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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025145200
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】作業装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20250926BHJP
   F16H 21/54 20060101ALI20250926BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
B25J11/00 D
F16H21/54
F16H25/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045262
(22)【出願日】2024-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】御堂前 純
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707AS35
3C707BS24
3C707CY36
3C707HS26
3C707HS27
3C707HT11
3C707HT20
3C707KS01
3C707KT01
3C707LV19
3J062AA21
3J062AB22
3J062AB28
3J062AC07
3J062AC10
3J062BA12
3J062CB03
3J062CD04
(57)【要約】
【課題】従来構造よりもコンパクト化を図ると共に製造コストの低減を図ることができる作業装置を提供する。
【解決手段】作業装置1は、直交2軸の直動アクチュエータを有する直動機構部60と、回転アクチュエータRaを有する回転機構部80と、作業体Eを回転2自由度の角度に位置決めする回転アクチュエータ10を有する角度制御機構部7とを備える。さらに直動機構部60、回転機構部80および角度制御機構部7の位置・角度を決定して各アクチュエータに移動指令を与える制御部70を備える。制御部70からの移動指令に従って、作業体の取付け位置と作業位置との距離が指定した値となるように作業を行う。回転機構部80の回転軸C1と、角度制御機構部7の基端側中心軸QAとが角度を保った状態で、回転機構部80と角度制御機構部7の相対位置を変更できるように、回転機構部80および角度制御機構部7の少なくともいずれか一方を直動機構部60に搭載した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向が互いに直交する2軸の直動アクチュエータを有する直動機構部と、
被作業体を1回転軸回りに回転させる回転アクチュエータを有する回転機構部と、
作業体を回転2自由度の角度に位置決めする回転アクチュエータを有する角度制御機構部と、
前記直動機構部、前記回転機構部および前記角度制御機構部の位置・角度を決定して各アクチュエータに移動指令を与える制御部と、を備える作業装置であって、
前記作業体は、前記制御部からの移動指令に従って、作業を行う前記作業体の取付け位置と、前記作業体にて作業が行われる作業位置との距離が指定した値となるように作業を行うように備えられ、
前記回転機構部の回転軸と、前記角度制御機構部の基端側中心軸とが角度を保った状態で、前記回転機構部と前記角度制御機構部の相対位置を変更できるように、前記回転機構部および前記角度制御機構部の少なくともいずれか一方を、前記直動機構部に搭載した作業装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業装置において、前記回転機構部における、前記回転軸が移動する場合の回転軸の延長線上で形成される仮想平面または前記回転軸が移動しない場合の回転軸と、前記角度制御機構部における、前記基端側中心軸が移動する場合の回転軸の延長線上で形成される仮想平面または前記基端側中心軸が移動しない場合の基端側中心軸と、が平行または同一平面上にある作業装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作業装置において、前記制御部は、前記被作業体の作業位置情報および作業方向から前記回転機構部への指令回転角度を決定する回転演算部と、
この回転演算部で決定された前記指令回転角度から、前記直動アクチュエータへの指令位置と、前記角度制御機構部への指令角度を決定する座標変換部と、を有する作業装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の作業装置において、前記角度制御機構部はリンク作動装置であり、このリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、
前記各リンク機構が、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有し、
前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータである前記回転アクチュエータを備えた作業装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の作業装置において、前記直動機構部の前記2軸の直動アクチュエータの移動方向それぞれに直交する移動方向の他の直動アクチュエータをさらに備え、前記他の直動アクチュエータは、前記被作業体の座標から機械座標に変換する座標変換を微調整可能なストロークを有する作業装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の作業装置において、前記作業体は、前記被作業体と接触しない非接触型である作業装置。
【請求項7】
