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特開2025-14511組成物、炭素繊維前駆体、及び炭素繊維前駆体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014511
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】組成物、炭素繊維前駆体、及び炭素繊維前駆体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/26 20060101AFI20250123BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20250123BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20250123BHJP
   D01F 9/21 20060101ALI20250123BHJP
   D01F 6/38 20060101ALI20250123BHJP
   C01B 32/00 20170101ALI20250123BHJP
【FI】
C08L33/26
C08K5/34
C08K5/17
D01F9/21
D01F6/38
C01B32/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117125
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 光正
(72)【発明者】
【氏名】森下 卓也
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 夏
(72)【発明者】
【氏名】國友 晃
(72)【発明者】
【氏名】近藤 尚登
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
4L035
4L037
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB06
4G146AD19
4G146BA11
4G146BA13
4G146BA15
4G146BC24
4G146BC32B
4J002BG131
4J002EN037
4J002EN077
4J002EQ027
4J002ET007
4J002EU006
4J002EU017
4J002EU026
4J002EU036
4J002EU046
4J002EU056
4J002EU066
4J002EU076
4J002EU096
4J002EU106
4J002EU116
4J002EU126
4J002EU136
4J002EU146
4J002EU156
4J002EU166
4J002EU186
4J002EV346
4J002FD146
4J002FD207
4J002GK01
4J002HA04
4L035AA04
4L035BB07
4L035MB09
4L037CS02
4L037CS03
4L037FA01
4L037PC05
4L037PS02
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れる組成物等の提供。
【解決手段】30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物と、水と、を含む組成物、及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、
窒素原子を含む複素環式化合物と、
水と、を含む組成物。
【請求項2】
多官能性アミノ基を有する化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記反応性基を有するビニル系モノマー単位は、不飽和カルボン酸単位である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アクリルアミド系共重合体の含有量が50質量%である組成物の粘度を粘度Aとし、アクリルアミド系共重合体の含有量が50質量%である組成物を70℃で24時間保管した後の粘度を粘度Bとしたとき、
前記粘度Bが前記粘度Aの2倍以内であり、かつ、100Pa・s以下である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、
窒素原子を含む複素環式化合物と、を含む、炭素繊維前駆体。
【請求項6】
多官能性アミノ基を有する化合物をさらに含む、請求項5に炭素繊維前駆体。
【請求項7】
前記反応性基を有するビニル系モノマー単位は、不飽和カルボン酸単位である、請求項5又は請求項6に記載の炭素繊維前駆体。
【請求項8】
30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物と、水と、を含む組成物を用いて紡糸する工程を含む、炭素繊維前駆体の製造方法。
【請求項9】
前記組成物は、多官能性アミノ基を有する化合物をさらに含む、請求項8に炭素繊維前駆体の製造方法。
【請求項10】
前記反応性基を有するビニル系モノマー単位は、不飽和カルボン酸単位である、請求項8又は請求項9に炭素繊維前駆体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、炭素繊維前駆体、及び炭素繊維前駆体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維の製造方法としては、従来から、ポリアクリロニトリルを紡糸して得られる炭素繊維前駆体に耐炎化処理を施した後、炭化処理を施す方法が主として採用されている。
例えば、特許文献1には、アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上含有し、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上含有するアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分と、多官能性アミノ基を有する化合物と、を含有することを特徴とする炭素材料前駆体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-172800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクリルアミド系共重合体を含む組成物を用いて炭素繊維を製造する際に、長時間の保存に伴う粘度上昇が抑制されること、すなわち、保存安定性が求められる場合があった。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、保存安定性に優れる組成物を提供することである。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記組成物を用いた炭素繊維前駆体、及び炭素繊維前駆体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>
30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、
窒素原子を含む複素環式化合物と、
水と、を含む組成物。
<2>
多官能性アミノ基を有する化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
