(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025145131
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】回転機の製造方法
(51)【国際特許分類】
F04C 15/00 20060101AFI20250926BHJP
【FI】
F04C15/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045157
(22)【出願日】2024-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五味 裕希
(72)【発明者】
【氏名】義村 考司
(72)【発明者】
【氏名】西田 英之
【テーマコード(参考)】
3H044
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB05
3H044CC14
3H044DD01
3H044DD21
(57)【要約】
【課題】位置決めを改善する。
【解決手段】ポンプ1の製造方法は、複数のボルト締結箇所Aのうちボルト締結箇所A1,A3を、ボディ3とポンプカバー4との位置決め穴B2がボルト挿通穴を兼ねるかたちで形成された複数の位置決め締結箇所A1,A3とし、複数の位置決め締結箇所A1,A3において位置決め穴B2に位置決めピンPを挿入して、ポンプカバー4をボディ3に位置決めし、位置決めピンPによりポンプカバー4をボディ3に位置決めした状態で、複数の位置決め締結箇所A1,A3以外のボルト締結箇所Aをボルト締結し、位置決めピンPを外して複数の位置決め締結箇所A1,A3をボルト締結する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに位置決め及びボルト止めされるカバーと、前記ハウジングから前記カバーに亘って回転自在に支持されるシャフトと、を有し、前記ハウジング及び前記カバーは、3つ以上の複数のボルト締結箇所を有する回転機の製造方法であって、
前記複数のボルト締結箇所のうち一部のボルト締結箇所であって少なくとも2つのボルト締結箇所を、前記ハウジングと前記カバーとの位置決め穴がボルト挿通穴を兼ねるかたちで形成された複数の位置決め締結箇所とし、
前記複数の位置決め締結箇所において前記位置決め穴に位置決めピンを挿入して、前記カバーを前記ハウジングに位置決めし、
前記位置決めピンにより前記カバーを前記ハウジングに位置決めした状態で、前記複数の位置決め締結箇所以外の前記ボルト締結箇所をボルト締結し、
前記位置決めピンを外して前記複数の位置決め締結箇所をボルト締結する、
ことを特徴とする回転機の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機の製造方法であって、
前記複数の位置決め締結箇所は、前記シャフトを挟んで対向配置された2つの位置決め締結箇所を含む、
ことを特徴とする回転機の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の回転機の製造方法であって、
前記回転機は液圧回転機であり、前記カバーには流路が形成されている、
ことを特徴とする回転機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケースと、ケースにボルト止めされるカバーと、ケースとカバーとにブッシュを介して回転可能に支持される軸と、ケースとカバーとに係合するノックピンと、を有する歯車ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバーの位置決めにノックピンを用いると、ノックピンの分、部品コストが高くなる。また、ノックピンの圧入工程が必要になると共に、ノックピンのピン穴を設置するスペースを確保する必要がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、位置決めを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハウジングと、ハウジングに位置決め及びボルト止めされるカバーと、ハウジングからカバーに亘って回転自在に支持されるシャフトと、を有し、ハウジング及びカバーは、3つ以上の複数のボルト締結箇所を有する回転機の製造方法であって、複数のボルト締結箇所のうち一部のボルト締結箇所であって少なくとも2つのボルト締結箇所を、ハウジングとカバーとの位置決め穴がボルト挿通穴を兼ねるかたちで形成された複数の位置決め締結箇所とし、複数の位置決め締結箇所において位置決め穴に位置決めピンを挿入して、カバーをハウジングに位置決めし、位置決めピンによりカバーをハウジングに位置決めした状態で、複数の位置決め締結箇所以外のボルト締結箇所をボルト締結し、位置決めピンを外して複数の位置決め締結箇所をボルト締結する、ことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、治具としての位置決めピンを位置決めに用いるので、回転機が位置決めピンを備えずに済む分、コストを低減できる。