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特開2025-14530経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法。
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  • 特開-経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014530
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法。
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20250123BHJP
   G06Q 10/063 20230101ALI20250123BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/063
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117160
(22)【出願日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】716004512
【氏名又は名称】一般社団法人サステイナビリティ技術設計機構
(74)【代理人】
【識別番号】100147740
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 俊
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸明
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、経済活動を行なう企業や自治体等の経済主体が保有する財務データから産業連関表における品目コードとその品目コードの取引額リスト(コード・取引額リスト)を作成する手段、CO2(排出)原単位リストを作成する手段、コード・取引額リストとCO2原単位リストから派生CO2を求める手段、コード・取引額リストと燃料等使用CO2発生データから直間接CO2を求める手段、コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとスクラップ価値リストから控除CO2を求める手段、およびコード・取引額リストと産業連関統計物量票データとバイオマスCO2吸収データから吸収CO2を求める手段を含み、経済主体の経済活動によるCO2環境負荷は<派生CO2+直間接CO2-控除CO2-吸収CO2>で与えられるCO2環境負荷の算出方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経済活動を行なう企業や自治体等の経済主体が保有する財務データから産業連関(表)における品目コードとその品目コードの取引額リスト(コード・取引額リストという)を作成する手段、
CO2(排出)原単位リストを作成する手段、
コード・取引額リストとCO2原単位リストから派生CO2を求める手段、
コード・取引額リストと燃料等使用CO2発生データから直間接CO2を求める手段、
コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとスクラップ価値リストから控除CO2を求める手段、および
コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとバイオマスCO2吸収データから吸収CO2を求める手段
を含み、
前記経済主体の経済活動によるCO2環境負荷は<派生CO2+直間接CO2-控除CO2-吸収CO2>で与えられることを特徴とする、
経済主体の経済活動によるCO2環境負荷を算出する方法。
【請求項2】
前記コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとバイオマスCO2吸収データから吸収CO2を求める手段は、種々のバイオマスについてCO2吸収データが記載された植物CO2吸収辞書リストとコード・取引額リストから、コンピュータでコード一致により関連付けて、コンピュータを用いてCO2吸収演算を行ない、吸収CO2(量)を<バイオマス(植物)の量×バイオマス(植物)吸収CO2データ>で算出する手段であることを特徴とする、請求項1に記載のCO2環境負荷を算出する方法。
【請求項3】
前記コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとスクラップ価値リストから控除CO2を求める手段は、種々のスクラップについてそのコードとコード・取引額リスト21から、コンピュータでコード一致によりデータを抽出して、控除CO2演算を行ない、<控除CO2(量)をスクラップ価値リスト×スクラップ量×スクラップに相当する原材料の産業連関データからのCO2原単位>で算出する手段であることを特徴とする、請求項1に記載のCO2環境負荷を算出する方法。
【請求項4】
前記財務データから産業連関(表)における品目コードと品目コードの取引額リスト(コード・取引額リストという)を作成する手段は、財務データ等の品目と産業連関コード集の品目の一致をコンピュータで照合して対照表を作成し、さらにコンピュータで財務データから得られる品目・取引額データと前記対照表とを照合して品目の一致を調べて、コード・取引額リストを作成する手段であることを特徴とする、請求項1に記載のCO2環境負荷を算出する方法。
