(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014616
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】手用サポーター
(51)【国際特許分類】
A41D 13/08 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
A41D13/08 101
A41D13/08 108
A41D13/08 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117318
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510201562
【氏名又は名称】ディーエムチェーン協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】細江 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】▲かせ▼野 英憲
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA06
3B211AA10
3B211AB18
3B211AC04
3B211AC17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】親指、又は/及び手関節の動きの自由度を維持しつつ安定的に固定して、親指、又は/及び手関節への負担を軽減できる手用サポーターを提供する。
【解決手段】伸縮性を有する生地で形成され、手の親指を他指から分離して挿通する親指挿通部11と手首を挿通する手首挿通部13とを有する本体部1と、伸縮性を有する第一の帯状体から形成され、第一の帯状体の一端が親指挿通部の近傍から手首挿通部の近傍までの領域内で固着され、手首を巻回して、第一の帯状体の他端で第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する支持部2と、伸縮性を有する第二の帯状体から形成され、第二の帯状体の一端が親指挿通部の近傍の位置のうち支持部とは異なる位置に固着され、第二の帯状体の生地の中間が開孔されてなる生地開孔部33が配設され、生地開孔部に親指を挿通して、第二の帯状体の他端で第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する補助支持部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する生地で形成され、着用者の手の親指を他指から分離して挿通する親指挿通部と着用者の手首を挿通する手首挿通部とを有する本体部と、
伸縮性を有する第一の帯状体から形成され、当該第一の帯状体の一端が前記親指挿通部の近傍から前記手首挿通部の近傍までの領域内に固着され、着用者の手首を巻回して、当該第一の帯状体の他端で当該第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する支持部と、
伸縮性を有する第二の帯状体から形成され、当該第二の帯状体の一端が前記親指挿通部の近傍の位置のうち前記支持部とは異なる位置で固着され、当該第二の帯状体の生地の中間が開孔されてなる生地開孔部が配設され、当該生地開孔部に着用者の親指を挿通して、当該第二の帯状体の他端で前記第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する補助支持部と、を備える
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項2】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
前記支持部が、前記第一の帯状体の一端を前記親指挿通部の近傍に固着されてなる
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項3】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
前記支持部が、前記第一の帯状体の一端を前記手首挿通部の近傍に固着されてなる
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項4】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
前記補助支持部の前記第二の帯状体の一端が、前記親指挿通部を挟んで前記支持部の固着位置と対向する位置付近に固着される
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項5】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
前記本体部が、着用者の手の他指を挿通する他指挿通部と、着用者の手首を挿通する手首挿通部と、を備える
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項6】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
前記補助支持部を構成する前記第二の帯状体の一端が、着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分に固着される
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項7】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
前記支持部が、
前記第一の帯状体の一側面に面ファスナーのループ面を有すると共に、
前記第一の帯状体の他端に面ファスナーのフック面を有し、
前記補助支持部が、
前記第二の帯状体の他端に面ファスナーのフック面を有する
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項8】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
前記本体部が、
前記親指挿通部の近傍領域に配設され、着用者の手首から指に向かう長手方向の伸縮性よりも、当該長手方向に直交する短手方向の伸縮性が高い伸縮部材を編成してなる第一伸縮領域に配設され、着用者の親指を位置決め支持する親指位置決め支持部と、
前記第一伸縮領域の周囲に配設され、前記長手方向と前記短手方向の双方向に伸縮性を有する伸縮部材を編成してなる第二伸縮領域に配設され、着用者の前記他指を位置決め支持する他指位置決め支持部と、から構成される
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項9】
請求項8に記載の手用サポーターにおいて、
前記親指位置決め支持部が、
前記長手方向に沿って一方向ワンウェイラッセル編みで編成してなると共に、
前記短手方向に沿ってウレタン糸又はゴム糸で編成してなる
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項10】
請求項8に記載の手用サポーターにおいて、
