(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025145844
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】試料の選別採取配置方法および採取配置装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20250926BHJP
C12M 1/26 20060101ALN20250926BHJP
【FI】
G01N1/04 X
G01N1/04 H
C12M1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046300
(22)【出願日】2024-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 佳也
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD12
2G052BA15
2G052CA04
2G052CA16
2G052CA45
2G052EC08
2G052EC22
2G052GA32
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC03
4B029GA03
4B029GB05
4B029GB06
4B029HA02
4B029HA04
4B029HA09
(57)【要約】
【課題】より短時間で、高い安定性および高い位置精度で選別および採取することが可能な、試料の選別採取配置方法および採取配置装置を提供する。
【解決手段】フィルム2上のゲルシート4の一部を切り取ることで、採取ピン141の内部にゲルシート部分4Eが採取される。配置ピン142の押圧によりゲルシート部分4Eが採取ピン141内から押し出され、採取ピン141の外部の所定位置に配置される。ゲルシート部分4Eを採取ピン141で穿刺する採取位置を観察光学系により選定する第1選定工程と、ゲルシート部分4Eを配置する所定位置を観察光学系により選定する第2選定工程とをさらに備える。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取すべき対象物を支持するゲルをフィルム上にシート状に形成し、ゲルシートを形成する工程と、
前記フィルム上の前記ゲルシートを中空形状を有する採取ピンで穿刺し、前記ゲルシートの一部を切り取ることで、前記採取ピンの内部にゲルシート部分を採取する工程と、
前記採取ピンの内部の前記ゲルシート部分を配置ピンの押圧により前記採取ピンの内部から押し出して前記採取ピンの外部の所定位置に配置する工程とを備え、
前記ゲルシートを前記採取ピンで穿刺する採取位置を観察光学系により選定する第1選定工程、および前記ゲルシート部分を配置する前記所定位置を前記観察光学系により選定する第2選定工程をさらに備える、試料の選別採取配置方法。
【請求項2】
前記第2選定工程にて選定される前記所定位置は、前記対象物を収納可能なウェルが複数並ぶウェルプレートに含まれる1つの前記ウェル内の位置である、請求項1に記載の試料の選別採取配置方法。
【請求項3】
前記第1選定工程および前記第2選定工程の後、前記採取する工程の前に、前記採取位置と前記所定位置とが重なるように前記ゲルシートを設置する第1採取直前工程をさらに備える、請求項2に記載の試料の選別採取配置方法。
【請求項4】
前記第1選定工程においては、前記ゲルシートの複数の部分の位置が観察および記憶され、
前記第2選定工程においては、前記ウェルプレートに含まれる複数の前記ウェルの位置が観察および記憶され、
前記第1採取直前工程は、前記第1選定工程および前記第2選定工程において記憶された前記ゲルシートの複数の部分および前記ウェルの位置に基づき処理がなされる、請求項3に記載の試料の選別採取配置方法。
【請求項5】
前記第1選定工程および前記第2選定工程の後、前記採取する工程の前に、前記採取ピンを前記採取位置の真上に配置する第2採取直前工程と、
前記採取する工程の後、前記所定位置に配置する工程の前に、前記採取ピンが前記採取位置の真上から前記所定位置の真上まで移動する工程とをさらに備え、
前記第2採取直前工程および前記移動する工程の時点において、前記採取位置と前記所定位置とは互いに重なる位置以外の位置に配置されている、請求項2に記載の試料の選別採取配置方法。
【請求項6】
前記所定位置に配置する工程の後、前記所定位置に前記ゲルシート部分が配置されていることを前記観察光学系により観察する工程をさらに備える、請求項1に記載の試料の選別採取配置方法。
【請求項7】
前記配置ピンは中実形状を有する、請求項1に記載の試料の選別採取配置方法。
【請求項8】
処理対象材を切り取り採取可能な、中空形状を有する採取ピンと、
前記採取ピンの内部に挿入可能であり、前記採取ピンの押圧により切り取られた前記処理対象材に前記採取ピン内で接触し、前記処理対象材を押圧することで、前記処理対象材を前記採取ピン外に配置する配置ピンと、
前記採取ピンが固定された固定用ホルダとを備え、
前記処理対象材は、採取すべき対象物を支持するゲルがシート状に形成されたゲルシートであり、
前記採取ピンにより切り取られる前記処理対象材を保持する保持台と、
前記処理対象材を前記採取ピンで穿刺する採取位置、および前記穿刺により切り取られた前記処理対象材の部分を配置する所定位置を選定する観察光学系とをさらに備える、採取配置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の選別採取配置方法および採取配置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、目的の特徴を有する細胞および細胞集団を他から分離する技術が急速に発展している。目的の細胞を分離する技術として、限界希釈、セルソーター、マイクロ流体デバイス、コロニーピックアップなどの細胞の取捨選択方法が注目されている。
【0003】
さらに、分離した少数の細胞を操作する技術として、微量の液滴を扱う印刷技術が注目されている。印刷技術には、インクジェット方式、ディスペンサー方式がある。
【0004】
しかし、任意の細胞を1細胞単位で、つまり極めて微量だけ採取するためには、より微量を高精度に採取する技術が必要である。特許第6640238号公報(特許文献1)では、中空上の採取針を用いて生体試料が切断採取される。採取針の内部に液体などが注入されることで、採取針内の採取された試料が採取針から排出される。また特開2022-90524号公報(特許文献2)には、試料容器内の液状の試料から細胞を吸引するための細胞採取手法について開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6640238号公報
【特許文献2】特開2022-90524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、採取針の内部に注入される液体により、切断された採取針内の試料の崩れおよび散逸が起こる。また採取針の切断により、切断される試料に傷害が起こる可能性がある。
【0007】
特許文献2では、細胞を採取するために吸引部材が水平方向の移動を繰り返す動作をする。このため細胞を採取する作業に要するタクトタイムが長くなり、多量のサンプルの移動のスループットが低下する。また特許文献2にて、細胞は液滴内に存在する。このため採取前に選別対象である細胞などの位置座標を決定していても、装置の駆動時の振動等に起因して細胞などの位置がずれ、正確に採取できない可能性がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものである。本発明の目的は、より短時間で、高い安定性および高い位置精度で選別および採取することが可能な、試料の選別採取配置方法および採取配置装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に従った試料の選別採取配置方法は、採取すべき対象物を支持するゲルをフィルム上にシート状に形成し、ゲルシートを形成する。フィルム上のゲルシートを中空形状を有する採取ピンで穿刺し、ゲルシートの一部を切り取ることで、採取ピンの内部にゲルシート部分を採取する。採取ピンの内部のゲルシート部分を配置ピンの押圧により採取ピンの内部から押し出して採取ピンの外部の所定位置に配置する。ゲルシートを採取ピンで穿刺する採取位置を観察光学系により選定する第1選定工程、およびゲルシート部分を配置する所定位置を前記観察光学系により選定する第2選定工程とをさらに備える。
【0010】
