(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014635
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】体感音響装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20250123BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20250123BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20250123BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/00 310G
H04R1/02 102B
B60R11/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117348
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
【テーマコード(参考)】
3D020
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
3D020BA02
3D020BA10
3D020BB01
3D020BC11
3D020BD05
3D020BE03
5D017AA13
5D017AA14
5D017AE18
5D220AA34
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】音量を変更したときに音量レベルと振動レベルの適切な関係を維持することができる体感音響装置を提供すること。
【解決手段】体感音響装置100は、利用者によって操作される操作部140と、利用者が聴取可能な位置に配置されたスピーカ122と、入力されるオーディオ信号を第1の利得で増幅した信号をスピーカ122から出力するアンプ120と、利用者に振動が伝達可能な位置に配置された振動子132、134と、オーディオ信号を第2の利得で増幅した信号で振動子132、134を振動させる振動子駆動部130と、利用者による操作部140の操作量に対応させて第1および第2の利得を設定するとともに、この設定において第1および第2の利得について異なるゲイン特性を持たせるゲイン設定部144、146とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者によって操作される操作手段と、
利用者が聴取可能な位置に配置されたスピーカと、
入力されるオーディオ信号を第1の利得で増幅した信号を前記スピーカから出力する増幅手段と、
利用者に振動が伝達可能な位置に配置された振動手段と、
前記オーディオ信号を第2の利得で増幅した信号で前記振動手段を振動させる振動駆動手段と、
利用者による前記操作手段の操作量に対応させて前記第1および第2の利得を設定するとともに、この設定において前記第1および第2の利得について異なるゲイン特性を持たせる利得設定手段と、
を備えることを特徴とする体感音響装置。
【請求項2】
前記利得設定手段は、前記操作量に対応するように前記第1の利得を設定する第1の利得設定手段と、前記操作量に対応するように前記第2の利得を設定する第2の利得設定手段であって、前記操作量が変化した場合の前記第2の利得の変化量を前記第1の利得の変化量よりも少なくした第2の利得設定手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の体感音響装置。
【請求項3】
前記振動手段は、利用者が着座する座席の表面および/または内部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の体感音響装置。
【請求項4】
前記振動手段は、前記座席の座面および/または背もたれに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の体感音響装置。
【請求項5】
前記スピーカは、利用者が着座する座席のヘッドレストの表面および/または内部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の体感音響装置。
【請求項6】
前記第1の利得および前記第2の利得のそれぞれと前記操作量とは比例関係にあり、それぞれの比例定数が異なる値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の体感音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号に対応する音と振動を利用者に向けて出力する体感音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スピーカのように空気伝搬により楽音伝達をなす音響装置による音響的効果に加えて、オーディオ信号から取り出した低域成分信号を機械振動に変換してこれを直接体感させることにより臨場感を高めようとする体感音響装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この体感音響装置では、入力された楽音信号に対して音量調整手段による音量調整を行った後で、アンプで増幅した信号をスピーカから出力するとともに、低域成分を増幅した信号で体感音響ユニットを振動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された体感音響装置では、入力された楽音信号に対して音量調整手段による音量設定が行われるが、この音量設定は利用者(車両の搭乗者)の操作に応じて行われるものであり、利用者毎に好みの設定が行われる。
【0005】
