(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025146589
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】自転車のセンターマウント式伝動装置
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20250926BHJP
F16D 11/04 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
B62M6/55
F16D11/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131807
(22)【出願日】2024-08-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-09-16
(31)【優先権主張番号】113110575
(32)【優先日】2024-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523263717
【氏名又は名称】達詳科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】黄晧倫
(72)【発明者】
【氏名】王鈞呈
(72)【発明者】
【氏名】王曉瑜
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA02
3J056AA63
3J056CC34
3J056GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自転車のセンターマウント式伝動装置を提供する。
【解決手段】センターマウント式伝動装置であって、外殻ケース、出力軸、モータ、クラッチユニットを含み、クラッチユニットは外殻ケース内に配置され、ドライブギア、クラッチギア、出力ギア、作動機構を含み、ドライブギアはモータに連結され、クラッチギアはドライブギア内で軸方向に移動可能に設置され、磁気吸着可能な材料を含み、出力ギアは出力軸に連結され、クラッチギアと分離可能に連結され、作動機構は、磁性吸引力を持ち、ハウジングと、ハウジング内で軸方向に移動可能なアクチュエータと、作動機構及びハウジングに付勢する弾性部材とを含み、クラッチギアはアクチュエータを回転駆動して移動させると出力ギアと噛み合い、その後弾性部材と作動機構によりアクチュエータを元の位置に戻し、クラッチギアと出力ギアが分離した後、作動機構はクラッチギアを元の位置に戻すことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のセンターマウント式伝動装置であって、対向する二つの側面を有する外殻ケースと、該外殻ケースの対向する二つの側面を貫通する出力軸と、該外殻ケース内に設置されるモータと、該外殻ケース内に設置され、該出力軸とモータとを接続するクラッチユニットとを含み、
前記出力軸は、その外周面から突出するように形成される伝動歯部を備え、
前記クラッチユニットは、ドライブギアと、クラッチギアと、出力ギアと、作動機構とを含み、そのうちドライブギアは、前記モータに連結されると共に、該モータによって駆動し、該ドライブギアの外周面に、該モータに連結される外周歯車が形成され、該ドライブギアの内周面に、内周歯車が形成され、
該クラッチギアは、該ドライブギア内において該ドライブギアの軸方向に沿って移動可能に設置され、磁気吸着可能な材料を含み、該クラッチギアの外周面には、該ドライブギアの内周歯車と噛み合う離接歯部が形成され、該クラッチギアの一方の端面には、複数の第1噛合爪が形成され、該複数の第1噛合爪は、該クラッチギアの回転中心を中心として囲繞するように形成されると共に、互いに接続されており、該クラッチギアの他方の端面には、第1当接部が形成され、
該出力ギアは、前記出力軸と回転駆動可能に連結されると共に、該クラッチギアと分離可能に連結され、該出力ギアの外周面に、前記出力軸の伝動歯部と噛み合う出力歯車部が形成され、該出力ギアの該クラッチギアに面する端面に、複数の第2噛合爪が形成され、該複数の第2噛合爪は、該出力ギアの回転中心を中心として囲繞するように形成されると共に、互いに接続されており、また、該複数の第2噛合爪と該複数の第1噛合爪とは、選択的に噛合可能であり、