本開示に従った採取配置装置は、採取ピンと、配置ピンと、固定用ホルダとを備える。採取ピンは、処理対象材を切り取り採取可能であり、中空形状を有する。配置ピンは、採取ピンの内部に挿入可能であり、採取ピンの押圧により切り取られた処理対象材に採取ピン内で接触し、処理対象材を押圧することで、処理対象材を採取ピン外に配置する。固定用ホルダには、採取ピンが固定されている。処理対象材は、採取すべき対象物を支持するゲルがシート状に形成されたゲルシートである。採取配置装置は、保持台と、観察光学系とをさらに備える。保持台は、採取ピンにより切り取られる処理対象材を保持する。観察光学系は、処理対象材を採取ピンで穿刺する採取位置、および穿刺により切り取られた処理対象材の部分を配置する所定位置を選定する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ゲルシートが穿刺される採取位置を選定する第1選定工程と、採取された試料が配置される所定位置を選定する第2選定工程との双方を備える。これにより、より短時間で、高い安定性および高い位置精度で選別および採取することが可能な、試料の選別採取配置方法および採取配置装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る採取配置装置の内部の概略正面図である。
【
図2】
図1の採取配置部材を構成する採取配置機構をY方向負側から見た正面図である。
【
図3】
図2の採取配置機構をX方向負側から見た側面図である。
【
図4】
図1の採取配置部材の全体をY方向負側から見た正面図である。
【
図5】
図4の採取配置部材をX方向負側から見た側面図である。
【
図6】
図4の採取配置部材の、処理対象材を切り取り採取する工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
【
図7】
図6の動作をX方向負側から見た側面図である。
【
図8】
図2の採取配置機構の、処理対象材を放出し配置する第1工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
【
図9】
図8に続く第2工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
【
図10】
図9に続く第3工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
【
図12】
図10に続く第4工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
【
図13】
図12に続く第5工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
【
図14】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第1工程を示す概略断面図である。
【
図15】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第2工程を示す概略断面図である。
【
図16】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第3工程を示す概略断面図である。
【
図17】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第4工程を示す概略断面図である。
【
図18】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第5工程を示す概略断面図である。
【
図19】
図18に含まれるプレートおよびその上のゲルプレートを示す概略拡大斜視図である。
【
図20】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第6工程を示す概略断面図である。
【
図21】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第7工程を示す概略断面図である。
【
図22】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第8工程を示す概略断面図である。
【
図23】
図22の直後における採取ピンがゲルプレートを切り取る部分の概略拡大断面図である。
【
図24】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第9工程を示す概略拡大断面図である。
【
図25】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第10工程を示す概略拡大断面図である。
【
図26】実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第11工程を示す概略拡大断面図である。
【
図27】実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第5工程を示す概略断面図である。
【
図28】実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第7工程を示す概略断面図である。
【
図29】実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第8工程を示す概略拡大断面図である。
【
図30】実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第9工程を示す概略拡大断面図である。
【
図31】実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第10工程を示す概略拡大断面図である。
【
図32】実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第11工程を示す概略拡大断面図である。
【
図33】実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第12工程を示す概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態について説明する。
【0014】
(はじめに)
最初に本実施の形態に係る、試料の選別採取配置方法について簡単に説明する。本実施の形態では、
図17に示すように、採取すべき試料4Bを支持するゲル4Dがフィルム2上にシート状に形成され、ゲルシート4が形成される。
図22および
図23に示すように、フィルム2上のゲルシート4を中空形状を有する採取ピン141で穿刺し、ゲルシート4の一部であるゲルシート4の一部を切り取ることで、採取ピン141の内部にゲルシート部分4Eを採取する。
図24に示すように、採取ピン141の内部のゲルシート部分4Eを配置ピン142の押圧により採取ピン141の内部から押し出して採取ピン141の外部の所定位置に配置する。
図18および
図20に示すように、ゲルシート4を採取ピン141で穿刺する採取位置を観察光学系106により選定する第1選定工程と、ゲルシート部分4Eを配置する所定位置を観察光学系により選定する第2選定工程とをさらに備える。
【0015】
(実施の形態1)
(採取配置装置)
図1は、本実施の形態に係る採取配置装置の内部の概略正面図である。なお説明の便宜上、X方向、Y方向およびZ方向が導入される。
図1に示されるように、採取配置装置100は、後述する試料サンプルとしてのゲルプレート6から試料を採取するための装置である。採取配置装置100は、処理室と、当該処理室の内部に配置された試料用XYステージ101と、容器用XYステージ102と、採取配置部材104とを主に備えている。なお
図1の採取配置装置100は採取配置部材104が1つのみであるが、これを複数含んでもよい。
【0016】
試料用XYステージ101は、水平方向、すなわちXY方向(X方向およびY方向)に沿って移動可能である。具体的には、たとえば試料用XYステージ101の下面にガイド部が設置されている。当該ガイド部は、処理室の底面に設置されたガイドレールに摺動可能に接続されている。試料用XYステージ101(保持台)の上部表面上は、ゲルプレート6を固定可能な搭載面となっている。試料用XYステージ101の少なくとも一部には、これを貫通するステージ貫通部101Aが形成されている。ゲルプレート6はステージ貫通部101Aと重なる位置に固定されることが好ましい。
【0017】
試料用XYステージ101の下には、容器用XYステージ102が配置されている。容器用XYステージ102は、水平方向、すなわちXY方向(X方向およびY方向)に沿って移動可能である。具体的には、たとえば容器用XYステージ102の下面にガイド部が設置されている。当該ガイド部は、処理室の底面に設置されたガイドレールに摺動可能に接続されている。容器用XYステージ102は、ゲルプレート6の一部を収納可能な容器9Aが形成されたプレート8を固定する。これにより
図1では、Z方向の上側から下側へ、採取配置部材104、ゲルプレート6、容器9Aが形成されたプレート8の順に配置される。
【0018】
採取配置部材104および観察光学系106は、Z方向に移動可能な部材であるたとえばZ軸テーブルに接続されている。つまり採取配置部材104および観察光学系106は、試料採取装置100内において、Z方向に移動可能に保持されている。観察光学系106はゲルプレート6に含まれる採取すべき試料の位置などを観察し測定する。観察光学系106には、観察した画像を電気信号に変換するCCDカメラが設置されていてもよい。観察光学系106によるゲルプレート6などの観察は、可視光によりなされてもよい。しかしゲルプレート6などの観察は、可視光に限らず、赤外線、X線、超音波などによりなされてもよく、ゲルプレート6の材質によっては磁気を用いてゲルプレート6の観察が可能である。可視光以外の手段により観察されるゲルプレート6は、透明または半透明である必要はなく、不透明であってもよい。
