IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌパット株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-支持装置 図1
  • 特開-支持装置 図2
  • 特開-支持装置 図3
  • 特開-支持装置 図4
  • 特開-支持装置 図5
  • 特開-支持装置 図6
  • 特開-支持装置 図7
  • 特開-支持装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014573
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】支持装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
E04B9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117248
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博基
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】野村 洋文
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
(72)【発明者】
【氏名】及川 智之
(57)【要約】
【課題】天井吊り下げ物の位置調整を可能にしつつ、従来よりも耐震性能を向上させる。
【解決手段】天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する支持装置1は、天井構造から垂下する複数の吊り部材2と、複数の吊り部材2を相互に連結して補強する複数の補強部材3と、複数の吊り部材2のそれぞれに取り付けられ、複数の吊り部材2の上端近傍位置に取り付けられ、横方向に延びる第1支持アーム4aと、複数の吊り部材2の下端近傍位置に取り付けられ、横方向に延びる第2支持アーム4bと、吊り部材2と平行な状態で第1支持アーム4a及び第2支持アーム4bに取り付けられ、第2支持アーム4bから垂下する下端部において天井吊り下げ物を支持する複数の支持部材5と、を備える。第1支持アーム4a及び第2支持アーム4bは、吊り部材2に対して回動可能であり、且つ、支持部材5と吊り部材2との間隔を調整可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する支持装置であって、
前記天井構造から垂下する複数の吊り部材と、
前記複数の吊り部材を相互に連結して補強する複数の補強部材と、
前記複数の吊り部材のそれぞれの上端近傍位置に取り付けられ、前記吊り部材から横方向に延びる第1支持アームと、
前記複数の吊り部材のそれぞれの下端近傍位置に取り付けられ、前記吊り部材から横方向に延びる第2支持アームと、
前記吊り部材と平行な状態で前記第1支持アーム及び前記第2支持アームに取り付けられ、前記第2支持アームから垂下する下端部において前記天井吊り下げ物を支持する複数の支持部材と、
を備え、
前記第1支持アーム及び前記第2支持アームは、前記吊り部材に対して回動可能であり、且つ、前記支持部材と前記吊り部材との間隔を調整可能であることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
前記複数の吊り部材は、平面視で矩形を成す頂点の位置に配置され、
前記第1支持アーム及び前記第2支持アームは、前記矩形の外側に向いて取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記複数の吊り部材に取り付けられる複数の前記第1支持アーム及び複数の前記第2支持アームは、平面視において互いに平行な状態に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持装置。
【請求項4】
前記複数の吊り部材は、平面視で矩形を成す頂点の位置に配置され、
前記第1支持アーム及び前記第2支持アームは、前記矩形の内側に向いて取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機などの天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態で支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機などの天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態で支持する支持装置として、例えば天井構造から垂下する複数の吊り部材の下端に、複数のフレーム部材を矩形状に組み付けた支持枠体を取り付け、その支持枠体から連結ボルトを垂下させて天井吊り下げ物を支持する構造が知られている(例えば特許文献1)。この従来の支持装置は、支持枠体を構成する複数のフレーム部材にスリットが形成されている。連結ボルトは、そのスリットに挿通された状態で支持枠体に取り付けられる。そのため、連結ボルトは、フレーム部材のスリットに沿って移動可能であり、フレーム部材に対する取り付け位置を調整することができる。それ故、吊り部材を天井構造に固定した後、連結ボルトをフレーム部材の長手方向に移動させることにより、水平面内における天井吊り下げ物の設置位置を調整することが可能である。
