(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014564
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】接触子及び半導体検査システム
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20250123BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20250123BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20250123BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 B
G01R31/26 J
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117232
(22)【出願日】2023-07-19
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】517384110
【氏名又は名称】ユナイテッド・プレシジョン・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】家永 賢
(72)【発明者】
【氏名】山田 信二
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
【Fターム(参考)】
2G003AG01
2G003AG03
2G003AG12
2G011AB01
2G011AB04
2G011AB05
2G011AB07
2G011AC13
2G011AF02
(57)【要約】
【課題】ワイピング機能を有する接触子が、ソケットでスタックすることを回避できるようにする。
【解決手段】ソケット本体の大径貫通孔に収容された後に、当該ソケット本体に装着されるソケット蓋の小径貫通孔に通される、上端部とばね部と下端部とを備える半導体検査用の接触子において、前記上端部は、前記ばね部が縮むときに前記小径貫通孔の角部に接触する第1斜面と、前記ばね部が伸びるときに前記小径貫通孔の角部に接触する第2斜面と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット本体の大径貫通孔に収容された後に、当該ソケット本体に装着されるソケット蓋の小径貫通孔に通される、上端部とばね部と下端部とを備える半導体検査用の接触子において、
前記上端部は、
前記ばね部が縮むときに前記小径貫通孔の角部に接触する第1斜面と、
前記ばね部が伸びるときに前記小径貫通孔の角部に接触する第2斜面と、
を備える接触子。
【請求項2】
前記下端部は、
前記第1斜面に対応する第3斜面と、
前記第2斜面に対応する第4斜面と、
を備える請求項1記載の接触子。
【請求項3】
前記上端部と前記下端部とは、前記ばね部の伸縮時に、その伸縮方向を基準として逆向きに変位する請求項1記載の接触子。
【請求項4】
請求項1記載の接触子と、
前記接触子を収容する前記大径貫通孔が形成されたソケット本体と前記大径貫通孔と連通する小径貫通孔が形成されたソケット蓋とを備えるソケットと、
を有する半導体検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触子及び半導体検査システムに関し、特に、両端側の電極の表面に形成される酸化被膜や当該表面に付着した異物を除去する接触子及び半導体検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の検査対象の電気特性等の検査をするための半導体検査システムは、複数の接触子とそれらを収容するソケットとを備えている。当業者にとって周知なように、検査対象の電極表面に形成される酸化被膜や当該表面に付着した異物が導通検査を阻害しかねないので、その対策が講じられている接触子がある。
【0003】
そのような接触子は、(1)その先端を鋭利形状することによって、当該先端が酸化被膜等を貫通して電極に物理的に接触できるようにするタイプのものと、(2)その先端が酸化被膜等に接した状態で、何らかの作用によって当該先端で酸化被膜等を擦って酸化被膜等を電極から物理的に除外するタイプのものと、に大別される。
【0004】
特許文献1には、上記(1)及び上記(2)の双方の特徴を有する接触子が開示されている。特許文献1の
図1を見ると、接触子(プローブピン14)は、上端部(第2プランジャ30)の先端部(第2接触部31)が鋭利形状をしており、更に、第2プランジャ30の基端をテーパ形状軸部35bとするとともにソケット本体13の上部貫通孔11bに大径孔部18a及び小径孔部18bを設けている。
【0005】
このため、プローブピン14は、その軸心方向に沿った応力が印加されることによって、コイルスプリング50が縮む際に、上部貫通孔11bの軸心に対して幅aだけワイピングするので、第2接触部31が電極表面に形成された酸化被膜等を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている接触子は、構造上、荷重に偏りが生じて、特許文献1の第2プランジャ30の円筒部分の対極角部(例えば図面左上側と図面右下側との角部)が、上部貫通孔11bの内壁に引っ掛かり、スタックする可能性がある。
【0008】
スタックが生じたからといって電気特性等の検査が即座に実行できなくなるわけではないが、スタックが生じていない他の複数の接触子には大きな荷重がかかることになるから、接触子の耐久期間が短くなる、つまり、接触子の寿命が縮まる可能性がある。
