合には、ユニットバスの仕様等により異なる形状の架台が必要となってしまう。特許文献1には、敷材を介在させた状態で建物設備を建物ユニットに搭載することにより、架台の形状に係る制約を抑えるようにした建物設備の搭載方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-132058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の搭載方法においては、建物設備を建物ユニットへ搭載した後で敷材を回収する必要があり、敷材の回収に要する分、生産性が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、生産性をより向上させることができる建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る建物設備の設置方法は、建物を構成する複数の建物ユニットの外部で建物設備を組み立てる組立工程と、前記建物設備の底面に当該建物設備を滑り易くする滑り層を設ける滑り層配設工程と、前記滑り層が設けられた前記建物設備を台車に載せる載置工程と、前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記複数の建物ユニットのうちの所定の建物ユニットの床面と並ぶ位置へ案内する案内工程と、前記台車を前記並ぶ位置に配置した状態で、前記建物設備を前記所定の建物ユニットの予め定められた所定位置まで滑らせて移動させる移動工程と、前記所定位置において前記建物設備を前記所定の建物ユニットに固定する固定工程と、を含む。
【0007】
従来、建物設備の組立は、建物ユニット内の建物設備の取付場所において行われている。そのため、建物設備の組立が完了するまで、主要生産ラインを止める必要がある。これに対して、第1の態様に係る建物設備の設置方法では、建物を構成する複数の建物ユニットの外部で建物設備を組み立てて、組み立てられた建物設備の底面に滑り層を設けることにより、建物設備を建物ユニットの予め定められた所定位置まで滑らせて移動させ、固定している。このように、建物ユニットの外部で建物設備を組み立ててから建物ユニットの所定位置に固定することにより、建物設備の組立の外段取り化が可能となり、工場における主要生産ラインの工数の短縮が可能となる。また、第1の態様に係る建物設備の設置方法では、組み立てられた建物設備の底面に建物設備を滑り易くする滑り層を設けたままの状態で建物ユニットに固定しているので、滑り層を回収する作業が発生しない。
【0008】
このように、第1の態様に係る建物設備の設置方法では、主要生産ラインの工数を短縮しつつ、工場内において建物設備の組立から建物ユニットへの固定までの作業を行うことができ、さらに滑り層を回収する作業が発生しないので、建物設備を建物ユニット内で組み立てる場合と比較して生産性を向上させることができる。
【0009】
第2の態様に係る建物設備の設置方法は、建物を構成する複数の建物ユニットの外部で建物設備を組み立てる組立工程と、前記建物設備の底面に当該建物設備を滑り易くする滑り層を設ける滑り層配設工程と、前記滑り層が設けられた前記建物設備を台車に載せる載置工程と、前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記複数の建物ユニットのうちの所定の第1建物ユニットの床面と並ぶ位置へ案内する案内工程と、前記台車を前記並ぶ位置に配置した状態で、前記建物設備を前記第1建物ユニットの内部まで滑らせて移動させる第1移動工程と、前記内部において前記建物設備を前記第1建物ユニットに仮固定する仮固定工程と、前記第1建物ユニットと、該第1建物ユニットと隣接して配置される第2建物ユニットとを接合する接合工程と、仮固定された前記建物設備の仮固定を解除して、当該建物設備を前記第1建物ユニットと前記第2建物ユニットとを跨ぐ所定の位置まで滑らせて移動させる第2移動工程と、前記所定の位置において前記建物設備を前記第1建物ユニット及び前記第2建物ユニットに本固定する本固定工程と、を含む。
【0010】
第2の態様に係る建物設備の設置方法では、建物を構成する複数の建物ユニットの外部で建物設備を組み立てて、組み立てられた建物設備の底面に滑り層を設けることにより、建物設備を第1建物ユニットの予め定められた所定位置まで滑らせて移動させ、仮固定している。このように、第1建物ユニットの外部で建物設備を組み立ててから第1建物ユニットの所定位置に仮固定することにより、建物設備の組立の外段取り化が可能となり、工場における主要生産ラインの工数の短縮が可能となる。また、第2の態様に係る建物設備の設置方法では、組み立てられた建物設備の底面に建物設備を滑り易くする滑り層を設けたままの状態で第1建物ユニットに固定しているので、滑り層を回収する作業が発生しない。
【0011】