請求項6に記載の作業装置において、前記作業体はカメラを含み、前記被作業体を検査する外観検査装置である作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医療機器または産業機器等の高速、高精度、広範な作動範囲、および木目細かい動作を必要する機器に用いられるコンパクトな作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被作業体に対して、作業体にて作業を行う作業装置として、特許文献1,2のような構成が提案されている。
特許文献1の図1に示す装置では、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の直交3軸方向にヘッド部を移動させる機構、および前記ヘッド部の先端に回転機構を介して作業体が取り付けられた技術等が開示されている。
特許文献2では、垂直多関節ロボットを用いて物品を検査する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-64644号公報
【特許文献2】特開2017-26441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構成では、定盤上に支持された被作業体の側面全周に対して作業する場合、作業体を被作業体の全周方向に移動させる必要がある。このため、装置サイズが大きくなるうえ、部品点数が多くなり構造が複雑化することにより製造コストが嵩む等の課題があった。
【0005】
特許文献2のような垂直多関節ロボットの構成では、ロボット全体の移動量が大きいため、安全柵等を設けると装置全体のサイズが大きくなるといった課題があった。
【0006】
本発明の目的は、従来構造よりもコンパクト化を図ると共に製造コストの低減を図ることができる作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業装置は、移動方向が互いに直交する2軸の直動アクチュエータを有する直動機構部と、
被作業体を1回転軸回りに回転させる回転アクチュエータを有する回転機構部と、
作業体を回転2自由度の角度に位置決めする回転アクチュエータを有する角度制御機構部と、
前記直動機構部、前記回転機構部および前記角度制御機構部の位置・角度を決定して各アクチュエータに移動指令を与える制御部と、を備える作業装置であって、
前記作業体は、前記制御部からの移動指令に従って、作業を行う前記作業体の取付け位置と、前記作業体にて作業が行われる作業位置との距離が指定した値となるように作業を行うように備えられ、
前記回転機構部の回転軸と、前記角度制御機構部の基端側中心軸とが角度を保った状態で、前記回転機構部と前記角度制御機構部の相対位置を変更できるように、前記回転機構部および前記角度制御機構部の少なくともいずれか一方を、前記直動機構部に搭載した。
【0008】
この構成によると、直動機構部の1自由度分を回転機構部と角度制御機構部の相対位置関係で補うことができる。このため、直動機構部が2自由度でも、被作業体の複数方向から作業体に対して作業でき、従来構造よりも作業装置の幅方向または奥行方向の寸法を大幅にコンパクト化できる。直動機構部の1自由度分を低減できる分、従来構造よりも部品点数を低減し構造を簡単化することで、製造コストの低減を図れる。但し、直動機構部の1自由度分を減らしたことで、所望の位置に作業するための教示作業に制限項目が増え、ある程度の専門知識を有していないと教示作業が難しくなることが懸念される。しかし、本発明の作業装置は制御部を有しているため、自動で複雑な座標変換を制御部で実施でき、作業者は専門知識を有していなくても簡単に教示作業を実施できる。
【0009】
前記回転機構部における、前記回転軸が移動する場合の回転軸の延長線上で形成される仮想平面または前記回転軸が移動しない場合の回転軸と、前記角度制御機構部における、前記基端側中心軸が移動する場合の回転軸の延長線上で形成される仮想平面または前記基端側中心軸が移動しない場合の基端側中心軸と、が平行または同一平面上にあってもよい。
回転機構部の回転軸移動平面または回転軸と、角度制御機構部の基端側中心軸移動平面または基端側中心軸とを平行に配置することで、直動機構部の移動方向と角度制御機構部の基端側中心軸とが平行になり、教示作業が容易になる。さらに、回転機構部と角度制御機構部が同一平面上を動く構成にすると、余分なスペースが少なくなり、作業装置の幅方向または奥行方向のサイズが最もコンパクトになる。
【0010】
前記制御部は、前記被作業体の作業位置情報および作業方向から前記回転機構部への指令回転角度を決定する回転演算部と、
この回転演算部で決定された前記指令回転角度から、前記直動アクチュエータへの指令位置と、前記角度制御機構部への指令角度を決定する座標変換部と、を有してもよい。
この構成によると、座標変換を容易に実施できるようになる。
【0011】
前記角度制御機構部はリンク作動装置であり、このリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、
前記各リンク機構が、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有し、
前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータである前記回転アクチュエータを備えてもよい。
【0012】
角度制御機構部が一般的なパン・チルト機構のような構成では、先端の姿勢を少し変更させる場合だけでも、回転機構部全体が大きく動いてしまい、動作速度が遅くなるといった課題がある。
角度制御機構部がリンク作動装置であると、所望の角度に直線的に移動できるため、角度制御を高速で行うことができ、パン・チルト機構等のような構成よりもタクトタイムを短縮できる。またリンク作動装置の内部空間にケーブルを通すことができ、旋回動作を繰り返してもケーブルが捻じれることはないため、配線の取り回しが容易となる。
