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特開2025-146611アクティブシールドで囲まれたコイル構造及びその多目的最適化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025146611
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】アクティブシールドで囲まれたコイル構造及びその多目的最適化方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/70 20160101AFI20250926BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20250926BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/12
H05K9/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174922
(22)【出願日】2024-10-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-09-01
(31)【優先権主張番号】202410322879.5
(32)【優先日】2024-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524369665
【氏名又は名称】長春汽車検測中心有限責任公司
(71)【出願人】
【識別番号】508279166
【氏名又は名称】吉林大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呂剛
(72)【発明者】
【氏名】王天皓
(72)【発明者】
【氏名】尤仁杰
(72)【発明者】
【氏名】于全毅
(72)【発明者】
【氏名】皮帥
(72)【発明者】
【氏名】李博
(72)【発明者】
【氏名】朱宇
(72)【発明者】
【氏名】趙強
【テーマコード(参考)】
5E321
【Fターム(参考)】
5E321AA31
5E321GG05
5E321GG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アクティブシールドで囲まれたコイル構造及びその多目的最適化方法を提供する。
【解決手段】アクティブシールドで囲まれたコイル構造は、一次コイル01と、アクティブシールドコイルとを備え、アクティブシールドコイルは、一次コイルの外側で逆直列接続され、一次コイルの電流の向きと同じの内側シールドコイル02と、一次コイルの電流の向きと逆の外側シールドコイル03と、を備える。多目的最適化方法は、アクティブシールドコイルと無線電力伝送(WPT)システムの有限要素シミュレーションモデルを構築するステップと、データ駆動型の方法で最適化代理モデルを構築するステップと、代理モデルを、多項式カオス代理モデルを非優越ソート遺伝的アルゴリズム(NSGA)-IIの目的関数として、多目的最適化設計を実現するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法であって、
前記方法は、アクティブシールドで囲まれたコイル構造に基づいており、前記アクティブシールドで囲まれたコイル構造は一次コイル、を備え、
前記一次コイルの外側で逆直列接続され、
電流の向きは、前記一次コイルの電流の向きと同じで、WPTシステムの伝送効率を補償するための内側シールドコイルと、前記電流の向きは、前記一次コイルの電流の向きと逆で、コイル構造領域の周囲の磁気誘導強度を弱めるための外側シールドコイルと、を含むアクティブシールドコイルをさらに備え、
前記方法は、
前記アクティブシールドで囲まれたコイル構造に基づき前記アクティブシールドコイルと前記WPTシステムの有限要素シミュレーションモデルを構築するステップと、
最適化変数及び最適化区間に基づきデータ駆動型の方法で最適化目的の多項式カオス代理モデルを構築するステップと、
構築された前記多項式カオス代理モデルをNSGA-IIアルゴリズムの目的関数として、前記アクティブシールドコイルの多目的最適化設計を実現するステップとを含み、
前記最適化変数は、内側シールドコイルの半径rin、同じ側のシールドコイルの間隔d及びシールドコイルと前記一次コイルとの間的垂直距離hであり、
前記最適化目的は、前記WPTシステムの伝送効率の変化量Δη及び観測面A1の磁束最大値であり、
前記多項式カオス代理モデルには、Δη及び観測面A1の最大磁気誘導強度Bmaxの代理モデルが含まれる、
アクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法。
【請求項2】
具体的なステップとしては、
有限要素シミュレーションモデルをオリジナルモデルy(ξ)として、PCE法を使用してオリジナルモデルを展開して、次の式1を得るステップ、
【数1】
[式中、
は、多項式カオス展開項の係数、dはモデル入力変数の次元、ξはd次元の入力変数
はサイズdのマルチインデックス、
は各次元変数に対応する直交多項式基底から構築された直交多項式である]、
が入力変数に対応する多項式であると仮定して次の式2を得るステップ、
【数2】
[式中、
は、
の展開係数である]、
各入力変数の次数のモーメントに従い対応する直交多項式基底を構築し、多項式の直交条件に基づき次の式3及び式4を得るステップ、
【数3】
[式中、μは、重み関数である]、
【数4】
任意のk次多項式
の全ての低次多項式の直交性に従い次の式5を得るステップ、
【数5】
