(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014565
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】修理情報提供装置および修理情報提供方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20250123BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117233
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】石橋 隆之
(72)【発明者】
【氏名】吉井 崇博
(72)【発明者】
【氏名】柴原 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】岡部 勇大
(72)【発明者】
【氏名】藪 博文
(72)【発明者】
【氏名】向原 康平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩平
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】各修理が再修理であるか否かを精度よく判定する。
【解決手段】修理情報提供装置10は、製品の修理に関する修理情報を記憶する情報記憶部14と、修理情報を取得する情報取得部11と、修理情報に基づいて第1時点に行われた修理が第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する再修理判定部12とを備える。修理情報には、修理毎に不具合の発生情報と修理が行われた部品の情報とが含まれる。再修理判定部は、第1時点および第2時点に行われた修理の対象である第1時点対象部品および第2時点対象部品が一致する場合、または第1時点対象部品および第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容が一致する場合、第1時点に行われた修理が再修理であると判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の修理に関する修理情報を記憶する情報記憶部と、
前記修理情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された修理情報に基づいて、第1時点に前記製品に対して行われた修理が、前記第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった前記製品の不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する再修理判定部と、を備え、
前記修理情報には、前記製品の修理毎に、前記製品の不具合の発生情報と、修理が行われた部品の情報と、が含まれ、
前記再修理判定部は、前記第1時点に行われた前記修理の対象である第1時点対象部品と前記第2時点に行われた前記修理の対象である第2時点対象部品とが一致する場合、または、前記第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と前記第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、前記第1時点に行われた前記修理が再修理であると判定することを特徴とする修理情報提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の修理情報提供装置において、
前記再修理判定部は、前記第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と前記第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、前記製品における前記第1時点対象部品の搭載部位と前記第2時点対象部品の搭載部位とが一致することを条件として、前記第1時点に行われた前記修理が再修理であると判定することを特徴とする修理情報提供装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の修理情報提供装置において、
前記再修理判定部は、さらに、前記第1時点に行われた前記修理が再修理である可能性の高さを表す得点値を算出し、前記第1時点対象部品と前記第2時点対象部品とが一致する場合の得点値を、前記第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と前記第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合の得点値よりも高く算出することを特徴とする修理情報提供装置。
【請求項4】
請求項3に記載の修理情報提供装置において、
前記再修理判定部は、複数の前記第1時点に行われた前記修理が単一の前記第2時点に行われた前記修理に対応する再修理であると判定すると、前記可能性が最も高い前記第1時点に行われた前記修理と前記第2時点に行われた前記修理との組合せを特定することを特徴とする修理情報提供装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の修理情報提供装置において、
前記第2時点から前記第1時点までの期間は、所定期間以内であることを特徴とする修理情報提供装置。