<3>
反応性基を有するビニル系モノマー単位は、不飽和カルボン酸単位である、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4>
アクリルアミド系共重合体の含有量が50質量%である組成物の粘度を粘度Aとし、アクリルアミド系共重合体の含有量が50質量%である組成物を70℃で24時間保管した後の粘度を粘度Bとしたとき、
粘度Bが粘度Aの2倍以内であり、かつ、100Pa・s以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5>
30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、
窒素原子を含む複素環式化合物と、を含む、炭素繊維前駆体。
<6>
多官能性アミノ基を有する化合物をさらに含む、<5>に炭素繊維前駆体。
<7>
反応性基を有するビニル系モノマー単位は、不飽和カルボン酸単位である、<5>又は<6>に記載の炭素繊維前駆体。
<8>
30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物と、水と、を含む組成物を用いて紡糸する工程を含む、炭素繊維前駆体の製造方法。
<9>
組成物は、多官能性アミノ基を有する化合物をさらに含む、<8>に炭素繊維前駆体の製造方法。
<10>
反応性基を有するビニル系モノマー単位は、不飽和カルボン酸単位である、<8>又は<9>に炭素繊維前駆体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、保存安定性に優れる組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、上記組成物を用いた炭素繊維前駆体、及び炭素繊維前駆体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0009】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。炭素繊維前駆体中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、炭素繊維前駆体中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0010】
本開示において、「炭素繊維前駆体」とは、炭化処理、又は耐炎化処理及び炭化処理を施すことにより、炭素繊維を得ることができる繊維を意味する。
【0011】
<組成物>
本開示の組成物は、30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物と、水と、を含む。
【0012】
本開示の組成物は、長時間の保存に伴う粘度上昇が抑制され、保存安定性に優れる。
【0013】
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
本開示の組成物は、窒素原子を含む複素環式化合物を含む。アクリルアミド系共重合体に含まれる、反応性基を有するビニル系モノマー単位の反応性基に、窒素原子を含む複素環式化合物の窒素原子が配位することにより、アクリルアミド系共重合体のゲル化が抑制され、保存安定性に優れると考えられる。また、他の成分が含まれる場合に、アクリルアミド系共重合体と他の成分との反応が抑制され、保存安定性に優れると考えられる。
【0014】
以下、本開示の組成物に含まれる各成分について説明する。
【0015】
(アクリルアミド系共重合体)
アクリルアミド系共重合体は、30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位を含む。すなわち、アクリルアミド系共重合体におけるアクリルアミド系モノマー単位の含有率は、30モル%以上である。上記含有率は、40モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。
【0016】
本開示において、アクリルアミド系モノマー単位とは、アクリルアミド系モノマーに由来する構成単位を意味する。
【0017】
アクリルアミド系モノマー単位の含有率が30モル%以上であることにより、アクリルアミド系共重合体の水に対する溶解性を向上させることができる。
【0018】
また、アクリルアミド系モノマー単位の含有率の上限は、特に限定されるものではないが、炭素繊維前駆体における形状安定性の観点から、99モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、85モル%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド;エタクリルアミド;クロトンアミド;イタコン酸ジアミド;ケイ皮酸アミド;マレイン酸ジアミド;N‐メチルアクリルアミド、N‐エチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド等のN-アルキルアクリルアミド;N-シクロヘキシルアクリルアミド等のN-シクロアルキルアクリルアミド;N,N’-ジメチルアクリルアミド等のジアルキルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルアクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のヒドロキシアルキルアクリルアミド;N‐フェニルアクリルアミド等のN-アリールアクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;N,N’-メチレンビスアクリルアミド等のN,N’-アルキレンビスアクリルアミド;メタクリルアミド;N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N‐n-ブチルメタクリルアミド、N‐tert-ブチルメタクリルアミド等のN-アルキルメタクリルアミド;N-シクロヘキシルメタクリルアミド等のN-シクロアルキルメタクリルアミド;N,N-ジメチルメタクリルアミド等のジアルキルメタクリルアミド;ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等のヒドロキシアルキルメタクリルアミド;N-フェニルメタクリルアミド等のN‐アリールメタクリルアミド;ジアセトンメタクリルアミド;N,N’-メチレンビスメタクリルアミド等のN,N’-アルキレンビスメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0020】
また、アクリルアミド系共重合体の水に対する溶解性の観点から、上記したアクリルアミド系モノマーの中でも、アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、ジアルキルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド又はジアルキルメタクリルアミドが好ましく、アクリルアミドがより好ましい。
【0021】
アクリルアミド系共重合体に含まれるアクリルアミド系モノマー単位は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0022】
アクリルアミド系共重合体は、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含む。本開示において、反応性基を有するビニル系モノマー単位とは、反応性基を有するビニル系モノマーに由来する構成単位を意味する。