【請求項5】
前記CO2(排出)原単位リストを作成する手段は、環境負荷原単位を収録した3EID(Embodied Energy and Emission Intensity Data:産業連関表による環境負荷原単位データブックby(独)国立環境研究所)とコード取引額・リスト21に記載された品目コードとをコンピュータで照合して、品目コードに対応するCO2原単位リストを作成する手段であることを特徴とする、請求項1に記載のCO2環境負荷を算出する方法。
【請求項6】
前記コード・取引額リストとCO2原単位リストから派生CO2を求める手段は、コンピュータを用いて、前記コード・取引額リストとCO2原単位リストとをコード一致で照合して、(取引額または投入物質の量)×CO2原単位を演算することであることを特徴とする、請求項1に記載のCO2環境負荷を算出する方法。
【請求項7】
前記コード・取引額リストと燃料等使用CO2発生データから直間接CO2を求める手段は、コンピュータを用いて、前記コード・取引額リストと燃料等使用CO2発生データとをコード一致で照合して、(取引額または投入物質の量)×CO2原単位を演算することであることを特徴とする、請求項1~6のいずれかの項に記載のCO2環境負荷を算出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業や自治体等の経済主体が産む環境負荷、特に二酸化炭素(CO2)発生量を算定する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
IPCC(気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change)が2018年に発表した特別報告書(Global Warming of 1.5℃)によると、産業革命以降、世界の平均気温は約1℃上昇しているとされている。この現象は地球温暖化によると言われ、この原因は、人間の活動によって生み出された、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが大気中に放出されたことによる。地球温暖化は、北極海や南極等の氷河が減少したり、海面水位の上昇や異常気象などを引き起こしたりして、飢餓や各種伝染病などの増大により人間活動に深刻な影響を及ぼす可能性がある。そこで、地球温暖化への対応として、脱炭素化などカーボンニュートラルを目指す動きが世界的に加速している。企業なども政府、投資家、取引先や消費者などから温室効果ガス排出削減に向けた取り組みを進めることが要求されている。他方で、温室効果ガス排出削減の取り組みは新たなビジネスチャンスと考える企業なども増えている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】一般社団法人日本電機工業会(LC-CO2)排出量簡易算出手法。URL:www.jema-net.or.jp/Japanese/env/02_LCA_tools/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、企業(会社、事業所)や家庭(企業等)の経済活動で排出される二酸化炭素(CO2)を模式的に示した従来の内容を示す図であり、従来のサプライチェーンによるCO2排出を示す図である。企業等自体で直接排出しているCO2(直接発生CO2)とは、例えば燃料を燃焼したり電気を使用したりして企業等の活動を行なっている。また、企業等は、原材料等を購入しているが、原材料を生産等するときにCO2を排出している。また、企業等で使用する原材料の配送・輸送に伴って排出するCO2もある。さらに従業員等が通勤するときに使用する電車や車等の輸送機関が排出するCO2もある。これらは、上流(企業等が購入(仕入れ)している物の生産(製造)など)で排出されるCO2((上流)波及(派生)CO2)と呼ばれる。また、下流(企業等が産み出した製品がその製品の使用先等)で排出されるCO2((下流)波及(派生)CO2)がある。さらに、企業等が産み出して販売する製品以外に廃棄する物品が排出するCO2があり、これを(下流)波及(派生)CO2と呼ぶ。従来のサプライチェーンにおける経済活動によるCO2は、上記(図7)に述べた直接派生CO2と(上流・下流)波及(派生)CO2しか考慮(計算)していないため、CO2の削減効果があいまいとなり、カーボンニュートラルの実現には不十分という問題がある。また、企業が積極的に行われている植物やバイオマス由来の部品や材料・原料などは考慮されていない。さらにリサイクルやリユースについても考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法を提供するものであり、具体的には以下の特徴を有する。