該作動機構は、該クラッチギアにおいて該出力ギアに向かう側と反対する側に配置され、磁気吸引力を持つと共に、ハウジングと、アクチュエータと、弾性部材とを含み、そのうちハウジングは、囲むように形成される収容空間と、該クラッチギアに向って、該収容空間と連通する開口部と、該収容空間内に位置し、該開口部に向かう内底壁面と、該内底壁面に形成される第1摺動部とを含み、該アクチュエータは、該収容空間内に該ハウジングの軸方向に沿って移動可能に設置されると共に、第2当接部と、第2摺動部とを含み、該第2当接部は、該アクチュエータにおいて該開口部に向かう側面に形成され、前記第1当接部と分離可能に当接し、該第2当接部と該第1当接部とが当接するように接続されることで、該クラッチギアが、該アクチュエータを回転駆動し、該第2摺動部は、該アクチュエータにおいて該内底壁面に向かう側面に形成され、前記第1摺動部に対して摺動可能であり、該弾性部材は、該収容空間内に配置され、該アクチュエータ及び該ハウジングの開口部の周縁に当接するように付勢することを特徴とする自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項2】
前記クラッチユニットは、前記クラッチギア、出力ギア及び作動機構を貫通するように設置されるシャフトを含み、該クラッチギア、出力ギア及び作動機構はそれぞれ、該シャフトに対して相対的に回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項3】
前記クラッチユニットは、前記ドライブギアに取り付けられるベアリング軸受を含み、該ドライブギアは、該ドライブギアの片端面から突出し、該ドライブギアの回転中心を中心として囲繞するように形成される環状突出部を備え、該環状突出部を介して該ベアリング軸受に回転自在に支承されることを特徴とする請求項1に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項4】
前記クラッチギアの出力ギアに向かう側に、第1連結部が突出するように形成され、前記複数の第1噛合爪は、該第1連結部の該出力ギアに向かう側面に配置され、
前記出力ギアのクラッチギアに向かう側に、第2連結部が突出するように形成され、前記複数の第2噛合爪は、該第2連結部のクラッチギアに向かう側面に配置されることを特徴とする請求項1に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項5】
前記第1摺動部は、前記内底壁面に凹むように形成される溝状構造であり、該内底壁面に対して傾斜する溝底面を有し、
前記第2摺動部は、突出するように形成される突起構造であって、前記溝底面に接触するように前記第1摺動部内に収容され、該溝底面に沿って摺動可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項6】
前記各第1噛合爪及び各第2噛合爪はラチェット歯であり、該各第2噛合爪の形状が、該各第1噛合爪の形状に対応していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項7】
前記各第1噛合爪は、互いに接続されている第1歯面と第2歯面を有し、該第1歯面及び第2歯面は、前記出力ギアに向って伸びると共に、該クラッチギアの回転方向の接線方向に傾斜することを特徴とする請求項6に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項8】
前記第1当接部は、前記クラッチギアにおいて前記アクチュエータに向かう側面から突出し、前記第2当接部は、該アクチュエータにおいて該クラッチギアに向かう側面から突出し、該第1当接部と第2当接部とが当接するように接続されると、当該第1当接部が、該クラッチギアの回転方向に沿って当該第2当接部を押し付けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項9】
前記作動機構が、前記ハウジングの開口部の周りに配置される第1磁性部材を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【請求項10】
前記アクチュエータは、磁気吸着可能な材料を含み、