【0013】
前記直動機構部の前記2軸の直動アクチュエータの移動方向それぞれに直交する移動方向の他の直動アクチュエータをさらに備え、前記他の直動アクチュエータは、前記被作業体の座標から機械座標に変換する座標変換を微調整可能なストロークを有してもよい。
この構成によると、作業装置の幅方向または奥行方向をコンパクトな構成にしながら、前述の教示作業の実施が容易になる。
【0014】
前記作業体は、前記被作業体と接触しない非接触型であってもよい。
【0015】
前記作業体はカメラを含み、前記被作業体を検査する外観検査装置であってもよい。
この構成によると、コンパクトな構成で被作業体を検査する工程を自動化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の作業装置は、移動方向が互いに直交する2軸の直動アクチュエータを有する直動機構部と、被作業体を1回転軸回りに回転させる回転アクチュエータを有する回転機構部と、作業体を回転2自由度の角度に位置決めする回転アクチュエータを有する角度制御機構部と、前記直動機構部、前記回転機構部および前記角度制御機構部の位置・角度を決定して各アクチュエータに移動指令を与える制御部とを備える。前記作業体は、前記制御部からの移動指令に従って、作業を行う前記作業体の取付け位置と、前記作業体にて作業が行われる作業位置との距離が指定した値となるように作業を行うように備えられる。前記回転機構部の回転軸と、前記角度制御機構部の基端側中心軸とが角度を保った状態で、前記回転機構部と前記角度制御機構部の相対位置を変更できるように、前記回転機構部および前記角度制御機構部の少なくともいずれか一方を、前記直動機構部に搭載した。このため、従来構造よりもコンパクト化を図ると共に製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図2】同作業装置の制御部のブロック図である。
図3】同作業装置のリンク作動装置の斜視図である。
図4図5のIV-IV線の一部断面図である。
図5】同リンク作動装置の2つのリンク機構を省略した簡易モデルの正面図である。
図6】同リンク作動装置の1つのリンク機構を直線で表現した図である。
図7】同作業装置のワーク座標系のイメージを概念的に示す図である。
図8】同作業装置の座標変換のイメージを概念的に示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図11A】本発明の第4の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図11B】同作業装置を部分的に変更した変形例の作業装置の斜視図である。
図12A】本発明の第5の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図12B】同作業装置を部分的に変更した変形例の作業装置の斜視図である。
図13図12Aまたは図12Bのパン・チルト機構の斜視図である。
図14】本発明の第6の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図15】本発明の第7の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図16A】本発明の第8の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図16B】同作業装置の平面図である。
図17A】本発明の第9の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
図17B】同作業装置の平面図である。
図18】本発明の第10の実施形態に係る作業装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係る作業装置を図1ないし図8と共に説明する。
図1のように、作業装置1は、直動機構部60と、回転機構部80と、角度制御機構部であるリンク作動装置7と、制御部70(図2)とを備える。この作業装置1は、例えば、医療機器または産業機器等に用いられる。
【0019】
<作業装置の概略構造:直動2自由度、回転3自由度>
図示外の架台等に、移動方向が互いに直交する2軸の直動アクチュエータ61,62を有する直動機構部60が設置されている。この例では、直動アクチュエータ61,62のうち、X軸方向に進退する一方の直動アクチュエータ61に、回転機構部80が取り付けられる。回転機構部80は、ワーク等の被作業体WをZ軸方向に延びる1回転軸C1回りに回転させる回転アクチュエータRaを有する。Z軸方向に進退する他方の直動アクチュエータ62に、リンク作動装置7が取り付けられている。リンク作動装置7は、後述する作業体Eを回転2自由度の角度に位置決めする回転アクチュエータ10を有する。
【0020】
作業装置1は、リンク作動装置7の先端部材40に取り付けられた作業体Eを、回転機構部80に支持された被作業体Wに対し位置決めして作業を行う。リンク作動装置7、直動機構部60および回転機構部80は、制御部70に接続され、この制御部70により同期制御される。図1の作業装置1は、図8に示すように、制御部70からの移動指令に従って、作業を行う作業体Eの取付け位置EPと、作業体Eにて作業が行われる被作業体Wの作業位置との距離Lwが指定した値となるように作業を行う。距離Lwが指定した値となるように作業を行うとは、任意に設定した距離Lwを一定に保った状態で作業を行うことである。このような構成とすることで、作業中に作業体Eと被作業体Wの作業位置との距離を変更することなく作業が可能である。
【0021】
<リンク作動装置>
図3のように、リンク作動装置7は、パラレルリンク機構9と、このパラレルリンク機構9を作動させる回転アクチュエータである姿勢制御用アクチュエータ10とを備える。
<パラレルリンク機構>
