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  • 特開-2重シールドティグ溶接方法 図1
  • 特開-2重シールドティグ溶接方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014652
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】2重シールドティグ溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/167 20060101AFI20250123BHJP
   B23K 9/29 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23K9/167 A
B23K9/29 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117386
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】今井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中俣 利昭
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB07
4E001DD02
4E001DD03
4E001DE01
4E001LB02
4E001LH04
4E001LH06
(57)【要約】
【課題】2重シールドティグ溶接方法において、母材がアルミニウム又はその合金であるときに、母材の温度が上昇しても溶接状態を安定に維持すること。
【解決手段】インナーガスを噴出させるインナーノズル及びアウターガスを噴出させるアウターノズルを備えた溶接トーチを使用し、溶接線上をアークを発生させながら溶接する2重シールドティグ溶接方法において、溶接線を複数の区間に分割し、インナーガスの流量Fiを、時刻t3~t4の第1区間、時刻t4~t5の第2区間及び時刻t5~t6の第3区間ごとに設定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーガスを噴出させるインナーノズル及びアウターガスを噴出させるアウターノズルを備えた溶接トーチを使用し、
溶接線上をアークを発生させながら溶接する2重シールドティグ溶接方法において、
前記溶接線を複数の区間に分割し、
前記インナーガスの流量を前記区間ごとに設定する、
ことを特徴とする2重シールドティグ溶接方法。
【請求項2】
前記インナーガスの流量を前記区間が円弧部であるときは直線部であるときとは異なる値に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の2重シールドティグ溶接方法。
【請求項3】
溶接ロボットを使用して溶接し、
前記区間ごとの前記インナーガスの流量を前記溶接ロボットの教示データとして保存する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の2重シールドティグ溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重シールドティグ溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インナーガスを噴出させるインナーノズル及びアウターガスを噴出させるアウターノズルを備えた溶接トーチを使用し、溶接線上をアークを発生させながら溶接する2重シールドティグ溶接方法が慣用されている(例えば、特許文献1参照)。インナーガス及びアウターガスとしては、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-15048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接線には直線部、円弧部等の複数の区間が含まれる場合がある。インナーガスの噴出状態が変化するとアークの硬直性が変化してビード形状及び溶け込み形状が変動する。溶接線の区間が直線部であるときと円弧部であるときとではインナーガスの噴出状態が変化するために、ビード形状及び溶け込み形状が変化するという問題が発生する。溶接線が複数の直線部から形成されている場合でも、溶接線の周辺の状態からインナーガスの噴出状態が変化すると上記と同様の問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明では、溶接線の一部の区間でインナーガスの噴出状態が変化しても、ビード形状及び溶け込み形状を良好に維持することができる2重シールドティグ溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
インナーガスを噴出させるインナーノズル及びアウターガスを噴出させるアウターノズルを備えた溶接トーチを使用し、
溶接線上をアークを発生させながら溶接する2重シールドティグ溶接方法において、
前記溶接線を複数の区間に分割し、
前記インナーガスの流量を前記区間ごとに設定する、
ことを特徴とする2重シールドティグ溶接方法である。
【0007】
請求項2の発明は、
前記インナーガスの流量を前記区間が円弧部であるときは直線部であるときとは異なる値に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の2重シールドティグ溶接方法である。
【0008】
請求項3の発明は、
溶接ロボットを使用して溶接し、
