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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025146092
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】ブッシュ及び液圧回転機
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/04 20060101AFI20250926BHJP
   F04C 2/344 20060101ALI20250926BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
F16C33/04
F04C2/344 331K
F16C17/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046694
(22)【出願日】2024-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五味 裕希
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤実
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘俊
(72)【発明者】
【氏名】高野 崇弘
【テーマコード(参考)】
3H040
3J011
【Fターム(参考)】
3H040AA02
3H040AA03
3H040BB11
3H040CC07
3H040CC16
3H040DD31
3H040DD37
3H040DD40
3J011AA07
3J011AA20
3J011BA13
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA04
3J011MA04
3J011MA12
3J011PA03
3J011QA20
3J011RA03
(57)【要約】
【課題】ブッシュの取付性を向上させる。
【解決手段】駆動源により回転される駆動シャフト1を支持するブッシュ60,70は、軸方向の両端面60a,60bにわたって内周面60cに形成されるとともに軸方向に対して傾斜して形成され、駆動シャフト1の外周面1aとブッシュ60,70の内周面60cとの間を潤滑する流体が導かれる溝部61と、軸方向の両端面60a,60bに形成され、軸方向に並ぶ一対の切り欠き部62と、を有し、溝部61における軸方向に延びる中心線81と切り欠き部62とは、周方向において180度離れて形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源により回転される回転シャフトを支持するブッシュであって、
軸方向の両端面にわたって内周面に形成されるとともに前記軸方向に対して傾斜して形成され、前記回転シャフトの外周面と前記ブッシュの前記内周面との間を潤滑する流体が導かれる溝部と、
前記軸方向の前記両端面に形成され、前記軸方向に並ぶ一対の切り欠き部と、を有し、
前記溝部における前記軸方向に延びる中心線と前記切り欠き部とは、前記周方向において180度離れて形成されることを特徴とするブッシュ。
【請求項2】
請求項1に記載のブッシュであって、
前記内周面には、前記周方向における前記溝部の両側に、前記回転シャフトに作用する荷重を受ける荷重受け部がそれぞれ形成されることを特徴とするブッシュ。
【請求項3】
請求項2に記載のブッシュであって、
前記荷重受け部は、それぞれ前記周方向において180度よりも小さい範囲に形成されることを特徴とするブッシュ。
【請求項4】
請求項3に記載のブッシュであって、
前記荷重受け部は、それぞれ前記周方向において90度以上の範囲に形成されることを特徴とするブッシュ。
【請求項5】
請求項1に記載のブッシュであって、
前記ブッシュは、前記周方向の一箇所に前記軸方向に延びる合わせ目が設けられる円筒状の巻きブッシュであり、