入力変数ξのk次モーメントを次の式6として定義するステップ、
【数6】
式6に基づき式5を次の式7に並べ替えるステップ、
【数7】
式7を行列として表現して次の式8を得るステップ、
【数8】
データ駆動型の任意の分布直交多項式基係数
を得た後、式1から代理モデルの構築を続け、式1を切り捨て、回帰法を用いて切り捨てられた多項式係数を計算する、
請求項1に記載のアクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送の技術分野に属し、特に、アクティブシールドで囲まれたコイル構造及びその多目的最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送技術(wireless power transfer,WPT)は、ユーザが電気インターフェースや機械構造に接触することを防ぎ、極めて高い安全性を持つだけではなく、充電が便利で省スペースであるという利点もある。そのため、無線電力伝送システムは、携帯電話、ドローン、電動自転車、及び電気自動車など、様々な電気・電子機器に広く利用されている。
【0003】
しかし、無線電力伝送システムの充電電力が徐々に増加するに伴い、その結合機構間の漏洩磁界が周囲の電子機器に著しい干渉を引き起こす可能性があるとともに、電磁放射線への曝露は人々に安全上のリスクをもたらし、これらの問題により、多くの分野でのWPTの使用が制限される。
【0004】
したがって、WPTシステムのシールド技術の研究を行うことは、WPTの電磁波曝露に対する安全性の確保にとって非常に重要な意味を持っている。
【0005】
現在、磁気シールド方法及び能動的磁気遮蔽方法が広く使われている。磁気シールド方法は、高透磁率の磁性材料を使用して磁束の磁気抵抗の低い経路を形成するか、非強磁性導体材料により誘導される渦電流逆磁場を用いて漏れ磁束を低減する。
【0006】
しかし、磁気シールド方法のアルミ板シールドが発熱しやすく、無線電力伝送システムの大型化、重量化、高コスト化の原因となる。
【0007】
能動的磁気遮蔽方法は、シールドコイルを通じてWPTの漏洩磁界と逆方向のキャンセル磁界を発生させる方法で、配置が柔軟でシールド効果が良好という利点がある。
【0008】
独立した電源を設けるかどうかにより、能動的磁気遮蔽方法はパッシブシールドとアクティブシールドに分けられ、アクティブシールド装置は複雑な同調回路が必要であり、また、コイル装置のインピーダンスは温度により著しく変化するため、実際の使用においてはシールドコイルと一次コイルの電流位相を一致させることが困難である。いずれのシールド方法も、WPTの磁気結合機構間の磁界を減少させ、伝送効率の低下につながる。
【0009】
伝送効率への影響を最小限に抑えながらシールド効果を確保するため、多くの研究者が有限要素シミュレーション及び最適化アルゴリズムと組み合わせてWPT装置の設計を研究してきた。正確なシミュレーション結果を借りて複数回の試験の時間的コストを大幅に削減できるが、有限要素シミュレーションには長い計算時間が必要であり、かつ最適化アルゴリズムには複数回の反復も必要となるため、WPT装置の最適化された設計には高い計算コストがかかっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の背景技術で提起された問題を解決するため、アクティブシールドで囲まれたコイル構造及びその多目的最適化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、次の技術的手段を採用する。
アクティブシールドで囲まれたコイル構造であって、一次コイルを備え、
一次コイルの外側で逆直列接続され、
電流の向きは、一次コイルの電流の向きと同じで、WPTシステムの伝送効率を補償するための内側シールドコイルと、
電流の向きは一次コイルの電流の向きと逆で、コイル構造領域の周囲の磁気誘導強度を弱めるための外側シールドコイルと、
を含む、アクティブシールドコイルをさらに備える。
【0012】
アクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法であって、
アクティブシールドで囲まれたコイル構造に基づきアクティブシールドコイルとWPTシステムの有限要素シミュレーションモデルを構築するステップと、
最適化変数及び最適化区間に基づきデータ駆動型の方法で最適化目的の多項式カオス代理モデルを構築するステップと、
構築された多項式カオス代理モデルをNSGA-IIアルゴリズムの目的関数として、アクティブシールドコイルの多目的最適化設計を実現するステップ、
とを含む、上記方法。
【0013】
また、前記最適化変数は、内側シールドコイルの半径rin、同じ側のシールドコイルの間隔d及びシールドコイルと一次コイルとの間的垂直距離hである。
【0014】
また、前記最適化目的は、WPTシステム伝送効率の変化量Δη及び観測面A1の磁束最大値である。
【0015】
また、前記多項式カオス代理モデルには、Δη及びBmaxの代理モデルが含まれる。
【0016】
また、前記方法の具体的なステップとしては、
有限要素シミュレーションモデルをオリジナルモデルy(ξ)として、PCE法を使用してオリジナルモデルを展開して、次の式1を得るステップ。
【0017】
【数1】
[式中、
は、多項式カオス展開項の係数、dはモデル入力変数の次元、ξはd次元の入力変数
はサイズdのマルチインデックス、
は各次元変数に対応する直交多項式基底から構築された直交多項式である]。
【0018】
が入力変数に対応する多項式であると仮定して次の式2を得るステップ。
【0019】
【数2】
[式中、
は、
の展開係数である]。
【0020】