前記親指位置決め支持部の前記短手方向の最大伸度が、前記長手方向の最大伸度の5~10倍である
ことを特徴とする手用サポーター。
【請求項11】
請求項1に記載の手用サポーターにおいて、
着用者の左手又は右手の手首に着用可能な左右兼用である
ことを特徴とする手用サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者の日常動作を支援することのできる手用サポーターに関し、特に、親指、又は/及び手関節の安定性を向上して、親指、又は/及び手関節への負担を軽減できる手用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
親指は日常生活において、物をつまむ、フライパンを左右に振る、箸をもつ、ドアノブをまわす、荷物を持ち運ぶ、電車の吊り革を握る等の手の動きに関わっており、重要な役割を担っている。近年では、パソコンやスマートフォンなどの長時間使用により親指や手首に痛みや不快感があると感じるケースも増えており、酷使により手首や指特有の疾患も増えている。
【0003】
手首や指の可動域を酷使する動作としては、手首を手のひら側に折る動作(掌屈)、手首の関節を親指方向(橈骨側)に屈曲する動作(橈屈)、手首の関節を小指方向(尺骨側)に屈曲する動作(尺屈)が挙げられる。
【0004】
手首や指の酷使により物を掴む動作や、摘まむ動作がつらくなり、長時間、日常的に手を使用することがむずかしくなり、日常生活に支障を来す。
【0005】
従来、この対応のために、帯状のテーピングテープ(身体の部分に貼着して使用する伸縮性又は非伸縮性粘着布テープ)又はバンデージや丸編で編成された略筒状のサポーターなどが使用されている。
【0006】
これらのうち、テーピングテープは、使い切りで経済的ではなく、使い捨てであることから環境負荷も高く、また着用者の体質によってはテーピングテープの粘着剤で皮膚にかぶれを生じさせるうえに、高齢者などの皮膚の弱い着用者にはテーピングテープを剥がす際に表皮剥離を生じさせる虞がある。
【0007】
また、例えば、従来の手用サポーターは、面ファスナーのループ面を有する織物で織成され、着用者の手首に巻回される巻回部及び前記着用者の手の甲又は手の平から手首まで配置される支持部からなる帯状の本体部と、前記本体部の一端に接合され、前記着用者の手の指が挿通されるアンカー部と、前記本体部の他端に接合され、前記本体部のループ面に脱着する面ファスナーのフック面を有する係着部と、を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、例えば、従来の手用サポーターは、人体の手首に装着して使用する手首用サポーターとして、前記手首の少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の手首覆部、及び人体の親指の少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の親指覆部を一体に形成してなるサポーター基部と、このサポーター基部の表面に、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材の塗布により形成するとともに、前記親指覆部から前記手首覆部に至り、前記親指を動かした際に当該親指の動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能な親指荷重付加メンバ部を少なくとも有してなる荷重付加パターン部とを備えるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
また、例えば、従来の手用サポーターとしては、伸縮性を有する1本の弾性帯の両端部の何れか一方を螺旋状に360度捻って縫製又は溶着等により接合させ、更にこれにより弾性帯のクロスする適宜箇所を縫製又は溶着等により接合することにより2つの環状部を有する8の字状に立体的に交叉する3次元螺旋状のサポーターがある(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
また、例えば、従来の手用サポーターとしては、日常生活用途ではないが、バレーボールのスパイク練習用のスパイク技術を習得のために、手首を固定する手首用サポーターであって、手の甲から手首の背面を経て前腕の先端部にまで及ぶ手首+背面側の面を覆うように配置するパッドに、該パッドを手指に掛け止めるための指掛けベルトと、パッドを前腕の先端部に締め止めるためのストラップベルトとが取り付けられ、パットの外側の表地と肌側の裏地との間に、手首の背屈を阻止する剛直なプレートからなる剛性芯材が内包されている手首用サポーターがある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開2015/133480
【特許文献2】特開2022‐20906号公報
【特許文献3】実用新案登録第3152361号公報
【特許文献4】特開2017‐122287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の手用サポーターは、特許文献1及び3のような1つの帯状で構成されるものでは、その簡素な構成上、強度としては帯を締める程度にとどまり、親指の動きの自由度を持たせつつ固定できるほどの強度までは得られ難いという課題がある。
【0013】
このような帯状の構成とは異なるものとして、特許文献4のような従来の手用サポーターもあるが、これは、バレーボールのスパイク練習用であることからも、剛直なプレートからなる剛性芯材が内包されており、これは日常用途における自由な動作を制限するものであり、日常用途としては利用できない。
【0014】
また、特許文献2のように、親指を動かした際に当該親指の動きに対して所定の荷重を付与するようなものでは、弾性付着材による親指の固定をすることから、手用サポーターに所定の荷重として相当の重さが必要となり、手用サポーターとしては快適な着用感が得られ難く、持ち運び難さもあり、扱いにくいものとなっている。
【0015】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、親指、又は/及び手関節の動きの自由度を維持しつつ安定的に固定して、親指、又は/及び手関節への負担を軽減できる手用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願に開示する手用サポーターは、伸縮性を有する生地で形成され、着用者の手の親指を他指から分離して挿通する親指挿通部と着用者の手首を挿通する手首挿通部とを有する本体部と、伸縮性を有する第一の帯状体から形成され、当該第一の帯状体の一端が前記親指挿通部の近傍から前記手首挿通部の近傍までの領域内に固着され、着用者の手首を巻回して、当該第一の帯状体の他端で当該第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する支持部と、伸縮性を有する第二の帯状体から形成され、当該第二の帯状体の一端が前記親指挿通部の近傍の位置のうち前記支持部とは異なる位置で固着され、当該第二の帯状体の生地の中間が開孔されてなる生地開孔部が配設され、当該生地開孔部に着用者の親指を挿通して、当該第二の帯状体の他端で前記第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する補助支持部と、を備えるものである。