また、治具としての位置決めピンは、位置決め穴に挿入された後に外されるので、圧入工程も不要になる。さらに、位置決め穴はボルト挿通穴と一体化されるので、位置決め穴を設置するスペースを確保する必要はない。従って、コスト面や、製造面、スペースの面で有利な位置決め構成が得られ、位置決めを改善できる。
【0008】
また、本発明は、複数の位置決め締結箇所は、シャフトを挟んで対向配置された2つの位置決め締結箇所を含む、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、2つの位置決め締結箇所が周方向において分散して配置されるため、ボルトの軸力のバランス悪化を抑制できる。
【0010】
また、本発明は、回転機は液圧回転機であり、カバーには流路が形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、位置決めピンによりカバーの位置ずれが抑制されるため、流路からの液漏れを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
これらの発明によれば、位置決めを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るポンプの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るポンプの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、ポンプ1の側面図である。ポンプ1は回転機であり、作動流体としての作動油を加圧して吐出する液圧回転機である。ポンプ1は、例えばエンジンや電動モータ等の駆動源により駆動される。ポンプ1には、ベーンポンプ、ピストンポンプ、ギヤポンプ等、タンクに貯留される作動油を吸い込み、吸い込んだ作動油の圧力を高めて吐出する種々のポンプを採用することができる。本実施形態では、ポンプ1がベーンポンプである場合について説明する。
【0016】
ポンプ1は、ポンプ機構2と、ポンプ機構2を収容するボディ3と、ボディ3の開口部を閉塞するポンプカバー4と、を備える。ポンプ機構2は、駆動源の動力が伝達される駆動軸2sと、駆動軸2sに連結され、駆動源の動力により回転駆動されるロータ2rと、ロータ2rに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン2vと、ロータ2rを収容するとともにロータ2rの回転に伴ってベーン2vの先端部が摺動する内周カム面を有するカムリング2cと、を備える。
【0017】
ボディ3はポンプ機構2を収容する収容凹部3aを有する。収容凹部3aには、ロータ2r及びベーン2vを収容したカムリング2cが収容される。ボディ3及びポンプカバー4は、駆動軸2sの挿入孔3b、4aを有し、駆動軸2sはポンプカバー4の挿入孔4a、ロータ2r、ボディ3の挿入孔3bに順に挿入されて、ロータ2rに連結される。ボディ3はハウジングに相当する。
【0018】
駆動軸2sはシャフトであり、ボディ3からポンプカバー4に亘って回転自在に支持される。駆動軸2sは、挿入孔3bに設けられたブッシュ5を介してボディ3に回転自在に支持されるとともに,挿入孔4aに設けられたブッシュ6を介してポンプカバー4に回転自在に支持される。
【0019】
なお、ポンプカバー4の挿入孔4aと駆動軸2sとの間には、ブッシュ6よりも駆動軸2sの先端側(
図1中上側)に図示しないシール部材が設けられる。駆動軸2sは、ブッシュ5やブッシュ6を介さずに、ボディ3やポンプカバー4に直接支持されてもよい。
【0020】
ポンプカバー4におけるロータ2rが摺動する面には、カムリング2cの吸込領域に対応して開口する円弧状の2つの吸込ポート4b,4cが溝状に形成される。カムリング2cの内部には、ロータ2rの外周面、カムリング2cの内周カム面、及び隣り合うベーン2vによって、図示しないポンプ室が複数形成される。吸込ポート4b,4cは、タンク通路を介してタンクに接続され(図示せず)、作動油は、吸込ポート4b,4cを通じてポンプ室に導かれる。