【0009】
また、ソケットの貫通孔に上記対極角部の接触によって仮に窪みが生じると、その窪みに対極角部が納まることになってしまうという今後のスタック要因となるから、ソケット自体を交換しなければならない場合も生じ得る。
【0010】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みて、ワイピング機能を有する接触子が、ソケットでスタックすることを回避できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
ソケット本体の大径貫通孔に収容された後に、当該ソケット本体に装着されるソケット蓋の小径貫通孔に通される、上端部とばね部と下端部とを備える半導体検査用の接触子において、
前記上端部は、
前記ばね部が縮むときに前記小径貫通孔の角部に接触する第1斜面と、
前記ばね部が伸びるときに前記小径貫通孔の角部に接触する第2斜面と、
を備える。
【0012】
また、前記下端部は、
前記第1斜面に対応する第3斜面と、
前記第2斜面に対応する第4斜面と、
を備えることもできる。
【0013】
さらに、前記上端部と前記下端部とは、前記ばね部の伸縮時に、その伸縮方向を基準として逆向きに変位することができる。
【0014】
またさらに、本発明の半導体検査システムは、
上記接触子と、
前記接触子を収容する大径貫通孔が形成されたソケット本体と前記大径貫通孔と連通する小径貫通孔が形成されたソケット蓋とを備えるソケットと、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の半導体検査システムの説明図である。
【
図2】
図1に示すコンタクトピン100の上端部10付近の拡大図であり、上端部10の押下状態の変遷を示す図である。
【
図3】
図1に示すコンタクトピン100の上端部10付近の拡大図であり、上端部10の離上状態の変遷を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
10 上端部
12 先端部
14 第1斜面
16 第2斜面
20 ばね部
30 下端部
100 コンタクトピン
200 ソケット
220 ソケット蓋
222 貫通孔
224 第1受け部
226 第2受け部
240 ソケット本体
【発明の実施の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の半導体検査システム及びそのコンタクトピン100について説明する。なお、本明細書及び本特許請求の範囲における、上・下・表・裏・前・後などの表記は、理解容易のために、図面を基準とした相対的なものであり、絶対的なものではない点に留意されたい。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の半導体検査システムの説明図である。半導体検査システムは、半導体検査用のコンタクトピン100と、コンタクトピン100が収容されるソケット200とに大別される。
【0019】
なお、
図1には、1本のコンタクトピン100及びその周辺部分を抜き出した状態を示しているが、ソケット200には複数本のコンタクトピン100が、例えば2次元的に配列される態様で収容できる。
【0020】
コンタクトピン100は、例えば、図示しない検査対象の電極に接する上端部10と、上端部10に隣接するS字状のばね部20と、ばね部20に隣接していて基板配線に接する下端部30と、を備える。
【0021】
コンタクトピン100は、例えば、銅銀合金、ベリリウム銅合金などの銅合金のような、高導電性及び高強度を有する板材をエッチングすることによって製造した平面的なものとすることができる。
【0022】
なお、本実施形態の半導体検査システムにおける接触子として、コンタクトピン100のように、上端部10とばね部20と下端部30とが一体であるものを用いることもできるし、特許文献1のプローブピンのように、別パーツである第1プランジャと筒状部材と第2プランジャとが組み立てられたものを用いることもできる。
【0023】
ここでいう平面的という意味は、例えば、コンタクトピン100の図面左右方向の幅が図面奥行方向の厚さの例えば0.5倍~2倍であること(例えば幅50μm程度~500μm程度、厚さ50μm程度~500μm程度)をいう。
【0024】
コンタクトピン100は、少なくとも上端部10の先端部12(
図2参照)に、ナノ銀(ナノサイズの銀)やグラフェンのような素材を付着させ、更に導電率を高めることもできる。ナノ銀等は、下端部30の先端部に設けることもできる。また、コンタクトピン100は、ばね部20が螺旋状となるように加工した立体的なものとすることもできる。
【0025】
ここでいう立体的という意味は、例えば、コンタクトピン100の図面左右方向の幅と図面奥行方向の厚さの例えば5倍~20倍であること(例えば幅100μm程度~1000μm程度、厚さ10μm程度~100μm程度)をいう。
【0026】
ソケット200は、コンタクトピン100が収容されるソケット本体240と、ソケット本体240に装着されるソケット蓋220と、を備える。ソケット200は、ソケット本体240に対してソケット蓋220を装着すると、コンタクトピン100毎に連通する貫通孔222(
図2参照)が形成される。ソケット200は、樹脂などの非導電体からなり、コンタクトピン100は相互に絶縁された状態となる。
【0027】
コンタクトピン100は、ソケット本体240の貫通孔222(大径貫通孔)に収容された後に、ソケット本体240に装着されるソケット蓋220の貫通孔222(小径貫通孔)に通される。