前記区間ごとの前記インナーガスの流量を前記溶接ロボットの教示データとして保存する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の2重シールドティグ溶接方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る2重シールドティグ溶接方法によれば、溶接線の一部の区間でインナーガスの噴出状態が変化しても、ビード形状及び溶け込み形状を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る2重シールドティグ溶接方法を実施するための溶接装置のブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る2重シールドティグ溶接方法を示す図1の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る2重シールドティグ溶接方法を実施するための溶接装置のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0013】
溶接トーチWTは、主に電極1、それを取り囲むインナーノズル4及びそれを取り囲むアウターノズル5を備えている。電極1には、タングステン電極等が使用される。
【0014】
溶接ロボットRMは、上記の溶接トーチWTを搭載しており、後述する動作制御信号Rcに従って溶接トーチWTの先端を溶接線に沿って移動させる。
【0015】
ロボット制御装置RCは、記憶されている教示データに従って上記の溶接ロボットRMを移動させるための動作制御信号Rcを出力すると共に、教示データに従って溶接開始信号On及び本溶接インナーガス流量設定信号Ficrを出力する。例えば、教示データに含まれる溶接線の経路データが、溶接開始位置Ps、第1経路位置P1、第2経路位置P2及び溶接終了位置Peから形成されているとする。この場合は溶接線が3つの区間に分割されており、Ps-P1が第1区間となり、P1-P2が第2区間となり、P2-Peが第3区間となる。溶接開始信号Onは、溶接ロボットRMが異動して溶接開始位置Psに到達した時点でHighレベルとなり、溶接終了位置に到達した時点でLowレベルとなる。さらに、教示データの一つとしてインナーガス流量値が区間ごとに記憶されている。そして、溶接ロボットRMが各区間を移動しているときにその区間に対応して記憶されているインナーガス流量値を本溶接インナーガス流量設定信号Ficrとして出力する。したがって、本溶接インナーガス流量設定信号Ficrの値は、第1区間Ps-p1中は予め記憶された第1本溶接インナーガス流量値となり、第2区間P1-p2中は予め記憶された第2本溶接インナーガス流量値となり、第3区間P2-pe中は予め記憶された第3本溶接インナーガス流量値となる。
【0016】
プリフロー期間回路TPは、上記の溶接開始信号Onを入力として、溶接開始信号OnがHighレベルに変化した時点から予め定めたプリフロー時間が経過するまではHighレベルとなるプリフロー期間信号Tpを出力する。
【0017】
インナーガス噴出開始回路TIは、上記のプリフロー期間信号Tpを入力として、プリフロー期間信号TpがHighレベルに変化した時点から予め定めた遅延時間Tdが経過した時点で短時間Highレベルとなるインナーガス噴出開始信号Tiを出力する。遅延時間Tdはプリフロー期間Tpよりも短い時間である。
【0018】
アーク発生判別回路ADは、溶接電流Iwの通電路に設けられており、溶接電流Iwが通電しているときはHighレベルとなるアーク発生判別信号adを出力する。溶接電流iwが通電しているときはアークが発生している状態のときである。
【0019】
インナーガス流量設定回路FIRは、上記のプリフロー期間信号Tp及び上記の本溶接インナーガス流量設定信号Ficrを入力として、プリフロー期間信号TpがHighレベルのときは予め定めたプリフローインナーガス流量値となり、プリフロー期間信号TpがLowレベルのときは本溶接インナーガス流量設定信号Ficrの値となるインナーガス流量設定信号Firを出力する。ここで、プリフローインナーガス流量値は本溶接インナーガス流量設定信号Ficrの値よりも小さな値に設定されることが望ましい。
【0020】
インナーガス流量調整器CIは、公知のマスフローコントローラであり、上記の溶接開始信号On、上記のインナーガス噴出開始信号Ti及び上記のインナーガス流量設定信号Firを入力として、インナーガス噴出開始信号Toが短時間Highレベルに変化した時点から溶接開始信号OnがLowレベルに変化して予め定めたアフターフロー時間が経過するまでの期間中は、インナーガスボンベ6からのインナーガス7の流量Fiをインナーガス流量設定信号Firによって定まる値に調整して噴出する。
【0021】
アウターガス流量設定回路FORは、上記のプリフロー期間信号Tpを入力として、プリフロー期間信号TpがHighレベルのときは予め定めたプリフローアウターガス流量値となり、Lowレベルのときは予め定めた本溶接アウターガス流量値となるアウターガス流量設定信号Forを出力する。ここで、プリフローアウターガス流量値は本溶接アウターガス流量値よりも大きな値に設定されることが望ましい。
【0022】
アウターガス流量調整器COは、公知のマスフローコントローラであり、上記の溶接開始信号On、上記のプリフロー期間信号Tp及び上記のアウターガス流量設定信号Forを入力として、溶接開始信号OnがHighレベルに変化した時点から溶接開始信号OnがLowレベルに変化するまでの期間中は、アウターガスボンベ8からのアウターガス9の流量Foをアウターガス流量設定信号Forによって定まる値に調整して噴出する。