【請求項6】
コンピュータにより実行される、
製品の修理に関する修理情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップで取得された修理情報に基づいて、第1時点に前記製品に対して行われた修理が、前記第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった前記製品の不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する再修理判定ステップと、を含み、
前記修理情報には、前記製品の修理毎に、前記製品の不具合の発生情報と、修理が行われた部品の情報と、が含まれ、
前記再修理判定ステップでは、前記第1時点に行われた前記修理の対象である第1時点対象部品と前記第2時点に行われた前記修理の対象である第2時点対象部品とが一致する場合、または、前記第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と前記第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、前記第1時点に行われた前記修理が再修理であると判定することを特徴とする修理情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の修理に関する情報を提供する修理情報提供装置および修理情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、車両の修理方法に関する情報を提供するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、車両に発生している不具合の種類を示す症状コードを特定し、特定された症状コードに対応する複数の対応作業コードを抽出する。そして、過去の修理履歴テーブルの対応作業コードと修理日とを参照し、過去半年以内に実施されていない作業を示す対応作業コードを、より優先度の高い修理方法として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品に故障等の不具合が発生した場合には、不具合の原因および必要な処置を正しく特定して1回の修理で不具合を解消することが好ましいが、再修理に至ったときは、速やかに再修理に至った要因を検証し、必要な対策を講じることが必要となる。しかしながら、再修理に至る状況は様々であるため、各修理が再修理であるか否かを精度よく判定することは難しく、例えば上記特許文献1記載の装置のように同様の症状に対して異なる修理を行ったという観点のみで精度よく判定することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である修理情報提供装置は、製品の修理に関する修理情報を記憶する情報記憶部と、修理情報を取得する情報取得部と、情報取得部により取得された修理情報に基づいて、第1時点に製品に対して行われた修理が、第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった製品の不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する再修理判定部と、を備える。修理情報には、製品の修理毎に、製品の不具合の発生情報と、修理が行われた部品の情報と、が含まれる。再修理判定部は、第1時点に行われた修理の対象である第1時点対象部品と第2時点に行われた修理の対象である第2時点対象部品とが一致する場合、または、第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、第1時点に行われた修理が再修理であると判定する。
【0006】
本発明の別の態様である修理情報提供方法は、コンピュータにより実行される、製品の修理に関する修理情報を取得する情報取得ステップと、情報取得ステップで取得された修理情報に基づいて、第1時点に製品に対して行われた修理が、第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった製品の不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する再修理判定ステップと、を含む。修理情報には、製品の修理毎に、製品の不具合の発生情報と、修理が行われた部品の情報と、が含まれる。再修理判定ステップでは、第1時点に行われた修理の対象である第1時点対象部品と第2時点に行われた修理の対象である第2時点対象部品とが一致する場合、または、第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、第1時点に行われた修理が再修理であると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各修理が再修理であるか否かを精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】製品の再修理に至る種々の要因について説明するための図。
【
図3】本発明の実施形態に係る修理情報提供装置を含む修理情報提供システムの全体構成の一例を概略的に示すブロック図。
【
図4】
図3の修理情報提供装置で管理される修理情報について説明するための図。
【
図5】
図3の再修理判定部による再修理判定について説明するための図。
【
図6】