パラレルリンク機構9は、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13を3組のリンク機構14を介して姿勢変更可能に連結したものである。リンク機構14の組数は4組以上であってもよい。図5では、1組のリンク機構14のみが示され、残りの2つのリンク機構が省略されている。
【0022】
各リンク機構14は、基端側の端部リンク部材15、先端側の端部リンク部材16、および中央リンク部材17を有し、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。
基端側および先端側の端部リンク部材15,16は、図3のように、略L字形状であり、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13に回転可能に連結されている。図5のように、中央リンク部材17は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材15,16の他端がそれぞれ回転可能に連結されている。
【0023】
パラレルリンク機構9は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造である。基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15の各回転対偶、および基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17の各回転対偶の中心軸が、基端側の球面リンク中心PAで交差している。同様に、先端側のリンクハブ13と先端側の端部リンク部材16の各回転対偶、および先端側の端部リンク部材16と中央リンク部材17の各回転対偶の中心軸が、先端側の球面リンク中心PBで交差している。
【0024】
基端側のリンクハブ12と基端側の各端部リンク部材15との各回転対偶の中心から基端側の球面リンク中心PA間までの距離は同じである。基端側の各端部リンク部材15と各中央リンク部材17との各回転対偶の中心から基端側の球面リンク中心PA間までの距離は同じである。同様に、先端側のリンクハブ13と先端側の各端部リンク部材16との各回転対偶の中心から先端側の球面リンク中心PB間までの距離は同じである。先端側の各端部リンク部材16と各中央リンク部材17との各回転対偶の中心から先端側の球面リンク中心PB間までの距離は同じである。
【0025】
基端側および先端側の端部リンク部材15,16と中央リンク部材17との各回転対偶の中心軸は、ある交差角γを持っていてもよいし、平行であってもよい。
基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15との各回転対偶の中心軸と、基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17との各回転対偶の中心軸とが成す角度であるアーム角は、定められた角度に規定されている。
【0026】
3組のリンク機構14は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、図6に示すように、各リンク部材15,16,17を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、どのような姿勢をとっていても、中央リンク部材17の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。図6は、1組のリンク機構14を直線で表現した図である。この実施形態のパラレルリンク機構9は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ12および基端側の端部リンク部材15と、先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16との位置関係が、中央リンク部材17の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。各中央リンク部材17の中央部は、共通の軌道円上に位置している。
【0027】
基端側のリンクハブ12と先端側のリンクハブ13と3組のリンク機構14とで、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成されている。言い換えると、基端側のリンクハブ12に対して先端側のリンクハブ13を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構としている。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の可動範囲を広くとれる。
【0028】
例えば、基端側および先端側の球面リンク中心PA,PBを通り、基端側および先端側のリンクハブ12,13と基端側および先端側の端部リンク部材15,16の各回転対偶の中心軸O1(図3)と直角に交わる直線を、基端側および先端側のリンクハブ12,13の中心軸QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ12の中心軸(基端側中心軸)QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの折れ角θの最大値である最大折れ角θmaxを約90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の旋回角φを0°~360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことである。一方、旋回角φは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。なお最大折れ角θmaxが90°以上であってよい。
【0029】