【0023】
反応性基を有するビニル系モノマーにおける反応性基は、アミノ基と反応可能な反応性基であることが好ましく、カルボキシ基、酸無水物基、エステル基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0024】
具体的に、反応性基を有するビニル系モノマー単位は、不飽和カルボン酸単位、不飽和カルボン酸無水物単位、不飽和カルボン酸エステル単位、及びエポキシ基含有ビニル系モノマー単位からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタ
コン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。
【0025】
不飽和カルボン酸は、塩を形成していてもよい。不飽和カルボン酸の塩としては、不飽和カルボン酸の金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。
【0026】
不飽和カルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物等が挙げられる。
【0027】
不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2-クロロエチル、メタクリル酸2-クロロエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等が挙げられる。
【0028】
エポキシ基含有ビニル系モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、p-グリシジルスチレン等が挙げられる。
【0029】
アクリルアミド系共重合体に含まれる、反応性基を有するビニル系モノマー単位は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
アクリルアミド系共重合体における、反応性基を有するビニル系モノマー単位の含有率は、0.1モル%~40モル%であることが好ましく、1モル%~10モル%であることがより好ましい。
【0031】
アクリルアミド系共重合体は、アクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位以外の他の重合性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0032】
他の重合性モノマーとしては、シアン化ビニル系モノマー、オレフィン系モノマー、カルボン酸ビニル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマー、ビニルアルコール系モノマー、スルホン酸系ビニルモノマー等が挙げられる。
【0033】
シアン化ビニル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-ヒドロキシエチルアクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、クロロメチルアクリロニトリル、エトキシアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。
【0034】
オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
カルボン酸ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、酢酸プロペニル、酢酸イソプロぺニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0035】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、o-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン化ビニル系モノマーとしては、塩化ビニル等が挙げられる。
【0037】
ビニルアルコール系モノマーとしては、ビニルアルコール等が挙げられる。
【0038】
スルホン酸系ビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、これらの塩等が挙げられる。
【0039】
中でも、アクリルアミド系共重合体の紡糸性、融着抑制性、炭化収率及び形状安定性の観点からは、シアン化ビニル系モノマーが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
【0040】
アクリルアミド系共重合体に含まれる、他の重合性モノマー単位は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0041】
アクリルアミド系共重合体における、他の重合性モノマー単位の含有率は、1モル%~50モル%であることが好ましく、10モル%~40モル%であることがより好ましい。
【0042】
水に対する溶解性、紡糸性、融着抑制性、炭化収率及び形状安定性の観点から、アクリルアミド系共重合体は、アクリルアミド系モノマーと、シアン化ビニル系モノマーと、不飽和カルボン酸との共重合体であることが特に好ましく、アクリルアミドと、アクリロニトリルと、アクリル酸との共重合体であることが最も好ましい。
【0043】
アクリルアミド系共重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではなく、通常、500万以下であるが、炭素繊維前駆体の成形加工性の観点から、200万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、50万以下であることがさらに好ましく、20万以下であることが特に好ましく、13万以下であることがまた特に好ましく、10万以下であることが最も好ましい。
【0044】
また、アクリルアミド系共重合体の重量平均分子量の下限は、特に限定されるものではないが、通常1万以上であるが、炭素繊維前駆体及び炭素繊維の強度の観点から、2万以上であることが好ましく、3万以上であることがさらに好ましく、4万以上であることが特に好ましい。
【0045】
なお、本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、下記条件により測定する。測定装置としては、東ソー社製のHLC-8220GPC又はこれと同程度の装置を使用することができる。
(測定条件)
・カラム:TSKgel GMPWXL×2本+TSKgel G2500PWXL×1本
・溶離液:100mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル(=80/20(体積比))
・溶離液流量:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・分子量標準物質:標準ポリエチレンオキシド/標準ポリエチレングリコール
・検出器:示差屈折率検出器
【0046】
(窒素原子を含む複素環式化合物)
本開示の組成物は、窒素を含む複素環式化合物を含む。
