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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014554
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】皮革様シート
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/00 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
D06N3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117212
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲見 吉祐
【テーマコード(参考)】
4F055
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA03
4F055BA12
4F055BA13
4F055DA02
4F055DA13
4F055EA04
4F055EA23
4F055FA20
4F055GA02
4F055GA13
4F055GA32
(57)【要約】
【課題】光透過性と意匠性(濃色効果、隠蔽性)を両立した皮革様シートを提供する。
【解決手段】実施形態に係る皮革様シートは、少なくとも1層の着色表皮層からなり、最表面に凹凸模様を有する皮革様シートであって、最表面の山頂点の算術平均曲率(Spc)が100以上、かつ最表面における界面の展開面積比(Sdr)が0.15以上であり、前記皮革様シートの光透過率が0.25~15%である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の着色表皮層からなり、最表面に凹凸模様を有する皮革様シートであって、最表面の山頂点の算術平均曲率(Spc)が100以上、かつ最表面における界面の展開面積比(Sdr)が0.15以上であり、前記皮革様シートの光透過率が0.25~15%である皮革様シート。
【請求項2】
表色系における前記皮革様シートのL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、前記着色表皮層は無機顔料を0.5~1.3質量%含み、前記皮革様シートの光透過率が0.25~2.5%である、請求項1に記載の皮革様シート。
【請求項3】
表色系における前記皮革様シートのL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、前記着色表皮層は有機顔料のみを5~7.5質量%含み、前記皮革様シートの光透過率が0.25~5%である、請求項1に記載の皮革様シート。
【請求項4】
表色系における前記皮革様シートのL値が35以上であり、前記着色表皮層は無機顔料及び/又は有機顔料を5~15質量%含み、前記皮革様シートの光透過率が2.5~15%である、請求項1に記載の皮革様シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮革様シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品の差別化や消費者の嗜好の多様化に対応するために、物品の表面を加飾するための素材として、新規な意匠を備える素材が求められている。このような素材として、着色されたシートの背面にバックライト等の照明装置を配置して発光させて光を透過させることにより、シートの表面に文字や模様等を浮かび上がらせる技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ISO 5-2(2009年)に準拠して測定した透過濃度が0.5~4.2の範囲にある表皮材が開示されている。そして、これにより、光透過性と、表皮材による基材の隠蔽性とが両立し、意匠の自由度が高い表皮材を提供されると開示されている。
【0004】
特許文献2には、生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、380~780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10~11.90%とした合成皮革が開示されている。そして、これにより、優れた質感や風合いを有するとともに、熟練を要さず量産可能な合成皮革を提供されると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-147741号公報
【特許文献2】特開2013-177714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の表皮材では、表皮層中に含まれる着色剤の含有量や表皮層の厚さを調整することで、所望の光透過性を得ている。そのため、光透過性と意匠性の両立(例えば、光透過性を低下させることなく濃色の意匠を表現する)においては、まだ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、光透過性と意匠性(濃色効果、隠蔽性)を両立した皮革様シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1]少なくとも1層の着色表皮層からなり、最表面に凹凸模様を有する皮革様シートであって、最表面の山頂点の算術平均曲率(Spc)が100以上、かつ最表面における界面の展開面積比(Sdr)が0.15以上であり、前記皮革様シートの光透過率が0.25~15%である皮革様シート。
