(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014615
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】位置検出システム、位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20250123BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117316
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 友理
(72)【発明者】
【氏名】浅井 拓朗
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB05
5J062CC11
5J062FF01
5J062FF03
5J062FF04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建物を含む領域における移動体の位置検出を、高精度、かつ効率良く行う。
【解決手段】エリアに設けられたスピーカ4と、エリアにおける磁場の分布を示す磁場マップMGが記憶された記憶部31と、移動体Mに所持または装着された移動体端末2から送信される情報を取得する端末情報取得部33と、移動体の位置を検出する位置検出部35とを備え、スピーカは割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を発し、端末情報取得部はスピーカから発せられた音響信号を取得した場合に、識別関連情報、移動体端末で測定された磁場情報、および移動体端末の移動量を示す移動量情報、を取得可能であり、位置検出部は、識別関連情報に基づき、移動体端末で取得した識別情報を含む音を発したスピーカの位置を初期位置として設定し、磁場情報、初期位置からの移動体端末の移動量を示す移動量情報、および磁場の分布に基づき移動体端末の位置を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を含む領域における移動体の位置を検出する位置検出システムであって、
前記建物を含む領域に設定されたエリアに設けられたスピーカと、
前記スピーカが設けられた前記エリアにおける磁場の分布を示す磁場マップが記憶された記憶部と、
前記移動体に所持または装着された移動体端末から送信される情報を取得する端末情報取得部と、
前記エリアにおける前記移動体の位置を検出する位置検出部と、を備え、
前記スピーカは、
前記スピーカに割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を発し、
前記端末情報取得部は、
前記移動体端末で、前記スピーカから発せられた前記音響信号に基づく音に含まれる前記識別情報に関する識別関連情報と、
前記移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報と、
前記移動体端末の移動量を示す移動量情報と、を取得可能であり、
前記位置検出部は、
前記識別関連情報に基づき、前記移動体端末で取得した、前記識別情報を含む音を発した前記スピーカの位置を初期位置として設定し、
前記スピーカが設けられた前記エリアの前記磁場マップを、前記記憶部から取得し、
前記磁場情報、前記初期位置からの前記移動体端末の移動量を示す前記移動量情報、および前記磁場マップにおける磁場の分布に基づき、前記エリアにおける前記移動体端末の位置を検出する
ことを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記エリアに対する出入口に、前記エリアに出入りする方向に間隔をあけて前記スピーカが複数設けられ、
前記位置検出部は、
複数の前記スピーカから発せられた前記音に含まれる前記識別情報の取得順序に基づいて、前記エリアに対する前記移動体端末の移動方向を特定する
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
建物を含む領域における移動体の位置を、前記建物を含む領域に設定されたエリアに設けられたスピーカと、前記エリアにおける磁場の分布を示す磁場マップとを用いて検出する位置検出方法であって、
前記スピーカから発せられた、前記スピーカに割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を、前記移動体に所持または装着された移動体端末で取得した場合に、前記音に含まれる前記識別情報に関する識別関連情報を前記移動体端末から取得し、
受信された前記識別関連情報に基づき、前記移動体端末で取得した前記識別情報を含む音を発した前記スピーカの位置を初期位置として設定し、
前記スピーカが設けられた前記エリアの前記磁場マップを取得し、
前記移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報、および前記初期位置からの前記移動体端末の移動量を示す移動量情報を、前記移動体端末から取得し、
前記磁場情報、および前記移動量情報と、前記磁場マップにおける磁場の分布とに基づき、前記エリアにおける前記移動体端末の位置を検出する、ことを特徴とする