ところで、一般には、音量設定値を変化させたときに、スピーカから出力される音量の体感レベルの変化の程度と、体感音響ユニットの振動の体感レベルの変化の程度には差がある。そのため、ある音量設定値のときに、音量の体感レベルと振動の体感レベルとがバランスのとれた適切なものであると利用者が感じたとしても、音量設定値を変えたときにそれまで適切であると感じていたそれぞれの体感レベルのバランスが崩れることになる。具体的には、各体感レベルが適切であると感じた音量設定値を下げた場合に、体感音響ユニットの振動の体感レベルが過小になって振動をほとんど感じられなくなり、反対に、音量設定値を上げた場合に、体感音響ユニットの振動の体感レベルが過大になって煩わしく感じることになる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、音量を変更したときに音量レベルと振動レベルの適切な関係を維持することができる体感音響装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の体感音響装置は、利用者によって操作される操作手段と、利用者が聴取可能な位置に配置されたスピーカと、入力されるオーディオ信号を第1の利得で増幅した信号をスピーカから出力する増幅手段と、利用者に振動が伝達可能な位置に配置された振動手段と、オーディオ信号を第2の利得で増幅した信号で振動手段を振動させる振動駆動手段と、利用者による操作手段の操作量に対応させて第1および第2の利得を設定するとともに、この設定において第1および第2の利得について異なるゲイン特性を持たせる利得設定手段とを備えている。
【0008】
オーディオ信号に対応する音をスピーカから出力するとともに、対応する振動を振動手段によって発生させることにより、音と振動による体感型の音響空間を実現することが可能となる。特に、スピーカの音量レベルを設定する利得と振動手段の振動レベルを設定する利得とを異ならせることにより、これらの体感レベルのバランスが崩れることを防止することができ、音量を変更したときに音量レベルと振動レベルの適切な関係を維持することが可能となる。
【0009】
また、上述した利得設定手段は、操作量に対応するように第1の利得を設定する第1の利得設定手段と、操作量に対応するように第2の利得を設定する第2の利得設定手段であって、操作量が変化した場合の第2の利得の変化量を第1の利得の変化量よりも少なくした第2の利得設定手段とを含むことが望ましい。これにより、スピーカの出力音の音量レベルを小さくした場合に、振動手段の振動レベルが過度に小さく感じられたり、反対に、スピーカの出力音の音量レベルを大きくした場合に、振動手段の振動レベルが過度に大きく感じられたりすることを防止することができる。
【0010】
また、上述した振動手段は、利用者が着座する座席の表面および/または内部に配置されていることが望ましい。特に、上述した振動手段は、座席の座面および/または背もたれに配置されていることが望ましい。また、上述したスピーカは、利用者が着座する座席のヘッドレストの表面および/または内部に配置されていることが望ましい。このように、利用者が着座する座席を利用してスピーカや振動手段を設けることにより、利用者はこの座席に座るだけで特別な器具を装着することなく、音と振動を用いた体感型の音響システムを利用することが可能となる。
【0011】
また、上述した第1の利得および第2の利得のそれぞれと操作量とは比例関係にあり、それぞれの比例定数が異なる値に設定されていることが望ましい。これにより、音量を変化させた場合の音量レベルと振動レベルのアンバランスによって生じる違和感を調整することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の体感音響装置の構成を示す図である。
【
図2】操作部の操作量とアンプ、振動子駆動部のゲインとの対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態の体感音響装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一実施形態の体感音響装置の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の体感音響装置100は、オーディオ出力部110、アンプ120、スピーカ122、振動子駆動部130、振動子132、134、操作部140、操作量検出部142、ゲイン設定部144、146を備えている。この体感音響装置100は、車両に搭載されており、利用者(運転者やその他の搭乗者)がオーディオ音に対応する音と振動を体感することができる。
【0015】
オーディオ出力部110は、利用者が聴取を希望する音楽の信号(オーディオ信号)を出力する。この音楽には、オーディオ/ビデオ再生装置やテレビ受信機によって再生される音楽や音声、インターネット受信装置で受信した配信音楽/動画の音楽や音声など特定の種類に限定されず、利用者が聴取可能な帯域の音が含まれる楽器の演奏による音、人の歌声など自然界に存在する音を広く含むものとする。
【0016】
アンプ120は、オーディオ出力部110から出力されたオーディオ信号を所定のゲイン(第1の利得)で増幅してスピーカ122から出力する。スピーカ122は、利用者の座席200のヘッドレスト210の表面および/または内部であって利用者の耳に近い位置に配置されており、出力されるオーディオ音を利用者が聴き取りやすくなっている。望ましくは、利用者の左右の耳に別々のオーディオ音が到達するように、左右別々に2個のスピーカ122が用いられる。
【0017】
振動子駆動部130は、オーディオ出力部110から出力されたオーディオ信号を所定のゲイン(第2の利得)で増幅した信号で振動子132、134を駆動して振動させる。振動子132、134は、利用者の座席200の表面および/または内部に配置されており、発生する振動を利用者が体感しやすいようになっている。具体的には、一方の振動子132が座席200の背もたれ220の表面および/または内部に配置されており、発生した振動が利用者の背中に伝達される。また、他方の振動子134が座席200の座面230の表面および/または内部に配置されており、発生した振動が利用者の太ももに伝達される。
