(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001453
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】カチオン性ポリマー及び塩基性アミノ酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/84 20060101AFI20241225BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20241225BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A61K8/84
A61K8/36
A61K8/44
A61K8/86
A61K8/88
A61K8/64
A61K8/73
A61K8/65
A61Q19/00
A61K8/41
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101050
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 侑市
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC231
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC471
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD071
4C083AD131
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD411
4C083AD431
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB34
4C083CC02
4C083CC11
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】臭いのない、安定性の組成物であって、少なくとも1種の油及び水を含み、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる、組成物を提供する。
【解決手段】(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、(a-3)水、(b-1)少なくとも1種の油、及び(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸を含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)水、
(b-1)少なくとも1種の油、及び
(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物。
【請求項2】
前記(a-1)カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a-1)カチオン性ポリマーが、20,000より大きい分子量(Da)を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記(a-1)カチオン性ポリマーの量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(a-2)一価の非ポリマー酸が、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中の前記(a-3)水の量が、前記組成物の総質量に対して、40質量%~90質量%、好ましくは45質量%~85質量%、より好ましくは50質量%~80質量%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記(b-1)油が、植物油及び合成油、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の前記(b-1)油の量が、前記組成物の総質量に対して、1質量%~50質量%、好ましくは10質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記(b-2)塩基性アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、アルギニン、及びそれらの塩からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記(b-2)塩基性アミノ酸の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記(a-1)カチオン性ポリマー及び前記(b-2)塩基性アミノ酸が、少なくとも1種の錯体を形成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の界面活性剤を、前記組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の量で含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン物質に適用する工程と、
前記組成物を乾燥させて、前記ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む方法。
【請求項15】
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)水、及び
(b-1)少なくとも1種の油
を含む組成物を安定化し、且つ、脱臭するための、該組成物中の、(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の塩基性アミノ酸を含む組成物、並びに組成物を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に適合性の化粧料の配合は、環境問題を考慮して設計及び開発されたものであり、世界的な課題を満たすための主要な目標になっている。
【0003】
したがって、これらの環境問題に対処するための、より持続可能な組成物、調製方法及び成分を提案することが必須である。
【0004】
この文脈において、特に再生可能な原料及び/又は良好な自然指数を有する材料及び/又は天然起源の材料、より具体的には植物起源の材料の使用を促進し、一方で石油化学起源の化合物の使用を減少することによって、より良好なカーボンフットプリントを有する新規の化粧用組成物を開発することが重要である。
【0005】
アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーで形成されているポリイオンコンプレックスは、既に公知である。
【0006】
例えば、WO2021/125069は、美容処置に有用であり、少なくとも1種のカチオン性ポリマー、少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸を含む、少なくとも1種のポリイオンコンプレックス粒子を含む、組成物を開示している。WO2021/125069はまた、ここで開示される組成物が、油を含んでもよく、エマルションの形態であってもよいことも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2021/125069
【特許文献2】欧州特許出願第0080976号
【特許文献3】仏国特許第2077143号
【特許文献4】仏国特許第2393573号
【特許文献5】仏国特許第1492597号
【特許文献6】米国特許第4,131,576号
【特許文献7】米国特許第3,589,578号
【特許文献8】米国特許第4,031,307号
【特許文献9】仏国特許第2162025号
【特許文献10】仏国特許第2280361号
【特許文献11】仏国特許第2252840号
【特許文献12】仏国特許第2368508号
【特許文献13】仏国特許第1,583,363号
【特許文献14】米国特許第3,227,615号
【特許文献15】米国特許第2,961,347号
【特許文献16】仏国特許第2080759号
【特許文献17】仏国特許第2320330号
【特許文献18】仏国特許第2270846号
【特許文献19】仏国特許第2316271号
【特許文献20】仏国特許第2336434号
【特許文献21】仏国特許第2413907号
【特許文献22】米国特許第2,273,780号
【特許文献23】米国特許第2,375,853号
【特許文献24】米国特許第2,388,614号
【特許文献25】米国特許第2,454,547号
【特許文献26】米国特許第3,206,462号
【特許文献27】米国特許第2,261,002号
【特許文献28】米国特許第2,271,378号
【特許文献29】米国特許第3,874,870号
【特許文献30】米国特許第4,001,432号
【特許文献31】米国特許第3,929,990号
【特許文献32】米国特許第3,966,904号
【特許文献33】米国特許第4,005,193号
【特許文献34】米国特許第4,025,617号
【特許文献35】米国特許第4,025,627号
【特許文献36】米国特許第4,025,653号
【特許文献37】米国特許第4,026,945号
【特許文献38】米国特許第4,027,020号
【特許文献39】欧州特許出願第0122324号
【特許文献40】WO03/068824
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Press
【非特許文献2】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
組成物が油及び水を含む場合、油及び水の不相溶性に起因して組成物が不安定性になることがあり、油の酸敗臭により臭いを生じうる恐れがある。
【0010】
本発明の第1の目的は、臭いのない、安定性の組成物であって、少なくとも1種の油及び水を含む組成物を提供することである。
【0011】
加えて、本発明の第2の目的は、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記の目的は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)水、
(b-1)少なくとも1種の油、及び
(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物によって達成することができる。
【0013】
(a-1)カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されうる。
【0014】
(a-1)カチオン性ポリマーは、20,000より大きい分子量(Da)を有してもよい。
【0015】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0016】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価のカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸であってもよい。
