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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014522
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】電池セル、及び電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20250123BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250123BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250123BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20250123BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/625
H01M50/105
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117150
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】内海 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】近都 佑介
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝章
(72)【発明者】
【氏名】粟野 宏基
【テーマコード(参考)】
5H011
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H011BB03
5H031KK01
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT04
(57)【要約】
【課題】電極体から発生した熱を効率的に放熱することができる電池セル、及び該電池セルを備えた電池モジュールの提供。
【解決手段】正極と、負極と、正極及び負極の間に介在されるセパレータと、を有する積層構造がさらに複数積層された電極体と、電極体を内部に封入する電池セルケースと、を有する電池セルであって、正極と負極はそれぞれ、集電体と、活物質を含み集電体の表面に塗工された合材と、を有し、正極における集電体及び負極における集電体の少なくとも一方は、表面の周縁部に合材が塗工されていない未塗工部を有し、未塗工部を有する集電体のうち、電池セルケースの表面からの距離が最も大きい集電体における未塗工部を第1未塗工部とし、第1未塗工部が電池セルケースの外部まで延びる第1露出部を備える、電池セル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に介在されるセパレータと、を有する積層構造がさらに複数積層された電極体と、
前記電極体を内部に封入する電池セルケースと、を有する電池セルであって、
前記正極と前記負極はそれぞれ、集電体と、活物質を含み前記集電体の表面に塗工された合材と、を有し、
前記正極における前記集電体及び前記負極における前記集電体の少なくとも一方は、表面の周縁部に前記合材が塗工されていない未塗工部を有し、
前記未塗工部を有する前記集電体のうち、前記電池セルケースの表面からの距離が最も大きい集電体における前記未塗工部を第1未塗工部とし、前記第1未塗工部は前記電池セルケースの外部まで延びる第1露出部を備える、電池セル。
【請求項2】
前記電極体の電極面の形状が長方形であり、前記第1露出部は前記長方形の形状における長辺側に配置される、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記電極体の電極面の形状が長方形であり、前記正極及び前記負極のうち前記長方形の形状における長辺の長さが大きい方の電極が前記第1露出部を有する、請求項1に記載の電池セル。
【請求項4】
前記第1未塗工部を有する前記集電体よりも、前記電池セルケースの表面からの距離が小さい集電体における前記未塗工部を第2未塗工部とし、前記第2未塗工部は前記電池セルケースの外部まで延びる第2露出部を備える、請求項1に記載の電池セル。
【請求項5】
前記電池セルケースの内部に、前記第1未塗工部と前記第2未塗工部とが接合されている部位を備える、請求項4に記載の電池セル。
【請求項6】
前記第1未塗工部の板厚が前記第2未塗工部の板厚より大きい、請求項4に記載の電池セル。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の電池セルと、
冷却器及び電池モジュールケースの少なくとも一方と、を備えた電池モジュールであって、
前記第1露出部が前記冷却器及び前記電池モジュールケースの少なくとも一方と絶縁接合されている、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池セル、及び電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
正極、負極、及びセパレータが複数積層された電極体が電池セルケースの内部に封入された電池セルが、従来から使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電極体から発生する熱(例えば充放電時や短絡の発生時に生じる熱)を放熱するための部材が電極体の内部に装着され、放熱部材の一部が外部に露出している電池セル、が開示されている。
