(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014541
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】移動体用表示システム、及び表示制御装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20250123BHJP
【FI】
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117182
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白石 直幸
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】実景に重畳表示された画像による、旋回時の視覚的な違和感を低減する。
【解決手段】実景に重畳させて表示部に画像を表示させる移動体用表示システム10は、移動体の旋回関連情報を取得する旋回関連情報取得手段311、315と、移動体の姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段230と、表示部に表示させる画像の表示位置を補正するための補正情報を設定する制御手段210と、補正情報に基づいて画像の表示位置を調整する表示位置調整手段100とを備える。制御手段210は、姿勢情報に基づいて画像の表示位置を補正するための補正量を算出し、旋回関連情報に基づいて移動体の旋回の強さが強くなるに従い、姿勢情報に基づいて算出された補正量を、連続的又は段階的に低減させた補正情報を設定し、旋回状態に応じて設定された補正情報に基づいて、画像の表示位置を調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の進行方向側に設置される表示部に対し、該進行方向側の実景に重畳させるように画像を表示させる移動体用表示システムであって、
前記移動体の旋回状態に関する旋回関連情報を検出する旋回情報検出手段より、前記旋回関連情報を取得する旋回関連情報取得手段と、
前記移動体に設置される姿勢検出手段より、前記移動体の前記進行方向に対する傾斜状態を判断するための姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、
前記表示部に表示させる前記画像の表示位置を補正するための補正情報を設定する制御手段と、
該制御手段により設定された前記補正情報に基づいて前記表示部に表示される前記画像の表示位置の調整を行う表示位置調整手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記姿勢情報取得手段により取得された前記姿勢情報に基づいて、前記画像の表示位置を補正するための補正量を算出し、
前記旋回関連情報取得手段により取得された前記旋回関連情報に基づいて、前記移動体の旋回の強さ(以下では旋回状態とも呼ぶ。)が強くなるに従い、前記姿勢情報に基づいて算出された前記補正量を、連続的又は段階的に低減させた前記補正情報を設定し、
前記表示位置調整手段は、前記旋回状態に応じて設定された前記補正情報に基づいて、前記画像の表示位置の調整を行うこと
を特徴とする移動体用表示システム。
【請求項2】
前記旋回関連情報は、前記移動体に設けられるハンドルの操舵量を示した操舵量情報と、前記移動体の速度を示した速度情報とを少なくとも有し、
前記制御手段は、前記操舵量情報における前記操舵量と、前記速度情報における前記速度とに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断すること
を特徴とする請求項1に記載の移動体用表示システム。
【請求項3】
前記旋回関連情報は、前記移動体のヨー方向に関する角速度を示した角速度情報を少なくとも有し、
前記制御手段は、前記角速度情報における前記角速度の大きさに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断すること
を特徴とする請求項1に記載の移動体用表示システム。
【請求項4】
前記制御手段は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記所定の段階の一段階前の旋回状態において設定された前記補正情報の前記補正量を維持したまま、前記補正情報の設定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の移動体用表示システム。
【請求項5】
前記制御手段は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記表示位置調整手段において前記画像の表示位置の調整が行われない補正量に基づいて、前記補正情報の設定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の移動体用表示システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記移動体の移動時における旋回の強さに応じて前記旋回状態を段階分けする場合において、
前記移動時における旋回の強さが弱い状態から強い状態へと上がることにより、前記旋回状態の段階を上げる場合の条件と、前記旋回の強さが強い状態から弱い状態へと下がることにより、前記旋回状態の段階を下げる場合の条件とを、異なる条件とすること
を特徴とする請求項1に記載の移動体用表示システム。
【請求項7】
前記表示部に表示される前記画像の輝度を調整する輝度調整手段を備え、
前記制御手段は、段階分けされた前記旋回状態に応じて段階的に前記画像の輝度を低減させた輝度情報を設定し、
前記輝度調整手段は、前記制御手段により設定された前記輝度情報に基づいて、前記表示部に表示される前記画像の輝度を調整すること
を特徴とする請求項1に記載の移動体用表示システム。
【請求項8】
移動体の進行方向側に設置される表示部に対し、該進行方向側の実景に重畳させるように画像を表示させるヘッドアップディスプレイ装置を制御する表示制御装置であって、
複数の命令を記憶するように構成されたメモリと、
前記メモリに格納された前記複数の命令を実行するときに以下のように動作するように構成された処理回路と、を備え、
前記動作は、
前記移動体の旋回状態に関する旋回関連情報を検出する旋回情報検出手段より、前記旋回関連情報を取得することと、
前記移動体に設置される姿勢検出手段より、前記移動体の前記進行方向に対する傾斜状態を判断するための姿勢情報を取得することと、
取得された前記姿勢情報に基づいて、前記画像の表示位置を補正するための補正量を算出することと、
取得された前記旋回関連情報に基づいて、前記移動体の旋回の強さ(以下では旋回状態とも呼ぶ。)が強くなるに従い、前記姿勢情報に基づいて算出された前記補正量を、連続的又は段階的に低減させた補正情報を設定することと、
前記旋回状態に応じて設定された前記補正情報に基づいて、前記画像の表示位置の調整を行うことと、を含む、
表示制御装置。
【請求項9】
前記旋回関連情報は、前記移動体に設けられるハンドルの操舵量を示した操舵量情報と、前記移動体の速度を示した速度情報とを少なくとも有し、