【0017】
このように、本願に開示する手用サポーターは、伸縮性を有する生地で形成され、着用者の手の親指を他指から分離して挿通する親指挿通部と着用者の手首を挿通する手首挿通部とを有する本体部と、伸縮性を有する第一の帯状体から形成され、当該第一の帯状体の一端が前記親指挿通部の近傍から前記手首挿通部の近傍までの領域内に固着され、着用者の手首を巻回して、当該第一の帯状体の他端で当該第一の帯状体と脱着自在に係着する支持部と、伸縮性を有する第二の帯状体から形成され、当該第二の帯状体の一端が前記親指挿通部の近傍の位置のうち前記支持部とは異なる位置で固着され、当該第二の帯状体の生地の中間が開孔されてなる生地開孔部が配設され、当該生地開孔部に着用者の親指を挿通して、当該第二の帯状体の他端で前記第一の帯状体と脱着自在に係着する補助支持部と、を備えることから、前記支持部と補助支持部が、互いに近傍する位置から親指と手首を簡素な構成で強固に二重で締め付けて加圧するように支持固定されて、前記支持部が手首を固定して手首の左右の動きが固定されるとともに、前記補助支持部が親指と手首の過度な動きを抑制することとなり、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに作用する筋肉である腕橈骨筋の動作が円滑化される。加えて、この支持部が伸縮性のある前記帯状体で形成される。これらにより、着用者がその固定力を自在に調整することができ、着用者にとって心地良い加圧感と着用感が得られる。
【0018】
また、本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記支持部が、前記第一の帯状体の一端を前記親指挿通部の近傍に固着されてなるものである。このように、前記支持部が、前記第一の帯状体の一端を前記親指挿通部の近傍に固着されてなることから、前記支持部と補助支持部が、さらに互いに近傍する位置から親指と手首を簡素な構成で強固に二重で締め付けて加圧するように支持固定されて、前記支持部が手首を固定して手首の左右の動きが固定されるとともに、前記補助支持部が親指と手首の過度な動きを抑制することとなり、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに作用する筋肉である腕橈骨筋の動作がより円滑化される。加えて、この支持部が伸縮性のある前記帯状体で形成される。これらにより、着用者がその固定力を自在に調整することができ、着用者にとって心地良い加圧感と着用感が得られる。
【0019】
また、本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記支持部が、前記第一の帯状体の一端を前記手首挿通部の近傍に固着されてなるものである。このように、前記支持部が、前記第一の帯状体の一端を前記手首挿通部の近傍に固着されてなることから、前記支持部と補助支持部が、親指側と手首側の両サイドから各々親指と手首を簡素な構成で強固に二重で締め付けて加圧するように支持固定されて、前記支持部が手首近傍から手厚く手首を固定して手首の左右の動きがより強固に固定されるとともに、前記補助支持部が親指と手首の過度な動きを抑制することとなり、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに作用する筋肉である腕橈骨筋の動作が円滑化される。加えて、この支持部が伸縮性のある前記帯状体で形成される。これらにより、着用者がその固定力を自在に調整することができ、着用者にとって心地良い加圧感と着用感が得られる。
【0020】
また、本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記補助支持部の前記第二の帯状体の一端が、前記親指挿通部を挟んで前記支持部の固着位置に対向する位置付近に固着されるものである。このように、前記補助支持部の前記第二の帯状体の一端が、前記親指挿通部を挟んで前記支持部の固着位置に対向する位置付近に固着されることから、前記支持部と補助支持部が、互いに対向する位置から親指と手首を簡素な構成で双方向から同時に、また強固に二重で締め付けて加圧するように支持固定されて、前記支持部が手首を固定して手首の左右の動きが固定されるとともに、前記補助支持部が親指と手首の過度な動きを抑制することとなり、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに作用する筋肉である腕橈骨筋の動作が円滑化される。加えて、この支持部が伸縮性のある前記帯状体で形成される。これらにより、着用者がその固定力を自在に調整することができ、着用者にとって心地良い加圧感と着用感が得られる。
【0021】
本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記本体部が、着用者の手の他指を挿通する他指挿通部と、着用者の手首を挿通する手首挿通部と、を備えるものである。このように、前記本体部が、着用者の手の他指を挿通する他指挿通部と、着用者の手首を挿通する手首挿通部と、を備えることから、着用時に着用者の手首から安定的に位置決めできることとなり、これに連動して着用者の親指と他指の位置決めも安定化することができ、着用者にとってより快適なフィット感が得られる。
【0022】
本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記補助支持部を構成する前記第二の帯状体の一端が、着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分に固着されるものである。このように、前記補助支持部を構成する前記第二の帯状体の一端が、着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分に固着されることから、前記補助支持部が手首方向に向かう方向に沿って、親指を固定しやすい位置で固定でき、親指、又は/及び手関節を加圧して固定することができる。
【0023】
本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記支持部が、前記第一の帯状体の一側面に面ファスナーのループ面を有すると共に、前記第一の帯状体の他端に面ファスナーのフック面を有し、前記補助支持部が、前記第二の帯状体の他端に面ファスナーのフック面を有するものである。このように、前記支持部が、前記第一の帯状体の一側面に面ファスナーのループ面を有すると共に、前記第一の帯状体の他端に面ファスナーのフック面を有し、前記補助支持部が、前記第二の帯状体の他端に面ファスナーのフック面を有することから、前記補助支持部と前記支持部が、互いに面ファスナーのフック面とループ面に係着できることとなり、簡素な構成で、着用者自身でその固定力を自在に調整することができる。また、着用者にとって心地よい着用感と着用強度が得られる。
【0024】