図3の再修理判定部による再修理判定結果の一例を示す図。
【
図7】
図1の修理情報提供装置により実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図7を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る修理情報提供装置は、車両等の製品の修理に関する情報、特に、各修理が再修理であるか否かに関する情報を提供する。製品に故障等の不具合が発生した場合には、不具合の原因および必要な処置を正しく特定して1回の修理で不具合を解消することが好ましいが、再修理に至ったときは、速やかに再修理に至った要因を検証し、必要な対策を講じることが必要となる。
【0010】
図1は、製品の再修理に至る種々の要因について説明するための図である。
図1に示すように、再修理に至る状況には、大きく分けて、1回目の修理で不具合が解消しない場合と、1回目の修理で一度は不具合が解消したものの、その後に同様の不具合が再発する場合とがある。1回目の修理で不具合が解消しない場合の要因には、修理担当者の診断力不足により不具合の原因や必要な処置を正しく特定できなかったこと、あるいは不具合の再現性が低い等、診断がそもそも困難なことがある。同様の不具合が再発する場合の要因には、不具合の原因である原因箇所を修理せずに原因箇所により影響(被害)を受けて不具合が生じている被害箇所のみを修理したこと、あるいは製品自体に品質問題が生じていることがある。
【0011】
図2は、再修理のケース(パターン)について説明するための図である。
図1,2に示すように、1回目の修理時と2回目の修理時とで同様の不具合症状が再発または継続して発生している場合、同様の箇所を修理すべきことが明らかなときや他の修理箇所を特定することが困難なときは、同様の箇所が修理されることがある(ケースA)。このような修理は、1回目の修理により解消されなかった不具合を解消するための再修理とみなされる。
【0012】
1回目の修理で不具合が解消せず、2回目の修理時に1回目の修理時とは異なる不具合症状、すなわち、関連する不具合症状や進行した不具合症状が現れたときは、同様の箇所が再度修理されることがある(ケースB)。例えば、車両部品としてのダンパーにオイル漏れが発生している場合、関連する不具合症状や進行した不具合症状として異音が発生することがある。このような修理も再修理とみなされる。1回目の修理で不具合が解消せず、2回目の修理時に1回目の修理時とは異なる新たな不具合症状が現れ、異なる箇所が修理されたときは、再修理とはみなされない。
【0013】
1回目の修理で不具合が解消せず、2回目の修理時にも1回目の修理時と同様の不具合症状が現れているときは、1回目の修理箇所が適切ではなかった可能性があるため、1回目の修理時とは異なる箇所が修理されることがある(ケースC)。このような修理も再修理とみなされる。
【0014】
本実施形態では、
図2に示すような再修理のケースをすべて考慮することで、各修理が再修理であるか否かを精度よく判定し、製品の修理に関する情報を提供することができるよう、以下のように修理情報提供装置を構成する。
【0015】
図3は、本発明の実施形態に係る修理情報提供装置(以下、装置)10を含む修理情報提供システム100の全体構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図3に示すように、修理情報提供システム100は、装置10と、車両等の製品の修理を行う店舗等に設けられた情報入力端末20とを含む。情報入力端末20には、車両等の製品を製造する事業体が管理するものが含まれてもよい。装置10と情報入力端末20とは、LAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネット網等のWAN(ワイドエリアネットワーク)を含む通信網30を介して互いに通信可能に接続される。
【0016】
装置10は、CPU(プロセッサ),ROM,RAM(メモリ)、その他の周辺回路などを有するコンピュータを含んで構成される。装置10は、プロセッサの機能的構成として、情報取得部11と、再修理判定部12と、情報出力部13とを有し、メモリの機能的構成として、情報記憶部14を有する。すなわち、装置10のプロセッサが情報取得部11と再修理判定部12と情報出力部13として機能し、装置10のメモリが情報記憶部14として機能する。装置10は、単一のサーバ装置として構成されてもよく、分散型のサーバ装置として構成されてもよく、クラウド環境上に設けられた分散型の仮想サーバ装置として構成されてもよい。
【0017】
情報入力端末20は、例えば、車両等の製品の修理を行う店舗等に設けられたパーソナルコンピュータやタブレット端末等の、通信網30に接続可能な機器により構成される。情報入力端末20には、店舗のスタッフ等により、製品の修理に関する修理情報等が入力される。情報入力端末20に入力された修理情報は、通信網30を介して、装置10に送信され、管理される。
【0018】
図4は、修理情報について説明するための図である。
図4に示すように、修理情報には、製品の修理毎に、1回の修理を特定するための識別番号(
図4の例では、受付番号)と、修理が行われた製品を特定するための識別番号(
図4の例では、車両識別番号)とが含まれる。また、修理が行われた時期を特定するための日時や製品の使用量を表す情報(
図4の例では、修理受付日および積算走行距離)が含まれる。
