(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001455
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】疎水化されたカチオン性ポリマー及び双性イオン化合物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20241225BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q19/00
A61K8/36
A61K8/84
A61K8/73
A61K8/44
A61K8/365
A61K8/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101052
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 侑市
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AC102
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC711
4C083AC712
4C083AD071
4C083AD261
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD411
4C083AD431
4C083BB34
4C083CC02
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】美容用途に有用であり、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供すること。
【解決手段】(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、及び(b-1)少なくとも1種の脂肪酸を含む組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、及び
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物。
【請求項2】
前記(a-1)カチオン性ポリマーが、20,000超の分子量(Da)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a-1)カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記(a-1)カチオン性ポリマーの量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(a-2)一価の非ポリマー酸が、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(a-3)双性イオン化合物が、ベタイン化合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記(a-3)双性イオン化合物の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(a-4)水を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の前記(a-4)水の量が、前記組成物の総質量に対して、40質量%~90質量%、好ましくは45質量%~85質量%、より好ましくは50質量%~80質量%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記(b-1)脂肪酸が、C4~C22、好ましくはC6~C20、より好ましくはC8~C18飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記(b-1)脂肪酸の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、グリセリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、より好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される(b-2)少なくとも1種のアルコールを更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の前記(b-2)アルコールの量が、前記組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも、前記(a-1)カチオン性ポリマーと前記(b-1)脂肪酸とが、少なくとも1種の錯体を形成する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の疎水化されたカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の双性イオン化合物を含む組成物、並びに組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に適合性の化粧料の配合は、環境問題を考慮して設計及び開発されたものであり、世界的な課題を満たすための主要な目標になっている。
【0003】
したがって、これらの環境問題に対処するための、より持続可能な組成物、調製方法及び成分を提案することが必須である。
【0004】
この文脈において、特に再生可能な原料及び/又は良好な自然指数を有する材料及び/又は天然起源の材料、より具体的には植物起源の材料の使用を促進し、一方で石油化学起源の化合物の使用を減少することによって、より良好なカーボンフットプリントを有する新規の化粧用組成物を開発することが重要である。
【0005】
アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーで形成されているポリイオンコンプレックスは、既に公知である。
【0006】
例えば、WO2021/125069は、美容処置に有用であり、少なくとも1種のカチオン性ポリマー、少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸を含む、少なくとも1種のポリイオンコンプレックス粒子を含む、組成物を開示している。WO2021/125069はまた、ここで開示される組成物が、油を含んでもよく、エマルションの形態にあってもよいことも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2021/125069
【特許文献2】欧州特許出願第0080976号
【特許文献3】仏国特許第2077143号
【特許文献4】仏国特許第2393573号
【特許文献5】仏国特許第1492597号
【特許文献6】米国特許第4,131,576号
【特許文献7】米国特許第3,589,578号
【特許文献8】米国特許第4,031,307号
【特許文献9】仏国特許第2162025号
【特許文献10】仏国特許第2280361号
【特許文献11】仏国特許第2252840号
【特許文献12】仏国特許第2368508号
【特許文献13】仏国特許第1,583,363号
【特許文献14】米国特許第3,227,615号
【特許文献15】米国特許第2,961,347号
【特許文献16】仏国特許第2080759号
【特許文献17】仏国特許第2320330号
【特許文献18】仏国特許第2270846号
【特許文献19】仏国特許第2316271号
【特許文献20】仏国特許第2336434号
【特許文献21】仏国特許第2413907号
【特許文献22】米国特許第2,273,780号
【特許文献23】米国特許第2,375,853号
【特許文献24】米国特許第2,388,614号
【特許文献25】米国特許第2,454,547号
【特許文献26】米国特許第3,206,462号
【特許文献27】米国特許第2,261,002号
【特許文献28】米国特許第2,271,378号
【特許文献29】米国特許第3,874,870号
【特許文献30】米国特許第4,001,432号
【特許文献31】米国特許第3,929,990号
【特許文献32】米国特許第3,966,904号
【特許文献33】米国特許第4,005,193号
【特許文献34】米国特許第4,025,617号
【特許文献35】米国特許第4,025,627号
【特許文献36】米国特許第4,025,653号
【特許文献37】米国特許第4,026,945号
【特許文献38】米国特許第4,027,020号
【特許文献39】欧州特許出願第0122324号
【特許文献40】WO03/068824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の脂肪酸を少なくともベースとする少なくとも1種の粒子を含むことができる組成物であって、美容用途に有用な組成物を提供することである。
【0009】
加えて、本発明の第2の目的は、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記の目的は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、及び
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物によって達成することができる。
【0011】
(a-1)カチオン性ポリマーは、20,000超の分子量(Da)を有してもよい。
【0012】
(a-1)カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されうる。
【0013】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0014】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸であってもよい。
【0015】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%でありうる。
【0016】
(a-3)双性イオン化合物は、ベタイン化合物から選択されてもよい。
【0017】
本発明の組成物中の(a-3)双性イオン化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってもよい。
【0018】
本発明の組成物は、(a-4)水を更に含んでいてもよい。
【0019】
本発明の組成物中の(a-4)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%~99質量%、好ましくは45質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%であってもよい。
【0020】
(b-1)脂肪酸は、C4~C22、好ましくはC6~C20、より好ましくはC8~C18飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択されうる。
【0021】
本発明の組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0022】
本発明の組成物は、好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、グリセリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、より好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される(b-2)少なくとも1種のアルコールを更に含んでもよい。