前記作動機構の内底壁面に第2磁性部材が設置され、該第2磁性部材の磁気吸引力により、該アクチュエータが吸着されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自転車のセンターマウント式伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動装置に関し、特に、自転車のセンターマウント式伝動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車とは、搭載されている電動機によって、乗り手のペダルを漕ぐ力を補助する乗り物である。電動機は、自転車の前輪や後輪、あるいはフレームの異なる位置に取り付けられ、その中には、自転車のクランク軸(ボトムブラケット)周辺に搭載される、センターマウント式モータ(Mid Drive Unitまたはミッドシップド電動機とも呼ばれる)があり、それによれば、モータからの補助動力が自転車のクランク軸に直接伝達されるため、伝動効率が向上し、より効果的なペダリング補助が可能となる。
【0003】
道路交通法の規定によると、電動アシスト自転車の最高速度は制限されており、速度が法定速度の上限に達すると、自動的にモータへの電力供給を遮断し、ペダリングへの補助動力を中止しなければならない。しかし、この時、モータの伝動装置は依然として接続されているので、伝動装置内の従動部材が逆に主動部材を駆動することになり、特にセンターマウント式モータの場合、ペダルが急に重くなって、乗り手の体力を過度に消耗してしまうという問題があった。故に、モータへの電力供給が停止する時に、伝動装置の主動部材と従動部材とを分離させるクラッチ機構を搭載することが必要となり、このようなクラッチ機構があれば、上記問題を防ぐことができると共に、伝動装置内の部材の摩耗も軽減できる。
【0004】
さらに、センターマウント式モータでは、伝動装置が自転車のクランク軸に取り付けられているため、乗り手のペダリングによる振動を常に受け続けることになる。その上、センターマウント式モータ伝動装置はコンパクトな構造でありながら、複雑な多段減速機構が組み込まれている。このような限られた空間で、連続する振動にも耐え、かつ安定して機能するクラッチ機構を如何に設計するかが、現在の業界においての課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第US11993343B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、振動に強く、動作が安定しており、かつ伝動装置の主動部材と従動部材を適切に分離、接合できるクラッチ機構を備えた、自転車のセンターマウント式伝動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、自転車のセンターマウント式伝動装置を提案したものであり、当該自転車のセンターマウント式伝動装置は、自転車のセンターマウント式伝動装置であって、対向する二つの側面を有する外殻ケースと、該外殻ケースの対向する二つの側面を貫通する出力軸と、該外殻ケース内に設置されるモータと、該外殻ケース内に設置され、該出力軸とモータとを接続するクラッチユニットとを含み、
前記出力軸は、その外周面から突出するように形成される伝動歯部を備え、
前記クラッチユニットは、ドライブギアと、クラッチギアと、出力ギアと、作動機構とを含み、そのうちドライブギアは、前記モータに連結されると共に、該モータによって駆動し、該ドライブギアの外周面に、該モータに連結される外周歯車が形成され、該ドライブギアの内周面に、内周歯車が形成され、
該クラッチギアは、該ドライブギア内において該ドライブギアの軸方向に沿って移動可能に設置され、磁気吸着可能な材料を含み、該クラッチギアの外周面には、該ドライブギアの内周歯車と噛み合う離接歯部が形成され、該クラッチギアの一方の端面には、複数の第1噛合爪が形成され、該複数の第1噛合爪は、該クラッチギアの回転中心を中心として囲繞するように形成されると共に、互いに接続されており、該クラッチギアの他方の端面には、第1当接部が形成され、
該出力ギアは、前記出力軸と回転駆動可能に連結されると共に、該クラッチギアと分離可能に連結され、該出力ギアの外周面に、前記出力軸の伝動歯部と噛み合う出力歯車部が形成され、該出力ギアの該クラッチギアに面する端面に、複数の第2噛合爪が形成され、該複数の第2噛合爪は、該出力ギアの回転中心を中心として囲繞するように形成されると共に、互いに接続されており、また、該複数の第2噛合爪と該複数の第1噛合爪とは、選択的に噛合可能であり、