また特許文献2には、電池セルケースの近くに配置された集電体が外部まで延伸された構造の電池セル、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-522912号公報
【特許文献2】国際公開第2013/027306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される電池セルでは、放熱部材を電池セルの外部に露出させることで、電極体から発生した熱を放熱する構造としている。また、特許文献2では、集電体を電池セルの外部まで延伸させることで電極体からの熱を放熱する経路としている。
しかし、より効率的に放熱することができる構造が求められている。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電極体から発生した熱を効率的に放熱することができる電池セル、及び該電池セルを備えた電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に介在されるセパレータと、を有する積層構造がさらに複数積層された電極体と、
前記電極体を内部に封入する電池セルケースと、を有する電池セルであって、
前記正極と前記負極はそれぞれ、集電体と、活物質を含み前記集電体の表面に塗工された合材と、を有し、
前記正極における前記集電体及び前記負極における前記集電体の少なくとも一方は、表面の周縁部に前記合材が塗工されていない未塗工部を有し、
前記未塗工部を有する前記集電体のうち、前記電池セルケースの表面からの距離が最も大きい集電体における前記未塗工部を第1未塗工部とし、前記第1未塗工部は前記電池セルケースの外部まで延びるは第1露出部を備える、電池セル。
<2>
前記電極体の電極面の形状が長方形であり、前記第1露出部は前記長方形の形状における長辺側に配置される、<1>に記載の電池セル。
<3>
前記電極体の電極面の形状が長方形であり、前記正極及び前記負極のうち前記長方形の形状における長辺の長さが大きい方の電極が前記第1露出部を有する、<1>又は<2>に記載の電池セル。
<4>
前記第1未塗工部を有する前記集電体よりも、前記電池セルケースの表面からの距離が小さい集電体における前記未塗工部を第2未塗工部とし、前記第2未塗工部は前記電池セルケースの外部まで延びるは第2露出部を備える、<1>~<3>のいずれか1項に記載の電池セル。
<5>
前記電池セルケースの内部に、前記第1未塗工部と前記第2未塗工部とが接合されている部位を備える、<4>に記載の電池セル。
<6>
前記第1未塗工部の板厚が前記第2未塗工部の板厚より大きい、<4>又は<5>に記載の電池セル。
<7>
<1>~<5>のいずれか1項のいずれか一項に記載の電池セルと、
冷却器及び電池モジュールケースの少なくとも一方と、を備えた電池モジュールであって、
前記第1露出部が前記冷却器及び前記電池モジュールケースの少なくとも一方と絶縁接合されている、電池モジュール。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電極体から発生した熱を効率的に放熱することができる電池セル、及び該電池セルを備えた電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る電池セルを例示する概略断面図である
図2】本開示の実施形態に係る電池セルにおける電極体を示す概略斜視図である
図3】本開示の実施形態に係る電池セルの別の態様を例示する概略断面図である
図4】車両の要部を示す概略平面図である。
図5】電池モジュールの概略斜視図である。
図6】電池モジュールの上蓋を取り除いた状態の平面図である。
図7】電池モジュールに収容された電池セルを厚み方向から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<電池セル>
本開示の実施形態に係る電池セルは、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在されるセパレータと、を有する積層構造がさらに複数積層された電極体、並びに電極体を内部に封入する電池セルケースを有する。正極と負極はそれぞれ、集電体と、活物質を含み集電体の表面に塗工された合材と、を有する。さらに、正極における集電体及び負極における集電体の少なくとも一方は、表面の周縁部に合材が塗工されていない未塗工部を有する。
そして、未塗工部を有する集電体のうち、電池セルケースの表面からの距離が最も大きい集電体における未塗工部を第1未塗工部とし、第1未塗工部は電池セルケースの外部まで延びる第1露出部を備える。なお、未塗工部を有する集電体のうち、電池セルケースの表面からの距離が最も大きい集電体とは、例えばスタックされた電極体においては、電極体の積層方向において電極体の中心に最も近い集電体を指す。
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る電池セルの一実施形態について、図面を用いて説明する。
以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係る電池セルを例示する概略断面図である。