前記処理回路は、前記操舵量情報における前記操舵量と、前記速度情報における前記速度とに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断すること
を特徴とする請求項8に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記旋回関連情報は、前記移動体のヨー方向に関する角速度を示した角速度情報を少なくとも有し、
前記処理回路は、前記角速度情報における前記角速度の大きさに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断すること
を特徴とする請求項8に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記処理回路は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記所定の段階の一段階前の旋回状態において設定された補正情報の補正量を維持したまま、前記補正情報の設定を行うこと
を特徴とする請求項8に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記処理回路は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記表示位置調整手段において前記画像の表示位置の調整が行われない補正量に基づいて、前記補正情報の設定を行うこと
を特徴とする請求項8に記載の表示制御装置。
【請求項13】
前記処理回路は、前記移動体の移動時における旋回の強さに応じて前記旋回状態を段階分けする場合において、
前記移動時における旋回の強さが弱い状態から強い状態へと上がることにより、前記旋回状態の段階を上げる場合の条件と、前記旋回の強さが強い状態から弱い状態へと下がることにより、前記旋回状態の段階を下げる場合の条件とを、異なる条件とすること
を特徴とする請求項8に記載の表示制御装置。
【請求項14】
前記処理回路は、段階分けされた前記旋回状態に応じて段階的に前記画像の輝度を低減させる輝度情報を設定すること
を特徴とする請求項8に記載の表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の進行方向側の実景に対して画像(仮想オブジェクト)を重畳させる移動体用表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体を運転等する場合において、車両前方(車両の進行方向)のウインドシールド等に対して、運転支援用の情報を表示させることが可能な移動体用表示システムが開発されている。移動体用表示システムの一例として、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)装置が知られている。ヘッドアップディスプレイ装置は、車両前方の実景に画像(仮想オブジェクト)を重ねて表示(重畳表示)することで、実景(実景に存在する実オブジェクトを含む)に、画像(仮想オブジェクト)による情報を付加・強調した拡張現実(AR:Augmented Reality)を表現する装置である。車両前方の実景に画像を重ねて表示することによって、車両等の運転者の視線移動を極力抑えつつ、運転支援用の情報を的確に提供することができ、安全で快適な車両運行に寄与することが可能となる。
【0003】
近時のヘッドアップディスプレイ装置では、車両等の姿勢変動に伴う画像(仮想オブジェクト)と実景との相対的な位置ずれを抑制するために、車両等の姿勢変動に応じて画像の表示位置を移動(シフト)させる処理を行っている(例えば、特許文献1参照)。これにより、車両等に姿勢変動が生じても、画像と実景との相対的な位置関係が維持される(画像と実景との位置ずれが抑制される)ため、画像を実景に調和させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置では、車両等の姿勢変動に応じて画像の表示位置を移動させる処理が行われるため、例えば、車両が旋回する場合にも、車両等の姿勢変動に応じて画像の移動処理が行われる。
【0006】
しかしながら、車両等が旋回する場合には、運転者の視点が旋回方向側の側方遠方に移動するため、実景と画像との表示位置のずれに関する運転者の関心が低下する傾向がある。この場合に、車両等の姿勢変動に応じて画像が移動すると、運手者には、視界の側方部分において画像が意味なく上下に移動しているように見えてしまうおそれがあり、運転者に視覚的な違和感を与えてしまう。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、移動体の旋回時に行われる画像(仮想オブジェクト)の表示位置補正によって、運転者に視覚的な違和感を与えにくい移動体用表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本開示の第1実施形態における移動体用表示システムは、第1実施形態における移動体用表示システムは、移動体の進行方向側に設置される表示部に対し、該進行方向側の実景に重畳させるように画像を表示させる移動体用表示システムであって、前記移動体の旋回状態に関する旋回関連情報を検出する旋回情報検出手段より、前記旋回関連情報を取得する旋回関連情報取得手段と、前記移動体に設置される姿勢検出手段より、前記移動体の前記進行方向に対する傾斜状態を判断するための姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、前記表示部に表示させる前記画像の表示位置を補正するための補正情報を設定する制御手段と、該制御手段により設定された前記補正情報に基づいて前記表示部に表示される前記画像の表示位置の調整を行う表示位置調整手段とを備え、前記制御手段は、前記姿勢情報取得手段により取得された前記姿勢情報に基づいて、前記画像の表示位置を補正するための補正量を算出し、前記旋回関連情報取得手段により取得された前記旋回関連情報に基づいて、前記移動体の旋回の強さ(以下では旋回状態とも呼ぶ。)が強くなるに従い、前記姿勢情報に基づいて算出された前記補正量を、連続的又は段階的に低減させた前記補正情報を設定し、前記表示位置調整手段は、前記旋回状態に応じて設定された前記補正情報に基づいて、前記画像の表示位置の調整を行う。
【0009】
また、第1実施形態における移動体用表示システムでは、移動体の進行方向側に設置される表示部に対し、該進行方向側の実景に重畳させるように画像を表示させる移動体用表示システムであって、前記移動体の旋回状態に関する旋回関連情報を検出する旋回情報検出手段より、前記旋回関連情報を取得する旋回関連情報取得手段と、前記移動体に設置される姿勢検出手段より、前記移動体の前記進行方向に対する傾斜状態を判断するための姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、前記表示部に表示させる前記画像の表示位置を補正するための補正情報を設定する制御手段と、該制御手段により設定された前記補正情報に基づいて前記表示部に表示される前記画像の表示位置の調整を行う表示位置調整手段とを備え、前記制御手段は、前記姿勢情報取得手段により取得された前記姿勢情報に基づいて、前記画像の表示位置を補正するための補正量を算出し、前記旋回関連情報取得手段により取得された前記旋回関連情報に基づいて、前記移動体の旋回状態を、前記移動体の移動時における旋回の強さに応じて2段階以上に段階分けし、前記姿勢情報に基づいて算出された前記補正量を、段階分けされた前記旋回状態に応じて段階的に低減させて前記補正情報を設定し、前記表示位置調整手段は、前記旋回状態に応じて設定された前記補正情報に基づいて、前記画像の表示位置の調整を行う。