また、第2の態様に係る建物設備の設置方法では、仮固定を解除することにより、建物設備を滑らせて移動させることが可能となる。そのため、例えば2個の建物ユニットの床面を跨いで建物設備を設置する場合等、工場内で建物ユニット内に建物設備を本固定できない場合であっても、工場内で第1建物ユニットに建物設備を仮固定し、現地において第1建物ユニットに隣接して第2建物ユニットを配置した後で、建物設備の仮固定を解除し、建物設備を第1建物ユニットと第2建物ユニットとを跨ぐ所定の位置まで滑らせて移動させることができる。
【0012】
このように、第2の態様に係る建物設備の設置方法では、主要生産ラインの工数を短縮しつつ、工場内において建物設備の組立から第1建物ユニットへの仮固定までの作業を行うことができ、さらに現地において、第1建物ユニットと第2建物ユニットとの床面を跨ぐ所定の位置まで滑らせて移動させて建物設備を固定することができるので、建物設備を現地で組み立てる場合と比較して生産性を向上させることができる。また、さらに第2の態様に係る建物設備の設置方法では、滑り層を回収する作業が発生しないので、より生産性を向上させることができる。
【0013】
第3の態様に係る建物設備の設置方法は、第1の態様の構成において、前記移動工程において、前記建物設備は前記所定の建物ユニット内で方向転換されて前記所定位置まで移動される。
【0014】
第4の態様に係る建物設備の設置方法は、第2の態様の構成において、前記第1移動工程において、前記建物設備は前記所定の建物ユニット内で方向転換される。
【0015】
第3の態様及び第4の態様に係る建物設備の設置方法では、建物設備の底面に滑り層が設けられているので、建物設備を建物ユニット内で滑らせることにより方向転換することができる。このように建物設備を所定の建物ユニット内で方向転換して所定位置まで移動することにより、例えば主要生産ラインにおいて、建物ユニットの短手方向を主要生産ラインの流れ方向に位置させた状態で、建物ユニットを流れ方向に沿って移動させることができるので、主要生産ラインの作業スペースを縮めることができる。
【0016】
第5の態様に係る建物ユニットは、複数の建物ユニットのうちの一の建物ユニットであって、前記複数の建物ユニットの外部で組み立てられ、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた建物設備が、予め定められた所定位置に固定されている。
【0017】
第5の態様に係る建物ユニットでは、複数の建物ユニットの外部で組み立てられた建物設備が予め定められた所定位置に固定されているので、現地で建物設備を組み立てる必要がない。また、第5の態様に係る建物ユニットでは、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた状態で建物設備が所定位置に固定されているので、滑り層を回収する作業が発生しない。このように、第5の態様に係る建物ユニットでは、建物設備を現地で組み立てる場合と比較して現地作業を低減することができるので、生産性をより向上させることができる。
【0018】
第6の態様に係る建物ユニットは、複数の建物ユニットのうちの一の建物ユニットであって、前記複数の建物ユニットの外部で組み立てられ、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた建物設備が、予め定められた所定位置に仮固定されている。
【0019】
第6の態様に係る建物ユニットでは、複数の建物ユニットの外部で組み立てられた建物設備が予め定められた所定位置に仮固定されているので、現地で建物設備を組み立てる必要がない。また、第6の態様に係る建物ユニットでは、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた状態で建物設備が所定位置に仮固定されているので、滑り層を回収する作業が発生しない。このように、第5の態様に係る建物ユニットでは、建物設備を現地で組み立てる場合と比較して現地作業を低減することができるので、生産性をより向上させることができる。
【0020】
第7の態様に係る建物ユニット対は、複数の建物ユニットのうち隣接して接合された2個の建物ユニットであって、前記複数の建物ユニットの外部で組み立てられ、底面に床面を滑り易くする滑り層を備えた建物設備が、前記2個の建物ユニットの床面を跨いで固定されている。
【0021】