窒素を含む複素環式化合物としては、例えば、アジリジン、ジアジリジン、アジリン、ジアジリン、ジアジレン等の3員環の複素環式化合物;アゼチジン、ジアゼチジン、トリアゼチジン、アゼト、ジアゼト、トリアゼト等の4員環の複素環式化合物;ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ピロリン、ピラゾリン、イミダゾリン、トリアゾリン、テトリゾリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等の5員環の複素環式化合物;ピペリジン、ピペリデイン、ピペラジン、トリアジナン、テトラジナン、ペンタジナン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ペンタジン等の6員環の複素環式化合物;アゼパン、ジアゼパン、トリアゼパン、テトラゼパン、アゼピン、ジアゼピン、トリアゼピン等の7員環の複素環式化合物;アゾカン、アゾナン、アゼカン、アゾシン、アゾニン、アゼシン;インドール、インドレニン、インドリン、イソインドール、イソインドレニン、イソインドリン、インドリジン、プリン、インドリジジン等のインドール系化合物;キノリン、イソキノリン、キノリジジン、キノキサリン、シンノリン、キナゾリン、フタラジン、ナフチリジン等のキノリン系化合物;カルバゾール、フェナントロリン、アクリジン、ナフタジン、フェナジン等の三環式化合物が挙げられる。
【0047】
窒素を含む複素環式化合物は、ピロリジジン、キヌクリジン、ジアザビシクロオクタン、ヘキサミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、モルファン、ベンザゾシン、アゼピンドー、モルフィナン、ハスバナン、ポルフィリン、クロリン、コロール、ノルコロール、コリン、サブポルフィリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、又はアントラコシアニンであってもよい。
【0048】
窒素を含む複素環式化合物は、上述した化合物の誘導体であってもよく、上述した化合物の塩であってもよい。塩は、有機塩であってもよく、無機塩であってもよい。
【0049】
中でも、窒素を含む複素環式化合物は、イミダゾール、又はイミダゾールの誘導体であることが好ましい。
【0050】
イミダゾールの誘導体としては、例えば、1-デシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシル-4-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-オクチルイミダゾール、2-シクロヘキシルイミダゾール等のアルキルイミダゾール化合物、2-フェニルイミダゾールや2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のアルキルイミダゾール化合物;
1-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-トルイルイミダゾール、2-(4-クロロフェニル)イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-1-ベンジルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジルイミダゾール、2,4 -ジフェニルイミダゾール、2,4-ジフェニル-5メチルイミダゾール、2-フェニル-4-(3,4-ジクロロフェニル)イミダゾール、2-フェニル-4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-メチルイミダゾール、2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-フェニル-5-メチルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、2-ノニル-4-フェニルイミダゾール、4-フェニル-5-デシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ベンジルイミダゾール、2-(1-ナフチル)イミダゾール、2(2-ナフチル)-4-(4-クロロフェニル)-5-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-(2-ナフチル)イミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、2-(2,4-ジクロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(1-ナフチル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(4-ピリジル)-4,5-ジフェニルイミダゾール等のアリールイミダゾール化合物;
1-ベンジルイミダゾール、1-(4-クロロフェニル)メチル-2-メチルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール、2-ベンジル-4-メチルイミダゾール、2-(2-フェニルエチル)イミダゾール、2-(5-フェニルペンチル)イミダゾール、2-メチル-4,5-ジベンジルイミダゾール、1-(2,4-ジクロロフェニル)メチル-2- ベンジルイミダゾール、2-(1-ナフチル)メチル-4-メチルイミダゾール等のアラルキルイミダゾール化合物;
1-ドデシル-2-メチルベンズイミダゾール、2-プロピルベンズイミダゾール、2-ペンチルベンズイミダゾール、2-オクチルベンズイミダゾール、2-ノニルベンズイミダゾール、2-ヘプタデシルベンズイミダゾール、2-ヘキシル-5-メチルベンズイミダゾール、2-ペンチル-5,6-ジクロロベンズイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンズイミダゾール、2-(2,4,4-トリメチルペンチル)ベンズイミダゾール、2-シクロヘキシルベンズイミダゾール、2-(5-シクロヘキシルペンチル)ベンズイミダゾール、2-フェノキシメチルベンズイミダゾール、2-(2-アミノエチル)ベンズイミダゾール、2,2’-エチレンジベンズイミダゾール、2-(メルカプトメチル)ベンズイミダゾール、2-ペンチルメルカプトベンズイミダゾール等のアルキルベンズイミダゾール化合物;
1-フェニルベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2-(4-クロロフェニル)ベンズイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルベンズイミダゾール、2-オルソトリル-5,6-ジメチルベンズイミダゾール、2-(1-ナフチル)-5-クロロベンズイミダゾール、5-フェニルベンズイミダゾール、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール等のアリールベンズイミダゾール化合物;