【0023】
本発明の組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%でもよい。
【0024】
少なくとも、本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
鋭意検討の結果、本発明者らは、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の脂肪酸を少なくともベースとした少なくとも1種の粒子を含み、美容用途に有用であり、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0027】
本発明の組成物は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、及び
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸
を含む。
【0028】
本発明の組成物は、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸を少なくとも含む、少なくとも1種の粒子を形成することができる。(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。錯体は、(a-3)双性イオン化合物を含んでもよい。この粒子は、サイズが0.3~10ミクロン等の典型的なミクロンオーダーであるゲル粒子であってもよい。粒子は、線状でも繊維状でもないが、球又は球体の形態であってよい。そのため、粒子のアスペクト比は、5未満、好ましくは3未満、より好ましくは2未満であってもよい。粒子の「サイズ」は、粒子の最長径であってもよい。組成物中の粒子のサイズは、動的光散乱法によって、例えば、ELSZ-2000(大塚電子株式会社)等の粒径分析器を使用することによって決定することができる。この粒径は、体積平均径に基づいてもよい。
【0029】
上記の粒子のサイズは、環境に応じて変化しうる。例えば、粒子が25℃の水中にある場合、粒子のサイズは1.0μm超、好ましくは1.5μm超、より好ましくは2.0μm超、例えば上述したような0.3~10ミクロンでありうる。一方で、粒子が乾燥している場合、粒子のサイズは、500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは300nm未満でありうる。水中の粒子のサイズは、動的光散乱法によって、例えば、ELSZ-2000(大塚電子株式会社)等の粒径分析器を使用することによって決定することができる。この粒径は、体積平均径に基づいてもよい。一方で、乾燥しているときの粒子のサイズは、顕微鏡によって決定することができる。この粒径は、数平均径に基づいてもよい。
【0030】
本発明の組成物は、分散体の形態であってもよい。
【0031】
本発明の組成物は、ゲルの形態であってもよい。更に、本発明の組成物は、ダイラタンシー効果を示しうる。
【0032】
本発明の組成物は、良好な触感(良好な質感)をもたらすことができる。例えば、本発明の組成物は、ケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に組成物を適用するとき、滑らかな感触をもたらすことができる。
【0033】
本発明の組成物は、皮膜を形成することができる。本発明の組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥したとき、本発明の組成物中の粒子は、そのサイズを縮小することができ、連続皮膜を形成することができる。皮膜は、小粒子で構成され、該小粒子のサイズは、ナノオーダー(例えば、約100nm~約500nm)である。皮膜中の粒子のサイズが小さくなるほど、皮膜は半透明でありうる。
【0034】
本発明の組成物は、ぼかし効果をもたらすことができる。本発明の組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥したとき、本発明の組成物は皮膜を形成することができる。こうして形成された皮膜は、ぼかすことができ、すなわち、しみ、しわ及び小じわ等の皮膚上のムラを隠すことができる。
【0035】
本発明の組成物は、非水溶性皮膜を形成することができる。そのため、本発明の組成物は、汗又は雨により濡れている状態であっても安定性の防水化粧皮膜を与えることができる。したがって、化粧皮膜の美容効果は、長期間にわたって維持されうる。
【0036】
本発明の組成物は、弾力性の皮膜を形成することができる。そのため、本発明の組成物は、弾性等の良好な質感を有する化粧皮膜を与えることができる。加えて、本発明の皮膜は、テカリを抑えることができ、したがって、マットな外観を与えることができる。
【0037】
これに応じて、本発明の組成物は、美容用途に有用である。
【0038】
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマーが天然資源から得られる場合、(a-1)カチオン性ポリマーは、環境に適合性の成分とすることができる。例えば、(a-1)カチオン性ポリマーは、環境に適合性のキトサンから選択されうる。したがって、本発明の組成物は、環境に適合性の成分を含むことができる。
【0039】
加えて、成分(a-2)、(a-3)及び(b-1)は、植物等の再生可能な材料及び/又は生分解性材料を起源とすることができる。したがって、本発明の組成物は、環境に適合性とすることができる。
【0040】
組成物は、(b-1)脂肪酸とは異なる少なくとも1種の油を含んでもよい。しかしながら、油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満となるように限定されうる。そのため、本発明の組成物は、この実施形態では、油から誘導されるベタつきを低減することができる。
【0041】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0042】
[組成物]
本発明の組成物は、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、及び
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸
を含む。
【0043】
本発明の組成物において、少なくとも、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸は、少なくとも1種の錯体を形成することができる。
【0044】
(a-1)カチオン性ポリマーのアミノ(-NH2)又はアンモニウム(-NH3
+)基等の正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分は、(b-1)脂肪酸のカルボン酸(-COOH)又はカルボキシレート(-COO-)基とイオン相互作用して錯体を形成することができる。錯体は、(b-1)脂肪酸の脂肪部分に由来する少なくとも1つの疎水性部分を含む。したがって、(a-1)カチオン性ポリマーは、錯体を形成することにより、(b-1)脂肪酸によって疎水化されうる。
【0045】
以下の図は、R-COOH[式中、Rは、(b-1)脂肪酸の脂肪部分を示す]により表される(b-1)脂肪酸の、(a-1)カチオン性ポリマーとしてのキトサンの疎水化の例、すなわち、(a-1)カチオン性ポリマーとしてのキトサンと(b-1)脂肪酸との錯体の形成の例を示す。
【0046】
【0047】
(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸によって形成された錯体は、錯体の疎水性部分間の疎水性相互作用により、凝集して少なくとも1種の粒子を形成することができる。
【0048】
以下の図は、(a-1)カチオン性ポリマー(線で表す)及び(b-1)脂肪酸(点で表す)によって形成された錯体の凝集により形成された粒子の例を示す。
【0049】
【0050】
本発明の組成物は、少なくとも、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸を含む、少なくとも1種の粒子を形成する。言い換えれば、少なくとも、本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸は、少なくとも1種の粒子を形成することができる。上記の粒子は、非常に小さく、したがって、目視で認識できない。
【0051】
少なくとも(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸を含み、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸が少なくとも1種の錯体を形成することができる、粒子は、水中で1μm以上のサイズを有しうる。乾燥した場合、粒子は縮小して、1μm未満、例えば100nm~500nmまでサイズを減らしうる。しかしながら、再度水と接触させた場合、粒子は1μm以上のサイズを有するまで回復しうる。加えて、乾燥した粒子は、コアシェル構造を有することができ、コアは主に(a-1)カチオン性ポリマーを含み得、シェルは主に(b-1)脂肪酸を含みうる。
【0052】
(a-2)一価の非ポリマー酸若しくはその塩、及び/又は(a-3)双性イオン化合物は、上記の粒子と相互作用しうる。そのため、上記の粒子は、(a-2)一価の非ポリマー酸若しくはその塩、及び/又は(a-3)双性イオン化合物も含みうる。
【0053】
(カチオン性ポリマー)
本発明の組成物は、(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。単一のタイプのカチオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0054】
カチオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。(a-1)カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05meq/g~15meq/g、より好ましくは0.1meq/g~10meq/gでもよい。
【0055】
(a-1)カチオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更により好ましくは4,000以上であることが好ましい場合がある。
【0056】
(a-1)カチオン性ポリマーは、20,000超の分子量を有することが特に好ましい場合がある。
【0057】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。
【0058】
(a-1)カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。用語(第一級)「アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0059】
(a-1)カチオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるもの、例えば3種類のモノマーから結果として得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0060】
