IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特開2025-14513遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステム
<>
  • 特開-遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステム 図1
  • 特開-遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステム 図2
  • 特開-遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステム 図3
  • 特開-遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステム 図4
  • 特開-遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014513
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20250123BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20250123BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G06Q50/10
G01C21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117127
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】大杉 雅道
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129CC12
2F129CC15
2F129CC16
2F129CC17
2F129CC35
2F129DD13
2F129DD14
2F129DD15
2F129DD20
2F129DD65
2F129EE55
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE80
2F129EE95
2F129FF02
2F129FF12
2F129FF15
2F129FF32
2F129FF63
2F129FF64
2F129FF65
2F129FF72
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181MC19
5H181MC22
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】遠隔サポートのサービスを提供する事業者の負担が過大になるのを抑え、尚且つ、当該事業者がこのサービスを適切に運用することが可能な技術を提供する。
【解決手段】遠隔サポートを管理するサーバの処理負荷、又は、遠隔サポートの対象移動体とサーバの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量が計算される。対象移動体の現在地及び目的地の位置情報と、現在地及び目的地を含む地図情報とが取得される。処理負荷が上限負荷以上である場合、又は、単位時間あたりの通信量が上限量以上である場合、位置情報及び地図情報に基づいて、遠隔サポートの発生を回避する回避ルートに関する提案が対象移動体に対して行われる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体に対する遠隔サポートを行う方法であって、
前記遠隔サポートを管理するサーバの処理負荷、又は、前記遠隔サポートの対象移動体と前記サーバの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量を計算するステップと、
前記対象移動体の現在地及び目的地の位置情報と、前記現在地及び目的地を含む地図情報と、を取得するステップと、
前記処理負荷が上限負荷以上である場合、又は、前記単位時間あたりの通信量が上限量以上である場合、前記位置情報及び前記地図情報に基づいて、遠隔サポートの発生を回避する回避ルートに関する提案を前記対象移動体に対して行うステップと、
を含むことを特徴とする遠隔サポート方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記回避ルートに関する提案を行うステップが、
前記サーバにおいて前記回避ルートを生成するステップと、
前記回避ルートを前記サーバから前記対象移動体に送信するステップと、
を含むことを特徴とする遠隔サポート方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記遠隔サポートは、前記対象移動体の遠隔支援及び遠隔運転を含み、
前記回避ルートが、前記遠隔支援及び遠隔運転の少なくとも一方の発生を回避するためのルートである
ことを特徴とする遠隔サポート方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記対象移動体において前記遠隔サポートのログ情報が格納される記憶装置の空き容量の情報を取得するステップと、