[2]L表色系における前記皮革様シートのL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、前記着色表皮層は無機顔料を0.5~1.3質量%含み、前記皮革様シートの光透過率が0.25~2.5%である、[1]に記載の皮革様シート。
[3]L表色系における前記皮革様シートのL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、前記着色表皮層は有機顔料のみを5~7.5質量%含み、前記皮革様シートの光透過率が0.25~5%である、[1]に記載の皮革様シート。
[4]L表色系における前記皮革様シートのL値が35以上であり、前記着色表皮層は無機顔料及び/又は有機顔料を5~15質量%含み、前記皮革様シートの光透過率が2.5~15%である、[1]に記載の皮革様シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、光透過性と意匠性(濃色効果、隠蔽性)を両立した皮革様シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る皮革様シートの断面模式図である。
図2】他の実施形態に係る皮革様シートの断面模式図である。
図3】他の実施形態に係る皮革様シートの断面模式図である。
図4】実施例27に用いた織物の完全組織である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る皮革様シートは、少なくとも1層の着色表皮層からなり、最表面に凹凸模様を有する。皮革様シートの「最表面」とは、皮革様シートの表裏のうち、使用時に目に見える方の面(意匠面)の最も表側に位置する面をいう。
【0012】
本実施形態に係る皮革様シートは、最表面の山頂点の算術平均曲率(Spc)が100以上であり、且つ、最表面における界面の展開面積比(Sdr)が0.15以上である。上記を満たすことにより、皮革様シートの表面で光が反射されにくく吸収されやすくなるため、濃色効果が得られ、意匠性が良好なものとなる。Spcは好ましくは110以上であり、より好ましくは120以上である。Sdrは好ましくは0.20以上であり、より好ましくは0.25以上である。
【0013】
山頂点の算術平均曲率(Spc)は、定義領域中における山頂点の主曲率の算術平均を表したものである。数値が小さいほど他の物体と接触する点が丸みを帯びていることを示し、数値が大きいほど他の物体と接触する点が尖っていることを示す。Spcが100以上であることにより、凹凸模様の凸部が尖り、光を反射しにくく、吸収されやすい状態となる。そのため、濃色効果を得やすい。Spcの求め方は後述する。なお、本明細書において「定義領域」とは、試験片の面積(試験片を観察している画像領域内で規定した面積)であって、タテ2000μm×ヨコ2000μmである。
【0014】
最表面における界面の展開面積比(Sdr)は、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表す。完全に平坦な面のSdrは「0」である。Sdrが「0.15」とは、表面積が15%増えている状態である。定義領域当たりの展開面積(表面積)が増えることで、光を反射しにくく吸収されやすい状態となる。そのため、濃色効果を得やすい。Sdrの求め方は後述する。なお、本明細書において「定義領域」とは、試験片の面積(試験片を観察している画像領域内で規定した面積)であって、タテ2000μm×ヨコ2000μmである。
【0015】
本実施形態に係る皮革様シートは、光透過率が0.25~15%である。光透過率が0.25%以上であることにより、皮革様シートの裏面側から光を照射した際に、皮革様シートの表面側から光を視認することができる。光透過率が15%以下であることにより、皮革様シートの隠蔽性を高めることができる。光透過率が上記数値範囲内であれば、皮革様シートは光透過性と隠蔽性を有する。例えば、基材を積層した態様において、皮革様シートの表面側から基材が透けることなく、良好な意匠性を得やすい。光透過率の求め方は後述する。
【0016】
光透過率は、皮革様シートの色に応じて、隠蔽性を考慮して、上記範囲内で適宜調整すればよい。
例えば、L表色系における皮革様シート状物のL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、着色表皮層に無機顔料を含む場合、光透過率は0.25~2.5%であることが好ましい。
表色系における皮革様シート状物のL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、着色表皮層に有機顔料のみを含む場合、光透過率は0.25~5%であることが好ましい。
表色系における皮革様シート状物のL値が35以上であり、着色表皮層に無機顔料及び/又は有機顔料を含む場合、光透過率は、2.5~15%であることが好ましい。
各々下限値以上であることにより、光透過性を向上することができる。上限値以下であることにより、意匠性、特には隠蔽性を向上することができる。
【0017】
本実施形態に係る皮革様シートは、最表面に凹凸模様を有し、最表面の山頂点の算術平均曲率(Spc)が100以上であり、且つ、最表面における界面の展開面積比(Sdr)が0.15以上であり、光透過率が0.25~15%であるものであれば、層構造は特に限定されない。すなわち、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、更なる樹脂層や繊維質基材を設けてもよい。
【0018】
図1は、一実施形態に係る皮革様シート1を模式的に示した断面図である。この皮革様シート1は、着色表皮層11からなる。着色表皮層11の表面には、凹凸模様2が設けられている。
【0019】
図2は、他の実施形態に係る皮革様シート10を模式的に示した断面図である。この皮革様シート10では、繊維質基材12の一方の面に、接着層13と、着色表皮層11と、保護層14がこの順に積層されている。保護層14の表面には、凹凸模様2が設けられている。