【0010】
また、第1実施形態に従属し得る第2実施形態における移動体用表示システムでは、前記旋回関連情報は、前記移動体に設けられるハンドルの操舵量を示した操舵量情報と、前記移動体の速度を示した速度情報とを少なくとも有し、前記制御手段は、前記操舵量情報における前記操舵量と、前記速度情報における前記速度とに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断することを特徴とする。
【0011】
さらに、第1又は第2実施形態に従属し得る第3実施形態における移動体用表示システムでは、前記旋回関連情報は、前記移動体のヨー方向に関する角速度を示した角速度情報を少なくとも有し、前記制御手段は、前記角速度情報における前記角速度の大きさに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断することを特徴とする。
【0012】
また、第1乃至第3の実施形態に従属し得る第4実施形態における移動体用表示システムでは、前記制御手段は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記所定の段階の一段階前の旋回状態において設定された補正情報の補正量を維持したまま、前記補正情報の設定を行うことを特徴とする。
【0013】
また、第1乃至第4の実施形態に従属し得る第5実施形態における移動体用表示システムでは、前記制御手段は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記表示位置調整手段において前記画像の表示位置の調整が行われない補正量に基づいて、前記補正情報の設定を行うことを特徴とする。
【0014】
また、第1乃至第5の実施形態に従属し得る第6実施形態における移動体用表示システムでは、前記制御手段は、前記移動体の移動時における旋回の強さに応じて前記旋回状態を段階分けする場合において、前記移動時における旋回の強さが弱い状態から強い状態へと上がることにより、前記旋回状態の段階を上げる場合の条件と、前記旋回の強さが強い状態から弱い状態へと下がることにより、前記旋回状態の段階を下げる場合の条件とを、異なる条件とすることを特徴とする。
【0015】
また、第1乃至第6の実施形態に従属し得る第7実施形態における移動体用表示システムでは、前記表示部に表示される前記画像の輝度を調整する輝度調整手段を備え、前記制御手段は、段階分けされた前記旋回状態に応じて段階的に前記画像の輝度を低減させた輝度情報を設定し、前記輝度調整手段は、前記制御手段により設定された前記輝度情報に基づいて、前記表示部に表示される前記画像の輝度を調整することを特徴とする。
【0016】
第8実施形態における表示制御装置は、移動体の進行方向側に設置される表示部に対し、該進行方向側の実景に重畳させるように画像を表示させるヘッドアップディスプレイ装置を制御する表示制御装置であって、 複数の命令を記憶するように構成されたメモリと、 前記メモリに格納された前記複数の命令を実行するときに以下のように動作するように構成された処理回路と、を備え、 前記動作は、 前記移動体の旋回状態に関する旋回関連情報を検出する旋回情報検出手段より、前記旋回関連情報を取得することと、 前記移動体に設置される姿勢検出手段より、前記移動体の前記進行方向に対する傾斜状態を判断するための姿勢情報を取得することと、 取得された前記姿勢情報に基づいて、前記画像の表示位置を補正するための補正量を算出することと、 取得された前記旋回関連情報に基づいて、前記移動体の旋回の強さ(以下では旋回状態とも呼ぶ。)が強くなるに従い、前記姿勢情報に基づいて算出された前記補正量を、連続的又は段階的に低減させた前記補正情報を設定することと、 前記旋回状態に応じて設定された前記補正情報に基づいて、前記画像の表示位置の調整を行うことと、を含む。
【0017】
また、第8実施形態に従属し得る第9実施形態における表示制御装置では、前記旋回関連情報は、前記移動体に設けられるハンドルの操舵量を示した操舵量情報と、前記移動体の速度を示した速度情報とを少なくとも有し、前記処理回路は、前記操舵量情報における前記操舵量と、前記速度情報における前記速度とに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断する。
【0018】
また、第8又は第9実施形態に従属し得る第10実施形態における表示制御装置では、前記旋回関連情報は、前記移動体のヨー方向に関する角速度を示した角速度情報を少なくとも有し、前記処理回路は、前記角速度情報における前記角速度の大きさに基づいて、前記移動体がどの段階の旋回状態であるかを判断する。
【0019】
また、第8乃至第10実施形態に従属し得る第11実施形態における表示制御装置では、前記処理回路は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記所定の段階の一段階前の旋回状態において設定された補正情報の補正量を維持したまま、前記補正情報の設定を行う。
【0020】
また、第8乃至第11実施形態に従属し得る第12実施形態における表示制御装置では、前記処理回路は、段階分けされた前記旋回状態が所定の段階以上の場合、前記表示位置調整手段において前記画像の表示位置の調整が行われない補正量に基づいて、前記補正情報の設定を行う。
【0021】
また、第8乃至第12実施形態に従属し得る第13実施形態における表示制御装置では、前記処理回路は、前記移動体の移動時における旋回の強さに応じて前記旋回状態を段階分けする場合において、前記移動時における旋回の強さが弱い状態から強い状態へと上がることにより、前記旋回状態の段階を上げる場合の条件と、前記旋回の強さが強い状態から弱い状態へと下がることにより、前記旋回状態の段階を下げる場合の条件とを、異なる条件とする。
【0022】
また、第8乃至第13実施形態に従属し得る第14実施形態における表示制御装置では、前記処理回路は、段階分けされた前記旋回状態に応じて段階的に前記画像の輝度を低減させる輝度情報を設定する。
【発明の効果】
【0023】
本開示の移動体用表示システム、表示制御装置によれば、移動体の旋回時に行われる画像(仮想オブジェクト)の表示位置補正によって、運転者に与え得る視覚的な違和感を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施の形態における車両用表示システムの概略構成を示した模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における表示制御装置の概略構成を示したブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態における表示制御部の処理内容を示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態の車両用表示システムにおいて、走行状態にある車両のピッチ角と、補正情報として設定された補正量と、実景(実像オブジェクト含む)に対する画像(仮想オブジェクト)の表示位置のずれ量との時間変化を示した図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の車両用表示システムにおいて、走行状態にある車両のピッチ角と、補正情報として設定された補正量と、実景(実像オブジェクト含む)に対する画像(仮想オブジェクト)の表示位置のずれ量との時間変化を示した別図である。
