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特開2025-14579二酸化炭素(CO2)のメタン化触媒、その製造方法、それを用いたメタン製造装置、および、それを用いたメタンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014579
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】二酸化炭素(CO2)のメタン化触媒、その製造方法、それを用いたメタン製造装置、および、それを用いたメタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/83 20060101AFI20250123BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20250123BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20250123BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20250123BHJP
   C07C 1/22 20060101ALI20250123BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20250123BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
B01J23/83 M
B01J37/18
B01J35/10 301G
B01J37/02 101Z
C07C1/22
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117257
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】許 亜
(72)【発明者】
【氏名】郭 樹啓
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA06A
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA22C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB10C
4G169BB12C
4G169BB20C
4G169BC09A
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC42B
4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC44B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CC40
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB14Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC14X
4G169EC14Y
4G169EC15X
4G169EC15Y
4G169EC18Y
4G169EC25
4G169EC26
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB44
4G169FB64
4G169FB77
4G169FC02
4H006AA02
4H006AC13
4H006BA21
4H006BA30
4H006BA81
4H006BA85
4H039CB20
4H039CD30
(57)【要約】
【課題】 300℃以下の低温において優れた触媒活性を有するニッケルを用いた二酸化炭素(CO)のメタン化触媒、その製造方法、それを用いたメタン製造装置、および、それを用いたメタンの製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の二酸化炭素(CO)のメタン化触媒は、酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物(ただし、REは、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および、Luからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、炭素と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物とを含有する多孔質材料からなる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ニッケルまたはニッケル金属と、
REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、
炭素と、
必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物と
を含有する多孔質材料からなる、二酸化炭素(CO)のメタン化触媒。
【請求項2】
前記炭素は、アモルファス炭素である、請求項1に記載のメタン化触媒。
【請求項3】
前記多孔質材料全体を100質量%とした場合、
前記酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で5質量%以上60質量%以下の範囲で含有し、
前記REの酸化物を15質量%以上85質量%以下の範囲で含有し、
前記炭素を0質量%より大きく70質量%未満の範囲で含有し、
前記さらなる酸化物を0質量%以上55質量%以下の範囲で含有する、請求項1または2に記載のメタン化触媒。
【請求項4】
前記酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で7質量%以上55質量%以下の範囲で含有し、
前記REの酸化物を17.5質量%以上75質量%以下の範囲で含有し、
前記炭素を5質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
前記さらなる酸化物を0質量%以上52.5質量%以下の範囲で含有する、請求項3に記載のメタン化触媒。
【請求項5】
前記酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で10質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
前記REの酸化物を20質量%以上70質量%以下の範囲で含有し、
前記炭素を20質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
前記さらなる酸化物を0質量%以上35質量%以下の範囲で含有する、請求項4に記載のメタン化触媒。
【請求項6】
前記REは、イットリウム、および/または、イッテルビウムである、請求項1~5のいずれかに記載のメタン化触媒。
【請求項7】
