(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014539
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】コイルのフィン構造
(51)【国際特許分類】
F28F 1/26 20060101AFI20250123BHJP
F28F 1/30 20060101ALI20250123BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F28F1/26 B
F28F1/30 D
F28F1/32 P
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117174
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】390003333
【氏名又は名称】新晃工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】星野 一人
(72)【発明者】
【氏名】宮内 紳祐
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智彦
(57)【要約】
【課題】コイルのスリットフィンの熱交換効率を向上させ、かつ、スリットフィンに自由端が生じないようにした熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器のコイルに設けたスリットフィンでコイルの主管の段数方向の隣り合う主管間の距離よりも大きくしたスリットフィン構造であって、前記段数方向の端部のスリットにおいて途中切断されて多くの自由端が存在しないように、端部処理を段数方向の端部のスリットフィンの長さを隣り合う主管間の距離より短くしたコイルのフィン構造
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器のコイルに設けたスリットフィンでコイルの主管の段数方向の隣り合う主管間の距離よりも大きくしたスリットフィン構造であって、前記段数方向の端部のスリットにおいて途中切断されて多くの自由端が存在しないように、段数方向の端部のスリットフィンの長さを隣り合う主管間の距離より短くしたことを特徴とするコイルのフィン構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のコイルのフィン構造に関し、特に、熱交換が良く、かつ、熱交換器の 製造時の取り扱いを容易にする熱交換器のフィン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換器のいわゆるコイルは、
図1に示すように、コイルの主管にフィンを装着し、熱交換性能を高めるためにフィン表面に切り起こしを設けたスリットフィンを設けている。このスリットフィンは、例えば、特許文献1に示すように、切り込みによる空気が通過する隙間がフィン表面に形成され、特許文献1のスリットは通常段方向(上下方向)及び列方向(左右方向)に連続形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のスリットフィンは、フィン表面に設けた切り起こしたスリットの前縁部で温度境界層を更新し、温度境界層の発達を抑えることで、熱伝達率を向上させるため、スリットフィンのスリットの上下方向の長さが長いほど熱伝達率をあげることができる。
コイルの主管間にスリットを配置する場合に、スリット長さを長くすることで、熱伝達率の高いスリット前縁部が主管に近づくため、さらに熱伝達率を向上させることにもつながる。
しかしながら、コイルの主管(チューブ) 間のスリットの長さが長くなると、
図3に示すように、所定段数(所定高さ)のコイル(熱交換器)を作成する際に、段数方向の端部において、形成したスリットが途中で切断されることとなる。
この途中で切断されるスリットの部分は、コイル(熱交換器)製造の各工程において、端部がバラバラになり、引っかかりによるフィン乱れや曲がりなどの、コイル製造上の取り扱いが困難な要因となる不都合がある。また、フィンの乱れや曲がりにより風の流れが乱れることで圧力損失が高くなる、あるいは騒音の原因につながる可能性がある等の不都合があった。
【0005】
この発明は、前記従来のスリットフィンの熱交換率を高めるための不都合を解決しようとするもので、熱交換器のコイルに設けたスリットフィンで、熱交換効率を向上させるために、段数方向の隣り合う主管の距離(
図5:X2)よりも大きくしたスリットフィン(
図5:X3)であって、段数方向の端部のスリットフィンが途中切断されて多くの自由端が存在することを防止し、コイルの製造時においてスリットフィンが乱れたり湾曲したりするのを防止した熱交換器のスリットフィンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、熱交換器のコイルに設けたスリットフィンでコイルの主管の段数方向の隣り合う主管間の距離よりも大きくしたスリットフィン構造であって、前記段数方向の端部のスリットにおいて途中切断されて多くの自由端が存在しないように、段数方向の端部のスリットフィンの長さを隣り合う主管間の距離より短くしたことを特徴とするコイルのフィン構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱交換器であるコイルに設けたスリットフィンは、スリットの上下方向の長さが長いほど熱伝導率をあげることができ、