【
図6】
図6は、実施の形態における操舵角に応じて変化する係数(補正量に乗算される係数)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の移動体用表示システムについて、一例として車両用表示システムを示し、図面を用いて詳細に説明する。なお、移動体用表示システムは、例えば四輪自動車や二輪自動車等の車両をはじめ、船舶、航空機、農業機械、建設機械の移動体用の表示システムとして適用することが可能である。
【0026】
図1は、実施の形態における車両用表示システムの概略構成を示した模式図である。
図1に示すように、車両用表示システム(移動体用表示システム)10は、HUD(ヘッドアップディスプレイ)装置(表示位置調整手段、輝度調整手段)100と表示制御装置200とを備えている。
【0027】
HUD装置100は、車両(移動体)1のインストルメントパネル3内に設置されている。HUD装置100は、表示器(表示位置調整手段、輝度調整手段)101と、平面鏡102と、凹面鏡103と、HUD制御部(表示位置調整手段、輝度調整手段)105とを有しており、筐体106内に収納されている。
【0028】
表示器101はHUD制御部105の指示に応じて、運転者9に視認させるための画像(仮想オブジェクト)を、表示光Lとして出力する装置である。表示器101として、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器や、有機EL(Electroluminescence)型の表示器を用いることができる。
【0029】
平面鏡102は、表示器101より出力された表示光L(画像:仮想オブジェクト)を、凹面鏡103に向けて反射させる鏡であり、凹面鏡103は、平面鏡102で反射された表示光Lをさらに反射させて、ウインドシールド(表示部)2に向けて出射する鏡である。凹面鏡103は、拡大鏡としての機能を有しており、表示器101より出力された表示光Lの画像(仮想オブジェクト)を拡大させてから、車両1のウインドシールド2に照射させる。
【0030】
運転者9は、ウインドシールド2に照射された表示光Lの反射光を、画像(仮想オブジェクト)Vとして視認する。ウインドシールド2を介して運転者9により視認される画像(仮想オブジェクト)Vは、ウインドシールド2の外側(前側)の実景と重なるようにして表示されることになる。
【0031】
なお、ウインドシールド2を介して運転者9に画像を視認させやすくするために、プロジェクタまたは表示面を構成するスクリーンをインストルメントパネル3上に設置したり、ウインドシールド2上に設置したりすることも可能である。
【0032】
HUD制御部105は、後述する表示制御装置200の表示制御部(制御手段)210より受信する画像情報に基づいて、表示器101に対して画像(表示光L)を出力する処理を行う。また、HUD制御部105は、表示制御部210より受信する補正情報に基づいて、表示器101における画像の描画位置の調整を行うことにより、ウインドシールド2に投影される画像(仮想オブジェクト)の表示位置の調整を行う。
【0033】
図2は、表示制御装置200の概略構成を示したブロック図である。表示制御装置200は、表示制御部(処理回路)210と、メモリ220と、I/Oインタフェース部(旋回関連情報取得手段、姿勢情報取得手段)230とを備えている。
【0034】
表示制御部(処理回路)210は、少なくとも1つの汎用マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0035】
メモリ220は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVROMを含んでもよい。メモリ220には、画像(仮想オブジェクト)Vを作成するための画像データ(標識画像や、矢印画像等のデータ)、表示制御部210における処理内容を記録したプログラム、処理判断に必要とされる各種データ(閾値データやテーブルデータ等、例えば、後述する旋回状態を求めるためのテーブルデータ)等が記録されている。メモリ220として、磁気媒体、揮発性メモリ、不揮発性メモリ等の一般的な記録媒体が用いられる。
【0036】
I/Oインタフェース部230は、車両1に設置される各種機器と接続されており、表示制御部210は、I/Oインタフェース部230を介して、各種機器から様々な情報を取得することが可能となっている。I/Oインタフェース部230には、例えば、車両1の加速度情報、速度情報(旋回関連情報)、回生ブレーキの稼働量(回生ブレーキによる発電量)に基づくブレーキ操作情報等を取得することが可能な車両ECU(Electronic Control Unit:旋回情報検出手段)311、車両1の外部の画像情報(例えば車両前方または後方の状況を撮影した画像情報)を取得することが可能な外部カメラ部312、自車両の位置を検出するためのGPS(Global Positioning System)等からなる車両位置検出部313、インターネット回線等に接続して各種情報の送受信を行う外部通信部314、運転者9が操作したハンドルの操舵量(旋回関連情報)や、ブレーキペダルおよびアクセルペダルの踏み込み量等の操作情報を検出する操作検出部(旋回情報検出手段)315、車両1の加速度を示す加速度情報や、車両1の角速度を示す角速度情報(旋回関連情報)等を取得することが可能な姿勢検出部(姿勢検出手段、旋回情報検出手段)316、車両周囲に存在する他車両や障害物等を検出することが可能な車外センサ部317、車外の明るさを検出することが可能な明るさ検出部318、スマートフォンやタブレット等からなる情報通信端末319等を接続することが可能になっている。
【0037】
なお、実施の形態における表示制御装置200では、説明の便宜上、車両1の速度情報等を取得する車両ECU311と、ハンドルの操舵量等の情報を検出する操作検出部315と、車両1の加速度情報および角速度情報を取得することが可能な姿勢検出部316とについて説明する。
【0038】
車両ECU311は、ACC(Adaptive cruise control)等をはじめとするADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)の操作を行うために、或いは、アクセル開度や車速に応じて、トランスミッション、エンジン等の様々な機器を電子的に制御するコンピュータである。車両ECU311には、上述した制御を行うための各種情報が入力されており、車両ECU311がI/Oインタフェース部230に接続されることによって、表示制御部210は、車両1の速度に関する情報(以下、速度情報と称する)等を取得することが可能になっている。
【0039】