前記多孔質材料は、マイクロ孔、メソ孔およびマクロ孔を有する、請求項1~6のいずれかに記載のメタン化触媒。
【請求項8】
前記多孔質材料のBET法による比表面積は、10m/g以上300m/g以下の範囲を満たす、請求項1~7のいずれかに記載のメタン化触媒。
【請求項9】
前記多孔質材料のBET法による比表面積は、60m/g以上300m/g以下の範囲を満たす、請求項8に記載のメタン化触媒。
【請求項10】
前記多孔質材料のt-plot法によるマイクロ孔表面積は、2m/g以上240m/g以下の範囲を満たす、請求項1~9のいずれかに記載のメタン化触媒。
【請求項11】
前記多孔質材料のt-plot法によるマイクロ孔表面積は、25m/g以上240m/g以下の範囲を満たす、請求項10に記載のメタン化触媒。
【請求項12】
前記多孔質材料中のマイクロ孔の割合は、10%以上85%以下の範囲を満たす、請求項1~11のいずれかに記載のメタン化触媒。
【請求項13】
前記多孔質材料中のマイクロ孔の割合は、40%以上85%以下の範囲を満たす、請求項12に記載のメタン化触媒。
【請求項14】
前記多孔質材料は、BJH法による平均細孔径が5nm以上16nm以下の範囲を満たすメソ孔を有する、請求項1~13のいずれかに記載のメタン化触媒。
【請求項15】
ニッケル塩と、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物との混合物を調製することと、
前記混合物を酸化雰囲気中で焼成することと、
前記焼成後の混合物と、フェノール樹脂、フラン樹脂およびジビニルベンゼン樹脂からなる群から少なくとも1種選択される樹脂とを混合し、樹脂混合物を調製することと、
前記樹脂混合物を炭化することと
を包含する、請求項1~14のいずれかに記載の二酸化炭素のメタン化触媒を製造する方法。
【請求項16】
REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、フェノール樹脂、フラン樹脂およびジビニルベンゼン樹脂からなる群から少なくとも1種選択される樹脂と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物との樹脂混合物を調製することと、
前記樹脂混合物を炭化することと、
前記炭化することによって得られた酸化物含有炭素多孔体をニッケル塩の水溶液に含浸させることと、
前記ニッケル塩が含浸した酸化物含有炭素多孔体を酸化雰囲気中で焼成することと
を包含する、請求項1~14のいずれかに記載の二酸化炭素のメタン化触媒を製造する方法。
【請求項17】
前記ニッケル塩は、ニッケルの硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、メタ過ヨウ素酸塩、および、チオシアン酸塩からなる群から少なくとも1種選択される塩である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
二酸化炭素と水素とからメタンを生成する触媒を収容する反応容器を備え、前記触媒は、請求項1~14のいずれかに記載の二酸化炭素のメタン化触媒である、メタン製造装置。
【請求項19】
メタンを製造する方法であって、
請求項1~14のいずれかに記載の二酸化炭素のメタン化触媒を還元雰囲気下で還元処理することと、
前記還元処理されたメタン化触媒を加熱することと、
前記還元処理されたメタン化触媒に二酸化炭素と水素とを導入することと
を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO)のメタン化触媒、その製造方法、それを用いたメタン製造装置、および、それを用いたメタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止のため、発電、製鉄等のプラントから排出された二酸化炭素(CO)を回収、有効利用する必要がある。そのCOの有効利用技術としてメタネーション反応が知られている。メタネーションとは、次式に示すように、触媒を利用してCOと水素(H)とからメタン(CH)を生成する反応である。
CO+4H⇔CH+2H
【0003】
メタネーション反応のための触媒(メタネーション触媒)として、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)などの金属粒子を酸化物に担持させた触媒が利用されている(例えば、非特許文献1および特許文献1~5を参照)。
【0004】
非特許文献1によれば、Ru等の貴金属触媒は、Ni等の卑金属触媒より低温(300℃以下)で高いメタネーション触媒活性を示す。しかしながら、貴金属は高価であり、資源量が限られるため、メタネーション用触媒としては、Ni等の卑金属を主体とした触媒が望ましい。そのため、近年、Niを用いたメタネーション触媒の研究が盛んである。
【0005】
特許文献1~5によれば、いずれも、Niを酸化セリウム(CeO)、酸化ジルコニウム(ZrO)などの酸化物に担持させた触媒が、高いメタネーション触媒活性を有することを報告する。しかしながら、いずれも、低温(300℃以下)におけるメタネーション触媒活性の効果は貴金属触媒のそれに比べて低く、十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-254508号公報
【特許文献2】特開2009-034650号公報
【特許文献3】特開2010-022944号公報
【特許文献4】特開平8-127544号公報
【特許文献5】特開2020-37535号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gabriella Garbarinoら,International Journal of Hydrogen Energy,40(30),9171-9182
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上から、本発明の課題は、300℃以下の低温において優れた触媒活性を有するニッケルを用いた二酸化炭素(CO)のメタン化触媒、その製造方法、それを用いたメタン製造装置、および、それを用いたメタンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による二酸化炭素(CO)のメタン化触媒は、酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、炭素と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物とを含有する多孔質材料からなり、これにより上記課題を解決する。
前記炭素は、アモルファス炭素であってもよい。
前記多孔質材料全体を100質量%とした場合、前記酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で5質量%以上60質量%以下の範囲で含有し、前記REの酸化物を15質量%以上85質量%以下の範囲で含有し、前記炭素を0質量%より大きく70質量%未満の範囲で含有し、前記さらなる酸化物を0質量%以上55質量%以下の範囲で含有してもよい。
