(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001454
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】疎水化カチオン性ポリマー及び非水溶性粒子を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20241225BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20241225BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/84
A61K8/73
A61K8/64
A61K8/368
A61K8/365
A61K8/29
A61K8/27
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101051
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
(72)【発明者】
【氏名】ロヒット・ジャイン
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】松藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】前田 真志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB211
4C083AB231
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC471
4C083AC902
4C083AD071
4C083AD261
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD431
4C083BB21
4C083BB34
4C083CC01
4C083CC02
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】美容用途に有用であり、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供すること。
【解決手段】(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び(c)少なくとも1種の非水溶性粒子を含む組成物であって、(c)非水溶性粒子が負電荷を有する、組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び
(c)少なくとも1種の非水溶性粒子
を含む組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物であって、
(c)非水溶性粒子が、負電荷を有する、組成物。
【請求項2】
前記(a-1)カチオン性ポリマーが、20,000超の分子量(Da)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a-1)カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記(a-1)カチオン性ポリマーの量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(a-2)一価の非ポリマー酸が、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(a-3)水を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記(a-3)水の量が、前記組成物の総質量に対して、40質量%~99質量%、好ましくは45質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記(b-1)脂肪酸が、C4~C22、好ましくはC6~C20、より好ましくはC8~C18飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の前記(b-1)脂肪酸の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、グリセリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、より好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、(b-2)少なくとも1種のアルコールを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記(b-2)アルコールの量が、前記組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記(c)非水溶性粒子が、少なくとも1種の酸又はその塩で、好ましくは少なくとも1種の多価酸又はその塩で、より好ましくはフィチン酸又はその塩で表面処理された、金属酸化物、好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化鉄、より好ましくは酸化チタンから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の前記(c)非水溶性粒子の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~15質量%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも、前記(a-1)カチオン性ポリマー、前記(b-1)脂肪酸、及び前記(c)非水溶性粒子が、少なくとも1種の錯体を形成する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の疎水化カチオン性ポリマー及び少なくとも1種の非水溶性粒子を含む組成物、並びに組成物を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に適合性の化粧料の配合は、環境問題を考慮して設計及び開発されたものであり、世界的な課題を満たすための主要な目標になっている。
【0003】
したがって、これらの環境問題に対処するための、より持続可能な組成物、調製方法及び成分を提案することが必須である。
【0004】
この文脈において、特に再生可能な原料及び/又は良好な自然指数を有する材料及び/又は天然起源の材料、より具体的には植物起源の材料の使用を促進し、一方で石油化学起源の化合物の使用を減少することによって、より良好なカーボンフットプリントを有する新規の化粧用組成物を開発することが重要である。
【0005】
アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーで形成されているポリイオンコンプレックスは、既に公知である。
【0006】
例えば、WO2021/125069は、美容処置に有用であり、少なくとも1種のカチオン性ポリマー、少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸を含む、少なくとも1種のポリイオンコンプレックス粒子を含む、組成物を開示している。WO2021/125069はまた、ここで開示される組成物が、油を含んでもよく、エマルションの形態にあってもよいことも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2021/125069
【特許文献2】欧州特許出願第0080976号
【特許文献3】仏国特許第2077143号
【特許文献4】仏国特許第2393573号
【特許文献5】仏国特許第1492597号
【特許文献6】米国特許第4,131,576号
【特許文献7】米国特許第3,589,578号
【特許文献8】米国特許第4,031,307号
【特許文献9】仏国特許第2162025号
【特許文献10】仏国特許第第2280361号
【特許文献11】仏国特許第2252840号
【特許文献12】仏国特許第2368508号
【特許文献13】仏国特許第1,583,363号
【特許文献14】米国特許第3,227,615号
【特許文献15】米国特許第2,961,347号
【特許文献16】仏国特許第2080759号
【特許文献17】仏国特許第2320330号
【特許文献18】仏国特許第2270846号
【特許文献19】仏国特許第2316271号
【特許文献20】仏国特許第2336434号
【特許文献21】仏国特許第2413907号
【特許文献22】米国特許第2,273,780号
【特許文献23】米国特許第2,375,853号
【特許文献24】米国特許第2,388,614号
【特許文献25】米国特許第2,454,547号
【特許文献26】米国特許第3,206,462号
【特許文献27】米国特許第2,261,002号
【特許文献28】米国特許第2,271,378号
【特許文献29】米国特許第3,874,870号
【特許文献30】米国特許第4,001,432号
【特許文献31】米国特許第3,929,990号
【特許文献32】米国特許第3,966,904号
【特許文献33】米国特許第4,005,193号
【特許文献34】米国特許第4,025,617号
【特許文献35】米国特許第4,025,627号
【特許文献36】米国特許第4,025,653号
【特許文献37】米国特許第4,026,945号
【特許文献38】米国特許第4,027,020号
【特許文献39】欧州特許出願第0122324号
【特許文献40】WO03/068824
【特許文献41】仏国特許第2679771号
【特許文献42】欧州特許第1184426号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、少なくとも1種のカチオン性ポリマー、少なくとも1種の脂肪酸、及び少なくとも1種の非水溶性粒子をベースとする少なくとも1種の粒子を含むことができる組成物であって、美容用途に有用な組成物を提供することである。
【0009】
加えて、本発明の第2の目的は、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記の目的は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び
(c)少なくとも1種の非水溶性粒子
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物であって、
(c)非水溶性粒子が負電荷を有する、組成物によって達成することができる。
【0011】
(a-1)カチオン性ポリマーは、20,000超の分子量(Da)を有してもよい。
【0012】
(a-1)カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されうる。
【0013】
本発明による組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0014】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸であってもよい。
【0015】
本発明による組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%でありうる。
【0016】
本発明による組成物は、(a-3)水を更に含んでいてもよい。
【0017】
本発明による組成物中の(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%~99質量%、好ましくは45質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%であってもよい。
【0018】
(b-1)脂肪酸は、C4~C22、好ましくはC6~C20、より好ましくはC8~C18飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択されうる。
【0019】
本発明による組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0020】
本発明による組成物は、好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、グリセリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、より好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、(b-2)少なくとも1種のアルコールを更に含んでもよい。
【0021】
本発明による組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%でもよい。
【0022】
(c)非水溶性粒子は、少なくとも1種の酸又はその塩で、好ましくは少なくとも1種の多価酸又はその塩で、より好ましくはフィチン酸又はその塩で表面処理された、金属酸化物、好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化鉄、より好ましくは酸化チタンから選択されうる。
【0023】
本発明による組成物中の(c)非水溶性粒子の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~15質量%であってもよい。
【0024】
(a-1)カチオン性ポリマー、(b-1)脂肪酸、及び(c)非水溶性粒子は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1による組成物の光学顕微鏡画像を示す。