(a-1)カチオン性ポリマーは、天然の及び合成のカチオン性ポリマー、好ましくは天然のカチオン性ポリマーから選択することができる。カチオン性ポリマーの非限定例は、以下の通りである。
【0061】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル及びアミドに由来し、以下の式の単位から選択される少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0062】
【0063】
(式中:
R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基及びエチル基から選択され、
R3は、同一であっても異なっていてもよく、水素及びCH3から選択され、
記号Aは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基、及び1~4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基から選択され、
R4、R5及びR6は、同一であっても異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を含むアルキル基、及びベンジル基、及び少なくとも1つの実施形態では、1~6個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Xは、無機又は有機酸に由来するアニオン、例えばメト硫酸アニオン及びハロゲン化物イオン、例えば、塩化物イオン及び臭化物イオンである)。
【0064】
ファミリー(1)のコポリマーはまた、コモノマーに由来する少なくとも1つの単位も含んでよく、これは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素原子が(C1~C4)低級アルキル基で置換されているアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル又はメタクリル酸及びそれらのエステルに由来する基、ビニルラクタム、例えばビニルピロリドン及びビニルカプロラクタム、並びにビニルエステルから選択されうる。
【0065】
ファミリー(1)のコポリマーの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
アクリルアミドと硫酸ジメチル又はハロゲン化ジメチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとのコポリマー、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー、例えば欧州特許出願第0080976号に記載されているもの、
アクリルアミドとメト硫酸メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムとのコポリマー、四級化又は非四級化ビニルピロリドン/アクリル酸又はメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルコポリマー、例えば仏国特許第2077143号及び同第2393573号に記載されているもの、
メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンターポリマー、
ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルジメチルアミンコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、並びに
架橋メタクリロイルオキシ(C1~C4)アルキルトリ(C1~C4)アルキルアンモニウム塩ポリマー、例えば塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルの単独重合によって、又はアクリルアミドと、塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合によって、その単独重合又は共重合に続いて、オレフィン性不飽和を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミドで架橋することによって、得られるポリマー。
【0066】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体等、例えばUnion Carbide Corporation社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0067】
カチオン性セルロースポリマーが、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0068】
第四級アンモニウム基は、以下の化学式(I)によって表されうる第四級アンモニウム基含有基中に存在しうる:
【0069】
【0070】
(式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~3アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~24アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~4アルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基を示す)。
【0071】
上記の化学式(I)中の最左のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0072】
第四級アンモニウム基含有基が、-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0073】
(3)第四級アンモニウムの水溶性モノマーでグラフト化されたセルロースコポリマー及びセルロース誘導体等のカチオン性セルロースポリマー、例えば、米国特許第4,131,576号に記載のもの、例えば、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウム塩から選択される塩でグラフト化された、ヒドロキシアルキルセルロース、例としては、ヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-、及びヒドロキシプロピルセルロース等。
【0074】
これらのポリマーに相当する市販製品としては、例えば、National Starch社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0075】
(4)米国特許第3,589,578号及び同第4,031,307号に記載されている、非セルロース系カチオン性多糖、例えばカチオン性トリアルキルアンモニウム基を含むグアーガム、カチオン性ヒアルロン酸及びデキストランヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド。塩、例えば2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムの塩化物で修飾されたグアーガム(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)もまた、使用することができる。
【0076】
このような製品は、例えば、MEYHALL社により商品名JAGUAR(登録商標)C13 S、JAGUAR(登録商標)C15、JAGUAR(登録商標)C17及びJAGUAR(登録商標)C162で販売されている。
【0077】
(5)ピペラジニル単位と、酸素、硫黄、窒素、芳香族環及び複素環式環から選択される少なくとも1つの要素により任意選択で割り込まれた直鎖又は分枝鎖を含む二価のアルキレン又はヒドロキシアルキレン基とを含むポリマー、並びにまたこれらのポリマーの酸化及び/又は四級化生成物。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2162025号及び同第2280361号に記載されている。
【0078】
(6)例えば酸性化合物をポリアミンと重縮合させることによって調製される水溶性ポリアミノアミドであり、これらのポリアミノアミドは、エピハロヒドリン;ジエポキシド;二無水物;不飽和二無水物;ビス不飽和誘導体;ビスハロヒドリン;ビスアゼチジニウム;ビスハロアシルジアミン;ビスアルキルハライド;ビスハロヒドリン、ビスアゼチジニウム、ビスハロアシルジアミン、ビスアルキルハライド、エピハロヒドリン、ジエポキシド及びビス不飽和誘導体から選ばれる要素と反応性である二官能性化合物の反応から得られるオリゴマーから選ばれる要素で架橋されている場合があり;その架橋剤は、ポリアミノアミドのアミン基1つ当たり0.025~0.35molの範囲の量で使用され;これらのポリアミノアミドは、任意選択でアルキル化されているか、又はこれらが少なくとも1つの第三級アミン官能基を含む場合、それらは、四級化されていてもよい。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2252840号及び同第2368508号に記載されている。
【0079】
(7)ポリアルキレンポリアミンをポリカルボン酸と縮合させ、続いて二官能性作用剤でアルキル化することから得られるポリアミノアミド誘導体、例えば、メチル、エチル及びプロピルの各基等の、アルキル基が1~4個の炭素原子を含み、エチレン基等の、アルキレン基が1~4個の炭素原子を含む、アジピン酸/ジアルキルアミノヒドロキシアルキルジアルキレントリアミンポリマー。このようなポリマーは、例えば仏国特許第1,583,363号に記載されている。少なくとも1つの実施形態では、これらの誘導体は、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンポリマーから選択されうる。
【0080】
(8)2つの第一級アミン基及び少なくとも1つの第二級アミン基を含むポリアルキレンポリアミンと、ジグリコール酸、及び3~8個の炭素原子を含む飽和脂肪族ジカルボン酸から選択されるジカルボン酸との反応によって得られるポリマー。ポリアルキレンポリアミンのジカルボン酸に対するモル比は、0.8:1~1.4:1の範囲であってよく、それから得られるポリアミノアミドを、エピクロロヒドリンと、エピクロロヒドリンの、ポリアミノアミドの第二級アミン基に対するモル比0.5:1~1.8:1の範囲で反応させる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第3,227,615号及び同第2,961,347号に記載されている。
【0081】
(9)アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリル-アンモニウムのシクロポリマー、例えば、鎖の主要構成要素として、式(Ia)及び(Ib)の単位から選択される少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0082】
【0083】
(式中:
k及びtは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1に等しく、和k+tは、1に等しく、
R12は、水素及びメチル基から選択され、