前記合わせ目は、前記一対の切り欠き部にわたって形成されることを特徴とするブッシュ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のブッシュにより支持される前記回転シャフトを備えることを特徴とする液圧回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシュ及び液圧回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプケーシングと、駆動シャフトに回転駆動されるロータと、ロータの周囲に設けられ内周面にカム面を有するカムリングと、ロータに半径方向へ進退自在に設けられ先端が前記カムリングと摺接する複数のベーンと、を備えるベーンポンプが開示されている。駆動シャフトは、ポンプケーシングのポンプボディ及びポンプカバーの挿通孔にそれぞれ設けられたブッシュによって回転自在に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-200776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなベーンポンプでは、作動時に駆動シャフトが偏荷重を受け、ブッシュが荷重を受けることがある。また、ブッシュには、駆動シャフトの外周面とブッシュの内周面との間を潤滑するために、流体が導かれる溝が形成されることがある。このような構成では、ブッシュの軸方向の一方の端部に形成された位置決め用の切り欠きに、圧入用の治具を差し込んで、周方向の特定の位置に溝が位置するようにブッシュを周方向に位置決めしつつ挿通孔に圧入する。しかしながら、この場合には、ブッシュの片側にしか治具を取り付けることができないため、挿通孔へのブッシュの取り付けに手間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ブッシュの取付性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、駆動源により回転される回転シャフトを支持するブッシュであって、軸方向の両端面にわたって内周面に形成されるとともに軸方向に対して傾斜して形成され、回転シャフトの外周面とブッシュの内周面との間を潤滑する流体が導かれる溝部と、軸方向の両端面に形成され、軸方向に並ぶ一対の切り欠き部と、を有し、溝部における軸方向に延びる中心線と切り欠き部とは、周方向において180度離れて形成されることを特徴とする。
【0007】
この発明では、ブッシュは、軸方向の両端面に形成される一対の切り欠き部を有し、溝部と切り欠き部が周方向において180度離れて形成される。そのため、ブッシュが上下逆になっても、切り欠き部と溝部の相対位置は変わらない。よって、切り欠き部に差し込まれる圧入用の治具をブッシュの両側のいずれにも取り付けることができる。したがって、ブッシュの取付性が向上する。
【0008】
また、本発明は、内周面には、周方向における溝部の両側に、回転シャフトに作用する荷重を受ける荷重受け部がそれぞれ形成されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ブッシュを両方向から回転シャフトの挿入孔に圧入することができる。
【0010】
また、本発明は、荷重受け部は、それぞれ周方向において180度よりも小さい範囲に形成されることを特徴とする。
【0011】
この発明では、溝部における軸方向に延びる中心線と切り欠き部とが周方向において180度離れて形成された結果、荷重受け部がそれぞれ周方向において180度よりも小さい範囲に形成される構成となっても、回転シャフトに作用する荷重を受けることができる。
【0012】
また、本発明は、荷重受け部は、それぞれ周方向において90度以上の範囲に形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、ブッシュは、周方向の一箇所に軸方向に延びる合わせ目が設けられる円筒状の巻きブッシュであり、合わせ目は、一対の切り欠き部にわたって形成されることを特徴とする。
【0014】
この発明では、荷重受け部の面積を大きくすることができる。
【0015】
また、本発明は、液圧回転機であって、上記ブッシュにより支持される回転シャフトを備えることを特徴とする。
【0016】
この発明では、液圧回転機において、ブッシュの取付性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブッシュの取付性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るベーンポンプの断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るブッシュの斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るブッシュの展開図及び平面図である。