【0020】
図3は、他の実施形態に係る皮革様シート100を模式的に示した断面図である。この皮革様シート100は、接着層13の上にアンカーコート層15と断熱層16が設けられている点で図2の皮革様シート10とは異なる。したがって、図3の例では、繊維質基材12の一方の面に、接着層13と、アンカーコート層15と、断熱層16と、着色表皮層11と、保護層14がこの順に積層されている。保護層14の表面には、凹凸模様2が設けられている。
【0021】
図1~3の例では、皮革様シートの最表面には、凹凸模様2が設けられている。ここで、皮革様シートの「最表面」とは、皮革様シートの表裏のうち、使用時に目に見える方の面(意匠面)の最も表側に位置する面をいい、上記着色表皮層又は保護層の表面である。
【0022】
本実施形態において用いられる着色表皮層は、樹脂を含んでなることが好ましい。着色表皮層を構成する樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等、従来公知の樹脂を挙げることができ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、汎用性の観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0023】
ポリウレタン樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。なかでも、耐久性の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましく、変色性が少なく光透過性への影響が少ないという観点から、無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、難黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0024】
上記樹脂には、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、顔料、染料、架橋剤、触媒などの各種添加剤が添加されてもよく、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、皮革様シートの意匠性(濃色効果、隠蔽性)の観点から、顔料、染料を添加することが好ましい。汎用性の観点から、顔料が好ましい。
【0025】
顔料としては、特に限定されるものでなく、例えば、無機顔料、有機顔料を例示することができ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、光を反射しにくく吸収されにくいという観点から、有機顔料を用いることが好ましい。
【0026】
着色表皮層における顔料、染料の含有量(固形分比率)は、皮革様シートの色や使用する顔料、染料に応じて、光透過性や隠蔽性を考慮して、適宜調整すればよい。
例えば、L表色系における皮革様シート状物のL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、着色表皮層に無機顔料を含む場合、着色表皮層における無機顔料の含有量は0.5~1.3質量%であることが好ましい。
表色系における皮革様シート状物のL値が30以下、a値及びb値が共に-1.0以上1.0以下であり、着色表皮層に有機顔料のみを含む場合、着色表皮層における有機顔料の含有量は5~7.5質量%であることが好ましい。
表色系における皮革様シート状物のL値が35以上であり、着色表皮層に無機顔料及び/又は有機顔料を含む場合、着色表皮層における無機顔料及び/又は有機顔料の含有量は5~15質量%であることが好ましい。
各々下限値以上であることにより、意匠性、特には隠蔽性を向上することができる。上限値以下であることにより、光透過性を向上することができる。
【0027】
本明細書において、固形分とは、有機溶剤や水などの揮発する物質以外の成分をいい、蒸発残分ないし不揮発分とも称される。そのため、可塑剤のように通常の乾燥温度で蒸発しない液体も固形分に含まれる。
【0028】
着色表皮層の厚さは、特に限定されず、30~45μmであることが好ましく、より好ましくは35~40μmである。下限値以上であることにより、意匠性、特には隠蔽性を向上することができる。上限値以下であることにより、光透過性を向上することができる。
【0029】
本実施形態の皮革様シートは、繊維質基材を有してもよい。繊維質基材としては、特に限定されるものでなく、例えば、編物、織物、不織布などの繊維布帛を挙げることができる。
【0030】
繊維布帛において繊維の種類は、特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等、従来公知の繊維を挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。なかでも強度や加工性の点から、繊維としては合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。
【0031】
繊維の形状も特に限定されず、長繊維、短繊維のいずれであってもよい。繊維質基材を構成する糸条の形態は、紡績糸などの短繊維糸でもよく、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸などの長繊維糸でもよく、長繊維と短繊維を組み合わせた長短複合紡績糸でもよい。糸条としては、予め捲縮加工を施した短繊維を用いてもよく、糸条の状態で仮撚り加工や流体撹乱処理などの加工を施してもよい。
【0032】
繊維質基材は、染料又は顔料により着色されたものであってもよい。光透過性の観点から、繊維質基材は着色されていないことが好ましい。