前記酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で7質量%以上55質量%以下の範囲で含有し、前記REの酸化物を17.5質量%以上75質量%以下の範囲で含有し、前記炭素を5質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、前記さらなる酸化物を0質量%以上52.5質量%以下の範囲で含有してもよい。
前記酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で10質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、前記REの酸化物を20質量%以上70質量%以下の範囲で含有し、前記炭素を20質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、前記さらなる酸化物を0質量%以上35質量%以下の範囲で含有してもよい。
前記REは、イットリウム、および/または、イッテルビウムであってもよい。
前記多孔質材料は、マイクロ孔、メソ孔およびマクロ孔を有してもよい。
前記多孔質材料のBET法による比表面積は、10m/g以上300m/g以下の範囲を満たしてもよい。
前記多孔質材料のBET法による比表面積は、60m/g以上300m/g以下の範囲を満たしてもよい。
前記多孔質材料のt-plot法によるマイクロ孔表面積は、2m/g以上240m/g以下の範囲を満たしてもよい。
前記多孔質材料のt-plot法によるマイクロ孔表面積は、25m/g以上240m/g以下の範囲を満たしてもよい。
前記多孔質材料中のマイクロ孔の割合は、10%以上85%以下の範囲を満たしてもよい。
前記多孔質材料中のマイクロ孔の割合は、40%以上85%以下の範囲を満たしてもよい。
前記多孔質材料は、BJH法による平均細孔径が5nm以上16nm以下の範囲を満たすメソ孔を有してもよい。
本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を製造する方法は、ニッケル塩と、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物との混合物を調製することと、前記混合物を酸化雰囲気中で焼成することと、前記焼成後の混合物と、フェノール樹脂、フラン樹脂およびジビニルベンゼン樹脂からなる群から少なくとも1種選択される樹脂とを混合し、樹脂混合物を調製することと、前記樹脂混合物を炭化することとを包含し、これにより上記課題を解決する。
本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を製造する方法は、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、フェノール樹脂、フラン樹脂およびジビニルベンゼン樹脂からなる群から少なくとも1種選択される樹脂と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物との樹脂混合物を調製することと、前記樹脂混合物を炭化することと、前記炭化することによって得られた酸化物含有炭素多孔体をニッケル塩の水溶液に含浸させることと、前記ニッケル塩が含浸した酸化物含有炭素多孔体を酸化雰囲気中で焼成することとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記ニッケル塩は、ニッケルの硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、メタ過ヨウ素酸塩、および、チオシアン酸塩からなる群から少なくとも1種選択される塩であってもよい。
本発明によるメタン製造装置は、二酸化炭素と水素とからメタンを生成する触媒を収容する反応容器を備え、前記触媒は、上記二酸化炭素のメタン化触媒であり、これにより上記課題を解決する。
本発明によるメタンを製造する方法は、上記二酸化炭素のメタン化触媒を還元雰囲気下で還元処理することと、前記還元処理されたメタン化触媒を加熱することと、前記還元処理されたメタン化触媒に二酸化炭素と水素とを導入することとを包含し、これにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明による二酸化炭素のメタン化触媒は、酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、炭素と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物とを含有する多孔質材料からなる。本発明のメタン化触媒は、Ruのような貴金属を用いないため、コスト削減に有効である。本発明のメタン化触媒は、多孔質材料であるため、二酸化炭素および水素の反応分子が細孔内へ素早く拡散し、メタネーション反応が起こりやすい。そのため、300℃以下の低温であっても、高いメタネーション触媒活性が得られる。特に、酸化ニッケルまたはニッケル金属と特定のREの酸化物との組み合わせにより、メタネーション触媒活性が顕著に向上し得る。本発明のメタン化触媒を用いれば、高いメタン生成効率のメタンの製造方法およびメタン製造装置を提供できる。本発明の上述のメタン化触媒の製造方法は、特別な技術や装置を不要とするため、低コスト化を可能とし、量産化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を示す模式図
図2】本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を製造する工程を示すフローチャート
図3】本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を製造する工程を示す別のフローチャート
図4】本発明によるメタンを製造する工程を示すフローチャート
図5】本発明によるメタン製造装置を示す模式図
図6】例1において、図2のステップS220で得られた混合物のXRDパターンを示す図
図7】例1の試料の外観を示す図
図8】例1の試料のXRDパターンを示す図
図9】例3の試料のSEM像を示す図
図10】例11の試料のSEM像を示す図
図11】例12の試料のSEM像を示す図
図12】例13の試料のSEM像を示す図
図13】例15の試料のSEM像を示す図
図14】例2の試料の窒素ガス吸脱着等温線を示す図
図15】例2の試料の細孔分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明による二酸化炭素のメタン化触媒およびその製造方法について説明する。
【0013】
図1は、本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を示す模式図である。
【0014】