本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記本体部が、前記親指挿通部の近傍領域に配設され、着用者の手首から指に向かう長手方向の伸縮性よりも、当該長手方向に直交する短手方向の伸縮性が高い伸縮部材を編成してなる第一伸縮領域に配設され、着用者の親指を位置決め支持する親指位置決め支持部と、前記第一伸縮領域の周囲に配設され、前記長手方向と前記短手方向の双方向に伸縮性を有する伸縮部材を編成してなる第二伸縮領域に配設され、着用者の前記他指を位置決め支持する他指位置決め支持部と、から構成されるものである。
【0025】
このように、前記本体部が、前記親指挿通部の近傍領域に配設され、着用者の手首から指に向かう長手方向の伸縮性よりも、当該長手方向に直交する短手方向の伸縮性が高い伸縮部材を編成してなる第一伸縮領域に配設され、着用者の親指を位置決め支持する親指位置決め支持部と、前記第一伸縮領域の周囲に配設され、前記長手方向と前記短手方向の双方向に伸縮性を有する伸縮部材を編成してなる第二伸縮領域に配設され、着用者の前記他指を位置決め支持する他指位置決め支持部と、から構成されることから、前記本体部が伸縮性の異なる2つの領域から構成されることで、親指が前記長手方向に固定されると共に前記短手方向には柔軟な可動が可能となり、親指の過度な動きが抑制されることとなり、親指を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに作用する筋肉である腕橈骨筋の動作が円滑化される。
【0026】
本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記親指位置決め支持部が、前記長手方向に沿って一方向ワンウェイラッセル編みで編成してなると共に、前記短手方向に沿ってウレタン糸又はゴム糸で編成してなるものである。このように、前記親指位置決め支持部が、前記長手方向に沿って一方向ワンウェイラッセル編みで編成してなると共に、前記短手方向に沿ってウレタン糸又はゴム糸で編成してなることから、簡素な構成で、親指が前記長手方向に固定されると共に前記短手方向には柔軟な可動が可能となり、親指の過度な動きが抑制されることとなり、親指を左右に動かしたときの不快感を軽減することができ、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに作用する筋肉である腕橈骨筋の動作が円滑化される。
【0027】
本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、前記親指位置決め支持部の前記短手方向の最大伸度が、前記長手方向の最大伸度より大きいのが好ましい。例えば、前記短手方向の最大伸度は、前記長手方向の最大伸度の1.5倍以上、更には2倍以上であるものが好ましい。このように、前記親指位置決め支持部の前記短手方向の最大伸度が、前記長手方向の最大伸度の5~10倍であることから、親指が前記短手方向には伸びにくい生地で固定されると共に前記長手方向には伸びやすい生地で柔軟な可動が可能となり、親指の過度な動きが抑制されることとなり、親指を左右に動かしたときの不快感を軽減することができ、腕橈骨筋の動作が円滑化される。
【0028】
本願に開示する手用サポーターは、必要に応じて、着用者の左手又は右手の手首に着用可能な左右兼用であるものである。このように、着用者の左手又は右手の手首に着用可能な左右兼用であることから、着用者にとっては扱いやすいものとなる。また、製造工程を簡素化できることとなり、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーター及びその補助支持部の構成図を示す。
【
図2】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの正面図を示す。
【
図3】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの構成を示す説明図を示す。
【
図4】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの側面図を示す。
【
図5】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの補助支持部の構成図を示す。
【
図6】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの構成図の一例を示す。
【
図7】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの着用状態の説明図を示す。
【
図8】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの着用状態の説明図を示す。
【
図9】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターの着用状態の説明図を示す。
【
図10】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターのその他の構成図を示す。
【
図11】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターのその他の構成図を示す。
【
図12】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターのその他の構成図を示す。
【
図13】本願発明の第1の実施形態に係る手用サポーターのその他の構成図を示す。
【
図14】本願発明の第2の実施形態に係る手用サポーターの構成図を示す。
【
図15】本願発明の第2の実施形態に係る手用サポーターの正面図を示す。
【
図16】本願発明の第2の実施形態に係る手用サポーターの構成図を示す。
【
図17】本願発明の第2の実施形態に係る手用サポーターの構成図を示す。
【
図18】本願発明の第2の実施形態に係る手用サポーターの第一伸縮領域の説明図を示す。
【
図19】本願発明の第2の実施形態に係る手用サポーターの着用状態の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
本願の第1の実施形態に係る手用サポーターについて上記
図1~
図13を用いて以下説明する。
【0031】
本願の第1の実施形態に係る手用サポーターは、
図1に示すように、伸縮性を有する生地で形成され、着用者の手の親指を他指から分離して挿通する親指挿通部11と着用者の手首を挿通する手首挿通部13とを有する本体部1と、伸縮性を有する第一の帯状体から形成され、この第一の帯状体の一端(支持部一端2a)がこの親指挿通部11の近傍からこの手首挿通部13の近傍までの領域内に固着され、着用者の手首を巻回して、この第一の帯状体の他端でこの第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する支持部2と、伸縮性を有する第二の帯状体から形成され、この第二の帯状体の一端がこの親指挿通部11の近傍の位置のうち支持部2とは異なる位置で固着され、この第二の帯状体の生地の中間が開孔されてなる生地開孔部33が配設され、この生地開孔部33に着用者の親指を挿通して、この第二の帯状体の他端でこの第一の帯状体の一側面と脱着自在に係着する補助支持部3と、を備えるものである。
【0032】
この本体部1に配設される親指挿通部11は、筒状で形成された開口形状とすることができ、親指が挿通できる大きさであれば、その開口形状の開口幅は限定されないが、親指を固定する点からは、適度な締付け感のある開口幅であることが好適であり、例えば、開口幅を約2~3cm程度とすることができる。