該作動機構は、該クラッチギアにおいて該出力ギアに向かう側と反対する側に配置され、磁気吸引力を持つと共に、ハウジングと、アクチュエータと、弾性部材とを含み、そのうちハウジングは、囲むように形成される収容空間と、該クラッチギアに向って、該収容空間と連通する開口部と、該収容空間内に位置し、該開口部に向かう内底壁面と、該内底壁面に形成される第1摺動部とを含み、該アクチュエータは、該収容空間内に該ハウジングの軸方向に沿って移動可能に設置されると共に、第2当接部と、第2摺動部とを含み、該第2当接部は、該アクチュエータにおいて該開口部に向かう側面に形成され、前記第1当接部と分離可能に当接し、該第2当接部と該第1当接部とが当接するように接続されることで、該クラッチギアが、該アクチュエータを回転駆動し、該第2摺動部は、該アクチュエータにおいて該内底壁面に向かう側面に形成され、前記第1摺動部に対して摺動可能であり、該弾性部材は、該収容空間内に配置され、該アクチュエータ及び該ハウジングの開口部の周縁に当接するように付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の技術手段を有する、本発明に係る自転車のセンターマウント式伝動装置では、モータの電力供給が遮断されてペダリング補助動力の提供が停止した時、クラッチギアと出力ギアとを適切に分離することができることから、ペダルが急に重くなる現象を回避できると共に、クラッチギアと出力ギアの摩耗も軽減できる。一方、モータへの電力供給が再開されてペダリング補助動力の提供が再び始まると、アクチュエータが作動し、クラッチギアと出力ギアとが噛合されることにより、出力軸が回転駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の外殻ケースを外した後の外観斜視図である。
【
図5】本発明のクラッチユニットを示す外観斜視図である。
【
図6】本発明のクラッチユニットの分解斜視図である。
【
図7】本発明のクラッチユニットを他の角度から見た分解斜視図である。
【
図8】本発明のクラッチユニットの作動状態を示す側面視断面模式図である。
【
図9】本発明のクラッチユニットの作動状態を示す側面視断面模式図である。
【
図10】本発明のクラッチユニットの作動状態を示す側面視断面模式図である。
【
図11】本発明のクラッチユニットの局部拡大断面図であって、第1当接部と第2当接部が当接するように接続された状態を示す図である。
【
図12】本発明のクラッチユニットの局部拡大断面図であって、第1噛合爪と第2噛合爪が噛み合った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図4は、本発明に係る自転車のセンターマウント式伝動装置を示したものであり、それらの図面によると、本発明の自転車のセンターマウント式伝動装置は、外殻ケース10、出力軸20、モータ30及びクラッチユニット40を含む。
【0011】
前記外殻ケース10は、対向する二つの側面を有し、前記出力軸20は、該外殻ケース10の対向する両側面を貫通するように設置される。該出力軸20は、その外周面から突出するように形成される伝動歯部21を備え、該伝動歯部21は、該外殻ケース10内に収容される。本実施例では、該伝動歯部21ははすば歯車であることが好ましいが、これに限定されるものではない。前記モータ30とクラッチユニット40は、前記外殻ケース10内に収容され、該クラッチユニット40によって前記出力軸20とモータ30とが接続される。本実施例では、該モータ30は、連結用歯車セット31を介してクラッチユニット40に接続されるが、また、該連結用歯車セット31は、複数のはすば歯車で構成されるが、これに限定されるものではない。
【0012】
図4~
図7に示すように、前記クラッチユニット40は、ドライブギア41と、クラッチギア42と、出力ギア43と、作動機構44と、シャフト45と、ベアリング軸受46とを含む。
【0013】
図4~
図8に示すように、前記ドライブギア41は、前記モータ30に連結されると共に、該モータ30の駆動によって回転し、外周歯車411、内周歯車412及び環状突出部413を備える。
【0014】