図4】本発明の実施形態の比較例に係るブッシュの展開図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るブッシュ60について説明する。本実施形態では、ブッシュ60は、液圧回転機としてのベーンポンプ100に設けられ、ベーンポンプ100の回転シャフトとしての駆動シャフト1を支持する軸受である。ベーンポンプ100は、例えばエンジンや電動モータ等の駆動源(図示省略)によって駆動シャフト1が回転されて駆動され、車両に搭載される流体圧機器(図示省略。例えば、パワーステアリング装置や変速機等)の流体圧供給源として用いられる。本実施形態では、ベーンポンプ100は作動流体として作動油が用いられる固定容量型であるが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよく、ベーンポンプ100が可変容量型であってもよい。
【0020】
図1に示すように、ベーンポンプ100は、ハウジング25と、ハウジング25に回転自在に支持される駆動シャフト1と、駆動シャフト1に連結されて回転駆動されるロータ2と、ロータ2のスリット2sに摺動自在に挿入されロータ2に対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン3と、ロータ2の回転に伴ってベーン3の先端部が摺接する内周カム面4aを有するカムリング4と、ロータ2の軸方向一端側に設けられるボディ側サイドプレート30と、ロータ2の軸方向他端側に設けられるカバー側サイドプレート40と、を備える。ハウジング25は、収容凹部10Aを有するポンプボディ10と、収容凹部10Aを覆いポンプボディ10に固定されるポンプカバー20と、を有する。収容凹部10Aには、ボディ側サイドプレート30、ロータ2、ベーン3、カムリング4、及びカバー側サイドプレート40が収容され、収容凹部10Aの開口部がポンプカバー20により封止される。
【0021】
ハウジング25には、挿入孔15がポンプカバー20を貫通するとともにポンプボディ10を貫通しないように延びて形成される。駆動シャフト1が挿入孔15に挿入されて、ロータ2が駆動シャフト1に連結される。駆動シャフト1は、挿入孔15に設けられる第一ブッシュ60及び第二ブッシュ70を介して、ハウジング25に回転自在に支持される。第一ブッシュ60はポンプカバー20内に設けられ、第二ブッシュ70はポンプボディ10内に設けられる。駆動シャフト1の外周面1aとポンプカバー20の間には、作動油の漏出を防止するシール部材55が設けられる。
【0022】
次に、主に図2及び図3を参照して、第一ブッシュ60の構成について詳しく説明する。図2は第一ブッシュ60の斜視図であり、図3(a)は第一ブッシュ60の内周面60cを示す第一ブッシュ60の展開図であり、図3(b)は図2図3(a)における下側から見た第一ブッシュ60の平面図である。なお、以下では、第一ブッシュ60の軸方向を単に「軸方向」とも称し、第一ブッシュ60の周方向を単に「周方向」とも称する。
【0023】
図2に示すように、第一ブッシュ60は、円筒状に形成される。第一ブッシュ60は、軸方向の両端面60a,60bにわたって内周面60cに形成される溝部61と、軸方向の両端面60a,60bに形成される一対の切り欠き部62(62a,62b)と、を有する。本実施形態では、第一ブッシュ60は、周方向の一箇所に軸方向に延びる合わせ目63が設けられる円筒状の巻きブッシュである。なお、図2では、合わせ目63を点線で示している。
【0024】
溝部61は、軸方向に対して傾斜して形成される。具体的には、溝部61は、図3の(a)に示す展開図において、斜めに直線状に延びて形成される。溝部61は、軸方向に延びる中心線81の中点C(図3の(a)参照)に対して点対称な形状である。つまり、第一ブッシュ60の上下の向きによらず、溝部61の形状は図2に示すようになる。溝部61の中心線81は、周方向における溝部61の長さ(図3の(a)の寸法D)の中央を通り、軸方向に延びる線である。
【0025】
溝部61は、内周面60cに窪んで形成されるため、図1に示すように第一ブッシュ60が駆動シャフト1を支持した状態では、溝部61により駆動シャフト1の外周面1aと第一ブッシュ60の内周面60cとの間に空間が形成される。溝部61には、外周面1aと内周面60cとの間を潤滑する流体が導かれる。具体的には、ベーンポンプ100の作動中に挿入孔15に流入した作動油が溝部61に導かれて、外周面1aと内周面60cとの間が潤滑される。溝部61は、上記のように軸方向に対して斜めに直線状に延びて形成されるため、駆動シャフト1の回転方向に沿って溝部61に効率よく作動油が導かれる。
【0026】
一対の切り欠き部62は、第一ブッシュ60を挿入孔15に圧入する際に、第一ブッシュ60の周方向の位置を決めるための指標となる部位である。一対の切り欠き部62は、軸方向の両端面60a,60bにそれぞれ開口して形成される。切り欠き部62aは、端面60aから先細に形成されたV形状に形成される。切り欠き部62bも、切り欠き部62aと同一形状に形成される。一対の切り欠き部62は、互いの先端部が対向するように、軸方向に並んで形成される。言い換えれば、一方の切り欠き部62aが端面60aに形成される周方向の位置と、他方の切り欠き部62bが端面60bに形成される周方向の位置とは同じである。つまり、第一ブッシュ60の上下の向きによらず、一対の切り欠き部62が形成される位置及び形状は図2に示すようになる。