基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢変更は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの交点Oを回転中心として行われる。図3は、基端側のリンクハブ12の中心軸QA(図5)に対して先端側のリンクハブ13の中心軸QB(図5)が或る作動角(折れ角)をとった状態を示す。図6に示すように、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Lは変化しない。
【0030】
このパラレルリンク機構9において、以下の条件1~5を全て満たすとき、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ12および基端側の端部リンク部材15と、先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16とは同じに動く。よって、パラレルリンク機構9は、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する等速自在継手として機能する。
【0031】
条件1:図4および図6に示すように、各リンク機構14における基端側および先端側のリンクハブ12,13と基端側および先端側の端部リンク部材15,16の回転対偶の中心軸O1,O2の角度α並びに基端側および先端側の球面リンク中心PA,PBからの長さが互いに等しい。
【0032】
条件2:各リンク機構14の基端側および先端側のリンクハブ12,13と基端側および先端側の端部リンク部材15,16の回転対偶の中心軸、および基端側および先端側の端部リンク部材15,16と中央リンク部材17の回転対偶の中心軸が、基端側および先端側において基端側および先端側の球面リンク中心PA,PBと交差する。
【0033】
条件3:基端側の端部リンク部材15と先端側の端部リンク部材16の幾何学的形状が等しい。
条件4:中央リンク部材17における基端側部分と先端側部分の幾何学的形状が等しい。
条件5:中央リンク部材17の対称面に対して、中央リンク部材17と基端側および先端側の端部リンク部材15,16との角度位置関係が基端側と先端側とで同じである。
【0034】
図3のように、基端側のリンクハブ12は、平板状の基端部材6と、この基端部材6と一体に設けられた3個の回転軸連結部材21とを有する。基端部材6は中央部に円形の貫通孔6aを有し、この貫通孔6aの周囲に3個の回転軸連結部材21が円周方向に等間隔で配置されている。貫通孔6aの中心は、基端側のリンクハブ12の図5に示す中心軸QA上に位置する。各回転軸連結部材21には、軸心が基端側のリンクハブ12の中心軸QAと交差する図4に示す回転軸22が回転自在に連結されている。この回転軸22に、基端側の端部リンク部材15の一端が連結されている。
【0035】
図3のように、先端側のリンクハブ13は、平板状の先端部材40と、この先端部材40の底面に円周方向等配で設けられた3個の回転軸連結部材41とを有する。各回転軸連結部材41が配置される円周の中心は、先端側のリンクハブ13の中心軸QB(図5)上に位置する。各回転軸連結部材41には、軸心が先端側のリンクハブ13の中心軸QB(図5)と交差する回転軸43が回転自在に連結されている。この回転軸43に、先端側の端部リンク部材16の一端が連結されている。先端側の端部リンク部材16の他端には、中央リンク部材17の他端に回転自在に連結された回転軸45が連結されている。
【0036】
<姿勢制御用アクチュエータ>
姿勢制御用アクチュエータ10は、減速機構52を備えたロータリアクチュエータであり、基端側のリンクハブ12の基端部材6の一平面に前記回転軸22(図4)と同軸上に設置されている。姿勢制御用アクチュエータ10と減速機構52は一体に設けられ、モータ固定部材53により減速機構52が基端部材6に固定されている。なお、姿勢制御用アクチュエータ10は、ブレーキ付きのものを使用してもよい。
【0037】
この例では、3組のリンク機構14のすべてに姿勢制御用のアクチュエータ10が設けられているが、3組のリンク機構14のうち少なくとも2組に姿勢制御用のアクチュエータ10を設ければ、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を確定することができる。
3つの姿勢制御用のアクチュエータ10は、それらの回転軸22(図4)が基端側のリンクハブ12の中心軸QA(図5)と直交するように配置され、これらの姿勢制御用アクチュエータ10の回転軸22(図4)の交点である中央位置が、基端側のリンクハブ12の中心軸QA(図5)上にある。
【0038】
リンク作動装置7は、各姿勢制御用アクチュエータ10を回転駆動することで、パラレルリンク機構9が作動する。詳しくは、姿勢制御用アクチュエータ10を回転駆動すると、その回転が減速機構52を介して減速して回転軸22(図4)に伝達される。それにより、基端側のリンクハブ12に対する基端側の端部リンク部材15の角度が変わり、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢が任意に変更される。
【0039】
<作業体>
先端側のリンクハブ13の先端部材40には、作業体Eが取り付けられている、作業体Eの先端部分を作用点とする。作業体Eは、例えば、グリッパを含むハンド、洗浄用ノズル、ディスペンサ、溶接トーチ、後述するカメラを含む画像処理機器Eg(図18)等が挙げられる。すなわち、作業体Eは被作業体Wに接触する接触型と、接触しない非接触型が挙げられる。作業体Eが接触型の場合、作業体Eの作用点を被作業体Wに接触させることで作業が行われ、作業体Eが非接触型の場合、作業体Eの作用点を被作業体Wに接触させることなく作業が行われる。
【0040】
<直動機構部>