【0017】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0018】
本発明の組成物中の(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%~90質量%、好ましくは45質量%~85質量%、より好ましくは50質量%~80質量%であってもよい。
【0019】
(b-1)油は、植物油及び合成油、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0020】
本発明の組成物中の(b-1)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~50質量%、好ましくは10質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%であってもよい。
【0021】
(b-2)塩基性アミノ酸は、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、及びそれらの塩からなる群から選択することができる。
【0022】
本発明の組成物中の(b-2)塩基性アミノ酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0023】
(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-2)塩基性アミノ酸は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。
【0024】
本発明の組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の量で含んでいてもよい。
【0025】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明の組成物をケラチン物質に適用する工程と、
組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、美容方法にも関する。
【0026】
本発明はまた、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)水、及び
(b-1)少なくとも1種の油
を含む組成物を安定化し、且つ、脱臭するための、該組成物中の、(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
鋭意検討の結果、本発明者らは、少なくとも1種の油及び水を含み、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる、臭いのない安定性の組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0028】
本発明による組成物は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)水、
(b-1)少なくとも1種の油、及び
(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸
を含む。
【0029】
本発明の組成物は、安定性であり、臭いがない。
【0030】
本発明の組成物は安定性であり、したがって、長期間にわたって相分離を生じず、均一な外観を維持する。したがって、本発明の組成物は、長期間にわたり、保存することができる。
【0031】
本発明の組成物は、酸敗臭を生じうる少なくとも1種の油を含むが、臭いがない。したがって、本発明の組成物は、美容用途に有用である。
【0032】
(a-1)カチオン性ポリマーが天然資源から得られる場合、(a-1)カチオン性ポリマーは、環境に適合性の成分とすることができる。例えば、(a-1)カチオン性ポリマーは、環境に適合性のキトサンから選択されうる。したがって、本発明の組成物は、環境に適合性の成分を含むことができる。
【0033】
加えて、成分(a-2)、(b-1)及び(b-2)は、植物等の再生可能な材料及び/又は生分解性材料を起源とすることができる。したがって、本発明の組成物は、環境に適合性とすることができる。
【0034】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0035】
[組成物]
本発明の組成物は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)水、
(b-1)少なくとも1種の油、及び
(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸
を含む。
【0036】
本発明の組成物において、少なくとも、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-2)塩基性アミノ酸は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。
【0037】
(a-1)カチオン性ポリマーのアミノ(-NH2)又はアンモニウム(-NH3
+)基等の正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分は、(b-2)塩基性アミノ酸のカルボン酸(-COOH)又はカルボキシレート(-COO-)基とイオン相互作用して錯体を形成することができる。錯体は、(b-2)塩基性アミノ酸の塩基性部分に由来する少なくとも1つの疎水性部分を含む。したがって、(a-1)カチオン性ポリマーは、錯体を形成することにより、(b-2)塩基性アミノ酸によって疎水化されうる。
【0038】
(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-2)塩基性アミノ酸の錯体は、(b-1)油を含む脂肪相と(a-3)水を含む水性相との間の界面に存在することができる。脂肪相は、上記の錯体によって安定化されうる。そのため、脂肪相の凝集が防止されうる。この安定化は、任意の従来の界面活性剤を使用せずにもたらすことができる。一実施形態では、本発明の組成物は、いわゆるピッカリングエマルションにも類似しうるO/Wエマルションの形態であってもよい。
【0039】
本発明によれば、(b-1)油は、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-2)塩基性アミノ酸の複数の錯体に囲まれていてもよい。言い換えると、(b-1)油は、上記の錯体によって被覆されていてもよい。錯体は、粒子の形態であってもよい。そのため、(b-1)油は、上記の錯体を含む粒子によって被覆されていてもよい。
【0040】
(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-2)塩基性アミノ酸の上記の錯体に囲まれた(b-1)油は、皮膚等のケラチン物質と直接接触することができない。したがって、(b-1)油がべたつく又は油っぽい使用感を有する場合であっても、本発明の組成物は、べたつく又は油っぽい使用感をもたらさないと思われる。
【0041】
(カチオン性ポリマー)
本発明の組成物は、(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。単一のタイプのカチオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0042】
カチオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。(a-1)カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05meq/g~15meq/g、より好ましくは0.1meq/g~10meq/gでもよい。
【0043】
(a-1)カチオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更により好ましくは4,000以上であることが好ましい場合がある。
【0044】
(a-1)カチオン性ポリマーは、20,000より大きい分子量を有することが特に好ましい場合がある。
【0045】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。
【0046】
(a-1)カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。用語(第一級)「アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0047】
(a-1)カチオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるもの、例えば3種類のモノマーから結果として得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0048】
(a-1)カチオン性ポリマーは、天然の及び合成のカチオン性ポリマー、好ましくは天然のカチオン性ポリマーから選択することができる。カチオン性ポリマーの非限定例は、以下の通りである。
【0049】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル及びアミドに由来し、以下の式の単位から選択される少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0050】
【0051】
(式中:
R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基及びエチル基から選択され、
R3は、同一であっても異なっていてもよく、水素及びCH3から選択され、
記号Aは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基、及び1~4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基から選択され、
R4、R5及びR6は、同一であっても異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を含むアルキル基、及びベンジル基、及び少なくとも1つの実施形態では、1~6個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Xは、無機又は有機酸に由来するアニオン、例えばメト硫酸アニオン及びハロゲン化物イオン、例えば、塩化物イオン及び臭化物イオンである)。
【0052】
ファミリー(1)のコポリマーはまた、コモノマーに由来する少なくとも1つの単位も含んでよく、これは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素原子が(C1~C4)低級アルキル基で置換されているアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル又はメタクリル酸及びそれらのエステルに由来する基、ビニルラクタム、例えばビニルピロリドン及びビニルカプロラクタム、並びにビニルエステルから選択されうる。