【
図2】比較例3による組成物の光学顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
鋭意検討の結果、本発明者らは、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の脂肪酸を少なくともベースとした少なくとも1種の粒子を含み、美容用途に有用であり、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0027】
本発明による組成物は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び
(c)少なくとも1種の非水溶性粒子
を含み、
(c)非水溶性粒子は、負電荷を有する。
【0028】
本発明による組成物は、少なくとも、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸を含む、少なくとも1種の粒子を形成することができる。(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。この粒子は、サイズが0.3~10ミクロン等の典型的なミクロンオーダーであるゲル粒子であってもよい。粒子は、線状でも繊維状でもないが、球又は球体の形態であってよい。そのため、粒子のアスペクト比は、5未満、好ましくは3未満、より好ましくは2未満であってもよい。粒子の「サイズ」は、粒子の最長径であってもよい。
【0029】
また、(a-1)カチオン性ポリマー、(b-1)脂肪酸、及び(c)非水溶性粒子は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。
【0030】
本発明による組成物は、分散体の形態であってもよい。
【0031】
本発明による組成物は、ゲルの形態であってもよい。更に、本発明による組成物は、ダイラタンシー効果を示しうる。
【0032】
本発明による組成物は、良好な触感(良好な質感)をもたらすことができる。例えば、本発明による組成物は、ケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に該組成物を適用するとき、滑らかな感触をもたらすことができる。
【0033】
本発明による組成物は、皮膜を形成することができる。本発明による組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥するとき、本発明による組成物中の粒子は、そのサイズを縮小することができ、連続皮膜を形成することができる。
【0034】
本発明による組成物は、ケーキングを生じないような安定性とすることができる。したがって、本発明による組成物は、長期間にわたり、保存することができる。
【0035】
本発明による組成物は、良好な湿潤性を有することができる。したがって、本発明による組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用するとき、本発明による組成物は、基材との高い親和性に起因して、基材の表面をよく被覆することができる。
【0036】
本発明による組成物はまた、良好な皮膜形成能も有しうる。したがって、本発明による組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥するとき、本発明による組成物は、亀裂のない均一な皮膜を形成することができる。
【0037】
本発明による組成物は、非水溶性皮膜を形成することができる。そのため、本発明による組成物は、汗又は雨により濡れている状態であっても安定性の防水化粧皮膜を与えることができる。したがって、化粧皮膜の美容効果は、長期間にわたって維持されうる。
【0038】
本発明による組成物は、良好な触感(良好な質感)をもたらすことができる。例えば、本発明による組成物は、ケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に該組成物を適用するとき、滑らかな感触をもたらすことができる。
【0039】
本発明による組成物は、不自然な白色の外観を有さない、自然な外見をもたらすことができる。本発明による組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥するとき、本発明による組成物は、基材の外観に悪影響がない透明な皮膜を形成することができる。
【0040】
本発明による組成物は、弾力性の皮膜を形成することができる。そのため、本発明による組成物は、弾性等の良好な質感を有する化粧皮膜を与えることができる。
【0041】
これに応じて、本発明による組成物は、美容用途に有用である。
【0042】
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマーが天然資源から得られる場合、(a-1)カチオン性ポリマーは、環境に適合性の成分とすることができる。例えば、(a-1)カチオン性ポリマーは、環境に適合性のキトサンから選択されうる。したがって、本発明による組成物は、環境に適合性の成分を含むことができる。
【0043】
加えて、成分(a-2)及び(b-1)は、植物等の再生可能な材料及び/又は生分解性材料を起源とすることができる。したがって、本発明による組成物は、環境に適合性とすることができる。
【0044】
組成物は、(b-1)脂肪酸とは異なる少なくとも1種の油を含んでもよい。しかしながら、油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満となるように限定されうる。そのため、本発明による組成物は、この実施形態では、油から誘導される粘着性を低減することができる。
【0045】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0046】
[組成物]
本発明の組成物は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び
(c)少なくとも1種の非水溶性粒子
を含み、
(c)非水溶性粒子は、負電荷を有する。
【0047】
本発明の組成物において、(a-1)カチオン性ポリマー、(b-1)脂肪酸、及び(c)非水溶性粒子は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。
【0048】
(a-1)カチオン性ポリマーのアミノ(-NH2)又はアンモニウム(-NH3
+)基等の正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分は、(b-1)脂肪酸のカルボン酸(-COOH)又はカルボキシレート(-COO-)基とイオン相互作用して、錯体を形成することができる。錯体は、(b-1)脂肪酸の脂肪部分に由来する少なくとも1つの疎水性部分を含む。したがって、(a-1)カチオン性ポリマーは、錯体を形成することにより、(b-1)脂肪酸によって疎水化されうる。
【0049】
以下の図は、R-COOH[式中、Rは、(b-1)脂肪酸の脂肪部分を示す]により表される(b-1)脂肪酸による、(a-1)カチオン性ポリマーとしてのキトサンの疎水化の例、すなわち、(a-1)カチオン性ポリマーとしてのキトサンと(b-1)脂肪酸との錯体の形成の例を示す。
【0050】
【0051】
(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸によって形成された錯体は、錯体の疎水性部分間の疎水性相互作用により、凝集して少なくとも1種の粒子を形成することができる。
【0052】
以下の図は、(a-1)カチオン性ポリマー(線で表す)及び(b-1)脂肪酸(小さな点で表す)によって形成された錯体の凝集により形成された粒子の例を示す。
【0053】
【0054】
本発明の組成物は、少なくとも、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸を含む、少なくとも1種の粒子を形成する。言い換えれば、少なくとも、本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸は、少なくとも1種の粒子を形成することができる。上記の粒子は、非常に小さく、したがって、目視で認識できない。
【0055】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、上記の粒子と相互作用することができる。そのため、上記の粒子は、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩も含んでよい。
【0056】
上記の粒子は、(a-1)カチオン性ポリマーから誘導される正電荷を有する。
【0057】
上記の粒子は、例えば、非水溶性粒子の表面処理によって負電荷を有するようになった(c)非水溶性粒子とイオン相互作用することができる。
【0058】
以下の図は、上記の粒子と負電荷を有する(c)非水溶性粒子(大きな点で表す)との相互作用の例を示す。粒子の正電荷は「+」で表され、一方で、(c)非水溶性粒子の負電荷は「-」で表される。
【0059】
【0060】
上記のイオン相互作用は、各粒子が(a-1)カチオン性ポリマー、(b-1)脂肪酸、及び負電荷を有する(c)非水溶性粒子を含む、粒子の形態の更なる錯体を形成することができる。これらの粒子は、凝集しない。
【0061】
(a-1)カチオン性ポリマー及び負電荷を有する(c)非水溶性粒子を直接合わせた場合、これらの間の強力なイオン相互作用が凝集を起こし、結果としてケーキングが生じる。しかしながら、(b-1)脂肪酸による(a-1)カチオン性ポリマーの疎水化によって、凝集を防止することができる。したがって、本発明の組成物は、ケーキングを生じず、流体とすることができる。
【0062】
(カチオン性ポリマー)
本発明の組成物は、(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。単一のタイプのカチオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0063】
カチオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。(a-1)カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05meq/g~15meq/g、より好ましくは0.1meq/g~10meq/gでもよい。
【0064】
(a-1)カチオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更により好ましくは4,000以上であることが好ましい場合がある。
【0065】
(a-1)カチオン性ポリマーは、20,000超の分子量を有することが特に好ましい場合がある。
【0066】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。
【0067】
(a-1)カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。用語(第一級)「アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0068】
(a-1)カチオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるもの、例えば3種類のモノマーから結果として得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0069】
(a-1)カチオン性ポリマーは、天然の及び合成のカチオン性ポリマー、好ましくは天然のカチオン性ポリマーから選択することができる。カチオン性ポリマーの非限定例は、以下の通りである。
【0070】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル及びアミドに由来し、以下の式の単位から選択される少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0071】
【0072】
(式中:
R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基及びエチル基から選択され、
R3は、同一であっても異なっていてもよく、水素及びCH3から選択され、
記号Aは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基、及び1~4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基から選択され、
R4、R5及びR6は、同一であっても異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を含むアルキル基、及びベンジル基、及び少なくとも1つの実施形態では、1~6個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Xは、無機又は有機酸に由来するアニオン、例えばメト硫酸アニオン及びハロゲン化物イオン、例えば、塩化物イオン及び臭化物イオンである)。
【0073】
ファミリー(1)のコポリマーはまた、コモノマーに由来する少なくとも1つの単位も含んでよく、これは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素原子が(C1~C4)低級アルキル基で置換されているアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル又はメタクリル酸及びそれらのエステルに由来する基、ビニルラクタム、例えばビニルピロリドン及びビニルカプロラクタム、並びにビニルエステルから選択されうる。