位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出システム、位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人、車両、ロボット等の移動体の位置を検出するため、GPS(Global Positioning System)が用いられている。しかしながら、GPSは、建物を含む領域(例えば、屋内)では、GPS信号を受信できず、位置検出を有効に行うことができない。そこで、磁場マップを用い、屋内における移動体の位置検出を行う技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、移動体が移動する空間(環境)において基準磁気を測定し、基準磁気と基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁場マップ(磁気-位置情報)を予め記憶しておき、移動体が備える磁気センサにより実測磁気を測定し、磁場マップにおける基準磁気と測定された実測磁気とを対比して実測磁気が測定された位置を特定する構成が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されたような構成では、例えば、磁場マップに示されるエリアに、基準磁気の量が同じ場所が、複数存在することがある。このため、単に、磁場マップにおける基準磁気と測定された実測磁気とを対比しただけでは、実測磁気が測定された位置の候補が複数存在し、特定される位置が実際の位置と異なっていたり、位置の特定に時間が掛かることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、建物を含む領域(例えば、屋内)における移動体の位置検出を、高精度、かつ効率良く行うことが可能な、位置検出システム、位置検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の位置検出システムは、建物を含む領域における移動体の位置を検出する位置検出システムであって、前記建物を含む領域に設定されたエリアに設けられたスピーカと、前記スピーカが設けられた前記エリアにおける磁場の分布を示す磁場マップが記憶された記憶部と、前記移動体に所持または装着された移動体端末から送信される情報を取得する端末情報取得部と、前記エリアにおける前記移動体の位置を検出する位置検出部と、を備え、前記スピーカは、前記スピーカに割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を発し、前記端末情報取得部は、前記移動体端末で、前記スピーカから発せられた前記音響信号に基づく音に含まれる前記識別情報に関する識別関連情報と、前記移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報と、前記移動体端末の移動量を示す移動量情報と、を取得可能であり、前記位置検出部は、前記識別関連情報に基づき、前記移動体端末で取得した、前記識別情報を含む音を発した前記スピーカの位置を初期位置として設定し、前記スピーカが設けられた前記エリアの前記磁場マップを、前記記憶部から取得し、前記磁場情報、前記初期位置からの前記移動体端末の移動量を示す前記移動量情報、および前記磁場マップにおける磁場の分布に基づき、前記エリアにおける前記移動体端末の位置を検出することを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、建物を含む領域(例えば、屋内)に設定されたエリアに設けられたスピーカは、そのスピーカに割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を発する。移動体に所持または装着された移動体端末で、スピーカから発せられた音を取得した場合、端末情報取得部は、取得された音に含まれる識別情報に関する識別関連情報を取得する。位置検出部は、識別関連情報に基づいて、移動体端末で取得した、識別情報を含む音を発したスピーカの位置を初期位置として設定する。
また、位置検出部は、初期位置として設定されたスピーカが設けられたエリアの磁場マップを、記憶部から取得する。位置検出部は、端末情報取得部で取得された、移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報と、初期位置からの移動体端末の移動量を示す移動量情報と、スピーカが設けられたエリアの磁場マップにおける磁場の分布に基づいて、そのエリアにおける移動体端末の位置を検出する。このようにして、スピーカが設けられた位置に設定された初期位置からの移動体端末の移動量と、移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報とを、磁場マップにおける磁場の分布に対比することで、エリア内に同じ磁場量の位置が複数存在している場合であっても、移動体端末の位置を容易に特定できる。したがって、建物を含む領域における移動体の位置検出を、高精度、かつ効率良く行うことが可能となる。
【0007】
本発明の一態様においては、本発明の位置検出システムは、前記エリアに対する出入口に、前記エリアに出入りする方向に間隔をあけて前記スピーカが複数設けられ、前記位置検出部は、複数の前記スピーカから発せられた前記音に含まれる前記識別情報の取得順序に基づいて、前記エリアに対する前記移動体端末の移動方向を特定する。
【0008】
このような構成によれば、エリアに対する出入口に、エリアに出入りする方向に間隔をあけてスピーカを複数設けることで、複数の前記スピーカから発せられた音に含まれる識別情報の取得順序に基づいて、エリアに対する移動体端末の移動方向を容易に特定することができる。これにより、移動体がエリアの外部から内部に進入しようとしているのか、エリアの内部から外部に退出しようとしているのかを、検出することができる。
【0009】
本発明の位置検出方法は、建物を含む領域における移動体の位置を、前記建物を含む領域に設定されたエリアに設けられたスピーカと、前記エリアにおける磁場の分布を示す磁場マップとを用いて検出する位置検出方法であって、前記スピーカから発せられた、前記スピーカに割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を、前記移動体に所持または装着された移動体端末で取得した場合に、前記音に含まれる前記識別情報に関する識別関連情報を前記移動体端末から取得し、受信された前記識別関連情報に基づき、前記移動体端末で取得した前記識別情報を含む音を発した前記スピーカの位置を初期位置として設定し、前記スピーカが設けられた前記エリアの前記磁場マップを取得し、前記移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報、および前記初期位置からの前記移動体端末の移動量を示す移動量情報を、前記移動体端末から取得し、前記磁場情報、および前記移動量情報と、前記磁場マップにおける磁場の分布とに基づき、前記エリアにおける前記移動体端末の位置を検出する、ことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、移動体端末で、建物を含む領域に設定されたエリアに設けられたスピーカから発せられた音を取得した場合、取得された音に含まれる識別情報に基づいて、移動体端末で取得した、識別情報を含む音を発したスピーカの位置を初期位置として設定する。さらに、移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報と、初期位置からの移動体端末の移動量を示す移動量情報と、スピーカが設けられたエリアの磁場マップにおける磁場の分布に基づいて、そのエリアにおける移動体端末の位置を検出する。