図5の主管間の距離X3としたものである。
また、コイルの主管(チューブ)のフィンのスリットの長さが長くなると、
図3に示すように、所定段数(所定高さ)のコイル(熱交換器)を作成する際に、段数方向の端部において、形成したスリットが途中で切断されることとなる。
この途中で切断されるスリットの部分は、コイル(熱交換器)製造の各工程を経るにつれ、端部がバラバラになり、フィンの曲りが発生するなど製造上の取り扱いが困難となる不都合があった。また、スリットフィンの曲りに乱れがあることで風の流れが乱れ圧力損失が高くなる、あるいはフィンの振動による異音発生の原因につながる可能性があった。
この発明は、熱交換率を高めるために、主管間の距離(
図5:X1)よりもスリットフィンの距離をより大きく(
図5:X3)したスリットフィンであり、かつ、上下の主管の段数方向の端部のスリットフィンが途中切断されて多くの自由端が存在しないように、段数方向の端部のスリットフィンの長さを隣り合う主管間の距離より短く(
図5:X2)したので、全体としては主管間の多数のスリットフィンのスリット長さ(
図5:X3)を長くすることで、熱交換効率を向上させており、段数方向の端部のスリットフィンだけは短く(
図5:X2)するために、端部の主管の直後でスリットフィンを切断しただけなので、熱伝導率の低下は無視できる程度に少ないコイルのフィン構造であり、全体として熱交換効率は向上する。
【0008】
このように、所定段数(所定高さ)のコイル(熱交換器)を作成する際に、切断する段数方向の端部において、形成したスリットが途中で切断されることはなく、途中で切断されるスリットの部分は、コイル(熱交換器)製造の各工程において、端部がバラバラになる(自由端)ことはなく、引っかかりによるフィンの湾曲やフィン乱れなどもなく、コイル製造上の取り扱いが容易である。また、スリットフィンの 乱れが存在しないので、圧力損失の増加、あるいは騒音発生の可能性も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】端部未処理のスリットフィンの端部の切断状態を説明する図で、
図3(a)は側面の拡大部分側面図、
図3(b)はスリットフィンの端部の拡大部分平面図、
【
図5】本発明の実施例1のスリットフィンの端部の切断状態を説明する図で、
図5(a)は側面の拡大部分側面図、
図5(b)はスリットフィンの端部の拡大部分平面図、
【
図6】本発明の実施例1のコイル端部のフィンの乱れを解消した側面拡大部分の写真
【
図7】実施例1のスリットフィンの加工工程(2段送り)の工程図、
【
図8】実施例1の2段送りする金型を用いてプレスする工程を説明する説明図で、金型A、Bは一対で準備され、端部以外のプレス時には金型Aのみ使用してプレスし、金型Bは使用しない。端部付近では金型Aはプレスせず、金型Bのみを使用してプレスする。
【
図9】
図9(a)は実施例1のスリットフィンコイル段数が20段の全体平面図、
図9(b)は実施例1のスリットフィンコイル段数が10段の全体平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、熱交換器のコイルに設けたスリットフィンで、段数方向の隣り合う主管間の距離よりも大きくしたスリットフィン構造であって、フィンの段数方向の端部のスリットにおいて途中で切断されて多くの自由端が存在しないように、段数方向の端部のスリットフィンの長さを隣り合う主管間の距離(
図5:X1)より短くしたものであるが、本発明の好適な実施例を図に沿って説明する。
【0011】
図1は、本発明のフィン3を用いた熱交換器1で、
図2はフィン3の部分拡大図であるが、
図3と
図4は段数方向の端部のスリットフィン32の長さを隣り合う主管の距離より長くしたスリットフィン32で、
図5から
図9は段数方向の端部のスリットフィン32の長さを隣り合う主管の距離より短くした実施例である。
先ず、前提構成の
図1、
図2について説明するが、
図1において、熱交換器1は、コイル2が枠体21に設けられ、コイル2の片側にヘッダ22が設けられ、このヘッダ22はコイルの主管25が接続され、他方の片側にはUベンド26で主管25はヘッダ22に折り返されている。そして、ヘッダ22は冷温水入口221側と冷温水出口222側のヘッダ部分があり、このヘッダ部分の冷温水入口221側と冷温水出口222側には冷温水入口部23と冷温水出口部24が設けられ、コイル2に接続している。
【0012】
この主管25は、
図2に示すように、フィン3に接触して貫通するように主管用貫通孔31に挿入されている。このフィン3は、隣り合う主管25間の距離よりできる限り長く配置した長辺スリットフィン321と、隣り合う主管の距離より短かく配置した短辺スリットフィン322とから構成され、本実施例では長辺スリットフィン321は長すぎると湾曲やたわみを生じるので、
図2、
図3、
図5に示すように、本来、隣り合う主管25間の距離(
図5:X2)より長い(
図5:X3)のであるが、中間部に支持部やリブを設けた構成がないと、たわみが生じるので、本実施例では上下の2辺に分割してたわみの発生を少なくしている。このように、スリットの空気流が当たる面積を広げた分だけ熱交換効率は向上する。
ただし、長辺スリットフィン321はスリット部分がフィン3の切断面33に掛かると
図3の楕円A部分に示すようにフィン3のスリットフィン32の途中の切断面33で切断されてタコ足状態になり、その結果、
図4写真のC部分のような湾曲した状態になったり、フィンの機能が妨げられたり、圧力損失の増加、あるいは騒音発生の原因になったりする。