(1)本発明は、経済活動を行なう企業や自治体等の経済主体が保有する財務データから産業連関(表)における品目コードとその品目コードの取引額リスト(コード・取引額リストという)を作成する手段、CO2(排出)原単位リストを作成する手段、コード・取引額リストとCO2原単位リストから派生CO2を求める手段、コード・取引額リストと燃料等使用CO2発生データから直間接CO2を求める手段、コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとスクラップ価値リストから控除CO2を求める手段、およびコード・取引額リストと産業連関統計物量票データとバイオマスCO2吸収データから吸収CO2を求める手段を含み、前記経済主体の経済活動によるCO2環境負荷は<派生CO2+直間接CO2-控除CO2-吸収CO2>で与えられることを特徴とする、経済主体の経済活動によるCO2環境負荷を算出する方法である。
【0006】
(2)本発明は、(1)に加えて、前記コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとバイオマスCO2吸収データから吸収CO2を求める手段は、種々のバイオマスについてCO2吸収データが記載された植物CO2吸収辞書リストとコード・取引額リストから、コンピュータでコード一致により関連付けて、コンピュータを用いてCO2吸収演算を行ない、吸収CO2(量)を<バイオマス(植物)の量×バイオマス(植物)吸収CO2データ>で算出する手段であり、および/または、前記コード・取引額リストと産業連関統計物量票データとスクラップ価値リストから控除CO2を求める手段は、種々のスクラップについてそのコードとコード・取引額リストから、コンピュータでコード一致によりデータを抽出して、控除CO2演算を行ない、<控除CO2(量)をスクラップ価値リスト×スクラップ量×スクラップに相当する原材料の産業連関データからのCO2原単位>で算出する手段であることを特徴とする。
【0007】
(3)本発明は、(1)または(2)に加えて、前記財務データ11から産業連関(表)における品目コードと品目コードの取引額リスト(コード・取引額リストという)を作成する手段は、財務データ等の品目と産業連関コード集の品目の一致をコンピュータで照合して対照表を作成し、さらにコンピュータで財務データから得られる品目・取引額データと前記対照表とを照合して品目の一致を調べて、コード・取引額リスト21を作成する手段であり、および/または、前記CO2(排出)原単位リストを作成する手段は、環境負荷原単位を収録した3EID(Embodied Energy and Emission Intensity Data:産業連関表による環境負荷原単位データブックby(独)国立環境研究所)とコード取引額・リストに記載された品目コードとをコンピュータで照合して、品目コードに対応するCO2原単位リストを作成する手段であることを特徴とする。
【0008】
(4)本発明は、(1)または(2)または(3)に加えて、前記コード・取引額リストとCO2原単位リストから派生CO2を求める手段は、コンピュータを用いて、前記コード・取引額リストとCO2原単位リストとをコード一致で照合して、(取引額または投入物質の量)×CO2原単位を演算することであり、前記コード・取引額リストと燃料等使用CO2発生データから直間接CO2を求める手段は、コンピュータを用いて、前記コード・取引額リストと燃料等使用CO2発生データとをコード一致で照合して、(取引額または投入物質の量)×CO2原単位を演算することであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
企業等の活動はつまるところ経済活動であるから、経済活動の大部分の内容は財務データに反映されている。従って、企業等の活動による環境負荷は、その財務データから読み解くことができる。本発明の経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法は、経済主体が作成する財務データより、殆どすべての環境負荷を見積もったものである。特に、本発明の評価方法は、派生CO2と直間接CO2に加えて控除CO2および吸収CO2を見積もって、より実践的で正確な環境負荷を提供している。さらに、本発明の評価方法は、財務データが与えられれば、コンピュータを用いて即座に環境負荷を算出できるので、企業等のどのような経済活動が環境負荷を大きくしているか、またどのような経済活動をすれば環境負荷を軽減できるかなどを具体的に数字で把握できる。従って、環境負荷を軽減し、特にカーボンニュートラルな社会を実現するための企業等の将来ビジョンを構築するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法のフローを示す図である。
図2図2は、財務抽出辞書リストの一例を示す図である。
図3図3は、コード・取引額リストおよび参照リストの一例を示す図である。
図4図4は、網羅細目原単位負荷辞書リストBおよびそれを用いて作成した環境派生負荷演算リストの一例を示す図である。
図5図5は、経済活動内部でのCO2発生の一例を示す図である。
図6図6は、本発明のサプライチェーンによるCO2排出を示す図である。
図7図7は、従来のサプライチェーンによるCO2排出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、企業や自治体等の経済主体が保有する財務データベースを用いて、その経済主体が産む二酸化炭素(CO2)発生量を算定する手段を提供するものである。本発明では、各経済主体がエネルギーや資源の再生・再利用等の循環型取り組みを行ない循環素材の利用や提供を行なった場合、トータルのCO2発生量が減少するが、その減少度からCO2発生抑制貢献度も算定することができる。また、本発明では、自然共生型経済活動でCO2の吸収や固定を行なった場合にも、そのCO2発生抑制貢献度も算定できる。従って、本発明は経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法と言える。