このようにして、スピーカが設けられた位置に設定された初期位置からの移動体端末の移動量と、移動体端末で測定された磁場に関する磁場情報とを、磁場マップにおける磁場の分布に対比することで、エリア内に同じ磁場量の位置が複数存在している場合であっても、移動体端末の位置を容易に特定できる。したがって、建物を含む領域における移動体の位置検出を、高精度、かつ効率良く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建物を含む領域(例えば、屋内)における移動体の位置検出を、高精度、かつ効率良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る位置検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の位置検出システムで、移動体の位置を検出するエリアの一例を示す図である。
【
図3】本実施形態における、スピーカの設置例を示す図である。
【
図4】磁場マップ、およびレイアウトマップの一例を示す図である。
【
図5】本実施形態におけるスピーカにおける音圧分布の設定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】エリアで実測した音圧分布の例を示す図である。
【
図7】
図6に示した音圧分布を、閾値に基づいて補正した音圧分布の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態における位置検出方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態の変形例における、スピーカの設置例を示す図である。
【
図10】本実施形態の他の変形例における、スピーカの設置例を示す図である。
【
図11】本実施形態の変形例における、移動体の位置を検出するエリアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明による位置検出システム、位置検出方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る位置検出システムの構成を示すブロック図を
図1に示す。
図2は、
図1の位置検出システムで、移動体の位置を検出するエリアの一例を示す図である。
図1に示されるように、位置検出システム1は、スピーカ4と、移動体端末2と、システム本体3と、を主に備えている。この位置検出システム1は、例えば、病院、ホテル、商業施設等の各種用途の建物の屋内における、移動体端末2の位置を検出することによって、移動体M(
図3参照)の位置を検出する。移動体Mは、例えば、人である。本実施形態において、位置検出システム1は、例えば、移動体M(人)が、屋内における自らの位置を認識するために用いられる。
【0014】
図2に示すように、スピーカ4は、屋内に予め設定されたエリアAに設置されている。本実施形態において、エリアAは、屋内のみならず、建物を含む領域に設定され、例えば、同一敷地内の建物同士をつなぐエリア(例えば、中庭、連絡通路等)にも設定される。本実施形態において、エリアAは、屋内に複数設定されている。複数のエリアAは、例えば、建物の各階に設定されている。また、複数のエリアAは、各階に設けられた室の各々に設定されていてもよいし、また、1つの室に、複数のエリアAが設定されていてもよい。
本実施の形態において、複数のエリアA(A1、A2)は、通路11を介して行き来可能な2つの室12A、12Bの各々に設定されている。
スピーカ4は、室12Aに対する出入口13Aと、通路11を介した室12Bに対する出入口13Bとにそれぞれ設けられている。
スピーカ4は、出入口13A、13Bの各々において、出入口13A、13Bにおける室12A、12Bに対する出入り方向に沿って間隔をあけて、2つずつ設けられている。すなわち、出入口13Aには、第1スピーカ4Aと、第2スピーカ4Bとが、出入り方向に沿って間隔をあけて設けられている。出入口13Bには、第3スピーカ4Cと、第4スピーカ4Dとが、出入り方向に沿って間隔をあけて設けられている。
【0015】
図3は、本実施形態における、スピーカの設置例を示す図である。
図3に示すように、本実施形態において、各スピーカ4(4A~4D)は、出入口13A、13Bの天井15に設けられている。スピーカ4は、天井15に埋め込まれ、天井15の下方の室内空間に向けて、音を発するように設置されている。スピーカ4には、信号出力部41と、アンプ42とが電気的に接続されている。信号出力部41、およびアンプ42は、天井15と上階のスラブ16Aとの間の天井裏に配置されている。
信号出力部41は、スピーカ4で発する音信号を、スピーカ4に出力する。アンプ42は、信号出力部41から出力される音信号を増幅させてスピーカ4に伝達する。スピーカ4は、信号出力部41から出力された音信号に基づく音を、室内空間に向けて発する。
【0016】
信号出力部41は、予め、スピーカ4に個別に割り当てられた識別情報を含む音響信号を出力する。ここで、音響信号は、可聴音域(例えば、20~20000Hz)の信号を含んでいてもよいし、非可聴音域(例えば、20000Hz以上)の信号であってもよい。識別情報は、非可聴音域の信号である。識別情報は、いわゆる音響すかし信号である。識別情報は、例えば、予め定められた所定の波形を有している。識別情報は、例えば、BGM(バックグラウンドミュージック)や、室内放送のための可聴音域の信号に重畳される。なお、音響信号は、識別情報の信号のみを含み、他の可聴音域の信号を含まないものであってもよい。
