(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001452
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】低分子量ポリリジン及び糖脂質を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/88 20060101AFI20241225BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241225BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A61K8/88
A61K8/60
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101049
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真介
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】織田 政紀
(72)【発明者】
【氏名】加賀 裕章
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB332
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC581
4C083AC662
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC902
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD391
4C083AD392
4C083BB05
4C083CC23
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】皮膚等のケラチン物質に、糖脂質を含む付着物を与えることができる、透明な組成物であって、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含みうる組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)ポリリジンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、(b)少なくとも1種の糖脂質とを含み、カチオン性ポリマーの分子量が、20,000未満、好ましくは15,000未満、より好ましくは10,000未満である、組成物に関する。本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質に、糖脂質を含む付着物を与えることができる。加えて、本発明による組成物は、環境に適合性の成分を含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリリジンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、
(b)少なくとも1種の糖脂質と
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物であって、
前記カチオン性ポリマーの分子量が、20,000未満、好ましくは15,000未満、より好ましくは10,000未満である、組成物。
【請求項2】
前記(a)カチオン性ポリマーの分子量が、1,000超、好ましくは1,500超、より好ましくは2,000超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中の前記(a)カチオン性ポリマーの量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(b)糖脂質がラムノリピッドから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記(b)糖脂質の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.1質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中の2つ以上のpKa値を有する前記酸又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、アミノ酸界面活性剤及びタウリン界面活性剤から選択される少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の前記アニオン性界面活性剤の量が、前記組成物の総質量に対して、0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも1種の両性界面活性剤を、好ましくは、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~15質量%、更により好ましくは1質量%~10質量%の量で更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記(b)糖脂質を含む界面活性剤の総量が、前記組成物の総質量に対して、3質量%~30質量%、好ましくは5質量%~25質量%、より好ましくは7質量%~20質量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記(b)糖脂質の、前記(b)糖脂質以外の前記界面活性剤の総量に対する質量比が、10:1から1:5、好ましくは5:1から1:3、より好ましくは3:1から1:2である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物のpHが、4~8、好ましくは4.5~7.5、より好ましくは5~7である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
クレンジング組成物、好ましくは皮膚用のクレンジング組成物、より好ましくは顔用のクレンジング組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
前記ケラチン物質に、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
任意選択により、前記組成物を前記ケラチン物質から除去する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量ポリリジン及び糖脂質を含む組成物、並びに組成物を使用する美容方法及び組成物に関連する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題を考慮して設計及び開発された、環境に適合性の化粧料の配合は、世界規模の課題を満たすことを目指す上で主要な目標になってきている。
【0003】
したがって、より持続可能な組成物、調製方法及びこれらの環境問題に対処するための成分を提案することが必須である。
【0004】
この文脈において、特に、再生可能な原料並びに/又は良好な自然性の指数を有する材料及び/若しくは天然起源の材料、より具体的には植物由来の材料の使用を促進し、同時に石油化学由来の化合物の使用を低減することによって、より良好なカーボンフットプリントを有する新規の化粧用組成物を開発することが重要である。
【0005】
ラムノリピッド等の糖脂質のような生物界面活性剤は、天然起源の材料であり、独特の生物活性、例えば、抗炎症効力、抗アレルギー効力、抗菌効力等を有することが知られている。例えば、糖脂質は、抗炎症効力を有することが知られ、皮膚等のケラチン物質に使用することができる。
【0006】
いくつかの従来技術の文献に、糖脂質を含む組成物が開示されている。
【0007】
例えば、WO2021/1185675は、少なくとも: a)糖脂質生物界面活性剤と、b)親水性のカチオン性又は疑似カチオン性活性化合物とを含むパーソナルケア組成物であって、ここで、糖脂質は、好ましくはソホロリピッドである、パーソナルケア組成物を開示する。
【0008】
また、特表2015-507626は、水と、少なくとも1種の生物界面活性剤と、少なくとも1種の脂肪酸とを含む組成物であって、組成物中の全ての界面活性剤の合計の分画は、脂肪酸と界面活性剤との合計に基づいて、1~30質量%であり、脂肪酸の分画は0.1~20質量%である、組成物を開示する。
【0009】
また、WO2020/178048は、少なくとも1種の媒体由来物質を表面上に付着させる工程を含む方法であって、媒体がラムノリピッドを含む、方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2021/1185675
【特許文献2】特表2015-507626
【特許文献3】WO2020/178048
【特許文献4】FR2889448
【特許文献5】FR2851465
【特許文献6】FR2853533
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0200704号
【特許文献8】米国特許第2,528,378号
【特許文献9】米国特許第2,781,354号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M. Schmidtの博士論文(1990)、Technical University of Braunschweig
【非特許文献2】Schulzら(1991) Z. Naturforsch.、46C、197~203
【非特許文献3】A.P. Tulloch、J.F.T. Spencer及びP.A.J. Gorin、Can. J. Chem. (1962)、40、1326
【非特許文献4】U. Gobbert、S. Lang及びF. Wagner、Biotechnology Letters (1984)、6 (4)、225
【非特許文献5】Ishigamiら(1987)、J. Jpn. Oil Chem. Soc.、36、847~851
【非特許文献6】Passeriら(1991)、Z. Naturforsch.、46C、204~209
【非特許文献7】Frautz、Lang及びWagner (1986)、Biotech. Letts.、8、757~762
【非特許文献8】D. Haferburg、R. Hommel、R. Claus及びH.P. Kleber、Adv. Biochem. Ing./Biotechnol. (1986)、33、53~90
【非特許文献9】F. Wagner、H. Bock及びA. Kretschmar、Fermentation (R.M. Lafferty編) (1981)、181~192、Springer Verlag、Vienna
【非特許文献10】CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook、第15版、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
皮膚等のケラチン物質に、糖脂質を含む付着物を与えることができる、透明な組成物が必要とされている。
【0013】
そのため、本発明の第1の目的は、皮膚等のケラチン物質に、糖脂質を含む付着物を与えることができる、透明な組成物を提供することである。
【0014】
加えて、本発明の第2の目的は、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含みうる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記の目的は、