第7の態様に係る建物ユニット対では、建物設備が複数の建物ユニットの外部で組み立てられているので、現地で建物設備を組み立てる必要がない。また、第7の態様に係る建物ユニット対では、建物設備の底面に床面を滑り易くする滑り層が設けられているので、現地において、一方の建物ユニットから他方の建物ユニットの床面を跨ぐ位置まで移動させて固定することができる。このように、第7の態様に係る建物ユニット対では、建物設備を現地で組み立てる場合と比較して現地作業を低減することができるので、生産性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る建物設備の設置方法、建物ユニット、及び建物ユニット対は、生産性をより向上させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る建物設備の設置方法における組立工程と滑り層配設工程とを模式的に示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る建物設備の設置方法における載置工程を模式的に示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る建物設備の設置方法における案内工程を模式的に示す模式図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る建物ユニットを模式的に示す模式図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る建物ユニットを模式的に示す模式図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る建物ユニット対を模式的に示す模式図である。
図7】従来の建物設備の設置方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、図1図4を用いて、第1実施形態に係る建物ユニットとしてのキッチン付建物ユニット100について説明する。本実施形態において、建物ユニット10は、一例として二階建てユニット式建物等の建物(図示省略)を構成するものであり、建物ユニット10が複数個連結されることにより建物が構成されている。なお、個々の建物ユニット10としては、例えば各々矩形枠状に組まれた天井フレームと床フレームとの間に4本の柱が立設された構成(図示省略)を採用することができるが、これに限られるものではなく、箱形の他の架構構造であってもよい。
【0025】
また、本実施形態のキッチン付建物ユニット100は、建物を構成する複数の建物ユニット10のうちの一の建物ユニット10であって、内部に建物設備としてのキッチン20が配設されている。なお、本実施形態においては、建物設備は、一例としてキッチン20としたが、本発明の建物設備はキッチン20に限られず、例えば、洗面化粧台等であってもよい。また、本実施形態においては、キッチン付建物ユニット100はキッチン20が搭載された後の建物ユニットを示しており、建物ユニット10は、キッチン20が搭載されていない建物ユニットを示している。
【0026】
次に、建物ユニット10にキッチン20を設置するキッチン20の設置方法について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る建物設備の設置方法における組立工程と滑り層配設工程とを模式的に示す模式図であり、図2は載置工程を模式的に示す模式図、図3は案内工程を模式的に示す模式図である。図4は、本発明の第1実施形態に係るキッチン付き建物ユニット100を模式的に示す模式図である。なお、各図において、建物ユニット10の高さ方向を上下方向として説明する。
【0027】
建物ユニット10へのキッチン20の設置方法は、(1)組立工程、(2)滑り層配設工程、(3)載置工程、(4)案内工程、(5)移動工程、及び(6)固定工程を順に行うものである。
【0028】
(1)組立工程では、建物を構成する複数の建物ユニット10の外部でキッチン20を組み立てる。具体的には、組立工程は、キッチン付建物ユニット100を生産する工場内において、キッチン付建物ユニット100の主要生産ラインとは別に行われる。図1の左図に示されるように、先ずはキッチン20を構成する構成部品の一例として、天板部22及び収容部24を組み立てる。天板部22は、板状部材で構成されたワークトップ22Aと、ワークトップ22Aに取付けられたシンク22B及びコンロ22Cとを備えている。収容部24は、一例として、第1キャビネット24A、食器洗い洗浄機24B、及び第2キャビネット24Cを備えている。なお、天板部22及び収容部24の構成部品はこれに限られず、その他の部品を備えていてもよい。
【0029】
図1の中央図に示されるように、第1キャビネット24A、食器洗い洗浄機24B、及び第2キャビネット24Cを水平方向において各々固定することにより収容部24を組み立てる。組み立てられた収容部24の上面に、天板部22を固定することによりキッチン20を組み立てる。
【0030】
(2)滑り層配設工程では、図1の中央図に示されるように、組み立てられたキッチン20の底面20Aに、キッチン20を滑り易くする滑り層26を設ける。滑り層26は、一例として、フッ素樹脂など、摩擦係数の小さい樹脂材料により構成される層であり、テープ等により構成されている。なお、滑り層26はテープに限られず、塗布材等であってよい。本実施形態においては、一例として、テープで構成された滑り層26をキッチン20の底面20Aに貼り付ける。なお、滑り層26としてのテープは、1枚であってもよいし、複数枚であってもよい。また、滑り層26は、底面20Aの全面に亘って設けてもよいし、点在して設けてもよい。このようにして、図1の右図に示されるように、滑り層26が設けられたキッチン20が組み立てられる。