【0017】
各スピーカ4は、識別情報を含む音響信号に基づく音を、スピーカ4を基準とした所定の範囲Xに及ぶように発するよう、その音圧分布が予め設定されている。各スピーカ4は、例えば、スピーカ4の直下位置を含み、例えば半径1~3m程度の範囲に、後述の移動体端末2の音取得部21で取得可能な音圧レベルの音が及ぶように設定されている。より詳しくは、各スピーカ4は、移動体Mである人が移動体端末2を所持する可能性の高い床17からの高さHにおいて、音取得部21がスピーカ4から発する音を取得できるように、その音圧分布が設定されている。例えば、所定の範囲X内では、スピーカ4から発する音の音圧が、予め設定された閾値(例えば50dB)以上となり、所定の範囲X外では、閾値未満となるように、音圧分布を設定するのが好ましい。
ここで、スピーカ4から発する音の音圧が例えば80dBを超えると、人の聴力等に悪影響を及ぼす可能性がある。このため、音圧の最大値が、80dB以下となるよう、音圧分布を設定するのが好ましい。また、所定の範囲X内では、スピーカ4から発する音の音圧が、予め設定された閾値(例えば50dB)以上となり、所定の範囲X外では、閾値未満となるように、音圧分布を設定するのが好ましい。
【0018】
移動体端末2は、移動体Mに所持または装着される。移動体端末2は、可搬性を有する端末である。本実施形態において、移動体端末2は、例えば、移動体Mとしての人が所持するスマートフォンである。移動体端末2は、スマートフォンに限らず、タブレット型端末等であってもよい。
図1に示すように、移動体端末2は、音取得部21と、磁場測定部22と、移動量測定部23と、情報送信部25と、を備えている。
音取得部21は、移動体端末2の外部の音を取得する。音取得部21は、スマートフォンに備えられたマイクである。音取得部21は、スピーカ4が発する音を取得する。音取得部21は、スピーカ4が発する音の波形を解析し、識別情報が含まれているか否かを判定する。音取得部21は、識別情報が含まれていることを検出した場合、取得された音に含まれる識別情報に関する識別関連情報を、生成する。識別情報に関する識別関連情報は、識別情報そのものであってもよいし、識別情報に予め関連付けられた、スピーカ4を特定するための情報、スピーカ4の位置を示す情報等であってもよい。識別関連情報は、識別情報を検出した場合、その識別情報を含む音を取得した時刻情報を含む。
【0019】
磁場測定部22は、磁場を測定し、測定された磁場に関する磁場情報を生成する。磁場測定部22は、スマートフォンに内蔵され、磁場を測定する磁気センサ(地磁気センサ)を備える。
移動量測定部23は、移動体端末2の移動量を測定する。移動量測定部23は、例えば、スマートフォンに内蔵された加速度センサ(図示無し)と、加速度センサで検出した加速度を積分することで移動量を算出する演算部(図示無し)と、を備える。移動量測定部23は、音取得部21で識別情報を検出した場合、識別情報を検出した時点における移動体端末2の位置からの移動量を測定する。
情報送信部25は、音取得部21で取得された音に含まれる識別情報に関する識別関連情報、磁場測定部22で測定された磁場に関する磁場情報、移動量測定部23で測定された移動量に関する移動量情報を、システム本体3に送信する。情報送信部25は、例えば、Wi-Fi等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信、携帯電話通信網等のデータ転送可能なネットワークを介して、情報をシステム本体3に送信する。
【0020】
また、本実施形態において、移動体端末2は、情報受信部26と、情報出力部5と、を備えている。
情報受信部26は、ネットワークを介して、システム本体3から、後述の位置検出部35で検出される移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報を、ネットワークを介して受信する。
情報出力部5は、情報受信部26で受信した情報に基づいて、移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報を外部に出力する。本実施形態において、情報出力部5は、スマートフォンに備えられた表示モニターである。情報出力部5は、移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報を表示する。
【0021】
システム本体3は、移動体端末2と通信可能な、プロセッサ、メモリ等を備えたサーバ(物理サーバ)や、ネットワークを通して相互通信可能な複数のサーバから構成される仮想サーバである。システム本体3は、記憶部31と、端末情報取得部33と、位置検出部35と、情報送信部37と、を機能的に備えている。
図4は、磁場マップ、およびレイアウトマップの一例を示す図である。
記憶部31は、スピーカ4が設けられたエリアA毎に、
図4に示すような、エリアA(例えばエリアA1)における磁場の分布を示す磁場マップMGと、エリアAの壁18、出入口13A、13B等のレイアウトを示すレイアウトマップMLと、が記憶されている。磁場マップMGは、エリアAにおける地磁気が、エリアA内に配置された鉄骨等の金属部材により影響を受けることで形成される磁場の分布を示している。
【0022】
図1に示す端末情報取得部33は、移動体端末2の情報送信部25から送信される情報を取得する。端末情報取得部33は、移動体端末2の音取得部21で、スピーカ4から発せられた音響信号に基づく音を取得した場合に生成される、識別情報に関する識別関連情報を取得する。また、端末情報取得部33は、移動体端末2の磁場測定部22で測定された磁場に関する磁場情報を取得する。さらに、端末情報取得部33は、移動体端末2の移動量測定部23で測定された、移動量を示す移動量情報を取得する。
【0023】