【0023】
インナーノズル4の内側の通路をインナーガス7が流れる。また、インナーノズル4の外側とアウターノズル5の内側の通路をアウターガス9が流れる。インナーガス7及びアウターガス9にはアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが使用される。アーク3は、電極1が負極となり、母材2が正極となって発生する。
【0024】
溶接電源PSは、上記の溶接開始信号On及び上記のプリフロー期間信号Tpを入力として、溶接開始信号OnがHighレベルとなり、かつ、プリフロー期間信号TpがLowレベルになると、電極1と母材2との間に高周波高電圧を印加し、アーク3が発生すると溶接電流Iwの出力を開始し、溶接開始信号OnがLowレベルになると溶接電流Iwの出力を停止する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る2重シールドティグ溶接方法を示す図1の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始信号Onの時間変化を示し、同図(B)はプリフロー期間信号Tpの時間変化を示し、同図(C)はインナーガス噴出開始信号Tiの時間変化を示し、同図(D)はアウターガス流量Fo(l/分)の時間変化を示し、同図(E)はインナーガス流量Fi(l/分)の時間変化を示し、同図(F)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(G)はアーク発生判別信号Adの時間変化を示す。以下、同図を参照して、溶接開始時、本溶接時及び溶接終了時の動作について説明する。
【0026】
同図においては、溶接線は溶接開始位置Ps、第1経路位置P1、第2経路位置P2及び溶接終了位置Peの教示データから形成されている。したがって、溶接線は、第1区間Ps-P1、第2区間P1-P2及び第3区間P2-Peの3つの区間に分割されている。第1区間Ps-P1は直線部であり、第2区間P1-P2は円弧部であり、第3区間P2-Peは直線部である場合である。
【0027】
時刻t1において、図1の溶接ロボットRMに搭載された図1の溶接トーチWTの先端位置が移動して溶接開始位置Psに到達すると、停止し、同図(A)に示すように、溶接開始信号OnがHighレベルに変化する。これに応動して、同図(B)に示すように、プリフロー期間信号TpがHighレベルとなる。同時に、図1のアウターガス流量調整器COによってアウターガスの噴出が開始される。同図(D)に示すように、アウターガス流量Foは図1のアウターガス流量設定信号Forによって定まる予め定めたプリフローアウターガス流量値となる。
【0028】
時刻t1から予め定めた遅延時間Tdが経過した時刻t2において、同図(C)に示すように、インナーガス噴出開始信号Tiが短時間Highレベルとなる。これに応動して、図1のインナーガス流量調整器CIによってインナーガスの噴出が開始される。同図(E)に示すように、インナーガス流量Fiは図1のインナーガス流量設定信号Firによって定まる予め定めたプリフローインナーガス流量値となる。
【0029】
時刻t3においてプリフロー期間信号TpがLowレベルに変化すると、図1の溶接電源PSは図1の電極1と母材2との間に高周波高電圧を印加して図1のアーク3を発生させ、同図(F)に示すように、溶接電流Iwの通電が開始する。時刻t3において、溶接電流Iwの通電によってアークの発生を判別すると、同図(G)に示すように、アーク発生判別信号AdがHighレベルに変化する。同時に、同図(D)に示すように、アウターガス流量Foは図1のアウターガス流量設定信号Forによって定まる予め定めた本溶接アウターガス流量値となる。同様に、同図(E)に示すように、インナーガス流量Fiは図1の本溶接インナーガス流量設定信号Ficrによって設定される値となる。そして、時刻t3から図1の溶接ロボットRMに搭載された図1の溶接トーチWTの先端位置が溶接線に沿って移動を開始して溶接が開始される。
【0030】
上述したように、プリフロー期間中は、アウターガスを噴出させた後にインナーガスを噴出させている。このようにすると、アウターガスの噴出によって周囲をシールドされた状態でインナーガスの噴出が開始されるので、インナーガスが周囲の空気を巻き込むことがなくなり、定常状態に早期に収束させることができる。このために、本実施の形態では、アウターガス及びインナーガスの噴出を同時に開始する従来技術に比べて、プリフロー時間を50%程度に短くすることができる。したがって、本実施の形態では、溶接開始時のプリフロー時間を短く設定しても十分なシールド性を確保することができるので、作業効率を高めることができ、高価な不活性ガスの消費量を減らすことができる。例えば、従来技術ではプリフロー期間を6秒程度に設定する必要があったが、本実施の形態では3秒程度に設定することができる。
【0031】
さらに、時刻t1~t2のアウターガスのみを噴出させる時間が時刻t2~t3のインナーガスを噴出させる時間よりも長くなるように設定されることが望ましい。このようにすると、インナーガスが空気を巻き込むことをより確実に抑制することができるので、さらにプリフロー時間を短く設定することができる。
【0032】
さらに、インナーガス流量Fiを、プリフロー期間中はプリフロー期間終了後の本溶接期間中よりも小さくすることが望ましい。このようにすると、インナーガスの噴出状態をより早期に定常状態にすることができるので、さらにプリフロー時間を短く設定することができる。
【0033】