図1に示す電池セル20は、正極4と、負極5と、正極4及び負極5の間に介在されるセパレータ6と、を有する。そして、正極4、負極5、及びセパレータ6の積層構造がさらに複数積層され、電極体8を構成している。正極4は正極集電体42と、活物質を含み正極集電体42の表面に塗工された正極合材44とを有し、負極5は負極集電体52と、活物質を含み負極集電体52の表面に塗工された負極合材54とを有する。なお、図1に示す電極体8では、正極4、セパレータ6、及び負極5の順に積層された構造の隣に、負極5、セパレータ6、及び正極4の順に積層された構造が積層され、つまり負極5同士が隣接しており、且つ隣接する負極5同士が負極集電体52を共有している。同様に、負極5、セパレータ6、及び正極4の順に積層された構造の隣には、正極4、セパレータ6、及び負極5の順に積層された構造が積層され、つまり正極4同士が隣接しており、且つ隣接する正極4同士が正極集電体42を共有している。したがって、図1に示す電極体8は、上から「正極集電体42、正極合材44、セパレータ6、負極合材54、負極集電体52、負極合材54、セパレータ6、正極合材44、正極集電体42、正極合材44、セパレータ6、負極合材54、負極集電体52、負極合材54・・・正極集電体42」の順番で積層されている。
【0013】
電池セル20は、電極体8を内部に封入する電池セルケース7を有する。電池セルケース7は、2枚のフィルムの端部同士を融着することで電極体8を内部に封入する収容部を形成している。
【0014】
正極4における正極集電体42は表面の周縁部に正極合材44が塗工されていない未塗工部を有し、同様に負極5における負極集電体52は表面の周縁部に負極合材54が塗工されていない未塗工部を有する。そして、未塗工部を有する集電体のうち、電池セルケース7の表面からの距離が最も大きい集電体に該当する負極集電体520における未塗工部(「第1未塗工部」と称す)52Bが、電池セルケース7の外部まで延びており、電池セルケース7から露出した第1露出部52Aを備える。つまり、負極集電体520における第1未塗工部52Bは、電池セルケース7の外部に配置された第1露出部52Aまで続いている。第1露出部52Aの先端は湾曲状に形成されている。
第1露出部52Aを備える負極集電体520は、電極体8の積層方向(図1における矢印X方向)において電極体8の中心に最も近い集電体である。
【0015】
本開示の実施形態に係る電池セルは、上記の構成を有することで、電極体から発生した熱を効率的に放熱することができる。
【0016】
電極体においては、充放電時や短絡時などに熱が発生する。電極体から発生した熱を放熱するため、従来では、例えば放熱部材を電池セルの外部に露出させることで、電極体から発生した熱を放熱する構造を採用したり、集電体を電池セルの外部まで延伸させることで電極体からの熱を放熱する経路とすることが行われていた。しかし、前者においては、電極体と放熱部材との間の接合状態により接合部位での熱伝導が律速過程となる虞があり、また後者においては、積層された構造の電極体において中央部からの放熱ルートに律速過程が生じる虞がある。そのため、電極体から発生した熱をより効率的に放熱することが求められている。
【0017】
これに対し、本開示の実施形態に係る電池セルは、電池セル内に収容される電極体において未塗工部を有する集電体を放熱部材として用いる構造とし、且つ未塗工部を有する集電体の中でも電池セルケースの表面から最も遠い集電体を放熱部材として用いている。そのため、発熱源である電極体において、特に熱がこもり易い中心部に配置された集電体が放熱部材として用いられる。これにより、熱伝導の律速過程が無くスムーズに放熱でき、電極体から発生した熱を効率的に放熱することができる。
また、放熱のための専用の別部材を用いておらず、部品点数の低減につながる。
【0018】
・第1露出部の位置
電極体の電極面の形状が長方形である場合、第1露出部は前記長方形の形状における長辺側に配置されることが好ましい。
つまり、図2に示すように、電極体8が略直方体の形状であり、電極面8Aの形状が長方形である場合、集電体520のおける第1露出部52Aは電極面8Aの長方形の形状における短辺側の面8Cではなく、長辺側の面8Bに配置されることが好ましい。なお、図2では、電極体8を構成する正極集電体、正極合材、負極集電体、負極合材、及びセパレータ等の記載は省略し、第1露出部52Aを有する集電体520を記載しているほかは、電極体を単に電極体8として描いている。
この構成を有することで、熱がこもり易い電極体の中心部と、第1露出部との距離を小さくでき、且つ放熱経路の断面積を大きくできるため、電極体から発生した熱をより効率的に放熱できる。
【0019】
・第1露出部を設ける電極
電極体の電極面の形状が長方形である場合、正極及び負極のうち前記長方形の形状における長辺の長さが大きい方の電極に、第1露出部を設けることが好ましい。これにより、放熱経路の断面積を大きくできるため、電極体から発生した熱をより効率的に放熱できる。なお、正極及び負極のうち前記長方形の形状における長辺の長さが大きい方の電極が、負極であることが好ましい。
【0020】
・第2露出部
図1では、集電体における未塗工部が電池セルケースの外部にまで延びた露出部を1つのみ有する態様を示したが、これに限定されるものではなく、露出部を2つ以上有していてもよい。
【0021】
ここで、露出部を2つ有する態様を、図3を用いて説明する
【0022】
図3は、本開示の実施形態に係る電池セルの別の態様を例示する概略断面図である。
図3に示す電池セル20は、未塗工部を有する集電体のうち、電池セルケース7の表面からの距離が最も大きい集電体に該当する負極集電体520における第1未塗工部52Bが、電池セルケース7の外部まで延びており、電池セルケース7から露出した第1露出部52Aを備える。また、第1露出部52Aを有する負極集電体520よりも、電池セルケース7の表面からの距離が小さい正極集電体420における未塗工部(「第2未塗工部」と称す)42Bが電池セルケース7の外部まで延びた第2露出部42Aを備える。つまり、負極集電体520における第1未塗工部52Bは電池セルケース7の外部に配置された第1露出部52Aまで続いており、正極集電体420における第2未塗工部42Bは電池セルケース7の外部に配置された第2露出部42Aまで続いている。第1露出部52A及び第2露出部42Aの先端は、いずれも湾曲状に形成されている。