【0019】
図示されないが、処理室の外部には、制御部が設置されている。制御部は、モニタ、制御用コンピュータおよび操作パネルを有している。制御部においては、制御用コンピュータの記憶装置に、操作パネルからの採取のための針の動作速度の指令値が入力および保管される。たとえば試料の採取動作時にはその速度の指令値が記憶装置から読みだされ、採取配置部材104の制御プログラムに送られる。採取配置部材104の制御プログラムは、当該指令値に基づいて、採取配置部材104に含まれるモータの回転速度を決定し、所定の速度で採取ピン141および配置ピン142を上下動させる。これにより、採取配置部材104の採取動作等がなされる。制御用コンピュータがより上流側の制御システムと通信している場合には、上記の指令値は当該制御システムから受信されてもよい。また、試料採取されるゲルシートの材質に応じたパラメータが記憶装置に保管され、指定されたゲルシートの材質、厚み、採取方法に応じて採取動作の速度の指令値が算出されてもよい。
【0020】
(採取配置機構の構成)
図2は、
図1の採取配置部材を構成する採取配置機構をY方向負側から見た正面図である。
図3は、
図2の採取配置機構をX方向負側から見た側面図である。
図2および
図3に示されるように、
図1の採取配置部材104は、その一部である採取配置機構104Aを含む。採取配置機構104Aは、採取ピン141と、配置ピン142と、固定用ホルダ143とを主に備えている。採取ピン141は、試料などを含む処理対象材を切り取り採取するためのピン(針状の部材)である。配置ピン142は、採取ピン141にて採取および把持された試料などを放出し、所望の位置に配置するためのピンである。採取ピン141および配置ピン142は、たとえばステンレスなどの金属またはプラスチックにより形成されている。
【0021】
採取ピン141は、採取ピン本体141Aと、採取ピンホルダ141Bとを有している。採取ピン本体141Aはピン状(パイプ状)であり、延在方向(
図2,
図3の上下方向:Z方向)に交差する断面の中央に中空形状を有する筒状である。採取ピンホルダ141Bは、採取ピン本体141Aの上側の部分の外周面上に差し込まれている。したがって採取ピンホルダ141Bも
図2、
図3のZ方向に交差する断面の中央に中空形状を有する。採取ピンホルダ141Bは、採取ピン本体141Aの外周面上に、圧入により固定される。あるいは採取ピンホルダ141Bは、採取ピン本体141Aの外周面上に、接着剤141Cにより接着される。採取ピンホルダ141Bは、
図2、
図3に示すように、たとえば最上面はXY平面に沿うように配置されるが、最下面はXY平面に対して傾斜し、外周側が内周側よりもZ方向の寸法が小さくなる態様であってもよい。以上により、採取ピン141は、全体として中空形状を有している。
【0022】
配置ピン142は、配置ピン本体142Aと、配置ピンホルダ142Bとを有している。配置ピン本体142AはZ方向に延在するピン状である。配置ピン本体142Aはたとえばその内部が中実であってもよい。ただし配置ピン本体142Aは少なくともZ方向の最下面が中央などに孔部を有さないよう塞がっていればよく、その内部については空洞を有してもよい。配置ピンホルダ142Bは配置ピン本体142AよりもX方向(およびY方向)に沿う寸法が大きい。配置ピンホルダ142Bは配置ピン本体142Aを保持する。たとえば配置ピンホルダ142Bの下面は配置ピン本体142Aの上面と接続され、両者が一体になってもよい。
【0023】
配置ピン本体142Aは採取ピン本体141Aの中空形状の部分よりも断面の寸法が小さい。このため配置ピン本体142Aは採取ピン本体141Aの内部に挿入可能である。一方、配置ピンホルダ142Bは採取ピン本体141Aの中空形状の部分よりも断面の寸法が大きい。このため配置ピンホルダ142Bは採取ピン本体141Aの内部に挿入可能できない。
【0024】
採取ピン本体141Aは、下降により処理対象材を押圧し、処理対象材の一部を切り取り、切り取られた部分を筒状の中空形状の部分の内部に収納可能である。なお処理対象材は、採取すべき対象物である試料4Bを支持するゲル4Dがシート状に形成されたゲルシート4である(後述の
図16参照)。その後、配置ピン本体142Aが採取ピン本体141A内を移動する。配置ピン本体142Aは、採取ピン141内で処理対象材に接触し、処理対象材を押圧する。これにより配置ピン本体142Aは、採取ピン本体141A内に収納された処理対象材を、採取ピン141の外部に押し出す。採取ピン本体141Aの中空部分内を、配置ピン本体142Aが、上下方向に移動することができる。つまり配置ピン本体142Aは採取ピン本体141Aの内部を挿通する。配置ピン本体142Aの上下方向の移動は後述する第1駆動部144によりなされる。これにより、当該切り取られた処理対象材を所望の位置に配置可能である。
【0025】
配置ピンホルダ142Bの内部のうち配置ピン本体142Aに隣接する領域、つまり配置ピンホルダ142B内のうち最も下側の領域には、バネ142Cが設置されている。バネ142Cは、配置ピンホルダ142Bを配置ピン本体142Aの最上部と接続している。バネ142Cは、配置ピン本体142Aが基板などの処理対象材に衝突した際に配置ピンホルダ142Bに加わるZ方向の力を吸収する。配置ピン142はバネ142Cを有さなくてもよい。配置ピン142がバネ142Cを有さない場合、衝突時の力の吸収はできなくなる。しかし配置ピン142がバネ142Cを有さない場合、配置ピン142の降下位置の厳密な制御により衝突の影響をなくすことができる。
【0026】
固定用ホルダ143は、採取ピン141を保持可能である。固定用ホルダ143は、
図2での採取ピン141の上側であり配置ピン142の背面側に配置される。固定用ホルダ143はたとえば板状(直方体状)を有するがこれに限られない。採取ピン141は固定用ホルダ143に固定されている。具体的には、採取ピンホルダ141Bの最上面と固定用ホルダ143の最下面とは固定部FXDにて互いに接触および固定されている。固定部FXDでは、たとえば採取ピンホルダ141Bの固定部FXD付近にねじ止めされたステンレスねじと、固定用ホルダ143の固定部FXD付近に埋め込まれた磁石が有する磁力により、着脱可能に固定されてもよい。あるいは固定部FXDでは、採取ピンホルダ141Bにねじ止めされたステンレスねじが固定用ホルダ143との間でねじ止めされることにより、着脱可能に固定されてもよい。
【0027】
固定用ホルダ143の正面143f(Y方向負側の面)上において、配置ピンホルダ142BのZ方向上側には、第1駆動部144が設けられている。第1駆動部144は、第1モータ144Aと、円板部材144Bと、リンク部材144Cを含む。第1駆動部144は配置ピンホルダ固定部145に取り付けられている。
【0028】
配置ピンホルダ固定部145は、第1部分145aと、第2部分145bとを有する。第1部分145aは板状を有し、その背面側の主表面が固定用ホルダ143の正面143f上に接触し、正面143f上を摺動可能となるように設置される。第2部分145bは、第1部分145aの正面143fと接触する主表面と反対側の手前側の主表面上に、第1部分145aとほぼ直交するように設置される板状の部分である。固定用ホルダ143の正面143fには、配置ピンホルダ固定部145が摺動するためのたとえば溝が、Z方向に沿って延びるように形成されてもよい。
【0029】
リンク部材144Cは円板部材144Bの
図2での手前側に設置される。リンク部材144Cは上下方向すなわちZ方向に延在する長尺形状である。円板部材144Bの円板形状の背面側の主表面が固定用ホルダ143の正面143f上に接触している。円板部材144Bの円形状の中心部と重なる位置には第1モータ144Aが取り付けられる。第1モータ144Aの少なくとも一部は固定用ホルダ143内に配置されてもよい。円板部材144Bは第1モータ144Aによりその中心周りに回転可能である。リンク部材144Cの延在方向についての一方端である第1の端部が、円板部材144Bの外周の一部に固定されている。
【0030】
リンク部材144Cの延在方向(Z方向)について第1の端部と反対側の第2の端部(
図2における下側の端部)は、配置ピンホルダ固定部145の第1部分145aに接触するように、配置ピンホルダ固定部145に固定される。当該第2の端部は配置ピンホルダ固定部145の第2部分145bに接触可能とされてもよい。第1モータ144Aによる円板部材144Bの回転に伴いリンク部材144Cが上下方向に移動することで、第2の端部は配置ピン142を上下方向に移動させる。これについては後に詳述する。
【0031】