【0027】
溝部61の中心線81と切り欠き部62(具体的には、周方向における切り欠き部62の中心62c)とは、周方向において180度離れて形成される。言い換えれば、溝部61の中心線81と切り欠き部62とは、駆動シャフト1を挟んで対向する。つまり、第一ブッシュ60の上下の向きによらず、溝部61と切り欠き部62との相対位置は図2に示すように対向する。このように、第一ブッシュ60は、上下の向きによらず、全体が図2に示す形状となる。溝部61と切り欠き部62との相対位置が決まっているため、第一ブッシュ60を挿入孔15に圧入する際に、切り欠き部62の位置を決めることにより、溝部61を周方向の所望の位置にセットすることができる。
【0028】
合わせ目63は、一対の切り欠き部62にわたって軸方向に延びて形成される。具体的には、一対の切り欠き部62の先端部である中心62cにわたって形成される。第一ブッシュ60は、図3(a)に示す帯状の板材が図2に示すように円筒状に巻かれた状態で、後述するように圧入用の治具が取り付けられ、ポンプカバー20の挿入孔15に圧入される。
【0029】
ここで、ベーンポンプ100では、作動時に駆動シャフト1に連結される駆動装置から駆動シャフト1が中心軸に対して傾くような偏荷重を受けることがある。第一ブッシュ60は、内周面60cにおける周方向の特定の範囲にて、駆動シャフト1に作用する偏荷重を受ける。このように、第一ブッシュ60の内周面60cには、駆動シャフト1に作用する偏荷重を受ける荷重受け部65(図3参照)が形成される。駆動シャフト1に作用する偏荷重の方向は、ベーンポンプ100に対する駆動装置の相対位置等によって予め把握できる。したがって、第一ブッシュ60は、偏荷重を受ける場所が荷重受け部65となるように周方向に位置決めされて、挿入孔15に圧入される。なお、駆動シャフト1に偏荷重が作用する要因としては、駆動装置からの荷重の他、ベーンポンプ100内部の作動油の圧力による場合もある。
【0030】
図3に示すように、荷重受け部65は、第一ブッシュ60の内周面60cにおいて、周方向における溝部61の両側にそれぞれ形成される。溝部61の中心線81と合わせ目63とは、周方向において180度離れて形成されるため、図3(a)に示すように、溝部61の中心線81は、両端の合わせ目63の中央となる。したがって、周方向における溝部61の両側に形成される荷重受け部65は、互いに同じ面積となり、それぞれ周方向において180度よりも小さい範囲に形成される。図3(a)では、荷重受け部65を点線で示しており、図3(b)では荷重受け部65が形成される周方向の領域を点線矢印で示している。荷重受け部65は、内周面60cにおいて溝部61及び切り欠き部62と周方向に重ならない領域である。言い換えれば、第一ブッシュ60は、溝部61及び切り欠き部62が形成されない領域で駆動シャフト1に作用する荷重を受ける。仮に、第一ブッシュ60が溝部61や切り欠き部62を含む領域で駆動シャフト1に作用する荷重を受ける構成であると、第一ブッシュ60の内周面60cと駆動シャフト1との接触面積が小さくなり、小さい面積で駆動シャフト1に作用する荷重を受ける必要がある。しかしながら、本実施形態では、第一ブッシュ60が溝部61や切り欠き部62を含まない荷重受け部65で駆動シャフト1に作用する荷重を受けるため、第一ブッシュ60の内周面60cと駆動シャフト1との接触面積を大きくすることができ、大きい面積で駆動シャフト1に作用する荷重を受けることができる。
【0031】
次に、挿入孔15への第一ブッシュ60の圧入について説明する。
【0032】
第一ブッシュ60を挿入孔15に圧入する前に、ベーンポンプ100の作動時に駆動装置から駆動シャフト1に作用する偏荷重の向きを特定しておく。また、第一ブッシュ60を挿入孔15に圧入するためには、圧入用の治具(図示省略)を用いる。具体的には、まず、第一ブッシュ60の一対の切り欠き部62のいずれか一方に圧入用の治具を差し込み、第一ブッシュ60に圧入用の治具を取り付ける。この時、一対の切り欠き部62の他方には、治具は差し込まれない。そして、駆動シャフト1に作用する偏荷重を荷重受け部65が受けるように第一ブッシュ60を周方向に位置決めしつつ挿入孔15に圧入する。具体的には、図3(b)に示すように、切り欠き部62の周方向位置を調整することにより、駆動シャフト1に作用する偏荷重の向きを示す矢印Aの先に荷重受け部65の中心が位置するように第一ブッシュ60が挿入孔15に圧入される。言い換えれば、切り欠き部62の周方向位置を調整することにより、駆動シャフト1に作用する偏荷重を受ける部分に溝部61が位置しないように、第一ブッシュ60が挿入孔15に圧入される。これにより、ベーンポンプ100に第一ブッシュ60が取り付けられる。