【0074】
ファミリー(1)のコポリマーの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
アクリルアミドと硫酸ジメチル又はハロゲン化ジメチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとのコポリマー、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー、例えば欧州特許出願第0080976号に記載されているもの、
アクリルアミドとメト硫酸メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムとのコポリマー、四級化又は非四級化ビニルピロリドン/アクリル酸又はメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルコポリマー、例えば仏国特許第2077143号及び同第2393573号に記載されているもの、メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンターポリマー、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルジメチルアミンコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、及び架橋メタクリロイルオキシ(C1~C4)アルキルトリ(C1~C4)アルキルアンモニウム塩ポリマー、例えば塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルの単独重合によって、又はアクリルアミドと、塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合によって、得られるポリマーであって、その単独重合又は共重合に続いて、オレフィン性不飽和を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミドで架橋することによって、得られるポリマー。
【0075】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUnion Carbide Corporation社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0076】
カチオン性セルロースポリマーが、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0077】
第四級アンモニウム基は、以下の化学式(I)によって表されうる第四級アンモニウム基含有基中に存在しうる:
【0078】
【0079】
(式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~3アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~24アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~4アルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基を示す)。
【0080】
上記の化学式(I)中の最左のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0081】
第四級アンモニウム基含有基が、-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0082】
(3)第四級アンモニウムの水溶性モノマーでグラフト化されたセルロースコポリマー及びセルロース誘導体等のカチオン性セルロースポリマー、例えば、米国特許第4,131,576号に記載のもの、例えば、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウム塩から選択される塩でグラフト化された、ヒドロキシアルキルセルロース、例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルセルロース等。
【0083】
これらのポリマーに相当する市販製品としては、例えば、National Starch社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0084】
(4)米国特許第3,589,578号及び同第4,031,307号に記載されている、非セルロース系カチオン性多糖、例えばカチオン性トリアルキルアンモニウム基を含むグアーガム、カチオン性ヒアルロン酸及びデキストランヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド。2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムの塩で修飾されたグアーガム、例えば、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムの塩化物で修飾されたグアーガム(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)もまた、使用することができる。
【0085】
このような製品は、例えば、MEYHALL社により商品名JAGUAR(登録商標)C13 S、JAGUAR(登録商標)C15、JAGUAR(登録商標)C17及びJAGUAR(登録商標)C162で販売されている。
【0086】
(5)ピペラジニル単位と、酸素、硫黄、窒素、芳香族環及び複素環式環から選択される少なくとも1つの要素により任意選択で割り込まれた直鎖又は分枝鎖を含む二価のアルキレン又はヒドロキシアルキレン基とを含むポリマー、並びにまたこれらのポリマーの酸化及び/又は四級化生成物。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2162025号及び同第2280361号に記載されている。
【0087】
(6)例えば酸性化合物をポリアミンと重縮合させることによって調製される水溶性ポリアミノアミドであり、これらのポリアミノアミドは、エピハロヒドリン;ジエポキシド;二無水物;不飽和二無水物;ビス不飽和誘導体;ビスハロヒドリン;ビスアゼチジニウム;ビスハロアシルジアミン;ビスアルキルハライド;ビスハロヒドリン、ビスアゼチジニウム、ビスハロアシルジアミン、ビスアルキルハライド、エピハロヒドリン、ジエポキシド及びビス不飽和誘導体から選ばれる要素と反応性である二官能性化合物の反応から得られるオリゴマーから選ばれる要素で架橋されている場合があり;その架橋剤は、ポリアミノアミドのアミン基1つ当たり0.025~0.35molの範囲の量で使用され;これらのポリアミノアミドは、任意選択でアルキル化されているか、又はこれらが少なくとも1つの第三級アミン官能基を含む場合、それらは、四級化されていてもよい。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2252840号及び同第2368508号に記載されている。
【0088】
(7)ポリアルキレンポリアミンをポリカルボン酸と縮合させ、続いて二官能性作用剤でアルキル化することから得られるポリアミノアミド誘導体、例えば、メチル、エチル及びプロピルの各基等の、アルキル基が1~4個の炭素原子を含み、エチレン基等の、アルキレン基が1~4個の炭素原子を含む、アジピン酸/ジアルキルアミノヒドロキシアルキルジアルキレントリアミンポリマー。このようなポリマーは、例えば仏国特許第1,583,363号に記載されている。少なくとも1つの実施形態では、これらの誘導体は、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンポリマーから選択されうる。
【0089】
(8)2つの第一級アミン基及び少なくとも1つの第二級アミン基を含むポリアルキレンポリアミンと、ジグリコール酸、及び3~8個の炭素原子を含む飽和脂肪族ジカルボン酸から選択されるジカルボン酸との反応によって得られるポリマー。ポリアルキレンポリアミンのジカルボン酸に対するモル比は、0.8:1~1.4:1の範囲であってよく、それから得られるポリアミノアミドを、エピクロロヒドリンと、エピクロロヒドリンの、ポリアミノアミドの第二級アミン基に対するモル比0.5:1~1.8:1の範囲で反応させる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第3,227,615号及び同第2,961,347号に記載されている。
【0090】
(9)アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリル-アンモニウムのシクロポリマー、例えば、鎖の主要構成要素として、式(Ia)及び(Ib)の単位から選ばれる少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0091】
【0092】
(式中:
k及びtは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1に等しく、和k+tは、1に等しく、
R12は、水素及びメチル基から選択され、
R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、アルキル基が例えば1~5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基、及び低級(C1~C4)アミドアルキル基から選択され、又はR10及びR11は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジニル及びモルホリニルを形成してもよく、
Y'は、アニオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである)。これらのポリマーは、例えば仏国特許第2080759号及びその追加特許第2190406号に記載されている。
【0093】
一実施形態では、R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0094】
このようなポリマーの例としては、これらに限定されないが、(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えばCALGON社により名称「MERQUAT(登録商標)100」で販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー(及び低質量平均分子量のそのホモログ)、並びに名称「MERQUAT(登録商標)550」で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーが挙げられる。
【0095】
(10)式(II)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む第四級ジアンモニウムポリマー:
【0096】
【0097】
[式中:
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族基、並びに低級ヒドロキシアルキル脂肪族基から選択され、或いは、R13、R14、R15及びR16は、これらが結合している窒素原子と一緒になって又は別々に、窒素以外の第2のヘテロ原子を任意選択で含む複素環を形成してもよく、或いは、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、ニトリル基、エステル基、アシル基、アミド基、-CO-O-R17-E基及び-CO-NH-R17-E基(式中、R17は、アルキレン基であり、Eは、第四級アンモニウム基である)から選択される少なくとも1つの基で置換されている直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基から選択され、
A1及びB1は、同一であっても異なっていてもよく、2~20個の炭素原子を含むポリメチレン基から選択され、これは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であってよく、これは、芳香族環、酸素、硫黄、スルホキシド基、スルホン基、ジスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシル基、第四級アンモニウム基、ウレイド基、アミド基及びエステル基から選択される少なくとも1つの要素を、主鎖中に、連結されて又は挿入されて含んでよく、
X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンであり、
A1、R13及びR15は、これらが結合している2個の窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成してもよく、
A1が、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和アルキレン又はヒドロキシアルキレン基から選択される場合、B1は、以下:
-(CH2)n-CO-E'-OC-(CH2)n-
{式中、E'は、以下:
a)式-O-Z-O-のグリコール残基[式中、Zは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基、及び以下の式の基:
-(CH2-CH2-O)x-CH2-CH2-
-[CH2-CH(CH3)-O]y-CH2-CH(CH3)-
(式中、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、定義された独自の重合度を表す1~4の範囲の整数、及び平均重合度を表す1~4の範囲の数から選択される)
から選択される]、
b)ビス-第二級ジアミン残基、例えばピペラジン誘導体、
c)式-NH-Y-NH-(式中、Yは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系の基及び二価基-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-から選択される)のビス-第一級ジアミン残基、並びに
d)式-NH-CO-NH-のウレイレン基
から選択される}
から選択されうる]。
【0098】
少なくとも1つの実施形態では、X-は、アニオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンである。
【0099】
このタイプのポリマーは、例えば、仏国特許第2320330号、同第2270846号、同第2316271号、同第2336434号及び同第2413907号、並びに米国特許第2,273,780号、同第2,375,853号、同第2,388,614号、同第2,454,547号、同第3,206,462号、同第2,261,002号、同第2,271,378号、同第3,874,870号、同第4,001,432号、同第3,929,990号、同第3,966,904号、同第4,005,193号、同第4,025,617号、同第4,025,627号、同第4,025,653号、同第4,026,945号、及び同第4,027,020号に記載されている。
【0100】
このようなポリマーの非限定的な例としては、式(III)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むものが挙げられる:
【0101】
【0102】
(式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル及びヒドロキシアルキル基から選択され、n及びpは、同一であっても異なっていてもよく、2~20の範囲の整数であり、X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンである)。
【0103】
(11)式(IV)の単位を含むポリ第四級アンモニウムポリマー:
【0104】
【0105】
(式中:
R18、R19、R20及びR21は、同一であっても異なっていてもよく、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、β-ヒドロキシエチル基、β-ヒドロキシプロピル基、-CH2CH2(OCH2CH2)pOH基(式中、pは、0~6の範囲の整数から選択される)から選択され、但し、R18、R19、R20及びR21が同時に水素であることはなく、
r及びsは、同一であっても異なっていてもよく、1~6の範囲の整数から選択され、
qは、0~34の範囲の整数から選択され、
X-は、アニオン、例えばハロゲン化物イオンであり、
Aは、ジハライド及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-の基から選択される)。
【0106】
このような化合物は、例えば欧州特許出願第0122324号に記載されている。
【0107】
(12)ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマー。
【0108】
好適なカチオン性ポリマーの他の例には、カチオン性タンパク質及びカチオン性タンパク質加水分解物、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、ビニルピリジン単位及びビニルピリジニウム単位から選択される単位を含むポリマー、ポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物、第四級ポリウレイレン、並びにキチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
本発明の一実施形態によれば、(a-1)カチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUNION CARBIDE CORPORATION社により名称「JR 400」で販売されている製品、カチオン性シクロポリマー、例えばCALGON社により名称MERQUAT(登録商標)100、MERQUAT(登録商標)550及びMERQUAT(登録商標)Sで販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩で修飾されたグアーガム、並びにビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマーから選択される。
【0110】
(13)ポリアミン
(a-1)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基を有する、ホモポリマー又はコポリマーでもよい(コ)ポリアミンを使用することも可能である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、(コ)ポリアミンのポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。
【0111】
(コ)ポリアミンの例として、キトサン、(コ)ポリアリルアミン、(コ)ポリビニルアミン、(コ)ポリアニリン、(コ)ポリビニルイミダゾール、(コ)ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、(コ)ポリビニルピリジン、例えば(コ)ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、(コ)ポリイミン、例えば(コ)ポリエチレンイミン、(コ)ポリピリジン、例えば(コ)ポリ(第四級ピリジン)、(コ)ポリビグアニド、例えば(コ)ポリアミノプロピルビグアニド、(コ)ポリリジン、(コ)ポリオルニチン、(コ)ポリアルギニン、(コ)ポリヒスチジン、アミノデキストラン、アミノセルロース、アミノ(コ)ポリビニルアセタール、及びこれらの塩を挙げることができる。
【0112】
(コ)ポリアミンとしては、(コ)ポリリジンを使用することが好ましい場合がある。ポリリジンは、周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成されうるL-リジンの天然ホモポリマーであることができる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンであることができる。ポリリジンは、極性溶媒、例えば水、プロピレングリコール及びグリセロールに可溶性の高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の多様な形態で市販されている。ポリ-L-リジンが好ましい。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態にあってもよい。
【0113】
(14)カチオン性ポリアミノ酸
(a-1)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基及びカルボキシル基を有する、カチオン性ホモポリマー又はコポリマーでありうるカチオン性ポリアミノ酸を使用することが可能でありうる。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、カチオン性ポリアミノ酸のポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。カルボキシル基は、カチオン性ポリアミノ酸の、存在する場合はペンダント基中に存在してもよい。
【0114】
カチオン性ポリアミノ酸の例として、カチオン化コラーゲン、カチオン化ゼラチン、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コンキオリンタンパク質、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ダイズタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質等を挙げることができる。
【0115】
以下の説明は、カチオン性ポリマーの好ましい実施形態に関する。
【0116】
(a-1)カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0117】
(a-1)カチオン性ポリマーは、キトサンから選択されることがより好ましい。
【0118】
キトサンは、20,000超、好ましくは50,000超、より好ましくは80,000超の分子量(Da)を有することが好ましい。換言すれば、(a-1)カチオン性ポリマーは、高分子量キトサンである。
【0119】
キトサンの分子量(Da)は、1,000,000未満、好ましくは500,000未満、より好ましくは300,000未満であってもよい。
【0120】
キトサンの分子量(Da)は、20,000超及び1,000,000未満、好ましくは50,000超及び500,000未満、より好ましくは80,000超及び300,000未満であってもよい。
【0121】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。分子量は、例えば、ASTM D5296-19に準拠して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定又は決定することができる。
【0122】
キトサンは、自然界で非常に希少である。キトサンは、シロアリの女王等の特定の昆虫の外骨格中及び特定の部類の菌類である接合菌綱の細胞壁中でのみ報告されている。
【0123】
キトサンは、キチンの脱アセチル化によって得ることができる。キチンは、β型結合(1,4)によって一緒に連結された幾つかのN-アセチル-D-グルコサミン単位から構成された多糖である。
【0124】
キトサンの理想的な化学構造は、グリコシド結合(1→4)によって結合されたβ-D-グルコサミンモノマーの配列である。
【0125】
本発明における「キトサン」は、構成単位N-アセチル-D-グルコサミン及びD-グルコサミンから形成される任意のコポリマーであって、そのアセチル化度が90%未満、好ましくは80%未満、好ましくは70%未満、好ましくは60%未満、好ましくは50%未満である、任意のコポリマーを意味する。キトサンは、β型結合(1,4)により一緒に連結されているグルコサミン糖単位(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン単位(アセチル化単位)からなり、ポリ(N-アセチル-D-グルコサミン)-ポリ(D-グルコサミン)タイプのポリマーである。
【0126】
より好ましくは、キトサンのアセチル化度は、40%以下、好ましくは35%以下、好ましくは25%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下である。
【0127】
アセチル化度は、全単位の数に対するアセチル化単位の百分率であり、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)又は強塩基による滴定法によって決定することができる。
【0128】
本発明におけるキトサンは、好ましくは、菌類起源から調製された多糖である。特に、キトサンは、安全で豊富な食料又はバイオテクノロジーによる菌類起源[マッシュルーム(Agaricus bisporus)若しくはクロコウジカビ(Aspergillus niger)等]から抽出及び精製される。
【0129】
本発明におけるキトサンは、好ましくは、子嚢菌綱(Ascomycete)タイプの菌類、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)及び/又は担子菌類(Basidiomycete fungus)、具体的にはシイタケ(Lentinula edodes)及び/又はマッシュルーム(Agaricus bisporus)の菌糸体に由来する。好ましくは、菌類はクロコウジカビ(Aspergillus niger)である。
【0130】
キトサンは、遺伝子組み換え生物(GMO:Genetically Modified Organisms)起源のものであってもよいが、好ましくは非GMO起源のものである。
【0131】
本発明におけるキトサンは、天然であり、すなわち、修飾されていない。特に、一切の化学修飾を含まない。
【0132】
キトサンの一調製方法は、WO03/068824に記載のものである。
【0133】
好ましくは、本発明において使用されるキトサンは、粉末の形態である。Kitozyme社により名称Kiosmetine又はKionutrime、例えばKiosmetine-CSH及びKiosmetine Pで市販されている。
【0134】
(a-1)は、キトサン、より好ましくは分子量(Da)が20,000超のキトサンから選択されることが好ましい。