1-ベンジルベンズイミダゾール、2-ベンジルベンズイミダゾール、2-(4-クロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(4-ブロモフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(2,4-ジクロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(3,4-ジクロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-パラトリルメチル-5,6-ジクロロベンズイミダゾール、1-アリル-2-(4-クロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(2-フェニルエチル)ベンズイミダゾール、2-(3-フェニルプロピル)-5-メチルベンズイミダゾール、2-(1-ナフチル)メチルベンズイミダゾール、2-(2-フェニルビニル)ベンズイミダゾール、2-(ベンジルメルカプト)ベンズイミダゾール、2-(2-ベンジルメルカプトエチル)ベンズイミダゾール等のアラルキルベンズイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0051】
窒素原子を含む複素環式化合物の含有率は、アクリルアミド系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~20質量部であることが好ましく、0.05質量部~10質量部であることがより好ましく、0.1質量部~5質量部であることがさらに好ましく、0.15質量部~2質量部であることが特に好ましく、0.2~1質量部であることが最も好ましい。
【0052】
(水)
本開示の組成物は、水を含む。
【0053】
水の含有率は、アクリルアミド系共重合体100質量部に対して、1質量部~4000質量部であることが好ましく、3質量部~2000質量部であることがより好ましく、10質量部~1000質量部であることが更に好ましく、20質量部~900質量部であることが特に好ましく、30質量部~800質量部であることが特に好ましい。
【0054】
本開示の組成物は、アクリルアミド系共重合体、窒素原子を含む複素環式化合物、及び水以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0055】
本開示の組成物は、耐炎化処理時の高温(例えば、200℃以上)におけるアクリルアミド系共重合体の軟化による炭素繊維前駆体同士の融着又は凝集を抑制し、形状保持性を向上させる観点から、多官能性アミノ基を有する化合物(以下、「多官能性アミノ基含有化合物」ともいう)をさらに含むことが好ましい。
【0056】
多官能性アミノ基含有化合物としては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミン;ヘキサメチレンジアミン、ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミン;ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ジアミン;アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物;及びジシアンジアミドが挙げられる。
【0057】
本開示の組成物に含まれていてもよい多官能性アミノ基含有化合物は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0058】
本開示の組成物が多官能性アミノ基含有化合物を含む場合、多官能性アミノ基含有化合物の含有率は、アクリルアミド系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~20質量部であることが好ましく、0.05質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0059】
組成物に多官能性アミノ基含有化合物が含まれる場合、多官能性アミノ基含有化合物とアクリルアミド系共重合体との反応によって、組成物の粘度が上昇しやすく、ゲルが生じやすい。しかし、本開示の組成物は、窒素原子を含む複素環式化合物を含むため、多官能性アミノ基含有化合物とアクリルアミド系共重合体との反応が抑制され、保存安定性に優れる。
【0060】
本開示の組成物は、酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0061】
酸としては、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、硫酸、硝酸、炭酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。また、このような酸の塩としては、金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アンモニウム塩、アミン塩、グアニジン塩、尿素塩、メラミン塩、イミダゾール塩等が挙げられ、アンモニウム塩、アミン塩が好ましく、アンモニウム塩がより好ましい。
炭素材料前駆体の炭化収率がさらに向上するという観点から、酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種は、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、硫酸、又はこれらのアンモニウム塩が好ましく、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、又はこれらのアンモニウム塩がより好ましく、リン酸、ポリリン酸、はこれらのアンモニウム塩が特に好ましい。
【0062】
本開示の組成物が酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、これらの含有率は、アクリルアミド系共重合体100質量部に対して、0.1質量部~100質量部であることが好ましく、0.2質量部~50質量部であることがより好ましく、0.5質量部~30質量部であることがさらに好ましく、1質量部~20質量部であることが特に好ましい。
【0063】
本開示の組成物において、アクリルアミド系共重合体は、水に溶解していてもよく、水に分散していてもよい。すなわち、本開示の組成物は、水溶液であってもよく、水分散液であってもよい。
【0064】
本開示の組成物は、70℃における粘度が1Pa・s~200Pa・sであることが好ましく、10Pa・s~100Pa・sであることがより好ましい。
【0065】
アクリルアミド系共重合体の含有量が50質量%である組成物の粘度を粘度Aとし、アクリルアミド系共重合体の含有量が50質量%である組成物を70℃で24時間保管した後の粘度を粘度Bとしたとき、粘度Bが粘度Aの2倍以内であり、かつ、200Pa・s以下であることが好ましく、粘度Bが粘度Aの2倍以内であり、かつ、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0066】
粘度A、Bは、70℃に調整した組成物を、B型粘度計を用いて測定される値である。粘度計として、例えば、東洋産業社製の粘度計「TVC-10」が用いられる。
【0067】
<炭素繊維前駆体>
本開示の炭素繊維前駆体は、30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物と、を含む。
【0068】
アクリルアミド系共重合体、及び窒素原子を含む複素環式化合物の好ましい態様は、上記のとおりである。
また、本開示の炭素繊維前駆体は、アクリルアミド系共重合体、及び窒素原子を含む複素環式化合物以外の他の成分を含んでいてもよい。本開示の炭素材料前駆体は、その他のポリマー、有機溶剤、界面活性剤、架橋剤、耐炎化促進剤(例えば、酸、その塩等)、塩化ナトリウム、塩化亜鉛等の塩化物;水酸化ナトリウム等の水酸化物;ガラスファイバー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ;グラフェン等の各種フィラー;分散剤、平滑剤、吸湿剤、粘度調整剤、可塑剤、離型剤、展着剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤等の添加成分をさらに含んでもよい。添加成分の含有量は、適宜調整できる。