このように動作させるために、配置ピンホルダ固定部145は、第2の端部と配置ピン142(配置ピンホルダ142B)との間に備えられ、配置ピン142が固定されている。配置ピン142は、配置ピンホルダ固定部145の第1部分145aおよび第2部分145bの双方に接触するように固定される。配置ピン142(配置ピンホルダ142B)と配置ピンホルダ固定部145(第1部分145aおよび第2部分145b)とは、たとえば配置ピンホルダ142Bに埋め込まれたマグネットと第1部分145aに埋め込まれたマグネットとの磁力により着脱可能に固定されてもよい。あるいは両者はねじ止めにより着脱可能に固定されてもよい。
【0032】
(採取配置部材の全体の構成)
図4は、
図1の採取配置部材の全体をY方向負側から見た正面図である。
図5は、
図4の採取配置部材をX方向負側から見た側面図である。
図4および
図5に示されるように、採取配置部材104は、
図2および
図3の採取配置機構104Aにさらに、第2駆動部146を備える。第2駆動部146は、
図2および
図3の固定用ホルダ143の背面側に配置され、可動式ホルダ146Aを備える。可動式ホルダ146Aはたとえば板状(直方体状)を有し、内部に部材を収納する態様となっているがこれに限られない。可動式ホルダ146Aは固定用ホルダ143よりもZ方向の寸法が大きい。採取配置機構104Aは可動式ホルダ146Aに取り付けられている。
【0033】
第2駆動部146は、固定用ホルダ143を含む採取配置機構104AをZ方向に摺動させるスライド機構である。第2駆動部146は、可動式ホルダ146Aの他に、第2モータ146Bと、鉛直延在ネジ146Cと、ネジ連結部146Dとを含む。鉛直延在ネジ146Cは上下方向に延在し、外周に雄ネジが形成されている。鉛直延在ネジ146Cはたとえば直方体状の可動式ホルダ146A内に配置され、固定用ホルダ143よりもZ方向の寸法が大きい。鉛直延在ネジ146Cは、可動式ホルダ146Aの正面146fに形成されたZ方向に延びる溝に収納される態様であってもよい。可動式ホルダ146A内の、鉛直延在ネジ146Cの一方端(上側の端部)には第2モータ146Bが取り付けられている。ネジ連結部146Dは、鉛直延在ネジ146Cと固定用ホルダ143とを接続可能とすべく固定用ホルダ143の背面143b(正面143fと反対側の面)上に取り付けられている。ネジ連結部146Dは雌ネジが形成されており、この雌ネジが鉛直延在ネジ146Cの雄ネジと締結されている。
【0034】
鉛直延在ネジ146Cは、第2モータ146Bにより回転する。鉛直延在ネジ146Cは回転しても鉛直方向には移動しないが、鉛直延在ネジ146Cに締結されたネジ連結部146Dが鉛直方向に移動する。これにより、ネジ連結部146Dに取り付けられた固定用ホルダ143、採取ピン141を含む採取配置機構104Aの全体が鉛直方向に移動する。これについては後に詳述する。
【0035】
(採取工程)
図6は、
図4の採取配置部材の、処理対象材を切り取り採取する工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
図7は、
図6の動作をX方向負側から見た側面図である。
図6および
図7に示されるように、第2モータ146Bの回転運動が、ネジ連結部146Dの鉛直方向の運動に変換される。ネジ連結部146Dと、固定用ホルダ143の背面143bとは、ねじ止めにより固定されている。このためネジ連結部146Dの鉛直方向の移動により、固定用ホルダ143,採取ピン141を含む採取配置機構104Aの全体が鉛直方向に移動する。なお可動式ホルダ146Aのうち固定用ホルダ143の背面143bと対向する正面146fには、ネジ連結部146Dが摺動するためにZ方向に沿って延びるスライド溝146E(
図6参照)が形成されることが好ましい。スライド溝146Eは正面146fからY方向正側に向けて深さ方向となる(
図6の紙面手前側から奥側に向けて掘られる)ように形成される。この場合、ネジ連結部146Dは少なくともその一部がスライド溝146E内に嵌合されるように配置される。
【0036】
たとえば
図6および
図7の矢印M1に示す下方向に、採取配置機構104Aが移動する。これにより、採取ピン141(採取ピン本体141A)の先端部が、当該先端部の下側に配置された処理対象材を切り取る。切り取られた処理対象材の部分は、採取ピン本体141Aの中空部分内に収納される。
【0037】
(配置工程)
図8は、
図2の採取配置機構の、処理対象材を放出し配置する第1工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
図8に示されるように、リンク部材144Cの第1の端部が、ジョイント144D1により円板部材144Bの外周の一部に固定される。リンク部材144Cの第2の端部が、ジョイント144D2により配置ピンホルダ固定部145に固定される。
図8の初期状態では、リンク部材144Cの第1の端部が、円板部材144Bの最上部に配置される。このためリンク部材144Cに接続された配置ピンホルダ固定部145および配置ピン142は、Z方向の最上部に配置されている。配置ピン本体142Aの先端部(最下部)は、採取ピン本体141Aの最下部よりも上側に配置される。この状態にしておけば、採取ピン本体141Aの最下部が全体の最下部となるため、この部分を用いて処理対象材を切り取ることができる。
【0038】
図9は、
図8に続く第2工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
図9に示されるように、第1モータ144A(
図3参照)による円板部材144Bが、図中の矢印Rに示す方向に回転する。これにより、リンク部材144Cの第1の端部が、円板部材144BのZ方向の中央位置に配置される。このためリンク部材144CはZ方向に対してやや傾斜しながら、図中の矢印M2に示すように、これに接続された配置ピンホルダ固定部145および配置ピン142を下降させる。
【0039】
図10は、
図9に続く第3工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
図11は、
図10の動作をX方向負側から見た側面図である。
図10および
図11に示されるように、
図9の状態から円板部材144Bがさらに回転し、第1の端部が円板部材144Bの最下部に達する。このとき図中の矢印M2に示すように、配置ピン142は採取ピン141に対して相対的に最も下側に移動するため、当該下側への移動に伴い配置ピンホルダ固定部145および配置ピン142も最も下側に下降する。配置ピン142が下側へ移動する際に、配置ピン本体142Aの先端部は採取ピン本体141Aの中空部分内を貫通するように下側へ摺動する。これにより、配置ピン本体142Aの先端部が採取ピン本体141A内に収納された処理対象材の部分に接触、下方に押圧し、採取ピン本体141A外に放出することで、所望の位置に配置させる。
【0040】
図12は、
図10に続く第4工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
図13は、
図12に続く第5工程における動作を、Y方向負側から見た正面図である。
図12および
図13に示されるように、さらに円板部材144Bが回転すると、図中矢印M3に示すように、配置ピン142および配置ピンホルダ固定部145の移動方向は逆転し、
図13のように
図8の初期状態に戻る。
【0041】
なおジョイント144D1,144D2の代わりの変形例として、次のような態様が用いられてもよい。たとえば配置ピンホルダ固定部145とリンク部材144Cとを繋ぐバネがあり、リンク部材144Cが下方に押圧すれば配置ピンホルダ固定部145が下降するが、押圧しなければバネの付勢力により配置ピンホルダ固定部145が上昇する構成であってもよい。
【0042】
(対象物である試料の選別採取配置方法の詳細)
図14は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第1工程を示す概略断面図である。
図14に示されるように、たとえばスライドガラス1の上に、フィルム2が載置される。一例として、スライドガラス1は厚みが約1.2mmのガラス製の薄板材料である。フィルム2は針の穿刺により容易に破れるように、柔らかい材質により薄く形成される。一例として、フィルム2はたとえば厚みが約10μmのポリ塩化ビニリデンである。すなわちフィルム2としてはたとえば食品包装用の薄膜またはシリコーンゴムの薄膜が用いられることが好ましい。フィルム2の上にスペーサー3が設置される。スペーサー3はスライドガラス1を形成するガラス材料と同一のガラス材料により形成されてもよい。スペーサー3は厚みが100μm以上200μm以下であってもよい。たとえばスペーサー3の厚みは100μmであってもよく、200μmであってもよい。スペーサー3には、
図14の上側から見た(平面視した)時にその中央部に貫通孔3Aが形成されている。貫通孔3Aはスペーサー3を貫通する。このため貫通孔3A内は空洞であり、スペーサー3を構成するガラスなどの材料は配置されていない。貫通孔3Aの平面形状はたとえば矩形状など任意である。
【0043】
次に、ゲルとなることが可能な流動性のゲル原料4A内に、対象物としての試料4Bが1個以上含まれた、流動性を有する流動試料4Cが、貫通孔3A内に供給される。試料4Bは採取すべき細胞などである。