【0033】
繊維質基材の目付は、光透過性と皮革様シートの耐久性を考慮して、適宜設定すればよい。繊維質基材の目付は、特に限定されず、例えば、100~400g/mであることが好ましい。
【0034】
本実施形態の皮革様シートが、繊維質基材を有する場合、繊維質基材と着色表皮層との間に接着層を介してもよいし、繊維質基材に着色表皮材を直接積層してもよい。繊維質基材と着色表皮層の間に接着層を介在させることにより、繊維質基材と着色表皮層の接着性を向上させることができる。接着層は、気泡を持たない非発泡の樹脂層でもよいし、気泡を持つ発泡樹脂層でもよい。
【0035】
接着層を構成する樹脂としては、着色表皮層と同様の樹脂を用いることができる。なかでも、耐久性の観点から、接着層用のポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0036】
接着層は、着色表皮層と同様の染料又は顔料により着色されたものであってもよい。光透過性の観点から、接着層は着色されていないことが好ましい。
【0037】
接着層を形成するために用いる接着層用樹脂組成液には、必要に応じて、ポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、架橋剤、難燃剤、触媒などが挙げられる。これは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
接着層の厚さは、特に限定されず、例えば100~200μmであることが好ましい。下限値以上であることにより、光透過性を向上させることができる。上限値以下であることにより、隠蔽性及び風合いを向上することができる。
【0039】
本実施形態において、接着層を設ける際、接着層と着色表皮層との間にアンカーコート層及び断熱層を介してもよい。接着層と着色表皮層との間にアンカーコート層を介在させることにより、得られる皮革様シートの耐摩耗性を向上させることができる。断熱層を介在させることにより、得られる皮革様シートの断熱性を向上させることができる。
【0040】
アンカーコート層を構成する樹脂としては、着色表皮層と同様の樹脂を用いることができる。なかでも、耐摩耗性の観点から、アンカーコート層用のポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0041】
アンカーコート層は、着色表皮層と同様の染料又は顔料により着色されたものであってもよい。光透過性の観点から、アンカーコート層は着色されていないことが好ましい。
【0042】
アンカーコート層を形成するために用いるアンカーコート層用樹脂組成液には、必要に応じて、ポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、架橋剤、難燃剤、消泡剤、触媒、粘度調整剤などが挙げられる。これは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
アンカーコート層の厚さは、特に限定されず、例えば17~27μmであることが好ましい。下限値以上であることにより、耐摩耗性を向上させることができる。上限値以下であることにより、光透過性を向上することができる。
【0044】
断熱層を構成する樹脂としては、着色表皮層と同様の樹脂を用いることができる。なかでも、耐久性の観点から、断熱層用のポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0045】
断熱層は、着色表皮層と同様の染料又は顔料により着色されたものであってもよい。光透過性の観点から、断熱層は着色されていないことが好ましい。
【0046】
断熱層を形成するために用いる断熱層用樹脂組成液には、必要に応じて、ポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、架橋剤、難燃剤、触媒、発泡剤、消泡剤、中空微粒子などが挙げられる。これは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
断熱層の厚さは、特に限定されず、例えば70~170μmであることが好ましい。下限値以上であることにより、耐久性を向上させることができる。上限値以下であることにより、粗硬になり風合いが低下することを防ぐことができる。
【0048】
本実施形態において、着色表皮層上に、保護層を設けてもよい。着色表皮層上に保護層を設けることにより、得られる皮革様シートの耐摩耗性を向上させることができる。
【0049】
保護層を構成する樹脂としては、着色表皮層と同様の樹脂を用いることができる。なかでも、耐摩耗性の観点から、保護層用のポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましく、より好ましくは無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂である。
【0050】
保護層は、着色表皮層と同様の染料又は顔料により着色されたものであってもよい。光透過性の観点から、保護層は着色されていないことが好ましい。
【0051】
保護層を形成するために用いる保護層用樹脂組成液には、必要に応じて、ポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、架橋剤、シリコーン樹脂、粘度調整剤、消泡剤、防汚剤、消臭剤、抗菌剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。これは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