前記処理負荷が前記上限負荷未満、かつ、前記単位時間あたりの通信量が前記上限量未満である場合において、前記空き容量が下限容量以下であるときは、前記回避ルートに関する提案を前記対象移動体に対して行うステップと、
を更に含むことを特徴とする遠隔サポート方法。
【請求項5】
複数の移動体に対する遠隔サポートを行うシステムであって、
前記遠隔サポートを管理するサーバを備え、
前記サーバは、
前記サーバの処理負荷、又は、前記遠隔サポートの対象移動体と前記サーバの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量を計算する処理と、
前記対象移動体の現在地及び目的地の位置情報と、前記現在地及び目的地を含む地図情報と、を取得する処理と、
前記処理負荷が上限負荷以上である場合、又は、前記単位時間あたりの通信量が上限量以上である場合、前記位置情報及び前記地図情報に基づいて、遠隔サポートの発生を回避する回避ルートに関する提案を前記対象移動体に対して行う処理と、
を行うように構成されていることを特徴とする遠隔サポートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体に対する遠隔サポートを行う方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第7211490号公報は、配車サービスに利用される移動体の走行ルートを管理する方法を開示する。この従来の方法において、移動体は、自動運転モードと手動運転モードの間で切り替えが可能に構成されている。従来の方法では、このような構成を有する移動体の走行ルートの設定に際し、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えが発生した位置の履歴情報が取得される。そして、この履歴情報に基づいて、切り替えが発生した位置を回避する走行ルートが設定される。従って、従来の方法によれば、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えが発生し難い走行ルート、つまり、自動運転モードのみによる走破信頼性の高い走行ルートを設定できる。これにより、配車サービスを管理するシステムの監視負担を低減することが可能となる。
【0003】
本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特許第7211490号公報の他に、特開2020-159866号公報及び特許第6551127号公報を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7211490号公報
【特許文献2】特開2020-159866号公報
【特許文献3】特許第6551127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の移動体に対する遠隔サポートを行うサービスを考える。このサービスは、遠隔サポートの実施が短時間に集中したときに、サービスを管理するシステムの処理負荷が膨大となることが予想される。膨大な処理負荷に耐えるには、システムを構成する処理装置の台数を増やして頑健性を高める、システムと複数の移動体の間のネットワーク回線をブロードにする、といったインフラに対する相応の投資が必要となる。しかしながら、このようなインフラ投資は、サービスを提供する事業者にとって負担となることが予想される。
【0006】
また、遠隔サポートの実施の集中により通信量が増大すると、通信費用が嵩むことが想定される。しかしながら、このような費用の増大も、サービスを提供する事業者にとって負担となることが予想される。
【0007】
インフラ投資費用や通信費用の一部をサービスのユーザに転嫁することもできる。しかしながら、この場合は、ユーザによるサービスの利用が妨げられる可能性がある。従って、遠隔サポートのサービスを提供する事業者の負担が過大になるのを抑えつつ、当該事業者がこのサービスを適切に運用するための技術開発が望まれる。
【0008】
本開示の1つの目的は、遠隔サポートのサービスを提供する事業者の負担が過大になるのを抑え、尚且つ、当該事業者がこのサービスを適切に運用することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の観点は、複数の移動体に対する遠隔サポートを行う方法であり、次の特徴を有する。
前記方法は、前記遠隔サポートを管理するサーバの処理負荷、又は、前記遠隔サポートの対象移動体と前記サーバの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量を計算するステップと、
前記対象移動体の現在地及び目的地の位置情報と、前記現在地及び目的地を含む地図情報と、を取得するステップと、
前記処理負荷が上限負荷以上である場合、又は、前記単位時間あたりの通信量が上限量以上である場合、前記位置情報及び前記地図情報に基づいて、遠隔サポートの発生を回避する回避ルートに関する提案を前記対象移動体に対して行うステップと、
を含む。
【0010】
本開示の第2の観点は、複数の移動体に対する遠隔サポートを行うシステムであり、次の特徴を有する。