【0031】
(3)載置工程では、図2に示されるように、キッチン20を台車40に載せる。ここで、台車40はキッチン20を積載した状態で動かすことが可能であれば何れのものであってもよい。本実施形態においては、一例として、台車40は上下方向に昇降可能な昇降機能(図示省略)を備えているものとする。なお、本実施形態において、キッチン20を台車40に載せる作業は、作業者の手動により行われるものとするが、本発明はこれに限られず、フォークリフト等の機器を使用してもよい。
【0032】
(4)案内工程では、図3に示されるように、滑り層26が設けられたキッチン20を台車40に載せた状態で、キッチン20を配設する建物ユニット10の床面12と並ぶ位置へキッチン20を案内する。具体的には、キッチン20を載せた台車40を、一例として台車50に載置された建物ユニット10に隣接させる。この際に、建物ユニット10は、一例として、長手方向が工場の主要生産ラインの流れと直交するように、すなわち短手方向が向上の主要生産ラインの流れに沿うようにして配置される。
【0033】
本実施形態においては、台車40の昇降機能を使用して、キッチン20の底面を建物ユニット10の床面12と並ぶ位置へ案内する。なお、キッチン20と建物ユニット10の床面12との間に隙間や段差が有る場合には、板材等を架け橋として使用する。
【0034】
(5)移動工程では、図3に示されるように、台車40を上記並ぶ位置に配置した状態で、滑り層26が設けられたキッチン20を建物ユニット10の予め定められた所定位置まで滑らせて移動させる。具体的には、作業者Hがキッチン20を建物ユニット10の床面12側に(すなわち、矢印F方向に)押圧することにより移動させる。
【0035】
また、本実施形態においては、キッチン20は建物ユニット10内で滑らせて方向転換されることにより、実際にキッチン20が固定される所定位置まで移動される。
【0036】
(6)固定工程では、図4に示されるように、キッチン20を建物ユニット10内においてキッチン20を固定すべき所定位置に固定する。具体的には、キッチン20の固定に使用される公知の方法により固定されるが、一例として、壁や床にビスを使用することにより固定される。このようにして内部にキッチン20が固定された建物ユニット10としてキッチン付建物ユニット100が完成する。
【0037】
このようにキッチン20が設置された状態のキッチン付建物ユニット100は、公知の移送手段によって、建物が建てられる現場に運ばれる。
【0038】
次に、第1実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0039】
図7は従来のキッチン20の設置方法を説明する模式図である。なお、図7において、上述した第1実施形態と同じ部品は同じ符号で示してここでの詳細な説明は省略する。従来、建物ユニット10にキッチン20を設置する際には、建物ユニット10内の実際にキッチン20を配設する取付場所において組立が行われている。
【0040】
そのため、工場内にてキッチン20を設置する場合には、キッチン20の組立が完了するまで、主要生産ラインを止める必要がある。これに対して、第1実施形態に係るキッチン20の設置方法では、建物ユニット10の外部でキッチン20を組み立てている。そして、組み立てられたキッチン20の底面20Aに滑り層26を設けることにより、滑り層26が設けられたキッチン20を建物ユニット10の予め定められた所定位置まで滑らせて移動させ、固定している。このように、建物ユニット10の外部でキッチン20を組み立ててから建物ユニット10の所定位置に固定することにより、キッチン20の組立の外段取り化が可能となり、工場における主要生産ラインの工数の短縮が可能となる。また、第1実施形態に係るキッチン20の設置方法では、組み立てられたキッチン20の底面20Aにキッチン20を滑り易くする滑り層26を設けたまま建物ユニット10に固定しているので、滑り層26を回収する作業が発生しない。
【0041】
このように、第1実施形態に係るキッチン20の設置方法では、主要生産ラインの工数を短縮しつつ、工場内においてキッチン20の組立から建物ユニット10への固定までの作業を行うことができ、さらに滑り層26を回収する作業が発生しないので、キッチン20を建物ユニット10内で組み立てる場合と比較して生産性を向上させることができる。
【0042】
また、第1実施形態に係るキッチン20の設置方法では、キッチン20の底面20Aに滑り層26が設けられているので、滑り層26が設けられたキッチン20を建物ユニット10内で滑らせることにより方向転換することができる。このようにキッチン20を所定の建物ユニット10内で方向転換して所定位置まで移動することにより、例えば主要生産ラインにおいて、建物ユニット10の短手方向を主要生産ラインの流れ方向に位置させた状態で、建物ユニット10を流れ方向に沿って移動させることができるので、主要生産ラインの作業スペースを縮めることができる。