【0053】
ファミリー(1)のコポリマーの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
アクリルアミドと、硫酸ジメチル又はハロゲン化ジメチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとのコポリマー、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー、例えば欧州特許出願第0080976号に記載されているもの、
アクリルアミドとメト硫酸メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムとのコポリマー、四級化又は非四級化ビニルピロリドン/アクリル酸又はメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルコポリマー、例えば仏国特許第2077143号及び同第2393573号に記載されているもの、メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンターポリマー、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルジメチルアミンコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、並びに架橋メタクリロイルオキシ(C1~C4)アルキルトリ(C1~C4)アルキルアンモニウム塩ポリマー、例えば塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルの単独重合によって、又はアクリルアミドと、塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合によって、その単独重合又は共重合に続いて、オレフィン性不飽和を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミドで架橋することによって、得られるポリマー。
【0054】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUnion Carbide Corporation社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0055】
カチオン性セルロースポリマーが、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0056】
第四級アンモニウム基は、以下の化学式(I)によって表されうる第四級アンモニウム基含有基中に存在しうる:
【0057】
【0058】
(式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~3アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~24アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~4アルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基を示す)。
【0059】
上記の化学式(I)中の最左のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0060】
第四級アンモニウム基含有基が、-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0061】
(3)第四級アンモニウムの水溶性モノマーでグラフト化されたセルロースコポリマー及びセルロース誘導体等のカチオン性セルロースポリマー、例えば、米国特許第4,131,576号に記載のもの、例えば、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウム塩から選択される塩でグラフト化された、ヒドロキシアルキルセルロース、例としては、ヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-、及びヒドロキシプロピルセルロース等。
【0062】
これらのポリマーに相当する市販製品としては、例えば、National Starch社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0063】
(4)米国特許第3,589,578号及び同第4,031,307号に記載されている、非セルロース系カチオン性多糖、例えばカチオン性トリアルキルアンモニウム基を含むグアーガム、カチオン性ヒアルロン酸及びデキストランヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド。塩、例えば2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムの塩化物で修飾されたグアーガム(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)もまた、使用することができる。
【0064】
このような製品は、例えば、MEYHALL社により商品名JAGUAR(登録商標)C13 S、JAGUAR(登録商標)C15、JAGUAR(登録商標)C17及びJAGUAR(登録商標)C162で販売されている。
【0065】
(5)ピペラジニル単位と、酸素、硫黄、窒素、芳香族環及び複素環式環から選択される少なくとも1つの要素により任意選択で割り込まれた直鎖又は分枝鎖を含む二価のアルキレン又はヒドロキシアルキレン基とを含むポリマー、並びにまたこれらのポリマーの酸化及び/又は四級化生成物。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2162025号及び同第2280361号に記載されている。
【0066】
(6)例えば酸性化合物をポリアミンと重縮合させることによって調製される水溶性ポリアミノアミドであり、これらのポリアミノアミドは、エピハロヒドリン;ジエポキシド;二無水物;不飽和二無水物;ビス不飽和誘導体;ビスハロヒドリン;ビスアゼチジニウム;ビスハロアシルジアミン;ビスアルキルハライド;ビスハロヒドリン、ビスアゼチジニウム、ビスハロアシルジアミン、ビスアルキルハライド、エピハロヒドリン、ジエポキシド及びビス不飽和誘導体から選ばれる要素と反応性である二官能性化合物の反応から得られるオリゴマーから選ばれる要素で架橋されている場合があり;その架橋剤は、ポリアミノアミドのアミン基1つ当たり0.025~0.35molの範囲の量で使用され;これらのポリアミノアミドは、任意選択でアルキル化されているか、又はこれらが少なくとも1つの第三級アミン官能基を含む場合、それらは、四級化されていてもよい。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2252840号及び同第2368508号に記載されている。
【0067】
(7)ポリアルキレンポリアミンをポリカルボン酸と縮合させ、続いて二官能性作用剤でアルキル化することから得られるポリアミノアミド誘導体、例えば、メチル、エチル及びプロピルの各基等の、アルキル基が1~4個の炭素原子を含み、エチレン基等の、アルキレン基が1~4個の炭素原子を含む、アジピン酸/ジアルキルアミノヒドロキシアルキルジアルキレントリアミンポリマー。このようなポリマーは、例えば仏国特許第1,583,363号に記載されている。少なくとも1つの実施形態では、これらの誘導体は、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンポリマーから選択されうる。
【0068】
(8)2つの第一級アミン基及び少なくとも1つの第二級アミン基を含むポリアルキレンポリアミンと、ジグリコール酸、及び3~8個の炭素原子を含む飽和脂肪族ジカルボン酸から選択されるジカルボン酸との反応によって得られるポリマー。ポリアルキレンポリアミンのジカルボン酸に対するモル比は、0.8:1~1.4:1の範囲であってよく、それから得られるポリアミノアミドを、エピクロロヒドリンと、エピクロロヒドリンの、ポリアミノアミドの第二級アミン基に対するモル比0.5:1~1.8:1の範囲で反応させる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第3,227,615号及び同第2,961,347号に記載されている。
【0069】
(9)アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリル-アンモニウムのシクロポリマー、例えば、鎖の主要構成要素として、式(Ia)及び(Ib)の単位から選択される少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0070】
【0071】
(式中:
k及びtは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1に等しく、和k+tは、1に等しく、
R12は、水素及びメチル基から選択され、
R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、アルキル基が例えば1~5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基、及び低級(C1~C4)アミドアルキル基から選択され、又はR10及びR11は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジニル及びモルホリニルを形成してもよく、
Y'は、アニオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである)。これらのポリマーは、例えば仏国特許第2080759号及びその追加特許第2190406号に記載されている。
【0072】
一実施形態では、R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0073】
このようなポリマーの例としては、これらに限定されないが、(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えばCALGON社により名称「MERQUAT(登録商標)100」で販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー(及び低質量平均分子量のそのホモログ)、並びに名称「MERQUAT(登録商標)550」で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーが挙げられる。
【0074】
式(II)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む第四級ジアンモニウムポリマー:
【0075】
【0076】
[式中:
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族基、並びに低級ヒドロキシアルキル脂肪族基から選択され、或いは、R13、R14、R15及びR16は、これらが結合している窒素原子と一緒になって又は別々に、窒素以外の第2のヘテロ原子を任意選択で含む複素環を形成してもよく、或いは、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、ニトリル基、エステル基、アシル基、アミド基、-CO-O-R17-E基及び-CO-NH-R17-E基(式中、R17は、アルキレン基であり、Eは、第四級アンモニウム基である)から選択される少なくとも1つの基で置換されている直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基から選択され、
A1及びB1は、同一であっても異なっていてもよく、2~20個の炭素原子を含むポリメチレン基から選択され、これは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であってよく、これは、芳香環、酸素、硫黄、スルホキシド基、スルホン基、ジスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシル基、第四級アンモニウム基、ウレイド基、アミド基及びエステル基から選択される少なくとも1つの要素を、主鎖中に、連結されて又は挿入されて含んでよく、
X-は、無機酸又は有機酸に由来するアニオンであり、
A1、R13及びR15は、これらが結合している2個の窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成してもよく、
A1が、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和アルキレン又はヒドロキシアルキレン基から選択される場合、B1は、以下:
-(CH2)n-CO-E'-OC-(CH2)n-
{式中、E'は、以下:
a)式-O-Z-O-のグリコール残基[式中、Zは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基、及び以下の式の基:
-(CH2-CH2-O)x-CH2-CH2-
-[CH2-CH(CH3)-O]y-CH2-CH(CH3)-
(式中、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、定義された独自の重合度を表す1~4の範囲の整数、及び平均重合度を表す1~4の範囲の数から選択される)
から選択される]、
b)ビス第二級ジアミン残基、例えばピペラジン誘導体、
c)式-NH-Y-NH-(式中、Yは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系の基及び二価基-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-から選択される)のビス第一級ジアミン残基、並びに
d)式-NH-CO-NH-のウレイレン基
から選択される}
から選択されうる)。
【0077】
少なくとも1つの実施形態では、X-は、アニオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンである。
【0078】
このタイプのポリマーは、例えば、仏国特許第2320330号、同第2270846号、同第2316271号、同第2336434号及び同第2413907号、並びに米国特許第2,273,780号、同第2,375,853号、同第2,388,614号、同第2,454,547号、同第3,206,462号、同第2,261,002号、同第2,271,378号、同第3,874,870号、同第4,001,432号、同第3,929,990号、同第3,966,904号、同第4,005,193号、同第4,025,617号、同第4,025,627号、同第4,025,653号、同第4,026,945号、及び同第4,027,020号に記載されている。
【0079】
このようなポリマーの非限定的な例としては、式(III)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むものが挙げられる:
【0080】
【0081】
(式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル及びヒドロキシアルキル基から選択され、n及びpは、同一であっても異なっていてもよく、2~20の範囲の整数であり、X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンである)。
【0082】
(11)式(IV)の単位を含むポリ第四級アンモニウムポリマー:
【0083】
【0084】
[式中:
R18、R19、R20及びR21は、同一であっても異なっていてもよく、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、β-ヒドロキシエチル基、β-ヒドロキシプロピル基、-CH2CH2(OCH2CH2)pOH基(式中、pは、0~6の範囲の整数から選択される)から選択され、但し、R18、R19、R20及びR21が同時に水素であることはなく、
r及びsは、同一であっても異なっていてもよく、1~6の範囲の整数から選択され、
qは、0~34の範囲の整数から選択され、
X-は、アニオン、例えばハロゲン化物イオンであり、
Aは、ジハライド及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-基から選択される]。
【0085】
このような化合物は、例えば欧州特許出願第0122324号に記載されている。
【0086】
(12)ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマー。
好適なカチオン性ポリマーの他の例には、カチオン性タンパク質及びカチオン性タンパク質加水分解物、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、ビニルピリジン単位及びビニルピリジニウム単位から選択される単位を含むポリマー、ポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物、第四級ポリウレイレン、並びにキチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、(a-1)カチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUNION CARBIDE CORPORATION社により名称「JR 400」で販売されている製品、カチオン性シクロポリマー、例えばCALGON社により名称MERQUAT(登録商標)100、MERQUAT(登録商標)550及びMERQUAT(登録商標)Sで販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩で修飾されたグアーガム、並びにビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマーから選択される。
【0088】
(13)ポリアミン
(a-1)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基を有する、ホモポリマー又はコポリマーでもよい(コ)ポリアミンを使用することも可能である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、(コ)ポリアミンのポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。
【0089】
(コ)ポリアミンの例として、キトサン、(コ)ポリアリルアミン、(コ)ポリビニルアミン、(コ)ポリアニリン、(コ)ポリビニルイミダゾール、(コ)ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、(コ)ポリビニルピリジン、例えば(コ)ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、(コ)ポリイミン、例えば(コ)ポリエチレンイミン、(コ)ポリピリジン、例えば(コ)ポリ(第四級ピリジン)、(コ)ポリビグアニド、例えば(コ)ポリアミノプロピルビグアニド、(コ)ポリリジン、(コ)ポリオルニチン、(コ)ポリアルギニン、(コ)ポリヒスチジン、アミノデキストラン、アミノセルロース、アミノ(コ)ポリビニルアセタール、及びこれらの塩を挙げることができる。
【0090】
(コ)ポリアミンとしては、(コ)ポリリジンを使用することが好ましい場合がある。ポリリジンは、周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成されうるL-リジンの天然ホモポリマーであることができる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンであることができる。ポリリジンは、極性溶媒、例えば水、プロピレングリコール及びグリセロールに可溶性の高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の多様な形態で市販されている。ポリ-L-リジンが好ましい。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態にあってもよい。
【0091】
(14)カチオン性ポリアミノ酸
(a-1)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基及びカルボキシル基を有する、カチオン性ホモポリマー又はコポリマーでありうるカチオン性ポリアミノ酸を使用することが可能でありうる。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、カチオン性ポリアミノ酸のポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。カルボキシル基は、カチオン性ポリアミノ酸の、存在する場合はペンダント基中に存在してもよい。
【0092】
カチオン性ポリアミノ酸の例として、カチオン化コラーゲン、カチオン化ゼラチン、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コンキオリンタンパク質、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ダイズタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質等を挙げることができる。
【0093】
以下の説明は、カチオン性ポリマーの好ましい実施形態に関する。
【0094】
(a-1)カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0095】
(a-1)カチオン性ポリマーは、キトサンから選択されることがより好ましい。
【0096】
キトサンは、20,000より大きい、好ましくは50,000より大きい、より好ましくは80,000より大きい分子量(Da)を有することが好ましい。換言すれば、(a-1)カチオン性ポリマーは、高分子量キトサンである。