図14においては複数の試料4Bが1個ずつ互いに間隔をあけて配置されている。ゲル原料4Aは、たとえば1.5mLのゲル前駆体に、蛍光性を有する色素が加えられた、たとえば1.5%のアガロースゲルである。ただしゲル原料4Aはこれに限らず、たとえばコラーゲンであってもよいし、アルギン酸とコラーゲンとを混合させたものであってもよい。
【0044】
図15は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第2工程を示す概略断面図である。
図15に示されるように、スライドガラス5の下面に、フィルム2が貼り付けられる。スライドガラス5は、
図14のスライドガラス1と同一の材質およびサイズであってもよい。
図15の流動試料4Cの上側のフィルム2は、
図14のフィルム2と同一の材質およびサイズであってもよい。
【0045】
図16は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第3工程を示す概略断面図である。
図16に示されるように、フィルム2が貼り付けられたスライドガラス5が、スペーサー3上に載置される。スライドガラス5に貼り付けられたフィルム2は流動試料4Cおよびスペーサー3に接触する。スライドガラス5およびフィルム2は、流動試料4Cおよびスペーサー3を下方に押圧する。このため流動試料4Cおよびスペーサー3は、その下にあるフィルム2が貼られたスライドガラス1と、その上にあるフィルム2が貼られたスライドガラス5とに挟まれる。これにより、下側から上側へ、スライドガラス1、フィルム2、スペーサー3および流動試料4C、フィルム2、スライドガラス5の順に積層される。
【0046】
次に、たとえばゲル原料4Aが温度に依存して固化する材料である場合には、上記の積層された全体を4℃に冷却する。冷却により、流動試料4Cを構成するゲル原料4Aが固化されたゲル4Dとなり、貫通孔3A内には試料4Bがゲル4Dの内部に支持されたゲルシート4が形成される。ゲル4Dは固化されているが、針の穿刺により容易に破れる程度に柔らかい。なお試料4Bがゲル4Dに支持されるとは、たとえば試料4Bの周囲が固いゲル4Dに覆われ埋められた状態となるよう包埋され、試料4Bが流動しない状態とされることを意味する。
【0047】
図17は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第4工程を示す概略断面図である。
図17に示されるように、ゲルシート4が設けられた後、ゲルシート4の上側に載置されたフィルム2およびスライドガラス5が取り外され、スライドガラス1およびスペーサー3も併せて取り外される。これにより、フィルム2と、フィルム2上に載置されるゲルシート4とを備えたゲルプレート6が形成される。ゲルシート4は、採取すべき試料4Bが、固化されたゲル4Dに、たとえば包埋により支持されたものである。ゲル4Dはフィルム2上にシート状に形成されている。つまりゲルシート4はフィルム2上にシート状に形成され、採取すべき試料4Bを支持するゲル4Dを含んでいる。本実施の形態にて「ゲルシート4を設ける」とは、試料4Bをゲル4Dで包埋などにより支持することでゲルシート4を得る工程自体がフィルム2上でなされてもよいし、たとえば外部にてあらかじめ形成したゲルシート4がフィルム2上に後付けされてもよい。ゲルシート4を形成する方法としては、あらかじめ任意の平坦面上で作成することが考えられる。
【0048】
図18は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第5工程を示す概略断面図である。
図19は、
図18に含まれるプレートおよびその上のゲルプレートを示す概略拡大斜視図である。
図18および
図19に示されるように、ゲルプレート6を構成する部材として形成されたゲルシート4の一部であり、後に採取ピン本体141Aにより切り取られるべき部分の位置が選定される第1選定工程が行なわれる。ゲルシート4のうち採取ピン本体141Aにより切り取られた部分をゲルシート部分と呼ぶ。第1選定工程において、ゲルシート4のうち採取ピン141で穿刺する部分である採取位置は、観察光学系106により選定される。さらに言えば、採取位置は、処理対象材であるゲルシート4の一部であり、採取ピン141での穿刺により切り取られゲルシート部分4Eとなるべき部分である。つまりゲルシート4の切り取られるべき部分が、観察光学系106のZ方向の真下に配置される。観察光学系106と採取位置との間に間隔を有する。このように配置された状態で、観察光学系106によりゲルシート4が観察される。観察光学系106を用いて取得した画像により、ゲルシート4を切り取る際に採取ピン141を下降させるべき位置(採取位置)がわかる。言い換えれば上記の採取位置は、採取すべき目標の試料4Bの存在する位置である。これにより採取すべき試料4Bが選定される。
【0049】
第1選定工程において、採取配置装置100の容器用XYステージ102上に、プレート8が固定されてもよい。この場合、ゲルプレート6は、固定されたプレート8の上に載置されてもよい。
図18ではゲルプレート6はプレート8上に載置されるが、ゲルプレート6はプレート8とZ方向に間隔をあけて配置されてもよい。プレート8は、細胞培養用カルチャープレートである。プレート8には、回収部としての容器9Aが複数形成されている。複数の容器9Aはプレート8の上面がくぼんだ凹形状の部分である。
【0050】
複数の容器9Aは互いに間隔をあけて、たとえば
図19の奥行方向に8列、横方向に12列で合計96個形成されてもよい。容器9Aの平面形状はたとえば円形など任意である。
図18および
図19では、複数の容器9Aの少なくとも一部を塞ぐように、ゲルプレート6を構成するフィルム2がプレート8の上面に接している。
図18では、ゲルシート4の一部であり採取ピン141で切り取られるべき部分(採取位置)と、採取ピン141で切り取られた後のゲルシート部分が配置されるべきプレート8の一部分(所定位置)とが重なるように配置される。このようにするために、プレート8の一部(上側の領域)は
図1のステージ貫通部101A内に配置されてもよい。採取対象である試料4Bは、複数の容器9Aのうちいずれかの容器9Aの真上に配置されることが好ましい。
【0051】
ゲルプレート6は、その上方にたとえばシート固定部材21が載置されてもよい。シート固定部材21は、ゲルシート4を切り取る工程時にゲル4Dに上方から力が加わることに起因するゲルプレート6の位置ずれを抑制する。ゲルプレート6の位置ずれを抑制する手段として、シート固定部材21の代わりに粘着性のフィルムテープが用いられてもよい。
【0052】
培養容器としての容器9Aが形成されたプレート8は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択されるいずれかの材料により形成される。
【0053】
図20は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第6工程を示す概略断面図である。
図20に示されるように、後に切り取られるゲルシート部分が配置される予定の位置である所定位置が選定される。所定位置が選定される工程は、第2選定工程である。第1選定工程および第2選定工程は、ゲルシート4を形成する工程の後、ゲルシート部分を採取する工程の前になされる。
【0054】
ここで第2選定工程について具体的に説明する。
図18の第1選定工程にてプレート8上に設置されたゲルプレート6が、いったんプレート8上から退避される。
【0055】
図20では
図18のゲルプレート6がプレート8上から除去される。ただしゲルプレート6が試料用XYステージ101に固定され、プレート8が容器用XYステージ102に固定される場合は、試料用XYステージ101の駆動によりゲルプレート6がプレート8上から離れる。本実施の形態では上記のいずれであってもよい。いずれにせよ、ゲルプレート6の退避により、穿刺により切り取られた処理対象材の部分であるゲルシート部分が配置される予定の所定位置が観察光学系106の真下に露出する。これにより所定位置が観察光学系106により観察可能となる。観察光学系106を用いてプレート8の表面が観察される。これにより、試料4Bを含むゲルシート部分が設置されるべきプレート8の一部(所定位置)が選定される。第2選定工程での観察光学系106は、第1選定工程での観察光学系106と同じであってもよい。しかし第2選定工程での観察光学系106は、第1選定工程での観察光学系106と異なっていてもよい。つまり
図1の採取配置装置100は、観察光学系106を複数有してもよい。
【0056】
第2選定工程において選定される所定位置は、プレート8(ウェルプレート)の1つの容器9A(ウェル)内の一部の位置である。1つの容器9A内の位置は、容器9A内の表面の位置を意味する。言い換えれば、プレート8には対象物(試料4Bを含むゲルシート部分)を収納可能な容器9Aが複数(行列状に)並んでいる。所定位置は、プレート8に含まれる複数の容器9Aのうちの1つの容器9Aを構成する少なくとも一部の領域である。所定位置は、穿刺により切り取られた処理対象材(ゲルシート4)の部分を配置する。これによりプレート8の容器9A内に、切り出されたゲルシート部分を安定に配置できる。
【0057】