【0043】
また、上述のようにしてキッチン20が設置された建物ユニット10であるキッチン付建物ユニット100は、建物ユニット10の外部で組み立てられたキッチン20が予め定められた所定位置に固定されているので、現地でキッチン20を組み立てる必要がない。また、第1実施形態に係るキッチン付建物ユニット100では、底面20Aに床面を滑り易くする滑り層26を備えた状態でキッチン20が所定位置に固定されているので、滑り層26を回収する作業が発生しない。このように、第1実施形態に係るキッチン付建物ユニット100では、キッチン20を現地で組み立てる場合と比較して現地作業を低減することができるので、生産性をより向上させることができる。
【0044】
<第2実施形態>
以下、図5及び図6を用いて、第2実施形態に係る建物ユニットとしてのキッチン付き建物ユニット110について説明する。図5は本発明の第2実施形態に係るキッチン付き建物ユニット110を模式的に示す模式図であり、図6は本発明の第2実施形態に係る建物ユニット対200を模式的に示す模式図である。なお、本実施形態においては、上記第1実施形態と同様の構成については同符号で示してここでの詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施形態においては、先ずは、建物を構成する複数の建物ユニットのうち隣接して接合された2個の建物ユニット10である第1建物ユニット10A及び第2建物ユニット10Bのうちの第1建物ユニット10Aへキッチン20を設置する方法について説明する。
【0046】
第1建物ユニット10Aへのキッチン20の設置方法は、(11)組立工程、(12)滑り層配設工程、(13)載置工程、(14)案内工程、(15)第1移動工程、及び(16)仮固定工程を順に行うものである。なお、(11)組立工程、(12)滑り層配設工程、(13)載置工程、及び(14)案内工程は、第1実施形態の(1)組立工程、(2)滑り層配設工程、(3)載置工程、(4)案内工程と同様の工程であり、(15)第1移動工程は第1実施形態の(5)移動工程と同じ工程であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0047】
(16)仮固定工程は、上述した第1実施形態の「固定」が実際にキッチン20を建物ユニット10に固定する本固定であるのに対して、本実施形態の「仮固定」は、キッチン20を第1建物ユニット10Aに取り外し可能に固定するものである。具体的には、図5に示されるように、キッチン20の側面の下端部を当て木60等を使用して第1建物ユニット10Aの壁や床面に固定している。また、例えば養生テープや段ボール60、紐等を使用して第1建物ユニット10Aの壁や床面に固定している。このようにして内部にキッチン20が仮固定された第1建物ユニット10Aとしてキッチン付建物ユニット110が完成する。なお、第2実施形態において、キッチン20が固定される予め定められた位置としては、第1建物ユニット10Aにおいてキッチン20が固定し易い位置、一例として略中央部等がある。
【0048】
次に、接合された第1建物ユニット10A及び第2建物ユニット10B内にキッチン20を設置する設置方法について説明する。接合された第1建物ユニット10A及び第2建物ユニット10Bへのキッチン20の設置方法は、(17)接合工程、(18)第2移動工程、及び(19)本固定工程を順に行うものである。
【0049】
(17)接合工程では、第1建物ユニット10Aと、第1建物ユニット10Aと隣接して配置される第2建物ユニット10Bとを接合する。具体的には、一例として、水平方向に隣接して配置された第1建物ユニット10A及び第2建物ユニット10Bの対向する側面部を一対の連結部材を用いて、一対の連結部材同士を締結することにより接合する。なお、接合方法はこれに限られず、公知の技術を使用することができる。
【0050】
(18)第2移動工程では、仮固定されたキッチン20の仮固定を解除して、図6に示されるように、キッチン20を第1建物ユニット10Aと第2建物ユニット10Bとを跨ぐ所定の位置まで滑らせて移動させる。具体的には、作業者が第1建物ユニット10Aから第2建物ユニット10Bへ向けて、すなわち図中の矢印Pで示す方向に向けて、キッチン20を押圧することにより、キッチン20を上記所定の位置まで移動させる。
【0051】
(19)本固定工程では、上記第1実施形態の(6)固定工程と同様に、キッチン20を第1建物ユニット10Aと第2建物ユニット10Bとを跨ぐ所定の位置において、キッチン20を固定する。具体的には、キッチン20の固定に使用される公知の方法により固定されるが、一例として、壁や床にビスを使用することにより固定される。このようにしてキッチン20が第1建物ユニット10Aと第2建物ユニット10Bとを跨いで固定された建物ユニット対200が完成する。