保護層の厚さは、特に限定されず、例えば2.5~15μmであることが好ましく、より好ましくは5~7.5μmである。下限値以上であることにより、耐摩耗性を向上させることができる。上限値以下であることにより、光透過性を向上することができる。柔軟な風合いが得られる。
【0053】
次に、本実施形態に係る皮革様シートの製造方法について説明する。該製造方法は、特に限定されない。皮革様シートが着色表皮層のみからなる場合は、押出法、塗布法などの従来公知の方法を採用することができる。例えば、以下のような工程を順に行うことにより実施形態の皮革様シートが製造できる。すなわち、該製造方法は、
(1)着色表皮層用樹脂組成液を離型性基材上に塗布して、着色表皮層を形成する工程、
(2)離型性基材を剥離する工程、
を含むものである。
【0054】
上記(1)の工程では、着色表皮層用樹脂組成液を離型性基材上に塗布する。離型性基材上に着色表皮層用樹脂組成液を塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、ナイフコーター、コンマコーター、ロールコーター、ダイコーターなどを用いた方法を挙げることができる。なかでも均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、ナイフコーター、又は、コンマコーターによる塗布が好ましい。
【0055】
離型性基材は特に限定されず、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよい。例えば、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂などからなるオレフィンシート又はフィルム、フッ素樹脂シート又はフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを挙げることができる。離型性基材は凹凸模様を有していることが好ましい。
【0056】
離型性基材の凹凸模様は、山頂点の算術平均曲率(Spc)が140以上であってもよく、150以上であってもよく、界面の展開面積比(Sdr)が0.3以上であってもよく、0.4以上であってもよい。
【0057】
着色表皮層用樹脂組成液を離型性基材に塗布したのち、必要により熱処理を行う。熱処理は、ゲル化を促進するために行われる。
【0058】
上記(2)の工程では、着色表皮層から離型性基材を剥離する。離型性基材を剥離することで、着色表皮層のみからなる皮革様シートが得られる。
【0059】
皮革様シートが着色表皮層に加え、更なる樹脂層や繊維質基材から構成される場合は、従来公知の合成皮革と同様の製造方法を採用することができる。具体的には、カレンダー工法やキャスティング工法が挙げられる。例えば、以下のような工程を順に行うことにより実施形態の皮革様シートが製造できる。すなわち、該製造方法は、
(A)着色表皮層用樹脂組成液を離型性基材上に塗布して、着色表皮層を形成する工程、
(B)着色表皮層と繊維質基材とを貼り合せる工程、及び、
(C)離型性基材を剥離する工程、
を含むものである。
【0060】
上記(A)の工程は、上述の着色表皮層のみからなる皮革様シートの製造方法に記載した(1)の工程である。すなわち上述のように、離型性基材上に着色表皮層用樹脂組成液を塗布し、必要により熱処理を行う。
【0061】
上記(B)の工程では、着色表皮層と繊維質基材とを積層する。積層方法としては、例えば、転写法、熱融着、熱圧着、接着剤を用いた貼着など、従来公知の方法が挙げられる。着色表皮層は、接着層を介して設けられてもよいし、繊維質基材上に直接積層してもよい。接着層用樹脂組成液を塗布する方法としては、着色表皮層用樹脂組成液を塗布する方法と同様の方法を採用することができる。
【0062】
上記(C)の工程では、着色表皮層から離型性基材を剥離する。離型性基材を剥離することで、着色表皮層と繊維質基材との積層体が得られる。
【0063】
なお、断熱層を形成する場合は、上記(A)の工程において、離型性基材上に着色表皮層を形成した後、接着層用樹脂組成液を塗布する前に、着色表皮層上に断熱層用樹脂組成液を塗布して、着色表皮層上に断熱層を形成すればよい。断熱層及びアンカーコート層を形成する場合は、上述のように着色表皮層上に断熱層を形成した後、更に断熱層上にアンカーコート層用樹脂組成液を塗布して、アンカーコート層を形成すればよい。その後、接着層用樹脂組成液を塗布してから繊維質基材と貼り合せてもよく、あるいはまた、接着層用樹脂組成液を塗布せずにアンカーコート層と繊維質基材とを貼り合せてもよい。
【0064】
また、保護層を形成する場合、離型性基材を剥離した後、積層体の着色表皮材の表面に保護層用樹脂組成液を塗布して形成すればよい。
【0065】
断熱層用樹脂組成液、アンカーコート層用樹脂組成液及び保護層用樹脂組成液を塗布する方法、及び、塗布後の熱処理については、着色表皮層の形成と同様の方法を用いることができる。また、保護層を積層する場合は、塗布する方法として、スプレーコーター、グラビアコーター、グラビアダイレクト印刷機、グラビアオフセット印刷機、スクリーン印刷機などの装置を用いて塗布する方法を用いることもできる。
【0066】
また、必要により、着色表皮層(保護層が形成されている場合は保護層)に、シボ模様などの凹凸模様を形成する。このように離型性基材の剥離後に凹凸模様を形成する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、レーザー加工などを用いた方法を挙げることができる。
【0067】
かくして、一実施形態に係る皮革様シートが得られる。ただし、本実施形態の皮革様シートを製造するための方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0068】