【0003】
また、従来、天井構造から垂下する吊りボルトと、空気調和機を支持する支持ボルトとの間に、天吊り位置調整金具を取り付け、吊りボルトに対する支持ボルトの位置を調整可能とした天吊り用据え付け具が知られている(例えば特許文献2)。この天吊り用据え付け具における天吊り位置調整金具は、支持ボルトを固定する固定孔と、吊りボルトを固定する長孔とを有する平板状の金具によって構成される。吊りボルトの長孔に対する固定位置を調整することにより、吊りボルトと支持ボルトとの相対位置が変わるため、空気調和機の天吊り位置を調整することが可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-12344号公報
【特許文献2】特開2018-146204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の支持装置は、吊り部材の下端に複数のフレーム部材を矩形状に組み付けた支持枠体を取り付ける必要がある。フレーム部材は、2つの形鋼の間にスペーサを挿入してスリットを形成している。支持枠体は、そのような複数のフレーム部材を矩形状に組み付けて構成される。そのため、従来の支持装置は、部品点数が多く、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1の支持装置は、天井吊り下げ物を支持する連結ボルトをフレーム部材のスリットに沿って直線方向に移動させるため、水平面内において天井吊り下げ物を互いに直交する2方向に移動させることが可能である。しかし、従来の支持装置は、支持枠体による位置調整機能のみでは、水平面内おいて天井吊り下げ物を回転方向に姿勢変化させつつ位置調整を行うことができないという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2の天吊り用据え付け具は、吊りボルトと支持ボルトとの間に平板状の天吊り位置調整金具を設けることによって天吊り位置を調整可能としており、部品点数が少なく、低コストで実現可能である。また、特許文献2の天吊り位置調整金具は、吊りボルト又は支持ボルトを中心回動させることが可能であるため、天吊り位置を回転方向に調整できるという利点もある。
【0008】
しかしながら、特許文献2の天吊り用据え付け具は、空気調和機の荷重が全て天吊り位置調整金具にかかるため、地震発生時に大きな加速度が作用すると、天吊り位置調整金具の変位量が大きくなり、空気調和機が大きく振動してしまうという問題がある。
【0009】
図8は、特許文献2の天吊り用据え付け具の側面図である。図8(a)に示すように、天吊り用据え付け具は、吊りボルト210と支持ボルト230との間に天吊り位置調整金具220を備えている。吊りボルト210は、天井構造から垂下している。支持ボルト230は、その下端が空気調和機100の取付片110に固定され、空気調和機100を支持している。
【0010】
図8(b)は、地震発生時における天吊り用据え付け具の挙動を示している。上述のように、空気調和機100の荷重は全て天吊り位置調整金具220にかかっている。ここで、空気調和機100の重量をm、地震発生時の加速度をaとすると、地震発生時に天吊り位置調整金具220に作用する力Fは、F=maとなる。例えば、大規模地震発生時に加速度aが大きくなると、それに応じて天吊り位置調整金具220に作用する力Fも大きくなる。地震発生時に天吊り位置調整金具220に作用する力Fが大きくなると、天吊り位置調整金具220は、図8(b)に示すように、吊りボルト210に固定された位置を視点221として矢印A1方向に大きく振動する。また、支持ボルト230にも大きな力が作用するため、支持ボルト230は、図8(b)に示すように、天吊り位置調整金具220に固定された位置を視点231として矢印A2方向に大きく振動する。その結果、空気調和機100は、天吊り位置調整金具220の矢印A1方向の振動と、支持ボルト230の矢印A2方向の振動の双方が合わさって振動し、空気調和機100の矢印A3方向への振動幅が大きくなる。