(a)ポリリジンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、
(b)少なくとも1種の糖脂質と
を含む組成物であって、
カチオン性ポリマーの分子量が、20,000未満、好ましくは15,000未満、より好ましくは10,000未満である、組成物によって達成することができる。
【0016】
(a)カチオン性ポリマーの分子量は、1,000超、好ましくは1,500超、より好ましくは2,000超であってもよい。
【0017】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%であってもよい。
【0018】
(b)糖脂質は、ラムノリピッドから選択されてもよい。
【0019】
本発明による組成物中の(b)糖脂質の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.1質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%であってもよい。
【0020】
本発明による組成物は、少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩を更に含んでもよい。
【0021】
組成物中の2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%であってもよい。
【0022】
本発明による組成物は、アミノ酸界面活性剤及びタウリン界面活性剤から選択される少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を更に含んでもよい。
【0023】
組成物中のアニオン性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%から20質量%、好ましくは1質量%から15質量%、より好ましくは2質量%から10質量%であってもよい。
【0024】
本発明による組成物は、少なくとも1種の両性界面活性剤を、好ましくは、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~15質量%、更により好ましくは1質量%~10質量%の量で更に含んでもよい。
【0025】
組成物中の(b)糖脂質を含む界面活性剤の総量は、組成物の総質量に対して、3~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは7~20質量%であってもよい。
【0026】
組成物中の(b)糖脂質の、(b)糖脂質以外の界面活性剤の総量に対する質量比は、10:1から1:5、好ましくは5:1から1:3、より好ましくは3:1から1:2であってもよい。
【0027】
本発明による組成物のpHは、4~8、好ましくは4.5~7.5、より好ましくは5~7であってもよい。
【0028】
本発明による組成物は、クレンジング組成物、好ましくは皮膚用のクレンジング組成物、より好ましくは顔用のクレンジング組成物であってもよい。
【0029】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、
任意選択により、組成物をケラチン物質から除去する工程と
を含む、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
鋭意検討の結果、本発明者らは、皮膚等のケラチン物質に、糖脂質を含む付着物を与えることができ、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる、組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0031】
そのため、本発明による組成物は、
(a)ポリリジンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、
(b)少なくとも1種の糖脂質と
を含み、
カチオン性ポリマーの分子量は、20,000未満、好ましくは15,000未満、より好ましくは10,000未満である。
【0032】
本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質に、糖脂質を含む付着物を与えることができる。付着物は、例えば、本発明による組成物中に形成される糖脂質を含む沈殿物によって与えられうる。
【0033】
更に、本発明による組成物の好ましい実施形態は、増加した量の付着物又は沈殿物を、皮膚等のケラチン物質に与えることができる。
【0034】
ラムノリピッド等の糖脂質は、抗炎症効力、抗アレルギー効力、及び抗菌効力等の生物活性を有するので、本発明による組成物によって与えられる(b)糖脂質を含む付着物は、皮膚等のケラチン物質のケアに有用である。特に、本発明による組成物は、ニキビを有する皮膚の治療又はケアに有用である。
【0035】
更に、糖脂質は界面活性剤として機能することができるため、(b)糖脂質を含む付着物は、強化されたクレンジング効果をもたらすことができる。そのため、本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質のクレンジングにも有用である。
【0036】
ポリリジンは天然資源から得ることができるため、(a)カチオン性ポリマーは、環境に適合性の成分である。したがって、本発明による組成物は、環境に適合性の成分を含むことができる。加えて、(b)糖脂質は、生分解性材料等の再生可能な材料を起源としうる。したがって、本発明による組成物は、環境に適合性とすることができる。
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
[組成物]
(カチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(a)ポリリジンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。単一のタイプのカチオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0039】
本発明によれば、(a)カチオン性ポリマーは、ポリリジンから選択される。単一のタイプのポリリジンを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのポリリジンを組み合わせて使用することもできる。
【0040】
(a)カチオン性ポリマーの分子量(Da)は、20,000未満、好ましくは15,000未満、より好ましくは10,000未満である。言い換えれば、(a)カチオン性ポリマーは、低分子量キトサンである。
【0041】
(a)カチオン性ポリマーの分子量(Da)は、1,000超、好ましくは1,500超、より好ましくは2,000超であってもよい。
【0042】
そのため、(a)カチオン性ポリマーの分子量(Da)は、1,000超且つ20,000未満、好ましくは1,500超且つ15,000未満、より好ましくは2,000超且つ10,000未満であってもよい。
【0043】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。分子量は、例えば、ASTM D5296-19に従って、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定又は決定することができる。
【0044】
ポリリジンは、リジンのいくつかのアミノ酸の縮合物に相当する。ポリリジンは、細菌発酵によって生成されうるL-リジンの天然ホモポリマーであることができる。ポリリジンは、典型的には、食品の天然防腐剤として使用される。ポリリジンは、水等の極性溶媒に可溶性の高分子電解質である。
【0045】
ポリリジンは、例えば、リジンのε位のアミノ基とカルボキシル基との縮合物であるイプシロン-ポリリジン(若しくは「ε-ポリリジン」と称す)、又はリジンのα位のアミノ基とカルボキシル基との縮合物であるアルファ-ポリリジン(若しくは「α-ポリリジン」と称す)であってもよい。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の多様な形態で市販されている。ポリリジンは、一般的に、L-リジンの縮合物、即ちポリL-リジンである。
【0046】
ポリリジンの例として、以下のものを挙げることができる:
- 水溶液中の、分子量が約4,700のイプシロン-ポリ-L-リジンの25%溶液である、JNC CORPORATION社製のイプシロン-ポリ-L-リジン。
【0047】
特定の一実施形態によれば、ポリリジンは、修飾ポリリジン、例えば、特許出願FR2889448に記載の脂肪鎖を有するポリリジン、特許出願FR2851465に記載のグアニジン又はビグアニジン(biguanidine)官能基を有するポリリジン、特許出願FR2853533に記載のチオール化されたポリリジンであってもよい。
【0048】
ポリリジンは、有機塩又は無機塩の形態であってもよい。酸付加塩は、例えば、塩酸若しくは臭化水素酸、硫酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酪酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸、若しくは酢酸塩、又はリノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及び18-メチルイコサン酸等の脂肪酸塩である。塩基付加塩は、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、又はヒドロキシアルキルアミン塩、例えば、N-メチルグルカミン、アミノプロパンジオール又はトリエタノールアミンである。
【0049】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本発明のポリリジンは、組成物中に単一分子の形態で存在するか、又は他の化合物に共有結合していない。本発明の一実施形態において、ポリリジンは、染料化合物に共有結合していない。本発明の一実施形態において、ポリリジンは、ポリオルガノシロキサン化合物に共有結合していない。用語「ポリオルガノシロキサン」が、Si-O主鎖と該主鎖に結合した有機官能基とを有する化合物を意味することが当該技術分野において周知である。
【0050】
本発明の別の実施形態では、ポリリジンは、遊離形態である。用語「遊離形態」は、本明細書では、ポリリジンが、他の任意の化合物に共有結合していないことを示す。
【0051】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0052】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であってもよい。(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して1質量%以下であることが、更により好ましいこともある。
【0053】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%であってもよい。(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して0.1質量%~1質量%であることが、更により好ましいこともある。
【0054】