【0033】
ここで、図4に本実施形態の比較例の第一ブッシュ160を示す。図4(a)及び(b)は、それぞれ第一ブッシュ160の展開図及び平面図であって、図3(a)及び(b)に対応する図である。第一ブッシュ160は、一方の端面60bのみに切り欠き部162を有する。第一ブッシュ160では、荷重受け部65を大きくするため、溝部161と切り欠き部162が周方向において180度離れて形成されておらず、荷重受け部65が周方向における溝部161の片側にしか形成されていない。荷重受け部65は、周方向において180度の範囲に形成される。この構成では、第一ブッシュ160が上下逆になると、切り欠き部162に対する溝部161の相対位置が変わってしまい、切り欠き部162に対する荷重受け部65の位置も変わってしまう。そのため、第一ブッシュ160を挿入孔15に圧入する際に、切り欠き部162の位置を決めることにより、溝部161が周方向の所望の位置にセットされるように、切り欠き部162は一方の端面60bにしか形成されていない。つまり、第一ブッシュ160は、一方の向きでしか圧入できないようになっている。このように、第一ブッシュ160では、圧入用の治具を第一ブッシュ160の片側にしか取り付けることができないため、圧入用の治具を第一ブッシュ160に取り付ける際には、第一ブッシュ160の上下の向きを確認する必要があり、挿入孔15への第一ブッシュ160の取り付けに手間がかかってしまう。
【0034】
これに対し、本実施形態の第一ブッシュ60は、軸方向の両端面60a,60bに形成される一対の切り欠き部62を有し、溝部61と切り欠き部62が周方向において180度離れて形成される。そのため、第一ブッシュ60が上下逆になっても、切り欠き部62と溝部61の相対位置は変わらない。よって、切り欠き部62に差し込まれる圧入用の治具を第一ブッシュ60の両側のいずれにも(具体的には、切り欠き部62a及び切り欠き部62bの一方)取り付けることができ、第一ブッシュ60の向きを確認することなく挿入孔15へ圧入することができる。つまり、第一ブッシュ60の上下の向きを確認することなく、圧入用の治具を第一ブッシュ60に取り付けて圧入作業を行うことができる。したがって、挿入孔15への第一ブッシュ60の圧入作業を効率良く行うことができ、第一ブッシュ60の取付性が向上する。
【0035】
さらに、本実施形態の第一ブッシュ60は、周方向における溝部61の両側に荷重受け部65が形成される。そのため、第一ブッシュ60が上下逆になっても、荷重受け部65の周方向の位置は変わらないため、第一ブッシュ60を両方向から挿入孔15に圧入することができる。
【0036】
また、従来では、比較例の第一ブッシュ160のように、荷重受け部65が周方向において180度の範囲に形成され、広い範囲で駆動シャフト1に作用する荷重を受けていた。しかしながら、検討の結果、荷重受け部65が180度よりも小さい範囲に形成される構成となっても、駆動シャフト1に作用する荷重を受けることができるということがわかった。よて、本実施形態の第一ブッシュ60のように、溝部61における軸方向に延びる中心線81と切り欠き部62とが周方向において180度離れて形成された結果、荷重受け部65がそれぞれ周方向において180度よりも小さい範囲に形成される構成となっても、駆動シャフト1に作用する荷重を受けることができる。なお、第一ブッシュ60には、溝部61、切り欠き部62、及び二つの荷重受け部65の四つの領域が形成され、荷重受け部65は、それぞれ周方向において90度以上の範囲に形成される。
【0037】
また、本実施形態の第一ブッシュ60は、円筒状の巻きブッシュであり、合わせ目63は、一対の切り欠き部62にわたって形成される。そのため、合わせ目63が切り欠き部62と軸方向において重なるため、荷重受け部65の面積を大きくすることができる。
【0038】
以上の本実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0039】
第一ブッシュ60は、軸方向の両端面60a,60bに形成される一対の切り欠き部62を有し、溝部61と切り欠き部62が周方向において180度離れて形成される。そのため、第一ブッシュ60が上下逆になっても、切り欠き部62と溝部61の相対位置は変わらない。よって、切り欠き部62に差し込まれる圧入用の治具を第一ブッシュ60の両側のいずれにも取り付けることができ、第一ブッシュ60の取付性が向上する。