【0021】
ポンプ機構2は、ロータ2rが回転することによりポンプ室に作動油を吸い込み、吸い込んだ作動油の圧力を高めて高圧室3cに吐出する。高圧室3cは、収容凹部3aの底部に環状に形成され、図示しない吐出通路を介してポンプ1外部の図示しない流体圧機器(例えば、パワーステアリング装置や変速機等)に接続される。
【0022】
ポンプ機構2のロータ2r及びカムリング2cの一側面(
図1中上側)にはポンプカバー4が当接して配置され、他側面(
図1中下側)にはサイドプレート7が当接して配置される。ポンプカバー4とサイドプレート7は、ロータ2r及びカムリング2cの両側面を挟んだ状態で配置され、ポンプ室を密閉する。ポンプカバー4には、ロータ2rの一側面が摺接するとともに、カムリング2cの一側面が当接する。サイドプレート7は、収容凹部3aの底部とロータ2rとの間に設けられ、サイドプレート7には、ロータ2rの他側面が摺接するとともに、カムリング2cの他側面が当接する。
【0023】
サイドプレート7には、ポンプ室から高圧室3cに作動油を導く2つの吐出ポート7a、7bが形成される。吐出ポート7a,7bは、カムリング2cの吐出領域に対応して開口する円弧状の形状を有し、ポンプ室から吐出される作動油を高圧室3cへ吐出する。
【0024】
ポンプカバー4、カムリング2c及びサイドプレート7には、2本の位置決めピン(図示せず)が設けられる。位置決めピンによって、カムリング2cに対するポンプカバー4とサイドプレート7の相対回転が規制され、カムリング2cの吸込領域とポンプカバー4の吸込ポート4b,4cとの位置決め、及びカムリング2cの吐出領域とサイドプレート7の吐出ポート7a,7bとの位置決めが行われる。
【0025】
サイドプレート7、ロータ2r及びカムリング2cは、収容凹部3aに収容される。この状態で、ボルト8によりボディ3にポンプカバー4が取付けられることで、収容凹部3aが封止される。ポンプ1は、次に説明するように複数のボルト締結箇所Aを有する。
【0026】
図2は、ポンプ1の平面図である。
図2に示すように、ポンプ1は、ボルト締結箇所A1からA4の計4つの複数のボルト締結箇所Aを有する。ボルト締結箇所Aは、ボディ3とポンプカバー4とのボルト締結箇所であり、各ボルト締結箇所Aでは、ポンプカバー4にボルト8を挿通してボディ3に締め付けることで、ポンプカバー4がボディ3にボルト締結される。
【0027】
2つのボルト締結箇所A1,A3は、駆動軸2sを挟んで対向配置、つまり対向する位置に配置される。このため、2つのボルト締結箇所A1,A3は、周方向において分散して配置される。また、ボルト締結箇所A1,A3間の離間距離(直線距離)は、ボルト締結箇所A1,A2間の離間距離や、ボルト締結箇所A1,A4間の離間距離と比べて長くなる。ボルト締結箇所A1,A3は、
図3を用いて次に説明するように位置決め締結箇所とされる。
【0028】
図3は、ポンプ1の製造方法の説明図である。
図3では、
図3中上から順に示す第1工程から第3工程の3つの工程を有するポンプカバー4の組付工程について説明する。
【0029】
まず、ボルト締結箇所Aについてさらに説明する。ボルト締結箇所A2,A4(
図3中中央の第2工程参照)は、ボルト挿通穴B1とねじ穴Cとを有する。ボルト挿通穴B1はボディ3及びポンプカバー4に形成される。ボルト挿通穴B1は通常のボルト挿通穴であり、鋳抜き穴により構成される。このため、ボルト挿通穴B1は、位置決め穴としての高い加工精度を有しない。ねじ穴Cには雌ねじが形成され、ボルト8が締め込まれる。なお、ボルト挿通穴B1はポンプカバー4だけに形成されてもよい。
【0030】
ボルト締結箇所A1,A3は、位置決め穴B2とねじ穴Cとを有する。つまり、ボルト締結箇所A1,A3は、ボルト締結箇所A2,A4と比べて、ボルト挿通穴B1の代わりに位置決め穴B2を有する点が異なる。なお、
図3では、説明の便宜上、ボルト挿通穴B1と比べて、位置決め穴B2の径を大きめに誇張して描いている。
【0031】
位置決め穴B2は、ボディ3とポンプカバー4との位置決め穴であり、位置決めのための高い加工精度を有する。位置決め穴B2が形成されたボルト締結箇所A1,A3は、位置決め穴B2がボルト挿通穴を兼ねるかたちで形成された複数の位置決め締結箇所とされる。以下では、ボルト締結箇所A1,A3を位置決め締結箇所A1,A3とも称す。
【0032】
次に、ポンプカバー4の組付工程について説明する。ボディ3へのポンプカバー4の組付けは、図示しない組付装置を用いて行われる。組付装置は、自動組付装置であり、ポンプカバー4をボディ3に供給及びセットするカバーセット装置と、位置決めピンP(