本明細書の文脈において、上記の上限値と下限値との任意の組み合わせが、好ましい量の範囲を表すために利用可能である。
【0055】
(糖脂質)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の糖脂質を含む。単一のタイプの糖脂質を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの糖脂質を組み合わせて使用することもできる。
【0056】
用語「糖脂質」は、1種以上の糖化合物が結合している脂質から形成される化合物を意味すると理解される。
【0057】
(b)糖脂質は、グルコリピド、ソホロリピッド、トレハロースリピッド、セロビオースリピッド、ラムノリピッド、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0058】
(b)糖脂質は、好ましくは、ソホロリピッド、ラムノリピッド、及びこれらの混合物から、より好ましくはラムノリピッドから選択することができる。
【0059】
グルコリピド:
(b)糖脂質は、グルコース部分を含有し、一般式(I)によって表すことができるグルコリピドから選択することができる:
【0060】
【0061】
(式中:
- R1は、水素原子又はカチオンを表し、
- pは、1~4の範囲の整数を示し、
- qは、4~10の範囲の、好ましくは6に等しい整数を示す)。
【0062】
グルコリピドは、細菌のアルカリゲネス菌(Alcaligenes)MM1種によって産生されうる。
【0063】
適当な発酵法は、M. Schmidtの博士論文(1990)、Technical University of Braunschweig、及びSchulzら(1991) Z. Naturforsch.、46C、197~203に概説されている。グルコリピドは、ジエチルエーテル又はジクロロメタン:メタノール若しくはクロロホルム:メタノール混合物を使用した溶媒抽出によって、発酵ブロスから回収される。
【0064】
ソホロリピッド:
(b)糖脂質は、ソホロース部分を含有し、一般式(II)によって表すことができるソホロリピッドから選択することができる:
【0065】
【0066】
(式中:
- R3及びR4は、個別に、水素原子又はアセチル基を表し、
- R5は、1~9個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のヒドロキシル化又は非ヒドロキシル化された炭化水素基、好ましくはメチルを表し、
- R6は、1~19個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のヒドロキシル化又は非ヒドロキシル化された炭化水素基を表し、
但し、R5及びR6基の炭素原子の総数は、20を超えない、好ましくは14~18である)。
【0067】
ソホロリピッドは、R7が水素原子を表し、R8がヒドロキシ基OHを表す開鎖遊離酸の形態、又は次式(III)によって示されるように、ラクトン環がR7及びR8間に形成される、そのラクトンの形態のいずれかで、本発明による組成物中に導入されうる:
【0068】
【0069】
(式中:
- R3、R4、R5、及びR6は、上記で規定された通りであり、
但し、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アセチル基を表す)。
【0070】
ソホロリピッドは、酵母細胞、例えばトルロプシス・アピコラ(Torulopsis apicola)及びトルロプシス・ボンビコラ(Torulopsis bombicola)細胞によって産生されうる。発酵法は、一般的に、基材として糖及びアルカンを使用する。
【0071】
適当な発酵法は、A.P. Tulloch、J.F.T. Spencer及びP.A.J. Gorin、Can. J. Chem. (1962)、40、1326、並びにU. Gobbert、S. Lang及びF. Wagner、Biotechnology Letters (1984)、6 (4)、225に概説されている。結果として得られた生成物は、様々な開鎖ソホロリピッドとソホロリピッドラクトンとの混合物であり、混合物の形態で使用しても、必要とされる形態を単離してもよい。
【0072】
例えば、Givaudan社より名称Sopholiance Sで販売されている製品及びBASF社より名称BioToLifeで販売されている製品を、ソホロリピッドとして使用することが可能である。
【0073】
トレハロースリピッド:
(b)糖脂質は、トレハロース部分を含有し、一般式(IV)によって表すことができるトレハロースリピッドから選択することができる:
【0074】
【0075】
(式中:
- R9、R10及びR11は、個別に、5~13個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のヒドロキシル化又は非ヒドロキシル化された炭化水素基を表す)。
【0076】
トレハロースリピッドは、海洋細菌アルトロバクター(Arthrobacter)Ek1種又は淡水性細菌ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)を使用した細菌発酵によって産生されうる。適当な発酵法は、Ishigamiら(1987)、J. Jpn. Oil Chem. Soc.、36、847~851、Schultzら(1991)、Z. Naturforsch.、46C、197~203、及びPasseriら(1991)、Z. Naturforsch.、46C、204~209で提供されている。
【0077】
セロビオースリピッド:
(b)糖脂質は、セロビオース部分を含有し、一般式(V)によって表すことができるセロビオースリピッドから選択することができる:
【0078】
【0079】
(式中:
- R1は、水素原子又はカチオンを表し、
- R12は、9~15個の炭素原子、好ましくは13個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のヒドロキシル化又は非ヒドロキシル化された炭化水素基を表し、
- R13は、水素原子又はアセチル基を表し、
- R14は、4~16個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のヒドロキシル化又は非ヒドロキシル化された炭化水素基を表す)。
【0080】
セロビオースリピッドは、黒穂菌(Ustilago)属の菌類の細胞によって産生されうる。適当な発酵法は、Frautz、Lang及びWagner (1986)、Biotech. Letts.、8、757~762で提供されている。
【0081】
ラムノリピッド:
(b)糖脂質は、ラムノリピッドから選択されてもよい。
【0082】
本発明による組成物は、好ましくは、1種又は複数のラムノリピッドを含む。
【0083】
ラムノリピッドは、様々な細菌種によって産生される糖脂質である。ラムノリピッドは、1つのラムノース部分(モノラムノリピッド)又はエステル結合によって互いに結合しているβ-ヒドロキシル化脂肪酸の1、2若しくは3つの鎖にグリコシド結合によって結合された2つのラムノース部分(ジラムノリピッド)からなる。
【0084】
より具体的には、これらのモノラムノリピッド及びジラムノリピッドは、以下の式(VI)に対応する:
【0085】
【0086】
(式中:
- mは、2、1又は0に等しい整数を示し、
- nは、1又は0に等しい整数を示し、
- R1及びR2は、それぞれ独立して、分枝状又は非分枝状、置換又は非置換の、特にヒドロキシ置換の、飽和又は不飽和、好ましくは単不飽和、二重不飽和又は三重不飽和アルキル基である、2~24個の炭素原子、好ましくは5~13個の炭素原子を有する、同一の又は異なる炭化水素基を表す)。
【0087】
そのため、nが0に等しい場合、式(VI)はモノラムノリピッドを保護し、nが1に等しい場合、ジラムノリピッドを保護する。
【0088】
本発明による組成物は、好ましくは少なくとも1種のジラムノリピッドを含む。
【0089】
本発明による組成物は、好ましくは、少なくとも1種の式(VI)のジラムノリピッド(式中:
- mは、2、1又は0に等しい整数を示し、
- nは、1に等しい整数を示し、
- R1及びR2は、それぞれ独立して、分枝状又は非分枝状、置換又は非置換の、特にヒドロキシ置換の、飽和又は不飽和、好ましくは単不飽和、二重不飽和又は三重不飽和アルキル基である、2~24個の炭素原子、好ましくは5~13個の炭素原子を有する、同一の又は異なる炭化水素基を表す)、並びにまたその塩、その溶媒和物及びその光学異性体を含む。
【0090】
2つのラムノース部分間のグリコシド結合は、アルファ又はベータ配置であってもよく、好ましくはアルファ配置である。
【0091】
本発明の文脈において、
- 式(VI)のジラムノリピッドの塩は、より特定すると、有機又は無機カチオンを有する、特にナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウムから選択されるカチオンを有するカルボン酸塩である。
- 式(VI)のジラムノリピッドの溶媒和物の形態は、より特定すると、水又は有機溶媒の1種又は複数の分子と溶媒和したもの、例えば水和物又はエタノール若しくはイソプロパノール等の直鎖状若しくは分枝状アルコールの溶媒和物であり、任意選択により脂肪酸の活性炭素原子は、好ましくは、Rエナンチオマーの形態であり、
- 用語「アルキル」基は、飽和の直鎖状又は分枝状脂肪族基、例えば、1~20個の炭素原子の直鎖状又は分枝状炭化水素鎖を有するC1~C20アルキル基、より特定すると、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル又はエイコシルを示す。
【0092】
本発明による組成物は、好ましくは、少なくとも1種の式(VI)のジラムノリピッド[式中:
- mは、2、1又は0に等しい整数を示し、
- nは、1に等しい整数を示し、
- R1及びR2は、同一であるか又は異なっており、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル及びトリデセニル基並びに式-(CH2)oCH3の基(式中、oは1~23、特に3~15、より特定すると4~12の範囲の整数を示す)から選択される]を含む。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種の一般式(VI)のジラムノリピッド(式中、mは1に等しい)を含む。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも2種の、好ましくは少なくとも3種の、一般式(VI)のジラムノリピッド(式中、mは、好ましくは1に等しい)の混合物を含む。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種のモノラムノリピッドを含む混合物を含む。
【0096】
より好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1種の、以下の式(VII)のジラムノリピッド:
【0097】
【0098】
[式中、
- mは、2、1又は0に等しい整数を示し、好ましくは、mは、1に等しく、
- nは、1に等しい整数を示し、
- R1は、-(CH2)p-CH3基(式中、pは、1~23、好ましくは4~12で変動する整数である)であり、
- R2は、-(CH2)q-CH3基(式中、qは、1~23、好ましくは4~12で変動する整数である)である]、