図21は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第7工程を示す概略断面図である。
図21に示されるように、第7工程では、第1選定工程および第2選定工程の後、実際の採取工程の前に、再度
図18の第5工程(第1選定工程)と同様に、ゲルプレート6がプレート8の上側に配置される。
【0058】
図18と同様に、採取対象である試料4Bは、複数の容器9Aのうちいずれかの容器9Aの真上に配置される。第7工程では、採取ピン141の真下に採取位置および所定位置の双方が来るように、ゲルシート4およびプレート8が移動される。言い換えれば、第7工程は第1採取直前工程であり、ゲルシート部分を採取する直前に、採取位置と所定位置とが重なるようにゲルシート4が設置される工程である。ここで採取位置と所定位置とが重なるとは、採取位置と所定位置とがZ方向から見た平面視において同じ位置になるよう重なることを意味する。ゲルシート4(ゲルプレート6)は試料用XYステージ101によりX方向およびY方向に移動してもよいが、プレート8上に載置されてもよい。プレート8は容器用XYステージ102により、X方向およびY方向に移動する。
【0059】
図18の第1選定工程では、ゲルシート4の互いに離れた複数の部分の位置が、観察光学系106により観察され、その座標がたとえば記憶装置に記憶される。観察および記憶されるのはゲルシート部分となるべき位置であってもよい。
図20の第2選定工程では、プレート8に含まれる容器9Aの互いに離れた複数の部分の位置が、観察光学系106により観察され、その座標がたとえば記憶装置に記憶される。観察および記憶されるのは1つの容器9A内の複数のそれぞれの位置であってもよい。観察および記憶されるのはプレート8に含まれる複数の容器9Aのそれぞれの位置であってもよい。第1採取直前工程では、第1選定工程および第2選定工程において記憶されたゲルシート4の複数の部分および容器9Aの位置に基づき処理がなされる。このため
図21の第1採取直前工程では、採取位置と所定位置とを重ねる際に、再度観察光学系106を用いて採取位置と所定位置との位置を観察および確認する必要がない。このため観察光学系106を用いて採取位置と所定位置との位置を再度観察および確認する場合に比べて、処理のタクトタイムを短縮できる。
図21の工程では、プレート8とゲルシート4とを同時にX方向およびY方向に移動させることで、採取位置と所定位置とが重ねられる。
【0060】
図22は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第8工程を示す概略断面図である。
図23は、
図22の直後における採取ピンがゲルプレートを切り取る部分の概略拡大断面図である。
図22および
図23に示されるように、形成されたゲルプレート6は、上方から下降する採取ピン141により穿刺される。穿刺時における採取ピン141の下降のメカニズムは上記(
図6~
図7)の通りである。
【0061】
図21の状態に対して採取ピン141を含む、採取配置部材104の全体が下降する。たとえば
図8のように配置ピン本体142Aが最上の位置に配置され、採取ピン本体141Aの最下部が配置ピン本体142Aの最下部よりも下側に配置された状態を保ちながら、ゲルプレート6のうち特にゲルシート4が、採取ピン本体141Aの下降により穿刺される。このとき、少なくとも採取ピン本体141Aの中空部分(採取ピン本体141Aの最下部から配置ピン本体142Aの最下部までの中空部分)の容積は、切り取られたゲルシート4の一部を収納可能とする十分な大きさが保たれることが好ましい。
【0062】
ゲルシート4が穿刺された部分は、採取ピン本体141Aの鋭利な先端部の通過により破損される。採取ピン本体141Aはゲルシート4を破りながらゲルシート4を貫通する。採取ピン本体141Aにより元のゲルシート4から分離するように切り取られたゲルシート4の一部は、ゲルシート部分4Eである。ゲルシート部分4Eは、ゲル4Dと、その内部に包埋された試料4Bとにより構成されることが好ましい。このようにすれば、試料4Bはゲル4Dに対して流動しない。切り取られたゲルシート部分4Eは採取ピン本体141A内に採取(収納)される。
【0063】
採取ピン本体141Aによりゲルシート部分4Eが切り取られた後、採取ピン本体141Aはゲルシート部分4Eを内部(中空部分)に保持しながらさらに下降する。これにより採取ピン本体141Aは、ゲルプレート6においてゲルシート4の真下に配置されるフィルム2の部分を貫通する。これによりフィルム2もゲルシート4と同様に破損される。採取ピン本体141Aは、その先端が容器9Aの底面に隣接する位置に達するまで下降する。
【0064】
容器9Aは凹形状である。このため、容器9A内には切り取られたゲルシート4の一部、すなわちゲルシート部分4Eが収納可能である。切り取られたゲルシート部分4Eは、切り取られた後、配置する前に、針(採取ピン本体141A)内に保持されたまま、容器9Aおよびフィルム2から引き抜かれ、ほかに用意された容器などに収納されてもよい。
【0065】
図24は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第9工程を示す概略拡大断面図である。
図24に示されるように、
図23の後に、およそ
図23に示す位置に採取ピン141を静止させた状態で、配置ピン142が図中矢印に示す方向に下降される。配置ピン142の特に配置ピン本体142Aは採取ピン本体141Aの内部の中空部分を挿通する。
図24は、たとえば上記の
図10および
図11に示す状態に対応する。下降した配置ピン本体142Aは、採取ピン本体141Aが採取し保持しているゲルシート部分4Eに接触し、これを下方に押圧する。これにより当該ゲルシート部分4Eは、採取ピン本体141Aの内部から押し出され、採取ピン141の外部の所定位置に配置される。具体的には、ゲルシート部分4Eは、容器9Aの内部(底面)の上に配置される。容器9Aの底面は高粘度溶液などが塗布されていない乾燥した表面であってもよい。
【0066】
採取ピン本体141Aがゲルプレート6を貫通するため、採取ピン本体141Aはゲルシート4とフィルム2との双方を突き破る。しかし
図23に示すように、中空形状部7C内にはゲルシート4のみが収納され、フィルム2は収納されないことが好ましい。この結果、
図24に示すように、ゲルシート部分4Eのみが容器9A内に回収され、容器9A内にはフィルム2は回収されないことが好ましい。
【0067】
図25は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第10工程を示す概略拡大断面図である。
図25に示されるように、ゲルシート部分4Eが容器9Aの底面上に配置された後、配置ピン本体142Aが再度上昇する。これは、たとえば上記の
図12および
図13に示す状態に対応する。これにより配置ピン142の全体が上昇する。その後、採取ピン141もゲルプレート6の上方まで上昇する。なお、配置ピン142と採取ピン141とを同時に上昇させてもよい。
【0068】
図26は、実施の形態1に係る試料の選別採取配置方法の第11工程を示す概略拡大断面図である。
図26に示されるように、ゲルシート部分4Eが所定位置に配置され、採取ピン141および配置ピン142が上昇した後、ゲルプレート6がX方向およびY方向に移動する。これによりゲルプレート6はプレート8上から取り除かれる。次に容器9A内のゲルシート部分4Eが配置された所定位置の真上に観察光学系106が配置される。逆に言えば、ゲルシート部分4Eの所定位置が観察光学系106のZ方向の真下に配置される。このように配置された状態で、観察光学系106により、所定位置にゲルシート部分4Eが配置されていることが観察される。このとき併せて、配置されているゲルシート部分4Eに所望の試料4Bが含まれることが観察されてもよい。
【0069】
(作用効果)
本開示に従った試料の選別採取配置方法においては、採取すべき対象物(試料4B)を支持するゲル4Dがフィルム2上にシート状に形成され、ゲルシート4が形成される。フィルム2上のゲルシート4を中空形状を有する採取ピン141で穿刺し、ゲルシート4の一部を切り取ることで、採取ピン141の内部にゲルシート部分4Eを採取する。採取ピン141の内部のゲルシート部分4Eを配置ピン142の押圧により採取ピン141の内部から押し出して採取ピン141の外部の所定位置に配置する。ゲルシート4を採取ピン141で穿刺する採取位置を観察光学系106により選定する第1選定工程、およびゲルシート部分4Eを配置する所定位置を観察光学系106により選定する第2選定工程をさらに備える。
【0070】
本実施の形態では対象物(試料4B)が固体であるゲル4Dに支持される。このため装置の駆動時に振動が起こったとしても試料4Bがゲルシート4に対して位置ずれしない。このため試料4Bを安定に選別および採取できる。
【0071】
配置ピン142がゲルシート部分4Eを押圧する。配置ピン142は中実形状を有することが好ましい。これにより、ゲルシート部分4Eが採取ピン141内から押し出され、その外側に放出される。このため液体の圧力などを用いてゲルシート部分4Eを採取ピン141から排出する場合に懸念される、試料4Bなどの対象物の崩れおよび散逸などの不具合を抑制できる。このため対象物の採取工程の安定性を向上でき、対象物の配置工程での位置精度、再現性を向上できる。