【0069】
本開示の炭素繊維前駆体は、窒素原子を含む複素環式化合物を含む。アクリルアミド系共重合体に含まれる、反応性基を有するビニル系モノマー単位の反応性基に、窒素原子を含む複素環式化合物の窒素原子が配位することにより、力学的特性(特に、引張強度)が向上する。
【0070】
炭素繊維前駆体は、単繊維であってもよく、繊維束であってもよい。
【0071】
炭素繊維前駆体が繊維束である場合、1束あたりのフィラメント数は、特に限定されるものではないが、耐炎化繊維及び炭素繊維の生産性及び機械特性の観点から、50本~360000本であることが好ましく、100本~144000本であることがより好ましく、500本~36000本であることがさらに好ましく、1000本~24000本であることが特に好ましい。
また、1束あたりのフィラメント数を360000本以下とすることにより、耐炎化処理時における焼成ムラの発生を抑制することができる。
【0072】
炭素繊維前駆体を構成する単繊維繊度は、特に限定されるものではないが、1×10-8tex/本~100tex/本であることが好ましく、1×10-6tex/本~60tex/本であることがより好ましく、1×10-3tex/本~40tex/本であることがさらに好ましく、1×10-2tex/本~10tex/本であることがまたさらに好ましく、
2×10-2tex/本~5tex/本であることが特に好ましく、3×10-2tex/本~3×10-1tex/本であることが最も好ましい。
炭素繊維前駆体の繊度を1×10-8tex/本以上とすることにより、糸切れの発生を抑制することができ、これにより炭素繊維前駆体の巻き取りの容易性及び耐炎化処理の安定性を向上させることができる傾向にある。
炭素繊維前駆体の単繊維の繊度を100tex/本以下とすることにより、耐炎化処理により得られる炭素繊維の表層付近の構造と、中心付近の構造との差を低減することができ、炭素繊維の引張強度及び引張弾性率を向上することができる傾向にある。
【0073】
本開示において、単繊維の繊度(tex/本)の測定は、炭素繊維前駆体を、100本を束ねて、繊維束を作製し、この繊維束の質量を測定して、下記式により単繊維の繊度を求める。
単繊維の繊度(tex)=繊維束の質量(g)/繊維長(m)×1000/100(本)
【0074】
炭素繊維前駆体の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、3nm~300μmであることが好ましく、30nm~250μmであることがより好ましく、1μm~200μmであることがさらに好ましく、3μm~100μmであることが特に好ましく、4μm~40μmであることがまた特に好ましく、5μm~30μmであることが最も好ましく、6μm~20μmであってもよい。
炭素繊維前駆体の平均繊維径を3nm以上とすることにより、耐炎化処理の安定性を向上させることができる傾向にある。また、炭素繊維前駆体の平均繊維径を3nm以上とすることにより、糸切れの発生を抑制することができ、これにより炭素繊維前駆体の巻き取りの容易性及び耐炎化処理の安定性を向上させることができる傾向にある。
炭素繊維前駆体の平均繊維径を300μm以下とすることにより、耐炎化処理により得られる炭素繊維の表層付近の構造と、中心付近の構造との差を低減することができ、炭素繊維の引張強度及び引張弾性率を向上することができる傾向にある。
【0075】
本開示において、平均繊維径は、炭素繊維前駆体100本を束ねて繊維束を作製し、乾式自動密度計を用いて繊維束の密度を測定し、下記式により繊維束を構成する単繊維の平均繊維径を求める。なお、乾式自動密度計としては、マイクロメリティックス社製のアキュピックII 1340又はこれと同程度の装置を使用することができる。
D={(Dt×4×1000)/(ρ×π×n)}1/2
〔式中、
Dは繊維束を構成する単繊維の平均繊維径(μm)を表し、
Dtは繊維束の繊度(tex)を表し、
ρは繊維束の密度(g/cm)を表し、
nは繊維束を構成する単繊維の本数(本)を表す。
なお、πは3.14である。〕
【0076】
本開示の炭素繊維前駆体は、表面に従来公知の油剤が塗布されたものであってもよい。
炭素繊維前駆体の表面に油剤が塗布されていることにより、繊維の集束性及びハンドリングを向上することができ、且つ単繊維同士の融着を防止することができる。
また、油剤をアクリルアミド系共重合体と共に、架橋することにより、単繊維同士の融着をより効果的に防止することができる。
油剤としては、特に制限はないが、単繊維同士の融着を抑制する観点から、シリコーン系油剤を好ましく使用することができる。また、油剤としては、活性光線の照射及び/又は熱等により架橋する官能基を有する油剤が好ましく、官能基を有するシリコーン系油剤がより好ましく、活性光線の照射により架橋する官能基を有するシリコーン系油剤が特に好ましい。
【0077】
<炭素繊維前駆体の製造方法>
本開示の炭素繊維前駆体の製造方法は、30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物と、水と、を含む組成物を用いて紡糸する工程を含む。
【0078】
本開示の炭素繊維前駆体の製造方法に用いられる組成物の好ましい態様は、本開示の組成物の好ましい態様と同様である。
【0079】
紡糸の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、乾式紡糸、乾湿式紡糸、湿式紡糸、溶融紡糸、エレクトロスピニング等を挙げることができる。中でも、水性溶媒(例えば、水、アルコール、及びこれらの混合溶媒)及び水系混合溶媒(水性溶媒と有機溶媒(ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド、テトラヒドロフラン等)との混合溶媒)のうちの少なくとも一方の溶媒を用いた乾式紡糸が好ましく、低コストで安全に炭素繊維を製造することが可能となる。なお、水系混合溶媒中の有機溶媒の含有量としては、水性溶媒に不溶又は難溶なアクリルアミド系共重合体が有機溶媒を混合することによって溶解する量であれば特に制限はない。また、このようなアクリルアミド系共重合体の中でも、より低コストで安全に炭素繊維前駆体や炭素繊維を製造することが可能となるという観点から、水性溶媒に可溶なアクリルアミド系共重合体が好ましく、水に可溶な(水溶性の)アクリルアミド系共重合体がより好ましい。
【0080】
アクリルアミド系共重合体の合成は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合等の公知の重合反応を利用することにより行うことができる。上記重合反応の中でも、合成コスト低減の観点から、ラジカル重合が好ましい。
また、アクリルアミド系共重合体の合成は、溶液重合、懸濁重合、沈殿重合、分散重合、乳化重合(例えば、逆相乳化重合)等の重合方法を利用することにより行うことができる。
また、溶液重合によりアクリルアミド系共重合体の合成を行う場合、溶媒としては、原料のモノマー及び得られるアクリルアミド系共重合体が溶解する溶媒を使用することが好ましく、低コストで安全に合成できるという観点から、水性溶媒又は水系混合溶媒を使用することがより好ましく、水性溶媒を使用することがさらに好ましい。