本発明の二酸化炭素(CO)のメタン化触媒100は、酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、炭素とを含有する多孔質材料からなる。本発明のメタン化触媒100は、Ru(ルテニウム)のような貴金属を含まないため、コスト削減に有効である。また、本発明のメタン化触媒100は、多孔質材料であるため、二酸化炭素および水素の反応分子が細孔内へ素早く拡散し、メタネーション反応が起こりやすい。そのため、300℃以下の低温であっても、高いメタネーション触媒活性が得られる。特に、酸化ニッケルまたはニッケル金属と特定のREの酸化物との組み合わせにより、メタネーション触媒活性が顕著に向上し得る。
【0015】
本発明のメタン化触媒100は、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、および、酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物を含有してよい。これらの酸化物は、触媒担体として機能する。これらの酸化物を含有することにより、上述のREの酸化物の量を低減でき、コストを低下できるため好ましい。中でも、酸化アルミニウムおよびイットリア安定化ジルコニアは、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性を向上させる。
【0016】
以降では本発明のCOのメタン化触媒100の各構成要素について説明する。
メタン化触媒100において、ニッケル金属は上述の反応式を促進させる触媒として機能する。なお、メタン化触媒100がニッケル金属を酸化ニッケルとして含有してもよく、その場合には、メタネーションに先立って、還元処理を行い、酸化ニッケルはニッケル金属に還元される。
【0017】
メタン化触媒100において、REの酸化物は、助触媒として機能する。上述のRE元素のうち、好ましくは、イットリウムの酸化物(Y)またはイッテルビウムの酸化物(Yb)である。これらの酸化物は、ニッケル金属とともに、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性を向上させる。
【0018】
メタン化触媒100において、炭素は、好ましくは、アモルファス炭素であり、上述のニッケル金属または酸化ニッケル、REの酸化物、および、さらなる酸化物の担体、並びに、多孔質体構造の形成剤として機能する。このため、メタン化触媒100は、金属または金属酸化物の量を極力抑えることができるため、コストを低下できる。金属または金属酸化物の量が低減されているため、メタネーション反応によってもこれら金属または金属酸化物の凝集が生じることはなく、メタネーション触媒活性の劣化を抑制できる。
【0019】
メタン化触媒100において、上述してきた酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物と、炭素と、さらなる酸化物とは、多孔質材料110(図1)を構成している。そのため、反応分子(CO、H)は、細孔を通じて容易に多孔質材料内部まで拡散するため、メタネーション反応が生じやすくなり、高いメタネーション触媒活性が期待できる。
【0020】
多孔質材料110は、好ましくは、細孔径が2nm未満であるマイクロ孔120と、細孔径が2nm以上50nm以下であるメソ孔130と、細孔径が50nmを超えるマクロ孔140とを有する。細孔径の異なる複数の細孔を有するため、反応分子の拡散がさらに促進し、メタネーション触媒活性が向上し得る。なお、多孔質材料110の窒素吸脱着等温線がIUPACのタイプIとIVに該当すれば、多孔質材料110がマイクロ孔120およびメソ孔130を有すると判定できる。また、多孔質材料110がマクロ孔140を有することは、電子顕微鏡像から判断できる。
【0021】
多孔質材料110のBET法による比表面積は、好ましくは、10m/g以上300m/g以下の範囲を満たす。この範囲であれば、メタネーション触媒活性を向上させる。比表面積は、より好ましくは、60m/g以上300m/g以下の範囲を満たす。この範囲であれば、メタネーション触媒活性をさらに向上させる。比表面積は、なお好ましくは、150m/g以上300m/g以下の範囲を満たす。この範囲であれば、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性を向上させる。
【0022】
多孔質材料110のt-plot法によるマイクロ孔表面積は、好ましくは、2m/g以上240m/g以下の範囲を満たす。この範囲であれば、メタネーション触媒活性を向上させる。マイクロ孔表面積は、より好ましくは、25m/g以上240m/g以下の範囲を満たす。この範囲であれば、メタネーション触媒活性をさらに向上させる。マイクロ孔表面積は、なお好ましくは、100m/g以上300m/g以下の範囲を満たす。この範囲であれば、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性を向上させる。
【0023】
多孔質材料110中のマイクロ孔120の割合(すなわち、マイクロ孔表面積/BET法比表面積の百分率)は、好ましくは、10%以上85%以下の範囲を満たす。この範囲であれば、メタネーション触媒活性を向上させる。マイクロ孔の割合は、より好ましくは、40%以上85%以下の範囲を満たす。この範囲であれば、メタネーション触媒活性をさらに向上させる。マイクロ孔の割合は、なお好ましくは、60%以上85%以下の範囲を満たす。この範囲であれば、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性を向上させる。
【0024】
多孔質材料110におけるBJH法による平均細孔径は、5nm以上16nm以下の範囲を満たす。この範囲であれば、メタネーション触媒活性を向上させる。
【0025】
なお、多孔質材料110は、上述のBET法による比表面積、t-plot法によるマイクロ孔表面積、マイクロ孔の割合、BJH法による平均細孔径を単独で、あるいは、任意に組み合わせて満たしてもよい。
【0026】
多孔質材料110は、酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物と、炭素と、必要に応じてさらなる酸化物とによって構成されるが、好ましくは、多孔質材料110全体を100質量%としたとき、
酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で5質量%以上60質量%以下の範囲で含有し、
REの酸化物を15質量%以上85質量%以下の範囲で含有し、
炭素を0質量%より大きく70質量%未満の範囲で含有し、
さらなる酸化物を0質量%以上55質量%以下の範囲で含有する。この範囲であれば、上述の多孔性を備え、メタネーション触媒活性をさらに向上させる。
【0027】
多孔質材料110は、より好ましくは、
酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で7質量%以上55質量%以下の範囲で含有し、
REの酸化物を17.5質量%以上75質量%以下の範囲で含有し、
炭素を5質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