操作検出部315は、運転者9によるハンドル操作や、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等のペダル操作の操作量を検出する機器である。例えば、操作検出部315は、運転者9がハンドルを左右方向のどちらにどれだけ操舵したかを示す操舵量を検出する。操作検出部315がI/Oインタフェース部230に接続されることによって、表示制御部210は、ハンドルの操舵量(操舵角度等)の情報(以下、操舵量情報と称する)を取得することが可能になっている。
【0040】
姿勢検出部316は、車両1の姿勢変化を把握・推測することを目的として設けられる機器である。姿勢検出部316として、一般的にはIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)が用いられる。IMUには、3軸(ロール軸、ピッチ軸および、ヨー軸)の角速度(ジャイロ)センサ(deg/s)、3軸(X軸、Y軸、Z軸)の加速度センサ(m/s2)等が搭載されており、3次元の慣性運動(直交する3軸方向の並進運動および回転運動)を検出することが可能となっている。なお、ロール軸とは車両1の前後方向に延伸する軸、ピッチ軸とは、車両1の左右方向に延伸する軸、ヨー軸とは車両1の上下方向に延伸する軸であり、X軸とは、車両1の前後方向に延伸する軸、Y軸とは、車両1の左右方向に延伸する軸、Z軸とは、車両1の上下方向に延伸する軸である。
【0041】
姿勢検出部316がI/Oインタフェース部230に接続されることによって、表示制御部210は、車両1の加速度を示す加速度情報と、角速度を示す角速度情報とを取得することが可能になっている。なお、本開示の表示制御部210における処理では、角速度情報だけを検出することができれば十分であるため、必要に応じて、加速度情報の検出処理を省略することが可能である。
【0042】
表示制御部210は、ウインドシールド2に照射するための画像(仮想オブジェクト)を作成してHUD制御部105に出力する処理を行う。例えば、表示制御部210は、外部カメラ部312により撮影された車両前方の画像により認識される道路標識(最高速度標識や、車両進入禁止標識等)に基づいて、メモリ220から、該当する標識の画像データを取得し、ウインドシールド2に投影すべき好適な画像Vの画像情報を作成する。また同様に、表示制御部210は、車両ECU311より取得した速度情報に基づいて、メモリ220から走行中の車両速度を示す画像データ(走行速度を示す画像データ)を取得して、画像Vの画像情報を作成する。さらに、表示制御部210は、画像Vの輝度を調整するための輝度情報を、画像情報に設定することが可能である。
【0043】
表示制御部210により作成された画像情報は、HUD制御部105に対してリアルタイムに出力され、HUD装置100によってウインドシールド2に投影される。表示制御部210により画像情報に対して輝度情報の設定が行われた場合には、設定された輝度情報に応じた明るさで、ウインドシールド2に画像が表示される。
【0044】
また、表示制御部210は、I/Oインタフェース部230を介して取得した、車両ECU311の車両1の速度情報や、姿勢検出部316の角速度情報や、操作検出部315のハンドルの操舵量情報に基づいて、画像の表示位置を調整するための補正情報を作成し、HUD制御部105に出力する処理を行う。HUD制御部105では、表示制御部210より取得した補正情報に基づいて、表示器101における画像の描画位置の調整処理を行うことにより、ウインドシールド2に投影される画像(仮想オブジェクト)の表示位置を調整する。
【0045】
なお、車両1が路面に水平な状態において、ウインドシールド2に投影される画像と実景とが相対的にずれていない表示位置(この表示位置を「基準位置」と称する)に関する情報が、予めメモリ220に記録されている。表示制御部210は、メモリ220から基準位置に関する情報を取得すると共に、車両1の姿勢変化に基づいて基準位置からの画像のずれ量を算出し、このずれ量を補正することによって、画像(仮想オブジェクト)の表示位置の補正処理を行う。
【0046】
また、表示制御部210は、姿勢検出部316より取得した角速度情報に基づいて、路面と水平状態にある車両1に対して車両1の前部分の角度(或いは、車両1の後部分の角度)がどれだけ傾いたかを示すピッチ角(傾斜情報)を算出することが可能である。角速度情報に基づいて、ピッチ角等を算出する方法は公知であり、様々な方法を用いることができる。例えば、角速度の積分演算によって算出する方法や、カルマンフィルタを用いて算出する方法等が知られている。また、姿勢検出部316より取得した加速度情報に基づいて、ピッチ角等を算出することも可能であり、これらの方法も公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0047】
なお、本開示の表示制御部210では、
図3を用いて後述するように、車両1の進行方向に対する傾斜状態を判断するための姿勢情報として、角速度情報(角速度)を用いて処理を行う場合について説明を行う。従って、本実施の形態においては、姿勢情報としてピッチ角の情報等を求める必要はない。しかしながら、車両1の進行方向に対する傾斜状態を判断するための姿勢情報として、角速度情報(角速度)に代えて、ピッチ角の情報等を用いることも可能である。さらに、ピッチ角,ロール角或いはヨー角を求めて、車両1の旋回状態を判断することも可能である。このため、必要に応じて、表示制御部210が、角速度情報あるいは加速度情報に基づいて、ピッチ角、ロール角またはヨー角を求める構成にすることも可能である。なお、後述する
図4および
図5においては、車両1の傾斜状態を理解しやすいように、傾斜状態の一例としてピッチ角の時間変化を示している。いくつかの実施形態では、表示制御部210は、角速度(姿勢情報の一例)及び/又は加速度(姿勢情報の一例)などを車両1又はHUD装置100に設けられたセンサから取得し、これらの角速度(姿勢情報の一例)及び/又は加速度(姿勢情報の一例)から車両1の姿勢(姿勢情報)を算出し、姿勢情報から補正量を算出する。
【0048】
次に、表示制御部210が、ウインドシールド2に投影する画像の表示位置を補正する処理内容について説明する。
図3は、表示制御部210の処理内容を示したフローチャートである。
【0049】
表示制御部210は、インタフェース部230を介して、姿勢検出部316より車両1の角速度情報を取得し(S.01)、車両ECUより速度情報を取得し(S.02)、さらに、操作検出部315より操舵量情報を取得する(S.03)。
【0050】
次に、表示制御部210は、角速度情報(角速度)に基づいて、画像(仮想オブジェクト)の表示位置を補正するための補正量を算出する処理を行う(S.04)。表示制御部210により角速度に応じて算出される補正量を、角速度補正量と称する。角速度補正量は、角速度に応じて移動させる画像の移動量を、表示器101における画像の描画位置の調整量等によって示したものである。車両1の前部分が傾いていない(ピッチ角が0度)場合、画像は、ウインドシールド2に対して基準位置に投影(表示)される。表示制御部210は、角速度情報の角速度に基づいてピッチ角を求めることにより、画像の表示位置が基準位置からどの程度ずれているか(移動(シフト)しているか)を判断することができる。
【0051】