水性溶媒としては、水、アルコール、これらの混合溶媒等が挙げられるが、水が特に好ましい。
水系混合溶媒は、上記水性溶媒と有機溶媒との混合溶媒を意味し、有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0081】
ラジカル重合によるアクリルアミド系共重合体の合成において、重合開始剤を使用することが好ましい。
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の従来公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
溶媒として水性溶媒又は水系混合溶媒を使用する場合には、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の水性溶媒又は水系混合溶媒に可溶なラジカル重合開始剤が好ましい。
また、アクリルアミド系共重合体の分子量を制御し、アクリルアミド系共重合体の紡糸性を向上させるという観点から、重合開始剤に代えて、又は重合開始剤と共に、重合促進剤及び分子量調節剤の少なくとも一方を使用することが好ましく、重合開始剤及び重合促進剤を併用することがより好ましい。
重合促進剤としては、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
分子量調節剤としては、n-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン化合物などが挙げられる。
重合開始剤である過硫酸アンモニウムと、重合促進剤であるテトラメチルエチレンジアミンとを併用することが特に好ましい。
【0082】
上記重合反応の温度としては特に制限はないが、アクリルアミド系共重合体の紡糸性を向上させるという観点から、35℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上であることが特に好ましく、75℃以上であることが最も好ましい。
【0083】
上記炭素繊維前駆体に対して耐炎化処理を施すことで、耐炎化繊維を製造することができる。耐炎化処理とは、炭素繊維前駆体に対して酸化性雰囲気下で加熱処理を施すことを指す。
【0084】
耐炎化処理においては、アクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物とが解離し、耐炎化繊維の形状保持性が向上する。
【0085】
耐炎化処理は、特に限定されるものではないが、150℃~500℃の範囲の温度で実施されることが好ましく、200℃~450℃の範囲の温度で実施されることがより好ましく、250℃~420℃の範囲の温度で実施されることがさらに好ましい。
なお、上記温度には、後述する耐炎化処理時の最高温度(耐炎化処理温度)だけでなく、耐炎化処理温度までの昇温過程等における温度も包含される。
【0086】
耐炎化処理時の最高温度(耐炎化処理温度)は、250℃~500℃であることが好ましく、280℃~450℃であることがより好ましく、290℃~420℃であることがさらに好ましく、300℃~400℃であることがまたさらに好ましく、305℃~390℃であることが特に好ましく、310℃~380℃であることが最も好ましい。
耐炎化処理温度を250℃以上とすることにより、耐炎化繊維の耐熱性及び炭化収率を向上することができる傾向にある。
また、耐炎化処理温度を500℃以下とすることにより、製造コストを低減することができる傾向にある。
【0087】
炭素繊維前駆体の耐炎化処理時において、炭素繊維前駆体に対し延伸処理を施すことが好ましい。炭素繊維前駆体に対し延伸処理を施すことにより、炭素繊維前駆体に含まれるアクリルアミド系共重合体が配向し、耐炎化繊維の引張強度を向上することができる傾向にある。
延伸処理は、耐炎化処理温度での加熱時に少なくとも実施されることが好ましい。
また、耐炎化繊維の引張強度向上という観点からは、耐炎化処理温度までの昇温過程においても延伸処理が実施されることが好ましい。
また、延伸処理は、紡糸処理過程又は耐炎化処理の前工程において、吸湿率を制御しつつ実施してもよい。
【0088】
延伸処理時において、炭素繊維前駆体に付与する張力は、0.03mN/tex~2000mN/texであることが好ましく、0.05mN/tex~500mN/texであることがより好ましく、0.07mN/tex~200mN/texであることがさらに好ましく、0.1mN/tex~100mN/texであることが特に好ましい。
なお、本開示において、炭素繊維前駆体に付与する張力(単位:mN/tex)は、耐炎化処理時に炭素繊維前駆体に付与する張力(単位:mN)を、炭素繊維前駆体の絶乾状態での繊度(単位:tex)で除した値、すなわち、炭素繊維前駆体の単位繊度当たりの張力である。
また、上記張力は、耐炎化炉等の加熱装置の入口及び出口における速度調整を実施したり、ロードセル、バネ、重り、エアーシリンダー等を使用したりすることによって調整することができる。
【0089】
耐炎化処理時間(耐炎化処理温度での加熱時間)は、特に限定されるものではないが、炭化収率及び製造コストの観点から、1分間~180分間であることが好ましく、2分間~120分間であることがより好ましく、3分間~60分間であることがさらに好ましく、4分間~50分間が特に好ましく、5分間~40分間が最も好ましい。
なお、耐炎化処理時間を3時間超の長時間に設定してもよい。
【0090】
耐炎化繊維の密度は、特に限定されるものではないが、炭化収率、生産性等の観点からは、1.30g/cm~1.75g/cmであることが好ましく、1.35g/cm~1.70g/cmであることがより好ましく、1.37g/cm~1.65g/cmであることがさらに好ましく、1.39g/cm~1.60g/cmであることが特に好ましく、1.44g/cm~1.55g/cmであることが最も好ましい。
【0091】
耐炎化繊維の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、得られる炭素繊維の引張強度の観点からは、3nm~300μmであることが好ましく、30nm~150μmであることがより好ましく、1μm~60μmであることがさらに好ましく、2μm~30μmが特に好ましく、3μm~20μmであることが最も好ましく、5μm~15μmであってもよい。
【0092】
炭化収率の観点から、耐炎化繊維の平均繊維径は、炭素繊維前駆体の平均繊維径に比べて、5%以上小さいことが好ましく、10%以上小さいことがより好ましく、15%以上小さいことがさらに好ましく、20%以上小さいことが特に好ましく、25%以上小さいことが最も好ましく、30%以上小さくてもよい。
【0093】
上記耐炎化繊維に対して炭化処理を施すことにより、炭化繊維を製造することができる。炭化処理とは、炭素繊維前駆体を炭化する処理を指し、低酸素環境(好ましくは酸素を遮断した環境)下、加熱処理を施すことを意味する。
【0094】
炭化処理の方法としては、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)雰囲気下、耐炎化繊維に対し、耐炎化処理における温度よりも高い温度で加熱処理を施す方法等が挙げられる。
上記炭化処理により、耐炎化繊維が炭化し、炭素繊維が得られる。