本実施形態に係る皮革様シートの用途は、特に限定されない。用途の具体例としては、座席用シート、天井材、ダッシュボード、ドア内張材又はハンドルなどの自動車内装材をはじめとする各種車両のための内装材用途、椅子、家具をはじめとするインテリア資材用途、靴、鞄、衣類などのファッション用途が挙げられる。
【0069】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【実施例0070】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
各評価項目は、以下の方法に従った。
【0072】
[最表面の山頂点の算術平均曲率(Spc)及び最表面における界面の展開面積比(Sdr)]
幅100mm、長さ100mmの大きさで試験片を採取した。レーザー顕微鏡(VK-X3000、株式会社キーエンス製)を用いて、試験片の表面を撮影した(測定倍率:5倍)。撮影した画像に対して、解析アプリ(VK-X3000、マルチファイル解析アプリケーション、株式会社キーエンス製)を用いて、水平の状態を解析するために面形状補正(補正の強さ:5)でうねり除去を行った後、ノイズを除去するために平滑化(サイズ:5×5、種類:メディアン)を行った。得られた画像について、同解析アプリの表面粗さ計測にて、測定領域を全領域に指定し、Spc値とSdr値を測定した。
なお、離型紙のSpc及びSdrは、平滑化の条件を(サイズ:7×7、種類:単純平均)に変更した以外は皮革様シートと同様にして測定した。
【0073】
[濃色効果]
皮革様シートを、最表面(保護層又は着色表皮層)側から目視で観察し、以下の評価基準に従って官能評価した。なお、繊維質基材が存在しない皮革様シートは、実施例1に用いた繊維質基材の上に当該皮革様シートを乗せ置いた状態で、観察した。
(評価基準)
○:表面に微凹凸が形成されており、色に深みがあり濃色効果がある。
×:表面に微凹凸が形成されておらず、色に深みが感じられず濃色効果がない。
【0074】
[皮革様シートの光透過率]
幅100mm、長さ100mmの大きさで試験片を採取した。暗所(太陽光や人工光源の存在しない部屋)に投光器(LEDライト充電式ポータブル投光器、MEIKEE製、光源:LED、光の色:昼白色、光量:100%)を設置した。輝度計(LS-150、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、投光器から1m離れた地点の輝度(透過前の輝度)を測定した。次いで、投光器に試験片の裏面を密着させるように試験片を被せた状態で、先と同様の条件で輝度(透過後の輝度)を測定した。光透過率を下記式より算出した。
光透過率(%)=透過後の輝度(cd/m)÷透過前の輝度(cd/m)×100
【0075】
[光透過性及び隠蔽性]
上記の[皮革様シートの光透過率]に基づき、皮革様シートの光透過率を測定し、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:光透過性及び隠蔽性あり(光透過率が0.25~15%)
×:光透過性及び/又は隠蔽性なし(光透過率が0.25%未満又は15%超え)
【0076】
[隠蔽性(官能評価)]
皮革様シートを、最表面(保護層又は着色表皮層)側から目視で観察し、以下の評価基準に従って官能評価した。なお、繊維質基材が存在しない皮革様シートは、実施例1に用いた繊維質基材の上に当該皮革様シートを乗せ置いた状態で、観察した。△以上で合格である。
(評価基準)
○:繊維質基材が透けない(繊維質基材が見えない)
△:繊維質基材がやや透ける(繊維質基材がやや見える)
×:繊維質基材が明らかに透ける(繊維質基材が明らかに見える)
【0077】
[L値、a値、b値]
分光測色計(例えば、Color I 5DV、X-Rite社製、光源:C光源)を用いて、皮革様シートについて、任意の4か所を測色し、これらの平均値を算出した。この平均値を、皮革様シートのL値、a値、b値とした。平均値は、小数点第3位を四捨五入し、小数点第2位で表記した。
【0078】
[実施例1]
<繊維質基材>
繊維質基材として、2枚筬のトリコット編機(HKS3M:日本マイヤー株式会社製)を用いて、フロント筬にフロント糸として56dtex/24fポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで導糸してデンビ編組織(1-2/1-0)を、バック筬にバック糸として56dtex/72fポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで導糸してコード編組織(1-0/3-4)をそれぞれ形成して、トリコット編地(ポリエステル繊維、目付171g/m、厚さ0.6mm、密度70コース/25.4mm、40ウエル/25.4mm、無着色)を編成した。
【0079】
<処方1-1:着色表皮層用樹脂組成液>
・主剤:無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂:100質量部
(大日精化工業株式会社製、レザミン NE-8850、固形分30質量%)
・顔料:カーボンブラック顔料:1.67質量部
(DIC株式会社製、DILAC BLACK L-8283S、無機顔料、固形分25質量%(顔料15質量%、分散剤10質量%))
・DMF:50質量部
調製法:粘度を3,000mPa・s(BII形粘度計(BHII型)、東機産業株式会社製、ローター:No.4、12rpm、23℃)になるように、DMFで調整した。
【0080】
<処方2:接着層用樹脂組成液>
(1)製造例1:ポリイソシアネート溶液
・ポリオール成分:ポリカーボネート系ポリオール:20質量部
(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL UH-200、固形分100質量%)
・ジイソシアネート成分:XDI系:9.02質量部
(三井化学株式会社製、タケネート500、固形分100質量%)