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、天井吊り下げ物の位置調整を可能にしつつ、従来よりも耐震性能を向上させた支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する支持装置であって、前記天井構造から垂下する複数の吊り部材と、前記複数の吊り部材を相互に連結して補強する複数の補強部材と、前記複数の吊り部材のそれぞれの上端近傍位置に取り付けられ、前記吊り部材から横方向に延びる第1支持アームと、前記複数の吊り部材のそれぞれの下端近傍位置に取り付けられ、前記吊り部材から横方向に延びる第2支持アームと、前記吊り部材と平行な状態で前記第1支持アーム及び前記第2支持アームに取り付けられ、前記第2支持アームから垂下する下端部において前記天井吊り下げ物を支持する複数の支持部材と、を備え、前記第1支持アーム及び前記第2支持アームは、前記吊り部材に対して回動可能であり、且つ、前記支持部材と前記吊り部材との間隔を調整可能であることを特徴とする構成である。
【0013】
第2に、本発明は、第1の構成を有する支持装置において、前記複数の吊り部材は、平面視で矩形を成す頂点の位置に配置され、前記第1支持アーム及び前記第2支持アームは、前記矩形の外側に向いて取り付けられることを特徴とする構成である。
【0014】
第3に、本発明は、第1又は第2の構成を有する支持装置において、前記複数の吊り部材に取り付けられる複数の前記第1支持アーム及び複数の前記第2支持アームは、平面視において互いに平行な状態に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0015】
第4に、本発明は、第1の構成を有する支持装置において、前記複数の吊り部材は、平面視で矩形を成す頂点の位置に配置され、前記第1支持アーム及び前記第2支持アームは、前記矩形の内側に向いて取り付けられることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、天井吊り下げ物の位置調整を可能にしつつ、従来よりも耐震性能を向上させた支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】支持装置の構成例を示す斜視図である。
図2】吊り部材に対する支持アーム及び支持部材の取り付け態様を例示する図である。
図3】空気調和機を支持した状態の支持装置を上から視た平面図である。
図4】複数の支持アームを互いに平行な状態で設置した例を示す図である。
図5】支持アームを支持装置の内側に向けて取り付けた状態を示す斜視図である。
図6】支持アーム支持装置の内側に向けて取り付けた状態を示す平面図である。
図7】空気調和機を持ち上げた状態で保持する支持装置を示す図である。
図8】従来の天吊り用据え付け具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である支持装置1の構成例を示す斜視図である。支持装置1は、空気調和機や照明器具、ダクト、各種配管などの様々な天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態で支持する装置である。本実施形態では、天井吊り下げ物の一例として、天井設置型の空気調和機100を例示する。尚、図1に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする座標系である。
【0020】
図1に示すように、支持装置1は、天井構造から垂下する複数の吊り部材2と、複数の吊り部材2を相互に連結して補強する複数の補強部材3と、複数の吊り部材2のそれぞれに取り付けられ、吊り部材から横方向(水平方向)に延びる複数の支持アーム4と、吊り部材2と平行な状態で支持アーム4から垂下する支持部材5とを備えている。
【0021】
吊り部材2は、例えば吊りボルトによって構成される。吊りボルトは、その長手方向の全体に亘って外周面に雄螺子が形成されたボルト部材である。吊り部材2の上端は、例えば上階床スラブの下面側に設けられるデッキプレートなどの天井構造に取り付けられる。デッキプレートには、インサートやアンカーなどが設置され、下面側に雌螺子孔が開口している。吊り部材2は、上端の雄螺子部をその雌螺子孔に装着することにより、天井構造から垂下する状態に設置される。空気調和機100を天井空間に吊り下げた状態で支持する場合、図1に示すように4つの吊り部材2が天井構造に取り付けられる。これら4つの吊り部材2は、平面視で矩形を成す4つの頂点の位置に設置される。
【0022】
補強部材3は、例えばブレースボルトによって構成される。ブレースボルトは、吊りボルトと同様のボルト部材である。補強部材3は、吊り部材2が取り付けられた平面視矩形の各頂点を結ぶ四辺の位置に取り付けられる。各吊り部材2の上端近傍位置及び下端近傍位置には、補強部材3を連結するための連結部材6が取り付けられている。連結部材6は、取り付け対象である吊り部材2から、隣接する2つの吊り部材2,2のそれぞれに向かって延設される一対の連結部を有している。連結部材6は、それら一対の連結部のそれぞれに対して補強部材3を固定可能である。