R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、アルキル基が例えば1~5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基、及び低級(C1~C4)アミドアルキル基から選択され、又はR10及びR11は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジニル及びモルホリニルを形成してもよく、
Y'は、アニオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである)。これらのポリマーは、例えば仏国特許第2080759号及びその追加特許第2190406号に記載されている。
【0084】
一実施形態では、R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0085】
このようなポリマーの例としては、これらに限定されないが、(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えばCALGON社により名称「MERQUAT(登録商標)100」で販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー(及び低質量平均分子量のそのホモログ)、並びに名称「MERQUAT(登録商標)550」で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーが挙げられる。
【0086】
(10)式(II)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む第四級ジアンモニウムポリマー:
【0087】
【0088】
[式中:
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族基、並びに低級ヒドロキシアルキル脂肪族基から選択され、或いは、R13、R14、R15及びR16は、これらが結合している窒素原子と一緒になって又は別々に、窒素以外の第2のヘテロ原子を任意選択で含む複素環を形成してもよく、或いは、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、ニトリル基、エステル基、アシル基、アミド基、-CO-O-R17-E基及び-CO-NH-R17-E基(式中、R17は、アルキレン基であり、Eは、第四級アンモニウム基である)から選択される少なくとも1つの基で置換されている直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基から選択され、
A1及びB1は、同一であっても異なっていてもよく、2~20個の炭素原子を含むポリメチレン基から選択され、これは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であってよく、これは、芳香環、酸素、硫黄、スルホキシド基、スルホン基、ジスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシル基、第四級アンモニウム基、ウレイド基、アミド基及びエステル基から選択される少なくとも1つの要素を、主鎖中に、連結されて又は挿入されて含んでよく、
X-は、無機酸又は有機酸に由来するアニオンであり、
A1、R13及びR15は、これらが結合している2個の窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成してもよく、
A1が、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和アルキレン又はヒドロキシアルキレン基から選択される場合、B1は、以下:
-(CH2)n-CO-E'-OC-(CH2)n-
{式中、E'は、以下:
a)式-O-Z-O-のグリコール残基[式中、Zは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基、及び以下の式の基:
-(CH2-CH2-O)x-CH2-CH2-
-[CH2-CH(CH3)-O]y-CH2-CH(CH3)-
(式中、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、定義された独自の重合度を表す1~4の範囲の整数、及び平均重合度を表す1~4の範囲の数から選択される)
から選択される]、
b)ビス第二級ジアミン残基、例えばピペラジン誘導体、
c)式-NH-Y-NH-(式中、Yは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系の基及び二価基-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-から選択される)のビス第一級ジアミン残基、並びに
d)式-NH-CO-NH-のウレイレン基
から選択される}
から選択されうる]。
【0089】
少なくとも1つの実施形態では、X-は、アニオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンである。
【0090】
このタイプのポリマーは、例えば、仏国特許第2320330号、同第2270846号、同第2316271号、同第2336434号及び同第2413907号、並びに米国特許第2,273,780号、同第2,375,853号、同第2,388,614号、同第2,454,547号、同第3,206,462号、同第2,261,002号、同第2,271,378号、同第3,874,870号、同第4,001,432号、同第3,929,990号、同第3,966,904号、同第4,005,193号、同第4,025,617号、同第4,025,627号、同第4,025,653号、同第4,026,945号、及び同第4,027,020号に記載されている。
【0091】
このようなポリマーの非限定的な例としては、式(III)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むものが挙げられる:
【0092】
【0093】
(式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル及びヒドロキシアルキル基から選択され、n及びpは、同一であっても異なっていてもよく、2~20の範囲の整数であり、X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンである)。
【0094】
(11)式(IV)の単位を含むポリ第四級アンモニウムポリマー:
【0095】
【0096】
[式中:
R18、R19、R20及びR21は、同一であっても異なっていてもよく、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、β-ヒドロキシエチル基、β-ヒドロキシプロピル基、-CH2CH2(OCH2CH2)pOH基(式中、pは、0~6の範囲の整数から選択される)から選択され、但し、R18、R19、R20及びR21が同時に水素であることはなく、
r及びsは、同一であっても異なっていてもよく、1~6の範囲の整数から選択され、
qは、0~34の範囲の整数から選択され、
X-は、アニオン、例えばハロゲン化物イオンであり、
Aは、ジハライド及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-基から選択される]。
【0097】
このような化合物は、例えば欧州特許出願第0122324号に記載されている。
【0098】
(12)ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマー。
【0099】
好適なカチオン性ポリマーの他の例には、カチオン性タンパク質及びカチオン性タンパク質加水分解物、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、ビニルピリジン単位及びビニルピリジニウム単位から選択される単位を含むポリマー、ポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物、第四級ポリウレイレン、並びにキチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、(a-1)カチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUNION CARBIDE CORPORATION社により名称「JR 400」で販売されている製品、カチオン性シクロポリマー、例えばCALGON社により名称MERQUAT(登録商標)100、MERQUAT(登録商標)550及びMERQUAT(登録商標)Sで販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩で修飾されたグアーガム、並びにビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマーから選択される。
【0101】
(13)ポリアミン
【0102】
(a-1)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基を有する、ホモポリマー又はコポリマーでもよい(コ)ポリアミンを使用することも可能である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、(コ)ポリアミンのポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。
【0103】
(コ)ポリアミンの例として、キトサン、(コ)ポリアリルアミン、(コ)ポリビニルアミン、(コ)ポリアニリン、(コ)ポリビニルイミダゾール、(コ)ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、(コ)ポリビニルピリジン、例えば(コ)ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、(コ)ポリイミン、例えば(コ)ポリエチレンイミン、(コ)ポリピリジン、例えば(コ)ポリ(第四級ピリジン)、(コ)ポリビグアニド、例えば(コ)ポリアミノプロピルビグアニド、(コ)ポリリジン、(コ)ポリオルニチン、(コ)ポリアルギニン、(コ)ポリヒスチジン、アミノデキストラン、アミノセルロース、アミノ(コ)ポリビニルアセタール、及びこれらの塩を挙げることができる。
【0104】
(コ)ポリアミンとしては、(コ)ポリリジンを使用することが好ましい場合がある。ポリリジンは、周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成されうるL-リジンの天然ホモポリマーであることができる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンであることができる。ポリリジンは、極性溶媒、例えば水、プロピレングリコール及びグリセロールに可溶性の高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の多様な形態で市販されている。ポリ-L-リジンが好ましい。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態にあってもよい。
【0105】
(14)カチオン性ポリアミノ酸
【0106】