【0033】
他指とは、親指以外の人差し指、中指、薬指、及び小指の4本の指を意味する。
【0034】
この本体部1における他指の固定については、例えば、この本体部1に筒状で形成された他指挿通部12を備えることで可能となる。この他指挿通部12は、その構成は特に限定されないが、例えば、他指を構成する4本の各々を分離して挿通する形状でもよいし、他指を構成する3本と1本の各々を分離して挿通する形状でもよいし、他指を構成する2本と2本の各々を分離して挿通する形状でもよい。この他指挿通部12は、上記の親指挿通部11と隣接していてもよいし、所定の間隔が空いていても良い。
【0035】
また、この手首挿通部13は、筒状で形成された開口形状を有し、着用者の手を手首から挿通する。
【0036】
このように、前記本体部が、着用者の手の他指を挿通する他指挿通部12と、着用者の手首を挿通する手首挿通部13と、を備えることで、着用時に着用者の手首から安定的に位置決めできることとなり、これにより親指と他指の位置決めも安定化することができ、着用者にとって快適なフィット感が得られる。
【0037】
この支持部2は、この支持部2の一端である支持部一端2aで上記本体部1に固着されると共に、伸縮性を有する第一の帯状体の生地本体としての支持本体部21と、この支持部2の他端である支持部他端2bに配設される支持係着部22と、から構成される。
【0038】
この支持部2は、伸縮性を有する帯状織物で構成されることから、着用者の手に追従し易く、着用者自身で固定力を調整しながら巻回させることができ、着用者の手首の動きに対して無理な力が掛からず、安定した固定力が得られ、反復使用が可能なために経済的である。
【0039】
この支持部2の配設位置は、この第一の帯状体の一端である支持部一端2aが、この本体部1の親指挿通部11の近傍からこの手首挿通部13の近傍までの領域内に固着されていれば特に限定されず、例えば、
図1に示すように、この本体部1の親指挿通部11の近傍である親指の長母指伸筋側に配設することができる。すなわち、この親指挿通部11のうち着用者の親指を挟んで第1指間腔と対向する位置付近に配設することができる。
【0040】
この支持部2の長さとしては、着用者の手の甲又は手の平を支持する部分の長さと、着用者の手首を保護するために、着用者の手首を少なくとも一周する部分の長さが必要であり、性別や年齢等により手の大きさに個人差はあり、特に制限されないが、例えば、30cm~50cm、好ましくは40cm~50cmの長さに設定することが好適である。
【0041】
この支持部2の幅は、特に限定されないが、例えば、その幅を2cm~5cm、好ましくは3~4cmとすることができる。
【0042】
この支持部2の厚みは、特に限定されないが、厚すぎる場合には、着用者の手首に巻回する際に嵩張り巻き難くなり、薄すぎる場合には、生地の織物自体が折れ易く所望の固定力が得られにくくなる傾向となるため、例えば、この支持部2の経糸方向の最大伸度が60%であれば、例えば、3mm以下にすることが好適である。
【0043】
他方、この補助支持部3は、
図1(b)に示すように、伸縮性を有する第二の帯状体の生地本体としての補助支持本体部31と、この補助支持本体部31の生地の中間が開孔されてなる生地開孔部33と、この補助支持部3の他端(補助支持部他端3b)に配設される補助支持係着部32と、から構成される。
【0044】
また、この生地開孔部33は、
図1(b)に示すように、この補助支持本体部31の生地の中央が長手方向に沿って開孔されて形成されたもので、この補助支持本体部31の生地の中央が貫通していればその形状は特に限定されない。
【0045】
この生地開孔部33の開孔形状は、自然載置で、開口状態でもよいし、閉口状態でもよい。いずれの場合でも着用者の親指が挿通可能となる。自然載置で開口状態の開孔形状としては、円形状でもよいし楕円形状でもよい。自然載置で閉口状態となるものとしてスリット形状が挙げられる。簡素な構成で且つ製造しやすい点から、スリット形状であることが好適である。
【0046】
この生地開孔部33によりこの補助支持本体部31の生地の中央が貫通することで左右に分断した生地として、一の分断部31aと他の分断部31bが形成されている。
【0047】
この補助支持部3の配設位置は、この補助支持部3の一端である補助支持部一端3aが、この親指挿通部11の近傍で固着されていれば特に限定されないが、好適には、この親指挿通部11を挟んで支持部2の固着位置と対向する位置付近に固着されることである。例えば、
図2に示すように、着用者の親指の長母指伸筋側に配設された支持部2に対して、親指挿通部11を挟んで対向する位置付近である、着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分Aに固着されることが好適である。
【0048】
第1指間腔とは、親指と人差し指の間を指す。この第1指間腔の指間みずかきとは、この親指と人差し指の間の指間腔に張っている薄い皮膚で形成される部分が該当する。この第1指間腔の稜線とは、この指間みずかきの輪郭線が該当する。
【0049】
この固着方法は、特に限定されないが、例えば、縫合を用いることができ、着用者の第1指間腔の稜線に沿った直線状の縫合ラインにより、簡素且つ強固な固定が可能となる。
【0050】
なお、縫合の種類には、フラットシーマ(四本針縫製)、オーバーロック、三点千鳥などがあるが、合わせ部分が薄くなり、縫い目を抑え込む力で縫い目が平らで丈夫に仕上がり、山型裁断により立体に沿い易く、生地裏面に縫い代がないために肌に縫製箇所が当たらず着用感が良好であるというメリットを有するフラットシーマが好適である。
【0051】
特に、この固着については、
図3(a)に示すように、生地開孔部33によりこの補助支持本体部31の生地が中央で分断されて生じた左右の生地である、一の分断部31aと他の分断部31bを、向かい合わせて重ね合わせた状態で、
図3(b)に示すように、この補助支持部3の一端(補助支持部一端3a)を、上述の着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分Aに固着することが好適である。
【0052】
この構成により、この補助支持部3が手首方向に向かう方向に動かすことによって、手首方向にある親指を固定しやすい位置で固定でき、また、手首方向にあるこの支持部2と簡易に係合することができ、親指又は/及び手関節を加圧して固定することができる。
【0053】
この固着により、この補助支持部3は、
図4の側面図からみると、この補助支持部3の一端(補助支持部一端3a)では一の分断部31aと他の分断部31bが重なり合って膨らみが無い外観が形成されると共に、補助支持部他端3bに向かうにつれて、一の分断部31aと他の分断部31bが徐々に各々分離して拡がり膨らみのある外観が形成される。すなわち、この補助支持部3は、英文字Yの文字形状のように、この補助支持部一端3a側では英文字Yの文字形状の下側に相当する形状を有すると共に、この補助支持部他端3b側では英文字Yの文字形状の上側に相当する形状を有することから、全体としてY字型形状を有するものであり、Y字型テーピングベルトとしても呼べるものとなる。