【0023】
補強部材3の両端は、互いに隣接する一対の吊り部材2,2に取り付けられた連結部材6に固定され、それら一対の吊り部材2,2を相互に連結する。すなわち、補強部材3は、その一端が、互いに隣接する一対の吊り部材2,2のうちの一方の吊り部材2の上端近傍位置に取り付けられた連結部材6に固定される。また、補強部材3は、他端が、他方の吊り部材2の下端近傍位置に取り付けられた連結部材6に固定される。互いに隣接する一対の吊り部材2,2間に、2つの補強部材3,3が互いに交差するように配置される。その交差部には、交差連結金具7が装着され、2つの補強部材3,3の中央部が一体的に接続される。
【0024】
例えば図1に示すように、4つの吊り部材2が配置された平面視矩形の各頂点を結ぶ四辺に対応する位置には、合計8つの補強部材3が取り付けられる。これにより、4つの吊り部材2は、補強部材3によって一体的に結合され、剛性の高い構造物として補強される。
【0025】
支持アーム4は、複数の吊り部材2のそれぞれに取り付けられる。図1の例では、天井構造から4つの吊り部材2が垂下している。そのため、支持アーム4は、4つの吊り部材2のそれぞれに取り付けられている。本実施形態の支持アーム4は、吊り部材2の上端近傍位置に取り付けられる第1支持アーム4aと、吊り部材2の下端近傍位置に取り付けられる第2支持アーム4bとを備えている。第1支持アーム4a及び第2支持アーム4bは、吊り部材2から横方向に延びるように取り付けられる。第1支持アーム4aが取り付けられる吊り部材2の上端近傍位置には、連結部材6が配置され、2つの補強部材3,3が連結されている。そのため、第1支持アーム4aが取り付けられる吊り部材2の上端近傍位置は、剛性の高い位置となっている。また、第2支持アーム4bが取り付けられる吊り部材2の下端近傍位置にも、連結部材6が配置され、2つの補強部材3,3が連結されている。そのため、第2支持アーム4bが取り付けられる吊り部材2の下端近傍位置も、剛性の高い位置となっている。
【0026】
支持部材5は、例えば吊りボルトと同様のボルト部材で構成される。支持部材5は、第1支持アーム4a及び第2支持アーム4bによって支持され、吊り部材2と平行な状態に設置される。そして支持部材5は、第2支持アーム4bから更に下方に垂下する。支持部材5の下端部は、吊り部材2の下端部よりも更に下方に延設される。すなわち、支持部材5は、空気調和機100の側面に設けられている取付片110に向かって垂下しており、その下端部が取付片110の下面側を支持することで、空気調和機100を吊り下げた状態に支持する。
【0027】
図2は、吊り部材2に対する支持アーム4及び支持部材5の取り付け態様を例示する図である。図2(a)に示すように、第1支持アーム4aは、吊り部材2の上端近傍位置に取り付けられ、支持部材5の上端近傍位置を支持する。第2支持アーム4bは、吊り部材2の下端近傍位置に取り付けられ、支持部材5の中央の位置を支持する。
【0028】
図2(b)に示すように、第1支持アーム4aは、縦板部11と横板部12とを有するL型のアングル材によって構成される。縦板部11は横板部12を補強している。そのため、第1支持アーム4aの横板部12に空気調和機100の荷重がかかっても、第1支持アーム4aが変形することはない。横板部12は、吊り部材2を挿通するための挿通孔14と、支持部材5を挿通するための長孔13とを有する。挿通孔14の内径は、吊り部材2の直径よりも若干大きい。長孔13の幅は、支持部材5の直径よりも大きい。また、挿通孔14は、長孔13の長手方向に形成されている。
【0029】
第1支持アーム4aは、横板部12に形成された挿通孔14に吊り部材2を挿通し、横板部12を挟んで2つのナット15,15が締結されることにより、吊り部材2の所定高さ位置に取り付けられる。2つのナット15,15のうちの少なくとも一方を緩めると、第1支持アーム4aは、図2(a)に示すように吊り部材2を中心にR方向に回動可能である。これに対し、2つのナット15,15が締め付けられると、第1支持アーム4aは、吊り部材2に対してR方向に回動しない状態に固定される。
【0030】
支持部材5は、図2(b)に示すように、第1支持アーム4aの横板部12に形成されている長孔13に挿通され、横板部12を挟んで2つのナット16,16が締結されることにより、第1支持アーム4aに支持される。2つのナット16,16のうちの少なくとも一方を緩めると、支持部材5は、図2(a)に示すように長孔13の長手方向(F方向)に沿って移動可能である。これに対し、2つのナット16,16が締め付けられると、支持部材5は、第1支持アーム4aの長孔13の所定位置に固定される。
【0031】