図1のように、直動機構部60には、直交2軸方向に進退するXZステージが適用されている。直動機構部60は、移動駆動用の第1および第2の直動アクチュエータ61,62を有する。第1の直動アクチュエータ61は、幅方向であるX軸方向に進退する。第2の直動アクチュエータ62は、X軸方向に直交する上下方向であるZ軸方向に進退する。なおY軸方向は、X軸方向およびZ軸方向にそれぞれ直交する方向である。
【0041】
第1および第2の直動アクチュエータ61,62は、それぞれ駆動源であるモータ61a,62aで駆動され、各モータ61a,62aの回転をそれぞれ直線往復動作に変換するボールねじ等の変換機構(図示せず)を有する。各直動アクチュエータ61,62は、対応する軸方向に沿って延びるガイド61b,62bと、各ガイド61b,62bに沿って移動する。スライドテーブル61c,62cと、モータ61a,62aとを有する。この例では、第1の直動アクチュエータ61の出力部となるスライドテーブル61cに、回転機構部80が取り付けられる。第2の直動アクチュエータ62の出力部となるスライドテーブル62cに、リンク作動装置7における基端側のリンクハブ12が取り付けられている。リンク作動装置7の中心軸QA(図3、基端側中心軸)がX軸方向に延びるように、基端側のリンクハブ12が第2の直動アクチュエータ62に設置される。
【0042】
<回転機構部等>
回転機構部80は、スライドテーブル61cに固定される回転アクチュエータRaのアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体の上部においてZ軸方向の回転軸C1回りに回転する回転テーブル80aとを有する。回転テーブル80aの上面に、被作業体Wが支持される。
【0043】
本実施形態の作業装置1は、特に、回転機構部80の回転軸C1と、リンク作動装置7の基端側中心軸である中心軸QA(図3)とが一定の角度を保った状態で、回転機構部80と角度制御機構部7の相対位置を変更できるように、回転機構部80および角度制御機構部7の両方を、直動機構部60に搭載している。
さらに、回転機構部80における、回転軸C1が移動する場合の平面と、リンク作動装置7の基端側中心軸である中心軸QAが移動する場合の平面と、が平行または同一平面上にある。
【0044】
<制御部>
制御部70は、直動機構部60、回転機構部80および角度制御機構部であるリンク作動装置7の位置・角度を決定して各アクチュエータ61,62,Ra,10に移動指令を与える。この制御部70は、図2のように、回転演算部70aと座標変換部70bとを有する。回転演算部70aは、図1および図2のように、被作業体Wの作業位置情報および作業方向から、回転機構部80への指令回転角度を決定する。座標変換部70bは、回転演算部70aで決定された前記指令回転角度から、直動アクチュエータ61,62への指令位置と、角度制御機構部であるリンク作動装置7への指令角度を決定する。
【0045】
制御部70の機能としては、ワーク座標で作成された教示データ、すなわち被作業体Wの作業位置情報(Wx,Wy,Wzとする)、作業方向(θ’,φ’とする)の5自由度(Wx,Wy,Wz,θ’,φ’)から、回転演算部70aにて、装置構成を考慮し、5自由度の機械部の姿勢(直動2自由度、θ,φ, R)で表現できるように回転機構部80の回転量を計算・設定する。
前記回転量も含めた値から座標変換部70bにて機械座標に変換する。なお回転演算部70aと座標変換部70bは一つにまとめてもよい。本制御部70にて以上の流れでワーク座標 → 機械座標 へ変換し、各アクチュエータ61,62,Ra,10に対して移動指令を与える。
【0046】
<ワーク座標系イメージ>
制御部70は、図7のように、被作業体Wであるワークの基準点(0,0,0)を決定する。この基準点(0,0,0)は、任意の位置であり、図7では円筒形状のワークの底面の中心点とする。制御部70(図1)は、前記基準点から考えた被作業体Wの作業位置(Wx,Wy,Wz)、Wx-Wy平面と成す角度、およびWz方向から見てWxと成す角度で作業方向(θ’,φ’)を教示する。
【0047】
<座標変換イメージ>
図8のように、制御部70(図1)は、ワーク座標の教示データによって指示された、被作業体Wの作業位置(Wx,Wy,Wz)と作業方向(θ’,φ’)を、機械座標系へ変換する。制御部70(図1)は、作業体Eの取付け位置EPと作業体Eにて作業が行われる被作業体Wの作業位置との距離Lwが指定した値となるように機械座標系へ変換する。この制御部70(図1)の構成によると、座標変換を容易に実施し得る。後述する他の実施形態では、制御部70(図1)を省略している。
【0048】
<作用効果>
以上説明した図1の作業装置1によると、回転機構部80の回転軸C1と、リンク作動装置7の基端側中心軸である中心軸QAとが一定の角度を保ちつつ、回転機構部80と角度制御機構部7の相対位置を変更できるように、回転機構部80および角度制御機構部7の両方を、直動機構部60に搭載した。このため、直動機構部60の1自由度分を回転機構部80と角度制御機構部7の相対位置関係で補うことができる。このため、直動機構部60が2自由度でも、被作業体Wの複数方向から作業体Eに対して作業でき、従来構造よりも作業装置1の幅方向または奥行方向の寸法を大幅にコンパクト化できる。直動機構部60の1自由度分を低減できる分、従来構造よりも部品点数を低減し構造を簡単化することで、製造コストの低減を図れる。
【0049】
但し、直動機構部60の1自由度分を減らしたことで、所望の位置に作業するための教示作業に制限項目が増え、ある程度の専門知識を有していないと教示作業が難しくなることが懸念される。しかし、作業装置1は制御部70を有しているため、自動で複雑な座標変換を前記制御部70で実施でき、作業者は専門知識を有していなくても簡単に教示作業を実施できる。
【0050】