位置検出部35は、端末情報取得部33で取得された識別関連情報に基づき、移動体端末2で取得した、識別情報を含む音を発したスピーカ4を特定する。位置検出部35は、特定されたスピーカ4の位置を、スピーカ4が設けられたエリアAにおける移動体端末2の初期位置として設定する。
位置検出部35は、識別情報を含む音を発したスピーカ4を特定した場合、そのスピーカ4が設けられたエリアAの磁場マップMG、およびレイアウトマップMLを、記憶部31から取得する。
さらに、位置検出部35は、端末情報取得部33で取得された移動量情報に基づいて、設定された初期位置からの移動量を取得する。位置検出部35は、取得した磁場情報と、初期位置からの移動体端末2の移動量とを、磁場マップMGにおける磁場の分布と対比する。位置検出部35は、初期位置からの移動量(距離)と、取得した磁場情報とが、磁場マップMGの磁場の分布に予め登録された磁場に合致する位置座標を特定する。このようにして位置検出部35は、エリアAにおける移動体端末2の位置を検出する。
【0024】
また、位置検出部35は、スピーカ4から発せられた音響信号に基づく音を取得した場合に生成される、識別情報に関する識別関連情報に含まれる時刻情報に基づいて、複数のスピーカ4から発せられた音に含まれる識別情報の取得順序を特定する。位置検出部35は、特定された取得順序に基づいて、例えば出入口13A、13Bにおける移動体端末2の移動方向を判定する。例えば、出入口13Aでは、位置検出部35は、第1スピーカ4Aで発せられた音に含まれる識別情報を検出した時刻情報と、第2スピーカ4Bで発せられた音に含まれる識別情報を検出した時刻情報とを取得する。位置検出部35は、第1スピーカ4Aで発せられた音に含まれる識別情報を検出した後に、第2スピーカ4Bで発せられた音に含まれる識別情報を検出した場合、移動体端末2は、出入口13Aで、エリアA1の外部から内部に進入しようとしている、と判定する。位置検出部35は、第2スピーカ4Bで発せられた音に含まれる識別情報を検出した後に、第1スピーカ4Aで発せられた音に含まれる識別情報を検出した場合、移動体端末2は、出入口13Aで、エリアA1の内部から外部に退出しようとしている、と判定する。
位置検出部35は、このようにして、エリアA(A1、A2)に移動体端末2が進入しようとしている場合、その進入先のエリアAで、移動体端末2の位置を検出する。
位置検出部35で検出される移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報は、ネットワークを介して、システム本体3の情報送信部37から移動体端末2の情報受信部26に送信される。
【0025】
位置検出システム1では、移動体端末2の位置検出を行うに先立ち、各スピーカ4における音圧分布の設定と、各エリアAでの磁場マップの生成を行っておく必要がある。
図5は、本実施形態におけるスピーカにおける音圧分布の設定方法の流れを示すフローチャートである。
図6は、エリアで実測した音圧分布の例を示す図である。
まず、
図3に示すように、各スピーカ4において、移動体端末2の使用が想定される、床17からの高さH(例えば、H=1.2m:
図3参照)における、音圧分布を求める(ステップS1)。これには、例えば、スピーカ4の指向特性に基づいた計算を行うことで、音圧分布が求められる。また、スピーカ4から実際に音を発し、音圧分布を実測してもよい。この場合、
図6に示すように、スピーカ4の直下において、高さH=1.2mの位置における音圧レベルを0dBと基準化する。そして、高さH=1.2mの水平面を、例えば50cm角の複数のセルCに区分し、各セルCにおける音圧レベルが、スピーカ4の直下のセルC0における音圧レベル(0dB)に対してどの程度減衰するのかを、実測する。このとき、スピーカ4の直下のセルから水平方向にある程度以上離れた位置では、1つおきのセルのみで音圧レベルを実測し、音圧レベルの実測に要する時間を省いてもよい。
【0026】
次いで、各スピーカ4で発する音に含まれる識別情報を、移動体端末2で検出可能とする範囲Xを設定する(ステップS2)。この範囲Xは、例えば、スピーカ4の直下の位置を中心とした円の内側に設定できる。この範囲Xは、例えば、出入口13A、13Bの幅に合わせて設定できる。
さらに、範囲X内で、識別情報を含む音を検出するための閾値を設定する(ステップS3)。例えば、移動体端末2で、音圧レベルが50dB以上であるときに、識別情報を含む音を検出する場合、閾値を50dBに設定する。
【0027】
図7は、
図6に示した音圧分布を、閾値に基づいて補正した音圧分布の一例を示す図である。
続いて、ステップS1で取得した音圧分布を、ステップS3で設定した閾値に基づいて補正する(ステップS4)。すなわち、
図7に示すように、範囲X内に位置する全てのセルCの音圧レベルが、閾値(50dB)以上となり、範囲X外に位置するセルCの音圧レベルが、閾値(50dB)未満となるように、音圧分布を調整する。その結果、スピーカ4の直下の位置のセルC0における音圧レベルは、例えば63dBとなる。つまり、スピーカ4の直下のセルC0における音圧レベルが、基準値0dBから補正後の63dBとなるように、スピーカ4からの出力値を決定する(ステップS5)。
【0028】
また、
図4に示したような、各エリアAの磁場マップを生成するには、例えば、複数の磁気センサを、床面と平行な一方向に間隔をあけて並べ、これら複数の磁気センサを、床面と平行、かつ上述の一方向と直交する方向に移動(スキャン)させる等、既存の技術を適宜利用できる。
これにより、例えば、
図4に示すような磁場マップMGを、エリアAごとに生成する。生成された磁場マップMGは、エリアAに関連付けて記憶部31に記憶させる。
【0029】
図8は、本実施形態における位置検出方法の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、システム本体3では、端末情報取得部33で、移動体端末2から、識別情報を含む音を取得した場合に送信される識別関連情報を受信したか否かを、予め設定された時間間隔で判定する(ステップS11)。
その結果、識別関連情報を受信していない場合、ステップS11に戻り、同様の処理を所定時間毎に繰り返し実行する。