並びにまたその塩、その溶媒和物及びその光学異性体を含む。
【0099】
例として、本発明に適しうる式(VII)のジラムノリピッドに限定されずに、特に以下のTable 1(表1)に規定されるような式ジ-RL-CXCYの化合物を挙げることができる。
【0100】
式ジ-RL-CXCYは、それぞれ記号CX及びCY(整数X及びYは、それぞれp+4及びq+4に等しい)で表される2つの基R1及びR2によって官能化されたジラムノリピッド(ジ-RL)を表すための代替の記述法である。
【0101】
【0102】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種の、式(VII)のジラムノリピッド(式中、p及びqは、同一であり、6に等しく、mは1に等しい)(ジ-RL-C10C10とも称する)、又はその塩、溶媒和物及び光学異性体のうちの1つを含む。
【0103】
好ましくは、式(VII)のジラムノリピッド(式中、p及びqは、同一であり、6に等しく、mは1に等しい)は、本発明による組成物中に、ラムノリピッドの総質量に対して、少なくとも50質量%、好ましくは51質量%~85質量%の割合で存在する。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種の式(VII)のジラムノリピッド(式中、mは1に等しく、pは6に等しく、qは8に等しい)を含む。
【0105】
別の実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種の式(VI)のジラムノリピッド[式中、n及びmは1に等しく、R1は-(CH2)oCH3基(式中、oは4~12で変動する整数である)を表し、R2は、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル及びトリデセニル基から選択され、好ましくは、R1は、-(CH2)6CH3基を表し、R2はノネニル基を表す]を含む。
【0106】
別の好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、以下から選択される少なくとも2種の、特に少なくとも3種の、式(VI)又は式(VII)のジラムノリピッドの混合物を含む:
- 式(VII)のジラムノリピッド(式中、p及びqは、同一であり、6に等しく、mは1に等しい)、
- 式(VII)のジラムノリピッド(式中、mは1に等しく、pは6に等しく、qは8に等しい)、及び
- 少なくとも1種の式(VI)のジラムノリピッド[式中、n及びmは1に等しく、R1は-(CH2)oCH3基(式中、oは4~12で変動する整数である)を表し、R2は、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル及びトリデセニル基から選択され、好ましくは、R1は、-(CH2)6CH3基を表し、R2はノネニル基を表す]。
【0107】
好ましくは、本発明による組成物は、以下から選択される少なくとも2種の、特に少なくとも3種の、式(VI)又は式(VII)のジラムノリピッドの混合物を含む:
- ラムノリピッドの総質量に対して、少なくとも50質量%、好ましくは51質量%~85質量%の式(VII)のジラムノリピッド(式中、p及びqは、同一であり、6に等しく、mは1に等しい)、
- ラムノリピッドの総質量に対して、0.5質量%~25質量%、好ましくは5質量%~15質量%の式(VII)のジラムノリピッド(式中、pは6に等しく、qは8に等しく、mは1に等しい)、
- ラムノリピッドの総質量に対して、0.5質量%~15質量%、好ましくは3質量%~12質量%、好ましくは5質量%~10質量%の式(VI)のジラムノリピッド(式中、n及びmは1に等しく、R1は-(CH2)6CH3基を表し、R2はノネニル基を表す)。
【0108】
上で規定したように、ラムノリピッドは、慣習的に、シュードモナス属(Pseudomonas)等の細菌産生株から開始する、当業者に公知の方法によって調製される。
【0109】
適当な発酵法は、D. Haferburg、R. Hommel、R. Claus及びH.P. Kleber、Adv. Biochem. Ing./Biotechnol. (1986)、33、53~90、並びにF. Wagner、H. Bock及びA. Kretschmar、Fermentation (R.M. Lafferty編) (1981)、181~192、Springer Verlag、Viennaに概説されている。
【0110】
Evonik社より名称Rheance Oneで販売されているもの(INCI名:糖脂質)を、ラムノリピッドとして使用してもよい。
【0111】
本発明による組成物中の(b)糖脂質の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってもよい。
【0112】
本発明による組成物中の(b)糖脂質の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0113】
本発明による組成物中の(b)糖脂質の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.1質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%であってもよい。
【0114】
(b)糖脂質は、(a)カチオン性ポリマーより多い量で、本発明による組成物中に含まれうる。
【0115】
(他の任意選択の成分)
- 水
本発明による組成物は、水を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0116】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってもよい。
【0117】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下であってもよい。
【0118】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~99質量%、好ましくは60質量%~97質量%、より好ましくは70質量%~95質量%であってもよい。
【0119】
- 2つ以上の酸解離定数を有する酸
本発明による組成物は、少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩を含んでいても、含んでいなくてもよい。単一のタイプの、2つ以上のpKa値を有する酸若しくはその塩を使用してもよく、又は2つ以上の異なるタイプの、2つ以上のpKa値を有する酸若しくはその塩を組み合わせて使用してもよい。
【0120】
2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩は、2つ以上の酸解離定数を有する。pKa値(酸解離定数)は、当業者に周知であり、一定の温度、例えば25℃で決定されるべきである。
【0121】
本発明による組成物は、2種以上の、2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩を組み合わせて含んでいてもよい。
【0122】
2つ以上のpKa値を有する酸は、非ポリマー酸でもよい。用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリカルボン酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0123】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の分子量が、1,000以下、好ましくは800以下、より好ましくは700以下であることが好ましい。
【0124】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩のタイプに限定はない。2種以上の異なるタイプの、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩を組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩の組み合わせを使用することができる。
【0125】
用語「塩」は、本明細書では、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸と塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えばNa及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0126】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性又は水溶性の有機酸又はその塩であってよい。
【0127】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの酸基を有しうる。
【0128】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、非ポリマー多価酸でもよい。
【0129】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、ジカルボン酸、ジスルホン酸及び二リン酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0130】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、酒石酸、及びこれらの塩;アスパラギン酸、グルタミン酸、及びこれらの塩;テレフタリリデンジカンフルスルホン酸又はその塩(Mexoryl SX)、ベンゾフェノン-9;フィチン酸及びその塩;並びにこれらの塩;赤色2号(アマランス)、赤色102号(ニューコクシン)、黄色5号(タルトラジン)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、緑色3号(ファスト・グリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)、赤色201号(リソールルビンB)、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色227号(ファーストアシッドマゲンタ)、黄色203号(キノリンイエローWS)、緑色201号(アリザリンシアニングリーンF)、緑色204号(ピラニンコンク)、緑色205号(ライトグリーンSFイエロー)、青色203号(パテントブルーCA)、青色205号(アルファズリンFG)、赤色401号(ビオラミンR)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、赤色502号(ポンソー3R)、赤色503号(ポンソーR)、赤色504号(ポンソーSX)、緑色401号(ナフトールグリーンB)、緑色402号(ギニアグリーンB)、及び黒色401号(ナフトールブルーブラック);葉酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びこれらの塩;シスチン及びその塩;EDTA及びその塩;グリシルリジン及びその塩;並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0131】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、クエン酸、乳酸、リン酸、フィチン酸、及びこれらの塩、例えばリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましいことがある。