【0012】
図1は、企業等の経済活動による経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法のフローを示す図であり、具体的には企業等の経済活動によるCO2発生量算定手段を示すフロー図である。企業が作成している経済主体の財務データ11から、対象期間を決めて、その間の物品・エネルギー購入、および製品・発生物の生産・処理に関わる外注・役務を対象とし、その品目や摘要をキーとし取引額を要素として抽出(12)して、辞書型二次元リストである品目取引額データ13を作成する。これは財務抽出辞書リストAとも呼ぶ。財務抽出辞書リストAは品目と取引額データで表記される。
【0013】
図2は、財務抽出辞書リストの一例を示す図である。財務抽出辞書リストは、投入(インプット)に関係する財務投入辞書リストと産出(アウトプット)に関係する財務産出辞書リストに分割される。図2(a)は、財務抽出辞書リストで、図2(b)は、財務投入辞書リストで、図2(c)は、財務産出辞書リストの一例である。財務抽出辞書リストでは、製造場所、対象期間、品目名、取引先、取引額が記載される。
【0014】
既存のデータベースもしくは統計情報に基づく計算から得られた、物品および役務の単位(重量など)ごとにCO2発生など環境負荷原単位が整理された情報に基づくデータを準備する。国ごとに産業統計のために産業全体を覆い網羅するコードが準備されていて、たとえば、日本では産業連関表の細目コードがそれに当たる。図1に示すように、その産業連関表のコード集(産業連関コード集)14から対象表15を作成し、財務抽出辞書リストAである品目・取引額データ13と照合して品目の一致を調べて(16)、コード・取引額リスト21を作成する。すなわち、コード・取引額リスト21とは、企業・工場・家庭等の産業で使用・消費等される物資とコードとを関連づけたものである。
【0015】
より具体的には、産業連関コード集14から財務データ11または品目・取引額データ13に関係する品目についてコードとの対応が付く対照表15を作成する。この対照表15の作成は、財務データ11等の品目と産業連関コード集14の品目の一致をコンピュータで照合して作成する。対照表15は参照予備リストEとも呼ぶ。尚、財務データ11に記載される品目は年度ごとに変動するが、過去の財務データの品目および将来新たに載ることが予想される品目を含めて参照予備リストEに載せておけば、毎年の財務データ11と産業連関コード集14との品目一致をコンピュータで照合する必要はなくなる。このときの参照予備リストEは参照リストDとなる。
【0016】
次に、参照予備リストEである対照表15を使って、財務抽出辞書リストAである品目・取引額データ13とコンピュータで照合して品目の一致を調べて(16)、コード・取引額リスト21を作成する。この照合作業において、財務抽出辞書リストAである品目・取引額データ13と参照予備リストEである対照表15の品目が一致しないときは、類似コード検索17を行ない、類似コードであれば参照リストDであるコード・取引額リスト21に組み入れる。さらにこの類似コード検索17でも判明しなければ、コード手入力18を行ない、参照リストDであるコード・取引額リスト21に組み入れる。コード手入力18を行なった場合、その情報が対照表15に追加され(23)、さらにコンピュータに(機械)学習24させてコード共起モデル化20に反映させる。
【0017】
財務抽出辞書リストに載っている品目がすべて産業連関コード集に載っているわけではないので、上記したように(機械)学習24させるときにコード共起モデル化20を使用する。すなわち、機械学習24させた情報を組み入れて、産業連関コード集14に既存言語ベクトル化モデル19を用いてコード共起モデル化20を実行させて、統合モデル22を作成する。統合モデル22は、類似コード探索17に反映される。既存言語ベクトル化モデルおよびコード共起モデル化および結合モデルを使うのは、使用される言葉をベクトルにして他の言葉との関係を数値化して、類似性の程度を得るためである。ここで、既存言語ベクトル化モデルは、現在使用されている文章のビックデータからそれぞれをベクトル化したものである。
【0018】
コード共起モデル化は、産業連関表に用いられているコードとその対応事項用語の説明から対応事項を既存言語ベクトル化と同様の手法でベクトル化するものであり、その際入力された経験から産業連関表コードと対応事項用語の関係が付加されて学習される。結合モデルは、ベクトル化された対応事項用語と品目として入力される項目について、ベクトル類似性演算を行ない入力品目に対する類似性の対応事項用語を見出して、その対応事項用語の産業連関表コードを得るための計算モデルである。この統合モデル22では、財務抽出辞書リストAのキーと産業連関コード集14のキー(コード)が関連付けられており、参照リストDが作成される。参照リストDは、財務抽出辞書リストAのキーとそれに対応する産業連関コード集14のキー(コード)を要素として持つもので、財務抽出辞書リストAのキーは必ず一度だけ出現する。
【0019】