(a-1)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基及びカルボキシル基を有する、カチオン性ホモポリマー又はコポリマーでありうるカチオン性ポリアミノ酸を使用することが可能でありうる。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、カチオン性ポリアミノ酸のポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。カルボキシル基は、カチオン性ポリアミノ酸の、存在する場合はペンダント基中に存在してもよい。
【0107】
カチオン性ポリアミノ酸の例として、カチオン化コラーゲン、カチオン化ゼラチン、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コンキオリンタンパク質、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ダイズタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質等を挙げることができる。
【0108】
以下の説明は、カチオン性ポリマーの好ましい実施形態に関する。
【0109】
(a-1)カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン及びキトサン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0110】
(a-1)カチオン性ポリマーは、キトサンから選択されることがより好ましい。
【0111】
キトサンは、20,000超、好ましくは50,000超、より好ましくは80,000超の分子量(Da)を有することが好ましい。換言すれば、(a-1)カチオン性ポリマーは、高分子量キトサンである。
【0112】
キトサンの分子量(Da)は、1,000,000未満、好ましくは500,000未満、より好ましくは300,000未満であってもよい。
【0113】
キトサンの分子量(Da)は、20,000超及び1,000,000未満、好ましくは50,000超及び500,000未満、より好ましくは80,000超及び300,000未満であってもよい。
【0114】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。分子量は、例えば、ASTM D5296-19に準拠して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定又は決定することができる。
【0115】
キトサンは、自然界で非常に希少である。キトサンは、シロアリの女王等の特定の昆虫の外骨格中及び特定の部類の菌類である接合菌綱の細胞壁中でのみ報告されている。
【0116】
キトサンは、キチンの脱アセチル化によって得ることができる。キチンは、β型結合(1,4)によって一緒に連結された幾つかのN-アセチル-D-グルコサミン単位から構成された多糖である。
【0117】
キトサンの理想的な化学構造は、グリコシド結合(1→4)によって結合されたβ-D-グルコサミンモノマーの配列である。
【0118】
本発明における「キトサン」は、構成単位N-アセチル-D-グルコサミン及びD-グルコサミンから形成される任意のコポリマーであって、そのアセチル化度が90%未満、好ましくは80%未満、好ましくは70%未満、好ましくは60%未満、好ましくは50%未満である、任意のコポリマーを意味する。キトサンは、β型結合(1,4)により一緒に連結されているグルコサミン糖単位(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン単位(アセチル化単位)からなり、ポリ(N-アセチル-D-グルコサミン)-ポリ(D-グルコサミン)タイプのポリマーである。
【0119】
より好ましくは、キトサンのアセチル化度は、40%以下、好ましくは35%以下、好ましくは25%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下である。
【0120】
アセチル化度は、全単位の数に対するアセチル化単位の百分率であり、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)又は強塩基による滴定法によって決定することができる。
【0121】
本発明におけるキトサンは、好ましくは、菌類起源から調製された多糖である。特に、キトサンは、安全で豊富な食料又はバイオテクノロジーによる菌類起源[マッシュルーム(Agaricus bisporus)若しくはクロコウジカビ(Aspergillus niger)等]から抽出及び精製される。
【0122】
本発明におけるキトサンは、好ましくは、子嚢菌綱(Ascomycete)タイプの菌類、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)及び/又は担子菌類(Basidiomycete fungus)、具体的にはシイタケ(Lentinula edodes)及び/又はマッシュルーム(Agaricus bisporus)の菌糸体に由来する。好ましくは、菌類はクロコウジカビ(Aspergillus niger)である。
【0123】
キトサンは、遺伝子組み換え生物(GMO:Genetically Modified Organisms)起源のものであってもよいが、好ましくは非GMO起源のものである。
【0124】
本発明におけるキトサンは、天然であり、すなわち、修飾されていない。特に、一切の化学修飾を含まない。
【0125】
キトサンの一調製方法は、WO03/068824に記載のものである。
【0126】
好ましくは、本発明において使用されるキトサンは、粉末の形態である。Kitozyme社により名称Kiosmetine又はKionutrime、例えばKiosmetine-CSH及びKiosmetine Pで市販されている。
【0127】
(a-1)は、キトサンから選択されることが好ましく、より好ましくは分子量(Da)が20,000超のキトサンから選択される。
【0128】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0129】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0130】
本発明の組成物中の(a-1)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0131】
(一価の非ポリマー酸又はその塩)
本発明の組成物は、(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩を含む。2種以上の一価の非ポリマー酸又はその塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩の組合せを使用することができる。
【0132】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリアクリル酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0133】
本明細書における用語「塩」は、一価の非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、一価の非ポリマー酸と、塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0134】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の分子量が、1000未満、好ましくは500以下、より好ましくは200以下であることが好ましい。
【0135】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、(a-3)水によって形成される水性相中に含まれうる。(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、(a-3)水に対する(a-1)カチオン性ポリマーの溶解を促進することができる。
【0136】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる単一の酸基を有する。
【0137】
(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩は、一価の有機酸又は無機酸及びそれらの塩から選択されうる。
【0138】
(a-2)一価の非ポリマー酸は、一価の有機酸、より好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸であることが好ましい。
【0139】
一価の非ポリマーカルボン酸は、ヒドロキシ酸、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸及びベータ-ヒドロキシ酸から選択されうる。アルファ-ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸及びグリコール酸を挙げることができる。ベータ-ヒドロキシ酸としては、例えば、サリチル酸を挙げることができる。
【0140】
一価の非ポリマー酸は、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価の非ポリマーカルボン酸、より好ましくは一価のヒドロキシ酸、例えば乳酸及びサリチル酸であってもよい。(a-1)カチオン性ポリマーがキトサンから選択される場合、乳酸及びサリチル酸が特に好ましいが、その理由は、これらがキトサンを効果的に溶解することができ、臭いが少ないからである。
【0141】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0142】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0143】
本発明の組成物中の(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%でありうる。
【0144】
(双性イオン化合物)
本発明の組成物は、(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物を含む。単一のタイプの双性イオン化合物を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの双性イオン化合物を組み合わせて使用することもできる。
【0145】
(a-3)双性イオン化合物は、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩とは異なる。
【0146】
(a-3)双性イオン化合物は、単一分子中に少なくとも1つの正電荷及び少なくとも1つの負電荷を有する。(a-3)双性イオン化合物は、内塩として見なされてもよい。
【0147】
(a-3)双性イオン化合物は、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸によって形成される錯体とイオン相互作用することができる。(a-3)双性イオン化合物は、(a-2)一価の非ポリマー酸(又はその塩)ともイオン相互作用しうる。
【0148】
(a-3)双性イオン化合物はまた、水素結合受容体として機能することもできる。そのため、(a-3)双性イオン化合物は、水素結合を介して、(a-1)カチオン性ポリマー及び/又は(b-1)脂肪酸、並びに(a-2)一価の非ポリマー酸(又はその塩)と相互作用することができる。
【0149】