表示制御部210は、角速度情報の角速度に応じて、表示器101における画像の描画位置を調整するための調整量(補正量)を設定する。角速度に応じて設定される表示器101の調整量(補正量)は、予めテーブルデータ等としてメモリ220に記録されている。表示制御部210は、テーブルデータに基づいて、取得された角速度情報に対応する調整量(補正量)を求めることにより、角速度補正量を算出する。
【0052】
次に、表示制御部210は、車両1の旋回状態を求める処理を行う(S.05)。本開示の表示制御部210は、車両1の旋回状態に応じて、画像の表示位置を補正するための補正量を変更して、画像の補正処理を行う。表示制御部210は、車両1の旋回状態として、予め第1状態と第2状態との2つの旋回状態を設定する。第1状態とは、例えば、「車両1がほぼ直進している状態」、或いは、「旋回している状態であっても車両1の車両姿勢が大きく変化しない状態」を意図している。
【0053】
「車両1がほぼ直進している状態」とは、例えば、車線変更に伴いハンドルを操舵する場合等のように、車両1の速度変化が少ない状態であって、ハンドルの操舵量が僅かである、或いはハンドルを操舵してから戻すまでの動作がゆっくりである場合等が該当する。また、「旋回している状態であっても車両1の車両姿勢が大きく変化しない状態」とは、例えば、ハンドルの操舵量が大きい(操舵角が大きい)場合であっても、車両速度が徐行(おおよそ10km/h以下かつ1m以内で停止可能な速度)程度の場合等が該当する。例えば、駐車操作中や、ショッピングセンターの駐車場内等の所定の敷地内を低速で移動する場合等が該当する。
【0054】
第2状態とは、上述した第1状態よりも、車両1の移動時における旋回力(旋回性)が強い状態(旋回の強さが強い状態)を意図している。例えば、車両1の旋回時に、運転者9がハンドルを切った先の車両前方の様子(ハンドルを切った側の遠方の実景)を、無意識のうちに視認(目視)するような車両1の移動状態が、第2状態に該当する。
【0055】
旋回状態が第1状態か第2状態かの判断条件は、特定の内容(単一の基準)に限定されない。運転者9がハンドルを切った先の車両前方の様子を無意識のうちに視認するような車両の移動状態であると判断できるならば、様々な条件を第2状態であるか否かの判断条件として設定することができる。例えば、徐行よりも速い速度であるが比較的低速であると判断される場合であって、ハンドルの操舵量が大きい場合や、車両速度が高い場合であって、ハンドルの操舵量は大きくないが継続的にハンドルの操舵角が維持されている場合(ループ状の道路を走行する場合等)などは、第2状態に該当するものと判断することができる。
【0056】
このため、実施の形態における表示制御部210では、一例として、ハンドルの操舵量と、車両1の速度との対応関係から、第1状態か第2状態かを判断する場合について説明する。まず、ハンドルの操舵量と、車両1の速度との対応関係から、車両1の旋回状態が第2状態であるか否かの判断を行うためのテーブルデータを、予めメモリ220に記録させておく。具体的には、ハンドルの操舵量毎に、第2状態と判断され得る車両速度をテーブルデータに予め設定しておき、S.03の処理において取得した操舵量情報の操舵量に基づいて、第2状態と判断され得る車両速度をテーブルデータから求めて、求められた車両速度よりも、S.02の処理において取得した速度情報の方が高い速度である場合に、車両1の旋回状態が第2状態であると判断する。
【0057】
また、上述した内容とは逆に、車両速度毎に、第2状態と判断され得るハンドルの操舵量をテーブルデータに予め設定しておき、S.02の処理において取得した速度情報に基づいて、第2状態と判断され得る操舵量をテーブルデータから求めて、求められた操舵量よりも、S.03の処理において取得した操舵量情報の操舵量の方が大きい場合に、車両1の旋回状態が第2状態であると判断するように設定することも可能である。
【0058】
また、別例として、S.01の処理において取得された角速度情報に基づいて、ヨー方向(車両1の旋回方向)における角速度を求めて、ヨー方向の角速度が予め設定される閾値よりも大きい(または閾値以上)の場合に第2状態と判断し、閾値以下(または閾値よりも小さい)場合に第1状態と判断するようにしてもよい。その他、車両1の旋回状態が第1状態か第2状態かを判断する条件は、上述した例には限定されず、さらに別の条件により第1状態か第2状態かを判断するように設定することも可能である。
【0059】
表示制御部210は、S.05の処理において求められた旋回状態が、第1状態であるかどうかの判断を行う(S.06)。旋回状態が第1状態である場合(S.06でYes)、表示制御部210は、S.04の処理において求められた角速度補正量(角速度に基づく補正量)に基づいて、HUD制御部105に出力する補正情報の設定を行う(S.07)。一方で、旋回状態が第1状態でない場合(S.06でNo、つまり、旋回状態が第2状態の場合)、表示制御部210は、S.04の処理において求められた角速度補正量(角速度に基づく補正量)の値に0.5を掛けた値(補正量)を求めて、求められた値(補正量)に基づいて、HUD制御部105に出力する補正情報の設定を行う(S.08)。
【0060】
表示制御部210は、S.07の処理、或いは、S.08の処理によって設定された補正情報を、HUD制御部105へ出力して(S.09)、
図3に示す処理を終了する。HUD制御部105は、表示制御部210から取得した補正情報に基づいて、表示器101における画像の描画位置を調整することにより、ウインドシールド2に投影される画像の表示位置の調整を行う。表示制御部210は、
図3に示す処理が終了した後、
図3に示す処理を繰り返し実行する。
【0061】
図4は、走行状態にある車両1のピッチ角と、補正情報として設定された補正量と、実景(実像オブジェクト含む)に対する画像(仮想オブジェクト)の表示位置のずれ量との時間変化を示した図である。
図4の上段に示すように、車両1の走行状態に応じて、車両1が傾斜してピッチ角が変化する場合、表示制御部210は、
図4の中段に示すように、姿勢検出部316より取得した角速度情報に基づき、車両1の傾斜状態に応じた表示位置のずれを低減させる(ピッチ角を打ち消す)ようにして、補正量を算出する。
【0062】
図4の中段に示した破線は、表示制御部210において、旋回状態が第1状態であると判断された場合の補正量を示している。一方で、
図4の中段に示した実線は、表示制御部210において、旋回状態が第2状態であると判断された場合の補正量を示している。第2状態であると判断され得た場合、
図3のS.8の処理で説明したように、角速度に基づく補正量を0.5倍した値が、補正量として設定される。このため、
図4の中段に示す実線の曲線(第2状態における補正量の時間変化)の振幅は、
図4の中段に示す破線の曲線(第1状態における補正量の時間変化)の振幅の半分となっている。
【0063】
そして、このようにして設定された補正量の補正情報に基づいて、HUD制御部105で画像の表示位置の補正が行われると、第1状態の場合には、
図4の下段に示した破線のように、実景に対する画像(仮想オブジェクト)の表示位置のずれ量が0(ゼロ)となる。ここで、実景に対する画像の表示位置のずれ量が0(ゼロ)になるということは、