前記外周歯車411は、前記ドライブギア41の外周面に形成されると共に、前記モータ30の連結用歯車セット31に連結され、前記内周歯車412は、該ドライブギア41の内周面に形成される。本実施例では、該ドライブギア41は、相対する両端面を有し、前記環状突出部413は、その方端面から突出し、該ドライブギア41の回転中心を中心として囲繞するように形成されるが、これに限定されるものではなく、他の実施例では、ドライブギア41が環状突出部413を備えていなくてもよい。
【0015】
図6~
図8、
図11及び
図12に示すように、前記クラッチギア42は、前記ドライブギア41内に配置されると共に、該ドライブギア41の軸方向に沿って該ドライブギア41に対して移動可能である。本実施例では、該クラッチギア42を構成する材料には、磁気吸着可能な材料を含むが、これに限定されるものではない。尚、該クラッチギア42は、離接歯部421と、複数の第1噛合爪422と、第1連結部423と、第1当接部424とを備える。
【0016】
前記離接歯部421は、前記クラッチギア42の外周面に形成され、前記ドライブギア41の内周歯車412と噛み合うように連結される。この配置により、該ドライブギア41が駆動することで該クラッチギア42が回転する。本実施例では、該離接歯部421ははすば歯車であることが好ましいが、これに限定されるものではない。該クラッチギア42は、軸方向において相対する両端面を有し、前記複数の第1噛合爪422は、そのうちの出力ギア43に向かう端面に形成される。具体的に説明すると、本実施例では、前記第1連結部423が、該クラッチギア42において該出力ギア43に向かう側に突出するように形成され、つまり、該第1連結部423の該出力ギア43に面する側面が、該クラッチギア42の該出力ギア43に面する端面であり、該複数の第1噛合爪422は、該第1連結部423の該出力ギア43に面する側面に位置する。
【0017】
前記複数の第1噛合爪422は、前記クラッチギア42の回転中心を中心として囲繞するように形成されると共に、該各第1噛合爪422が互いに接続されている。
図12に示すように、本実施例では、該各第1噛合爪422がラチェット歯であって、互いに接続されている第1歯面4221及び第2歯面4222を有し、該第1歯面4221、第2歯面4222は、前記出力ギア43に向かう方向に延伸すると共に、該クラッチギア42の回転方向の接線方向に傾斜している。
【0018】
前記第1当接部424は、前記クラッチギア42において前記作動機構44に向かう端面から突出するように形成されている。本実施例では、該第1当接部424は、該クラッチギア42の径方向に沿って延在する複数のリブ突部を有し、これらのリブ突部は、該クラッチギア42の円周方向に間隔を置いて配置されているが、これに限定されるものではなく、第1当接部424の形式は、必要に応じて任意に設計変更することができる。
【0019】
さらに、本実施例では、前記クラッチギア42が、その前記作動機構44に向かう端面から突出しており、該クラッチギア42の回転中心を中心として囲繞するように形成される延伸部425を有し、前記第1当接部424は、該延伸部425に配置されているが、これに限定されるものではなく、他の実施例では、クラッチギア42は、延伸部425を有さなくてもよい。
【0020】
図4~
図7及び
図12に示すように、前記出力ギア43は、前記出力軸20を回転駆動可能に連結されると共に、前記クラッチギア42と分離可能に連結される。このような構成により、該クラッチギア42は、該出力ギア43を選択的に回転駆動することができる。さらに、該出力ギア43は、出力歯車部431と、複数の第2噛合爪432と、第2連結部433とを含む。
【0021】
前記出力歯車部431は、前記出力ギア43の外周面に形成され、前記出力軸20の伝動歯部21と噛み合っている。本実施例では、該出力歯車部431ははすば歯車であることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、該出力ギア43は、軸方向において相対する両端面を有し、前記複数の第2噛合爪432は、そのうち前記クラッチギア42に向かう端面に形成される。尚、本実施例では、前記第2連結部433が、該出力ギア43において該クラッチギア42に向かう側に突出するように形成され、つまり、該第2連結部433の該クラッチギア42に面する側面は、該出力ギア43の該クラッチギア42に面する端面であり、前記複数の第2噛合爪432は、該第2連結部433の該クラッチギア42に面する側面に位置する。
【0022】