前記システムは、前記遠隔サポートを管理するサーバを備える。
前記サーバは、
前記サーバの処理負荷、又は、前記遠隔サポートの対象移動体と前記サーバの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量を計算する処理と、
前記対象移動体の現在地及び目的地の位置情報と、前記現在地及び目的地を含む地図情報と、を取得する処理と、
前記処理負荷が上限負荷以上である場合、又は、前記単位時間あたりの通信量が上限量以上である場合、前記位置情報及び前記地図情報に基づいて、遠隔サポートの発生を回避する回避ルートに関する提案を前記対象移動体に対して行う処理と、
を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、サーバの処理負荷が上限負荷以上である場合、遠隔サポートの発生を回避する回避ルートに関する提案が対象移動体に対して行われる。そのため、対象移動体がこの提案を受け入れたときには、サーバの処理負荷が膨大になるのを抑えることができる。本開示によれば、又は、遠隔サポートの対象移動体とサーバの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量が上限量以上である場合、遠隔サポートの発生を回避する回避ルートに関する提案が行われる。そのため、対象移動体がこの提案を受け入れたときには、単位時間あたりの通信量を低減して通信費用が嵩むのを抑えることができる。故に、本開示によれば、遠隔サポートのサービスを提供する事業者の負担が過大になるのを抑え、尚且つ、当該事業者がこのサービスを適切に運用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】遠隔サービスを説明する概念図である。
図2】オペレータにより操作される端末のディスプレイから出力される画像の例を示す図である。
図3】オペレータにより操作される端末のディスプレイから出力される画像の別の例を示す図である。
図4】移動体に対する第1業務が割り当てられるときにディスプレイに表示される画像の例を、この割り当てが行われる前のオペレータの2種類の状態に対応させて説明する図である。
図5】第1実施形態に特に関連する管理サーバのプロセッサの機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る遠隔サポート方法及び遠隔サポートシステムについて説明する。尚、実施形態に係る方法は、実施形態に係るシステムにおいて行われるコンピュータ処理により実現される。また、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0014】
1.遠隔サポート
図1は、移動体に対する遠隔サポートを説明する概念図である。図1には、管理サーバMSと、移動体MB1及びMB2と、オペレータOP1及びOP2と、が描かれている。
【0015】
管理サーバMSは、遠隔サポートを行うサービス(以下、「遠隔サービス」とも称す。)を管理する。管理サーバMSは、典型的に、遠隔サービスの事業者によって管理される。管理サーバMSは、複数の移動体MB及び複数のオペレータOPと通信する。
【0016】
移動体MB1及びMB2は、本開示の「複数の移動体MB」の一例である。複数の移動体MBのそれぞれは、遠隔サービスの提供対象である。複数の移動体MBの一部又は全部は、遠隔サービスの事業者が所有する移動体でもよいし、この事業者との間で遠隔サービスの提供契約を行った法人又は個人が所有する移動体でもよい。複数の移動体MB(以下、単に「移動体MB」とも称す。)の総台数はM(M≧2)である。移動体MBの構成は特に限定されないが、自動運転が可能な構成を有していることが望ましい。
【0017】
オペレータOP1及びOP2は、遠隔サービスの提供対象に対するサービス業務(Service Business)SBを行う。オペレータOP1及びOP2を含む複数のオペレータOPは、遠隔サービスを提供する事業者の従業員でもよいし、この事業者との間で業務委託の契約を締結した法人の従業員又は個人でもよい。複数のオペレータOP(以下、単に「オペレータOP」とも称す。)の総人数はN(N≧2)である。サービス業務SBとしては、遠隔監視(Remote monitoring)、遠隔支援(Remote assistance)及び遠隔運転(Remote driving)が例示される。
【0018】
遠隔監視には、遠隔監視の対象の通信状態、同対象の運転環境、同対象の状態、同対象の乗員の状態についてのオペレータOPによるモニタリングが含まれる。遠隔支援には、遠隔支援の対象が対処できない状況に遭遇した場合に、同対象の走行継続を容易にするためのオペレータOPによる提案が含まれる。遠隔運転には、オペレータOPによる、遠隔運転の対象の動的運動タスクの実行、及び/又は、この動的運動タスクのフォールバックの実行が含まれる。
【0019】
2.管理サーバの構成例
図2は、管理サーバMSの構成例を説明する図である。図2に示される例では、管理サーバMSが、地図DB(データベース)11と、管理DB12と、通信装置13と、情報処理装置14と、を備えている。
【0020】