【0135】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0136】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0137】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0138】
(一価の非ポリマー酸又はその塩)
本発明の組成物は、(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩を含む。単一のタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩の組合せを使用することができる。
【0139】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリアクリル酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0140】
本明細書における用語「塩」は、一価の非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、一価の非ポリマー酸と、塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0141】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の分子量が、1000未満、好ましくは500以下、より好ましくは200以下であることが好ましい。
【0142】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、(a-3)水によって形成される水性相中に含まれうる。(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、(a-3)水に対する(a-1)カチオン性ポリマーの溶解を促進することができる。
【0143】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる単一の酸基を有する。
【0144】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、一価の有機酸又は無機酸及びそれらの塩から選択されうる。
【0145】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、一価の有機酸、より好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸であることが好ましい。
【0146】
一価の非ポリマーカルボン酸は、ヒドロキシ酸、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸及びベータ-ヒドロキシ酸から選択されうる。アルファ-ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸及びグリコール酸を挙げることができる。ベータ-ヒドロキシ酸としては、例えば、サリチル酸を挙げることができる。
【0147】
一価の非ポリマー酸は、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸であってもよい。(a-1)カチオン性ポリマーがキトサンから選択される場合、乳酸及びサリチル酸が特に好ましいが、その理由は、これらがキトサンを効果的に溶解することができ、臭いが少ないからである。
【0148】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0149】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0150】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%でありうる。
【0151】
(水)
本発明の組成物は、(a-3)水を含んでよい。
【0152】
(a-3)水は、本発明の組成物の連続相である水性相を形成することができる。
【0153】
(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上であってもよい。
【0154】
(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下であってもよい。
【0155】
(a-3)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%~99質量%、好ましくは45質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%であってもよい。
【0156】
(脂肪酸)
本発明の組成物は、(b-1)少なくとも1種の脂肪酸を含む。単一のタイプの脂肪酸を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの脂肪酸を組み合わせて使用してもよい。
【0157】
(b-1)脂肪酸は、(a-1)カチオン性ポリマーを疎水化することができる。
【0158】
本明細書において用語「脂肪酸」は、脂肪族炭素の長鎖を有するカルボン酸を意味する。
【0159】
(b-1)脂肪酸は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有する。(b-1)脂肪酸は、最大26個の炭素原子、好ましくは最大24個の炭素原子、より好ましくは最大22個の炭素原子を含んでもよい。(b-1)脂肪酸は、C4~C26脂肪酸、より好ましくはC6~C24脂肪酸、更により好ましくはC8~C22脂肪酸から選択されることが好ましい。
【0160】
(b-1)脂肪酸は、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状の脂肪酸から選択されうる。そのため、(b-1)脂肪酸は、C4~C26、好ましくはC6~C24、より好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択されうる。
【0161】
不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸として、一価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸又は多価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸を使用してもよい。不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸の不飽和部分として、炭素間二重結合又は炭素間三重結合を挙げることができる。
【0162】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、イソステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びリグノセリン酸(C24)を挙げることができる。
【0163】
不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、エライジン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、エルカ酸(C22)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる。
【0164】
(b-1)脂肪酸は、C8~C18飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から、より好ましくはカプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0165】
(b-1)脂肪酸は、その遊離酸の形態又はその塩の形態であってもよい。脂肪酸の塩として、無機塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、並びに有機塩、例えばアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩等)及びアミン塩(トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等)を挙げることができる。単一のタイプの脂肪酸塩又は異なるタイプの脂肪酸塩の組合せを使用してもよい。更に、遊離酸の形態の1種又は複数の脂肪酸と、塩の形態の1種又は複数の脂肪酸との組合せを使用することができ、1種又は複数のタイプの塩を使用することもできる。
【0166】
本発明の組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でよい。
【0167】
一方で、本発明の組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でもよい。
【0168】
したがって、本発明の組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲でありうる。
【0169】
(アルコール)
本発明の組成物は、(b-2)少なくとも1種のアルコールを含んでよい。単一のタイプのアルコールを使用してもよく、又は2種以上の異なるタイプのアルコールを組み合わせて使用してもよい。
【0170】
(b-2)アルコールは、大気圧(760mmHg又は105Pa)下、室温、例えば25℃において液体の形態でありうる。
【0171】
(b-2)アルコールは揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0172】
「揮発性」という用語は、アルコールが、標準大気圧、例えば1atm及び室温、例えば25℃で蒸発することができることを意味する。
【0173】
(b-2)一価又は二価のアルコールは、(b-1)脂肪酸と(a-1)カチオン性ポリマーとの錯化を促進するように機能することができる。
【0174】
(b-2)アルコールは、好ましくは一価の脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコール、及びこれらの混合物から、より好ましくは一価の脂肪族アルコールから選択される、一価のアルコールであってもよい。
【0175】
一価の脂肪族アルコール(モノオール)は、2~6個の炭素原子、好ましくは2又は3個の炭素原子、及び1つのヒドロキシル基を有していてもよい。一価の脂肪族アルコールの例としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0176】
一価の芳香族アルコールは、8~12個の炭素原子、好ましくは8~10個の炭素原子、より好ましくは8個の炭素原子を有しうる。一価の脂肪族アルコールの例としては、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0177】
(b-2)アルコールは、好ましくは二価又は多価の脂肪族アルコール、二価又は多価の芳香族アルコール、及びこれらの混合物から、より好ましくは二価又は多価の脂肪族アルコールから選択される、二価又は多価のアルコールであってもよい。
【0178】
二価の脂肪族アルコール(ジオール)は、2~8個の炭素原子、好ましくは3~7個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子、及び2つのヒドロキシル基を有しうる。二価の脂肪族アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0179】
多価の脂肪族アルコールは、糖類又はその誘導体を包含しない。糖類の誘導体には、糖類の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、並びに1つ又は複数のヒドロキシ基中の水素原子が、少なくとも1つの置換基、例えばアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基又はカルボニル基で置き換えられている糖類又は糖アルコールが含まれる。
【0180】
多価の脂肪族アルコール(ポリオール)は、3~10個の炭素原子、好ましくは4~9個の炭素原子、より好ましくは5~8個の炭素原子、及び3つ以上のヒドロキシル基を有しうる。多価の脂肪族アルコールの例としては、グリセリン及びジグリセリンが挙げられる。
【0181】
(b-2)アルコールは、エタノール、ペンチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0182】
本発明の組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0183】
本発明の組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下でもよい。
【0184】
本発明の組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%でもよい。
【0185】
(非水溶性粒子)
本発明の組成物は、(c)少なくとも1種の非水溶性粒子を含む。単一のタイプの非水溶性粒子を使用してもよく、又は2種以上の異なるタイプの非水溶性粒子を組み合わせて使用することもできる。
【0186】
本発明によれば、(c)非水溶性粒子は、負電荷を有する。言い換えれば、(c)非水溶性粒子は、負電荷を有する。
【0187】
本発明の目的では、用語「非水溶性」粒子は、25℃での水への溶解度が、粒子の総質量に対して1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であり、最も好ましくは溶解度がない粒子を意味する。