前記複数の第2噛合爪432は、前記出力ギア43の回転中心を中心として囲繞するように形成されると共に、該各第2噛合爪432は互いに接続され、該複数の第2噛合爪432と第1噛合爪422とは選択的に噛合可能である。尚、本実施例では、該各第2噛合爪432がラチェット歯であり、また、該各第2噛合爪432の形状は該各第1噛合爪422の形状に対応しているが、これに限定されるものではない。
【0023】
図6~
図8及び
図11に示すように、前記作動機構44は、前記クラッチギア42において前記出力ギア43に向かう側と反対する側に配置され、磁気吸引力を具備していると共に、ハウジング441と、アクチュエータ442と、弾性部材443と、第1磁性部材444と、第2磁性部材445とを含む。
【0024】
前記ハウジング441は、囲むように形成される収容空間4411と、前記クラッチギア42に向って該収容空間4411と連通する開口部4412と、該収容空間4411内に位置し、該開口部4412に向かう内底壁面4413と、該内底壁面4413に形成される第1摺動部4414とを備える。本実施例では、該内底壁面4413に複数の第1摺動部4414が形成され、これらの第1摺動部4414は、該内底壁面4413の円周方向に間隔を置いて配置され、該各第1摺動部4414は、該内底壁面4413に凹むように形成された溝状構造であり、該内底壁面4413に対して傾斜する溝底面4415を有する。具体的に説明すると、該溝底面4415は、前記クラッチギア42の回転方向に沿って該クラッチギア42に向かう方向に傾斜するが、これに限定されるものではなく、他の実施例では、第1摺動部4414が溝状構造でなくてもよい。
【0025】
前記アクチュエータ442は、前記収容空間4411内において前記ハウジング441の軸方向に沿って移動可能に設置される。尚、本実施例では、該アクチュエータ442は、磁気吸着可能な材料からなる円盤状構造体であるが、これに限定されるものではなく、アクチュエータ442の形式は、必要に応じて任意に設計変更することができる。また、該アクチュエータ442は、第2当接部4421及び第2摺動部4422を備える。
【0026】
前記第2当接部4421は、前記アクチュエータ442において前記開口部4412に向かう側面に形成され、前記第1当接部424と分離可能に当接する。これにより、該第2当接部4421と第1当接部424とが当接するように接続されると、前記クラッチギア42が、該アクチュエータ442を回転駆動することができる。尚、本実施例では、該第2当接部4421が、該アクチュエータ442の径方向に沿って延在する複数のリブ突部を有し、これらのリブ突部は、該アクチュエータ442において該クラッチギア42に向かう側面に突出するように形成されると共に、該アクチュエータ442の円周方向に間隔を置いて配置される。一方、前記第1当接部424の複数のリブ突部は、該クラッチギア42において該アクチュエータ442に向かう側面に形成されていることから、該アクチュエータ442とクラッチギア42とが接触すると、当該第1当接部424が、該クラッチギア42の回転方向に沿って当該第2当接部4421を押し付け、これにより、当該クラッチギア42が当該アクチュエータ442を回転駆動させる。
【0027】
また、本実施例では、前記クラッチギア42が前記延伸部425を介して、前記ハウジング441の開口部4412に穿設され、これにより、該クラッチギア42は、前記ドライブギア41内をスムーズに移動し、前記アクチュエータ442との分離・接触動作を円滑に行い、且つ、前記第1当接部424と第2当接部4421との当接接続動作を確実に遂行することができる。
【0028】
前記第2摺動部4422は、前記アクチュエータ442において前記内底壁面4413に向かう側面に形成されると共に、前記第1摺動部4414に対して摺動可能である。本実施例では、前記アクチュエータ442は、複数の第2摺動部4422を備え、これらの第2摺動部4422の数及び形成位置は、該第1摺動部4414の数及び形成位置と対応しており、該各第2摺動部4422は、突起構造であって、対応する第1摺動部4414内に収容されて、その溝底面4415に接触しながら摺動する。
【0029】
前記弾性部材443は、前記収容空間4411内に配置され、且つ前記アクチュエータ442及びハウジング441の開口部4412の周縁に当接するように設置され、これにより、該アクチュエータ442は前記内底壁面4413に付勢するように押し付けられる。