第1露出部52Aを備える負極集電体520は、電極体8の積層方向において電極体8の中心に最も近い集電体であり、第2露出部42Aを備える正極集電体420は、電極体8の積層方向において電極体8の中心に対し、負極集電体520よりも遠い集電体である。
【0023】
この構成を有することで、放熱経路の断面積を大きくできるため、電極体から発生した熱をより効率的に放熱できる。
【0024】
なお、第2未塗工部は、電池セルケースの内部において第1未塗工部と接合されていることが好ましい。電池セルケースの内部に、第1未塗工部と第2未塗工部とが接合されている部位を備えることで、積層された電極体全体からの熱を効率的に放熱することができる。
【0025】
また、第1未塗工部の板厚(図2においては正極集電体420における未塗工部52Bの板厚)が、第2未塗工部の板厚(図2においては負極集電体520における未塗工部42Bの板厚)より大きいことが好ましい。なお、板厚とは平均板厚を指し、該当する箇所の中から任意に選択した10か所での板厚の算術平均値を意味する。
第1未塗工部の板厚の方が大きいことで、特に熱がこもり易い中心部からの放熱を優先的に行うことができる。
【0026】
図1に示す電池セル20では、負極集電体520における第1未塗工部52Bが、2枚のフィルムの端部同士を融着した融着部を通って外部に露出している。また、図3に示す電池セル20では、負極集電体520における第1未塗工部52B、及び正極集電体420における第2未塗工部42Bが、2枚のフィルムの端部同士を融着した融着部を通って外部に露出している。第1未塗工部52B及び第2未塗工部42Bにおける電池セルケース7の融着部を通る箇所は、融着性及び密閉性を高める観点から、表面が粗化処理及びカーボンコート処理の少なくとも一方の処理が施されていることが好ましい。
【0027】
なお、図1及び図3では、スタックされた電極体の態様を示したが、本開示の実施形態に係る電池セルはこの態様に限定されるものではない。例えば、巻回された電極体を内部に備える巻回電極体セルの構造を有していてもよい。
【0028】
次いで、本開示の実施形態に係る電池セルを有する、電池モジュール、電池パック、及び車両について、図を用いて説明する。
【0029】
(車両100の全体構成)
図4は、実施形態に係る電池パック10が適用された車両100の要部を示す概略平面図である。図4に示されるように、車両100は、床下に電池パック10が搭載された電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。なお、各図の矢印UP、矢印FR及び矢印LHはそれぞれ、車両上下方向の上側、車両前後方向の前側、及び車両幅方向の左側を示している。前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両幅方向の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0030】
本実施形態の車両100は一例として、電池パック10よりも車両前方側に、DC/DCコンバータ102、電動コンプレッサ104及びPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ106が配置されている。また、電池パック10よりも車両後方側には、モータ108、ギアボックス110、インバータ112及び充電器114が配置されている。
【0031】
電池パック10から出力された直流電流は、DC/DCコンバータ102によって電圧が調整された後、電動コンプレッサ104、PTCヒータ106、インバータ112等へ供給される。また、インバータ112を介してモータ108へ電力が供給されることで、後輪が回転して車両100を走行させる。
【0032】
車両100の後部における右側部には充電口116が設けられており、充電口116から図示しない外部の充電設備の充電プラグが接続されることで、車載充電器114を介して電池パック10へ電力を蓄えることができる。
【0033】
なお、車両100を構成する各部品の配置及び構造などは上述した構成に限定されない。例えば、エンジンを搭載したハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)又はプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug‐in Hybrid Electric Vehicle)に適用してもよい。また、本実施形態ではモータ108が車両後部に搭載された後輪駆動の車両としたが、これに限定されず、モータ108が車両前部に搭載された前輪駆動車としてもよく、モータ108が車両前後に一対搭載されてもよい。さらに、各車輪にインホイールモータを備えた車両でもよい。
【0034】
ここで、電池パック10は、複数の電池モジュール11を含んで構成されている。本実施形態では一例として、10個の電池モジュール11が設けられている。具体的には、車両100の右側に5個の電池モジュール11が車両前後方向に配列されており、車両100の左側に5個の電池モジュール11が車両前後方向に配列されている。また、それぞれの電池モジュール11は、電気的に接続されている。
【0035】