【0188】
原料としての(c)非水溶性粒子の粒径は限定されない。(c)非水溶性粒子は、平均(一次)粒径が10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、更により好ましくは40nm以上、及び/又は2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下であってもよい。平均(一次)粒径は、数平均粒子直径として決定することができ、電子顕微鏡によって測定されうる。
【0189】
(c)非水溶性粒子は、好ましくは固体の形態である。より好ましくは、(c)非水溶性粒子は、粉末を形成しうる。(c)非水溶性粒子は、顔料及び/又はフィラー及び/又は無機UV遮蔽剤から選択されうる。
【0190】
顔料:
用語「顔料」は、生理学的に許容される揮発性媒体に不溶性であり、結果として得られる皮膜を着色及び/又は不透明化することが意図される、白色又は有色の無機又は有機粒子を意味することが理解されるべきである。
【0191】
顔料は、好ましくは380~780nmの範囲の吸収、少なくとも1つの実施形態において、この吸収範囲における最大値の吸収を有する。
【0192】
顔料は有機顔料でありうる。本明細書に使用されるとき、用語「有機顔料」は、Ullmann's encyclopediaの有機顔料の章の定義を満たす任意の顔料を意味する。有機顔料は、例えば、ニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、キノリン、アントラキノン、フタロシアニン、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン及びキノフタロン化合物から選択されうる。
【0193】
少なくとも1種の有機顔料は、例えば、カルミン、カーボンブラック、アニリンブラック、メラニン、アゾイエロー、キナクリドン、フタロシアニンブルー、ソルガムレッド、参照番号CI 42090、69800、69825、73000、74100及び74160で色指数に体系化されている青色顔料、参照番号CI 11680、11710、15985、19140、20040、21100、21108、47000及び47005で色指数に体系化されている黄色顔料、参照番号CI 61565、61570及び74260で色指数に体系化されている緑色顔料、参照番号CI 11725、15510、45370及び71105で色指数に体系化されている橙色顔料、参照番号CI 12085、12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、17200、26100、45380、45410、58000、73360、73915及び75470で色指数に体系化されている赤色顔料、並びに例えば仏国特許第2679771号に記載されているインドール誘導体又はフェノール誘導体の酸化重合によって得られる顔料から選択されうる。
【0194】
これらの顔料はまた、例えば欧州特許第1184426号に記載されている複合顔料の形態であってもよい。これらの複合顔料は、例えば、有機顔料で少なくとも部分的に被覆されている無機核、及び有機顔料をその核に固定するための少なくとも1種の結合剤を含む粒子から構成されてもよい。
【0195】
他の例には、有機顔料の顔料ペースト、例えば、Hoechst社により以下の名称で販売されている製品が含まれうる: Jaune Cosmenyl IOG: Pigment Yellow 3 (CI 11710); Jaune Cosmenyl G: Pigment Yellow 1 (CI 11680); Orange Cosmenyl GR: Pigment Orange 43 (CI 71105); Rouge Cosmenyl R'': Pigment Red 4 (CI 12085); Carmine Cosmenyl FB: Pigment Red 5 (CI 12490); Violet Cosmenyl RL: Pigment Violet 23 (CI 51319); Bleu Cosmenyl A2R: Pigment Blue 15.1 (CI 74160); Vert Cosmenyl GG: Pigment Green 7 (CI 74260);及びNoir Cosmenyl R: Pigment Black 7 (CI 77266)。
【0196】
少なくとも1種の顔料は、また、レーキから選択されうる。本明細書に使用されるとき、用語「レーキ」は、不溶性粒子に吸着させた不溶化染料を意味し、このようにして得られた錯体又は化合物は、使用中に不溶性のままである。
【0197】
染料を吸着させる無機基材には、例えば、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム及びアルミニウムが含まれうる。
【0198】
有機染料の非限定例には、コチニールカルミン及び以下の名称で知られている製品が含まれる: D&C Red 21(CI 45380)、D&C Orange 5(CI 45370)、D&C Red 27(CI 45410)、D&C Orange 10(CI 45425)、D&C Red 3(CI 45430)、D&C Red 4(CI 15510)、D&C Red 33(CI 17200)、D&C Yellow 5(CI 19140)、D&C Yellow 6(CI 15985)、D&C Green(CI 61570)、D&C Yellow 10(CI 77002)、D&C Green 3(CI 42053)及びD&C Blue 1(CI 42090)。
【0199】
レーキの追加の非限定例は、次の名称で公知の製品である: D&C Red 7(CI 15 850:1)。
【0200】
少なくとも1種の顔料はまた、特殊効果を有する顔料であってもよい。本明細書に使用されるとき、用語「特殊効果を有する顔料」は、一般に、観察条件(光、温度、観察角度等)に応じて変化する不均一な有色の外観(特定の色調、特定の彩度及び/又は特定の明度を特徴とする)を作り出す顔料を意味する。したがって、これらは、標準的な均一の不透明、半透明又は透明の色調を付与する白色又は有色顔料と対照的である。
【0201】
特殊効果を有する顔料は2種類存在し、蛍光顔料、フォトクロミック顔料及びサーモクロミック顔料等の低屈折率のもの、並びに真珠層及びフレーク等の高屈折率のものである。
【0202】
少なくとも1種の顔料はまた、基材上へ固定されない干渉効果を有する顔料、例えば、液晶(Wacker社からのHelicones HC)及びホログラフィック干渉フレーク(Spectratek社からのGeometric Pigment又はSpectra f/x)から選ぶこともできる。
【0203】
特殊効果を有する顔料には、蛍光顔料(日光で蛍光を放つ物質又は紫外線蛍光を生じる物質のいずれも)、リン光顔料、フォトクロミック顔料及びサーモクロミック顔料も含まれうる。
【0204】
好ましい実施形態において、顔料は無機顔料でもありうる。本明細書に使用されるとき、用語「無機顔料」は、Ullmann's encyclopediaの無機顔料の章にある定義を満たす任意の顔料を意味する。好ましくは、無機顔料は、少なくとも1種の無機材料を含む。本発明に有用な無機顔料の非限定例には、金属酸化物、特に遷移金属酸化物、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、フェリックブルー及び二酸化チタンが含まれる。以下の無機顔料を使用することもできる: Ta2O5、Ti3O5、Ti2O3、TiO、TiO2との混合物としてのZrO2、ZrO2、Nb2O5、CeO2及びZnS。
【0205】
顔料は、また、白色真珠光沢顔料、例えば、チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ等の真珠光沢顔料、チタン及び酸化鉄で被覆されたマイカ、チタン及び例えばフェリックブルー又は酸化クロムで被覆されたマイカ、チタン及び上記に定義された有機顔料で被覆されたマイカ等の有色真珠光沢顔料、またオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料であってもよい。そのような顔料の例には、Engelhard社により販売されているCellini顔料(マイカ-TiO2-レーキ)、Eckart社により販売されているPrestige(マイカ-TiO2)及びMerck社により販売されているColorona(マイカ-TiO2-Fe2O3)が含まれうる。
【0206】
マイカ支持体上の真珠層に加えて、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム及びアルミニウム等の合成基材をベースとする多層顔料が、本開示によれば有用でありうる。
【0207】
フィラー:
「フィラー」という用語は、室温及び大気圧で固体である無着色の粒子を意味すると理解すべきであり、これらの成分を室温より高い温度にしたときでも、生理学的に許容される揮発性媒体に不溶性である。その無機又は有機の特性により、フィラーは、本発明の組成物に堅さを与え、及び/又は組成物によって形成されうるメイクアップに柔らかさ及び均一性を与えることを可能にする。
【0208】
フィラーは、無機及び有機フィラーから選択することができる。フィラーが有機フィラーである場合、高分子有機フィラーである。フィラーは、それらの結晶学的形態(例えば、層状晶、立方晶、六方晶及び斜方晶)に関係なく、任意の形態、例えば小板形状、球状及び長円形の粒子でありうる。
【0209】
本発明の組成物に使用されうるフィラーは、さまざまな無機及び/又は有機材料から作製することができ、これらに限定されないが、二酸化チタン、タルク、天然又は合成マイカ、アルミナ、アルミノシリケート、シリカ(又は二酸化ケイ素)、カオリン又は他の不溶性シリケート、例えばクレイ、ポリアミド(Nylon(登録商標))、ポリ-β-アラニン及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー(Teflon(登録商標))粉末、澱粉、窒化ホウ素、アクリル酸ポリマー粉末、シリコーン樹脂マイクロビーズ、例としては株式会社東芝製の「Tospearls(登録商標)」、オキシ塩化ビスマス、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球体、例えばMaprecos社製の「Silica Beads SB 700(登録商標)」、Asahi Glass社製の「Sunspheres H-33(登録商標)」及び「Sunspheres H-51(登録商標)」、アクリルポリマー微小球体、例えばR.P. Scherrer社製の「Polytrap 6603(登録商標)」の架橋アクリレートコポリマーから作製されるもの及びSEPPIC社製の「Micropearl M100(登録商標)」のポリメチルメタクリレートから作製されるもの、ポリ尿素粉末、ポリウレタン粉末、例えば株式会社東芝から名称「Plastic Powder D-400(登録商標)」で販売されているヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールヘキシルラクトンとのコポリマー粉末、ガラス又はセラミックマイクロカプセル、アクリル酸又はメタクリル酸メチルポリマー又はコポリマー、或いは塩化ビニリデンとアクリロニトリルとのコポリマーのマイクロカプセル、例としては、Expancel社製の「Expancel(登録商標)」、弾性架橋オルガノポリシロキサン粉末、例えば信越化学工業株式会社から名称「KSP100(登録商標)」で販売されているもの、多孔質セルロースビーズ、例えば大東化成工業株式会社から名称「Cellulose Beads USF(登録商標)」で販売されているもの、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0210】
本発明の組成物において有用なシリカの中でも、結晶質、微結晶質及び非晶質シリカを挙げることができる。
【0211】
例としては、挙げることができる結晶シリカには、石英、トリディマイト、クリストバライト、キータイト、コーサイト及びスティショバイトが含まれる。微結晶質シリカは、例えば、ダイアトマイトである。
【0212】
使用されうる非晶質形態の中では、石英ガラス及び他のタイプの非晶質シリカ、例えばコロイドシリカ、シリカゲル、沈降シリカ及びヒュームドシリカ、例としてはアエロジル、並びに焼成シリカがある。エアロゲル(シリル化シリカ)等の多孔質シリカが好ましい。
【0213】
本発明の一実施形態において、(c)粉末は、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、及びヒドロキシアパタイトからなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含みうる。(c)粉末は、二硫化セレンを含んでいてもよい。
【0214】
本発明の別の実施形態では、(c)粉末は、ポリ尿素、メラミン-ホルムアルデヒド縮合体、尿素-ホルムアルデヒド縮合体、アミノプラスト、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリホスフェート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、多糖類、シリコーン、シリコーン樹脂、タンパク質、変性セルロース、及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の有機材料を含んでもよい。