図3中中央の第2工程参照)を用いた位置決めを行う位置決め装置と、複数のボルト締結箇所Aのボルト締結が可能なねじ締め機と、を有する。
【0033】
ねじ締め機は、ボルト締結を行うねじ締め機本体のほか、ロボットなど、予め定められたボルト締結箇所Aへのねじ締め機本体の移動や着座等のセットを行う移動装置と、ねじ締め機本体にボルト8を供給するボルト供給装置と、を有する。なお、ねじ締め機は単軸構成のものであってもよく、多軸構成のものであってもよい。
【0034】
第1工程では、カバーセット装置がポンプカバー4をボディ3にセットする。第1工程では、ポンプカバー4をボディ3にセットすることで、ボディ3に対するポンプカバー4の位置が大まかに合わせされる。
【0035】
第2工程では、位置決め装置が位置決めピンPを用いてポンプカバー4をボディ3に位置決めする。位置決めピンPは、位置決め用の治具として位置決め装置に設置される。つまり、位置決めピンPはポンプ1の構成要素ではない。このため、ポンプ1では、ポンプカバー4をボディ3に位置決めするための位置決めピンが不要な分、部品コストの低減が図られる。
【0036】
位置決めピンPは、位置決め締結箇所A1,A3に対応させて複数(ここでは2つ)設けられる。各位置決めピンPは、位置決め装置により、位置決め位置及び退避位置(図示省略)間で移動可能とされるとともに、上下方向に移動可能とされる。位置決め位置は、位置決め締結箇所A1,A3に対応する位置決めピンPの位置であり、退避位置は、位置決め締結箇所A1,A3からの退避位置である。退避位置は、組付装置における位置決めピンPの定位置を構成する。
【0037】
このため、第2工程では、2つの位置決めピンPのそれぞれが各退避位置から各位置決め位置に移動し、対応する位置決め穴B2に向かって下降する。これにより、複数の位置決め締結箇所A1,A3において位置決めピンPが位置決め穴B2に挿入され、ポンプカバー4がボディ3に位置決めされる。ポンプカバー4はボディ3に2箇所で位置決めされる。
【0038】
上記のように位置決めピンPによりポンプカバー4をボディ3に位置決めした状態で、第2工程ではさらに、定位置にいたねじ締め機本体が、移動装置によってボルト締結箇所A2,A4にセットされる。また、ねじ締め機本体にはボルト供給装置からボルト8が供給され、ねじ締め機本体は、供給されたボルト8の締め込みを行うことで、ボルト締結箇所A2,A4をボルト締結する。
【0039】
これにより、位置決めピンPによりポンプカバー4をボディ3に位置決めした状態で、複数の位置決め締結箇所A1,A3以外のボルト締結箇所A(つまり、ボルト締結箇所A2,A4)がボルト締結される。なお、単軸構成のねじ締め機の場合、ねじ締め機本体でボルト締結箇所A2,A4を順にボルト締結することで、ボルト締結箇所A2,A4をボルト締結することができる。また、多軸構成のねじ締め機の場合、ねじ締め機本体でボルト締結箇所A2,A4を同時にボルト締結することができる。
【0040】
図2を用いて前述したように、2つの位置決め締結箇所A1,A3は、駆動軸2sを挟んで対向配置されており、これにより径方向に大きく離間して配置されている。
【0041】
このため、第2工程でポンプカバー4をボディ3に位置決めした状態でボルト締結箇所A2,A4をボルト締結する際に、ポンプカバー4が位置決め締結箇所A1,A3のガタの範囲内でずれても、ポンプカバー4の位置ずれを抑制できる。
【0042】
また、上述のようにポンプカバー4の位置ずれを抑制することで、吸込ポート4b、4cでポートタイミングを決める場合に作動油の漏れや脈動の悪化を抑制できる。吸込ポート4b,4cは流路に相当する。
【0043】
第3工程では、位置決め装置が位置決めピンPを外し、その上でねじ締め機が複数の位置決め締結箇所A1,A3をボルト締結する。位置決めピンPは例えば、ボルト締結箇所A2,A4のボルト締結完了後、ねじ締め機本体がボルト締結箇所A2,A4の少なくともいずれかに着座したままの状態で、位置決め装置により上昇する。この場合、位置決め穴B2から位置決めピンPを外す際に、ねじ締め機本体で生産品(製造中のポンプ1)を押さえることができ、位置決めピンPによる生産品の持ち上げを防止できる。位置決めピンPは、上記と異なる方法で上昇されてもよい。
【0044】
上昇した位置決めピンPは、位置決め装置により退避位置に移動し、位置決めピンPが退避位置に移動してから、ねじ締め機本体が移動装置により位置決め締結箇所A1,A3にセットされる。これにより、ねじ締め機と位置決めピンPとの干渉が防止される。
【0045】