【0013】
前記のような不都合を解消するために、
図5に示すように、端部に長辺スリットフィン321の端部が切断面33に掛からないように、段数方向の端部でスリットフィン32の長さを隣り合うコイル主管用貫通穴31間の距離(
図5:X1)より短く配置する短辺スリットフィン322とする(
図5:X2)端部処理をしたので、端部での切断面33でフィン3を切断しても、
図5の楕円部分Bに示すように自由端が生じることがなく、
図6の写真のように、スリット32の途中で切断することはなく、スリットフィン32の端部が自由端になることはない。
この状態を
図6の写真に示すが、
図4のスリット32の端部での未処理の状態とは全く異なり、扱いも容易となる。
【0014】
[製造工程]
次ぎに、実施例1のスリットフィン32の加工工程の一例を説明するが、実施例1のスリットフィン32は、
図7に示すような、加工スピードを高めるために1段送りではなく2段送りの加工工程で説明する。
図7で、未加工のスリットフィン用の板状のフィン材5が供給装置51から送られ、先ず、主管用貫通孔加工(ピアスバーリング/リフレア加工)52工程で主管用貫通孔31を加工し、次ぎに、フィン材5が2段移動する毎にスリット加工53(プレス機)工程で、フィン材5をプレス加工するに際して、通常の長辺スリット321をプレス加工する金型A(531)と、末端処理のため短辺スリット322をプレス加工する金型Bを選択してプレスし、スリット加工53する。
この金型選択のスリット加工53は、具体的には
図8に示すように、スリット用金型A及びBが一対で準備され、通常には、長辺スリット用金型A531だけが選択されフィン材5をプレス加工する。そして、スリットフィン32が末端に近づくと、スリット加工53では端面の短辺スリット用の金型B532が選択され、端面の短辺スリット用の金型B532でフィン材5をプレスし、端面の短辺スリット用の金型B532でプレス加工されたスリットフィン32の中央部分の切断面33で、スリットフィン切断加工54で長手方向の所定箇所で切断し、送り機構55から製品のスリットフィン32が排出される。
すなわち、金型A:531は長辺スリット321を形成する金型で、金型B:532は短辺スリット322を形成する金型であるが、スリット加工53(プレス機)工程では端部には金型B:532を選択し、それ以外は全て金型Aを選択する。勿論、実施例1では2段送りの加工工程となるが、1段工程のプレス加工でも良い。
こうして、加工して出来上がったスリットフィン32の全体平面図を示すが、
図9(a)は実施例1のスリットフィンコイル段数が20段の全体平面図、
図9(b)は実施例1のスリットフィンコイル段数が10段の全体平面図であり、それぞれは、端部処理がなされており、スリットフィン32の端部に自由端は存在しない。
【0015】
以上、説明したように、本発明の実施例によれば、本発明の熱交換器であるコイルに設けたスリットフィンは、スリットの上下方向の長さが長いほど熱伝達率をあげることができ、また、コイルの主管(チューブ)間のスリットの長さが長くなると、
図2に示すように、所定段数(所定高さ)のコイル(熱交換器)を作成する際に、段数方向の端部において、形成したスリットが途中で切断されることとなるが、途中で切断されたスリットの部分は、製造の各工程を経るにつれ、端部がバラバラになり、フィン曲りが発生するなど製造上の取り扱いが困難な要因となる不都合があり、また、スリットフィンの自由端が存在することでフィンの振動による異音発生の可能性があったが、主管間の距離(
図5:X1)よりもスリットフィンの距離を大きく(
図5:X3)したスリットフィンで、かつ、上下の主管の段数方向の端部のスリットフィンが途中切断されて多くの自由端が存在しないように、段数方向の端部のスリットフィンの長さのみを隣り合う主管間の距離(
図5:X2)より短くしたので、全体としては主管間の多数のスリットフィンのスリット長さ(
図5:X3)を長くできることで、熱伝達率を向上させており、段数方向の端部のスリットフィンだけは短く(
図5:X2)し、端部の主管の直後でスリットフィンを切断しただけなので、従来のスリットフィンに比べて熱交換効率は向上し、端部処理による熱伝達率の低下は無視できる程度に少ないコイルのフィン構造となる。
このように、所定段数(所定高さ)のコイル(熱交換器)を作成する際に、スリットフィンの段数方向の端部において、形成したスリットが途中で切断されることはなく、途中で切断されるスリットの部分は、コイル(熱交換器)製造の各工程において、端部がバラバラになる(自由端)ことはなく、引っかかりによるフィンの湾曲やフィン乱れなどもなく、コイル製造上の取り扱いは従来と同じで簡便である。また、スリットフィンの自由端が存在しないので、圧力損出の増加、あるいは騒音発生の可能性も生じない。
【符号の説明】
【0016】
1・・熱交換器、
2・・コイル、21・・コイル枠体、
22・・ヘッダ、221・・冷温水入口側ヘッダ、222・・冷温水出口側ヘッダ、
23・・冷温水入口部、24・・冷温水出口部
25・・主管、26・・Uベンド、
3・・フィン、31・・コイル主管用の貫通孔、32・・スリットフィン、
321・・長辺スリット(フィン)、322・・短辺スリット(フィン)、33・・切断面
5・・フィン材、
52・・主管用貫通孔加工、53・・スリット加工(金型選択プレス加工)、
531・・金型A(長辺スリット)、532・・金型B(短辺スリット)、
54・・スリットフィン切断加工、55・・送り機構(スリットフィン)