【0054】
この支持部2の係着や補助支持部3の係着については、特に限定されないが、
図5(a)に示すように、この支持部2は、この支持本体部21の一側面に面ファスナーのループ面Lを有すると共に、この支持部2の他端(支持部他端2b)に面ファスナーのフックF
1面を有することが好適である。特に限定されないが、このループ面Lの裏面にフックF
1面を有することにより、着脱時の係着がしやすくなる。
【0055】
面ファスナーを用いることで、この支持部2及び補助支持部3による着脱を繰り返すことができ、高い柔軟性により快適な装着感と使い勝手の良さが得られると共に、強い係合力により親指の周囲を加圧状態で保持することができる。
【0056】
また、
図5(b)に示すように、この補助支持部3が、この補助支持本体部31の他端に面ファスナーのフック面F
2を有することが好適である。
【0057】
これにより、この支持本体部21の一側面に配設された面ファスナーのループ面Lが、この支持本体部21の他端に配設された面ファスナーのフック面F1と係合できると共に、この補助支持部3の補助支持本体部31の他端に配設された面ファスナーのフック面F2とも係合できることとなる。
【0058】
図5(a)に示すように、着用者の手首にこの支持部2を巻回した場合に外側となる面(表地面)に、この支持本体部21の一側面に配設された面ファスナーのループ面Lが配設される場合には、この補助支持部3の補助支持本体部31の他端に配設された面ファスナーのフック面F
2は、脱着の容易性及び係着位置の自由度から、この補助支持部3の補助支持本体部31の他端の裏地面側(本体部1の親指挿通部11と対向する面)に配設することが好適である。
【0059】
このように、この支持部2が、この支持本体部21の一側面に面ファスナーのループ面Lを有すると共に、この支持本体部21の他端に面ファスナーのフック面F1を有し、この補助支持部3が、この第二の帯状体の他端に面ファスナーのフック面F2を有することから、この補助支持部3とこの支持部2が、互いに面ファスナーのフック面F1及びF2とループ面Lに係着できることとなり、簡素な構成で、着用者自身でその固定力を自在に調整することができ、固定力の調整さが自在に可能となり、着用者にとって心地よい着用感と着用強度が得られる。
【0060】
なお、この支持部2と補助支持部3の配設位置は、特に限定されないが、
図6(a)に示すように、この支持部2の第一の帯状体の一端(支持部一端2a)の端面がこの親指挿通部11の開口部に向かう長手方向Yとは垂直方向Xに沿って略垂直に形成されることが好適であり、また、この補助支持部3が着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分Aのうちの親指挿通部11側(A
1側)に配設されることが好適である。
【0061】
すなわち、この支持部2は、
図6(b)に示すように、第一の帯状体の一端(支持部一端2a)の端面がこの親指挿通部11の開口部に向かう長手方向Yに対する垂直方向Xに沿って略垂直に形成されることが好適である。これにより、この支持部2は、自然載置状態において、この親指挿通部11の長手方向Yの進行方向とは反対向きである逆方向Y
1に沿って伸長する形状が形成されることから、無駄なく最短経路で手首に到達できることとなり、手首を効率的且つ強固に固定できる。
【0062】
また、この補助支持部3は、
図6(c)に示すように、着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分Aのうちの親指挿通部11側(A
1側)に配設されることが好適であり、より好適には、
図6(c)に示すように、親指挿通部11側(A
1側)の補助支持部一端3aの高さが、一旦所定位置で固定された支持部2の支持部一端2aの高さよりも高さ差Kだけ大きいことであり、さらに好適にはこの高さ差Kが最大となる、親指挿通部11の開口部(親指挿通開口部11a)に接する高さに配設することである。これにより、着用者の親指を無駄なく最短経路でくぐらせて固定できることとなり、着用者の親指を効率的且つ強固に固定できる。
【0063】
(着用方法)
本実施形態に係る手用サポーターの着用方法について、上記
図7~
図9を用いて説明する。
【0064】
まず、着用者の手首130に手首挿通部13を挿通して、この本体部1を着用者の手の甲及び手の平(掌)を包み込んだ状態で、着用者の親指110に親指挿通部11を挿通し、着用者の他指120に他指挿通部12を挿通する。これにより、
図7(a)に示すように、この本体部1が着用者の手の甲及び手の平(掌)を包み込んで密着して装着されると共に、この親指挿通部11からは着用者の親指110が露出した状態となり、この他指挿通部12からは着用者の他指120が露出した状態となる。この段階では、上記支持部2と補助支持部3は、直線状のまま伸び切った状態で未だ帯状を維持して固定されていない状態である。
【0065】
次に、
図7(b)に示すように、着用者の手首130を周回して巻く方向Bに沿って、着用者の手首130にこの支持部2を巻回する。これにより、この支持部2が着用者の手首130を適度に加圧した状態で、着用者の手首130に固定される。
【0066】
この支持部2を着用者の手首130に巻回した後に、
図8(a)に示すように、着用者の手首130を周回して固定された支持部2の表側(一側面側)にこの支持係着部22を係着して固定する。これにより、着用者の手首130がこの支持部2によりスパイラル状にテーピングされる。
図8(a)に示すように、この支持部2による手首固定後に、この補助支持部3を、着用者の親指110に向かう方向Cに倒すようにして動かす。
【0067】
これにより、
図8(b)に示すように、着用者の親指110に補助支持部3の生地開孔部33を挿通する。この補助支持部3は、上述したY字型テーピングベルトの形状を有することで、着用者の親指110に生地開孔部33が挿通しやすくなると共に、着用者の親指110が、この一の分断部31aと他の分断部31bにより囲い込まれることとなり、着用者の親指110が固定される。
【0068】
次に、
図8(b)に示すように、この補助支持部3を、着用者の手首130に向かう方向Dに動かす。
【0069】
これにより、
図9に示すように、この補助支持部3の他端(補助支持部他端3b)にある補助支持係着部32が、着用者の手首130を周回して固定された支持部2の表側(一側面側)と係着して固定される。
【0070】
このように、
図9に示すように、上記Y字型テーピングベルトの形状を有する補助支持部3は、この一の分断部31aと他の分断部31bの2つの分断生地により、着用者の親指110を両サイドから包み込むと共に、その先端にある補助支持係着部32が、その対向位置にある支持部2の一側面と着脱自在に係着することで、親指の周囲を囲い込むように包み込んで固定することができる。
【0071】
すなわち、着用者の手首130が上記の支持部2によりスパイラル状にテーピングされると共に、着用者の親指110がこの補助支持部3によりY字形状に挟み込まれてテーピングされ、親指の斜屈動作を防止することができる。
【0072】