さらなる酸化物を0質量%以上52.5質量%以下の範囲で含有する。この範囲であれば、上述の多孔性を備え、メタネーション触媒活性をなおさらに向上させる。
【0028】
多孔質材料110は、なおさらに好ましくは、
酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で10質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
REの酸化物を20質量%以上70質量%以下の範囲で含有し、
炭素を20質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
さらなる酸化物を0質量%以上35質量%以下の範囲で含有する。この範囲であれば、上述の多孔性を備え、メタネーション触媒活性をなおさらに向上させる。
【0029】
特に、さらなる酸化物を含有する場合、多孔質材料110は、好ましくは、
酸化ニッケルまたはニッケル金属をニッケル金属換算で10質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
REの酸化物を20質量%以上55質量%以下の範囲で含有し、
炭素を20質量%以上50質量%以下の範囲で含有し、
さらなる酸化物を15質量%以上35質量%以下の範囲で含有する。この範囲であれば、上述の多孔性を備え、メタネーション触媒活性をなおさらに向上させる。
【0030】
次に、本発明のメタン化触媒100の製造方法について説明する。
図2は、本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を製造する工程を示すフローチャートである。
【0031】
本発明のメタン化触媒100は、以下のステップS210~S240によって製造される。
ステップS210:ニッケル塩と、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物との混合物を調製する。
ステップS220:混合物を酸化雰囲気中で焼成する。
ステップS230:焼成後の混合物と、フェノール樹脂、フラン樹脂およびジビニルベンゼン樹脂からなる群から少なくとも1種選択される樹脂とを混合し、樹脂混合物を調製する。
ステップS240:樹脂混合物を炭化する。
【0032】
各ステップを詳述する。
ステップS210において、ニッケル塩は、ニッケルの硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、メタ過ヨウ素酸塩、チオシアン酸塩等あるが、中でも、反応効率の観点から、ニッケルの硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩およびこれらの水和物が好ましい。REの酸化物およびさらなる酸化物は、特に制限はないが、好ましくは、100nm以上5000nm以下の範囲の粒径を有する粒子であってよい。これにより、原料を均一に混合できる。
【0033】
ステップS210において、ニッケル塩、REの酸化物、必要に応じて、さらなる酸化物は、本発明のメタン化触媒100の組成を満たすように混合されるが、ここでも、ニッケル塩は、ニッケル塩中のニッケル金属換算で混合される。
【0034】
ステップS210において、混合物は、ニッケル塩水溶液にREの酸化物、必要に応じてさらなる酸化物を添加・撹拌し、乾燥することによって、調製されてよい。このような乾燥は、例えば、大気中、85℃以上110℃以下の温度範囲で5時間以上24時間以下行ってよい。
【0035】
ステップS220において、ステップS210の混合物は、酸化雰囲気中で焼成され、ニッケル塩は酸化ニッケルになる。焼成条件は、ニッケル塩が酸化ニッケルになれば特に制限はないが、例示的には、大気中、400℃以上600℃以下の温度範囲で1時間以上6時間以下であってよい。この範囲であれば、ニッケル塩とREの酸化物あるいはさらなる酸化物とが反応することはなく、酸化ニッケルが得られる。これにより、得られる酸化ニッケルは、1nm以上500nm以下の範囲の粒径を有する粒子となる。
【0036】
ステップS230において、フェノール樹脂、フラン樹脂およびジビニルベンゼン樹脂は、いずれも、焼成するとアモルファス炭素となる炭素源である。ここで、炭素源は、焼成後の炭素の含有量が、ステップS210とともに、本発明のメタン化触媒100の組成を満たすように秤量される。これらの炭素源とステップS220で得られた酸化ニッケル、REの酸化物、必要に応じてさらなる酸化物の混合物とを混合した樹脂混合物をペレット状に成形してよい。
【0037】
ステップS240において、炭化は、特に制限はないが、例示的には、窒素、あるいは、アルゴン等の希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で、500℃以上1100℃以下の温度範囲で30分以上12時間以下の時間焼成すればよい。このような条件であれば、炭素源は、多孔性のアモルファス炭素となる。炭化は、より好ましくは、不活性ガス雰囲気下で、600℃以上800℃以下の温度範囲で1時間以上3時間以下の時間焼成すればよい。
【0038】
炭化において、内部亀裂を抑制するため、昇温速度および冷却速度を制御するとよい。好ましくは、300℃まで、1℃/分以上5℃/分以下、より好ましくは、1.5℃/分以上2.5℃/分以下の昇温速度、300℃を超えて保持温度まで、1℃/分以上5℃/分以下、より好ましくは、0.5℃/分以上1.5℃/分以下の昇温速度で昇温するとよい。また、保持温度から室温まで、1℃/分以上3℃/分以下、より好ましくは、1.5℃/分以上2.5℃/分以下の降温速度で冷却するとよい。
【0039】
このようにして、酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物と、炭素と、必要に応じてさらなる酸化物とを含有する多孔質材料からなる本発明のメタン化触媒100(図1)が得られる。
【0040】
本発明のメタン化触媒100の別の製造方法について説明する。
図3は、本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を製造する工程を示す別のフローチャートである。
【0041】
本発明のメタン化触媒100は、以下のステップS310~S340によって製造される。
ステップS310:REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、フェノール樹脂、フラン樹脂およびジビニルベンゼン樹脂からなる群から少なくとも1種選択される樹脂と、必要に応じて、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択されるさらなる酸化物との樹脂混合物を調製する。
ステップS320:樹脂混合物を炭化する。
ステップS330:炭化することによって得られた酸化物含有炭素多孔体をニッケル塩の水溶液に含浸させる。
ステップS340:ニッケル塩が含浸した酸化物含有炭素多孔体を酸化雰囲気中で焼成する。