【0132】
2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩は、ポリマー酸又はその塩、例えばポリリン酸及びその塩並びにポリリン誘導体であってもよい。
【0133】
用語「ポリリン酸」は、本明細書では、好ましくは、少なくとも1個の酸素原子を介して共に共有結合している少なくとも2つの「PO4」構造単位を含む又は該少なくとも2つの「PO4」構造単位からなる直鎖状又は環状オキソ酸を意味する。
【0134】
ポリリン酸は、好ましくは、次式によって表すことができる:
【0135】
【0136】
(式中、nは、2~20、2~15、又は2~10であってもよい)。
【0137】
用語「塩」は、本明細書では、2つ以上のpKa値を有するポリリン酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、ポリリン酸と塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えばNa及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0138】
用語「ポリリン誘導体」は、本明細書では、好ましくは、少なくとも1個の酸素原子及び/又は少なくとも1個の炭素原子を含む少なくとも1つのリンカーLを介して共に共有結合されている少なくとも2個のリン原子を含む直鎖状又は環状化合物を意味する。一実施形態によれば、リンカーが少なくとも1個の炭素原子を含む場合、少なくとも1個の窒素原子を含んでもよい。
【0139】
好ましくは、本発明の様々な主題に従って使用されるポリリン誘導体のリンカーLは、少なくとも1個の酸素原子を含む。
【0140】
好ましくは、本発明に従って使用されるポリリン誘導体は、20個未満のリン原子、好ましくは15個未満のリン原子、好ましくは10個未満のリン原子を含む。
【0141】
ポリリン誘導体は、-P(R)(=O)-OH基、-P(R)(=O)-OM基、>P(=O)-OH基、及び/又は>P(=O)-OM基から選択される少なくとも2つの基を含んでもよく、式中:
・ Mは、好ましくはアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択されるカチオン対イオンを表し、
・ Rは、ヒドロキシル基、-O-M基(式中、Mは、好ましくはアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択されるカチオン対イオンを表す)、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、シクロアルキルオキシ又は(ヘテロ)アリールオキシ基を表し、
・ >は、リン原子に連結して環の一部を形成する2つの結合を表す。
【0142】
実施形態によれば、ポリリン誘導体は、無機ポリリン誘導体から選択される。
【0143】
別の実施形態によれば、ポリリン誘導体は、有機ポリリン誘導体から選択される。
【0144】
本発明による組成物中に存在するポリリン誘導体は、非アミン誘導体であってもよい。
【0145】
前述したポリリン誘導体は、ポリリン酸塩及びポリホスホン酸塩、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0146】
ポリリン誘導体は、以下から選択されうる:
- 以下から選択される無機ポリリン誘導体:
○ 水和されていても、水和されていなくてもよい、好ましくは塩、好ましくはアルカリ金属塩の形態のピロリン酸塩、例えばピロリン酸ナトリウム、特に四塩基性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウム十水和物;
○ 水和されていても、水和されていなくてもよい、好ましくは塩、好ましくはアルカリ金属塩の形態のヘキサメタリン酸塩、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム;
○ 水和されていても、水和されていなくてもよい、好ましくは塩、好ましくはアルカリ金属塩の形態のトリポリリン酸塩、例えばトリポリリン酸ナトリウム;
○ 水和されていても、水和されていなくてもよい、好ましくは塩、好ましくはアルカリ金属塩の形態のトリメタリン酸塩、例えばトリメタリン酸ナトリウム;
○ 及びこれらの混合物;
- 並びにこれらの混合物。
【0147】
ポリリン誘導体は、以下から選択されうる:
- 水和又は非水和アルカリ金属ピロリン酸塩、例えばピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム十水和物;及びポリリン酸塩、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム;並びにこれらの混合物から選択される無機ポリリン酸塩誘導体;
- 有機ポリホスホン酸塩誘導体、例えばポリホスホン酸、例えばEDTMP、DETMP、ATMP、HEDP、DTPMP、及びこれらの混合物から選択される有機ポリリン誘導体;
- 並びにこれらの混合物。
【0148】
ポリリン誘導体は、以下の式(I)、(II)及び(III)のいずれか1つに属する化合物;又はこれらの混合物:
【0149】
【0150】
並びにまた、水和物等のこれらの溶媒和物から選択することができ、
上式中、
- nは、2~10、好ましくは2~6、更に良好には2~3の範囲であり、
- mは、2~10、好ましくは2~6の範囲であり、
- Yは、少なくとも1個のリン原子及び任意選択で1個以上の非リンヘテロ原子を含むアルキル鎖、又は任意選択で1個以上のヘテロ原子を含む環状炭素系基を表し、前記炭化水素系基は、1個以上のリン原子を含む1つ以上の基で置換されており、
- M又はM'は、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、
- ----は、M又はM'がHである場合は単結合、又はイオン結合を表す。
【0151】
M又はM'がH以外の場合、M又はM'は、分子の全体的な電荷がゼロになるようなものであることを理解されたい。そのため、二価金属の場合、M又はM'は、同じ二価金属を表しうる。
【0152】
式(I)のポリリン誘導体は、直鎖状である。
【0153】
式(II)のポリリン誘導体は、環状である。
【0154】
ポリリン誘導体は、以下から選択される無機ポリリン酸化合物であってもよい:
・ 好ましくはナトリウム及び/又はカリウムのポリリン酸塩、及び/又はその水和物;並びにそれらの混合物、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)、
【0155】
【0156】
ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、好ましくは以下の式を有するトリポリリン酸ナトリウム:
【0157】
【0158】
・ 好ましくはピロリン酸ナトリウム及び/又はピロリン酸カリウム、並びにこれらの水和物から選択される、好ましくはナトリウム及び/又はカリウムのピロリン酸塩及び/又はその水和物、並びにそれらの混合物、例えば
以下の式を有するピロリン酸ナトリウム十水和物:
【0159】
【0160】
又は以下の式を有するピロリン酸カリウム:
【0161】
【0162】
ポリリン誘導体は、好ましくはポリリン酸、ポリホスホン酸、例えばEDTMP、DETMP、ATMP、HEDP、DTPMP
【0163】
【0164】
、DETMP及びこれらの混合物から選択される、有機ポリリン酸塩誘導体及び/又は有機ポリホスホン酸塩誘導体であってもよい;
- イミノジ(メチルホスホン)酸(例L)又はその塩、及びその混合物;
【0165】
【0166】
- 次式のエチドロン酸四ナトリウム(例K)
【0167】
【0168】
- 並びにこれらの混合物。
【0169】
本発明の一実施形態では、2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩は、ポリリン酸及びその塩から選択される。
【0170】
ポリリン酸及びその塩の例として、ピロリン酸、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、特に四塩基性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム十水和物、トリポリリン酸ナトリウム、及びヘキサメタリン酸ナトリウムを挙げることができる。
【0171】
本発明の好ましい実施形態では、2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩は、クエン酸及びフィチン酸等の非ポリマー酸、並びにポリリン酸及びその塩等のポリマー酸又はその塩から選択される。特に好ましい実施形態では、2つ以上のpKa値を有するフィチン酸は、フィチン酸である。
【0172】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0173】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であってもよい。
【0174】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%であってもよい。
【0175】
- アニオン性界面活性剤
本発明による組成物は、(b)糖脂質以外に、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含んでも、又は含まなくてもよい。単一のタイプのアニオン性界面活性剤を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのアニオン性界面活性剤を組み合わせて使用することもできる。
【0176】
アニオン性界面活性剤は、アミノ酸界面活性剤及びタウリン界面活性剤から選択することができる。
【0177】
アミノ酸界面活性剤
用語「アミノ酸界面活性剤」は、本明細書では、アミノ酸又はその誘導体をベースとするアニオン性界面活性剤を意味する。典型的には、アミノ酸界面活性剤は、少なくとも1つのアミノ部分及び少なくとも1つの、カルボキシレートの形態であるカルボン酸部分を含むアニオン性界面活性剤である。アミノ酸界面活性剤は、2つ以上のアミノ部分及び/又は2つ以上の、カルボキシレートの形態であるカルボン酸部分を有してよい。アミノ酸界面活性剤は、アミノ酸系界面活性剤とも呼ばれうる。
【0178】
アミノ酸界面活性剤は、本明細書のタウリン界面活性剤とは異なる。
【0179】
アミノ酸界面活性剤は、好ましくは、アミノ酸誘導体から選択することができる。アミノ酸誘導体は、より好ましくは、アミノ酸及びN-アシル化アミノ酸の塩、例えばアミノ酸及びN-アシル化アミノ酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えばアミノ酸及びN-アシル化アミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩から選択することができる。そのため、アミノ酸界面活性剤は、好ましくは、N-アシルアミノ酸界面活性剤である。
【0180】
アミノ酸誘導体のN-アシル部分を形成するアシル基は、C1~C30アシル基、好ましくはC6~C28アシル基、より好ましくはC12~C24アシル基でよい。