図2(c)に示すように、第2支持アーム4bは、平板状の金属材によって構成される。ただし、第2支持アーム4bは、第1支持アーム4aと同様のアングル材によって構成されていても構わない。第2支持アーム4bは、吊り部材2を挿通するための挿通孔18と、支持部材5を挿通するための長孔17とを有する。挿通孔18の内径は、吊り部材2の直径よりも若干大きい。長孔17の幅は、支持部材5の直径よりも大きい。また、挿通孔18は、長孔17の長手方向に形成されている。
【0032】
第2支持アーム4bは、挿通孔18に吊り部材2を挿通し、上下に2つのナット19,19が締結されることにより、吊り部材2の所定高さ位置に取り付けられる。2つのナット19,19のうちの少なくとも一方を緩めると、第2支持アーム4bは、図2(a)に示すように吊り部材2を中心にR方向に回動可能である。これに対し、2つのナット19,19が締め付けられると、第2支持アーム4bは、吊り部材2に対してR方向に回動しない状態に固定される。
【0033】
支持部材5は、図2(c)に示すように、第2支持アーム4bに形成されている長孔17に挿通され、第2支持アーム4bを挟んで2つのナット20,20が締結されることにより、第2支持アーム4bに支持される。2つのナット20,20のうちの少なくとも一方を緩めると、支持部材5は、図2(a)に示すように長孔17の長手方向(F方向)に沿って移動可能である。これに対し、2つのナット20,20が締め付けられると、支持部材5は、第2支持アーム4bの長孔17の所定位置に固定される。したがって、支持部材5は、第1支持アーム4aと第2支持アーム4bとによって上下2箇所が支持される。
【0034】
支持部材5の下端部には、例えばゴムなどの弾性部材で構成される円筒状の防振部材21が装着される。その防振部材21の下面側にはナット22が装着され、防振部材21が支持部材5から離脱しない構成となっている。防振部材21は、空気調和機100の取付片110の下面側に接合し、空気調和機100を支持する。つまり、支持装置1は、防振部材21を介して空気調和機100を支持する。そのため、支持装置1は、空気調和機100の稼働中に発生する振動が上階床スラブなどに伝わることを抑制することができる。
【0035】
上記のように構成される支持装置1は、第1支持アーム4aを吊り部材2に固定する2つのナット15,15を緩めると共に、第2支持アーム4bを吊り部材2に固定する2つのナット19,19を緩めることにより、支持アーム4を吊り部材2に対して回動させることができる。そのため、支持装置1は、支持アーム4を回動させることにより、空気調和機100を支持する支持部材5の位置を調整することが可能である。
【0036】
また、支持装置1は、支持部材5の上部を第1支持アーム4aに固定する2つのナット16,16を緩めると共に、支持部材5の中央部を第2支持アーム4bに固定する2つのナット20,20を緩めることにより、吊り部材2に対する支持部材5の位置を接近方向及び離反方向のいずれにも移動させることができる。これにより、支持部材5と吊り部材2との間隔が変化する。そのため、支持装置1は、支持部材5を支持アーム4の長手方向に沿って移動させることにより、空気調和機100を支持する支持部材5の位置を調整することが可能である。したがって、本実施形態の支持装置1は、空気調和機100の位置調整を行う際、空気調和機100を回転方向に姿勢変化させることが可能であり、位置調整のための自由度が従来よりも高い。
【0037】
図3は、空気調和機100を支持した状態の支持装置1を上から視た平面図である。図3では、支持アーム4を支持装置1の外方向に向けた状態で設置した例を示している。この場合、各支持アーム4は、図中二点鎖線で示す方向に回動可能であり、その可動範囲内において支持部材5の位置を調整可能である。そのため、支持装置1は、空気調和機100の各取付片110の位置を、図3において二点鎖線で示す領域内に設置可能であり、水平面内における空気調和機100の設置位置や姿勢を調整しやすいという利点がある。
【0038】
例えば、支持装置1が空気調和機100を支持している状態で、空気調和機100を操作することにより位置調整を行おうとすると、その調整操作に連動して4つの支持アーム4が回動する。また、4つの支持部材5も、その調整操作に連動して各支持アーム4の長孔13,17に沿って移動する。つまり、4つの支持部材5は、その下端部で空気調和機100を支持した状態であるため、空気調和機100の位置調整操作に連動して変位する。このとき、4つの支持部材5の相対的位置関係は不変である。つまり、支持装置1が空気調和機100を支持している状態では、4つの支持部材5の相対的位置関係が不変であるという制約を受けるため、空気調和機100の位置調整可能範囲には限界が生じる。
【0039】