ステップS11で、識別関連情報を受信した場合、続いて、システム本体3では、一定の時間内に、2つのスピーカ4から識別情報を取得したことを示す識別関連情報を受信したか否かを確認する(ステップS12)。例えば、利用者が出入口13Aを通過した場合、第1スピーカ4Aと第2スピーカ4Bから発せられる音を順次取得するため、システム本体3では、2つのスピーカ4から識別情報を取得したことを示す、2つの識別関連情報を受信する。この場合、ステップS13に進む。
これに対し、例えば、利用者が出入口13Aの近傍を横切るように通過した場合、第1スピーカ4A、第2スピーカ4Bのうち、いずれか一方のみから発せられた音に含まれる識別情報を取得することがある。この場合、システム本体3では、1つのスピーカ4のみから識別情報を取得したことを示す識別関連情報を、1回だけ受信する。この場合(ステップS12でNo)、ステップS11に戻る。
【0030】
システム本体3で、2つのスピーカ4から識別情報を取得したことを示す、2つの識別関連情報を受信した場合(ステップS12でYes)、スピーカ4が設けられた出入口13A、13Bにおける移動体端末2の移動方向を判定する(ステップS13)。具体的には、出入口13A、13Bにおいて、移動体端末2の移動方向が、エリアA1、A2に進入する方向であるか否かを判定する。これには、一定時間内に取得した2つの識別関連情報に関連付けられた時刻情報に基づいて、出入口13A、13Bに設けられた2つのスピーカ4で、識別情報を含む音を取得した順序を特定する。
例えば、端末情報取得部33は、出入口13Aにおいて、第1スピーカ4Aから識別情報を含む音を取得した後、第2スピーカ4Bから識別情報を含む音を取得していた場合、移動体端末2が、エリアA1に進入する方向に移動している、と判定する。また、端末情報取得部33は、出入口13Aにおいて、第2スピーカ4Bから識別情報を含む音を取得した後、第1スピーカ4Aから識別情報を含む音を取得していた場合、移動体端末2が、エリアA1から退出する方向に移動している、と判定する。また、端末情報取得部33は、出入口13Bにおいて、第3スピーカ4Cから識別情報を含む音を取得した後、第4スピーカ4Dから識別情報を含む音を取得していた場合、移動体端末2が、エリアA2に進入する方向に移動している、と判定する。また、端末情報取得部33は、出入口13Bにおいて、第4スピーカ4Dから識別情報を含む音を取得した後、第3スピーカ4Cから識別情報を含む音を取得していた場合、移動体端末2が、エリアA2から退出する方向に移動している、と判定する。
【0031】
ステップS13において、移動体端末2が、エリアA1、エリアA2に進入する方向に移動していると判定された場合、システム本体3では、進入先のエリアA1、A2の磁場マップMGとともに、レイアウトマップMLを記憶部31から取得する(ステップS14)。
そして、位置検出部35では、識別情報を含む音を発したスピーカ4(例えば第2スピーカ4B、第4スピーカ4D)の直下位置を、エリアA1、A2における初期位置として設定する(ステップS15)。
その後、システム本体3では、後に詳述する、位置検出部35で移動体端末2の位置を検出する位置検出処理S20に進む。
【0032】
また、ステップS13において、移動体端末2が、エリアA1、エリアA2から退出する方向に移動していると判定された場合(ステップS13でNo)、端末情報取得部33は、エリアA1、A2から退出した先に、磁場マップMGが設定されたエリアがあるか否かを確認する(ステップS16)。その結果、退出した先に、エリアが設定されていない場合、ステップS11に戻り、処理を繰り返す。
一方、退出した先に、磁場マップMGが設定されたエリアがある場合、システム本体3では、退出先のエリアAの磁場マップMGとともに、レイアウトマップMLを記憶部31から取得する(ステップS17)。
さらに、位置検出部35では、識別情報を含む音を発したスピーカ4(例えば第1スピーカ4A、第3スピーカ4C)の直下位置を、退出先のエリアAにおける初期位置として設定する(ステップS18)。
その後、システム本体3では、位置検出部35で移動体端末2の位置を検出する位置検出処理S20に進む。
【0033】
位置検出処理S20では、移動体端末2の磁場測定部22で測定される磁場情報と、移動量測定部23で測定される移動量情報とを、受信(取得)する(ステップS21)。
さらに、システム本体3では、予め設定された時間間隔毎に、ステップS21で取得された移動量情報に基づいて、初期位置からの移動量を取得する。さらに、取得された初期位置からの移動量と、磁場情報を、ステップS14、S17で取得した磁場マップMGにおける磁気の分布とを対比することで、エリアA1、A2における移動体端末2の位置を検出する(ステップS22)。
さらに、システム本体3では、ステップS22で検出した移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報を外部に出力する(ステップS23)。例えば、システム本体3では、移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報として、移動体端末2が位置しているエリアA1、A2のレイアウトマップMLにおける、移動体端末2の位置を示す画像情報を、システム本体3の情報送信部37から、移動体端末2の情報受信部26に送信する。移動体端末2では、システム本体3から受信した情報に基づき、情報出力部5で、移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報として、移動体端末2が位置しているエリアA1、A2のレイアウトマップMLにおける、移動体端末2の位置を表示する。これにより、移動体端末2の利用者である移動体Mは、エリアAにおける自らの位置を認識できる。
【0034】