財務抽出辞書リストAのキーである「品目名」等は経済行為主体の内部で用いられるものであり、産業連関の細品目とは視点が異なるため、必ずしも一致しない。「品目名」を「細目名」に一意に関連付けるのが参照リストDである。参照リストDは、あいまい検索と機械学習により生成する。そのために本計算を補助するものとして、予備参照リストEを作成する。予備参照リストEは、それぞれの「品目名」について、あいまい検索の結果を計算の実行者に提示し選択させ、その選択結果を参照リストDに反映させるとともに、機械学習の教師課程とするシステムによって運営される。あいまい検索には従来からのあいまい検索、もしくは生成AIを使ったもの、それまでの機械学習の結果を元にしたもの、この三者のいずれかもしくはそれらの組み合わせがある。機械学習が進みあいまい検索の精度が上がった場合には、予備参照リストEを使う必要がなくなる段階もある。他方で、計算の実行者による関連付け熟度が高い場合には、関連付けはそのまま参照リストDに用いることもでき、参照リストで財務抽出辞書リストAの品目がすべてコード化できるようになれば、予備参照リストEを使用する必要がなくなる場合もある。
【0020】
類似コード検索17とは、財務抽出辞書リストA(品目・取引額データ13)の中で産業連関コード集14(対照表15に反映されている)に載っていない品目について、その品目に該当しそうな産業連関コード集14に載っている品目を抽出し(コンピュータで検索し抽出、このときに既存言語ベクトル化モデル19を用いて、コード共起化モデル20により統合モデル22を作成)、その中から該当する品目を選択する。従って、財務データ11を作成するときに、産業連関コード集14に載っている品目を記載するようにすれば、この作業は省略できる。
【0021】
類似コード検索17したリストに該当する品目がない場合は、手作業でコード入力18する。この作業としては、それに近い品目に合わせる場合と、全く近い品目がない場合がある。近い品目に合わせる場合は既にコードが存在するので問題はないが、全く近い品目がない場合は、新しく独自のコードを作る必要がある。そのときは、その新しい品目についてCO2原単位等のデータも設定する必要がある。このように、本発明は、産業連関表にない品目についてもコード付けできるので、コンピュータだけを用いて、財務データのCO2評価が可能となる。
【0022】
図3は、コード・取引額リストおよび参照リストの一例を示す図である。図3(a)はコード・取引額リスト、図3(b)は参照リストである。図3(b)に示す参照リスト(図1に示すD)または参照予備リスト(図1に示すE)は、図2(a)で示す財務抽出辞書リスト(図1に示すA)に記載された品目に対して、産業連関コード集14からそのコードを、コンピュータを使って照合し抽出して作成され、品目名に対するコードが示される。すなわち、図3(b)に示す参照リスト(図1に示すD)は、財務抽出辞書リスト(図1に示すA、図2(a))と産業連関コード集(図1に示す14)との対応についてコンピュータを使って照合し、品目名に対するコードが示される。この参照リストまたは参照予備リストと図2で示す財務抽出辞書リストから、図3(a)に示すコード・取引額リストが得られる。すなわち、図3(a)に示すコード・取引額リスト(図1に示す21)は、財務抽出辞書リストに参照リストを適用し、財務抽出辞書リストの品目に対応する産業連関表のコードを記載したものである。コード・取引額リストには、品目に紐づいたコードと取引先、取引額などが記載されている。ここで、スクラップに関してコードが付されていないのは、スクラップに関しては産業連関コード集に適当なコードがないためであり、類似コード検索17やコード手入力18を行ない、コードを新しく付することができる。
【0023】
次に、経済活動内部でのCO2発生を検討する。前述したように、国ごとに産業統計のために産業全体を覆い網羅するコードが準備されており、我が国では、産業連関表の細目コード(産業連関コード集14)がそれに当たる。この産業連関コード集14に記載された種々の物品ごとに環境負荷値を細目コードをキーにして、環境負荷原単位およびその単位を要素にした辞書リストをコンピュータ等を用いて作成する。これを網羅細目原単位負荷辞書リストBと呼ぶ。なお、網羅細目原単位負荷辞書リストBは、産業連関表と工業統計を用いた産業連関計算により、全ての網羅細目に対して環境負荷を与えることができる。また、細目ごとに環境負荷や単位を他のデータベースなどの値と入れ替えても、問題はない。
【0024】
環境負荷がCO2の場合は、既存のデータベースもしくは統計情報に基づく計算から得られた、物品および役務の単位(重量など)ごとにCO2発生など環境負荷原単位が整理された情報に基づくデータ(燃料等使用CO2発生データ26)を準備する。これらの燃料等使用CO2発生データ26および産業連関統計データ25に基づいて、環境負荷原単位を収録した3EID(Embodied Energy and Emission Intensity Data:産業連関表による環境負荷原単位データブックby(独)国立環境研究所)28が作成されている。この3EIDから種々の品目コードに対応するCO2原単位リストを作成できるので、コンピュータを用いて3EIDから必要な項目を取り出して、コード取引額・リスト21に記載された品目コードをコンピュータで照合して、コード取引額・リスト21に記載された品目についてCO2原単位リスト27を作成できる。このCO2原単位リスト27は網羅細目原単位負荷辞書リストBの一種である。このように、このCO2原単位リスト27は、産業連関表に記載されたすべての品目コードの物品について、CO2原単位が計算により求められる。従って、コード取引額・リスト21に記載された品目コードに対応するコードを3EIDからコンピュータにより照合することにより、本プロセスで使用するすべての物品を含むCO2原単位リストを作成できる。