図DB11は、所定の記憶装置(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体)内に形成されている。地図DB11には、地図情報MAPが格納されている。地図情報MAPとしては、道路の位置の情報、道路の形状の情報(例えば、カーブ、直線の種別)、交差点及び構造物の位置の情報が例示される。
【0021】
地図情報MAPには、遠隔サポートの発生レベルRLVの情報も含まれている。発生レベルRLVは、遠隔サポートの発生の頻度を表す。発生レベルRLVは、地図を分割することで形成された区域ごとに事前に設定されている。発生レベルRLVは、例えば、遠隔サポート(具体的には、遠隔支援又は遠隔運転)の提供履歴に基づいて設定される。例えば、遠隔サポートが実施された位置の履歴によれば、遠隔サポートの実施回数が計算できる。単位時間あたりの実施回数を計算すれば、遠隔サポートの発生の頻度が計算できる。これらの頻度を複数の段階に仕分けることで、発生レベルRLVを区域ごとに設定できる。実施回数は、曜日(平日、休日など)、時間帯(午前中、午後、夜間)といった時間的要素を用いて計算されてもよい。
【0022】
別の例では、道路の位置、道路の形状、交差点の有無、構造物による死角の有無などを変数とする予測モデルを用いて発生レベルRLVが区域ごとに設定される。別の例において、上述した時間的要素を用いて発生レベルRLVが設定されてもよい。
【0023】
管理DB12は、地図DB11同様、所定の記憶装置内に形成されている。管理DB12には、移動体情報MBLが格納されている。移動体情報MBLは、移動体MBを識別するための情報である。移動体情報MBLには、移動体MBの位置情報、移動体MBの移動計画情報、移動体MBの状態情報といった移動体MBに関する各種情報が含まれる。位置情報及び移動計画情報は、移動体MBとの通信により取得される。移動計画情報には、移動体MBの目的地の情報や移動体MBの現在の現在ルートCRTの情報が含まれる。状態情報には、管理サーバMSによる遠隔サービスの現在の提供状況(遠隔監視、遠隔支援又は遠隔運転の提供中、又は提供なし)の情報が含まれる。
【0024】
移動体情報MBLには、遠隔サポートのログ情報が格納される移動体MBの記憶装置の空き容量FSPの情報も含まれる。ログ情報としては、移動体MBが遠隔サポート(具体的には、遠隔支援又は遠隔運転)を受けるイベントが発生した場合に、移動体MBが管理サーバMSに送信した外部情報(例えば、移動体MBの周辺の画像情報)及び内部情報(例えば、移動体MBの速度、加速度、舵角などの情報)が例示される。ログ情報には、移動体MBが遠隔サポートを受けるイベントの最中に移動体MBが管理サーバMSから受け取った指示情報、及び、この指示情報に基づいた移動体MBの走行装置(駆動装置、制動装置及び操舵装置)の制御量情報も含まれる。
【0025】
管理DB12には、また、オペレータ情報OPRが格納されている。オペレータ情報OPRは、オペレータ情報OPRを識別するための情報である。オペレータ情報OPRには、オペレータOPの資格情報、スケジュール情報、状態情報といったオペレータOPに関する各種情報が含まれる。資格情報は、オペレータOPの運転ライセンスの区分(例えば、大型、中型、準中型及び普通)を示す。スケジュール情報は、一定期間(例えば、翌日から1月先の日まで)におけるオペレータOPのスケジュールを示す。状態情報は、オペレータOPが現在提供中の遠隔サービス(遠隔監視、遠隔支援又は遠隔運転)を示す。
【0026】
通信装置13は、通信回線網を介して外部装置と接続する。通信回線網は特に限定されず、有線及び無線のネットワークを使用できる。通信回線網は、例えば、インターネット回線、WWW(World Wide Web)、電話回線、LAN(Local Area Network)、SAN(Storage Area Network)、DTN(Delay Tolerant Network)が例示される。無線通信としては、例えば、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)が例示される。無線通信は、管理サーバMSが直接通信する形態(Ad Hoc通信)でもよいし、アクセスポイントを介した間接通信でもよい。通信装置13の通信先には、移動体MBの端末と、オペレータOPの端末とが含まれる。
【0027】
情報処理装置14は、各種の情報処理を行うコンピュータである。情報処理装置14は、少なくとも1つのプロセッサ14aと、少なくとも1つのメモリ14bと、を備えている。プロセッサ14aは、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリ14bは、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ14aが使用する各種プログラムの展開及び各種情報の一時保存を行う。
【0028】
プロセッサ14aは、メモリ14bに格納されたプログラムを実行することによって、