【0215】
無機UV遮蔽剤:
本発明に使用される無機UV遮蔽剤は、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。無機UV遮蔽剤は、親水性及び/又は親油性であってもよい。
【0216】
無機UV遮蔽剤は、その平均(一次)粒子直径が1nmから50nm、好ましくは5nmから40nm、より好ましくは10nmから30nmの範囲であるような微粒子の形態であることが好ましい。本明細書における平均(一次)粒径又は平均(一次)粒子直径は、算術平均直径である。
【0217】
無機UV遮蔽剤は、炭化ケイ素、被覆されていてもいなくてもよい金属酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0218】
好ましくは、無機UV遮蔽剤は、金属酸化物で形成された無機粒子(平均一次粒径:一般的に5nmから50nm、好ましくは10nmから50nm)、例えば、酸化チタン(非晶質又はルチル及び/若しくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムで形成された無機粒子等から選択することができ、これらは全て、それ自体が周知のUV光保護剤である。好ましくは、無機UV遮蔽剤は、酸化チタン、酸化亜鉛から選択することができ、より好ましくは酸化チタンである。
【0219】
表面処理:
(c)非水溶性粒子は、表面処理されて負電荷を有していてもよい。表面処理は、任意の従来の方法によって行うことができる。
【0220】
本発明の目的において、表面処理とは、例としては、表面処理された粉末が処理前の固有の着色特性を維持し、表面処理されたフィラーが処理前の固有の充填特性を維持するというものである。
【0221】
(c)非水溶性粒子は、少なくとも1種の酸又はその塩で表面処理されていてもよい。
【0222】
上記の酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる1つ又は複数の酸基を有しうる。
【0223】
上記の酸は、非ポリマーであることが好ましい。用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリアクリル酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0224】
非ポリマー酸又はその塩の分子量は、1000未満、好ましくは900未満、より好ましくは800未満であることが好ましい。
【0225】
本明細書における用語「塩」は、一価の非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、一価の非ポリマー酸と、塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0226】
酸は、多価酸及びその塩から選択されることが好ましい。
【0227】
上記の多価酸は、無機であっても有機であってもよい。
【0228】
無機多価酸の例としては、硫酸、リン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0229】
有機多価酸の例としては、ジカルボン酸、例えばシュウ酸及びマロン酸、トリカルボン酸、例えばクエン酸、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0230】
多価酸は、フィチン酸又はその塩であることがより好ましい。
【0231】
(c)非水溶性粒子は、少なくとも1種の酸又はその塩で、好ましくは少なくとも1種の多価酸又はその塩で、より好ましくはフィチン酸又はその塩で表面処理された、金属酸化物、より好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化鉄、更により好ましくは酸化チタンから選択されることが好ましい。
【0232】
本発明の組成物中の(c)非水溶性粒子の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でよい。
【0233】
その一方で、本発明の組成物中の(c)非水溶性粒子の量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってもよい。
【0234】
これに応じて、本発明の組成物中の(c)非水溶性粒子の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~15質量%の範囲であってもよい。
【0235】
(任意選択の成分)
本発明の組成物は、前述の成分に加えて、化粧品に典型的に用いられる任意選択の成分、具体的には、界面活性剤/乳化剤、例えば(a-1)カチオン性ポリマー以外の合成ポリマーに由来する親水性又は親油性増粘剤、(b-2)アルコール以外の揮発性又は不揮発性有機溶媒、アニオン性ポリマー、両性ポリマー、β-グルカン等の非イオン性ポリマー、シリコーン及びシリコーン誘導体、(a-1)カチオン性ポリマー以外の動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0236】
本発明の組成物は、上記の任意選択の成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでもよい。
【0237】
本発明の組成物は、少なくとも1種の油を含んでもよい。本明細書では、「油」は、大気圧下(760mmHg)、室温(25℃)にて、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は物質を意味する。油として、化粧品に一般に使用されるものを、単独で又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0238】
しかしながら、本発明の組成物中の油の量は、限定的であることが好ましい。したがって、本発明の組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物が油を含まないことが特に好ましい場合がある。
【0239】
本発明の組成物中の界面活性剤/乳化剤及び/又は合成増粘剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物が界面活性剤/乳化剤又は合成増粘剤を含まないことが特に好ましい。
【0240】
本発明の組成物中のアニオン性ポリマー又は両性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物は、アニオン性又は両性ポリマーを含まないことが特に好ましい。
【0241】
[調製]
本発明の組成物は、上に説明した必須成分、及び必要な場合には上に説明した任意選択の成分を混合することによって、調製されうる。
【0242】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合し、本発明の組成物を調製することができる。
【0243】
本発明の組成物は、撹拌機及びホモジナイザー等の従来の混合手段により、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。また、加熱は必要ではない場合もある。したがって、本発明の組成物の調製方法は、環境に適合性でありうる。
【0244】
本発明の組成物は、以下:
(1)
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、及び
任意選択で(a-3)水
を混合して、第1の混合物(a)を形成する工程、
(2)
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び
任意選択で(b-2)少なくとも1種のアルコール
を混合して、第2の混合物(b)を形成する工程、並びに
(3)
第1の混合物(a)及び第2の混合物(b)を、負電荷を有する(c)非水溶性粒子と混合し、本発明の組成物を調製する工程
を含む方法によって調製されることが好ましい。
【0245】
負電荷を有する(c)非水溶性粒子は、非水溶性粒子と、少なくとも1種の多価酸又はその塩、好ましくは少なくとも1種の多価の非ポリマー酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩とを混合することによって調製することができる。
【0246】
本発明の組成物を調製するための方法は、少なくとも1種の油を混合する任意選択の工程を更に含んでもよいが、但し、油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。
【0247】
[美容用途]
本発明の組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。したがって、本発明の化粧用組成物は、ケラチン物質への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明の化粧用組成物が、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0248】
本発明の化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってよい。
【0249】
本発明の組成物は、良好な触感(良好な質感)をもたらすことができる。例えば、本発明の組成物は、ケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に該組成物を適用するとき、滑らかな感触をもたらすことができる。
【0250】
本発明の組成物は、ケーキングを生じないような安定性とすることができる。したがって、本発明の組成物は、長期間にわたり、保存することができる。
【0251】
本発明の組成物は、良好な湿潤性を有することができる。したがって、本発明の組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用するとき、本発明の組成物は、基材との高い親和性に起因して、基材の表面をよく被覆することができる。
【0252】
[形態]
本発明の組成物は、任意の形態で存在しうる。
【0253】
例えば、本発明の組成物は、分散体の形態であってもよい。また、本発明の組成物は、ゲルの形態であってもよい。
【0254】
加えて、本発明の組成物は、粉末の形態であってもよい。
【0255】
[pH]
本発明の組成物のpHは、3~9、好ましくは3.5~8、より好ましくは4~7であってもよい。
【0256】
本発明の組成物のpHは、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩以外に、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。本発明の組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することもできる。
【0257】
[皮膜]
本発明の組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。言い換えれば、本発明の組成物は、皮膜を形成することができる。
【0258】
したがって、本発明はまた、好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製するための方法であって、
基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明の組成物を塗布する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法にも関しうる。
【0259】
本発明の皮膜の厚さの上限は、限定されない。したがって、例えば、本発明の皮膜の厚さは、300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であってよい。
【0260】
本発明の皮膜を調製するための方法は、本発明の組成物を基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明の方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜さえ容易に調製することが可能である。そのため、本発明の皮膜を調製する方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに、比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0261】
本発明の組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥するとき、本発明の組成物中の粒子は、そのサイズを縮小することができ、連続皮膜を形成することができる。
【0262】
本発明の組成物はまた、良好な皮膜形成能も有しうる。したがって、本発明の組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥するとき、本発明の組成物は、亀裂のない均一な皮膜を形成することができる。
【0263】
本発明の皮膜は、非水溶性とすることができ、したがって、耐水性とすることができる。そのため、本発明の皮膜は、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨に起因して濡れている場合でも、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。そのため、本発明の皮膜が任意の美容効果をもたらすとき、美容効果は長時間持続することができる。