回転機構部80における、回転軸C1が移動する場合の回転軸の延長線上で形成される仮想平面(「回転軸移動平面」と称す)と、リンク作動装置7の基端側中心軸である中心軸QAが移動する場合の回転軸の延長線上で形成される仮想平面(「基端側中心軸移動平面」と称す)と、が平行または同一平面上にある。回転軸移動平面と基端側中心軸移動平面とを平行または同一平面上に配置した場合には、直動機構部60の移動方向、すなわち回転軸移動平面および基端側中心軸移動平面と角度制御機構部7の基端側中心軸QAとが平行、もしく回転軸移動平面および基端側中心軸移動平面の少なくとも一方が角度制御機構部7の基端側中心軸QAを含むことになり、教示作業が容易になる。さらに、回転機構部80と角度制御機構部7が同一平面上を動く構成にすると、余分なスペースが少なくなり、作業装置1の幅方向または奥行方向のサイズが最もコンパクトになる。
【0051】
角度制御機構部がリンク作動装置7であると、所望の角度に直線的に移動できるため、角度制御を高速で行うことができ、パン・チルト機構等のような構成よりもタクトタイムを短縮できる。またリンク作動装置7の内部空間にケーブルを通すことができ、旋回動作を繰り返してもケーブルが捻じれることはないため、配線の取り回しが容易となる。
【0052】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0053】
[第2の実施形態:回転機構部固定]
図9のように、回転機構部80を図示外の架台等に固定し、2台の直動アクチュエータ61,62にて角度制御機構部であるリンク作動装置7を移動させてもよい。この例では、Z軸方向に進退する直動アクチュエータ62のスライドテーブル62cに、X軸方向に進退する直動アクチュエータ61のガイド61bが取り付けられている。X軸方向に進退する直動アクチュエータ61の出力部となるスライドテーブル61cに、リンク作動装置7における基端側のリンクハブ12が取り付けられている。このように回転機構部80および角度制御機構部7のいずれか一方(この例では角度制御機構部7)を、直動機構部60に搭載している。
【0054】
さらにリンク作動装置7における基端側中心軸QAが移動する場合の平面PQと、前記回転軸C1が移動しない場合の回転軸C1とが同一平面上(平面PQが回転軸C1を含む)または平行の関係にある。図9では、基端側中心軸移動平面PQと回転軸C1とが同一平面上にある。
この構成においても、従来構造より作業装置1Aの幅方向または奥行方向の寸法を大幅にコンパクト化できる。図9では、作業装置1AのY軸方向の寸法をコンパクト化できる。さらに従来構造よりも製造コストの低減を図れる。
【0055】
[第3の実施形態:角度制御機構部固定]
図10のように、角度制御機構部であるリンク作動装置7を固定し、2台の直動アクチュエータ61,62にて回転機構部80を移動させてもよい。この例では、Z軸方向に進退する直動アクチュエータ62のスライドテーブル62cに、X軸方向に進退する直動アクチュエータ61のガイド61bが取り付けられている。X軸方向に進退する直動アクチュエータ61の出力部となるスライドテーブル61cに、回転機構部80のアクチュエータ本体が固定されている。このように回転機構部80および角度制御機構部7のいずれか一方(この例では回転機構部80)を、直動機構部60に搭載している。
【0056】
さらに回転機構部80における、回転軸C1が移動する場合の平面PRと、前記基端側中心軸QAが移動しない場合の基端側中心軸QAとが、同一平面上(平面PRが基端側中心軸QAを含む)または平行の関係にある。図10では、回転軸移動平面PRと基端側中心軸QAとが同一平面上にある。
この構成においても、従来構造より作業装置1Bの幅方向または奥行方向の寸法を大幅にコンパクト化できる。図10では、作業装置1BのY軸方向の寸法をコンパクト化できる。さらに従来構造よりも製造コストの低減を図れる。
【0057】
[第4の実施形態:アクチュエータ軸オフセット]
図11Aのように、2台の直動アクチュエータ61,62の軸は、Y軸方向にオフセットして配置し同一平面上にはないが、回転軸移動平面PRと基端側中心軸移動平面PQとが、同一平面上(一致)にある。2台の直動アクチュエータ61,62の軸は、例えば、作業スペース、周辺設備等のレイアウトの都合等に応じてY軸方向に所定長さOFだけオフセットされる。
【0058】
リンク作動装置7の中心軸QA(基端側中心軸)は、X軸方向一方に向かうに従って、Z軸方向下方に角度θa傾斜するように、基端側のリンクハブ12が第2の直動アクチュエータ62に設置される。具体的には、Z軸方向に進退する直動アクチュエータ62のスライドテーブル62cに、斜面台形状の取付部材63によりリンク作動装置7がX軸方向に対し角度θa傾けた状態で設置される。取付部材63の先端部には、XY平面に対して所定角度で傾斜する傾斜面が設けられている。この傾斜面に対して、基端側のリンクハブ12の基端部材6がボルト等で固定されている。
この場合、2台の直動アクチュエータ61,62の軸がオフセットされる分コンパクト化の阻害要因となるが、従来構造より作業装置1Cのコンパクト化を図れるうえ、製造コストの低減を図れる。
【0059】
<変形例:両軸傾斜>
図11Bのように、リンク作動装置7の中心軸QAを傾斜させると共に、回転機構部80の回転軸C1を傾斜させた作業装置1Dとしてもよい。X軸方向に進退する直動アクチュエータ61のスライドテーブル61cに、取付部材64により回転機構部80がZ軸方向に対し角度θb傾けた状態で設置される。取付部材64の先端部には、XY平面に対して所定角度で傾斜する傾斜面が設けられている。この傾斜面に対して、アクチュエータ本体がボルト等で固定されている。
【0060】
[第5の実施形態:パン・チルト機構]
図12Aおよび図12Bのように、回転2自由度の角度制御機構部として、パン・チルト機構7Aを適用した作業装置1E,1Fとしてもよい。図12Aは、図1におけるリンク作動装置7を、図13に示すような一般的なパン・チルト機構7Aに変更した構成であり、図12Bは、図11Aにおけるリンク作動装置7を、図13に示すパン・チルト機構7Aに変更した構成である。