(a-3)双性イオン化合物は、有機であっても、無機であってもよい。(a-3)双性イオン化合物は、有機であることが好ましい。(a-3)双性イオン化合物は、アミノ酸から選択されることがより好ましい。
【0150】
(a-3)双性イオン化合物は、ベタイン化合物から選択されることが好ましい。
【0151】
用語「ベタイン化合物」は、本明細書では、正電荷を持つカチオン性部分及び負電荷を持つアニオン性部分を有する両性化合物であって、正電荷を持つカチオン性部分の正電荷を持つ原子に結合されている水素原子がなく、正電荷を持つカチオン性部分が負電荷を持つアニオン性部分に隣接し得ない、両性化合物を意味する。
【0152】
本発明の目的のために、本明細書のベタイン化合物は、少なくとも1つの親水性部分と少なくとも1つの疎水性部分とを含む界面活性剤ではない。
【0153】
ベタイン化合物中の正電荷を持つカチオン性部分としては、これらに限定されないが、第四級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、及びスルホニウムカチオンが挙げられる。好ましくは、ベタイン化合物は、正電荷を持つカチオン性部分として第四級アンモニウムカチオンを含む。
【0154】
ベタイン化合物中の負電荷を持つアニオン性部分としては、限定されないが、カルボキシレートアニオンが挙げられる。
【0155】
ベタイン化合物は、トリメチルグリシン(ベタイン)、カルニチン、L-プロリンベタイン又はスタキドリン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができ、好ましくはトリメチルグリシンであってもよい。
【0156】
本発明の組成物中の(a-3)双性イオン化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0157】
本発明の組成物中の(a-3)双性イオン化合物の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってもよい。
【0158】
本発明の組成物中の(a-3)双性イオン化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってもよい。
【0159】
(水)
本発明の組成物は、(a-4)水を含んでもよい。
【0160】
(a-4)水は、本発明の組成物の連続相である水性相を形成することができる。
【0161】
(a-4)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上であってもよい。
【0162】
(a-4)水の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下であってもよい。
【0163】
(a-4)水の量は、組成物の総質量に対して、40質量%~99質量%、好ましくは45質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%であってもよい。
【0164】
(脂肪酸)
本発明の組成物は、(b-1)少なくとも1種の脂肪酸を含む。単一のタイプの脂肪酸を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの脂肪酸を組み合わせて使用してもよい。
【0165】
(b-1)脂肪酸は、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩とは異なる。
【0166】
(b-1)脂肪酸は、(a-1)カチオン性ポリマーを疎水化することができる。
【0167】
本明細書において用語「脂肪酸」は、脂肪族炭素の長鎖を有するカルボン酸を意味する。
【0168】
(b-1)脂肪酸は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有する。(b-1)脂肪酸は、最大26個の炭素原子、好ましくは最大24個の炭素原子、より好ましくは最大22個の炭素原子を含んでもよい。(b-1)脂肪酸は、C4~C26脂肪酸、より好ましくはC6~C24脂肪酸、更により好ましくはC8~C22脂肪酸から選択されることが好ましい。
【0169】
(b-1)脂肪酸は、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状の脂肪酸から選択されうる。そのため、(b-1)脂肪酸は、C4~C26、好ましくはC6~C24、より好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択されうる。
【0170】
不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸として、一価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸又は多価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸を使用してもよい。不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸の不飽和部分として、炭素間二重結合又は炭素間三重結合を挙げることができる。
【0171】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、イソステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びリグノセリン酸(C24)を挙げることができる。
【0172】
不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、エライジン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、エルカ酸(C22)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる。
【0173】
(b-1)脂肪酸は、C8~C18飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から、より好ましくはカプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0174】
(b-1)脂肪酸は、その遊離酸の形態又はその塩の形態であってもよい。脂肪酸の塩として、無機塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、並びに有機塩、例えばアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩等)及びアミン塩(トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等)を挙げることができる。単一のタイプの脂肪酸塩又は異なるタイプの脂肪酸塩の組合せを使用してもよい。更に、遊離酸の形態の1種又は複数の脂肪酸と、塩の形態の1種又は複数の脂肪酸との組合せを使用することができ、1種又は複数のタイプの塩を使用することもできる。
【0175】
本発明の組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でよい。
【0176】
一方で、本発明の組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でもよい。
【0177】
したがって、本発明の組成物中の(b-1)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲でありうる。
【0178】
(アルコール)
本発明の組成物は、(b-2)少なくとも1種のアルコールを含んでもよい。単一のタイプのアルコールを使用してもよく、又は2種以上の異なるタイプのアルコールを組み合わせて使用してもよい。
【0179】
(b-2)アルコールは、大気圧(760mmHg又は105Pa)下、室温、例えば25℃において液体の形態でありうる。
【0180】
(b-2)アルコールは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0181】
「揮発性」という用語は、アルコールが、標準大気圧、例えば1atm及び室温、例えば25℃で蒸発することができることを意味する。
【0182】
(b-2)アルコールは、(b-1)脂肪酸と(a-1)カチオン性ポリマーとの錯化を促進するように機能することができる。
【0183】
(b-2)アルコールは、好ましくは一価の脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコール、及びこれらの混合物から、より好ましくは一価の脂肪族アルコールから選択される、一価のアルコールであってもよい。
【0184】
一価の脂肪族アルコール(モノオール)は、2~6個の炭素原子、好ましくは2又は3個の炭素原子、及び1つのヒドロキシル基を有していてもよい。一価の脂肪族アルコールの例としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0185】
一価の芳香族アルコールは、8~12個の炭素原子、好ましくは8~10個の炭素原子、より好ましくは8個の炭素原子を有しうる。一価の芳香族アルコールの例としては、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0186】
(b-2)アルコールは、好ましくは二価又は多価の脂肪族アルコール、二価又は多価の芳香族アルコール、及びこれらの混合物から、より好ましくは二価又は多価の脂肪族アルコールから選択される、二価又は多価のアルコールであってもよい。
【0187】
二価の脂肪族アルコール(ジオール)は、2~8個の炭素原子、好ましくは3~7個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子、及び2つのヒドロキシル基を有しうる。二価の脂肪族アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0188】
多価の脂肪族アルコールは、糖類又はその誘導体を包含しない。糖類の誘導体には、糖類の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、並びに1つ又は複数のヒドロキシ基中の水素原子が、少なくとも1つの置換基、例えばアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基又はカルボニル基で置き換えられている糖類又は糖アルコールが含まれる。
【0189】
多価の脂肪族アルコール(ポリオール)は、3~10個の炭素原子、好ましくは4~9個の炭素原子、より好ましくは5~8個の炭素原子、及び3つ以上のヒドロキシル基を有しうる。多価の脂肪族アルコールの例としては、グリセリン及びジグリセリンが挙げられる。
【0190】
(b-2)アルコールは、エタノール、ペンチレングリコール、グリセリン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくはエタノール、ペンチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0191】
本発明の組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0192】
本発明の組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下でもよい。
【0193】