【0264】
本発明の皮膜は、基材の外観に悪影響を及ぼさない透明な皮膜とすることができる。したがって、本発明の組成物は、不自然な白色の外観を有さない、自然な外見をもたらすことができる。
【0265】
また、本発明の組成物は、弾力性の皮膜を形成することができる。そのため、本発明の組成物は、弾性等の良好な質感を有する化粧皮膜を与えることができる。
【0266】
これに応じて、本発明の組成物及び皮膜は、美容用途に有用である。
【0267】
本発明の皮膜中の粒子は、コアシェル粒子を含んでもよく、そのコアは主に(a-1)キトサン等のカチオン性ポリマーを含みうるが、一方でシェルは主に(b-1)脂肪酸を含みうる。コアシェル粒子は、(c)非水溶性粒子と合わせてもよい。
【0268】
基材が皮膚等のケラチン物質でない場合、本発明の組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基材に適用することができる。非ケラチン基材の材料は限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組合せを使用することができる。いずれの場合でも、基材が可撓性又は弾性があることが好ましい。
【0269】
非ケラチン基材がシートの形態である場合、これは、基材シートに付着した皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明の皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基材シートの厚さは限定されないが、1μm~5mm、好ましくは10μm~1mm、より好ましくは50~500μmでもよい。
【0270】
本発明の皮膜が非ケラチン基材から取り外し可能であることがより好ましい。取り外しの方式は限定されない。例えば、本発明の皮膜は、非ケラチン基材から剥がしてもよい。
【0271】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明の組成物を塗布する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される皮膜、好ましくは化粧皮膜、
並びに
(2)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び
(c)少なくとも1種の非水溶性粒子
を含み、
(c)非水溶性粒子が負電荷を有する、皮膜、好ましくは化粧皮膜
に関することができる。
【0272】
本発明の組成物のための、(a-1)カチオン性ポリマー、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩、及び(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、並びに(c)非水溶性粒子に関する上記の説明は、上記の皮膜(2)におけるものに適用することができる。
【0273】
(b-2)アルコールが揮発性でない場合、本発明の皮膜はまた、(b-2)少なくとも1種のアルコールも含みうる。
【0274】
本発明の皮膜は、生体適合性及び/又は生分解性であってもよい。
【0275】
本明細書における用語「生体適合性」は、皮膜が、皮膜と、皮膚を含む生体内の細胞との間で過度な相互作用を有さず、皮膜が、生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0276】
本明細書における用語「生分解性」は、皮膜が、例えば生体自体の代謝、又は生体内に存在しうる微生物の代謝により、生体内で分解されうる又は分割されうることを意味する。また、生分解性皮膜は、加水分解によって分解されうる。
【0277】
本発明の皮膜が生体適合性及び/又は生分解性である場合、例えば、皮膚への刺激が少ないか若しくは刺激がなく、及び/又は環境汚染がないものとすることができる。
【0278】
実際、本発明の皮膜は、生分解性ポリマーである、キトサンから選択される(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0279】
本発明の皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置に使用することができる。本発明の皮膜は、任意の形状又は形態にあることができる。
【0280】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明の組成物をケラチン物質に塗布する工程と、
組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む方法、
又は
皮膚等のケラチン物質上に化粧皮膜を調製するための本発明の組成物の使用
にも関する。
【0281】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0282】
本発明の化粧皮膜が皮膚に適用された後、その上にメイクアップ化粧用組成物を塗布することもまた可能である。
【0283】
本発明はまた、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー
を含む組成物中での、(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び、負電荷を有する(c)少なくとも1種の非水溶性粒子の使用であって、
(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸、並びに(c)非水溶性粒子を含む少なくとも1種の錯体を調製するための使用にも関しうる。
【0284】
本発明の組成物のための、(a-1)カチオン性ポリマー、(b-1)脂肪酸、及び(c)非水溶性粒子に関する上記の説明は、上記の使用におけるものに適用することができる。
【実施例0285】
本発明は、実施例によって、より詳細な方法で記載される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0286】
(実施例1及び比較例1~3)
[調製]
実施例1及び比較例1~3の組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合して調製した。表1中の成分の量についての数値は全て、原料の「質量%」に基づく。
【0287】
調製の詳細は、以下の通りである。
【0288】
(実施例1)
第一に、80質量%水溶液の形態の0.63gのキトサン原料、0.32gの乳酸、及び99.05gの水を混合して100gの量の第1の混合物を得た。
【0289】
第二に、別に、0.17gのオレイン酸及び9.83gのエタノールを混合して、10gの量の第2の混合物を得た。
【0290】
第三に、別に、フィチン酸及び二酸化チタンを混合し、水中で分散させて、40質量%のTiO2を含む水性分散体としての第3の混合物を得た。
【0291】
次いで、第1の混合物10g及び第2の混合物1gを混合し、疎水化キトサンゲル粒子を含む液体を得た。この液体を、3:1の質量比(液体7.5g:第3の混合物2.5g)で第3の混合物と混合し、実施例1の組成物を得た。実施例1の組成物のpHを、NaOHによって5に調整した。
【0292】
(比較例1)
第一に、80質量%水溶液の形態の0.57gのキトサン原料、0.29gの乳酸、1.60gのオレイン酸、9.60gのトウモロコシ油、及び87.94gの水を混合して第1の混合物を得た。
【0293】
第二に、別に、フィチン酸及び二酸化チタンを混合し、水中で分散させて、40質量%のTiO2を含む水性分散体としての第2の混合物を得た。
【0294】
次いで、第1の混合物及び第2の混合物を、3:1の質量比(第1の混合物7.5g:第2の混合物2.5g)で混合し、比較例1の組成物を得た。比較例1の組成物のpHを、NaOHによって5に調整した。
【0295】
(比較例2)
第一に、100.18gの水及び9.82gのエタノールを混合して第1の混合物を得た。
【0296】
第二に、別に、フィチン酸及び二酸化チタンを混合し、水中で分散させて、40質量%のTiO2を含む水性分散体としての第2の混合物を得た。
【0297】
次いで、第1の混合物及び第2の混合物を、3:1の質量比(第1の混合物7.5g:第2の混合物2.5g)で混合し、比較例2の組成物を得た。比較例2の組成物のpHを、NaOHによって5に調整した。
【0298】
(比較例3)
第一に、80質量%水溶液の形態の0.63gのキトサン原料、0.32gの乳酸、及び99.05gの水を混合して100gの量の第1の混合物を得た。
【0299】
第二に、別に、9.83gのエタノール及び0.17gの水を混合して第2の混合物を得た。
【0300】
第三に、別に、フィチン酸及び二酸化チタンを混合し、水中で分散させて、40質量%のTiO2を含む水性分散体としての第3の混合物を得た。
【0301】
次いで、第1の混合物10g及び第2の混合物1gを混合し、キトサンを含む液体を得た。この液体を、3:1の質量比(液体7.5g:第3の混合物2.5g)で第3の混合物と混合し、比較例3の組成物を得た。比較例3の組成物のpHを、NaOHによって5に調整した。
【0302】
【0303】
[評価]
図1及び
図2の各々に示すように、実施例1の組成物及び比較例3の組成物の写真を、光学顕微鏡Keyence EZX70を使用して得た。
【0304】
実施例1の組成物は粒子を含み、一方で、比較例3の組成物は一切の粒子を含まなかったことが判明した。
【0305】
実施例1の組成物中の粒子が、少なくとも、キトサン、オレイン酸、並びにフィチン酸で処理された酸化チタンを含むことが明らかである。
【0306】
(ケーキング)
実施例1及び比較例1~3の組成物のそれぞれを、室温(25℃)で1日、透明の容器に入れて保存した。組成物の外観を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好:ケーキングが観察された
不良:ケーキングが観察されなかった
【0307】
結果を表1に示す。
【0308】
実施例1の組成物は、ケーキングが生じなかった(流体)が、一方で、比較例1~3の組成物は生じた。
【0309】
(湿潤性)
実施例1及び比較例1~3の組成物各100μLを、室温(25℃)で透明ポリメチルメタクリレート(PMMA)プレート上に適用し、該プレートを被覆した。
【0310】
該プレート上で乾燥する前に濡れたコーティングの外観を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好:70%超のプレート表面が被覆されていた
不良:70%以下のプレート表面しか被覆されていなかった
【0311】
結果を表1に示す。
【0312】
実施例1の組成物は、ほぼ全表面のプレートを被覆できたが、一方で、比較例1~3の組成物は被覆できなかった。実施例1の組成物が良好な湿潤性を有することは明らかである。
【0313】
(皮膜形成能)
実施例1及び比較例1~3の組成物各100μLを、室温(25℃)で透明ポリメチルメタクリレート(PMMA)プレート上に適用して該プレートを被覆し、室温でコーティングを乾燥した。
【0314】
該プレート上で乾燥した後のコーティングの外観を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好:コーティング上に亀裂が見つからなかった
不良:コーティング上に亀裂が見つかった
【0315】
結果を表1に示す。
【0316】
実施例1の組成物は、亀裂のない乾燥コーティングを与えることができたが、一方で、比較例1~3の組成物は、そのような乾燥コーティングを与えることができなかった。実施例1の組成物が良好な皮膜形成能を有することは明らかである。
【0317】
(耐水性)
実施例1及び比較例1~3の組成物各100μLを、室温(25℃)で透明ポリメチルメタクリレート(PMMA)プレート上に適用して該プレートを被覆し、室温でコーティングを乾燥した。
【0318】
該プレートを、室温(25℃)で15分間、水中に浸漬させた。
【0319】
該プレート上のコーティングの外観を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好:50%超のコーティングが残った
不良:50%以下のコーティングしか残らなかった
【0320】
結果を表1に示す。
【0321】
実施例1の組成物は、耐水性の皮膜を与えることができたが、一方で、比較例1~3の組成物は、そのような耐水性の皮膜を与えることができなかった。
【0322】
(質感)
実施例1及び比較例1~3の組成物各50mgを、パネリストの手に指で適用した。適用中の質感を、以下の基準に従って評価した。
良好:滑らか
不良:きしみ
【0323】
結果を表1に示す。
【0324】
実施例1の組成物は、滑らかな触感を付与したが、一方で、比較例1~3の組成物は、きしみ感触を付与した。加えて、比較例1の組成物は油状でもあった。
【0325】
(白色度)
実施例1及び比較例1~3の組成物各50mgを、パネリストの手に指で適用し、乾燥した。適用された手の外観を、以下の基準に従って評価した。
良好:自然(白色でない)
不良:白色
【0326】
結果を表1に示す。
【0327】
実施例1の組成物は、不自然な白色度を生じることなく、自然な外見をもたらしたが、一方で、比較例1~3の組成物は、白色度を生じると同時に不自然な外見をもたらした。