空気調和機100の位置調整可能範囲をできる限り広くするため、本発明者ら鋭意検討を重ねたところ、水平面内において4つの支持アーム4を互いに平行な状態で設置することが好ましいことが判明した。図4は、複数の支持アーム4を互いに平行な状態で設置した例を示す図である。図4に示すように、複数の支持アーム4を水平面内において互いに平行な状態で設置することにより、空気調和機100の位置調整可能範囲を、図3に示す例よりも拡大させることが可能である。そのため、支持装置1が空気調和機100を支持し、位置調整を行う前の状態のとき、図4に示すように、水平面内において4つの支持アーム4が互いに平行な状態となることが好ましい。
【0040】
また、上記の支持装置1では、4つの吊り部材2及び複数の補強部材3によって形成される平面視矩形領域の外側に向けて支持アーム4が配置される例を説明した。しかし、これに限られるものではなく、支持アーム4は、平面視矩形の内側に向けて吊り部材2に取り付けられても構わない。
【0041】
図5は、支持アーム4を支持装置1の内側に向けて取り付けた状態を示す斜視図である。また図6は、支持アーム4を支持装置1の内側に向けて取り付けた状態を示す平面図である。図5及び図6に示すように、支持アーム4を内側に向けた状態であっても、支持装置1は、4つの吊り部材2によって形成される矩形領域の内側に空気調和機100を吊り下げた状態で支持することができる。この場合、支持アーム4が吊り部材2を中心に回動可能な範囲は、上述した図3又は図4の例よりも小さくなる。しかし、この場合の支持装置1もまた、空気調和機100の位置調整を行う際に、空気調和機100を回転方向に姿勢変化させることが可能であり、位置調整のための自由度が従来よりも高い点に変わりはない。
【0042】
また、支持アーム4を支持装置1の内側に向けることにより、図6に示すように、平面視において空気調和機100の全体を矩形領域の内側に収めることができる。そのため、図7に示すように、空気調和機100の位置調整を行った後、支持装置1は、矩形領域の内側において持ち上げた状態で空気調和機100を保持することができる。例えば、図7に示す空気調和機100は、その下面側に取り付けられる化粧パネルが天井パネルと略同一の高さ位置となるように設置される。空気調和機100が支持される天井空間に天井パネルを設置する作業が行われるとき、空気調和機100が邪魔になり、天井パネルの設置作業の妨げとなる。そのようなとき、支持装置1は、所定の設置高さ位置から空気調和機100を持ち上げた状態で保持できるため、天井パネルの設置作業が行われる際には作業の妨げにならない高さ位置で保持しておくことができる。したがって、支持アーム4を支持装置1の内側に向けた状態で空気調和機100を支持する場合には、天井パネルの設置作業を効率的に行うことができるようになる。
【0043】
特に、上述した支持装置1は、従来のような支持枠体を設ける必要がない。そのため、従来よりも部品点数を減らすことができる。また、本実施形態の支持装置1に設けられる支持アーム4及び支持部材5は簡単な構造の部材であるため、部品単価が安価である。それ故、本実施形態の支持装置1は、従来の支持装置に比して安価に製造できるという利点もある。
【0044】
また、上述した支持装置1は、空気調和機100の荷重を第1支持アーム4aと第2支持アーム4bとで分散して支持する。そのため、地震発生時に空気調和機100に作用する力Fを、第1支持アーム4aと第2支持アーム4bとに分散させることができ、第2支持アーム4bだけに大きな力が作用することを抑制することができる。加えて、支持部材5は、上端近傍位置が第1支持アーム4aに固定され、中央部が第2支持アーム4bに固定されているため、第2支持アーム4bが振動しようとしても、第1支持アーム4aと第2支持アーム4bとの間の支持部材5が突っ張り棒として機能するため、第2支持アーム4bの振動を抑制することができる。したがって、本実施形態の支持装置1は、地震発生時における空気調和機100の振動幅を小さく抑えることが可能であり、耐震性に優れている。
【0045】
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態で説明したものに限られない。すなわち、本発明は、上記実施形態で説明した構成以外にも種々の変形例を適用することが可能である。
【0046】
例えば上記実施形態では、天井吊り下げ物の一例として空気調和機100を例示した。しかし、本発明を適用可能な天井吊り下げ物は、空気調和機100に限られない。
【0047】
例えば上記実施形態の支持装置1は、支持アーム4が第1支持アーム4aと第2支持アーム4bとの2つのアーム部材で構成される場合を例示した。しかし、支持アーム4は、第1支持アーム4a、第2支持アーム4bの他に、第3支持アームを更に備える構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1…支持装置、2…吊り部材、3…補強部材、4…支持アーム、4a…第1支持アーム、4b…第2支持アーム、5…支持部材、100…空気調和機(天井吊り下げ物)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8