【0019】
修理情報には、さらに、製品に発生した不具合内容(不具合症状)を特定するための情報(
図4の例では症状コード)と、実際に修理が行われた部品を特定するための情報(
図4の例では、代表部品番号および交換部品番号)とが含まれる。「代表部品」は、不具合の原因として特定されて修理された単一の部品であり、「交換部品」は、代表部品の修理に伴って交換された部品である。交換部品がない場合もあり、交換部品が複数ある場合もある。修理は、不具合の生じた不具合部品を新たな新品部品に交換することの他に、不具合部品を取り外して点検、清掃、加工等の何らかの処置を行った上で、再度、製品に取り付けることを含む。部品番号は、複数の文字列を含み、一部の文字列(例えば、上位1桁)が部品の搭載部位や大分類を特定し、一部の文字列(例えば、上位5桁)が部品そのものを特定する。症状コードも複数の文字列を含み、一部の文字列(例えば、上位3桁)が不具合症状を特定する。
【0020】
装置10の情報取得部11は、情報入力端末20から送信される修理情報を取得する。情報取得部11により取得された修理情報は、情報記憶部14に記憶され、蓄積される。
【0021】
再修理判定部12は、情報取得部11により取得された修理情報に基づいて、第1時点に製品に対して行われた修理が、第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった製品の不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する。例えば、情報取得部11により新たな修理の修理情報が取得されると、情報記憶部14に記憶され、蓄積された修理情報の中から、同一の製品に対して行われた過去の修理の修理情報を抽出し、
図2に示すような再修理のケースに該当するか否かを判定する。あるいは、情報記憶部14に記憶され、蓄積された修理情報の中から、各製品に対して行われた一連の修理の修理情報を抽出し、修理情報の組合せ毎に、
図2に示すような再修理のケースに該当するか否かを判定する。
【0022】
図5は、再修理判定部12による再修理判定について説明するための図である。再修理判定部12は、先ず、情報取得部11により取得され、情報記憶部14に記憶された修理情報の中から、第1時点に製品に対して行われた修理の修理情報と、第1時点よりも前の第2時点に行われた修理の修理情報とを抽出する。より具体的には、製品を特定するための識別番号(例えば、車両識別番号)が一致し、かつ、修理が行われた時期や製品の使用量(例えば、積算走行距離)が異なる修理情報の組合せを抽出する。
【0023】
このとき、第2時点から第1時点までの期間を所定期間以内に限定して修理情報の抽出を行ってもよい。すなわち、
図2に示すような再修理のケースに該当する場合であっても、前回の修理から所定期間が経過した後の修理は、通常、再修理とはみなされない。所定期間は、時間(例えば半年等)に基づいて定められてもよく、製品の使用量(例えば走行距離が1万km等)に基づいて定められてもよい。所定期間は、部品毎に、例えば各部品の耐用年数等に応じて定められてもよい。
【0024】
再修理判定部12は、次いで、
図5に示すように、抽出した第1時点の修理情報に含まれる代表部品番号(第1時点代表部品の部品番号)と、第2時点の修理情報に含まれる代表部品番号(第2時点代表部品の部品番号)とを比較する。また、第1時点の修理情報に含まれる交換部品番号(第1時点交換部品の部品番号)と、第2時点の修理情報に含まれる交換部品番号(第2時点交換部品の部品番号)とを比較する。部品番号の上位5桁が一致する場合、第1時点の修理の対象である第1時点対象部品(第1時点代表部品または第1時点交換部品)と第2時点の修理の対象である第2時点対象部品(第2時点代表部品または第2時点交換部品)とは同一の部品である。この場合、
図2のケースAまたはケースBに該当し、第1時点の修理が第2時点の修理に対する再修理であると判定される。なお、交換部品については、第1時点交換部品のいずれかと第2時点交換部品のいずれかが同一の部品であればよい。
【0025】
再修理判定部12は、さらに、第1時点の修理情報に含まれる症状コード(第1時点症状コード)と、第2時点の修理情報に含まれる症状コード(第2時点症状コード)とを比較する。症状コードの上位3桁が一致する場合、第1時点で第2時点と同様の不具合症状が再発または継続していると言える。また、部品番号の上位5桁が一致しない場合でも、部品番号の上位1桁が一致する場合は、第1時点対象部品と第2時点対象部品とが搭載部位や大分類が同一の部品である。したがって、症状コードの上位3桁と部品番号の上位1桁とが一致する場合は、第1時点の修理と第2時点の修理との間に関連があると言える。この場合、
図2のケースAまたはケースCに該当するものとして、第1時点の修理が第2時点の修理に対する再修理であると判定される。なお、交換部品については、第1時点交換部品のいずれかと第2時点交換部品のいずれかが搭載部位や大分類が同一の部品であればよい。
【0026】
再修理判定部12による判定結果は、情報記憶部14に記憶される。より具体的には、情報記憶部14に記憶された修理情報のうち、第2時点の修理情報に対し、再修理が行われた回数の情報が付与されるとともに、再修理として行われた第1時点の修理の修理情報が関連付けられ、修理情報が更新される。
【0027】