図4の上段に示すように車両1の傾斜状態が前傾或いは後傾に変化する場合において、その変化に応じて画像の表示位置が上下に移動することになる。つまり、車両1の前傾或いは後傾への変化により実景がウインドシールド2に対して上下する場合に、その上下動に対応するように画像が上下に追随することにより、実景とのずれが生じなくなる。
【0064】
車両1が旋回状態でない場合、運転者9は車両前方(より具体的には車両正面の遠方)を視認した状態で運転を行っているため、画像と実景とにずれが生じない。これにより、画像と実景との相対的な位置関係が維持されることになるため、運転者9に対して視覚的な違和感を与えるおそれがない。
【0065】
一方で、車両1が旋回状態の場合、運転者9は旋回先の実景を視認する傾向が強いため、左にハンドルを操舵している場合には左方向側の遠方を視認し、右にハンドルを操舵している場合には右方向側の遠方を視認していることが多い。このように車両1が旋回している状態において、車両1の傾斜状態が変化する(ピッチ角が時間的に変化する)と、左旋回時には、運転者9の視界の右側部分に、上下に移動する画像が映り込んでしまい、この画像の移動によって、運転者9に対して違和感を与えてしまうおそれがあった。まだ同様に、右旋回時には、運転者9の視界の左側部分に、上下に移動する画像が映り込んでしまい、この画像の移動によって、運転者9に対して違和感を与えてしまうおそれがあった。
【0066】
一方で、旋回状態が第2状態であると判断される場合には、角速度に基づく補正量に0.5を掛けた値(
図4の中段に示す実線参照)に基づいて補正情報の設定が行われるため、
図4の下段に示した実線のように、画像(仮想オブジェクト)の表示位置が実景に対して僅かにずれた状態で移動することになる。ここで、実景に対してずれが生じる画像の移動量は、実景に対してずれが生じていない(ずれ量がゼロ)画像の移動量よりも、上下方向の移動距離(上下方向の移動幅)が抑制されることになる。このため、車両1の前傾或いは後傾への変化により実景がウインドシールド2に対して大きく上下する場合であっても、画像の移動量はその半分程度であり、僅かに上下方向に移動する程度になる。
【0067】
したがって、車両1が旋回している状態において、車両1の傾斜状態が変化する(ピッチ角が時間的に変化する)場合であっても、運転者9の視界の側部(右側部分、或いは左側部分)に映り込む画像の上下移動を抑制することができる。このため、車両1の旋回操作を行う運転者9に対して、視覚的な違和感を与えることがない。
【0068】
以上説明したように、実施の形態における車両用表示システム10では、表示制御部210は、移動体の旋回の強さ(以下では旋回状態とも呼ぶ。)が強くなるに従い、姿勢情報に基づいて算出された補正量を、段階的に低減させた補正情報を設定し、旋回状態に応じて段階的に設定された補正情報に基づいて、画像の表示位置の調整を行う。すなわち、表示制御部210は、車両1の旋回状態が第1状態であるか第2状態であるかの判断を行い、車両1の旋回状態が第2状態である場合(車両1の旋回操作において、運転者9が視点をハンドルの操舵方向側の遠方に向けている場合)には、角速度情報に基づいて求められた補正量に0.5を掛けた値に基づいて補正情報を設定する。このように補正情報を設定して、画像の表示位置の補正を行うことにより、旋回操作を行っている最中に運転者9の視界の側部に映り込んでしまう画像(仮想オブジェクト)の上下移動を抑制することができ、運転者9に対して視覚的な違和感を与えてしまうことを抑制することができる。
【0069】
また、いくつかの実施の形態における車両用表示システム10では、表示制御部210は、移動体の旋回の強さ(以下では旋回状態とも呼ぶ。)が強くなるに従い、姿勢情報に基づいて算出された補正量を、連続的に低減させた補正情報を設定し、旋回状態に応じて段階的に設定された補正情報に基づいて、画像の表示位置の調整を行う。表示制御部210は、例えば、以下の数式1で、移動体の旋回の強さ(例えば、操舵角)に基づいて補正量に乗算させる係数f(1≧f≧0)を算出してもよい(これに限定されない)。ここで、xは操舵角である。a、bは調整値である。
図6は、数式1で算出された操舵角に対する係数fを示す図である(ここでは、a=0.15、b=10)。
【数1】
すなわち、表示制御部210は、移動体の旋回の強さ(例えば、操舵角)に基づいて連続的に補正量を変化させることができる。
【0070】
以上、本開示の移動体用表示システムについて、図面を用いて詳細に説明したが、本開示の移動体用表示システムは、実施の形態において説明した内容に限定されない。例えば、本開示の表示制御部210において、車両1の旋回状態が第2状態であると判断された場合、補正情報を、角速度に基づく補正量に0.5を掛けた値に基づいて設定する構成とした。しかしながら、第2状態における補正情報の補正量は、角速度に基づく補正量の0.5倍には限定されない。1未満の係数を掛け合わせることにより、第2状態における補正量が、第1状態における補正量よりも小さな値になれば十分である。このため、角速度に基づく補正量に掛け合わせられる係数は、0.5よりも小さな値あってもよく、また、0.5よりも大きな値であっても1未満の値であれば、どのような値であってもよい。
【0071】
また、第2状態と判断された場合に、掛け合わされる係数を0(ゼロ)に設定して、結果的に画像の表示位置の補正を全く行わないようにすることも可能である。
図5は、走行状態にある車両1のピッチ角と、補正情報として設定された補正量と、実景(実像オブジェクト含む)に対する画像(仮想オブジェクト)の表示位置のずれ量との時間変化を示した別図である。
【0072】
図5の中段に示した破線は、
図4と同様に、表示制御部210において旋回状態が第1状態であると判断された場合の補正量を示しおり、
図5の中段に示した実線は、旋回状態が第2状態であると判断された場合の補正量を示している。表示制御部210により旋回状態が第2状態であると判断された場合、角速度に基づく補正量を0(ゼロ)倍した値が、補正量(画像の表示位置の調整が行われない補正量)として算出される。
図5の中段に示す実線(第2状態における補正量の時間変化)の振幅は0(ゼロ)となり、
図4の中段に示す実線(第2状態における補正量の時間変化)と明らかに異なっている。
【0073】
このようにして算出された補正量の補正情報に基づいて、HUD制御部105で画像の表示位置の補正が行われると、第1状態の場合には、
図5の下段に示した破線のように、実景に対する画像(仮想オブジェクト)の表示位置のずれ量が0(ゼロ)となる。実景に対する画像(仮想オブジェクト)の表示位置のずれ量が0(ゼロ)となる場合、
図4において説明したように、車両1の傾斜状態の変化に応じて、画像の表示位置が頻繁に移動することになるため、車両1が旋回する状況において、運転者9に視覚的な違和感を与えてしまうおそれがあった。
【0074】
一方で、旋回状態が第2状態であると判断される場合には、角速度に基づく補正量に0(ゼロ)を掛けた値(
図5の中段に示す実線参照)により補正情報が設定されるため、
図5の下段に示した実線のように、実景に対する画像(仮想オブジェクト)のずれ量が、ピッチ角の値の増減に対応して増減することになる。しかしながら、このずれ量の変化は、画像の表示位置が、基準位置に固定された状態を示すことになるため、車両1が旋回する状況において、運転者9の視界の側部に写る画像が、基準位置に留まったままの状態で視認されることになり、運転者9に対して視覚的な違和感を与えるおそれがない。