【0042】
図3に示す製造方法は、炭化を先に行い、ニッケル塩の酸化を後で行う点で、図2に示す製造方法とは異なる。各ステップを詳述する。
【0043】
ステップS310において、REの酸化物およびさらなる酸化物は、ステップS210(図2)と同様であってよい。また、樹脂混合物は、ステップS230と同様に、ペレット状に成形してよい。
【0044】
ステップS320において、REの酸化物、必要に応じてさらなる酸化物を含有する炭素多孔体(酸化物含有炭素多孔体)が得られる。ここで、炭化は、ステップS240と同様であってよい。
【0045】
ステップS330において、酸化物含有炭素多孔体をニッケル塩の水溶液に含浸させる。ニッケル塩は、ステップS210(図2)で詳述したニッケル塩であってよい。これにより炭素多孔体の細孔にニッケル塩が付着する。なお、含浸後、酸化物含有炭素多孔体を大気中で乾燥させ、溶媒を除去してよい。このような乾燥は、例えば、大気中、85℃以上110℃以下の温度範囲で5時間以上24時間以下の加熱であってよい。
【0046】
ステップS340において、焼成は、ステップS210(図2)と同様であってよい。
このようにして、酸化ニッケルまたはニッケル金属と、REの酸化物と、炭素と、必要に応じてさらなる酸化物とを含有する多孔質材料からなる本発明のメタン化触媒100(図1)が得られる。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明による二酸化炭素のメタン化触媒を用いたメタンの製造方法およびメタンの製造装置について説明する。
【0048】
図4は、本発明によるメタンを製造する工程を示すフローチャートである。
【0049】
メタンは、以下のステップS410~S430によって製造される。
ステップS410:本発明のメタン化触媒100(図1)を還元雰囲気下で還元処理する。
ステップS420:還元処理されたメタン化触媒を加熱する。
ステップS430:還元処理されたメタン化触媒に二酸化炭素と水素とを導入する。
【0050】
本発明のメタン化触媒100を用いれば、二酸化炭素および水素からメタンを製造できる。各ステップについて詳述する。
ステップS410では、本発明のメタン化触媒100が還元処理されて、活性化される。還元処理されると、メタン化触媒100中の酸化ニッケルは還元されてニッケル金属となり、メタネーション触媒活性が向上し得る。
【0051】
ステップS410において、還元処理は、例示的には、水素、一酸化炭素、メタノール等の還元剤を導入し、350℃以上700℃以下の温度範囲で30分以上5時間以下の熱処理であってよい。還元剤は、取り扱いの簡便さから水素が好ましい。本発明のメタン化触媒100は、比較的高温(例えば、500℃以上700℃以下)の還元処理を行っても、比表面積が低下することはない。そのため、未還元の酸化ニッケルを極力低減できるため、メタネーション触媒活性を向上できる。
【0052】
ステップS420において、加熱は、600℃以下の温度を適用できるが、本発明のメタン化触媒100は、300℃以下の低温域においても優れたメタネーション触媒活性を有するため、200℃以上300℃以下の範囲を使用できる。
【0053】
ステップS420において、圧力を制御してもよい。圧力を高くするとメタンの収率が高くなる傾向がある。例えば、圧力は、0.1MPa以上10MPa以下の範囲であってよく、好ましくは、0.5MPa以上8MPa以下、なお好ましくは、1MPa以上5MPa以下であってよい。当業者であれば、加熱温度と反応温度とを適宜調整し得る。
【0054】
ステップS430において、還元処理されたメタン化触媒に二酸化炭素(CO)と水素(H)とを導入し、気相で反応させると、上述の反応式にしたがってメタン(CH)が生成する。二酸化炭素と水素とは、例えば、二酸化炭素:水素のモル比=1:2~8、好ましくは、1:3~6、なお好ましくは、1:4であってよい。これにより、メタネーション反応を促進できる。また、二酸化炭素および水素の空間速度は、特に制限はないが、例示的には、1000mL/g-cat・hr以上100000mL/g-cat・hr以下、好ましくは、2000mL/g-cat・hr以上20000mL/g-cat・hr以下である。
【0055】
図5は、本発明によるメタン製造装置を示す模式図である。
【0056】
上述のメタンの製造方法に使用できるメタン製造装置として、例えば、固定床流通方式のメタン製造装置500がある。メタン製造装置500は、反応容器510内で二酸化炭素(CO)および水素(H)にメタネーション反応を生じさせ、メタン(CH)を製造する。反応容器510には本発明のメタン化触媒100が収容されている。
【0057】
メタン製造装置500は、反応容器510に供給される二酸化炭素および水素の流量をそれぞれ調整する流量計(図示せず)を備えてもよい。反応容器510は、収容されるメタン化触媒100を加熱する加熱装置(図示せず)、または、オイル等の熱媒体が通過する流路(図示せず)を備えてもよい。反応容器510の後段に、メタンとともに生成した水を除去する凝縮器(図示せず)を備えてもよい。
【0058】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例0059】
[原料等]
合成に使用した原料粉末は、硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO、試薬特級、富士フイルム和光純薬株式会社製)、酸化チタン(TiO、堺化学工業株式会社製、15nm)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ、Y(3mol%)-ZrO(97mol%)、東ソー株式会社製、40nm)、酸化アルミニウム(Al、260nm)、酸化イットリウム(Y、株式会社高純度化学研究所製、1000nm)、酸化イッテルビウム(Yb、株式会社高純度化学研究所製、1200nm)、酸化ランタン(La、株式会社高純度化学研究所製、2000nm)、酸化セリウム(CeO、第一稀元素化学工業株式会社製、4700nm(D50))、および、フェノール樹脂(PR-311、住友ベークライト株式会社製)であった。
【0060】
また、商用の二酸化炭素のメタン化触媒としてRu担持TiO触媒(Ru/TiO)を比較に用いた。
【0061】
[例1]
例1では、図2に示す製造工程を用いて二酸化炭素のメタン化触媒を製造した。
【0062】
ニッケル塩として硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO)と、REの酸化物としてYと、さらなる酸化物としてYSZとの混合物を調製した(図2のステップS210)。具体的には、表1に示すように、設計組成の試料重量基準でNiが10wt%含有されるよう、Ni(NO・6HOに蒸留水を溶解させ、硝酸ニッケル溶液(濃度50wt%)を調製した。その後、この水溶液にYおよびYSZを加え、1時間、静置した。その後、このスラリーを120℃、大気中、スターラで撹拌しながら、乾燥させ、混合物を得た。得られた混合物をさらに100℃で12時間以上十分に乾燥させ、残存水分を除去した。