【0018】
操作部140は、音量を変更しようとする利用者が操作するためのものである。操作量検出部142は、利用者による操作部140の操作量を検出する。これらの操作部140と操作量検出部142は、どのようなものを用いてもよい。例えば、回転部材の回転量(回転角)を操作量としてアナログ的あるいはデジタル的に検出する場合や、アップボタンとダウンボタンのそれぞれの操作回数や操作時間を検出して操作量を決定する場合などが考えられる。
【0019】
ゲイン設定部144は、操作量検出部142によって検出された利用者による操作部140の操作量に対応させてアンプ120のゲイン(第1の利得)を設定する。また、ゲイン設定部146は、操作量検出部142によって検出された利用者による操作部140の操作量に対応させて振動子駆動部130のゲイン(第2の利得)を設定する。また、操作部140の操作量が変化した場合の振動子駆動部130のゲイン(第2の利得)の変化量は、同じだけ操作量が変化した場合のアンプ120のゲイン(第1の利得)の変化量よりも小さくなるように設定されている。
【0020】
図2は、操作部140の操作量とアンプ120、振動子駆動部130のゲインとの対応関係を示す図である。
図2において、横軸は、ステップ数で表された操作量を示しており、最小の操作量がステップ数「0」で、最大の操作量がステップ数「30」となっている。また、縦軸は、単位をdBとしたゲインを示している。また、Aはアンプ120のゲイン特性を、Bは振動子駆動部130のゲイン特性をそれぞれ示している。
【0021】
図2に示すように、操作量としてのステップ数を変更したときにゲインA、Bを比べると、アンプ120のゲインAの変化量に比べて振動子駆動部130のゲインBの変化量の方が少なくなるようにゲイン特性が設定されている。具体的には、ゲインA、Bのそれぞれと操作量とは比例関係にあり、それぞれの比例定数を異なる値に設定することで、これらのゲイン特性を実現している。このような比例定数の設定を行うことにより、音量を変化させた場合の音量レベルと振動レベルのアンバランスによって生じる違和感を調整することが容易となる。
【0022】
図2に示す例では、ステップ数「15」のときに、アンプ120のゲインAと振動子駆動部130のゲインBが同じ値となり、これよりステップ数を小さくするとアンプ120のゲインAが大きく減少するのに対し、振動子駆動部130のゲインBの方が減少の程度は小さい。また、ステップ数「15」よりもステップ数を大きくするとアンプ120のゲインAが大きく増加するのに対し、振動子駆動部130のゲインBの方が増加の程度は小さい。
【0023】
なお、ステップ数「0」から「1」に変化させたときにゲインBが急激に増大するのは、何も操作を行わないステップ「0」の状態で過大な振動が発生しないようにゲインを小さくしたものであって、本発明におけるゲイン設定とは関係がない。
【0024】
上述した操作部140が操作手段に、アンプ120が増幅手段に、振動子132、134が振動手段に、振動子駆動部130が振動駆動手段に、ゲイン設定部144が第1の利得設定手段に、ゲイン設定部146が第2の利得設定手段にそれぞれ対応する。
【0025】
このように、本実施形態の体感音響装置100では、オーディオ信号に対応する音をスピーカ122から出力するとともに、対応する振動を振動子132、134によって発生させることにより、音と振動による体感型の音響空間を実現することが可能となる。特に、スピーカ122の音量レベルを設定するゲイン(第1の利得)と振動子132、134の振動レベルを設定するゲイン(第2の利得)とを異ならせることにより、これらの体感レベルを調整してバランスが崩れることを防止することができ、音量を変更したときに音量レベルと振動レベルの適切な関係を維持することが可能となる。
【0026】
これにより、スピーカ122の出力音の音量レベルを小さくした場合に、振動子132、134の振動レベルが過度に小さく感じられたり、反対に、スピーカ122の出力音の音量レベルを大きくした場合に、振動子132、134の振動レベルが過度に大きく感じられたりすることを防止することができる。
【0027】
また、利用者が着座する座席200を利用してスピーカ122や振動子132、134を設けることにより、利用者はこの座席200に座るだけで特別な器具を装着することなく、音と振動を用いた体感型の音響システムを利用することが可能となる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、車両に搭載された座席200にスピーカ122と振動子132、134を配置したが、車両以外の場所で用いられる座席にスピーカ122等を配置する場合にも本発明を適用することができる。また、ヘッドホン(スピーカが内蔵されている)でオーディオ音を聴取する場合や、振動子132等をベルトや衣服などで利用者の身体に接触した状態で保持するような場合にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上述したように、本発明によれば、オーディオ信号に対応する音をスピーカから出力するとともに、対応する振動を振動手段によって発生させることにより、音と振動による体感型の音響空間を実現することが可能となる。特に、スピーカの音量レベルを設定する利得と振動手段の振動レベルを設定する利得とを異ならせることにより、これらの体感レベルのバランスが崩れることを防止することができ、音量を変更したときに音量レベルと振動レベルの適切な関係を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
100 体感音響装置
110 オーディオ出力部
120 アンプ
122 スピーカ
130 振動子駆動部
132、134 振動子
140 操作部
142 操作量検出部
144、146 ゲイン設定部