【0097】
キトサンの分子量(Da)は、1,000,000未満、好ましくは500,000未満、より好ましくは300,000未満であってもよい。
【0098】
キトサンの分子量(Da)は、20,000より大きく1,000,000未満、好ましくは50,000より大きく500,000未満、より好ましくは80,000より大きく300,000未満であってもよい。
【0099】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。分子量は、例えば、ASTM D5296-19に準拠して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定又は決定することができる。
【0100】
キトサンは、自然界で非常に希少である。キトサンは、シロアリの女王等の特定の昆虫の外骨格中及び特定の部類の菌類である接合菌綱の細胞壁中でのみ報告されている。
【0101】
キトサンは、キチンの脱アセチル化によって得ることができる。キチンは、β型結合(1,4)によって一緒に連結された幾つかのN-アセチル-D-グルコサミン単位から構成された多糖である。
【0102】
キトサンの理想的な化学構造は、グリコシド結合(1→4)によって結合されたβ-D-グルコサミンモノマーの配列である。
【0103】
本発明における「キトサン」は、構成単位N-アセチル-D-グルコサミン及びD-グルコサミンから形成される任意のコポリマーであって、そのアセチル化度が90%未満、好ましくは80%未満、好ましくは70%未満、好ましくは60%未満、好ましくは50%未満である、任意のコポリマーを意味する。キトサンは、β型結合(1,4)により一緒に連結されているグルコサミン糖単位(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン単位(アセチル化単位)からなり、ポリ(N-アセチル-D-グルコサミン)-ポリ(D-グルコサミン)タイプのポリマーである。
【0104】
より好ましくは、キトサンのアセチル化度は、40%以下、好ましくは35%以下、好ましくは25%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下である。
【0105】
アセチル化度は、全単位の数に対するアセチル化単位の百分率であり、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)又は強塩基による滴定法によって決定することができる。
【0106】
本発明におけるキトサンは、好ましくは、菌類起源から調製された多糖である。特に、キトサンは、安全で豊富な食料又はバイオテクノロジーによる菌類起源[マッシュルーム(Agaricus bisporus)若しくはクロコウジカビ(Aspergillus niger)等]から抽出及び精製される。
【0107】
本発明におけるキトサンは、好ましくは、子嚢菌綱(Ascomycete)タイプの菌類、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)及び/又は担子菌類(Basidiomycete fungus)、具体的にはシイタケ(Lentinula edodes)及び/又はマッシュルーム(Agaricus bisporus)の菌糸体に由来する。好ましくは、菌類はクロコウジカビ(Aspergillus niger)である。
【0108】
キトサンは、遺伝子組み換え生物(GMO:Genetically Modified Organisms)起源のものであってもよいが、好ましくは非GMO起源のものである。
【0109】
本発明におけるキトサンは、天然であり、すなわち、修飾されていない。特に、本発明におけるキトサンは、一切の化学修飾を含まない。
【0110】
キトサンの一調製方法は、WO03/068824に記載のものである。
【0111】
好ましくは、本発明において使用されるキトサンは、粉末の形態である。本発明において使用されるキトサンは、Kitozyme社により名称Kiosmetine又はKionutrime、例えばKiosmetine-CSH及びKiosmetine Pで市販されている。
【0112】
(a-1)カチオン性ポリマーは、キトサンから選択されることが好ましく、より好ましくは分子量(Da)が20,000より大きいキトサンから選択される。
【0113】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0114】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0115】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0116】
(一価の非ポリマー酸又はその塩)
本発明の組成物は、(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩を含む。単一のタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩の組合せを使用することができる。
【0117】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリアクリル酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0118】
本明細書における用語「塩」は、一価の非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、一価の非ポリマー酸と、塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0119】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の分子量が、1000未満、好ましくは500以下、より好ましくは200以下であることが好ましい。
【0120】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、(a-3)水によって形成される水性相中に含まれうる。(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、(a-3)水に対する(a-1)カチオン性ポリマーの溶解を促進することができる。
【0121】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる単一の酸基を有する。
【0122】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、一価の有機酸又は無機酸及びそれらの塩から選択されうる。
【0123】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、一価の有機酸、より好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸であることが好ましい。
【0124】
一価の非ポリマーカルボン酸は、ヒドロキシ酸、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸及びベータ-ヒドロキシ酸から選択されうる。アルファ-ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸及びグリコール酸を挙げることができる。ベータ-ヒドロキシ酸としては、例えば、サリチル酸を挙げることができる。
【0125】
一価の非ポリマー酸は、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸であってもよい。
【0126】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0127】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0128】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0129】
(水)
本発明の組成物は、(a-3)水を含む。
【0130】
(a-3)水は、本発明の組成物の連続相でありうる水性相を形成することができる。
【0131】
(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上であってもよい。
【0132】
(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってもよい。
【0133】
(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%~90質量%、好ましくは45質量%~85質量%、より好ましくは50質量%~80質量%であってもよい。
【0134】
(油)
本発明の組成物は、(b-1)少なくとも1種の油を含む。単一のタイプの油を使用してもよいが、2つ以上の異なるタイプの油を組み合わせて使用することもできる。
【0135】
本明細書では、「油」は、大気圧下(760mmHg)、室温(25℃)にて、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は物質を意味する。油として、化粧品に一般に使用されるものを、単独で又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0136】
油は、炭化水素油若しくはシリコーン油等の非極性油、植物油若しくは動物油、及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油、又はこれらの混合物であってもよい。
【0137】
油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪族アルコールからなる群から選択することができる。
【0138】
植物油の例として、例えば、アプリコット油、亜麻仁油、カメリア油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0139】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0140】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0141】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、エステルの炭素原子の総数は10個以上である。
【0142】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合、本発明のエステルが誘導されるアルコール及び酸のうちの少なくとも1種は、分枝状である。
【0143】