このように、本実施形態に係る手用サポーターは、この支持部2と補助支持部3が、互いに対向する位置付近から親指と手首を簡素な構成で強固に二重で支持固定し、この支持部2と補助支持部3が、互いに対向する位置付近から親指と手首を簡素な構成で強固に二重で締め付けて加圧するように支持固定されて、この支持部2が手首を固定して手首の左右の動きが固定されるとともに、この補助支持部3が親指と手首の過度な動きを抑制することとなり、手関節の左右の動きを固定することができ、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができ、腕橈骨筋の動作が円滑化される。
【0073】
腕橈骨筋とは、肘から手首までに位置し、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに働く筋肉であり、肘関節の屈曲や、前腕を半回内位に回旋する働きを有する。
【0074】
また、この帯状体で形成された支持部2によって、着用者自身によって、例えば手首の太さや所望とする加圧感等に応じて、その固定力を自在に調整することができ、心地よい加圧感及び着用感が得られる。これにより、本実施形態に係る手用サポーターは、着用者の物を掴む動作や物を摘まむ動作がつらい症状を抑制できる。また、簡単に装着可能で使い勝手がよく、長時間、日常的に使用することを可能にできる。加えて、目立たず装着したいというニーズを満たすものとなる。
【0075】
なお、上記では、本実施形態に係る手用サポーターは、この支持部2の配設位置を、この親指挿通部11の近傍に固着される好適な構成としたが、この構成に限定されるものではなく、この第一の帯状体の一端(支持部一端2a)がこの親指挿通部11の近傍からこの手首挿通部13の近傍までの領域内に固着されるものであれば、この構成に限定されない。
【0076】
例えば、
図10(a)に示すように、この支持部2の配設位置を、上記とは異なり、手首挿通部13の近傍に配設することも可能である。この場合には、この支持部2と補助支持部3が、親指側と手首側の両サイドから各々着用者の親指と手首を簡素な構成で強固に二重で締め付けて加圧するように支持固定されて、特にこの支持部2が手首近傍から手厚く手首を固定して手首の左右の動きがより強固に固定されるとともに、この補助支持部3が親指と手首の過度な動きを抑制することとなり、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、肘の屈曲動作や手の平を上下可動させるときに作用する筋肉である腕橈骨筋の動作が円滑化され、着用者にとって心地良い加圧感と着用感が得られる。また、後述するように、第2の実施形態の
図14のように、第一伸縮領域Gが配設される場合には、この第一伸縮領域Gに、この支持部22の支持部一端2aが配設されることがより好適である。この第一伸縮領域Gによる親指方向への低い伸縮性と相俟って、この支持部22による親指への固定強度をさらに高めることができる。
【0077】
この他にも、例えば、
図10(b)に示すように、この支持部22の配設位置を、手首挿通部13からこの親指挿通部11寄りに配設することも可能である。この場合に、この支持部22は、この支持部2と補助支持部3が、さらに互いに近傍する位置から親指と手首を簡素な構成で強固に二重で締め付けて加圧するように支持固定されて、この支持部2が手首を固定して手首の左右の動きが固定されるとともに、この補助支持部3が親指と手首の過度な動きを抑制することとなり、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、上記の腕橈骨筋の動作が円滑化され、着用者にとって心地良い加圧感と着用感が得られる。また、後述するように、第2の実施形態の
図14のように、第一伸縮領域Gが配設される場合には、この第一伸縮領域Gに、この支持部22の支持部一端2aが配設されることがより好適である。この第一伸縮領域Gによる親指方向への低い伸縮性と相俟って、この支持部22による親指への固定強度をさらに高めることができる。
【0078】
なお、上記では、本実施形態に係る手用サポーターは、この補助支持部3の配設位置を、着用者の第1指間腔の稜線に対応する部分Aに固着される構成としたが、この構成に限定されるものではなく、この補助支持本体部31の一端(補助支持部一端3a)が上記親指挿通部11の近傍で固着されるものであれば、この構成に限定されない。
【0079】
例えば、
図11に示すように、この補助支持部3の配設位置を、上記とは異なり、着用者の親指の長母指伸筋側に配設することも可能である。この場合に、この支持部2は、この補助支持部3に対向する位置付近として、着用者の第1指間腔の位置に配設することができる。この場合も上記と同様に、着用者の手関節の左右の動きを固定することができ、親指や手首を左右に動かしたときの不快感を軽減することができる。また、腕橈骨筋の動作が円滑化される。更に、帯状体で形成された支持部2によって、着用者自身に応じてその固定力を自在に調整することができ、心地よい着用感が得られる。
【0080】
なお、この補助支持部3は、この支持部2とはこの親指挿通部11の近傍の位置のうちこの親指挿通部11の異なる位置近傍で固着されていれば特に限定されない。
【0081】
例えば、
図12に示すように、この支持部2が、手の平又は手の甲側に配されることで手の平又は手の甲を経由して手首に向かう長手方向に沿って形成されると共に、この補助支持部3が、この支持部2とは上記親指挿通部11を挟んで約90度の向かい合う位置で親指の長母指伸筋側に形成することもできる。
【0082】
また、この他にも、
図13に示すように、この支持部2が、親指の長母指伸筋側に形成されると共に、この補助支持部3が、この支持部2とは上記親指挿通部11を挟んで約90度の向かい合う位置で手の平又は手の甲側に配されることで手の平又は手の甲を経由して手首に向かう長手方向で形成することもできる。
【0083】
この他にも、上記親指挿通部11の開口部近傍を、別布の伸縮性生地で構成することもできる。この構成により、着脱動作が多い親指を一段と強固に締めて固定することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
本願の第2の実施形態では、上記の第1の実施形態に係る手用サポーターと同様に、前記本体部1と、前記支持部2と、前記補助支持部3と、を備え、さらに、前記本体部1が、伸縮性の異なる2つの部分から構成されるものである。
【0085】
すなわち、本願の第2の実施形態は、
図14に示すように、この本体部1が、この親指挿通部11の近傍領域に配設され、着用者の手首から指に向かう長手方向の伸縮性よりも、この長手方向に直交する短手方向の伸縮性が高い伸縮部材を編成してなる第一伸縮領域Gに配設され、着用者の親指を位置決め支持する親指位置決め支持部21aと、この第一伸縮領域Gの周囲に配設され、この長手方向とこの短手方向の双方向に伸縮性を有する伸縮部材を編成してなる第二伸縮領域Hに配設され、着用者のこの他指を位置決め支持する他指位置決め支持部21bと、から構成される。
【0086】
この親指位置決め支持部21aが配設される第一伸縮領域Gは、この親指挿通部11の近傍領域に配設されていれば特に限定されないが、
図15に示すように、着用者の親指の付け根の膨らんだ部位である拇指球部が収まる領域に形成されることが好適である。
【0087】