【0181】
アミノ酸界面活性剤は、更により好ましくは、グルタミン酸塩、N-アシル化グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、N-アシル化アスパラギン酸塩、及びこれらの塩からなる群から選択することができる。
【0182】
これらのアミノ酸のカルボン酸塩は、それぞれのアミノ酸を塩基で中和すること等の従来の手段によって形成することができる。中和されたアミノ酸のα-炭素又はβ-炭素上に位置するアミン基は、周知のショッテン・バウマン反応により、塩基の存在下にて脂肪酸ハロゲン化物(ハロゲン化アシル)でアシル化され、アミドを生成し、このようにして所望の界面活性剤反応生成物、即ちアミノ酸界面活性剤が形成される。アミノ酸のカルボン酸塩のアシル化に好適なハロゲン化アシルとして、塩化アシル、臭化アシル、フッ化アシル及びヨウ化アシルが挙げられる。ハロゲン化アシルは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC8~C22脂肪酸をハロゲン化(臭化、塩化、フッ化及びヨウ化)チオニルと反応させることによって調製することができる。代表的なハロゲン化アシルとして、以下に限定されるものではないが、塩化デカノイル、塩化ドデカノイル(塩化ラウロイル)、塩化ココイル(ヤシ油由来の脂肪酸塩化物)、塩化テトラデカノイル(塩化ミリストイル)、塩化ヘキサデカノイル(塩化パルミトイル)、塩化オクタデカノイル(塩化ステアロイル)、塩化9-オクタデセノイル(塩化オレオイル)、塩化エイコサノイル(塩化アラキドイル)、塩化ドコサノイル(塩化ベヘノイル)から選択される塩化アシル、及びそれらの任意の混合物が挙げられる。他のハロゲン化アシルとして、前述の脂肪酸の、臭化物、フッ化物及びヨウ化物が挙げられる。ハロゲン化アシルを調製する方法及びアミノ酸をアシル化する代替的方法は、2008年8月21日公開の米国特許出願公開第2008/0200704号に記載されており、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0183】
一実施形態では、前記アミノ酸系アニオン性界面活性剤は、式(A)で表される:
【0184】
【0185】
[式中:
Zは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の、8~22個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
Xは、水素又はメチル基であり、
nは、0又は1であり、
Yは、水素、-CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)2、-CH(CH3)CH2CH3、-CH2C6H5、-CH2C2H4OH、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-(CH2)4NH2、-(CH2)3NHC(NH)NH2、-CH2C(O)O-M+、-(CH2)2C(O)OH、-(CH2)2C(O)O-M+から選択され、
Mは、COOが対アニオンである塩形成カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又はトリエタノールアミン等である]。
【0186】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(A)のアミノ脂肪酸において:
Zは、飽和又は不飽和の、直鎖状C8~C18アルキル基、特にココイル基を表し、
Xは、水素であり、
nは、0であり、
Yは、水素であり、
Mは、COOが対アニオンである塩形成カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又はトリエタノールアミン等である。
【0187】
アミノ酸界面活性剤の例として、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、セリン、チロシン、バリン、サルコシンの塩、及びこれらの任意の混合物がある。より特定すると、カプリロイルグルタミン酸二カリウム、ウンデシレノイルグルタミン酸二カリウム、カプリロイルグルタミン酸二ナトリウム、ココイルグルタミン酸二ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸二ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、ウンデシレノイルグルタミン酸二ナトリウム、カプリロイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ウンデシレノイルグルタミン酸カリウム、カプリロイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、オリーブ油脂肪酸グルタミン酸ナトリウム(sodium olivoyl glutamate)、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ウンデシレノイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルメチルβ-アラニン(cocoyl methyl β-alaninate)、ラウロイルβ-アラニン、ラウロイルメチルβ-アラニン、ミリストイルβ-アラニン、ラウロイルメチルβ-アラニンカリウム、ココイルアラニンナトリウム、ココイルメチルβ-アラニンナトリウム及びミリストイルメチルβ-アラニンナトリウム、パルミトイルグリシン(palmitoyl glycinate)、ラウロイルグリシンナトリウム、ココイルグリシンナトリウム、ミリストイルグリシンナトリウム、ラウロイルグリシンカリウム、ココイルグリシンカリウム、ラウロイルサルコシンカリウム(potassium lauroyl sarcosinate)、ココイルサルコシンカリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレオイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンアンモニウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ミリストイルアスパラギン酸ナトリウム、ココイルアスパラギン酸ナトリウム、カプロイルアスパラギン酸ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸二ナトリウム、ミリストイルアスパラギン酸二ナトリウム、ココイルアスパラギン酸二ナトリウム、カプロイルアスパラギン酸二ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸カリウム、ミリストイルアスパラギン酸カリウム、ココイルアスパラギン酸カリウム、カプロイルアスパラギン酸カリウム、ラウロイルアスパラギン酸二カリウム、ミリストイルアスパラギン酸二カリウム、ココイルアスパラギン酸二カリウム、カプロイルアスパラギン酸二カリウム、並びにこれらの混合物等のアミノ酸界面活性剤を挙げることができる。
【0188】
例えば、以下の市販のアミノ酸界面活性剤を参照することができる:
- サルコシン酸塩、例えばCiba社によってSarkosyl NL 97(登録商標)の名称で販売されている、若しくはSeppic社によってOramix L 30(登録商標)の名称で販売されているラウロイルサルコシンナトリウム、日光ケミカルズ株式会社によってNikkol Sarcosinate MN(登録商標)の名称で販売されているミリストイルサルコシンナトリウム、又は日光ケミカルズ株式会社によってNikkol Sarcosinate PN(登録商標)の名称で販売されているパルミトイルサルコシンナトリウム、
- アラニン酸塩、例えば日光ケミカルズ株式会社により名称Sodium Nikkol Alaninate LN 30(登録商標)で販売されている、若しくは川研ファインケミカル株式会社により名称Alanone ALE(登録商標)で販売されているN-ラウロイル-N-メチルアミドプロピオン酸ナトリウム、又は川研ファインケミカル株式会社により名称Alanone ALTA(登録商標)で販売されているトリエタノールアミンN-ラウロイル-N-メチルアラニン、又は味の素株式会社により名称Amilite(登録商標)ACS-12で販売されているココイルアラニンナトリウム、
- グルタミン酸塩、例えば味の素株式会社により名称Acylglutamate CT-12(登録商標)で販売されているモノココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、味の素株式会社により名称Acylglutamate LT-12(登録商標)で販売されているラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、味の素株式会社により名称Amisoft(登録商標)HS-21Pで販売されているステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及びこれらの混合物、BASF Japan社により名称Plantapon(登録商標)Amino SF-Nで販売されているココイルグルタミン酸ナトリウム、BASF Japan社により名称Plantapon(登録商標)Amino SCG-Lで販売されているココイルグルタミン酸二ナトリウム、並びに味の素株式会社により名称Amisoft(登録商標)CS-22で販売されているココイルグルタミン酸二ナトリウム/ナトリウム、
- アスパラギン酸塩、例えばMitsubishi社によってAsparack(登録商標)の名称で販売されているN-ラウロイルアスパラギン酸トリエタノールアミン及びN-ミリストイルアスパラギン酸トリエタノールアミンの混合物、
- グリシン誘導体(グリシネート)、例えば味の素株式会社によってAmilite GCS-12(登録商標)及びAmilite GCK 12の名称で販売されているN-ココイルグリシンナトリウム、
- クエン酸塩、例えばGoldschmidt社によってWitconol EC 1129の名称で販売されているオキシエチレン化(9mol)ココアルコールのクエン酸モノエステル、並びに
- ガラクツロン酸塩、例えばSoliance社によって販売されているドデシルD-ガラクトシドウロン酸ナトリウム。
【0189】
タウリン界面活性剤
用語「タウリン界面活性剤」は、本明細書では、少なくとも1つのタウリン部分を含むアニオン性界面活性剤を意味する。タウリン界面活性剤は、タウリン系界面活性剤とも呼ばれうる。
【0190】
タウリン界面活性剤は、好ましくはアシルタウリン、より好ましくはN-アシルタウリン、更により好ましくはN-アシルメチルタウリン(即ち、N-アシル-N-メチルタウリン)である。
【0191】
タウリン界面活性剤は、以下の式Iのものを含む:
【0192】
【0193】
[式中、
R7は、(C8~C22)アルキルであり、
R8は、H又は(C1~C4)アルキルであり、
R9及びR10は、それぞれ独立して、H又は(C1~C4)アルキルであり、
M+は、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムカチオンである]。
【0194】