一酸と一価アルコールとのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル、及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0144】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、及びモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルもまた、使用することができる。
【0145】
特に以下:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール及びジイソノナン酸ジエチレングリコールを挙げることができる。
【0146】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の、糖エステル及びジエステルを使用することができる。「糖」という用語は、幾つかのアルコール官能基を含有し、アルデヒド又はケトン官能基を有し又は有せず、少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素を有する炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖とすることができる。
【0147】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はショ糖)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特に、アルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0148】
脂肪酸の糖エステルは、特に、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状の、飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステル混合物を含む群から選択することができる。これらの化合物は、不飽和である場合、1から3個の共役又は非共役の炭素間二重結合を有することができる。
【0149】
この変形形態のエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択することもできる。
【0150】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ油脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えば、特に、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルでもよい。
【0151】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、特に、スクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0152】
挙げることができる例は、Amerchol社により名称Glucate(登録商標) DOで販売されている製品であり、これはジオレイン酸メチルグルコースである。
【0153】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸2-エチルヘキシル/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0154】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0155】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及びメチルハイドロジェンポリシロキサン等、環状オルガノポリシロキサン、例えば、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0156】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、とりわけ液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選択される。
【0157】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてよい。本発明に従って使用されうる有機変性シリコーンは、上に定義したシリコーン油であり、構造中に、炭化水素系の基を介して結合されている1つ又は複数の有機官能基を含む。
【0158】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Pressに、より詳細に定義されている。これらは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0159】
それらが揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、沸点が60℃から260℃の間であるものから選ばれ、より一層詳細には以下から選ばれる:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7207で、又はRhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7158で、Rhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。次式のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサンのようなタイプのシクロコポリマー、例えば、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109を挙げることもできる。
【0160】
【0161】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物も挙げることができる。
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃にて5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。このカテゴリに属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445附属書Cに従って、25℃にて測定される。
【0162】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンも使用されうる。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細にはポリジアルキルシロキサンから選択され、その中でも、トリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを主として挙げることができる。
【0163】
これらのポリジアルキルシロキサンの中でも、以下の市販製品を非限定的な手法で挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ又はMirasil(登録商標)油、例としては70 047 V 500 000油、
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度が60,000mm2/sであるDC200、並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油、及びGeneral Electric社製のSFシリーズの特定の油(SF 96、SF 18)。
【0164】
ジメチコノール(CTFA)の名称で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0165】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0166】
フェニルシリコーン油は、次式のフェニルシリコーンから選択されうる:
【0167】
【0168】
(式中、
R1~R10は、互いに独立して、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状C1~C30炭化水素系の基、好ましくはC1~C12炭化水素系の基、より好ましくはC1~C6炭化水素系の基、具体的にはメチル、エチル、プロピル又はブチル基であり、
m、n、p及びqは、互いに独立して、端点を含む0~900、好ましくは端点を含む0~500、より好ましくは端点を含む0~100の整数であり、
但し、和n+m+qは0以外である)。
【0169】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品がある:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標)70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製の油Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20、
- General Electric社製のSFシリーズの特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0170】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上記の式中、R1~R10はメチルであり、p、q及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0171】
有機変性液状シリコーンは、特にポリエチレンオキシ基及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有しうる。したがって、信越化学工業株式会社により提案されているシリコーンKF-6017、並びにUnion Carbide社製の油であるSilwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0172】
炭化水素油は、以下から選択されうる:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン、及びイソデカンが含まれる。
- 16個より多くの炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、流動パラフィン、流動石油ゼリー、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、及びスクアラン。
【0173】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0174】
脂肪族アルコールにおける「脂肪族」という用語は、比較的多数の炭素原子を含むことを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても、不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0175】
脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状基から選択される)を有しうる。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択されうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0176】
脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0177】
脂肪族アルコールは、飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。
【0178】
したがって、脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和C6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択されうる。
【0179】
用語「飽和脂肪族アルコール」は、本明細書では、長い脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪族アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の、飽和のC6~C30脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪族アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪族アルコールが、好ましく使用されうる。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪族アルコールを、より好ましくは使用することができる。分枝状C16~C20脂肪族アルコールを、更により好ましくは使用することができる。
【0180】
飽和脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪族アルコールとして使用することができる。
【0181】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明の組成物において使用される脂肪族アルコールは、好ましくは、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びそれらの混合物から選択される。
【0182】
(b-1)油は、植物油、合成エステル油、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。合成エステル油は、人工トリグリセリドから選択することができる。
【0183】
本発明の組成物中の(b-1)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であってもよい。
【0184】
本発明の組成物中の(b-1)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であってもよい。
【0185】
本発明の組成物中の(b-1)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~50質量%、好ましくは10質量%~45質量%、より好ましくは20質量%~40質量%であってもよい。
【0186】
(塩基性アミノ酸)
本発明の組成物は、(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸を含む。単一のタイプの塩基性アミノ酸を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの塩基性アミノ酸を組み合わせて使用してもよい。
【0187】
(b-2)塩基性アミノ酸は、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩とは異なる。
【0188】
用語「アミノ酸」は、本明細書では、同一の又は異なるアミノ酸の重縮合によって得られない化合物を意味する。加えて、用語「アミノ酸」は、本明細書では、アミノ酸そのものだけでなく、その塩の形態にあるアミノ酸も包含する。
【0189】
用語「塩」は、本明細書では、アミノ酸に、好適な酸及び/又は塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法によるアミノ酸と酸及び/又は塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0190】
(b-2)塩基性アミノ酸は、2つ以上のアミノ基等のアミン官能基及び1つのカルボキシル基等の酸官能基、好ましくは2つのアミノ基(-NH2)等のアミン官能基及び1つのカルボキシル基等の酸官能基を有してもよい。
【0191】
本発明において使用することができる(b-2)塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン、及びそれらの混合物を挙げることができる。これらの中でも、ヒスチジンが好ましい。
【0192】
本発明の組成物中の(b-2)塩基性アミノ酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0193】
本発明の組成物中の(b-2)塩基性アミノ酸の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0194】
本発明の組成物中の(b-2)塩基性アミノ酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0195】
(任意選択の成分)
本発明の組成物は、前述の成分に加えて、化粧品に典型的に用いられる任意選択の成分、具体的には、界面活性剤/乳化剤、例えば(a-1)カチオン性ポリマー以外の合成ポリマーに由来する親水性又は親油性増粘剤、一価又は二価アルコール(例えば、エタノール及びペンチレングリコール)等の揮発性又は不揮発性有機溶媒、アニオン性ポリマー、両性ポリマー、β-グルカン等の非イオン性ポリマー、シリコーン及びシリコーン誘導体、(a-1)カチオン性ポリマー以外の動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0196】
本発明の組成物は、上記の任意選択の成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでもよい。
【0197】
本発明の組成物は、少なくとも1種の脂肪酸を含んでもよい。しかしながら、本発明の組成物中の脂肪酸の量は、限定的であることが好ましい。例えば、本発明の組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物が脂肪酸を含まないことが特に好ましい。
【0198】
本発明の組成物中の界面活性剤/乳化剤又は合成増粘剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物が界面活性剤/乳化剤又は合成増粘剤を含まないことが特に好ましい。
【0199】
特に、組成物中の界面活性剤の量は、限定的であることが好ましい。そのため、本発明の組成物が少なくとも1種の界面活性剤を含む場合、界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物が界面活性剤を含まないことが特に好ましい。
【0200】
本発明の組成物中のアニオン性ポリマー又は両性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物がアニオン性又は両性ポリマーを含まないことが特に好ましい。
【0201】
[調製]
本発明の組成物は、上に説明した必須成分、及び必要な場合には上に説明した任意選択の成分を混合することによって、調製されうる。
【0202】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合し、本発明の組成物を調製することができる。
【0203】
本発明の組成物は、撹拌機及びホモジナイザー等の従来の混合手段により、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。また、加熱は必要ではない場合もある。したがって、本発明の組成物の調製方法は、環境に適合性でありうる。
【0204】
本発明の組成物は、以下:
(1)
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、及び
(a-3)水
を混合して、第1の混合物(a)を形成する工程と、
(2)
(b-1)少なくとも1種の油、及び
(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸
を混合して、第2の混合物(b)を形成する工程と、
(3)
第1の混合物(a)及び第2の混合物(b)を混合して、本発明の組成物を調製する工程とを含む方法によって調製されることが好ましい場合がある。
【0205】
本発明の組成物の調製方法は、少なくとも1種の界面活性剤を混合する任意選択の工程を更に含んでもよく、但し、界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満である。
【0206】
[美容用途]
本発明の組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。したがって、本発明の化粧用組成物は、ケラチン物質への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明の化粧用組成物が、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0207】
本発明の化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってよい。
【0208】
[形態]
本発明の組成物は、(a)少なくとも1つの水性相及び(b)少なくとも1つの脂肪相を含むことができる。(a)水性相は、少なくとも、(a-3)水を含むことができる。(b)脂肪相は、少なくとも、(b-1)油を含むことができる。
【0209】
本発明の一実施形態では、(a)水性相は連続相として機能することができ、(b)脂肪相は不連続相として機能することができる。本発明の組成物は、O/Wエマルション等のO/W分散体の形態でありうる。本発明の組成物がO/W型でありうるため、その外相を形成する水を含む水性相に起因して、清涼感を付与できる。
【0210】
(a)水性相は、(a-1)カチオン性ポリマー、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩、及び(a-3)水を含んでもよい。
【0211】
本発明の組成物中の(a)水性相の量は、組成物の総質量に対して、45質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であってもよい。
【0212】
一方、本発明の組成物中の(a)水性相の量は、組成物の総質量に対して、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であってもよい。