【0063】
次いで、混合物を酸化雰囲気中で焼成した(図2のステップS220)。乾燥後の混合物を粉砕した後、大気中、500℃で2時間焼成した。得られた混合物に粉末X線回折(XRD)測定を行った。結果を図6に示す。
【0064】
次いで、焼成後の混合物とフェノール樹脂とを混合し、樹脂混合物を調製した(図2のステップS230)。混合物にフェノール樹脂を添加し、均一になるように混合し、成形した。成形には、油圧ポンプおよび打錠機を用い、打錠圧力5~30MPaで直径15mm、厚さ1~5mmのペレット型樹脂混合物とした。
【0065】
次いで、ペレット型樹脂混合物を炭化した(図2のステップS240)。詳細には、窒素雰囲気下にて、2℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、1時間保持し、1℃/分の昇温速度で700℃まで昇温し、2時間保持した後、2℃/分の冷却速度で室温まで冷却させた。このようにして得られた試料を例1の試料と称する。
【0066】
例1の試料の外観を観察し、粉末X線回折測定を行った。例1の試料の微細組織を、走査型電子顕微鏡(SEM、JEL-7000F、日本電子)を用い観察した。例1の試料の比表面積および細孔分布を、窒素ガス装置(比表面積・細孔分布測定装置、ASAP2020、Micromeritics社製)を用いて測定した。例1の試料のメタネーション触媒特性を、固定床流通式触媒評価装置を用いて評価した。これらの結果を図7図8および表2に示す。
【0067】
[例2~例16]
例2~例16では、例1と同様に、表1に示す設計組成となるように、表1に示す割合で原料を適宜混合し、表1に示す炭化条件で炭化した。このようにして得られた試料を、それぞれ、例2~例16の試料と称する。例2~例16の試料について、例1と同様に、XRD、SEM観察、比表面積、細孔分布、メタネーション触媒特性評価を実施した。例3の試料について、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)(Agilent5800,アジレント・テクノロジー社)によりNi、YおよびZrの含有量を、不活性ガス融解-赤外線吸収法(装置型式TC-436AR,LECO社)によりOの含有量を分析した。さらにこれらの結果からCの含有量を算出した。これらの結果を図9図15および表2~表3に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[例17]
例17は、図3に示す製造工程を用いて二酸化炭素のメタン化触媒を製造した。
【0070】
例17では、例1と同じ設計組成10wt%Ni-70wt%Y-20wt%Cとなるように、原料として、Y、および、フェノール樹脂を、それぞれ、70wt%、および、35.7wt%用いた。
【0071】
REの酸化物としてYと、フェノール樹脂との樹脂混合物を調製した(図3のステップS310)。具体的には、Yにフェノール樹脂を添加し、均一になるように混合し、油圧ポンプおよび打錠機を用い、打錠圧力5~30MPaで直径15mm、厚さ1~5mmのペレット型樹脂混合物とした。
【0072】
次いで、ペレット型樹脂混合物を炭化した(図3のステップS320)。詳細には、窒素雰囲気下にて、3℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、1時間保持し、3℃/分の昇温速度で700℃まで昇温し、2時間保持した後、3℃/分の冷却速度で室温まで冷却させた。これにより、Y含有炭素多孔体が得られた。
【0073】
含有炭素多孔体を硝酸ニッケル溶液(濃度50wt%)に含浸させた(図3のステップS330)。次いで、ニッケル塩が含浸したY含有炭素多孔体を酸化雰囲気中で焼成した(図3のステップS340)。ニッケル塩含浸Y含有炭素多孔体を、90℃で12時間乾燥させた後、大気中、500℃で4時間焼成した。このようにして得られた試料を例17の試料と称する。
【0074】
例17の試料について、例1と同様に、XRD、SEM観察、比表面積、細孔分布、メタネーション触媒特性評価を実施した。これらの結果を表2および表3に示す。
【0075】
以上の結果をまとめて説明する。
【0076】
図6は、例1において、図2のステップS220で得られた混合物のXRDパターンを示す図である。
図6によれば、図2のステップS220によって、NiO相とY相とZrO相とを含有する混合物が得られたことが分かった。このことは、図2のステップS220ならびに図3のステップS340における焼成によって、ニッケル塩が酸化ニッケルに酸化されることを示す。
【0077】
図7は、例1の試料の外観を示す図である。
【0078】
図7に示すように、炭化後も例1の試料は、崩れることなく形状を維持した。図示しないが、例2~例15および例17の試料は、いずれも、同様の形態であった。一方、炭素を含有しない例16の試料は、焼成後、崩れやすく、もろかった。
【0079】
図8は、例1の試料のXRDパターンを示す図である。
【0080】
図8(A)は、図6に示すXRDパターンであり、図8(B)は、例1の試料のXRDパターンである。図8(B)によれば、図8(A)と同じXRDパターンであり、炭化処理後もNiO相とY相とZrO相とは反応することなく存在することを確認した。なお、炭化によってフェノール樹脂から生成した炭素は、アモルファスであり、X線回折では検出できないため、組成分析を行った。図示しないが、例2~例6、例11~例14および例17の試料も、NiO相、Y相および/またはYb相、ならびに、ZrO相またはAl相を含有することを確認した。
【0081】
例3の試料の組成分析の結果を示す。
Ni:9.48(質量%)
Y:27.4(質量%)
Zr:22.4(質量%)
O:20.0(質量%)
C:20.72(質量%)(C%=100-Ni%-Y%-Zr%-O%で推算)
これらから、例3の試料全体を100質量%とし、YとZrをYとYSZ換算したところ、
Ni:9.48質量%
:34.8質量%
YSZ:31.97質量%
C:23.75質量%(C%=100-Ni%-Y%-YSZ%で推算)
と見積もられ、実質的に設計組成と同じであることが確認された。このことから、本発明の方法によれば、設計組成を満たす試料が得られることが示された。
【0082】
図9は、例3の試料のSEM像を示す図である。
図10は、例11の試料のSEM像を示す図である。
図11は、例12の試料のSEM像を示す図である。
図12は、例13の試料のSEM像を示す図である。
図13は、例15の試料のSEM像を示す図である。
【0083】
図9図13には水素還元処理前の試料を種々の倍率で観察した際のSEM像が示される。図9(A)~図12(A)によれば、例3、例11~例13の試料は、直径50nmより大きいマクロ孔を有した多孔質材料であることが分かった。また、図9(C)、図10(B)~図12(B)によれば、例3、例11~例13の試料は、直径数十nmの金属酸化物粒子と炭素とが均一に混合した微細組織を有した。図示しないが、例1、例2、例4~例6、例11、例14および例17の試料も、同様のSEM像を示した。