図5は、電池モジュール11の概略斜視図である。図5に示されるように、電池モジュール11は、車両幅方向を長手方向とする略直方体状に形成されている。また、電池モジュール11の外殻は、アルミニウム合金によって形成されている。例えば、アルミニウム合金の押出材の両端部にアルミダイカストをレーザ溶接などによって接合することで電池モジュール11の外殻が形成されている。
【0036】
電池モジュール11の車両幅方向両端部にはそれぞれ、一対の電圧端子12とコネクタ14とが設けられている。コネクタ14には、後述するフレキシブルプリント基板22が接続されている。また、電池モジュール11の車両幅方向両端部には、図示しないバスバーが溶接される。
【0037】
電池モジュール11の車両幅方向の長さMWは、例えば、350mm~600mmであり、車両前後方向の長さMLは、例えば、150mm~250mmであり、車両上下方向高さMHは、例えば、80mm~110mmである。
【0038】
図6は、電池モジュール11の上蓋を取り除いた状態の平面図である。図6に示されるように、電池モジュール11の内部には、複数の電池セル20が配列された状態で収容されている。本実施形態では一例として、24個の電池セル20が車両前後方向に配列されて互いに接着されている。
【0039】
電池セル20の上には、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)22が配置されている。フレキシブルプリント基板22は、車両幅方向を長手方向として帯状に形成されており、フレキシブルプリント基板22の両端部にはそれぞれ、サーミスタ24が設けられている。サーミスタ24は、電池セル20に接着されておらず、電池モジュール11の上蓋によって電池セル20側へ押圧される構成である。
【0040】
また、電池モジュール11の内部には、1つ又は複数の図示しない緩衝材が収容されている。例えば、緩衝材は、弾性変形可能な薄板状の部材であって、電池セル20の配列方向を厚み方向として隣り合う電池セル20の間に配置されている。本実施形態では一例として、電池モジュール11の長手方向両端部と、長手方向中央部分にそれぞれ緩衝材が配置されている。
【0041】
図7は、電池モジュール11に収容された電池セル20を厚み方向から見た概略図である。図7に示されるように、電池セル20は、略矩形板状に形成されており、内部に図示しない電極体が収容されている。電極体は、正極、負極及びセパレータを積層して構成されており、ラミネートフィルム28によって封止されている。
【0042】
本実施形態では一例として、エンボス加工されたシート状のラミネートフィルム28を折り畳んで貼り合わせることで電極体の収容部を形成している。なお、エンボス加工が1カ所であるシングルカップエンボス構造と、エンボス加工が2カ所であるダブルカップエンボスの両方の構造を採用し得るが、本実施形態では絞り深さ8mm~10mm程度のシングルカップエンボス構造である。
【0043】
電池セル20の長手方向両端部における上端は折り曲げられており、角が外形となっている。また、電池セル20の上端部は折り曲げられており、電池セル20の上端部には長手方向に沿って固定テープ30が巻き付けられている。
【0044】
ここで、電池セル20の長手方向両端部にはそれぞれ端子(タブ)26が設けられている。本実施形態では一例として、端子26が電池セル20の上下方向の中心よりも下方にオフセットされた位置に設けられている。端子26は、図示しないバスバーにレーザ溶接などによって接合される。
【0045】
電池セル20の車両幅方向の長さCW1は、例えば、530mm~600mmであり、電極体が収容されている領域の長さCW2は、例えば、500mm~520mmであり、電池セル20の高さCHは、例えば、80mm~110mmである。また、電池セル20の厚みは、7.0mm~9.0mmであり、端子26の高さTHは、40mm~50mmである。
【0046】
・電池モジュールにおけるモジュールケース
なお、電池モジュールはさらに電池モジュールケースに収容されていてもよい。この場合、電池セルにおける第1露出部が(好ましくは第1露出部及び第2露出部が、より好ましくは全ての露出部が)、電池モジュールケースと絶縁接合されていることが好ましい。露出部が電池モジュールケースと絶縁接合されていることで、電極体から発生した熱をより効率的に放熱できる。
【0047】
・電池モジュールにおける冷却器
電池モジュールは、さらに冷却器を有していてもよい。この場合、電池セルにおける第1露出部が(好ましくは第1露出部及び第2露出部が、より好ましくは全ての露出部が)、冷却器と絶縁接合されていることが好ましい。露出部が冷却器と絶縁接合されていることで、電極体から発生した熱をより効率的に放熱できる。
なお、絶縁接合の態様としては、例えばポッティング、及びアルミナによる接合などが挙げられる。
【符号の説明】
【0048】
4 正極、42、420 正極集電体、42A 第2露出部、44 正極合材、5 負極、52、520 負極集電体、52A 第1露出部、54 負極合材、6 セパレータ、7 電池セルケース、8 電極体、10 電池パック、11 電池モジュール、12 電圧端子、14 コネクタ、20 電池セル、22 フレキシブルプリント基板、24 サーミスタ、26 端子、28 ラミネートフィルム、30 固定テープ、100 車両、102 コンバータ、104 電動コンプレッサ、106 ヒータ、108 モータ、110 ギアボックス、112 インバータ、114 車載充電器、114 充電器、116 充電口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7