タウリン界面活性剤は、タウリン、カプロイルタウリン、ラウロイルタウリン、ミリストイルタウリン、パルミトイルタウリン、ステアロイルタウリン、オレオイルタウリン、ココイルタウリン、メチルタウリン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン、パーム核油脂肪酸メチルタウリン、水添パーム核油脂肪酸メチルタウリン、牛脂脂肪酸メチルタウリン、水添牛脂脂肪酸メチルタウリン、カプロイルメチルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、パルミトイルメチルタウリン、ステアロイルメチルタウリン、オレオイルメチルタウリン、ココイルメチルタウリン、メチルタウリンココイルメチルタウリン、及びそれらの塩からなる群から選択することができる。
【0195】
例えば、タウリン界面活性剤としては、メチルラウロイルタウリンナトリウム、メチルミリストイルタウルンナトリウム、メチルミリストイルタウリンカリウム、メチルココイルタウリンナトリウム、メチルオレオイルタウリンナトリウム、メチルラウロイルタウリンカルシウム、メチルラウロイルタウリンカリウム、及びメチルラウロイルタウリンアンモニウムが挙げられる。同様に、場合によっては、タウリン界面活性剤は、メチルココイルタウリンナトリウムである。
【0196】
タウリン界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
- Clariant社によってHostapon CT Pate(登録商標)の名称で販売されている、パーム核油メチルタウリンのナトリウム塩;
- Clariant社によってHostapon LT-SF(登録商標)の名称で販売されている、又は日光ケミカルズ株式会社によってNikkol CMT-30-T(登録商標)の名称で販売されている、N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム;
- Nikkol SMT(登録商標)の名称で販売されているメチルステアロイルタウリンナトリウム;及び
- 日光ケミカルズ株式会社によってNikkol PMT(登録商標)の名称で販売されている、パルミトイルメチルタウリンナトリウム。
【0197】
本発明による組成物中のアニオン性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であってもよい。
【0198】
本発明による組成物中のアニオン性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0199】
本発明による組成物中のアニオン性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%であってもよい。
【0200】
- 両性界面活性剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の両性界面活性剤を含んでも、含まなくてもよい。単一のタイプの両性界面活性剤を用いてもよいが、2種以上の異なるタイプの両性界面活性剤を組み合わせて用いてもよい。
【0201】
両性又は双性イオン性界面活性剤は、例えば(非限定的な列挙)、アミン誘導体、例えば脂肪族第二級又は第三級アミン、及び任意選択で四級化アミン誘導体とすることができ、脂肪族基は、8~22個の炭素原子を含み、少なくとも1つの水可溶化アニオン性基(例えばカルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート又はホスホネート)を含有する直鎖又は分枝鎖である。
【0202】
両性界面活性剤は、ベタイン及びアミドアミンカルボキシル化誘導体からなる群から選択することができる。
【0203】
両性界面活性剤は、ベタインタイプの界面活性剤から選択されうる。
【0204】
ベタインタイプの両性界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルアミドアルキルベタイン、スルホベタイン、アルキルスルホベタイン、ホスホベタイン、アルキルホスホベタイン及びアルキルアミドアルキルスルホベタイン、具体的には(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルベタイン、スルホベタイン、(C1~C8)アルキルスルホベタイン、ホスホベタイン、(C1~C8)アルキルホスホベタイン及び(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタインからなる群から選択することができる。一実施形態では、ベタインタイプの両性界面活性剤は、(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタイン、スルホベタイン、(C1~C8)アルキルスルホベタイン及びホスホベタインから選択される。
【0205】
挙げることができる非限定的な例としては、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook、第15版、2014年で、単独で又は混合物として、名称ココベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココヒドロキシスルタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン及びココスルタインで分類されている化合物が挙げられる。
【0206】
ベタインタイプの両性界面活性剤(ベタイン)は、アルキルベタイン、アルキルスルホベタイン及びアルキルアミドアルキルベタイン、特にココベタイン、スルホプロピルベタイン及びコカミドプロピルベタインであってもよい。
【0207】
アミドアミンカルボキシル化誘導体の中でも、Miranolの名称で販売され、米国特許第2,528,378号及び同第2,781,354号に記載され、CTFA辞典、第3版、1982年(これらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)において名称アンホカルボキシグリシネート及びアンホカルボキシプロピオネート(以下のそれぞれの構造を有する)で分類されている製品を挙げることができる:
R1-CONHCH2CH2-N+(R2)(R3)(CH2COO-)M+X- (B1)
[式中、
R1は、加水分解ヤシ油中に存在する酸R1-COOHのアルキル基、ヘプチル基、ノニル基又はウンデシル基を示し、
R2は、ベータ-ヒドロキシエチル基を示し、
R3は、カルボキシメチル基を示し、
M+は、ナトリウム等のアルカリ金属に由来するカチオン性イオン、アンモニウムイオン、又は有機アミンに由来するイオンを示し、
X-は、有機若しくは無機アニオン性イオン、例えばハロゲン化物イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、アルキル(C1~C4)硫酸イオン、アルキル(C1~C4)-若しくはアルキル(C1~C4)アリール-スルホン酸イオン、特にメチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオンを示し;又はM+及びX-は、存在しない];
R1'-CONHCH2CH2-N(B)(C) (B2)
[式中、
R1'は、ヤシ油中若しくは加水分解亜麻仁油中に存在する酸R1'-COOHのアルキル基、C7、C9、C11若しくはC13アルキル基、C17アルキル基及びそのイソ型等のアルキル基、又は不飽和C17基を示し、
Bは、-CH2CH2OX'を表し、
Cは、-(CH2)z-Y'(式中、z=1又は2)を表し、
X'は、-CH2-COOH基、-CH2-COOZ'、-CH2CH2-COOH、-CH2CH2-COOZ'、又は水素原子を示し、
Y'は、-COOH、-COOZ'、-CH2-CHOH-SO3Z'、-CH2-CHOH-SO3H基又は-CH2-CH(OH)-SO3-Z'基を示し、
これらの式中、Z'は、ナトリウムイオン等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオン、有機アミンに由来するイオン、又はアンモニウムイオンを表す];
並びに
Ra''-NH-CH(Y'')-(CH2)n-C(O)-NH-(CH2)n'-N(Rd)(Re) (B'2)
[式中、
Y''は、-C(O)OH、-C(O)OZ''、-CH2-CH(OH)-SO3H又は-CH2-CH(OH)-SO3-Z''(式中、Z''は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属に由来するカチオン性イオン、例えばナトリウムイオン、有機アミンに由来するイオン又はアンモニウムイオンを示す)を示し、
Rd及びReは、C1~C4アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、
Ra''は、酸からのC10~C30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
n及びn'は、独立に、1~3の整数を示す]。
【0208】
式B1及びB2を有する両性界面活性剤は、(C8~C24)-アルキルアンホモノアセテート、(C8~C24)アルキルアンホジアセテート、(C8~C24)アルキルアンホモノプロピオネート及び(C8~C24)アルキルアンホジプロピオネートから選択することができる。
【0209】
これらの化合物は、CTFA辞典、第5版、1993年において、名称ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリルアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホプロピオン酸二ナトリウム、カプリルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、カプリルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸及びココアンホジプロピオン酸で分類されている。
【0210】
例として、Rhodia Chimie社により商標名Miranol(登録商標)C2M concentrateで販売されているココアンホジアセテートを挙げることができる。
【0211】
式(B'2)の化合物の中でも、CHIMEX社により命名CHIMEXANE HBで市販されているジエチルアミノプロピルココアスパルタミドナトリウム(CTFA)を挙げることができる。
【0212】
本発明による組成物中の両性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってもよい。
【0213】
本発明による組成物中の両性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0214】
本発明による組成物中の両性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%であってもよい。
【0215】
本発明の一実施形態では、組成物中の(b)糖脂質及び任意選択のアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤の総量は、特に限定されないが、一般的に、組成物の総質量に対して、3~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは7~20質量%である。
【0216】