【0072】
ゲルシート4が採取ピンで穿刺されゲルシート部分4Eを切り取り採取ピン141内に採取した状態で、配置ピン142が採取ピン141内のゲルシート部分4Eを押圧することで所望の所定位置にゲルシート部分4Eを配置する。特に本実施の形態では、ゲルシート部分4Eを採取する工程とそれが所定位置に配置される工程との双方が、前者工程時と後者工程時との間の時におけるゲルシート4などのX方向およびY方向の移動を伴うことなくほぼ連続してなされる。このため本実施の形態では、たとえば試料4Bを含むゲルシート4などの部材が、採取する際に第1の方向に移動し、その後はゲルシート部分4Eを容器9A内に配置する際に第1の方向とは異なる第2の方向に移動するなど、水平方向の移動を繰り返す動作をする場合に比べて、処理に要する時間を削減することができる。このため、より短時間で所望の処理を行なうことができる。
【0073】
本実施の形態においては、次のようにされることがより好ましい。ゲルシート部分4Eとなるべき採取位置(を含むゲルプレート6)を位置制御する(移動させる)ための第1移動手段(試料用XYステージ101)を有する。プレート8を位置制御する(移動させる)ための第2移動手段(容器用XYステージ102)を有する。第1移動手段と第2移動手段とが同時に駆動可能な運動制御がなされることが好ましい。さらに上記の第1移動手段および第2移動手段と、採取ピン141および配置ピン142(採取配置機構104A)を位置制御するための第3移動手段(第2駆動部146)とがすべて同時に駆動可能な運動制御がなされることが好ましい。このようにすれば、(たとえばゲルプレート6が試料用XYステージ101に載置される場合に)ゲルプレート6とプレート8とのX方向およびY方向の移動に要するタクトタイムをいっそう低減できる。またこれらの移動と、採取配置機構104AのZ方向の移動とに要する時間の総和(タクトタイム)をいっそう低減できる。
【0074】
本実施の形態では第1選定工程を有する。つまり試料4Bを支持するゲル4Dの中から、切り取られ採取されるべき選別対象である試料4Bが観察により選択される。これにより、試料4Bの切断時に試料4Bに傷害を起こす可能性を低減できる。このため高い安定性および位置精度で対象物を選別および採取できる。また本実施の形態では第2選定工程を有する。つまり切り出されたゲルシート部分4Eの配置位置が観察により確認される。このため、切り出された試料4Bを含むゲルシート部分4Eを所望の位置からずれないように安定に配置できる。
【0075】
上記の本開示に従った試料の選別採取配置方法においては、第1選定工程および第2選定工程の後、ゲルシート部分4Eを採取する工程の前に、切り取られるべき採取位置と配置されるべき所定位置とが重なるようにゲルシート4が設置される第1採取直前工程をさらに備える。これによりゲルシート部分4Eを採取する工程とそれが所定位置に配置される工程との双方が、前者工程時と後者工程時との間の時におけるゲルシート4などのX方向およびY方向の移動を伴うことなくほぼ連続してなされる。このため本実施の形態では、たとえば試料4Bを採取するための採取ピン141などの部材が、採取する際に第1の方向に移動し、その後採取した試料4Bを設置する際に第1の方向とは異なる第2の方向に移動するなど、水平方向の移動を繰り返す動作をする場合に比べて、処理に要する時間を削減することができる。このため、より短時間で所望の処理を行なうことができる。
【0076】
上記の本開示に従った試料の選別採取配置方法においては、ゲルシート部分4Eを所定位置に配置する工程の後、所定位置にゲルシート部分4Eが配置されていることを前記観察光学系により観察する工程をさらに備える。このため、切り出された試料4Bを含むゲルシート部分4Eが所望の位置からずれないように安定に配置されていることを確認できる。
【0077】
本開示に従った採取配置装置100は、採取ピン141と、配置ピン142と、固定用ホルダ143とを備える。採取ピン141は処理対象材を切り取り採取可能であり、中空形状を有する。配置ピン142は採取ピン141の内部に挿入可能であり、採取ピン141の押圧により切り取られた処理対象材に採取ピン141内で接触し、処理対象材を押圧することで、処理対象材を採取ピン141外に配置する。固定用ホルダ143には採取ピン141が固定されている。処理対象材は、採取すべき対象物である試料4Bを支持するゲル4Dがシート状に形成されたゲルシート4である。採取配置装置100は、保持台(試料用XYステージ101)と、観察光学系106とをさらに備える。保持台(試料用XYステージ101)は採取ピン141により切り取られる処理対象材を保持する。観察光学系106は、処理対象材を採取ピン141で穿刺する採取位置、および上記穿刺により切り取られた処理対象材の部分を配置する所定位置を選定する。
【0078】
採取ピン141により切り取られた処理対象材を配置ピン142が押し出し、所望の位置(容器9A内など)に配置する。このため液体の圧力などを用いて処理対象材を採取ピン141から排出する場合に懸念される、処理対象材内の試料4Bなどの対象物の崩れおよび散逸などの不具合を抑制できる。このため試料4Bなどの採取工程の安定性を向上でき、試料4Bなどの配置工程での位置精度、再現性を向上できる。
【0079】
また採取ピン141は固定用ホルダ143に固定されている。このため採取ピン141に外部から鉛直方向の力が加わった際に意図せず動く可能性を低減できる。このため高い安定性、再現性を有するように対象物を切り出すことができる。
【0080】
採取位置および所定位置を選定する観察光学系106により、切り出された試料4Bを含むゲルシート部分4Eを、所望の位置からずれないように安定に採取および配置できる。
【0081】
その他、本実施の形態では試料4Bを支持する材料としてゲル4D、つまり固化前のゲル原料4Aを固定させたものが用いられる。これにより、試料4Bに直接せん断応力が加わることを防ぐ効果がある。このため試料4Bである細胞、組織などに傷害が生じる可能性を低減できる。
【0082】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法においても、
図14~
図17の各工程(第1工程~第4工程)については実施の形態1と同様である。
図27は、実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第5工程を示す概略断面図である。
図27に示されるように、本実施の形態においても、実施の形態1の
図18(第5工程)と同様に、観察光学系106により第1選定工程が行なわれる。第1選定工程は、実施の形態1と同様に、ゲルシート4を形成する工程の後、ゲルシート部分4Eを採取する工程の前に、採取すべき試料4Bを選別する目的でなされる。
図27の第1選定工程では、ゲルプレート6はプレート8の上面上に配置されていない。
図27ではゲルプレート6はX方向およびY方向についてプレート8とは異なる位置に配置される。この点において本実施の形態は、第1選定工程時にゲルプレート6がプレート8と重なり採取位置と所定位置とが重なるように配置される実施の形態1とは異なる。
【0083】
再度
図20を参照して、本実施の形態においても、
図27の第5工程の後、実施の形態2の第6工程として、
図20の実施の形態1の第6工程と同様の処理がなされる。つまり、採取配置装置100の容器用XYステージ102上に固定されたプレート8の容器9Aの所定位置が、観察光学系106により選定される。所定位置は後に切り取られるゲルシート部分が配置される予定の位置である。この工程は実施の形態1と同様の第2選定工程である。第2選定工程は、実施の形態1と同様に、ゲルシート4を形成する工程の後、ゲルシート部分4Eを採取する工程の前になされる。なお本実施の形態では、第6工程の際に、プレート8上からゲルプレート6を退避させる必要はない。第5工程(
図27参照)にてゲルプレート6がプレート8上に配置されないためである。
【0084】
図28は、実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第7工程を示す概略断面図である。
図28に示されるように、第1選定工程および第2選定工程の後、ゲルシート部分を採取する工程の前に、採取ピン141を採取位置の真上に配置する第2採取直前工程がなされる。このような態様となるように、ゲルシート4がX方向およびY方向に移動する。このとき採取位置と所定位置とは、Z方向から見た平面視にて互いに重なっておらず、互いに別の位置に配置される。この点において本実施の形態(第2採取直前工程)は、両者が互いに重なる位置に配置される実施の形態1の第1採取直前工程とは異なる。
【0085】
図29は、実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第8工程を示す概略拡大断面図である。
図29に示されるように、