再修理判定部12は、さらに、第1時点の修理が再修理である可能性の高さを表す得点値を算出(決定)する。すなわち、第1時点の修理が再修理である可能性が最も高い場合である第1時点代表部品および第2時点代表部品の部品番号の上位5桁が一致する場合は、最も高い第1得点値(
図5の例では、1000点)を算出する。第1時点交換部品および第2時点交換部品の部品番号の上位5桁が一致する場合は、第1得点値に次いで高い第2得点値(
図5の例では、100点)を算出する。第1時点代表部品および第2時点代表部品の部品番号の上位1桁と症状コードの上位3桁とが一致する場合は、第2得点値に次いで高い第3得点値(
図5の例では、10点)を算出する。第1時点交換部品および第2時点交換部品の部品番号の上位1桁と症状コードの上位3桁とが一致する場合は、第3得点値に次いで高い第4得点値(
図5の例では、1点)を算出する。
【0028】
再修理判定部12により算出された得点値は、情報記憶部14に記憶される。より具体的には、第1時点の修理情報と第2時点の修理情報との組合せに対し、再修理判定部12により算出された得点値が付与され、情報記憶部14に記憶された修理情報が更新される。
【0029】
図6は、再修理判定部12による再修理判定結果の一例を示す図であり、車両識別番号が同一の車両について積算走行距離の異なる時期に行われた一連の修理の一例を示す。
図6に示すように、修理1aと修理2とでは、代表部品の部品番号の上位5桁は一致していないが、交換部品の部品番号の上位5桁が一致しているため、修理2は修理1aの再修理であると判定され、得点値として100点が算出される。修理1aと修理3,4とでは、代表部品の部品番号の上位1桁も交換部品の部品番号の上位1桁も一致していないため、修理3,4は修理1aの再修理ではないと判定される。この場合、修理1aの修理情報には、再修理が1回行われた旨の情報が付与されるとともに、再修理として行われた修理2の修理情報が関連付けられ、修理情報が更新される。
【0030】
修理1bと修理2,3とでは、代表部品の部品番号の上位5桁が一致しているため、修理2,3は修理1bの再修理であると判定され、得点値として1000点が算出される。修理1bと修理4とでは、代表部品の部品番号は上位1桁も一致していないが、交換部品の部品番号の上位1桁と症状コードの上位3桁とが一致しているため、修理4は修理1bの再修理であると判定され、得点値として1点が算出される。この場合、修理1bの修理情報には、再修理が3回行われた旨の情報が付与されるとともに、再修理として行われた修理2,3,4の修理情報が関連付けられ、修理情報が更新される。
【0031】
修理2と修理3とでは、代表部品の部品番号の上位5桁が一致しているため、修理3は修理2の再修理であると判定され、得点値として1000点が算出される。修理2と修理4とでは、代表部品の部品番号の上位1桁も交換部品の部品番号の上位1桁も一致していないため、修理4は修理2の再修理ではないと判定される。この場合、修理2の修理情報には、再修理が1回行われた旨の情報が付与されるとともに、再修理として行われた修理3の修理情報が関連付けられ、修理情報が更新される。
【0032】
修理3と修理4とでは、代表部品の部品番号の上位1桁も交換部品の部品番号の上位1桁も一致していないため、修理4は修理3の再修理ではないと判定される。
【0033】
再修理判定部12は、複数の第1時点に行われた修理が単一の第2時点に行われた修理に対応する再修理であると判定すると、再修理である可能性が最も高い第1時点の修理と第2時点の修理との組合せを特定する。
図6の例では、再修理であると判定された修理1bと修理2との組合せ、修理1bと修理3との組合せ、修理1bと修理4との組合せのうち、最も得点値の高い修理1bと修理2,3との組合せを、再修理である可能性が最も高い組合せとして特定する。この場合、修理1bの修理情報には、さらに、修理2,3が修理1bに対応する再修理である可能性が最も高い旨の情報が付与され、修理情報が更新される。最も得点値の高い修理1bと修理2,3との組合せのみを再修理の組合せとしてもよい。
【0034】
このような得点値は、第1時点の修理が再修理である可能性の高さを表すだけでなく、その再修理に関連する不具合が製品に及ぼす影響の大きさや、不具合への対応の優先度の高さも表している。すなわち、第1時点と第2時点とで代表部品や交換部品の部品番号の上位5桁が一致し、同一の部品が再修理されている場合には、その製品(部品)自体に品質問題が生じている蓋然性が高く、その部品について早急に設計変更等の対応をとる必要がある。このように、その再修理に関連する不具合が製品に及ぼす影響が大きく、不具合への対応の優先度が高い場合には、比較的高い得点値が算出される。一方、第1時点と第2時点とで代表部品や交換部品の部品番号の上位1桁のみが一致し、異なる部品が再修理されている場合には、最初の修理で処置を行うべき部品を正しく特定できていなかった可能性が高く、部品自体に品質問題が生じている可能性は低い。このように、その再修理に関連する不具合が製品に及ぼす影響が比較的小さく、不具合への対応の優先度が比較的低い場合には、比較的低い得点値が算出される。
【0035】