移動体MBの管理、オペレータOPの管理といった、遠隔サポートに関連する処理を行う。遠隔サポートに関連する処理には、上述した発生レベルRLVを設定する処理が含まれる。発生レベルRLVを設定する処理には、遠隔支援の発生レベルRLV_Aを設定する処理と、遠隔運転の発生レベルRVL_Dを設定する処理とが含まれている。遠隔サポートに関連する処理には、遠隔支援及び遠隔運転の少なくとも一方の発生を回避する走行ルート(以下、「回避ルート」とも称す。)ARTの提案処理が含まれる。この提案処理については後述される。
【0029】
3.回避ルートの提案処理
既述したように、遠隔サービスでは、遠隔サポートの実施が短時間に集中したときに、プロセッサ14aの処理負荷が膨大になり、通信費用が嵩むことが予想される。そこで、実施形態では、プロセッサ14aの処理負荷が計算される。また、移動体MBと管理サーバMSの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量が計算される。そして、処理負荷が上限負荷以上である場合、又は、単位時間あたりの通信量が上限量以上である場合は、回避ルートARTが生成される。生成された回避ルートARTは、移動体MBに送信される。
【0030】
図3及び4は、提案処理において生成される回避ルートARTを説明する図である。図3及び4には、地点P1及び地点P2を含む地域ARの地図が模式的に示されている。地点P1は、移動体MBの現在地である。地点P2は、移動体MBの目的地である。図3及び4の下方に示す時刻T1は、現在の時刻である。時刻T2及びT3は、移動体MBが目的地P2に到着する予定の時刻である。
【0031】
図3には、地点P1から地点P2に至る現在の走行ルート(以下、「現在ルート」とも称す。)CRTが描かれている。一方、図4には、回避ルートARTが描かれている。現在ルートCRT及び回避ルートARTは、移動体MBが走行することのできる道路である。現在ルートCRT及び回避ルートARTは、一般的なカーナビゲーションシステムのデータベースに登録されている車両用の道路である。
【0032】
図3及び4では、地域ARが複数の区域CDに分割されている。図3及び4に示される例では、地域ARがメッシュ状に分割され、区域CDのそれぞれに発生レベルRLVが設定されている。発生レベルRVLは、少なくとも2段階設定される。2段階の発生レベルRVLが設定される場合は、閾値Thに比べて遠隔サポートの発生の頻度が高いレベルと、この閾値Thに比べてこの頻度が低いレベルとから発生レベルRVLが構成される。尚、既述したように、発生レベルRLVは、発生レベルRLV_A及びRVL_Dを含んでいる。そのため、少なくとも2段階のレベルは、発生レベルRLV_A及びRVL_Dのそれぞれについて設定される。
【0033】
図3に示される現在ルートCRTは、閾値Thよりも高いレベルを有する区域CD(2,2)、CD(3,2)、CD(4,3)及びCD(4,4)と、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CD(4,2)とを通過するルートである。これに対し、図4に示される回避ルートARTは、閾値Thよりも高いレベルを有する区域CD(2,2)及びCD(4,4)と、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CD(2,3)、CD(2,4)及びCD(3,4)とを通過するルートである。
【0034】
提案処理では、地点P1及びP2の情報と、発生レベルRLVの情報とに基づいて、回避ルートARTが生成される。回避ルートARTは、例えば、地点P1からP2に至る走行ルートのうち、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CDを走行する距離又は時間が最も長くなるものである。
【0035】
回避ルートARTの生成に際しては、現在ルートCRTの情報が用いられてもよい。回避ルートARTは、例えば、現在ルートCRTに比べて、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CDを走行する距離又は時間が長くなるものである。別の例では、現在ルートCRTに沿った走行距離又は走行時間を大きく超過する走行ルートが除外される。この除外が行われた後の走行ルートのうち、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CDを走行する距離又は時間が最も長くなるものである。又は、この除外が行われた後の走行ルートのうち、現在ルートCRTに比べて、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CDを走行する距離又は時間が長くなるものである。
【0036】
生成された回避ルートARTは、移動体MBに送信される。回避ルートARTが送信される移動体MBは、管理サーバMSとの間で通信が確立されている移動体MB(例えば、稼働中の移動体MB)であることは言うまでもない。但し、既述したように、移動体情報MBLには、遠隔サービスの現在の提供状況の情報が含まれる。そのため、回避ルートARTが送信される移動体MBは、この提供状況の情報を参照して選択されることが望ましい。
【0037】