炭化処理における加熱温度は、500℃以上であることが好ましく、1000℃以上であることがより好ましく、1100℃以上であることがさらに好ましく、1200℃以上であることが特に好ましく、1300℃以上であることが最も好ましい。
また、加熱温度の上限値は、3000℃以下が好ましく、2500℃以下がより好ましい。
また、炭化処理における加熱時間は、特に限定されるものではないが、30秒~60分間であることが好ましく、1分間~30分間であることがより好ましい。
なお、本開示において「炭化処理」には、一般的に、不活性ガス雰囲気下、2000℃~3000℃の温度で加熱することによって行われる「黒鉛化」を含んでいてもよい。
また、炭化処理は、複数回の加熱処理を含むものであってもよい。
例えば、先に1000℃未満の温度で加熱処理(予備炭化処理)を行い、次いで1000℃以上の温度で加熱処理(炭化処理)を行い、さらに、2000℃以上の温度で加熱処理(黒鉛化処理)を行うことができる。
【0095】
炭素繊維の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、引張強度の観点から、3nm~300μmであることが好ましく、30nm~150μmであることがより好ましく、1μm~60μmであることがさらに好ましく、2μm~20μmがまたさらに好ましく、3μm~15μmであることが特に好ましく、5μm~10μmであることが最も好ましい。
【実施例0096】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
[実施例1]
アクリルアミド系共重合体(アクリルアミド(AM)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=60/35/5(モル比))100質量部に対してリン酸量が3質量部となるように、水にリン酸を溶解させた。
次に、アジピン酸ジヒドラジド、及び、2-エチル-4-メチルイミダゾールを溶解させた。
さらに、この水溶液に、アクリルアミド系共重合体を加えて70℃に加熱し、アクリルアミド系共重合体を溶解させた。これにより、アクリルアミド系共重合体の濃度が50質量%である、アクリルアミド系共重合体の水溶液を得た。
【0098】
[実施例2~実施例6、比較例1~比較例5]
多官能性アミノ基含有化合物、窒素を含む複素環式化合物、及びリン酸の条件を表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、アクリルアミド系共重合体の水溶液を得た。表1に示す、各成分の含有量の単位は「質量部」である。
【0099】
得られたアクリルアミド系共重合体の水溶液を用いて、初期粘度と、24時間、48時間、及び72時間保管した後の粘度と、を測定した。
また、得られたアクリルアミド系共重合体の水溶液を用いて炭素繊維前駆体を調製し、引張強度を測定した。
さらに、得られたアクリルアミド系共重合体の水溶液を用いて炭素繊維前駆体を調製した後、耐炎化処理を行い、形状保持性の評価を行った。
測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0100】
<初期粘度>
東洋産業製の粘度計TVC-10(B型粘度計)を用い、ホットスターラーで加熱した状態で、得られたアクリルアミド系共重合体の水溶液について、70℃における粘度(粘度A)を測定した。測定ロータにはNo.5を用い、回転数は10rpmに設定した。なお、アクリルアミド系共重合体が均一に溶解していることが目視で確認できた時点における粘度を、初期粘度とした。
測定結果を表1に示す。
【0101】
<24時間、48時間、及び72時間保管した後の粘度>
アクリルアミド系共重合体の水溶液を、スクリュ試験管で保管し、そのスクリュ試験管を70℃に維持した水槽に浸漬させた。なお、アクリルアミド系共重合体が均一に溶解していることが目視で確認できた時点から24時間経過した時点における粘度を、24時間保管した後の粘度(粘度B)とした。48時間、及び72時間保管した後の粘度も同様である。初期粘度と同様の方法で、各粘度を測定した。
測定結果を表1に示す。
比較例1及び比較例2では、24時間保管した後にゲル化していたため、24時間保管した後の粘度を測定することができかった。そのため、比較例1及び比較例2では、48時間、及び72時間保管した後の粘度を測定しなかった。いずれも、表1では「-」と記載した。
【0102】
<引張強度>
アクリルアミド系共重合体の水溶液を用いて、乾式紡糸を行い、炭素繊維前駆体の繊維束(800本、単繊維の繊維径:20μm)を作製した。
炭素繊維前駆体の繊維束から単繊維を取り出し、微小強度評価試験機(製品名「マイクロオートグラフMST-I」、株式会社島津製作所製)を用いてJIS R7606に準拠して、室温(25℃)にて引張試験(標線間距離:25mm、引張速度:1mm/分)を行い、引張強度を測定した。5回の平均値を、引張強度として採用した。なお、株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-1000を用いて、前駆体繊維束の8箇所の無作為箇所の繊維径を測定し、最も細い部位と最も太い部位との平均値を試験片径として、引張強度の算出に使用した。
測定結果を表1に示す。
実施例2~実施例4、比較例5では、測定を行わなかった。
比較例1及び比較例2では、炭素繊維前駆体が得られなかったため、引張強度を測定することができなかった。いずれも、表1では「-」と記載した。
【0103】
<形状保持性>
アクリルアミド系共重合体の水溶液を用いて、乾式紡糸を行い、炭素繊維前駆体の繊維束(800本、単繊維の繊維径:20μm)を作製した。
炭素繊維前駆体の800本の繊維束から5cm程度の長さの繊維束を切り出した。その繊維束を100mLガラス製ビーカ内に入れて、熱風循環式乾燥機を用いて150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間と段階的に昇温することで耐炎化処理を行い、耐炎化繊維を得た。得られた耐炎化繊維の外観状態を目視で観察し、形状保持性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:融着又は凝集が認められない。
B:融着又は凝集が認められた。
評価結果を表1に示す。
比較例1及び比較例2では、炭素繊維前駆体が得られなかったため、形状保持性を評価することができなかった。比較例5では、評価を行わなかった。いずれも、表1では「-」と記載した。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示すように、実施例1~実施例6では、30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位、及び、反応性基を有するビニル系モノマー単位を含むアクリルアミド系共重合体と、窒素原子を含む複素環式化合物と、水と、を含むため、時間経過による粘度上昇が抑制され、保存安定性に優れることが分かった。
一方、比較例1及び比較例2では、窒素原子を含む複素環式化合物が含まれず、初期粘度が非常に高いことが分かった。比較例3~比較例5では、窒素原子を含む複素環式化合物が含まれず、時間経過による粘度上昇が確認された。
【0106】
実施例1,5,6では、比較例3,4と比較して、炭素繊維前駆体の引張強度が高いことが分かった。
また、実施例1~6では、耐炎化繊維の形状保持性に優れることが分かった。