【0061】
[第6の実施形態:6自由度、第3の直動アクチュエータ追加]
図14のように、直動機構部60の各直動アクチュエータ61,62の移動方向にそれぞれに直交する移動方向(この例ではY軸方向)の第3の直動アクチュエータ65をさらに備えて合計6自由度の作業装置1Gとしてもよい。この直動アクチュエータ65は、被作業体W(図7)の座標から機械座標に変換する座標変換のずれを微調整可能なストロークを有する。本実施形態において、座標変換の際、第3の直動アクチュエータ65は考慮せず、JOG操作による微調整に第3の直動アクチュエータ65を使用する。
【0062】
本構成とすることで、教示の際のJOG動作で直感的な操作が可能となる。また、作業装置1Gの組立誤差等による座標変換(ワーク座標→機械座標)の微小なズレに対して、3台の直動アクチュエータ61,62,65による微調整が可能となる。第3の直動アクチュエータ65は、微調整に必要なストロークがあれば十分である。このため、第3の直動アクチュエータ65のストロークは、他の直動アクチュエータ61,62の軸と比べて十分に短くすることが可能である。具体的には、第3の直動アクチュエータ65のストロークは、他の直動アクチュエータ61,62のストロークの半分以下である。
この構成によると、作業装置1Gの幅方向または奥行方向をコンパクトな構成にしながら、前述の教示作業の実施が容易になる。
【0063】
[第7の実施形態:6自由度、ロール軸の追加]
図15のように、角度制御機構部であるリンク作動装置7の先端部に、ロール軸Crを追加して、直動2自由度および回転4自由度、合計6自由度の作業装置1Hとしてもよい。この例では、先端側のリンクハブ13の先端部材40に、回転アクチュエータ66を介して作業体Eが取り付けられている。回転アクチュエータ66は、アクチュエータ本体と、回転部材とを有する。先端部材40の先端面に、前記アクチュエータ本体が取り付けられる。このアクチュエータ本体の先端部に、前記回転部材が前記先端面に垂直な回転軸回りに回転自在に取り付けられている。
この構成によると、5自由度では制御できない作業方向軸回転も制御でき、従来の6自由度構成と同様の作業をコンパクトな装置構成で行うことが可能となる。
【0064】
[第8の実施形態:角度制御機構部を平行配置]
図16Aおよび図16Bのように、角度制御機構部であるリンク作動装置7の中心軸QA(基端側中心軸)を、回転軸移動平面PRに平行にオフセットした作業装置1Jとしてもよい。この場合、一部教示制限が加わる。例えば、角度制御機構部の真下付近で作業ができない座標がある。しかし、前記のようにオフセットすることで、例えば、作業スペース、周辺設備等のレイアウトに応じてコンパクトな装置構成で所望の作業を行うことが可能となる。
【0065】
[第9の実施形態:角度制御機構部を自由配置]
図17Aおよび図17Bのように、角度制御機構部であるリンク作動装置7の中心軸QA(基端側中心軸)を、回転軸移動平面PRの同一平面上ではなく、自由配置とした作業装置1Kとしてもよい。この場合、一部教示制限が加わる。例えば、角度制御機構部の可動域の制限が加わりやすい。しかし、前記のように角度制御機構部を自由配置にすることで、例えば、作業スペース、周辺設備等のレイアウトに応じてコンパクトな装置構成で所望の作業を行うことが可能となる。
【0066】
[第10の実施形態:外観検査装置]
図18のように、作業体は、カメラCmを含む画像処理機器Eg(被作業体Wに接触しない非接触型)であり、作業装置は、被作業体Wを検査する外観検査装置1Lであってもよい。画像処理機器Egは、例えば、ワークを撮像するカメラCm、およびワークを照らす照明具Le等を含む。外観検査装置1Lにおいて、カメラCmは、配線を介して図示外のカメラ制御システムと電気的に繋がっており、前記カメラ制御システムにより撮影時の各種制御が行われる。上記の通りの非接触型の作業体(画像処理機器Eg)の場合、作業体の取付け位置EPと作業体にて作業が行われる被作業体Wの作業位置との距離Lw2が指定した値となるように作業を行う。距離Lw2が指定した値となるように作業を行うとは、任意に設定した距離Lw2を一定に保った状態で作業を行うことである。このような構成とすることで、作業中に画像処理機器Egと被作業体Wの作業位置との距離を変更することなく作業が可能である。この構成によると、コンパクトな構成で被作業体Wを検査する工程を自動化することができる。また、作業方向回りの回転の自由度がない場合でも、検査対象がカメラCmの画角に入れば判定できる。このため、装置スペースが限られることが多い本用途に対し、本構成は好適である。
【0067】
図9のように、移動しない場合の一方の回転軸C1が、基端側中心軸QAが移動する場合の回転軸の延長線上で形成される他方の仮想の平面PQに含まれる場合も、一方の回転軸C1と他方の仮想平面PQとが平行に含まれる。この場合も、従来構造より作業装置1Aの幅方向または奥行方向の寸法を大幅にコンパクト化できる。
【0068】
以上、実施形態に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1~1K…作業装置、1L…外観検査装置、7…リンク作動装置(角度制御機構部)、7A…パン・チルト機構(角度制御機構部)、10…姿勢制御用アクチュエータ(回転アクチュエータ)、12…基端側のリンクハブ、13…先端側のリンクハブ、14…リンク機構、15…基端側の端部リンク部材、16…先端側の端部リンク部材、17…中央リンク部材、60…直動機構部、61,62…直動アクチュエータ、65…直動アクチュエータ、70…制御部、70a…回転演算部、70b…座標変換部、80…回転機構部、Cm…カメラ、E…作業体、Ra…回転アクチュエータ、W…被作業体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18