第2工程でのボルト締結箇所A2,A4のボルト締結により、第3工程ではポンプカバー4はすでにボディ3に位置決めされた状態で固定されている。このため、第3工程では位置決め締結箇所A1,A3にセットされたねじ締め機本体がそのままボルト8を締め込むことで、ポンプカバー4の位置ずれを招くことなく、ボルト締結を行うことができる。ねじ締め機本体は、位置決め締結箇所A1,A3の締結完了後、定位置に戻り、これにより組付装置の一連の自動サイクルが終了する。
【0046】
ポンプ1では、ポンプカバー4が、このようにしてボディ3に位置決め及びボルト止めされることにより、ボディ3及びポンプカバー4に支持された駆動軸2sが傾くことが抑制され、ポンプ1の振動や騒音の悪化が抑制される。
【0047】
前述したように、ポンプ1では2つの位置決め締結箇所A1,A3は、駆動軸2sを挟んで対向配置されており、これにより周方向に分散して配置されている。
【0048】
このため、位置決め穴B2は、通常のボルト挿通穴B1よりも必ずしも径を大きくする必要はないが、たとえ径が大きい位置決め穴B2により、ボルト座面が減少してボルト8の軸力が多少なりとも低下したとしても、軸力のバランス悪化を抑制できる。また、2つの位置決め締結箇所A1,A3において、ボルト8とねじ穴Cとの締結長さを長くすれば、軸力を大きくすることもできるが、上記のように分散配置をすれば、複数のボルト締結箇所Aで共通のボルト8を用いることも可能になる。
【0049】
なお、組付装置により具現化されたポンプ1の製造方法の一部又は全部は、人により行われてもよい。また、ポンプ1の製造方法は、モータ等のポンプ1以外の回転機に適用されてもよい。複数のボルト締結箇所Aは3つ以上の複数のボルト締結箇所Aであればよく、複数の位置決め締結箇所A1,A3は、複数のボルト締結箇所Aのうちの一部であって少なくとも2つであればよい。
【0050】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0051】
ポンプ1の製造方法は、ボディ3と、ボディ3に位置決め及びボルト止めされるポンプカバー4と、ボディ3からポンプカバー4に亘って回転自在に支持される駆動軸2sと、を有し、ボディ3及びポンプカバー4は、複数のボルト締結箇所Aを有するポンプ1の製造方法であって、複数のボルト締結箇所Aのうちボルト締結箇所A1,A3を、ボディ3とポンプカバー4との位置決め穴B2がボルト挿通穴を兼ねるかたちで形成された複数の位置決め締結箇所A1,A3とし、複数の位置決め締結箇所A1,A3において位置決め穴B2に位置決めピンPを挿入して、ポンプカバー4をボディ3に位置決めし、位置決めピンPによりポンプカバー4をボディ3に位置決めした状態で、複数の位置決め締結箇所A1,A3以外のボルト締結箇所Aをボルト締結し、位置決めピンPを外して複数の位置決め締結箇所A1,A3をボルト締結する。
【0052】
この構成によれば、治具としての位置決めピンPを位置決めに用いるので、ポンプ1が位置決めピンPを備えずに済む分、コストを低減できる。また、治具としての位置決めピンPは、位置決め穴B2に挿入された後に外されるので、圧入工程も不要になる。さらに、位置決め穴B2はボルト挿通穴と一体化されるので、位置決め穴B2を設置するスペースを確保する必要はない。従って、コスト面や、製造面、スペースの面で有利な位置決め構成が得られ、位置決めを改善できる。
【0053】
複数の位置決め締結箇所A1,A3は、駆動軸2sを挟んで対向配置された2つの位置決め締結箇所A1,A3を含む。なお、本実施形態では複数の位置決め締結箇所A1,A3が、2つの位置決め締結箇所A1,A3とされる。
【0054】
この構成によれば、2つの位置決め締結箇所A1,A3が周方向において分散して配置されるため、ボルト8の軸力のバランス悪化を抑制できる。
【0055】
ポンプ1は液圧回転機であり、ポンプカバー4には流路としての吸込ポート4b,4cが形成されている。
【0056】
この構成によれば、位置決めピンPによりポンプカバー4の位置ずれが抑制されるため、吸込ポート4b,4cでポートタイミングを決める場合に作動油の漏れや脈動の悪化を抑制できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0058】
1・・・ポンプ、2・・・ポンプ機構、2s・・・駆動軸(シャフト)、3・・・ボディ(ハウジング)、4・・・ポンプカバー(カバー)、4b,4c・・・吸込ポート(流路)、8・・・ボルト、A,A1~A4・・・ボルト締結箇所、A1,A3・・・位置決め締結箇所、B2・・・位置決め穴、P・・・位置決めピン