【0040】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0041】
<変形例1>
上記実施形態では、第一ブッシュ60は、ベーンポンプ100の駆動シャフト1を支持する。これに限らず、第一ブッシュ60は、例えばギヤポンプや、ピストンポンプ、内接ギヤポンプ等の他の液圧回転機の回転シャフトを支持するものであってもよい。第一ブッシュ60がギヤポンプに設けられる場合には、ギヤポンプの作動時にポンプの内圧により駆動シャフト1が偏荷重を受け、第一ブッシュ60が荷重を受ける。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0042】
<変形例2>
上記実施形態では、ポンプカバー20内に設けられる第一ブッシュ60が、溝部61と、一対の切り欠き部62と、荷重受け部65と、を有する。これに限らず、ポンプボディ10内に設けられる第二ブッシュ70が、第一ブッシュ60と同様の溝部61、一対の切り欠き部62、及び荷重受け部65を有してもよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0043】
<変形例3>
上記実施形態では、第一ブッシュ60は、周方向の一箇所に軸方向に延びる合わせ目63が設けられる円筒状の巻きブッシュである。しかしながら、第一ブッシュ60は、巻きブッシュに限らない。
【0044】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0045】
駆動源により回転される回転シャフトとしての駆動シャフト1を支持するブッシュ60,70は、軸方向の両端面60a,60bにわたって内周面60cに形成されるとともに軸方向に対して傾斜して形成され、駆動シャフト1の外周面1aとブッシュ60,70の内周面60cとの間を潤滑する流体が導かれる溝部61と、軸方向の両端面60a,60bに形成され、軸方向に並ぶ一対の切り欠き部62と、を有し、溝部61における軸方向に延びる中心線81と切り欠き部62とは、周方向において180度離れて形成される。
【0046】
この構成では、ブッシュ60,70は、軸方向の両端面60a,60bに形成される一対の切り欠き部62を有し、溝部61と切り欠き部62が周方向において180度離れて形成される。そのため、ブッシュ60,70が上下逆になっても、切り欠き部62と溝部61の相対位置は変わらない。よって、切り欠き部62に差し込まれる圧入用の治具をブッシュ60,70の両側のいずれにも取り付けることができる。したがって、ブッシュ60,70の取付性が向上する。
【0047】
また、ブッシュ60,70では、内周面60cには、周方向における溝部61の両側に、駆動シャフト1に作用する荷重を受ける荷重受け部65がそれぞれ形成される。
【0048】
この構成では、ブッシュ60,70を両方向から駆動シャフト1の挿入孔15に圧入することができる。
【0049】
また、ブッシュ60,70では、荷重受け部65は、それぞれ周方向において180度よりも小さい範囲に形成される。
【0050】
この構成では、溝部61における軸方向に延びる中心線81と切り欠き部62とが周方向において180度離れて形成された結果、荷重受け部65がそれぞれ周方向において180度よりも小さい範囲に形成される構成となっても、駆動シャフト1に作用する荷重を受けることができる。
【0051】
また、ブッシュ60,70では、荷重受け部65は、それぞれ周方向において90度以上の範囲に形成される。
【0052】
また、ブッシュ60,70は、周方向の一箇所に軸方向に延びる合わせ目63が設けられる円筒状の巻きブッシュ60,70であり、合わせ目63は、一対の切り欠き部62にわたって形成される。
【0053】
この構成では、荷重受け部65の面積を大きくすることができる。
【0054】
また、液圧回転機(ベーンポンプ100)は、ブッシュ60,70により支持される駆動シャフト1を備える。
【0055】
この構成では、液圧回転機において、ブッシュ60,70の取付性が向上する。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0057】
1…駆動シャフト(回転シャフト)、1a…外周面、60…第一ブッシュ(ブッシュ)、60a,60b…端面、60c…内周面、61…溝部、62,62a,62b…切り欠き部、63…合わせ目、65…荷重受け部、70…第二ブッシュ(ブッシュ)、81・・・中心線、100…ベーンポンプ(液圧回転機)
図1
図2
図3
図4