【0030】
本実施例では、前記作動機構44が、前記ハウジング441の開口部4412の周りに配置される第1磁性部材444を含む。具体的に説明すると、該作動機構44は、複数の第1磁性部材444を含み、これらの第1磁性部材444は、該開口部4412の周縁に間隔を置いて配置され、これらの第1磁性部材444の設置により、該作動機構44は、前記クラッチギア42を引き寄せる磁気吸引力を提供する。同様に、該作動機構44の内底壁面4413には、該内底壁面4413の円周方向に間隔を置いて複数の第2磁性部材445が配置されており、これらの第2磁性部材445の設置により、前記アクチュエータ442を該内底壁面4413方向へ引き寄せる磁気吸引力を提供する。尚、これらの磁性部材の設置方式は、これに限定されるものではない。
【0031】
図5~
図7に示すように、本実施例では、前記クラッチユニット40が、前記クラッチギア42、出力ギア43及び作動機構44を貫通するように設置されるシャフト45を備え、該クラッチギア42、出力ギア43及び作動機構44はそれぞれ、該シャフト45に対して回転することができる。具体的に説明すると、本実施例では、該クラッチギア42、出力ギア43及び作動機構44のアクチュエータ442が同軸で配置されており、該シャフト45は、該クラッチギア42、出力ギア43及びアクチュエータ442の回転中心位置に穿設され、これにより、該クラッチギア42、出力ギア43及びアクチュエータ442の所定の相対位置関係を確保し、動作中の位置ずれの発生を防ぐことができるが、これに限定されるものではなく、他の実施例では、シャフト45を備えていなくてもよい。
【0032】
また、本実施例では、さらに前記ドライブギア41に取り付けられたベアリング軸受46を含み、つまり、該ベアリング軸受46は、該ドライブギア41の環状突出部413に環装され、該ドライブギア41を回転自在に支承することにより、動作中の位置ずれの発生を防ぐが、これに限定されるものではなく、他の実施例では、ベアリング軸受46を備えていなくてもよい。
【0033】
以下、
図8~
図12を参照しながら、本発明のクラッチユニットの作動状態を説明する。
図8に示すように、モータ30が起動していない時、クラッチギア42は、第1磁性部材444の磁気吸引力によって、出力ギア43から分離されて、アクチュエータ442に当接するように磁気吸着される。一方、アクチュエータ442は、弾性部材443の付勢力によって、その第2摺動部4422が第1摺動部4414内に収容されるように、内底壁面4413に押し付けられている。
【0034】
図9及び
図11に示すように、モータ30が起動すると、外周歯車411を通じてドライブギア41を回転させ、この時のドライブギア41は、環状突出部413を介してベアリング軸受46に支承されて、ベアリング軸受46内で安定して回転する。さらに、ドライブギア41は、内周歯車412を介してクラッチギア42を回転させ、この時、クラッチギア42の第1当接部424とアクチュエータ442の第2当接部4421が当接するように接続されているので、アクチュエータ442も回転し始める。アクチュエータ442が回転すると、第2摺動部4422は、第1摺動部4414の溝底面4415に沿って摺動し、それによってアクチュエータ442をハウジング441の開口部4412方向へ移動させると同時に、クラッチギア42を出力ギア43方向へ移動させる。
図12に示すように、クラッチギア42は、第1噛合爪422が第2噛合爪432と噛み合うまで移動して、出力ギア43を回転させ、出力ギア43は、伝動歯部21と噛み合う出力歯車部431を通じて、モータ30からの動力を出力軸20に伝達し、乗り手のペダリングを補助する。
【0035】
この一連の動作において、各第1噛合爪422の第1歯面4221と第2歯面4222は、クラッチギア42の回転方向の接線方向に傾斜しているため、第1噛合爪422と第2噛合爪432とが噛み合うと、クラッチギア42がさらに出力ギア43方向に移動し、その結果、クラッチギア42がアクチュエータ442と接触しなくなる。
図10に示すように、この時、弾性部材443の付勢力と第2磁性部材445の磁気吸引力により、アクチュエータ442が、モータ30が起動する前の状態に復位する。
【0036】