情報出力部13は、情報記憶部14に記憶され、更新された修理情報を外部に出力する。例えば、車両等の製品の修理を行う店舗毎の更新された修理情報を店舗毎の情報入力端末20に送信する。情報出力部13は、情報記憶部14に記憶された修理情報すべてを出力してもよく、一部を抽出して出力してもよい。例えば、各店舗の修理情報のみを抽出して各店舗の情報入力端末20に送信してもよい。情報出力部13による更新された修理情報の出力は、情報取得部11により新たな修理の修理情報が取得される度に行われてもよく、定期的(例えば、毎日、毎週、毎月等)に行われてもよい。例えば、各店舗から装置10に新たな修理の修理情報が送信される度に、再修理判定が行われ、更新された修理情報が各店舗の情報入力端末20に送信される。この場合、各店舗では、新たな修理が過去の修理で解消しなかった不具合を解消するための再修理であったか否か、および再修理に至った過去の修理について速やかに確認することができる。これにより、各店舗では、速やかに再修理に至った要因を検証し、必要な対策を講じることができる。
【0036】
図7は、装置10により実行される処理の一例を示すフローチャートであり、情報入力端末20から新たな修理情報が取得される度に再修理判定を行う場合の例を示す。
図7の処理は、所定周期で繰り返し実行される。
図7に示すように、先ずステップS1で、情報入力端末20から新たな修理情報が取得されたか否かを判定する。ステップS1で肯定されるとステップS2に進み、ステップS1で否定されると処理を終了する。ステップS2では、情報記憶部14に記憶された過去の修理情報から、ステップS1で取得された第1時点の修理情報と車両識別番号が同一で積算走行距離が異なる修理情報を、第2時点の修理情報の候補として抽出する。
【0037】
次いでステップS3で、ステップS1で取得された第1時点の修理情報およびステップS2で各候補として抽出された第2時点の修理情報に含まれる代表部品番号の上位5桁が一致するか否かを判定する。ステップS3で肯定されると、ステップS4に進み、ステップS3で判定が行われた第1時点の修理情報と第2時点の修理情報との組合せに対し、第1得点値(1000点)を付与し、情報記憶部14に記憶された修理情報を更新する。
【0038】
ステップS3で否定されると、ステップS5に進み、ステップS3で判定が行われた第1時点の修理情報および第2時点の修理情報に含まれる交換部品番号の上位5桁が一致するか否かを判定する。ステップS5で肯定されると、ステップS6に進み、ステップS3,S5で判定が行われた第1時点の修理情報と第2時点の修理情報との組合せに対し、第2得点値(100点)を付与し、修理情報を更新する。
【0039】
ステップS5で否定されると、ステップS7に進み、ステップS3,S5で判定が行われた第1時点の修理情報および第2時点の修理情報に含まれる代表部品番号の上位1桁と症状コードの上位3桁とが一致するか否かを判定する。ステップS7で肯定されると、ステップS8に進み、ステップS3,S5,S7で判定が行われた第1時点の修理情報と第2時点の修理情報との組合せに対し、第3得点値(10点)を付与し、修理情報を更新する。
【0040】
ステップS7で否定されると、ステップS9に進み、ステップS3,S5,S7で判定が行われた第1時点の修理情報および第2時点の修理情報に含まれる交換部品番号の上位1桁と症状コードの上位3桁とが一致するか否かを判定する。ステップS9で肯定されると、ステップS10に進み、ステップS3,S5,S7,S9で判定が行われた第1時点の修理情報と第2時点の修理情報との組合せに対し、第4得点値(1点)を付与し、修理情報を更新する。
【0041】
ステップS9で否定されると、ステップS11に進み、ステップS3,S5,S7,S9で判定が行われた第1時点の修理情報と第2時点の修理情報との組合せに対し、再修理の組合せではないことを表す得点値(0点)を付与し、修理情報を更新する。
【0042】
次いでステップS12で、ステップS2で抽出された第2時点の修理情報の候補すべてについて得点値を算出したか否かを判定する。ステップS12で否定されるとステップS3に戻り、次の候補について判定を行う。ステップS12で肯定されるとステップS13に進み、更新された修理情報を情報入力端末20に送信して、処理を終了する。
【0043】
このように、
図2,5に示すような再修理のケースをすべて考慮して再修理判定を行うことで(ステップS3~S11)、各修理が再修理であるか否かを精度よく判定することができる。また、新たな修理情報が取得される度に再修理判定を行い、修理情報を提供することで(ステップS1,S13)、速やかに再修理に至った要因を検証し、必要な対策を講じることができる。
【0044】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
(1)装置10は、製品の修理に関する修理情報を記憶する情報記憶部14と、修理情報を取得する情報取得部11と、情報取得部11により取得された修理情報に基づいて、第1時点に製品に対して行われた修理が、第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった製品の不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する再修理判定部12とを備える(
図3)。修理情報には、製品の修理毎に、製品の不具合の発生情報と、修理が行われた部品の情報と、が含まれる(
図7)。
【0045】
再修理判定部12は、第1時点に行われた修理の対象である第1時点対象部品と第2時点に行われた修理の対象である第2時点対象部品とが一致する場合、または、第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、第1時点に行われた修理が再修理であると判定する(