【0084】
一方、図13によれば、例15の試料も、マクロ孔を有する多孔質材料であるが、炭素基体には直径数百nmの金属酸化物粒子(酸化ニッケル)が存在した。
【0085】
図14は、例2の試料の窒素ガス吸脱着等温線を示す図である。
図15は、例2の試料の細孔分布を示す図である。
【0086】
図14および図15には水素還元処理前の試料の窒素吸着試験の結果が示される。図15は、図14の等温線からBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出したメソ細孔分布が示される。
【0087】
図14によれば、例2の試料はヒステリシスを示す等温線を示し、その等温線は、IUPACのタイプI型とタイプIV型との混合型に分類された。このこととSEM観察とから、例2の試料は、直径2nm以下のマイクロ孔、直径2nmより大きく50nm未満のメソ孔、および、直径50nm以上のマクロ孔を有する多孔質材料であることが示された。図示しないが、例1、例3~例6、例11~例14および例17の試料も、同様の窒素ガス吸脱着等温線を示した。
【0088】
例2の試料のBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で算出した比表面積、tプロット法で算出したマイクロ孔表面積の結果を表2に示す。
【0089】
図15によれば、例2の試料には、細孔径が4nmおよび18nmのメソ孔が存在していることが分かった。なお、BJH法による平均細孔径は6.65nmであった。
【0090】
【表2】
【0091】
表2には、BET比表面積とt-plotマイクロ孔表面積とから算出したマイクロ孔の割合(t-plotマイクロ孔表面積/BET比表面積×100)、t-plot外表面積の値も併せて示す。t-plotマイクロポア面積およびt-plot外表面積の合計は、BET比表面積にほぼ等しくなる。
【0092】
表2によれば、例1~例6、例11~例14および例17の試料は、いずれも、10m/g以上300m/g以下の範囲のBET法比表面積、2m/g以上240m/g以下の範囲のt-plotマイクロ孔表面積、5nm以上16nm以下の範囲のBJH法平均細孔径を有する多孔質材料であることが示された。
【0093】
【表3】
【0094】
表3には、例1~例17の試料のメタネーション触媒特性の評価結果が示される。例1~例17の試料は、メタネーション触媒特性評価の前に、表3に示す還元条件で還元処理された。この還元により、例1~例17の試料中の酸化ニッケルは還元され、ニッケル金属となった。また、比較のために、商用のRu担持TiO触媒(Ru/TiO)の評価結果も併せて示す。
【0095】
メタネーション触媒特性は、次のようにして評価された。例1~例17の試料(0.5g)が配置された加熱可能な内径8mmの反応管(例えば、図5の反応容器510)には供給ガス(CO:6mL/分、H:24mL/分、N:30mL/分)が供給できるようになっており、反応管の後段には生成ガス分析用のオンラインガスクロマトグラフィ(TCD検出器、GLScience)およびガス流量測定用の乾式流量計(Defender 530+、Mesa Labs社製)を設け、生成ガス分析が行われた。メタネーション触媒特性の評価は、反応温度240℃および250℃で行った。
【0096】
表3によれば、例1~例6、例11~例14および例17の試料は、いずれも、300℃以下の温度において、CO転化率が50%を超え、CH選択率がほぼ100%であり、二酸化炭素(CO)のメタン化触媒として機能することが示された。
【0097】
次に、例2、例15および例16の結果に着目すると、有効成分として、酸化ニッケル/ニッケル金属と、REの酸化物(ただし、REは、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種の元素である)と、炭素とを含有する多孔質材料が、300℃以下の低温において優れた二酸化炭素のメタン化触媒として機能することが示された。
【0098】
次に、例1、例2、例4および例5の結果に着目すると、有効成分として、酸化アルミニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシュウムおよび酸化シリコンからなる群から少なくとも1種選択される酸化物をさらに含有する多孔質材料が、300℃以下の低温において優れた二酸化炭素のメタン化触媒として機能することが示された。これにより、REの酸化物の一部を上述の酸化物に置換できるので、触媒のコストの低減に有利である。
【0099】
次に、例3および例6~例9の結果に着目すると、REの酸化物は、好ましくは、イットリウムの酸化物(Y)およびイッテルビウムの酸化物(Yb)であることが示された。
【0100】
次に、例2および例11~例12の結果に着目すると、炭素の量が同じ場合、酸化ニッケル/ニッケル金属の量が多いほど、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性が向上することが示された。
【0101】
次に、例11および例13の結果に着目すると、酸化ニッケルの量が同じ場合、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性は、炭素の含有量に依存しないことが分かった。このことから、炭素含有量の割合を増大し、触媒のコストを低減できるので、有利である。
【0102】
また、例2および例17の結果に着目すると、例2の試料と例17の試料の細孔特性は異なるものの、いずれも、300℃以下の低温において優れたメタネーション触媒活性を示した。このことから、図1を参照して説明した本発明の触媒の製造には、図2に示す製造方法および図3に示す製造方法のいずれも有効であることが示された。特に、例17の試料の還元条件に着目すると、還元温度が低いほど、300℃以下の低温におけるメタネーション触媒活性が向上することが示された。
【0103】
商用のRu/TiOの結果に着目すると、還元温度が430℃において優れたメタネーション触媒活性を示すが、還元温度が600℃においてメタネーション触媒活性の著しい低下を示した。一方、例1~例6、例11~例14および例17の結果によれば、還元温度が600℃においても優れたメタネーション触媒活性を示しており、本発明の触媒は優れた耐熱性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の二酸化炭素のメタン化触媒は、Ru等の貴金属を使用することなく、300℃以下の低温でメタネーション触媒活性に優れるため、カーボンニュートラルの実現に一層貢献する。
【符号の説明】
【0105】
100 メタン化触媒
110 多孔質材料
120 マイクロ孔
130 メソ孔
140 マクロ孔
500 メタン製造装置
510 反応容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15