調製法:上記を混合し、25~80℃まで1℃/分の昇温速度で昇温した。80℃で60分間攪拌し、ウレタン反応を完了させ、ポリイソシアネート溶液を得た。
(2)製造例2:ポリオール溶液
・主剤:ポリカーボネート系ポリオール:30質量部
(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL UH-100、固形分100質量部)
・触媒:アミン系触媒:2質量部
(東ソー株式会社製、TEDA-L33、固形分100質量%)
・難燃剤:リン系難燃剤:20質量部
(クラリアントジャパン株式会社製、Pekoflam STC powder、固形分100質量%)
・DMF:90質量部
調製法:粘度を10,000mPa・s(BII形粘度計(BHII型)、ローター:No.4、12rpm、23℃)になるように、DMFで調整した。
(3)製造例1のポリイソシアネート溶液を29.02質量部、製造例2のポリオール溶液を152質量部、を秤量し、攪拌混合して、接着層用樹脂組成液を得た。接着層用樹脂組成液の粘度は10,000mPa・s(BII形粘度計(BHII型)、東機産業株式会社製、ローター:No.4、12rpm、23℃)であった。
【0081】
<処方3:保護層用樹脂組成液>
・主剤:水系ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂:90質量部
(DIC株式会社製、ハイドラン WLS-250、固形分35質量%)
・艶消し剤:シリカ入水系ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂:10質量部
(ダウ・ケミカル日本株式会社製、HYDRHOLAC UD-2、固形分26.5質量%)
・架橋剤:イソシアネート系架橋剤(HDI系):1質量部
(ランクセス株式会社製、AQUADERM XL 50、固形分50質量%)
・レベリング剤:シリコーン系レベリング剤:1質量部
(ランクセス株式会社製、AAQUADERM Fluid H、固形分100質量%)
・水:20質量部
調製法:上記薬剤を混合、攪拌し、保護層用樹脂組成物を調製した。得られた保護層用樹脂組成物の粘度は200mPa・s(BII形粘度計(BHII型)、東機産業株式会社製、ローター:No.1、12rpm、23℃)であった。
【0082】
<皮革様シートの作製>
上述の処方1-1に従い調製した着色表皮層用樹脂組成液を、凹凸を有する離型紙A(離型紙のSpc:230、Sdr:0.49)に、アプリケータにてドライ塗布量が35g/mになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて80℃で2分間熱処理して、着色表皮層を形成した。
【0083】
次いで、上述の処方2に従い調製した接着層用樹脂組成液を、離型紙上に形成された着色表皮層表面に、アプリケータにてドライ塗布量が200g/mになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で1分間熱処理して、接着層を形成した。
【0084】
その後、接着層上に、上述の繊維質基材を重ねて、プレス機にて100℃、394.2kPa条件下で、1分間加圧して、繊維質基材との貼り合わせを実施した。その後、離型紙を剥離し、着色表皮層、接着層、及び繊維質基材からなる積層体を得た。
【0085】
次いで、上述の処方3に従い調製した保護層用樹脂組成液を、離型紙を剥離した後の着色表皮層表面に、リバースコーターにてドライ塗布量が7.5g/mになるように塗布し、乾燥機にて80℃で2分間熱処理して、保護層を形成し、実施例1の皮革様シートを得た。保護層の厚さは5μm、着色表皮層の厚さは35μm、接着層の厚さは200μmであった。
【0086】
各樹脂層の厚さは、皮革様シートの垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH-8000)で観察し、任意の10か所についての厚さを測定し、これらの平均値を算出することにより得られる値である。
【0087】
[実施例2~5、比較例1~4]
着色表皮層用樹脂組成物の処方及び離型紙を表1,2,5のように変更した以外は全て実施例1と同様にして皮革様シートを得た。
【0088】
表2~4中の各顔料の詳細は以下のとおりである。
・無機顔料2(DIC株式会社製、DILAC WHITE L-1781、無機顔料、固形分43質量%(顔料40質量%、分散剤3質量%))
・無機顔料3(DIC株式会社製、DILAC BROWN L-1777S、無機顔料、固形分37.5質量%(顔料30質量%、分散剤7.5質量%))
・有機顔料1(DIC株式会社製、DILAC LEMON L-6644SK、有機顔料、固形分25質量%(顔料15質量%、分散剤10質量%))
・有機顔料2(DIC株式会社製、DILAC YELLOW L-6677S、有機顔料、固形分22.5質量%(顔料15質量%、分散剤7.5質量%))
・有機顔料3(DIC株式会社製、DILAC RED L-1759S-1、有機顔料、固形分17.5質量%(顔料7.5質量%、分散剤10質量%))
・有機顔料4(DIC株式会社製、DILAC BLUE L-5858S、有機顔料、固形分20質量%(顔料10質量%、分散剤10質量%))
【0089】
[実施例6]
保護層を形成しなかったこと以外は全て実施例1と同様にして、皮革様シートを得た。
【0090】
[実施例7]