一方、モータ30への電力供給が停止したり、そのほかの原因でクラッチギア42の回転速度が出力ギア43の回転速度より低下した場合、各第1噛合爪422の第1歯面4221及び第2歯面4222は、クラッチギア42の回転方向の接線方向に傾斜しているため、第1噛合爪422が第2噛合爪432から分離し、両者の間の噛合状態が解除され、さらに、第1歯面4221が傾斜していることから、クラッチギア42と出力ギア43が分離し始めると、第2噛合爪432の先端部分が第1歯面4221に沿って、クラッチギア42を作動機構44方向にわずかに押して、クラッチギア42と出力ギア43とを完全に分離させる。逆に、出力ギア43の回転速度がクラッチギア42の回転速度よりも高くならなければ、第1噛合爪422と第2噛合爪432との間の噛合状態が保持され、モータ30からの動力を絶え間なく出力ギア43に伝達し続ける。
【0037】
クラッチギア42と出力ギア43が分離した後、作動機構44上の第1磁性部材444の磁気吸引力の作用により、クラッチギア42が作動機構44に向かって引き寄せられ、
図8に示されたモータ30が起動する前の状態まで復位する。
【0038】
本発明の自転車のセンターマウント式伝動装置は、モータ30がペダリング補助動力を出力し始めると、作動機構44内のアクチュエータ442が、クラッチギア42を押し付けて出力ギア43に噛み合わされるが、その後、すぐに分離して初期位置に戻る。
【0039】
一方、モータ30がペダリング補助動力の出力を停止した時は、クラッチギア42が出力ギア43から完全に分離するため、持続的な接触がなくなり、第1噛合爪422と第2噛合爪432との摩耗を回避できる。このように、クラッチギア42が出力ギア43から完全に分離することで、乗り手がペダリングの際に、逆にモータ30を回転させる現象を回避し、乗り手の体力消耗を減らすと同時に、部材の摩耗も減らすので、使用寿命を延ばすことができる。
【0040】
また、シャフト45の設置により、出力ギア43、クラッチギア42及びアクチュエータ442を共に同軸上に配置し、それらの所定の相対位置関係を確保すると共に、ベアリング軸受46の設置により、ドライブギア41とクラッチギア42との分離・接合動作をスムーズかつ安定的に行うことにより、動作中の位置ずれを抑えることができ、乗り手のペダリングによる連続的な振動にも耐えることができ、さらに、クラッチユニット40全体の構造をよりコンパクトにすることができる。
【0041】
本発明は、ドライブギア41とクラッチギア42の組み合わせにより、主動部材を外側に配置し、従動部材を内側に配置する設計であるので、センターマウント式モータの限られた内部空間を効率的に利用してスペース効率を高めることができると共に、クラッチギア42の第1連結部423と出力ギア43における第2連結部433の設計により、構造上の強度を確保しつつ、クラッチギア42の移動距離を短縮し、ドライブギア41の軸方向の長さ及び全体的な体積を削減することになり、センターマウント式モータの限られた内部空間を最大限に有効活用することができる。
【0042】
要するに、本発明に係るクラッチユニット40は、非常にコンパクトな構造でありながら、センターマウント式モータの狭い内部空間に適しており、乗り手のペダリングによる連続的な振動に耐え、部品の位置ずれを抑えうる設計がなされているので、安定した作動を実現できる。また、本発明に係るクラッチギア42と出力ギア43を完全に分離可能な設計とすることにより、モータ30が補助動力の出力を停止した時に、乗り手が逆にモータ30を回転駆動することを回避でき、体力消耗を減らすと同時に、クラッチギア42及び出力ギア43の摩耗も減らすことができる。
【符号の説明】
【0043】
10 外殻ケース
20 出力軸
21 伝動歯部
30 モータ
31 連結用歯車セット
40 クラッチユニット
41 ドライブギア
411 外周歯車
412 内周歯車
413 環状突出部
42 クラッチギア
421 離接歯部
422 第1噛合爪
4221 第1歯面
4222 第2歯面
423 第1連結部
424 第1当接部
425 延伸部
43 出力ギア
431 出力歯車部
432 第2噛合爪
433 第2連結部
44 作動機構
441 ハウジング
4411 収容空間
4412 開口部
4413 内底壁面
4414 第1摺動部
4415 溝底面
442 アクチュエータ
4421 第2当接部
4422 第2摺動部
443 弾性部材
444 第1磁性部材
445 第2磁性部材
45 シャフト
46 ベアリング軸受