【0075】
さらに、実施の形態に示した車両用表示システム10では、車両1の旋回状態を、第1状態と第2状態との2段階の場合に分けて判断したが、旋回状態をより多段的に判断するようにしてもよい。例えば、ハンドルの操舵量と車両1の速度との対応関係から、車両1の旋回状態が第1状態、第2状態、第3状態、・・・第N状態(ただし、Nは自然数)であると判断される車両速度の範囲(或いは、第1状態と第2状態との境界となる車両速度、第2状態と第3状態との境界となる車両速度、・・・第N-1状態と第N状態との境界となる車両速度)を、ハンドルの操舵量に対応づけて、予めテーブルデータに記録させておいてもよい。ここで、第N状態は、第N-1状態よりも、急激な旋回操作が行われている状態(車両1の移動時における旋回力(旋回性、旋回の強さ)がより強い状態)と判断される場合を示している。
【0076】
ハンドルの操舵量に対応付けて、車両1の各段階の旋回状態をテーブルデータに記録させた場合、表示制御部210は、S.03の処理で取得した操舵量情報の操舵量に基づいて、第1状態から第N状態までのそれぞれの旋回状態に該当する車両速度の範囲(或いは、境界となる車両速度)を、テーブルデータに基づいて求めて、求められた車両速度の範囲(或いは、境界となる車両速度)と、S.02の処理において取得した速度情報とを対比することによって、車両速度が第1状態から第N状態までのいずれの旋回状態に該当するかを求めるように構成するものであってもよい。
【0077】
求められた旋回状態に応じて、角速度に基づく補正量に掛け合わされる係数を、段階的に低減させた値に設定(例えば、第2状態のときの係数を0.9、第3状態のときの係数を0.8、・・・・第10状態のときの係数を0.1等に設定)することにより、車両1の旋回状態に応じて、画像の表示位置の移動状態を変化させることができ、運転者9に与え得る視覚的な違和感を低減させることが可能になる。
【0078】
また、上述した内容とは逆に、車両速度毎に、第2状態~第N状態と判断され得るハンドルの操舵量の範囲(或いは、境界となる操舵量・操舵角)をテーブルデータに予め記録しておき、S.02の処理において取得した速度情報に基づいて、第1状態から第N状態までのそれぞれの旋回状態に該当するハンドルの操舵量の範囲(或いは、境界となる操舵量・操舵角)を、テーブルデータに基づいて求めて、求められた各操舵量の範囲(或いは、境界となる操舵角)と、S.03の処理において取得した操舵量情報とを対比することによって、車両速度が第1状態から第N状態までのいずれの旋回状態に該当するかを求めるように構成するものであってもよい。
【0079】
なお、第N状態における段階分け数を示すNは、適宜設定することが可能である。例えば、N=3として、中程度の旋回状態を第2状態として、角速度に基づく補正量に掛け合わされる係数を0.8とし、より程度の高い旋回状態を第3状態として、掛け合わされる係数を0.5とするように設定することも可能である。
【0080】
また、旋回状態がN段階に段階分けされる場合において、各段階において設定される補正情報の補正量は、必ずしも異なる値である必要はない。例えば、所定の段階の一段階前の旋回状態において設定された補正情報の補正量を維持したまま、所定の段階以上の旋回状態の補正情報の設定をすることも可能である。
【0081】
さらに、実施の形態における表示制御部210では、旋回状態が第1状態から第2状態に変わる条件と、第2状態から第1状態に変わる条件との関係について、特に規定していない。しかしながら、車両1の移動時における旋回の強さが弱い状態から強い状態へと上がることにより、旋回状態の段階を上げる場合の条件(旋回状態が第N-1状態から第N状態に変わる条件)と、旋回の強さが強い状態から弱い状態へと下がることにより、旋回状態の段階を下げる場合の条件(旋回状態が第N状態から第N-1状態に変わる条件)とが、異なる条件になるように設定することも可能である。このように、旋回状態の段階を上げる場合の条件と下げる場合の条件とを、異なる条件になるように設定することによって、画像の表示位置の補正処理により運転者9に与え得る視覚的な違和感を調整・低減することができる。また、画像の表示位置を補正する処理において、処理の柔軟性を高めることが可能になる。
【0082】
さらに、車両1の旋回時に、運転者9に対して違和感を与えないように、車両1の旋回状態に応じて、画像の輝度を変更するように制御することも可能である。例えば、表示制御部210が、車両1の旋回状態が上がるに従って、輝度情報に設定される輝度を段階的に下げ、車両1の旋回状態が下がるに従って、輝度情報に設定される輝度を段階的に上げるように設定してもよい。このように、旋回状態が上がるにつれて画像の輝度を段階的に下げることにより、車両1の旋回中に画像が視認しにくくなるので、運転者9が旋回操作時にウインドシールド2に表示される画像に対して意識が向きにくくなる。このため、運転者9に対して与え得る視覚的な違和感を抑制することが可能になる。
【0083】
また、車両1の旋回状態おける段階数(第N状態のN)が段階的に下がる毎に、画像の輝度を段階的に上げることにより、旋回操作が終わりに近づくに伴って、実景に重ねて表示される画像をより視認させやすくすることができる。このため、旋回操作が終わって、運転者9が車両1の正面遠方を視認する運転状態となった場合に、運転者9の視線移動を極力抑えつつ、運転支援用の画像情報を的確に提供することができ、安全で快適な車両運行に寄与することが可能になる。
【0084】
さらに、実施の形態における表示制御部210では、第1状態の場合に算出される補正量を、姿勢検出部316により検出された角速度に基づいて求める場合について説明したが、補正量は必ずしも角速度に基づいて求められるものには限定されない。既に説明したように、車両1の傾斜状態を示す情報であるピッチ角等に基づいて、補正量を算出することも可能である。また、第2状態、・・・、第N状態において係数が掛け合わされる補正量に関しても同様に、角速度に基づいて求められる補正量には限定されず、ピッチ角等の様々な情報に基づいて算出されるものを利用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 …車両(移動体)
2 …ウインドシールド(表示部)
3 …インストルメントパネル
9 …運転者
10 …車両用表示システム(移動体用表示システム)
100 …HUD装置(表示位置調整手段、輝度調整手段)
101 …表示器(表示位置調整手段、輝度調整手段)
102 …平面鏡
103 …凹面鏡
105 …HUD制御部(表示位置調整手段、輝度調整手段)
106 …筐体
200 …表示制御装置
210 …表示制御部(制御手段)
220 …メモリ
230 …I/Oインタフェース部(旋回関連情報取得手段、姿勢情報取得手段)
311 …車両ECU(旋回情報検出手段)
312 …外部カメラ部
313 …車両位置検出部
314 …外部通信部
315 …操作検出部(旋回情報検出手段)
316 …姿勢検出部(旋回情報検出手段、姿勢検出手段)
317 …車外センサ部
318 …明るさ検出部
319 …情報通信端末