本発明の別の実施形態では、組成物中に含まれる、(b)糖脂質の、上述のアニオン性界面活性剤等の(b)糖脂質以外の界面活性剤の総量に対する質量比は、10:1から1:5、好ましくは5:1から1:3、より好ましくは3:1から1:2であってもよい。別の実施形態では、本発明による組成物は、アニオン性界面活性剤等の(b)糖脂質以外の界面活性剤の総量に等しい又はそれより多い量の(b)糖脂質を含む。
【0217】
- pH調節剤
本発明による組成物のpHは、例えば、化粧料において通常使用される酸性化剤又は塩基性化剤等の少なくとも1種のpH調節剤を使用して、所望の値に調整することができる。
【0218】
本発明による組成物のpHは、4~8、好ましくは4.5~7.5、より好ましくは5~7であってもよい。
【0219】
酸性化剤の中で例として、鉱酸又は有機酸、例えば塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸及び乳酸、並びにスルホン酸を挙げることができる。
【0220】
pH調節剤は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%の範囲の量で使用してもよい。
【0221】
本発明による組成物のpH値は、特に限定されないが、一般的に3~9、好ましくは4~8の範囲である。
【0222】
- 任意選択の成分
本発明による組成物は、上述の成分に加えて、化粧品に典型的に用いられる任意選択の成分、具体的には、(b)糖脂質以外の界面活性剤/乳化剤;例えば、合成増粘剤由来の親水性又は親油性増粘剤;エタノール等の揮発性又は不揮発性有機溶媒;グリセリン、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、プロパンジオール及びソルビトール等のポリオール;アニオン性ポリマー;両性ポリマー;ベータ-グルカン等の非イオン性ポリマー;シリコーン及びシリコーン誘導体;6~24個の炭素原子を有する高級脂肪酸等の脂肪酸;(a)カチオン性ポリマー以外の動物又は植物由来の天然抽出物;ワックス;カプリリルグリコール、フェノキシエタノール等の防腐剤;トコフェロール等の酸化防止剤;NaCl等の塩;等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0223】
本発明による組成物は、上記の任意選択の成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでもよい。
【0224】
[調製]
本発明による組成物は、上に説明した必須成分、及び必要な場合には上に説明した任意選択の成分を混合することによって、調製されうる。
【0225】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合し、本発明による組成物を調製することができる。
【0226】
本発明による組成物は、撹拌機及びホモジナイザー等の従来の混合手段により、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。また、加熱は必要ではない場合もある。したがって、本発明による組成物の調製方法は、環境に適合性でありうる。
【0227】
[形態]
本発明による組成物は、任意の形態で存在してもよい。
【0228】
例えば、本発明による組成物は、溶液、特に水溶液、トナー、セラム、又はローションの形態であってもよい。
【0229】
別の実施形態では、本発明による組成物は、溶液の形態にあってもよい。この実施形態では、本発明による組成物は、消費者が組成物を泡で使用できるようにする自動式泡ポンプと共に包装されていてもよい。
【0230】
希釈される前の本発明による組成物は、透明な又は半透明な外観、好ましくは透明な外観を有することができる。
【0231】
透明度は、(例えば、HACH社製の2100Q Portable Turbidimeterを用いて)濁度を測定することにより測定してもよい。本発明による組成物の濁度は、400NTU未満(半透明)、好ましくは350NTU未満、より好ましくは300NTU未満(透明)でありうる。
【0232】
[美容用途]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質上への塗布が意図されてよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0233】
そのため、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物、より好ましくはフェイスケア組成物であってよい。
【0234】
特に、本発明による組成物は、クレンジングに有用である。そのため、本発明による組成物は、クレンジング組成物、より好ましくは皮膚用のクレンジング組成物、更により好ましくは顔用のクレンジング組成物であることが好ましい。
【0235】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、以下にも関する:
- 皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、任意選択により、組成物をケラチン物質から除去する工程とを含む、方法、
又は
- 皮膚等のケラチン物質をケア若しくはクレンジングするための、本発明による組成物の使用。
【0236】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケア又はクレンジングするための美容方法等の非治療的美容方法を意味する。
【0237】
本発明による美容方法における除去工程は、例えば、本発明による組成物を、皮膚等のケラチン物質から水で洗い落とすことによって実施することができる。
【0238】
除去工程が行われない場合、(b)糖脂質は、ケラチン物質に、抗炎症、抗アレルギー、又は抗菌特性を付与できるため、本発明による美容方法は、皮膚等のケラチン物質のケアに有用であり得、特にニキビを有する皮膚及び敏感肌のケアに有用であると考えられる。
【0239】
除去工程が行われる場合、(b)糖脂質は、界面活性剤として機能することができるため、本発明による美容方法は、皮膚等のケラチン物質のクレンジングに有用でありうる。
【0240】
本発明による組成物を水で希釈した場合、本発明による組成物は、沈殿を生じうる。
【0241】
そのため、本発明による組成物を皮膚等のケラチン物質に塗布する工程の前又は後に、ケラチン物質が水で濡れていた場合、本発明による組成物は、ケラチン物質上に沈殿を生じうる。
【0242】
一方、本発明による組成物を皮膚等のケラチン物質から除去する工程の前に、ケラチン物質が水で濡れていた場合も、本発明による組成物は、ケラチン物質上に沈殿を生じうる。
【0243】
これに応じて、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程の前若しくは後に、又は本発明による組成物をケラチン物質から除去する前に、皮膚等のケラチン物質が水で濡れていることが好ましい。
【0244】
沈殿物は、(b)糖脂質を含み、したがって、皮膚等のケラチン物質に、抗炎症、抗アレルギー、又は抗菌特性等の様々な利益をもたらすことができ、特にニキビを有する皮膚及び敏感肌に有用であると考えられる。
【0245】
更に、沈殿物は、界面活性剤として機能することができる(b)糖脂質を含む。したがって、沈殿物は、沈殿物をケラチン物質から更に水で洗い落とすことによる、皮膚等のケラチン物質のクレンジングに効果的に使用することができ、特に皮膚等のケラチン物質からメイクアップを除去するためのケラチン物質のクレンジングに好ましいと考えられる。
【0246】
本発明はまた、(a)分子量が20,000未満、好ましくは15,000未満、より好ましくは10,000未満のポリリジンから選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマーの、(b)少なくとも1種の糖脂質を含む組成物中での使用であって、組成物を希釈するときに(b)糖脂質を含む沈殿物を与えるための使用にも関しうる。
【0247】
本発明による組成物のための(a)カチオン性ポリマー及び(b)糖脂質に関する上記の説明は、上記の使用におけるものに該当しうる。
【実施例0248】
本発明は、実施例によって、より詳細に記載される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0249】
(実施例1~20及び比較例1~7)
[調製]
実施例1~20及び比較例1~7による組成物のそれぞれを、Table 1~5(表2~6)に示す成分を混合して調製した。Table 1(表2)中の成分の量についての数値は全て、有効成分の「質量%」に基づく。イプシロン-ポリ-L-リジン(Mw:約4,700Da、JNC corporation社から入手したPL-25)を、ポリリジンとして使用した。糖脂質として、EVONIK社(製品名:RHEANCE(登録商標)One)から入手したラムノリピッド系界面活性剤を使用した。
【0250】
[評価]
(外観及び状態)
調製直後の各組成物の外観を肉眼で観察し、外観を以下の基準に基づいて評価した。
良好:外観は、透明であった。
不良:外観は、かすんでいた。
非常に不良:沈殿物が観察された。
【0251】
また、実施例1及び比較例1~3による各組成物の状態をTable 1(表2)に示す。
【0252】
(希釈試験)
各組成物を、室温(25℃)で5倍の容量になるように水で希釈した。希釈試験は、濡れた状態にある、例えば浴室中にある本発明による組成物の使用を模倣する。
【0253】
それぞれの組成物の沈殿を以下の基準に従って目視で評価した。
非常に良好:透明な外観から沈殿が観察された。
良好:外観が、透明からかすんで見えるように変化した、又はかすんでいる外観から沈殿が観察された。
不良:外観に変化は観察されなかった。
【0254】
希釈試験で生じる沈殿が多いほど、本発明による組成物は、糖脂質を含む付着物を、より多くケラチン物質に与えることができる。糖脂質は、抗炎症効力、抗アレルギー効力、及び抗菌効力等の様々な生物活性を有し、保湿テクスチャももたらすことができるため、これは有益である。
【0255】
結果を以下のTable 1~5(表2~6)に示す。
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
表で確認できるように、特定の組み合わせの(a)カチオン性ポリマー及び(b)糖脂質の成分を含む実施例1~20による組成物は、透明な外観及び希釈試験における良好な結果を示した。希釈試験の良好な結果は、組成物が、皮膚等のケラチン物質に、糖脂質を含む付着物を効果的に与えることができ、それによって抗炎症効力、抗アレルギー効力、及び抗菌効力等の様々な生物活性並びに強化された保湿テクスチャを付与することを示す。
【0262】
一方、本発明の特定の組み合わせを含まない比較例1~7による組成物は、透明な外観及び/又は希釈試験の良好な結果を示すことができなかった。
【0263】
加えて、(a)カチオン性ポリマーとしてポリリジンを含む組成物(実施例1)は液体状態にあり、これは、皮膚等のケラチン物質上で容易に拡がることができるため有益である。一方、他のカチオン性ポリマーを含む組成物(比較例1~3)は、ゼリー状になり、皮膚にくっつかない。そのため、本発明による組成物は、付着の面で優れた特性を示す。
【0264】
これに応じて、本発明による組成物は、透明な外観を示しながら、糖脂質からもたらされる生物活性の利益をケラチン物質に与えることができるため、ケラチン物質のケア及び/又はクレンジングのための化粧用組成物として非常に適しているということができる。