【0213】
したがって、本発明の組成物中の(a)水性相の量は、組成物の総質量に対して、45質量%~95質量%、好ましくは50質量%~90質量%、より好ましくは55質量%~85質量%の範囲でありうる。
【0214】
(b)脂肪相は、(b-1)油及び(b-2)塩基性アミノ酸を含んでもよい。
【0215】
本発明の組成物中の(b)脂肪相の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上でありうる。
【0216】
一方、本発明の組成物中の(b)脂肪相の量は、組成物の総質量に対して、55質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下であってもよい。
【0217】
したがって、本発明の組成物中の(b)脂肪相の量は、組成物の総質量に対して、5質量%~55質量%、好ましくは15質量%~50質量%、より好ましくは25質量%~45質量%の範囲でありうる。
【0218】
[皮膜]
本発明の組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。言い換えれば、本発明の組成物は、皮膜を形成することができる。
【0219】
したがって、本発明はまた、好ましくは0.5μmより大きい、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製するための方法であって、
基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明の組成物を適用する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法にも関しうる。
【0220】
本発明の皮膜の厚さの上限は、限定されない。したがって、例えば、本発明の皮膜の厚さは、300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であってもよい。
【0221】
本発明の皮膜を調製するための方法は、本発明の組成物を基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚に適用する工程と、組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明の方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜さえ容易に調製することが可能である。そのため、本発明の皮膜を調製する方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに、比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0222】
基材が皮膚等のケラチン物質でない場合、本発明の組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基材に適用することができる。非ケラチン基材の材料は限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組合せを使用することができる。いずれの場合でも、基材が可撓性又は弾性があることが好ましい。
【0223】
非ケラチン基材がシートの形態である場合、これは、基材シートに付着した皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明の皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基材シートの厚さは限定されないが、1μm~5mm、好ましくは10μm~1mm、より好ましくは50~500μmでもよい。
【0224】
本発明の皮膜は、非ケラチン基材から取り外し可能であることがより好ましい。取り外しの方式は限定されない。したがって、本発明の皮膜は、非ケラチン基材から剥がしてもよい。
【0225】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.5μmより大きい、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明の組成物を適用する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される皮膜、好ましくは化粧皮膜、
並びに
(2)好ましくは0.5μmより大きい、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(b-1)少なくとも1種の油、及び
(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸
を含む、皮膜、好ましくは化粧皮膜にも関しうる。
【0226】
本発明の組成物のための、(a-1)カチオン性ポリマー及び(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩、並びに(b-1)油及び(b-2)塩基性アミノ酸に関する上記の説明は、上記の皮膜(2)におけるものに適用することができる。
【0227】
本発明の皮膜は、生体適合性及び/又は生分解性であってもよい。
【0228】
本明細書における用語「生体適合性」は、皮膜が、皮膜と、皮膚を含む生体内の細胞との間で過度な相互作用を有さず、皮膜が、生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0229】
本明細書における用語「生分解性」は、皮膜が、例えば生体自体の代謝、又は生体内に存在しうる微生物の代謝により、生体内で分解されうる又は分割されうることを意味する。また、生分解性皮膜は、加水分解によって分解されうる。
【0230】
本発明の皮膜が生体適合性及び/又は生分解性である場合、例えば、皮膚への刺激が少ないか若しくは刺激がなく、及び/又は環境汚染がないものとすることができる。
【0231】
実際、本発明の皮膜は、生分解性ポリマーであるキトサンから選択される(a-1)カチオン性ポリマーを含むことができる。
【0232】
本発明の皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置に使用することができる。本発明の皮膜は、任意の形状又は形態にあることができる。
【0233】
本発明の皮膜が、少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、皮膜は、その美容有効成分に基づく美容効果をもたらすことができる。美容有効成分が、本発明の皮膜中で維持されうるため、皮膜は、美容有効成分を持続放出させることができる。例えば、美容有効成分が抗ニキビ剤である場合、抗ニキビ剤を含む本発明の皮膜は、長時間持続性の抗ニキビ効果をもたらすことができる。
【0234】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明の組成物をケラチン物質に適用する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む方法、又は
皮膚等のケラチン物質上に化粧皮膜を調製するための本発明の組成物の使用
にも関する。
【0235】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0236】
本発明の化粧皮膜が皮膚に適用された後に、その上にメイクアップ化粧用組成物を適用することもまた可能である。
【0237】
本発明はまた、組成物を安定化させ、脱臭するための、(b-2)少なくとも1種の塩基性アミノ酸の組成物の形態での使用であって、該組成物が、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)水、及び
(b-1)少なくとも1種の油
を含む、使用にも関する。
【0238】
本発明の組成物のための、(a-1)カチオン性ポリマー、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩、及び(a-3)水、並びに(b-1)油及び(b-2)塩基性アミノ酸に関する上記の説明は、上記の使用におけるものに適用することができる。
【実施例0239】
本発明は、実施例によって、より詳細な方法で記載される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0240】
(実施例1及び比較例1)
[調製]
実施例1及び比較例1の組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合して調製した。表1中の成分の量についての数値はすべて、原料の「質量%」に基づく。
【0241】
【0242】
[評価]
(安定性)
実施例1及び比較例1の組成物のそれぞれを、透明な容器に保存し、室温(25℃)で50分間、Lumisizer(LUM GmbH)を使用して、4000rpmで遠心分離した。組成物の安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好:組成物は均一であった。
不良:相分離が観察された。
【0243】
結果を表1に示す。
【0244】
実施例1の組成物は、相分離がなく、乳化された均一な外観を維持して安定性であったが、比較例1の組成物は、相分離が観察されたことから安定でなかった。
【0245】
(臭い)
実施例1及び比較例1の組成物の臭いを、5名のパネリストによって検査し、以下の基準に従って評価した。
良好:組成物は臭い(酸敗臭)を発生しなかった。
不良:組成物は臭い(酸敗臭)を発生した。
【0246】
主な評価を、結果として、表1に示す。
【0247】
実施例1の組成物は臭いを発生しなかったが、比較例1の組成物は、酸敗臭の臭いを発生した。
【0248】
(実施例2及び比較例2)
[調製]
実施例2及び比較例2の組成物のそれぞれを、表2に示す成分を混合して調製した。表2中の成分の量についての数値はすべて、原料の「質量%」に基づく。
【0249】
【0250】
[評価]
(安定性)
実施例2及び比較例2の組成物のそれぞれを、透明な容器に保存し、室温(25℃)で50分間、Lumisizer(LUM GmbH)を使用して、4000rpmで遠心分離した。組成物の安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好:組成物は均一であった。
不良:相分離が観察された。
【0251】
結果を表2に示す。
【0252】
実施例2の組成物は、相分離がなく、乳化された均一な外観を維持して安定性であったが、比較例2の組成物は、相分離が観察されたことから安定でなかった。
【0253】
(臭い)
実施例2及び比較例2の組成物の臭いを、5名のパネリストによって検査し、以下の基準に従って評価した。
良好:組成物は臭いを発生しなかった。
不良:組成物は臭いを発生した。
【0254】
主な評価を、結果として、表2に示す。
【0255】
実施例2の組成物は臭いを発生しなかったが、比較例2の組成物は、油の酸敗臭の臭いを発生した。