【0025】
CO2原単位は、燃料等使用CO2発生データ26を、経済変動の影響をうけやすくかつほぼ10年単位でしか更新されない「産業連関統計データ」25に基づいて計算するもので、「CO2原単位リスト」27を得る原単位計算では「産業連関統計データ」25が作成された時点での物品価格あたりで計算される。そこで、それを現時点での価格あたりに補正する必要があり、そのために物価補正計算を組み込む。すなわち、最新物価データ29を元にしてCO2原単位(リスト)27を物価補正30する。物価補正計算のもととなる最新物価データ29には、「日本銀行時系列統計データ」などがある。この物価補正もコンピュータを用いて行うことができる。
【0026】
財務抽出辞書リストAのキーに、網羅細目原単位負荷辞書リストBのキーを関連付け、環境派生負荷演算リストCを作成する。財務抽出辞書リストAのキーと網羅細目負荷辞書リストBのキーの関連付けのために、参照リストDが作成されている。参照リストDは、財務抽出辞書リストAのキーとそれに対応する網羅細目原単位負荷辞書リストBのキーを要素として持つもので、財務抽出辞書リストAのキーは必ず一度だけ出現する。すなわち、財務抽出辞書リストAに参照リストDを適用して作製したコード取引額リスト21から対象が派生(波及)、直(間)接、控除に分離され、コンピュータを使って、派生品目と網羅細目原単位負荷辞書リストBであるCO2原単位リスト27とがコード一致により照合されて、環境派生負荷演算リストCが作成されて、派生CO2演算31を行なって、派生CO2(量)(たとえば、(取引額または投入物質の量)×CO2原単位)32が得られる。
【0027】
図4は、網羅細目原単位負荷辞書リストBおよびそれを用いて作成した環境派生負荷演算リストの一例を示す図である。図4(a)がCO2原単位リスト27に対応する網羅細目原単位負荷辞書リストBの一例である。このCO2原単位リスト27は、産業連関表に記載されたすべての品目コードの物品について、CO2原単位が計算されている。上述したように、コード取引額・リスト21に記載された品目コードに対応するコードを3EIDからコンピュータにより照合することにより、本プロセスで使用するすべての物品についてのCO2原単位リストを作成できる。図4(b)は環境派生負荷演算リストの一例で、図4(c)は参照リストの一例である。網羅細目原単位負荷辞書リストには、種々の細目にコードがつけられており、それについてCO2原単位が記載されている。
【0028】
図2(a)に示す財務抽出辞書リストに網羅細目原単位負荷辞書リストを用いて、品目一致チェックを実行すると、どれも完全一致しないが、参照リストを合わせて用いると、図4(a)に示す網羅細目原単位負荷辞書リストを作成できる。コンピュータを用いてまずは品目一致チェック(完全一致検索)を実行し、次に参照リストも用いて類似コード検索を実行することによって、完全に近い網羅細目原単位負荷辞書リストができる。網羅細目原単位負荷辞書リスト(図4(a))には、コード、細目(品目)名、およびCO2原単位が示され、種々の品目(細目)についてコードとCO2原単位を把握できる。CO2原単位は、単位(kg)あたりのCO2発生(または消費)量(kg)で示される。これはCO2(発生or消費)係数とも言う。環境派生負荷演算リスト図4(b)では、取引額とそこから計算される派生CO2(量)が示される。
【0029】
従来のLCA等の環境負荷計算では、フォアグラウンドデータとも呼ばれる部分で、要素プロセスや設備に沿った直接的なデータ取得が求められ、そのために原燃料の物量としての要素プロセスへの分配が求められてきたが、CO2のように要素プロセス依存性が小さいものは、原燃材料構成により発生量を算定することができる。それ故、原燃料を要素プロセスに配分することなく、経済行為単位全体での原燃料構成の数値を用いることで、要素プロセス間の分配という新たな情報を必要とせず、財務情報すなわち、財務抽出辞書リストA(品目・取引額データ13)によって、経済活動内部でのCO2発生(量)を計算することができる。
【0030】
そのためには、原燃料構成物質とCO2発生(量)を関連付ける辞書リストが必要である。換算数値は化学量論計算等の既存の知識で得ることができるので、それを要素として、細目コードをキーとする、化学CO2計算辞書リストFを作成・所有し、先述の環境派生負荷演算リストCと同様に財務抽出辞書リストAと化学CO2計算辞書リストFを参照リストDで関連付け、環境直間接負荷演算リストGとする。すなわち、図1において、燃料等使用CO2発生(量)データ26から財務抽出辞書リストAと化学CO2計算辞書リストFを、参照リストDを用いて得られたコード・取引額リスト21で関連付け(この関連付けはコンピュータを用いて品目コードの一致したものを探索する)、環境直間接負荷演算リストGを作成して、コンピュータで直間接CO2演算34を行ない、直接・間接CO2(量)<(取引額または投入物質の量)×CO2原単位>35が得られる。