実施例1において、着色表皮層を形成した後、下記処方4に従い調製した断熱層用樹脂組成液を、離型紙上に形成された着色表皮層表面に、アプリケータにてドライ塗布量が90g/mとなるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で3分間処理して、層の厚さが120μmの断熱層を形成した。次いで、下記処方5に従い調製したアンカーコート層用樹脂組成物を、該断熱層表面に、アプリケータにてドライ塗布量が65g/mとなるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で3分間、引き続き、130℃で3分間処理して、層の厚さが22μmのアンカーコート層を形成した。その他は、すべて実施例1と同様にして皮革様シートを得た。
【0091】
<処方4:断熱層用樹脂組成物>
・主剤:難黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂:100質量部
(DIC株式会社製、ハイドラン WLS-250、固形分35質量%)
・中空微粒子:既発泡マイクロカプセル:25質量部
(松本油脂製薬株式会社製、マツモトマイクロスフェアFN-100S(熱処理により既発泡状態にして使用)、平均粒径50μm、固形分100質量%、粉末状、外殻:アクリロニトリル系ポリマー、内包物:イソペンタン、既発泡品)
・架橋剤:イソシアネート系架橋剤(HDI系):1質量部
(ランクセス株式会社製、AQUADERM XL 50、固形分50質量%)
・レベリング剤:シリコーン系レベリング剤:1質量部
(ランクセス株式会社製、AQUADERM Fluid H、固形分100質量%)
調製法:上記薬剤を混合、攪拌し、発泡層用樹脂組成物を調製した。得られた発泡層用樹脂組成物の粘度は5,000mPa・s(BII形粘度計(BHII型)、東機産業株式会社製、ローター:No.4、12rpm、23℃)であった。
【0092】
<処方5:アンカーコート層用樹脂組成物>
・主剤:難黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂:100質量部
(DIC株式会社製、ハイドラン WLS-250、固形分35質量%)
・架橋剤:イソシアネート系架橋剤(HDI系):1質量部
(ランクセス株式会社製、AQUADERM XL 50、固形分50質量%)
・レベリング剤:シリコーン系レベリング剤:1質量部
(ランクセス株式会社製、AQUADERM Fluid H、固形分100質量%)
調製法:上記薬剤を混合、攪拌し、アンカーコート層用樹脂組成物を調製した。得られたアンカーコート層用樹脂組成物の粘度は5,000mPa・s(BII形粘度計(BHII型)、東機産業株式会社製、ローター:No.4、12rpm、23℃)であった。
【0093】
[実施例8~13、比較例5]
各樹脂層用樹脂組成物の処方及び離型紙を表1,3,6のように変更した以外は全て実施例1と同様にして皮革様シートを得た。
【0094】
[実施例14~18]
着色表皮層用樹脂組成物の処方1-11を用いて、ドライ塗布量を表6記載の量になるようにシート状に塗布した以外は全て実施例1と同様にして皮革様シートを得た。
【0095】
[実施例19~26、比較例6~9]
各樹脂層用樹脂組成物の処方及び離型紙を表1,2,4,7のように変更した以外は全て実施例1と同様にして皮革様シートを得た。
【0096】
[実施例27]
繊維質基材として、経糸として167dtex/48fポリエスエルマルチフィラメント糸、緯糸として167dtex/48fポリエステルマルチフィラメント糸を用いて、図4に示す織組織の織物(ポリエステル繊維、目付230g/m、厚さ0.6mm、経糸密度130本/25.4mm、緯糸密度75本/25.4mm、無着色)を準備した以外は全て実施例1と同様にして、皮革様シートを得た。
【0097】
[実施例28]
実施例1の着色樹脂層のみからなる、実施例28の皮革様シートを得た。すなわち、上述の処方1-1に従い調製した着色表皮層用樹脂組成液を、凹凸を有する離型紙A(離型紙のSpc:230、Sdr:0.49)に、アプリケータにてドライ塗布量が35g/mになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて80℃で2分間熱処理して、着色表皮層を形成し、皮革様シートを得た。
【0098】
[比較例10]
離型紙Aの代わりに、離型紙Dを用いたこと以外は全て実施例28と同様にして、着色樹脂層のみからなる、比較例10の皮革様シートを得た。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
【表8】
【0107】
実施例1~28及び比較例1~10についての評価結果は表5~8に示す通りである。
比較例1,2,5,10では、皮革様シートのSpcが100未満であり、且つSdrが0.15未満であるため、光透過性及び隠蔽性は優れていたものの、濃色効果に劣っていた。比較例3では、皮革様シートのSpcが100未満であり、且つSdrが0.15未満であり、さらに光透過性が0.1%であるため、隠蔽性は優れていたものの、光透過性及び濃色効果に劣っていた。比較例4では、光透過性が0.1%であるため、隠蔽性及び濃色効果は優れていたものの、光透過性に劣っていた。比較例6~8では、皮革様シートのSpcが100未満であり、且つSdrが0.15未満であり、さらに光透過性が8.3%~13.5%であるため、光透過性は優れていたものの、隠蔽性及び濃色効果に劣っていた。比較例9では、光透過性が19.9%であるため、光透過性及び濃色効果は優れていたものの、隠蔽性に劣っていた。これに対し、実施例1~28では、光透過性と意匠性(濃色効果、隠蔽性)に優れていた。実施例1~5では、実施例6(保護層なし)と比較して、耐摩耗性に優れていた。実施例7は、実施例1~5(アンカーコート層及び断熱層なし)と比較して、耐摩耗性などの耐久性、断熱性に優れていた。
【符号の説明】
【0108】
1,10,100 皮革様シート
11 着色表皮層
12 繊維質基材
13 接着層
14 保護層
15 アンカーコート層
16 断熱層
2 凹凸模様
図1
図2
図3
図4