【0028】
図2(a)~
図2(c)は、
図1に示すコンタクトピン100の上端部10付近の拡大図であり、上端部10の押下状態の変遷を示す図である。
図2(a)には先端部12が検査対象の電極に接触する前の状態を示し、
図2(b)には先端部12が当該電極に接触して上端部10の押下が開始した状態を示し、
図2(c)には当該押下が完了した状態を示している。なお、
図2(a)~
図2(c)には、貫通孔222の軸心を一点鎖線で付記している。
【0029】
コンタクトピン100の上端部10は、検査対象の電極に接触する先端部12と、先端部12に対して一方側に位置する第1斜面14と、先端部12に対して他方側に位置する第2斜面16と、を有する。また、ソケット蓋220は、第1斜面14に対向する上側角部である第1受け部224と、第2斜面16に対向する下側角部である第2受け部226と、を有する。
【0030】
第1斜面14及び第2斜面16は、上端部10とソケット200との位置関係によって、それぞれ第1受け部224及び第2受け部226に接触する部位である。具体的には、ばね部20が縮んで上端部10がソケット200に対して相対的に図面左方向に変位する際に第1斜面14が第1受け部224に接触し、ばね部20が伸びて上端部10がソケット200に対して相対的に図面右方向に変位する際に第2斜面16が第2受け部226に接触する。
【0031】
図2(a)の状態は、コンタクトピン100は、先端部12が検査対象の電極に接触していないから、ばね部20の伸縮方向への応力が掛かっておらず、したがってばね部20が伸びた状態である。
【0032】
そして、コンタクトピン100は、第1斜面14の下側が第1受け部224に対して接触し、また、第2斜面16の下端側も第2受け部226に対して接触し、上端部10は貫通孔222の軸心に対して相対的に図面右側に位置している。
【0033】
図2(b)の状態は、コンタクトピン100は、先端部12が当該電極に接触して押下が開始するから、ばね部20の伸縮方向への応力が掛かり、したがって、ばね部20が縮み始めた状態である。
【0034】
そして、コンタクトピン100は、第1斜面14が第1受け部224に接触しながら接触箇所がその中央付近まで移動し、また、第2斜面16は第2受け部226に対して非接触となり、上端部10は貫通孔222の軸心に対して図面左側に変位する。
【0035】
図2(c)の状態は、コンタクトピン100は、先端部12が当該電極に接触して更に押下するから、ばね部20の伸縮方向への応力がより掛かり、したがって、ばね部20が更に縮む状態である。
【0036】
そして、コンタクトピン100は、第1斜面14が第1受け部224に接触しながら接触箇所がその上側まで移動し、また、第2斜面16は第2受け部226に対する非接触が継続し、上端部10は貫通孔222の軸心に対して図面左側に更に変位する。
【0037】
このように、コンタクトピン100の鉛直方向(ばね部20の伸縮方向)への応力が掛かるに連れて、検査対象の電極に先端部12が接触した直後から、上端部10が図面左側に向けて変位していくので、先端部12が電極表面に形成された酸化被膜や当該表面に付着した異物をワイピングによって除去することができる。
【0038】
図3(a)~
図3(c)は、
図1に示すコンタクトピン100の上端部10付近の拡大図であり、上端部10の離上状態の変遷を示す図である。
図3(a)には上端部10の押下が完了した状態(
図2(c)に示す状態に相当する。)を示し、
図3(b)には上端部10の離上が開始した直後の状態を示し、
図3(c)には当該離上が完了した状態を示している。
図3(a)~
図3(c)にも、貫通孔222の軸心を一点鎖線で付記している。
【0039】
当業者であれば、
図2(a)~
図2(c)に基づく説明を踏まえれば、
図3(a)~
図3(c)におけるコンタクトピン100の挙動の概要は特定できる筈であろうが、ここで注目すべきは、
図3(b)に示すように、上端部10が離上を開始した直後に、第2斜面16が第2受け部226に対する接触を開始して、その状態が継続しながらばね部20が伸びていくことによって、上端部10が図面右側に向けて変位していくということである。
【0040】
すなわち、本実施形態では、上端部10の離上中には、ワイピングによって電極表面に接触した先端部12が酸化被膜等を除去することはもとより、上端部10の図面左右方向の位置を強制的に右側に(
図2(a)の状態に)戻すことによって、コンタクトピン100が貫通孔222にてスタックすることを回避している点が着目すべき事項である。
【0041】
なお、
図2(a)~
図2(c)及び
図3(a)~
図3(c)を用いて説明したことは、下端部30の側でも成立する。したがって、下端部30の側でも、ワイピングとスタック回避との双方を実現することができる。
【0042】
ただし、
図1から明らかなように、下端部30は、コンタクトピン100の鉛直方向に応力が掛かり、ばね部20が縮む場合に図面右方向に変位し、その後、コンタクトピン100の鉛直方向の応力が解放され、ばね部20が伸びる場合に図面左方向に変位することになる。
【0043】
換言すると、下端部30は、ばね部20が縮んでソケット200に対して相対的に図面右方向に変位する際に作用する第1斜面14に対応する第3斜面と、ばね部20が伸びてソケット200に対して相対的に図面左方向に変位する際に作用する第2斜面16に対応する第4斜面と、を備える。
【0044】
纏めると、ばね部20の伸縮の際に、その伸縮方向を基準として、上端部10と下端部30とは逆向きに変位することになる。