例えば、回避ルートARTの受け入れ確率を高める観点から、遠隔監視の提供中の移動体MBには回避ルートARTを送信することが望ましい。遠隔支援及び遠隔運転の提供中の移動体MBは、これらの遠隔サポートを現に必要としている移動体MBである。そのため、このような移動体MBは、近い将来に遠隔支援又は遠隔運転を要求する可能性がある。この点、遠隔監視の提供中の移動体MBは、遠隔支援及び遠隔運転の要求を行わない可能性がある。従って、遠隔監視の提供中の移動体MBに回避ルートARTを送信することで、回避ルートARTの受け入れ確率の上昇が期待される。
【0038】
回避ルートARTの生成及び移動体MBへの送信は、空き容量FSPが下限容量以下である移動体MBに対して行われてもよい。空き容量FSPが下限容量以下であるということは、将来発生する遠隔サポートのログ情報を移動体MBの記憶装置に格納できない状況が迫っていることを意味する。そのため、処理負荷が上限負荷未満、かつ、単位時間あたりの通信量が上限量未満であったとしても、空き容量FSPが下限容量以下であるときには、回避ルートARTの生成及び送信を行ってもよい。回避ルートARTを受信した移動体MBがこれを受け入れることで、上述した状況に陥るのを未然に回避可能となる。
【0039】
4.管理サーバによる処理例
図5は、管理サーバMS(プロセッサ14a)により行われる、実施形態に特に関連する処理例を示すフローチャートである。図5に示されるルーチンは、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0040】
図5に示されるルーチンでは、まず、各種情報が取得される(ステップS11)。ステップS11で取得される各種情報には、移動体情報MBLと、プロセッサ14aの処理負荷の情報と、移動体MBと管理サーバMSの間で送信又は受信される単位時間あたりの通信量とが含まれる。移動体情報MBLは、管理DB12から取得される。プロセッサ14aの処理負荷は、例えば、プロセッサ14aの利用率から計算される。単位時間あたりの通信量は、管理サーバMSを基準とした上り(送信)の通信量、又は、下り(受信)の通信量である。移動体MBからは画像情報が送信されるため、通常は、下り(受信)の通信量の方が上り(送信)の通信量に比べて多くなる。
【0041】
ステップS11の処理に続いて、第1条件が満たされるか否かが判定される(ステップS12)。第1条件は、次の条件(i)及び(ii)を含んでいる。
(i)プロセッサ14aの処理負荷が上限負荷以上である
(ii)単位時間あたりの通信量が上限量以上である
条件(i)に関し、プロセッサ14aの処理負荷は、瞬間値でもよいし、現在から所定の時間を遡った間(例えば、数秒~数十秒間)の処理負荷の平均値でもよい。
【0042】
条件(i)及び(ii)の少なくとも一方が満たされる場合、第1条件が満たされると判定される。第1条件が満たされると判定された場合、ステップS14の処理(後述)が行われる。第1条件が満たされないと判定された場合、第2条件が満たされるか否かが判定される(ステップS13)。第2条件は、次の条件(iii)を含んでいる。
(iii)空き容量FSPが下限容量以下である
条件(iii)が満たされる場合、第2条件が満たされると判定される。第2条件が満たされると判定された場合、ステップS14の処理(後述)が行われる。第2条件が満たされないと判定された場合、今回の処理が終了する。
【0043】
ステップS14の処理では、回避ルートARTが生成される。回避ルートARTの生成例については、図3及び4の説明において述べたとおりである。回避ルートARTの候補は少なくとも1つ生成される。つまり、回避ルートARTの候補は、2つ以上生成されてもよい。この場合、これらの候補は、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CDを走行する距離又は時間において互いに異なる。そのため、これらの候補のうちから、閾値Thよりも低いレベルを有する区域CDを走行する距離又は時間が最も長くなるものを、回避ルートARTとして選び出すことができる。
【0044】
ステップS14の処理に続いて、回避ルートARTが移動体MBに送信される(ステップS15)。回避ルートARTが送信される移動体MBは、ステップS12の処理を経て回避ルートARTが生成された場合と、ステップS13の処理を経て回避ルートARTが生成された場合とで異なる。即ち、前者の場合、回避ルートARTの送信の対象は、管理サーバMSとの間で通信が確立されている移動体MBである。但し、既述したように、回避ルートARTが送信される移動体MBは、遠隔サービスの現在の提供状況の情報を参照して選択されることが望ましい。一方、後者の場合は、ステップS13の処理において第2条件が満たされると判定された移動体MBが、回避ルートARTの送信の対象となる。
【符号の説明】
【0045】
11…地図データベース、12…管理データベース、13…通信装置、14…情報処理装置、14a…プロセッサ、14b…メモリ、AR…地域、CD…区域、MS…管理サーバ、MB,MB1,MB2…移動体、OP,OP1,OP2…オペレータ、P1,P2…地点、ART,CRT…走行ルート、FSP…記憶装置の空き容量、MAP…地図情報、MBL…移動体情報、OPR…オペレータ情報、RLV…遠隔サポートの発生レベル
図1
図2
図3
図4
図5