【0031】
図5は、経済活動内部でのCO2発生の一例を示す図である。図5(a)に環境直間接負荷演算リストGの一例を示す。ここでは、品目として燃料(ガソリン)と電気(電力)があり、それぞれのコード、取引額、CO2原単位、派生CO2(投入物質の量×CO2原単位or取引額×CO2原単位)が示される。図5(b)は、化学CO2計算辞書リストFの一例を示す。なお、環境直間接負荷演算リストから電力部分を切り出し、電力部分のものを環境間接負荷演算リスト、それ以外を環境直接負荷演算リストとして扱っても良い。
【0032】
社会活動で発生したCO2を削減する効果、すなわちCO2発生抑制貢献度について検討する。これには、リサイクル材、製品の提供によるバージン材・製品代替による控除と、自然共生型経済活動におけるCO2吸収・固定がある。最初に、自然共生型経済活動におけるCO2吸収・固定を検討する。経済活動の中に植物やバイオマスに由来する物質の消費や使用があれば、それらはCO2吸収・固定を行なっていたのであるから、それらの分を経済活動で消費するエネルギーやCO2量から差し引きする必要がある。植物を育成するプロセスも含まれ、その産物を提供する場合、産物中に固定されたCO2を算定し削減貢献分とする。そのために、植物育成製品の量とCO2吸収を関連付ける辞書リストである植物CO2吸収辞書リストHを作成する。
【0033】
植物CO2吸収辞書リストHは関連する細目コードをキーに、その該当産品が吸収・含有している炭素量を公知情報より得て単位あたりのCO2に換算して作成する。このとき、産業連関統計物量票データ33も適用して、品目コードを適合させる。先述の環境派生負荷演算リストCと同様に財務抽出辞書リストAと植物CO2吸収辞書リストHを参照リストDで関連付け、CO2吸収演算(辞書)リストIとする。すなわち、図1において、バイオマスCO2吸収データ36から、植物CO2吸収辞書リストHを作成する。植物CO2吸収辞書リストHは種々のバイオマスについてそのコードとCO2吸収データが記載された表である。この植物CO2吸収辞書リストHと参照リストDを用いて作製したコード・取引額リスト21をコンピュータでコード一致により関連付けて、コンピュータを用いてCO2吸収演算37を行ない、吸収CO2(量)(バイオマス(植物)の量×バイオマス(植物)吸収CO2データ)38が得られる。図5(d)に植物(バイオマス)CO2吸収辞書リストHの一例を示す。
【0034】
次に、リサイクル製品の提供によるCO2発生抑制による貢献を検討する。まず、循環貢献控除率リストJを作成する。循環貢献控除率リストJは、作業者が提供品目のうち循環製品とみなす品目が対象であり、品目名(品目コード含む)と控除率を要素とするリストである。対象のリサイクル製品が、バージン製品をそのまま代替できる場合と、代替可能な製品に至る中間過程の循環素材を提供する場合がある。バージン製品をそのまま代替できる場合は、リサイクル製品の提供品目に対する控除率は1とする。代替に至らない中間原料の場合は、控除率はバージン製品相当を1、使用不能を0とする、1から0の間の値で表される中間原料価値とする。すなわち、リサイクル製品の提供品目に対する控除率はリサイクル製品がどの程度製品に復帰したかを示す指標(割合)である。ここで、復帰した製品とは元の製品の他に別製品の場合も含まれる。
【0035】
中間原料価値は、物理的価値、成分的価値、経済的価値を用いることができる。先述の環境派生負荷演算リストCと同様に財務抽出辞書リストAと網羅細目原単位負荷辞書リストCを参照リストDで関連付ける際に、財務抽出辞書リストAの品目と一致する品目に循環貢献控除率リストJをつけて、控除演算リストKとする。すなわち、図1において、財務抽出辞書リストAと網羅細目原単位負荷辞書リストB(産業連関統計物量票データから得られる)を、参照リストDを用いて作成したコード・取引額リスト21で関連づける際に、財務抽出辞書リストAである品目・取引額データ13の品目と一致する品目に循環貢献控除率リストJであるSCRAP(スクラップ)価値リスト39をつけて、控除演算リストKとする。SCRAP価値リスト39とはスクラップのバージン材との相対価値であり、スクラップ(廃棄物)を回収できたときに、その回収したスクラップがどのくらいの価値を有するかを表したものである。CO2に関して言えば、回収したスクラップのCO2削減量になるかを表したもので、スクラップの単位量あたりのCO2削減量である。これらについてコンピュータを用いてコード一致でデータを抽出して控除CO2演算40を行ない、これより控除CO2(量)41(スクラップのバージン材との相対価値×スクラップの量×スクラップに相当する原材料の産業連関データからのCO2原単位)が得られる。図5(c)に循環貢献控除率リストJの一例を示す。
【0036】
ここで、中間原料価値について考察する。前述したように、中間原料価値は、物理的価値、成分的価値、経済的価値を用いることができる。物理的価値は、使用目的に合致した物性値(たとえば強度や寿命)を、バージン材を基準として比較したものがあげられる。成分的価値は、材料の特性をバージン材と代替可能とするために、劣化要因である不純物を希釈するために必要なバージン材量比の逆数をとって表すことができる。経済的価値は、バージン材に対する価格の比である。なお、経済的価値の基準となるバージン価格は変動するために、Web上に公開されるバージン材価格をデータ・スクレイピングにより自動的に取得し、参照価格として用いることが好ましい。