本発明の組成物中の(b-2)アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%でもよい。
【0194】
(任意選択の成分)
本発明の組成物は、前述の成分に加えて、化粧品に典型的に用いられる任意選択の成分、具体的には、界面活性剤/乳化剤、例えば(a-1)カチオン性ポリマー以外の合成ポリマーに由来する親水性又は親油性増粘剤、(b-2)アルコール以外の揮発性又は不揮発性有機溶媒、アニオン性ポリマー、両性ポリマー、β-グルカン等の非イオン性ポリマー、シリコーン及びシリコーン誘導体、(a-1)カチオン性ポリマー以外の動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0195】
本発明の組成物は、上記の任意選択の成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでもよい。
【0196】
本発明の組成物は、少なくとも1種の油を含んでもよい。本明細書では、「油」は、大気圧下(760mmHg)、室温(25℃)にて、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は物質を意味する。油として、化粧品に一般に使用されるものを、単独で又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0197】
しかしながら、本発明の組成物中の油の量は、限定的であることが好ましい。したがって、本発明の組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物が油を含まないことが特に好ましい場合がある。
【0198】
本発明の組成物中の界面活性剤/乳化剤及び/又は合成増粘剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物が界面活性剤/乳化剤又は合成増粘剤を含まないことが特に好ましい。
【0199】
本発明の組成物中のアニオン性ポリマー又は両性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。本発明の組成物は、アニオン性又は両性ポリマーを含まないことが特に好ましい。
【0200】
[調製]
本発明の組成物は、上に説明した必須成分、及び必要な場合には上に説明した任意選択の成分を混合することによって、調製されうる。
【0201】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合し、本発明の組成物を調製することができる。
【0202】
本発明の組成物は、撹拌機及びホモジナイザー等の従来の混合手段により、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。また、加熱は必要ではない場合もある。したがって、本発明の組成物の調製方法は、環境に適合性でありうる。
【0203】
本発明の組成物は、以下:
(1)
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、及び
任意選択の(a-4)水
を混合して、第1の混合物(a)を形成する工程と、
(2)
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸、及び
任意選択の(b-2)少なくとも1種のアルコール
を混合して、第2の混合物(b)を形成する工程と、
(3)
第1の混合物(a)及び第2の混合物(b)を混合して、本発明の組成物を調製する工程と
を含む方法によって調製されることが好ましい。
【0204】
本発明の組成物の調製方法は、少なくとも1種の油を混合する任意選択の工程を更に含んでもよく、但し、油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であってもよい。
【0205】
[美容用途]
本発明の組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。したがって、本発明の化粧用組成物は、ケラチン物質への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明の化粧用組成物が、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0206】
本発明の化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってよい。
【0207】
[形態]
本発明の組成物は、任意の形態で存在しうる。
【0208】
例えば、本発明の組成物は、分散体の形態であってもよい。また、本発明の組成物は、ゲルの形態であってもよい。
【0209】
加えて、本発明の組成物は、粉末の形態であってもよい。
【0210】
本発明の組成物は、透明な又は半透明な外観、好ましくは透明な外観を有することができる。
【0211】
透明度は、(例えばHACH社製の2100Q Portable Turbidimeterを用いて)濁度を測定することにより測定してもよい。本発明の組成物の濁度は、400NTU未満(半透明)、好ましくは350NTU未満、より好ましくは300NTU未満(透明)でありうる。
【0212】
[pH]
本発明の組成物のpHは、3~9、好ましくは3.5~8、より好ましくは4~7であってもよい。
【0213】
本発明の組成物のpHは、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩以外に、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。本発明の組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することもできる。
【0214】
[皮膜]
本発明の組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。言い換えれば、本発明の組成物は、皮膜を形成することができる。
【0215】
したがって、本発明はまた、好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製するための方法であって、
基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明の組成物を適用する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法にも関しうる。
【0216】
本発明の皮膜の厚さの上限は、限定されない。したがって、例えば、本発明の皮膜の厚さは、300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であってもよい。
【0217】
本発明の皮膜を調製するための方法は、本発明の組成物を基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚に適用する工程と、組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明の方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜さえ容易に調製することが可能である。そのため、本発明の皮膜を調製する方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに、比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0218】
本発明の組成物をケラチン物質(例えば、皮膚)等の基材上に適用して乾燥したとき、本発明の組成物中の粒子は、そのサイズを縮小することができ、連続皮膜を形成することができる。皮膜は、小粒子で構成され、該小粒子のサイズは、ナノオーダー(例えば、約100nm~約500nm)である。皮膜中の粒子のサイズが小さくなるほど、皮膜は半透明でありうる。こうして形成された皮膜は、ぼかすことができ、すなわち、しみ、しわ及び小じわ等の皮膚上のムラを隠すことができる。
【0219】
本発明の皮膜は、非水溶性とすることができ、したがって、耐水性とすることができる。そのため、本発明の皮膜は、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨に起因して濡れている場合でも、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。そのため、本発明の皮膜が任意の美容効果をもたらすとき、美容効果は長時間持続することができる。
【0220】
理論に束縛されることを望むものではないが、(a-3)双性イオン化合物は、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸の錯体とイオン相互作用し、皮膜を水中でより強力に又は安定性にすると考えられている。
【0221】
また、本発明の組成物は、弾力性の皮膜を形成することができる。そのため、本発明の組成物は、弾性等の良好な質感を有する化粧皮膜を与えることができる。
【0222】
加えて、本発明の皮膜は、テカリを抑えることができ、したがって、マットな外観を与えることができる。
【0223】
これに応じて、本発明の組成物及び皮膜は、美容用途に有用である。
【0224】
本発明の皮膜中の粒子は、コアシェル粒子の形態であってもよく、そのコアは主に(a-1)キトサン等のカチオン性ポリマーを含みうるが、一方でシェルは主に(b-1)脂肪酸を含みうる。
【0225】
基材が皮膚等のケラチン物質でない場合、本発明の組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基材に適用することができる。非ケラチン基材の材料は限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組合せを使用することができる。いずれの場合でも、基材が可撓性又は弾性があることが好ましい。
【0226】
非ケラチン基材がシートの形態である場合、これは、基材シートに付着した皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明の皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基材シートの厚さは限定されないが、1μm~5mm、好ましくは10μm~1mm、より好ましくは50~500μmでもよい。
【0227】
本発明の皮膜が非ケラチン基材から取り外し可能であることがより好ましい。取り外しの方式は限定されない。例えば、本発明の皮膜は、非ケラチン基材から剥がしてもよい。
【0228】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明の組成物を適用する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される皮膜、好ましくは化粧皮膜、
並びに
(2)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、
(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、及び
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸
を含む皮膜、好ましくは化粧皮膜
にも関しうる。
【0229】