上述したような位置検出システム1は、建物を含む領域における移動体Mの位置を検出する位置検出システム1であって、建物を含む領域に設定されたエリアAに設けられたスピーカ4と、スピーカ4が設けられたエリアAにおける磁場の分布を示す磁場マップMGが記憶された記憶部31と、移動体Mに所持または装着された移動体端末2から送信される情報を取得する端末情報取得部33と、エリアAにおける移動体Mの位置を検出する位置検出部35と、を備え、スピーカ4は、スピーカ4に割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を発し、端末情報取得部33は、移動体端末2で、スピーカ4から発せられた音響信号に基づく音を取得した場合に、取得された音に含まれる識別情報に関する識別関連情報と、移動体端末2で測定された磁場に関する磁場情報と、移動体端末2の移動量を示す移動量情報と、を取得可能であり、位置検出部35は、識別関連情報に基づき、移動体端末2で取得した、識別情報を含む音を発したスピーカ4の位置を初期位置として設定し、スピーカ4が設けられたエリアAの磁場マップMGを、記憶部31から取得し、磁場情報、初期位置からの移動体端末2の移動量を示す移動量情報、および磁場マップMGにおける磁場の分布に基づき、エリアAにおける移動体端末2の位置を検出する。
このような構成によれば、建物を含む領域に設定されたエリアAに設けられたスピーカ4は、そのスピーカ4に割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を発する。移動体Mに所持または装着された移動体端末2で、スピーカ4から発せられた音を取得した場合、端末情報取得部33は、取得された音に含まれる識別情報に関する識別関連情報を取得する。位置検出部35は、識別関連情報に基づいて、移動体端末2で取得した、識別情報を含む音を発したスピーカ4の位置を初期位置として設定する。
また、位置検出部35は、初期位置として設定されたスピーカ4が設けられたエリアAの磁場マップMGを、記憶部31から取得する。位置検出部35は、端末情報取得部33で取得された、移動体端末2で測定された磁場に関する磁場情報と、初期位置からの移動体端末2の移動量を示す移動量情報と、スピーカ4が設けられたエリアAの磁場マップMGにおける磁場の分布に基づいて、そのエリアAにおける移動体端末2の位置を検出する。このようにして、スピーカ4が設けられた位置に設定された初期位置からの移動体端末2の移動量と、移動体端末2で測定された磁場に関する磁場情報とを、磁場マップMGにおける磁場の分布に対比することで、エリアA内に同じ磁場量の位置が複数存在している場合であっても、移動体端末2の位置を容易に特定できる。したがって、建物を含む領域(例えば、屋内)における移動体Mの位置検出を、高精度、かつ効率良く行うことが可能となる。
【0035】
また、位置検出システム1は、建物を含む領域の複数の位置にスピーカ4が設置され、位置検出部35は、端末情報取得部33で取得された識別関連情報に基づき、移動体端末2で取得した、識別情報を含む音を発したスピーカ4を特定し、特定されたスピーカ4の位置を初期位置として設定する。
このような構成によれば、複数の位置にスピーカ4が設けられている場合、スピーカ4から発する音に含まれる識別情報に基づいて、移動体端末2で音を取得したスピーカ4を特定することができる。これにより、特定されたスピーカ4の位置を初期位置として設定することで、複数のスピーカ4が設けられたエリアAにおける移動体端末2の位置検出を、高精度かつ効率良く行うことができる。
【0036】
また、移動体端末2は、スピーカ4から発せられた、識別情報を含む音を取得する音取得部21と、磁場を測定する磁場測定部22と、移動体端末2の移動量を測定する移動量測定部23と、音取得部21で取得された音に含まれる識別情報に関する識別関連情報、磁場測定部22で測定された磁場に関する磁場情報、移動量測定部23で測定された移動量に関する移動量情報を送信する情報送信部25と、を備える。
このような構成によれば、音取得部21、磁場測定部22、移動量測定部23、および情報送信部25を備えた移動体端末2を、移動体Mに所持または装着させることで、移動体端末2の位置検出を、高精度かつ効率良く行うことができる。このような移動体端末2としては、例えば既存のスマートフォン等の携帯型通信端末を用いることができる。
【0037】
また、位置検出システム1は、位置検出部35で検出された、移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報を外部に出力する情報出力部5、をさらに備える。
このような構成によれば、位置検出部35で検出された、移動体端末2の位置を含むエリアAに関する情報を外部に出力することで、エリアAにおける移動体端末2の位置、すなわち移動体Mの位置を容易に把握することができる。
【0038】
また、位置検出システム1は、エリアAに対する出入口に、エリアAに出入りする方向に間隔をあけてスピーカ4が複数設けられ、位置検出部35は、複数のスピーカ4から発せられた音に含まれる識別情報の取得順序に基づいて、エリアAに対する移動体端末2の移動方向を特定する。
このような構成によれば、エリアAに対する出入口に、エリアAに出入りする方向に間隔をあけてスピーカ4が複数設けることで、複数のスピーカ4から発せられた音に含まれる識別情報の取得順序に基づいて、エリアAに対する移動体端末2の移動方向を容易に特定することができる。これにより、移動体MがエリアAの外部から内部に進入しようとしているのか、エリアAの内部から外部に退出しようとしているのかを、検出することができる。
【0039】
上述したような位置検出方法は、建物を含む領域における移動体の位置を、建物を含む領域に設定されたエリアAに設けられたスピーカ4と、エリアAにおける磁場の分布を示す磁場マップMGとを用いて検出する位置検出方法であって、スピーカ4から発せられた、スピーカ4に割り当てられた識別情報を含む音響信号に基づく音を、移動体Mに所持または装着された移動体端末2で取得した場合に、音に含まれる識別情報に関する識別関連情報を移動体端末2から取得し、受信された識別関連情報に基づき、移動体端末2で取得した識別情報を含む音を発したスピーカ4の位置を初期位置として設定し、スピーカ4が設けられたエリアAの磁場マップMGを取得し、移動体端末2で測定された磁場に関する磁場情報、および初期位置からの移動体端末2の移動量を示す移動量情報を、移動体端末2から取得し、磁場情報、および移動量情報と、磁場マップMGにおける磁場の分布とに基づき、エリアAにおける移動体端末2の位置を検出する。