図2,5)。このように、
図2,5に示すような再修理のケースをすべて考慮し、修理情報に基づいて再修理判定を行うことで、各修理が再修理であるか否かを精度よく判定することができる。
【0046】
(2)再修理判定部12は、第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、製品における第1時点対象部品の搭載部位と第2時点対象部品の搭載部位とが一致することを条件として、第1時点に行われた修理が再修理であると判定する。これにより各修理が再修理であるか否かを一層精度よく判定することができる。
【0047】
(3)再修理判定部12は、さらに、第1時点に行われた修理が再修理である可能性の高さを表す得点値を算出する。再修理判定部12は、第1時点対象部品と第2時点対象部品とが一致する場合(
図2のケースA,B)の得点値を、第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合(
図2のケースA,C)の得点値よりも高く算出する(
図5)。この場合、修理情報に基づいて各修理が再修理である可能性の高さを簡易かつ精度よく評価することができる。また、再修理に関連する不具合が製品に及ぼす影響の大きさや不具合への対応の優先度の高さを簡易かつ精度よく評価することができる。
【0048】
(4)再修理判定部12は、複数の第1時点に行われた修理が単一の第2時点に行われた修理に対応する再修理であると判定すると、可能性が最も高い第1時点に行われた修理と第2時点に行われた修理との組合せを特定する。この場合、例えば最も得点値の高い組合せのみを再修理の組合せとして特定することができる。また、得点値の高い組合せは、製品(部品)自体に品質問題が生じている蓋然性が高く、その部品について早急に設計変更等の対応をとる必要があるため、そのような再修理を特定することで必要な対応を効率的にとることができる。
【0049】
(5)第2時点から第1時点までの期間は、所定期間以内である。すなわち、
図2,5のケースに該当する場合でも前回の修理から所定期間が経過した後の修理は、通常、再修理とはみなされないため、所定期間を超える修理の組合せを除外することで各修理が再修理であるか否かを一層精度よく判定することができる。
【0050】
上記実施形態では、車両等の製品の修理について再修理判定を行う例を説明したが、製品は車両等に限らない。製品は、修理情報として各修理での不具合症状の内容や処置を施した部品の情報が管理されるものであれば、どのようなものでもよい。製品は、車両や他の移動体、あるいは発電機等に搭載されるエンジンやモータ等であってもよい。
【0051】
上記実施形態では、装置10が情報出力部13を有し、製品の修理を行う店舗等の情報入力端末20に修理情報を送信する例を説明したが、修理情報提供装置は、このようなものに限らない。例えば、再修理判定と修理情報の更新のみを自動的に行い、外部からの出力指令に応じて、更新された修理情報を出力するものであってもよい。すなわち、修理情報の提供を受ける者が必要に応じて装置10にアクセスし、更新された修理情報を取得してもよい。
【0052】
上記実施形態では、
図7等で新たな修理情報が取得される度に自動的に再修理判定を行う例を説明したが、再修理判定を行う再修理判定部は、このようなものに限らない。例えば、外部からの指令に応じて、情報記憶部14に記憶され、蓄積された修理情報の中から、各製品に対して行われた一連の修理の修理情報を抽出し、再修理判定を行うものであってもよい。すなわち、修理情報の提供を受ける者の要求に応じて再修理判定を行ってもよい。
【0053】
以上では、本発明を修理情報提供装置として説明したが、本発明は、修理情報提供方法として用いることもできる。すなわち、修理情報提供方法は、コンピュータにより実行される、製品の修理に関する修理情報を取得する情報取得ステップS1と、情報取得ステップS1で取得された修理情報に基づいて、第1時点に製品に対して行われた修理が、第1時点よりも前の第2時点に行われた修理により解消されなかった製品の不具合を解消するための再修理であるか否かを判定する再修理判定ステップS2~S12とを含む(
図6)。修理情報には、製品の修理毎に、製品の不具合の発生情報と、修理が行われた部品の情報と、が含まれる(
図7)。再修理判定ステップでは、第1時点に行われた修理の対象である第1時点対象部品と第2時点に行われた修理の対象である第2時点対象部品とが一致する場合、または、第1時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容と第2時点対象部品に対する不具合の発生情報により特定される不具合内容とが一致する場合、第1時点に行われた修理が再修理であると判定する(
図2,5)。
【0054】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施の形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施の形態と変形例の一つあるいは複数を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 修理情報提供装置(装置)、11 情報取得部、12 再修理判定部、13 情報出力部、14 情報記憶部、20 情報入力端末、30 通信網、100 修理情報提供システム