本発明の組成物のための、(a-1)カチオン性ポリマー、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩、及び(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、並びに(b-1)脂肪酸に関する上記の説明は、上記の皮膜(2)におけるものに適用することができる。
【0230】
(b-2)アルコールが揮発性でない場合、本発明の皮膜はまた、(b-2)少なくとも1種のアルコールも含みうる。
【0231】
本発明の皮膜は、生体適合性及び/又は生分解性であってもよい。
【0232】
本明細書における用語「生体適合性」は、皮膜が、皮膜と、皮膚を含む生体内の細胞との間で過度な相互作用を有さず、皮膜が、生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0233】
本明細書における用語「生分解性」は、皮膜が、例えば生体自体の代謝、又は生体内に存在しうる微生物の代謝により、生体内で分解されうる又は分割されうることを意味する。また、生分解性皮膜は、加水分解によって分解されうる。
【0234】
本発明の皮膜が生体適合性及び/又は生分解性である場合、例えば、皮膚への刺激が少ないか若しくは刺激がなく、及び/又は環境汚染がないものとすることができる。
【0235】
実際、本発明の皮膜は、生分解性ポリマーである、キトサンから選択される(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0236】
本発明の皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置に使用することができる。本発明の皮膜は、任意の形状又は形態にあることができる。
【0237】
[粒子]
本発明はまた、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、及び
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸
を少なくとも含む粒子であって、
(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸が、少なくとも1種の錯体を形成する、
粒子にも関しうる。
【0238】
上記の粒子はまた、(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物も含みうる。
【0239】
本発明の上記の粒子は、25℃の水中で、1.0μm超、好ましくは1.5μm超、より好ましくは2.0μm以上の粒径を有することができ、一方で、本発明の上記の粒子は、乾燥しているとき、500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは300nm未満の粒径を有することができる。
【0240】
上記の水中の又は乾燥しているときの粒径は、上述した通りに決定することができる。
【0241】
本発明の粒子は、乾燥条件下でナノオーダー(1.0μm未満)のサイズを有することができる。その一方で、本発明の粒子は、水中で膨張してミクロンオーダー(1.0μm超)のサイズを有することができる。
【0242】
本発明の粒子は、特に乾燥しているとき、コアシェル粒子の形態であってもよく、そのコアは主に(a-1)キトサン等のカチオン性ポリマーを含みうるが、一方でシェルは主に(b-1)脂肪酸を含みうる。
【0243】
本発明の組成物のための、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸、並びに(a-3)双性イオン化合物に関する上記の説明は、上記の粒子におけるものに適用することができる。
【0244】
[美容方法及び使用]
本発明は、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明の組成物をケラチン物質に適用する工程と、
組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む方法、
又は
皮膚等のケラチン物質上に化粧皮膜を調製するための本発明の組成物の使用
に関しうる。
【0245】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0246】
本発明の化粧皮膜が皮膚に適用された後に、その上にメイクアップ化粧用組成物を適用することもまた可能である。
【0247】
本発明はまた、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、及び
(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物
を含む組成物中での(b-1)少なくとも1種の脂肪酸の使用であって、
少なくとも、(a-1)カチオン性ポリマー及び(b-1)脂肪酸を含む少なくとも1種の錯体を調製するための使用にも関しうる。錯体は、(a-3)双性イオン化合物を含んでもよい。
【0248】
本発明はまた、
(a-1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、及び
(b-1)少なくとも1種の脂肪酸
を含む組成物中での(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物の使用であって、
前記組成物によって形成された皮膜を非水溶性にするための使用にも関しうる。皮膜は、少なくとも、(a-1)カチオン性ポリマー、(b-1)脂肪酸、及び(a-3)双性イオン化合物を含むことができる。皮膜はまた、(a-2)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩も含みうる。(b-2)アルコールが揮発性でない場合、皮膜はまた、(b-2)少なくとも1種のアルコールも含みうる。
【0249】
本発明の組成物のための、(a-1)カチオン性ポリマー、(a-2)一価の非ポリマー酸又はその塩、(a-3)少なくとも1種の双性イオン化合物、(b-1)脂肪酸及び(b-2)アルコールに関する上記の説明は、上記の使用におけるものに適用することができる。
【実施例0250】
本発明は、実施例によって、より詳細な方法で記載される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0251】
(実施例1及び比較例1~2)
[調製]
実施例1及び比較例1~2の組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合して調製した。表1中の成分の量についての数値はすべて、原料の「質量%」に基づく。
【0252】
調製の詳細は、以下の通りである。
【0253】
(実施例1)
第一に、5.40gの乳酸、3.50gのベタイン、及び1.08gの水を混合して混合物Aを調製した。
【0254】
第二に、80質量%水溶液の形態の0.32gのキトサン原料、0.50gの混合物A、及び49.18gの水を混合して第1の混合物を得た。
【0255】
第三に、別に、0.17gのオレイン酸及び9.83gのエタノールを混合して第2の混合物を得た。
【0256】
次いで、第1の混合物10g及び第2の混合物1gを混合し、実施例1の組成物を得た。実施例1の組成物のpHを、NaOHによって5に調整した。
【0257】
(比較例1)
第一に、80質量%水溶液の形態の0.57gのキトサン原料、0.49gの乳酸、及び87.74gの水を混合して混合物を得た。次に、撹拌しながら9.60gのズィー・メイス(Zea Mays)(トウモロコシ)胚芽油及び1.6gのオレイン酸を添加した。こうして、比較例1の組成物を調製した。比較例1の組成物のpHを、NaOHによって5に調整した。
【0258】
(比較例2)
第一に、5.40gの乳酸、3.50gのベタイン、及び1.08gの水を混合して混合物Aを調製した。
【0259】
第二に、80質量%水溶液の形態の0.32gのキトサン原料、0.50gの混合物A、及び49.18gの水を混合して第1の混合物を得た。
【0260】
第三に、別に、0.17gの水及び9.83gのエタノールを混合して第2の混合物を得た。
【0261】
次いで、第1の混合物10g及び第2の混合物1gを混合し、比較例2の組成物を得た。比較例2の組成物のpHを、NaOHによって5に調整した。
【0262】
【0263】
[評価]
図1及び
図2の各々に示すように、実施例1の組成物及び比較例2の組成物の写真を、光学顕微鏡Keyence BZ-X710を使用して得た。
【0264】
実施例1の組成物は粒子を含み、一方で、比較例2の組成物は一切の粒子を含まなかったことが判明した。
【0265】
実施例1の組成物中の粒子が、少なくとも、キトサン、ベタイン及びオレイン酸を含むことは明らかである。
【0266】
(ぼかし効果)
実施例1及び比較例1~2の組成物各3gを、ペトリ皿の底に置き、室温(25℃)で乾燥し、厚さが約50μmの自立皮膜を形成させた。
【0267】
上記の皮膜と新聞紙との間の距離が2cmになるように上記の皮膜を新聞紙の上に置き、後続して、皮膜を通した新聞紙の文字の視認性を、以下の基準に従って評価した。
良好:文字はぼやけていた
不良:文字はぼやけてなかった
非常に不良:文字は見えなかった
【0268】
結果を表1に示す。
【0269】
実施例1の組成物は、半透明の皮膜を与えた。一方、比較例1の組成物は、不透明な皮膜を与え、比較例2の組成物は、透明な皮膜を与えた。
【0270】
(質感)
実施例1及び比較例1~2の組成物各50mgを、パネリストの手に指で適用した。適用中の質感を、以下の基準に従って評価した。
良好:質感が、とろみ又はベタつきから、滑らかへと変化する
不良:質感は、とろみ又はベタつきがあり、滑らかへと変化しなかった
【0271】
結果を表1に示す。
【0272】
実施例1の組成物は、適用中に滑らかな質感を付与できたが、一方で、比較例1~2の組成物は、適用中に滑らかな質感を付与できなかった。
【0273】
(貯蔵弾性率)
実施例1及び比較例1~2の組成物各50mgを、透明なポリメチルメタクリレート(PMMA)プレート上に適用し、室温(25℃)で乾燥し、透明なプレート上に、厚さが約50μmの皮膜を形成させた。
【0274】
上記の皮膜のそれぞれのレオロジー特性を、室温(25℃)で、レオメーターDHR-2(TA Instruments社製、周波数0.01~100Hz、歪み0.1%)によって測定した。
【0275】
実施例1及び比較例2の、1Hzにおける貯蔵弾性率(G')を決定した。一方、比較例1では、1Hzにおける貯蔵弾性率(G')を決定することはできなかったが、その理由は、皮膜が過度に強力で、油により不均一であったからである。
【0276】
結果を表1に示す。
【0277】
実施例1の貯蔵弾性率が比較例2の貯蔵弾性率より高いため、実施例1の組成物によって得られた皮膜が、比較例2の組成物によって得られた皮膜よりも弾力性があることは明らかである。
【0278】
(外観)
実施例1及び比較例1~2の組成物各50mgを、透明なポリメチルメタクリレート(PMMA)プレート上に適用し、室温(25℃)で乾燥し、透明なプレート上に、厚さが約50μmの皮膜を形成させた。
【0279】
こうして得た皮膜の外観を、以下の基準に従って評価した。
良好:テカリがない
不良:テカリがある
【0280】
結果を表1に示す。
【0281】
実施例1の組成物は、テカリのない皮膜を生じることができたが、一方で、比較例1~2の組成物は、テカリのある皮膜を生じた。