【0052】
次に、第2実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0053】
第2実施形態に係るキッチン20の設置方法では、第1建物ユニット10Aの外部でキッチン20を組み立てて、組み立てられたキッチン20の底面20Aに滑り層26を設けることにより、キッチン20を第1建物ユニット10Aの予め定められた所定位置まで滑らせて移動させ、仮固定している。このように、第1建物ユニット10Aの外部でキッチン20を組み立ててから第1建物ユニット10Aの所定位置に仮固定することにより、キッチン20の組立の外段取り化が可能となり、工場における主要生産ラインの工数の短縮が可能となる。
【0054】
また、第2実施形態に係るキッチン20の設置方法では、組み立てられたキッチン20の底面20Aにキッチン20を滑り易くする滑り層26を設けたままの状態で第1建物ユニット10Aに固定しているので、滑り層26を回収する作業が発生しない。
【0055】
また、第2実施形態に係るキッチン20の設置方法では、仮固定を解除することにより、キッチン20を滑らせて移動させることが可能となる。そのため、例えば2個の建物ユニット10の床面12を跨いでキッチン20を設置する場合等、工場内で第1建物ユニット10A内にキッチン20を本固定できない場合であっても、工場内で第1建物ユニット10Aにキッチン20を仮固定し、現地において第1建物ユニット10Aに隣接して第2建物ユニット10Bを配置した後で、キッチン20の仮固定を解除し、キッチン20を第1建物ユニット10Aと第2建物ユニット10Bとを跨ぐ所定の位置まで滑らせて移動させることができる。
【0056】
このように、第2の態様に係るキッチン20の設置方法では、主要生産ラインの工数を短縮しつつ、工場内においてキッチン20の組立から第1建物ユニット10Aへの仮固定までの作業を行うことができ、さらに現地において、第1建物ユニット10Aと第2建物ユニット10Bとの床面12を跨ぐ所定の位置まで滑らせて移動させてキッチン20を固定することができるので、キッチン20を現地で組み立てる場合と比較して生産性を向上させることができる。また、さらに第2実施形態に係るキッチン20の設置方法では、滑り層26を回収する作業が発生しないので、より生産性を向上させることができる。
【0057】
また、上述のようにしてキッチン20が設置された第1建物ユニット10Aであるキッチン付建物ユニット110は、第1建物ユニット10Aの外部で組み立てられたキッチン20が予め定められた所定位置に仮固定されているので、現地でキッチン20を組み立てる必要がない。また、第2実施形態に係るキッチン付建物ユニット110では、底面20Aに床面を滑り易くする滑り層26を備えた状態でキッチン20が所定位置に仮固定されているので、滑り層26を回収する作業が発生しない。このように、第2実施形態に係るキッチン付建物ユニット110では、キッチン20を現地で組み立てる場合と比較して現地作業を低減することができるので、生産性をより向上させることができる。
【0058】
また、第2実施形態に係る建物ユニット対200では、キッチン20が第1建物ユニット10A及び第2建物ユニット10Bの外部で組み立てられているので、現地でキッチン20を組み立てる必要がない。また、第2実施形態に係る建物ユニット対200では、キッチン20の底面20Aに床面12を滑り易くする滑り層26が設けられているので、現地において、第1建物ユニット10Aから第2建物ユニット10Bの床面12を跨ぐ位置まで移動させて固定することができる。このように、第2実施形態に係る建物ユニット対200では、キッチン20を現地で組み立てる場合と比較して現地作業を低減することができるので、生産性をより向上させることができる。
【0059】
(本実施形態の補足事項)
なお、上記実施形態においては、(4)案内工程において、建物ユニット10は、長手方向が工場の主要生産ラインの流れと直交するように、すなわち短手方向が向上の主要生産ラインの流れに沿うようにして配置されており、(5)移動工程又は(15)第1移動工程においてキッチン20を方向転換しているが本発明はこれに限られない。(4)案内工程において、予め建物ユニット10が、短手方向が工場の主要生産ラインの流れと直交するように、すなわち長手方向が向上の主要生産ラインの流れに沿うようにして配置されていてもよい。この場合、(5)移動工程又は(15)第1移動工程においてキッチン20は方向転換しなくてよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 建物ユニット
10A 第1建物ユニット
10B 第2建物ユニット
12 床面
20 キッチン(建物設備)
20A 底面
26 滑り層
40 台車
200 建物ユニット対
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7