さらに、アウターガス流量Foを、プリフロー期間中はプリフロー期間終了後の本溶接期間中よりも大きくすることが望ましい。このようにすると、インナーガスの噴出状態をより早期に定常状態にすることができるので、さらにプリフロー時間を短く設定することができる。
【0034】
同図(E)に示すように、インナーガス流量Fiは、時刻t3~t4の第1区間Ps-P1中は図1の本溶接インナーガス流量設定信号Ficrによって設定される第1本溶接インナーガス流量値となり、時刻t4~t5の第2区間P1-P2中は第2本溶接インナーガス流量値となり、時刻t5~t6の第3区間P2-Pe中は第3本溶接インナーガス流量値となる。ここで、第1区間Ps-P1及び第3区間P2-Peは直線部であり、第2区間P1-P2は円弧部である。円弧部は図1の溶接トーチWTの溶接姿勢が刻々と変化するために、インナーガスの噴出状態が直線部とは異なる状態となる。このために、円弧部の第2本溶接インナーガス流量値を第1及び第3本溶接インナーガス流量値とは異なる値にすることによって、ビード形状及び溶け込み形状を良好に維持することができる。ここでは、第2本溶接インナーガス流量値を他の区間よりも大きな値に設定している。
【0035】
時刻t6において図1の溶接ロボットRMに搭載された図1の溶接トーチWTの先端位置が溶接終了位置Peに到達すると、再び停止し、同図(A)に示すように、溶接開始信号OnはLowレベルに変化する。これに応動して、同図(F)に示すように、溶接電流Iwの通電が停止してアークが消弧する。これに応動して、同図(G)に示すように、アーク発生判別信号AdはLowレベルに変化する。同時に、同図(D)に示すように、アウターガス流量Foは0となり、アウターガスの噴出が停止する。
【0036】
時刻t6から予め定めたアフターフロー時間が経過した時刻t7において、同図(E)に示すように、インナーガス流量Fiは0となり、インナーガスの噴出が停止する。アフターフロー時間は、7秒程度に設定される。
【0037】
従来技術では、アフターフロー期間中はアウターガス及びインナーガスの両方を噴出させている。これに対して、本実施の形態では、インナーガスのみを噴出させるようにしている。アフターフローの作用は、電極及び溶融池を冷却するまで空気からシールドすることである。この作用のためにはインナーガスのみを噴出させれば充分である。このようにすると、高価な不活性ガスの消費量を減らすことができる。
【0038】
上記の各パラメータの数値例を以下に示す。
溶接トーチWT:インナ―ノズル内径5mm、アウターノズル内径13mmの二重シールドノズルを備えた溶接トーチ
電極1:タングステン電極
アウターガス及びインナーガス:100%アルゴンガス
アウターガス流量Fo:プリフロー期間12l/min、本溶接期間10l/min
インナーガス流量Fi:プリフロー期間4l/min、本溶接期間の第1及び第3区間5l/min、第2区間6l/min
プリフロー時間:3秒(アウターガスが噴出を開始してから2秒後にインナーガスの噴出が開始し、その1秒後にアークが発生する。)
【0039】
以下、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、溶接線を複数の区間に分割し、インナーガスの流量を区間ごとに設定する。区間が直線部であるか円弧部であるかによって、さらには板厚、溶接姿勢、電極先端・母材間距離等の種々な溶接条件によってインナーガスの噴出状態が変化する。インナーガスの噴出状態が変化すると、ビード形状及び溶け込み形状が変化する。本実施の形態では、インナーガスの噴出状態に応じて各区間の流量を適正化することができるので、ビード形状及び溶け込み形状を良好に維持することができる
【0040】
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、インナーガスの流量を区間が円弧部であるときは直線部であるときとは異なる値に設定する。区間が円弧部であるときは直線部であるときに比べて溶接姿勢が刻々と変化するために、インナーガスの噴出状態が直線部とは異なる状態となる。このために、円弧部の区間のインナーガス流量を直線部とは異なる適正な値に設定することによって、溶接品質を良好に維持することができる。
【0041】
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、溶接ロボットを使用して溶接し、区間ごとのインナーガスの流量を溶接ロボットの教示データとして保存する。このようにすると、溶接ロボットが溶接線上を移動して各区間に入ると自動的にインナーガス流量が適正値に設定されるので、溶接作業を効率化して、溶接品質を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 電極
2 母材
3 アーク
4 インナーノズル
5 アウターノズル
6 インナーガスボンベ
7 インナーガス
8 アウターガスボンベ
9 アウターガス
AD アーク発生判別回路
Ad アーク発生判別信号
CI インナーガス流量調整器
CO アウターガス流量調整器
Fi インナーガス流量
Ficr 本溶接インナーガス流量設定信号
FIR インナーガス流量設定回路
Fir インナーガス流量設定信号
Fo アウターガス流量
FOR アウターガス流量設定回路
For アウターガス流量設定信号
Iw 溶接電流
On 溶接開始信号
PS 溶接電源
RC ロボット制御装置
Rc 動作制御信号
RM 溶接ロボット
TI インナーガス噴出開始回路
Ti インナーガス噴出開始信号
TP プリフロー期間回路
Tp プリフロー期間信号
WT 溶接トーチ
図1
図2