この親指位置決め支持部21aは、着用者の親指を挿通させることにより、着用者の手関節に対して本体部1を位置決めできると共に、着用者の手首に対する本体部1の巻回方向の回転移動を抑制して位置ずれを防止することができる。
【0088】
なお、この親指位置決め支持部21aは、この親指挿通部11の近傍領域に配設されていれば、上記のように着用者の第1指間腔において他指挿通部12まで到達する形状としていたがこれに限定されず、例えば、
図16のように、着用者の第1指間腔においてこの他指挿通部12には到達しないで、着用者の第1指間腔においてこの親指挿通部11と他指挿通部12の中間まで到達する形状とすることができる。また、例えば、
図17のように、着用者の第1指間腔においてこの他指挿通部12には到達しないで、着用者の第1指間腔においてこの親指挿通部11の開口部付近から手首側にテーパー状(先細り状)に直進する形状とすることができる。
【0089】
この親指位置決め支持部21aが配設される第一伸縮領域Gは、
図18(a)に示すように、着用者の手首から指に向かう長手方向(ウェール方向I)の伸縮性よりも、この長手方向に直交する短手方向(コース方向J)の伸縮性が高い伸縮部材を編成して構成される。
【0090】
このような伸縮部材としては、例えば、ニードル織機やジャカードニードル織機などの力織機により、経糸及び緯糸を組み合わせて織成され、この短手方向(コース方向J)に伸縮性を有し、この長手方向(ウェール方向I)の伸縮性を抑制した細幅の伸縮織物を用いることができる。
【0091】
例えば、この親指位置決め支持部21aが、この短手方向(コース方向J)の一方向に沿ってのみ伸縮性を発揮する一方向ワンウェイラッセル編みで編成してなることが好適であり、さらに、この短手方向(コース方向J)に沿ってウレタン糸又はゴム糸で編成してなることが好適である。
【0092】
この一方向ワンウェイラッセル編みとは、ラッセル編機を用いて編された編地であり、長手方向(ウェール方向I)又は短手方向(コース方向J)のうちの一方向のみを低い伸長率で構成できる編みであり、本実施形態では、短手方向(コース方向J)の一方向にのみ伸縮性を生じることを可能とする。
【0093】
ウレタン糸としては、例えば、ポリウレタン糸が挙げられる。例えば、太さ800~900デニールのポリウレタン糸を用いることが可能であり、また、ポリウレタン糸にナイロン糸をカバーリングした糸も利用可能である。ゴム糸は、特に限定されないが、糸の太さが60~130番手のカバードヤーンを用いることができる。
【0094】
この編成により、この短手方向(コース方向J)には高い伸縮性が生じると共に、この長手方向(ウェール方向I)にはほぼ伸縮性が生じないという、異方性の伸縮特性が得られる。
【0095】
このように、この親指位置決め支持部21aが、この長手方向に沿って一方向ワンウェイラッセル編みで編成してなると共に、この短手方向に沿ってウレタン糸又はゴム糸で編成してなることから、簡素な構成で、親指がこの長手方向に固定されると共にこの短手方向には柔軟な可動が可能となり、親指の過度な動きが抑制されることとなり、親指を左右に動かしたときの不快感を軽減することができ、腕橈骨筋の動作が円滑化される。
【0096】
この第一伸縮領域Gを構成する伸縮部材の伸縮性については、特に限定されないが、この短手方向(コース方向J)の最大伸度が、この長手方向(ウェール方向I)の最大伸度の1.5倍以上、好ましくは2倍以上であることがより好適である。
【0097】
この最大伸度の相関により、
図18(b)に示すように、長手方向(ウェール方向I)にはほとんど伸縮せずに、実質的に短手方向(コース方向J)に伸縮するという異方性の伸縮特性がより強く発揮される。
【0098】
この第一伸縮領域Gのこの短手方向の最大伸度が、この長手方向の最大伸度の1.5倍以上、好ましくは2倍以上であることから、親指がこの長手方向には伸びにくい生地で固定されると共にこの短手方向には伸びやすい生地で柔軟な可動が可能となり、親指の過度な動きが抑制されることとなり、親指を左右に動かしたときの不快感を軽減することができ、腕橈骨筋の動作が円滑化される。
【0099】
また、この親指位置決め支持部21aの柔軟性を維持しつつ、その緊締力により着用者の手関節を固定して手関節の安定性が向上することとなり、着用者の日常動作における手関節への負担を軽減することができる。
【0100】
他方、着用者のこの他指を位置決め支持する他指位置決め支持部21bについては、その編成する伸縮部材としては、生地表面に多数の通気孔が開いているメッシュ生地が好適であり、ナイロン素材を用いることができるが、特に、ポリウレタン弾性糸を使ったメッシュ生地、いわゆるパワーネット生地を用いることが好適である。
【0101】
パワーネット生地は、高い伸縮性を有する細かな編み目状のメッシュ生地であり、高い伸縮性と弾力性が得られると共に、優れた通気性による吸水性及び速乾性が得られることから、長時間の快適な着用が実現される。
【0102】
本実施形態に係る手用サポーターは、
図19に示すように、上記第1の実施形態の
図7~
図9と同様の手順で着用者の手に装着することができる。
【0103】
このように、この本体部1が伸縮性の異なる2つの領域から構成されることで、親指がこの長手方向には固定されると共にこの短手方向には柔軟な可動が可能となり、親指の過度な動きが抑制されることとなり、親指を左右に動かしたときの不快感を軽減することができ、肘を曲げたり手の平を上下方向に向けたりするときに作用する腕橈骨筋の動作が円滑化される。
【0104】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態に係る手用サポーターは、シンプルな形状で構成されていることから、着用者の左手又は右手の手首に着用可能な左右兼用とすることができる。
【0105】
例えば、上記各実施形態に係る手用サポーターを着用した着用者の手の甲の周囲が、17~21cmとなるように設計することができる。この手の甲の周囲の幅は、日本人の手幅のボリュームゾーンの統計情報(例えば、AIST人体寸法データベース等)に基づくものであり、左右兼用であるとともに、男女兼用も可能となる。これにより、製品としての手用サポーターについて、在庫管理の最小管理単位SKU(Stock Keeping Unit)が左右共通で1つで済むこととなる。
【0106】
このように、着用者の左手又は右手の手首に着用可能な左右兼用であることから、着用者にとっては扱いやすいものとなると共に、製造工程を簡素化できることとなり、使い勝手を向上させることができ、また製造コストや在庫管理コストを抑制することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 本体部
1a 親指位置決め支持部
1b 他指位置決め支持部
11 親指挿通部
11a 親指挿通開口部
12 他指挿通部
13 手首挿通部
2 支持部
2a 支持部一端
2b 支持部他端
21 支持本体部
21a 親指位置決め支持部
21b 他指位置決め支持部
22 支持係着部
3 補助支持部
3a 補助支持部一端
3b 補助支持部他端
31 補助支持本体部
31a 一の分断部
31b 他の分断部
32 補助支持係着部
33 生地開孔部
110 着用者の親指
120 着用者の他指
130 着用者の手首