図28のゲルシート4が採取ピン本体141Aにより穿刺され、ゲルシート4の一部が切り取られる。切り取られたゲルシート4の一部はゲルシート部分4Eである。ゲルシート部分4Eは、採取ピン本体141A内に採取(収納)される。ゲルシート4が切り取られる態様は、実施の形態1の
図22および
図23と同様である。採取ピン本体141Aの下降によりゲルシート4が切り取られる。切り取られたゲルシート部分4Eは選別すべき試料4Bを含む。
【0086】
図30は、実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第9工程を示す概略拡大断面図である。
図30に示されるように、
図29の工程にて採取されたゲルシート部分4Eを採取ピン本体141A内に把持させたまま、採取ピン本体141Aおよび配置ピン本体142Aが上昇する。採取ピン141はゲルプレート6の上方まで上昇する。
【0087】
図29~
図30の工程は
図28の工程時と同様の、採取ピン141、ゲルシート4およびプレート8のXY平面上の位置関係を保ったままなされる。
【0088】
図31は、実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第10工程を示す概略拡大断面図である。
図31に示されるように、採取ピン141が採取位置の真上から所定位置の真上まで移動する。このようにするために、ゲルシート4がたとえば試料用XYステージ101によりX方向およびY方向に移動してもよい。プレート8は容器用XYステージ102によりX方向およびY方向に移動する。この処理は採取する工程(
図29)の後、ゲルシート部分4Eを所定位置に配置する工程(次の
図32)の前になされる。なお
図31にて採取位置と所定位置とは、Z方向から見た平面視にて互いに重ならず、互いに別の位置に配置される。
【0089】
図32は、実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第11工程を示す概略拡大断面図である。
図32に示されるように、まず採取ピン141を含む、採取配置部材104の全体が下降する。容器9Aに対しておよそ
図23に示す位置と同じZ方向の位置に採取ピン141が達したところで採取ピン141が静止される。その後、
図24の工程と同様に、採取ピン141を静止させた状態で、配置ピン142が図中矢印に示す方向に下降される。これにより下降した配置ピン本体142Aは、押圧により、
図24と同様に、採取ピン本体141Aが採取し保持しているゲルシート部分4Eを、採取ピン141の内部から押し出す。その結果、採取ピン141の外部の所定位置にゲルシート部分4Eが配置される。具体的には、ゲルシート部分4Eは、容器9Aの内部(底面)の上に配置される。
【0090】
図33は、実施の形態2に係る試料の選別採取配置方法の第12工程を示す概略拡大断面図である。
図33に示されるように、
図25の工程と同様に、配置ピン142および採取ピン141が上昇する。採取ピン141はプレート8の上方まで上昇する。
【0091】
その後、実施の形態1の
図26と同様の処理がなされる。つまり観察光学系106により、所定位置にゲルシート部分4Eが配置されていることが観察される。
【0092】
(作用効果)
本実施の形態における試料の選別採取配置方法においては、第1選定工程および第2選定工程の後、ゲルシート部分4Eを採取する工程の前に、採取ピン141を採取位置(切断後にゲルシート部分4Eとなるべき部分)の真上に配置する第2採取直前工程を備える。上記選別採取配置方法では、ゲルシート部分4Eを採取する工程の後、ゲルシート部分4Eが所定位置に配置される工程の前に、採取ピン141が採取位置の真上から所定位置の真上まで移動する。第2採取直前工程および所定位置の真上まで移動する工程の時点において、採取位置と所定位置とは互いに重なる位置以外の位置に配置されている。
【0093】
この例においても、ゲルシート4およびプレート8の動きが実施の形態1の例と多少異なる程度で、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。たとえば実施の形態1の作用効果欄に記載した水平方向の移動を繰り返す動作に加え、さらに第2の方向に移動する工程に先立ち容器9Aを配置する部材が回転するなど、多くの部材が動く例が考えられる。本実施の形態では少なくともそのような多くの部材が動く例に比べ、タクトタイムの削減効果が得られる。
【0094】
以上に述べた実施の形態に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0096】
(付記)
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0097】
(付記1)
採取すべき対象物を支持するゲルをフィルム上にシート状に形成し、ゲルシートを形成する工程と、
前記フィルム上の前記ゲルシートを中空形状を有する採取ピンで穿刺し、前記ゲルシートの一部を切り取ることで、前記採取ピンの内部にゲルシート部分を採取する工程と、
前記採取ピンの内部の前記ゲルシート部分を配置ピンの押圧により前記採取ピンの内部から押し出して前記採取ピンの外部の所定位置に配置する工程とを備え、
前記ゲルシートを前記採取ピンで穿刺する採取位置を観察光学系により選定する第1選定工程、および前記ゲルシート部分を配置する前記所定位置を前記観察光学系により選定する第2選定工程をさらに備える、試料の選別採取配置方法。
【0098】
(付記2)
前記第2選定工程にて選定される前記所定位置は、前記対象物を収納可能なウェル(容器9A)が複数並ぶウェルプレート(プレート8)に含まれる1つの前記ウェル内の位置である、付記1に記載の試料の選別採取配置方法。
【0099】
(付記3)
前記第1選定工程および前記第2選定工程の後、前記採取する工程の前に、前記採取位置と前記所定位置とが重なるように前記ゲルシートを設置する第1採取直前工程をさらに備える、付記2に記載の試料の選別採取配置方法。
【0100】
(付記4)
前記第1選定工程においては、前記ゲルシートの複数の部分の位置が観察および記憶され、
前記第2選定工程においては、前記ウェルプレートに含まれる複数の前記ウェルの位置が観察および記憶され、
前記第1採取直前工程は、前記第1選定工程および前記第2選定工程において記憶された前記ゲルシートの複数の部分および前記ウェルの位置に基づき処理がなされる、付記3に記載の試料の選別採取配置方法。
【0101】
(付記5)
前記第1選定工程および前記第2選定工程の後、前記採取する工程の前に、前記採取ピンを前記採取位置の真上に配置する第2採取直前工程と、
前記採取する工程の後、前記所定位置に配置する工程の前に、前記採取ピンが前記採取位置の真上から前記所定位置の真上まで移動する工程とをさらに備え、
前記第2採取直前工程および前記移動する工程の時点において、前記採取位置と前記所定位置とは互いに重なる位置以外の位置に配置されている、付記2に記載の試料の選別採取配置方法。
【0102】
(付記6)
前記所定位置に配置する工程の後、前記所定位置に前記ゲルシート部分が配置されていることを前記観察光学系により観察する工程をさらに備える、付記1~5のいずれか1項に記載の試料の選別採取配置方法。
【0103】
(付記7)
前記配置ピンは中実形状を有する、付記1~6のいずれか1項に記載の試料の選別採取配置方法。
【0104】
(付記8)
処理対象材を切り取り採取可能な、中空形状を有する採取ピンと、
前記採取ピンの内部に挿入可能であり、前記採取ピンの押圧により切り取られた前記処理対象材に前記採取ピン内で接触し、前記処理対象材を押圧することで、前記処理対象材を前記採取ピン外に配置する配置ピンと、
前記採取ピンが固定された固定用ホルダとを備え、
前記処理対象材は、採取すべき対象物を支持するゲルがシート状に形成されたゲルシートであり、
前記採取ピンにより切り取られる前記処理対象材を保持する保持台と、
前記処理対象材を前記採取ピンで穿刺する採取位置、および前記穿刺により切り取られた前記処理対象材の部分を配置する所定位置を選定する観察光学系とをさらに備える、採取配置装置。
【符号の説明】
【0105】
1,5 スライドガラス、2 フィルム、3 スペーサー、3A 貫通孔、4 ゲルシート、4A ゲル原料、4B 試料、4C 流動試料、4D ゲル、4E ゲルシート部分、6 ゲルプレート、8 プレート、9A 容器、21 シート固定部材、100 採取配置装置、101 試料用XYステージ、101A ステージ貫通部、102 容器用XYステージ、104 採取配置部材、104A 採取配置機構、106 観察光学系、141 採取ピン、141A 採取ピン本体、141B 採取ピンホルダ、142 配置ピン、142A 配置ピン本体、142B 配置ピンホルダ、142C バネ、143 固定用ホルダ、143f,146f 正面、143b 背面、144 第1駆動部、144A 第1モータ、144B 円板部材、144C リンク部材、144D1,144D2 ジョイント、145 配置ピンホルダ固定部、145a 第1部分、145b 第2部分、146 第2駆動部、146A 可動式ホルダ、146B 第2モータ、146C 鉛直延在ネジ、146D ネジ連結部、146E スライド溝、FXD 固定部。