このような構成によれば、移動体端末2で、建物を含む領域に設定されたエリアAに設けられたスピーカ4から発せられた音を取得した場合、取得された音に含まれる識別情報に基づいて、移動体端末2で取得した、識別情報を含む音を発したスピーカ4の位置を初期位置として設定する。
さらに、移動体端末2で測定された磁場に関する磁場情報と、初期位置からの移動体端末2の移動量を示す移動量情報と、スピーカ4が設けられたエリアAの磁場マップMGにおける磁場の分布に基づいて、そのエリアAにおける移動体端末2の位置を検出する。
このようにして、スピーカ4が設けられた位置に設定された初期位置からの移動体端末2の移動量と、移動体端末2で測定された磁場に関する磁場情報とを、磁場マップMGにおける磁場の分布に対比することで、エリアA内に同じ磁場量の位置が複数存在している場合であっても、移動体端末2の位置を容易に特定できる。したがって、建物を含む領域(例えば、屋内)における移動体Mの位置検出を、高精度、かつ効率良く行うことが可能となる。
【0040】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の位置検出システム、位置検出方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、スピーカ4を、天井15に設けるようにしたが、これに限られない。例えば、
図9に示すように、スピーカ4を、床17に埋め込むようにしてもよい。この場合、信号出力部41、およびアンプ42は、床17と、当該階のスラブ16Bとの間の床下に配置されている。
また、
図10に示すように、スピーカ4を、壁18に埋め込むようにしてもよい。この場合、スピーカ4は、横方向に向けて音を発する。この場合、信号出力部41、およびアンプ42は、壁18内に配置される。
【0041】
また、上記実施形態では、出入口13A、13Bに2つずつのスピーカ4を設けるようにしたが、出入口13A、13Bは、エリアA1、A2に出入り可能な階段、廊下(渡り廊下を含む)、エレベータ出入口等であってもよい。
また、エリアA2からエリアA1に向かうエスカレータのように動作が一方向に定まる通路11から出入りする場合、移動体Mの移動体端末2の移動方向は、
図11に示すように一方向に定まる。このような場合、
図2のようにエリアA1、A2にそれぞれ2つのスピーカ4A、4B、4C、4Dを設けず、1つのみのスピーカ4から発する音に含まれる認識信号にもとづいて、初期位置の設定を行うようにしてもよい。
なお、
図11に示した動作が一方向に定まる通路11の例としては、エスカレータの他に、空港における出入国時の順路、展示施設の順路、遊園地の順路、もしくは歩く歩道のような移動方向が一方向に規制される場所、または避難時のみに使用する非常出口などがある。
【0042】
また、上記実施形態では、複数のエリアAに、複数のスピーカ4が設けられた構成としたが、これに限られない。例えば、1つのみのエリアAに、1つのスピーカ4が設けられている場合であっても、スピーカ4の位置を初期位置として、エリアA内における移動体端末2の位置を検出可能である。
上記実施形態では、移動体Mとして、人を例示したが、これに限らない。移動体Mは、例えば、ペット(動物)等であってもよい。また、移動体Mは、建物を含む領域で移動可能なロボット、車両等であってもよい。
移動体端末2の移動量を測定する移動量測定部23は、例えば移動体Mがロボット、車両等である場合、ロボット、車両に備えた車輪の回転量を検出するエンコーダを用いてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、位置検出システム1は、例えば、移動体M(人)が、建物を含む領域における自らの位置を認識するために用いられるようにしたがこれに限られない。位置検出システム1は、移動体端末2を所持または装着した移動体M(人、ペット、ロボット、車両等)の建物を含む領域における位置を、他者が認識するために用いることもできる。例えば、位置検出システム1は、建物やエリアの管理者が、エリアに対する移動体Mの出入り、エリア内の各位置に位置する移動体Mの数の把握等を行うために用いてもよい。このような場合、情報出力部5は、移動体Mが所持または装着する移動体端末2ではなく、他者(管理者)が用いるスマートフォン、タブレット型端末、コンピュータ端末等に備えるようにしてもよい。
また、情報出力部5では、移動体端末2の位置を含むエリアに関する情報として、そのエリアの配置を示すレイアウトマップMLを出力するようにしたが、これに限られない。情報出力部5では、移動体端末2の位置を含むエリアに関する情報として、例えば、「〇〇階、△△エリアにいます」等といった、テキスト情報等で出力するようにしてもよい。また、例えばそのエリアに店舗等がある場合、情報出力部5では、移動体端末2の位置を含むエリアに関する情報として、移動体端末2の位置の近傍に位置する店舗に関する情報等を出力するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、システム本体3が備える構成は、複数箇所に配置され、互いに通信可能な複数のコンピュータに分散して備えるようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 位置検出システム
2 移動体端末
3 システム本体
4 スピーカ
4A 第1スピーカ
4B 第2スピーカ
4C 第3スピーカ
4D 第4スピーカ
5 情報出力部
11 通路
12A、12B 室
13A、13B 出入口
15 天井
16A、16B スラブ
17 床
18 壁
21 音取得部
22 磁場測定部
23 移動量測定部
25 情報送信部
26 情報受信部
31 記憶部
33 端末情報取得部
35 位置検出部
37 情報送信部
41 信号出力部
42 アンプ
A、A1、A2 エリア
C、C0 セル
H 高さ
M 移動体
MG 磁場マップ
ML レイアウトマップ
X 範囲