【0037】
次にこれまで説明した演算リストに基づいて環境負荷を算定する。(演算リストと環境負荷算定結果)環境派生負荷演算リストC、環境直接負荷演算リストG、環境間接負荷演算リストG、 CO2吸収演算リストI、控除演算リストKのそれぞれのサブリスト要素の一つずつに対して、そのまた要素である、取引額、平均単価、原単位より<環境負荷=(取引額/平均単価)×原単位>の関係で値を得て、それぞれのサブリスト要素の環境負荷要素の値とする。ここで、取り扱う物品価格が平均単価と大きく異なる場合には、平均単価を物品価格に合わせて補正しても良い。
【0038】
全ての環境負荷要素に値が与えられたら、演算リストごとに環境負荷の値の総和を取る。環境直接負荷演算リストの環境負荷の値の総和が、直接排出環境負荷である。環境間接負荷演算リストの環境負荷の値の総和が、間接排出環境負荷である。環境派生負荷演算リストの環境負荷の値の総和が、派生環境負荷である。CO2吸収演算リストIの環境負荷の値の総和が、CO2吸収貢献である。控除演算リストの環境負荷の値の総和が、CO2削減貢献控除である。これらから、<全環境負荷>=<直接排出環境負荷>+<間接排出環境負荷>+<派生環境負荷>-<CO2吸収貢献>-<CO2削減貢献控除>となる。言い換えれば、正味のCO2量=<波及(派生)CO2量>+<直接・間接CO2量>-<吸収CO2量>-<控除CO2量>である。ここで、間接とは電力消費によるもので、派生は輸送やそれ以前のサプライチェーンなどによるものである。このように、本発明の<全環境負荷>では、リサイクル控除と吸収を考慮(付加)して、より実際的な環境負荷量を実現した点で優れている。
【0039】
これまで本発明の企業等の経済主体が産む環境負荷を見積もる方法(経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法)について詳細に説明してきた。これを簡単に図解したものを図6に示す。すなわち、図6は、企業(会社、事業所)や家庭(企業等)の経済活動で排出される二酸化炭素(CO2)を模式的に示した本発明の内容を示す図であり、本発明のサプライチェーンによるCO2排出を示す図である。従来は、既に図7において示したように、経済活動に伴うCO2は発生する場合にのみ注目してきた。すなわち、購入時(上流)に発生する波及(派生)(上流)CO2、企業等(会社、事業所、家計など)で発生する直接CO2、そして廃棄時(下流)に発生する波及(派生)(下流)CO2である。昨今の企業等の経済活動において、CO2の削減やカーボンニュートラルの取り組みが活発に行われているので、それらの削減などの取り組みを正確に評価する必要がある。すなわち、企業等では、植物やバイオマス由来の原料や部品を使用する場合は、CO2の吸収・固定を考慮しなければならない。本発明は、これらのすべてを考慮して吸収・固定(直接削減)CO2として環境負荷に組み入れている。また、企業等の経済活動の結果排出されるものについては、廃棄物は極力少なくして、再利用やリサイクルが積極的に行われている。たとえば再利用では代替製品として使用したり、リサイクルでは原料(リサイクル原料)として使用したりする。これらの場合にもCO2の削減効果が大きいので、これらを正確に見積もる必要がある。本発明は、これらのすべてを考慮して控除CO2として環境負荷に組み入れている。
【0040】
企業等の活動はつまるところ経済活動であるから、経済活動の大部分の内容は財務データに反映されている。従って、企業等の活動による環境負荷は、その財務データから読み解くことができる。本発明の経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法は、経済主体が作成する財務データより、殆どすべての環境負荷を見積もったものである。特に、本発明の評価方法は、派生CO2と直間接CO2に加えて控除CO2および吸収CO2を見積もって、より実践的で正確な環境負荷を提供している。尚、本明細書において、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の経済活動によるカーボンニュートラル効果の評価方法は、企業や自治体等だけでなく、国や世界の経済活動についても適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
11財務データ、12抽出、13品目・取引額データ、14産業連関コード集、15対象表、16品目一致チェック、17類似コード検索、18コード手入力、19既存言語ベクトル化モデル、20コード共起モデル化、21コード・取引額リスト、22統合モデル、23追加、24学習、25産業連関統計データ、26燃料等使用CO2発生データ、27CO2原単位リスト、29最新物価データ、30物価補正、31派生(波及)CO2演算、32派生(波及)CO2(量)、33産業連関統計物量票データ、34直間接CO2演算、35直接・間接CO2(量)、36バイオマスCO2吸収データ、37CO2吸収演算、38吸収CO2(量)、39SCRAP(スクラップ)価値リスト、40控除CO2演算、41控除CO2(量)、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7