各入力変数の次数のモーメントに従い対応する直交多項式基底を構築し、多項式の直交条件に基づき次の式3及び式4を得るステップ。
【0021】
【数3】
[式中、μは、重み関数である]。
【0022】
【数4】
任意のk次多項式
の全ての低次多項式の直交性に従い次の式5を得るステップ。
【0023】
【数5】
入力変数ξのk次モーメントを次の式6として定義するステップ。
【0024】
【数6】
式6に基づき式5を次の式7に並べ替えるステップ。
【0025】
【数7】
式7を行列として表現して次の式8を得るステップ。
【0026】
【数8】
【0027】
データ駆動型の任意の分布直交多項式基係数
を得た後、式1から代理モデルの構築を続け、式1を切り捨て、回帰法を用いて切り捨てられた多項式係数を計算する。
【発明の効果】
【0028】
従来技術に比べると、本発明の有利な効果としては、
代理モデルと組み合わせてアクティブシールドコイルの多目的最適化を行うことで、最適化プロセスの時間的コストを大幅に削減でき、かつアクティブシールドコイルはターゲットエリアのWPTシステム漏洩磁界を効果的に弱め、良好なシールド効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のアクティブシールドで囲まれたコイル構造の概略図である。
図2】(a)従来のコイル構造を示す図であり、(b)一次コイルに逆直列接続されたアクティブコイル構造を示す図であり、(c)2つのアクティブコイルを有するシールド構造を示す図であり、(d)本発明により提供されるアクティブシールドで囲まれたコイル構造を示す図である。
図3】(a)一側にアクティブシールドコイルを備えたWPTシステムシミュレーションモデルを示す図であり、(b)シールドコイルと一次コイルとの間の距離関係を示す概略構成図である。
図4】本発明のアクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化設計のフローチャートである。
図5】本発明におけるCOMSOLとmetamodelのパレートフロント図である。
図6】本発明における様々なアルゴリズムパレートフロントの比較図である。
図7】作製した本発明のアクティブシールドコイルを備えたWPTシステムの写真であり、(a)作製されたアクティブシールドで囲まれたコイル及び受信コイル、(b)作製されたアクティブシールドで囲まれたコイル及び送信コイル。
図8】(a)シールドなしの観測面A1の磁束密度結果図、(b)シールドなしの観測面A2の磁束密度結果図である。
図9】(a)アクティブシールドを有する観測面A1の磁束密度結果図、(b)アクティブシールドを有する観測面A2の磁束密度結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の目的、技術的手段及び利点をより明確にするため、添付の図面及び実施形態を参照しつつ本発明をさらに詳細に説明する。ここで記載される具体的実施形態は、本発明を解釈するためにのみ使用され、本発明を限定する意図で用いられるものではないことが理解されるであろう。
【0031】
以下、本発明の具体的な実装については、具体的実施形態を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、本発明の一実施形態により提供されるアクティブシールドで囲まれたコイル構造であって、一次コイル01を備え、
一次コイル01の外側で逆直列接続され、
電流の向きは一次コイル01の電流の向きと同じで、WPTシステムの伝送効率を補償するための内側シールドコイル02と、
電流の向きは一次コイル01の電流の向きと逆で、コイル構造領域の周囲の磁気誘導強度を弱めるための外側シールドコイル03と、
を含むアクティブシールドコイルをさらに備える。
【0033】
本発明の実施形態において、図2に示すように、従来のコイル構造と比較することにより提案されたコイル構造の動作原理を説明する。
【0034】
図2(a)は、従来のコイル構造を示し、シールド構造がないため、送信コイルと受信コイルとの間に大きな漏洩磁界が発生する。
【0035】
図2(b)は、一次コイル01に逆直列接続されたアクティブコイル構造を示し、電流の向きは一次コイル01と逆であり、より良好なシールド効果を有するが、同時に送信コイルと受信コイルとの間の磁界も弱め、WPTシステムの効率に大きな悪影響を及ぼす。
【0036】
図2(c)は、2つのアクティブコイルを有するシールド構造を示し、アクティブコイルは独立したシステムにより給電され、WPTの効率への影響は低いであるが、実際の動作中ではシールドコイルと一次コイル01の電流位相を一致させることが困難である。
【0037】
図2(d)は、本発明により提供されるアクティブシールドで囲まれたコイル構造を示し、アクティブシールドで囲まれたコイル構造は二重層コイルを有し、一次コイル01に逆直列接続され、内側シールドコイル02の電流の向きが一次コイル01内の電流と同じであり、これにより一次コイル01と同じ方向の磁界を発生し、WPTシステム伝送効率を補償する作用を有し、外層シールドコイルと一次コイル01内の電流の向きが逆になり、コイルの外部の磁界の強度が弱まることで、シールド作用を働かせる。
【0038】
本発明の一実施形態により提供されるアクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法であって、
アクティブシールドで囲まれたコイル構造に基づきアクティブシールドコイルとWPTシステムの有限要素シミュレーションモデルを構築するステップと、最適化変数及び最適化区間に基づきデータ駆動型の方法で最適化目的の多項式カオス代理モデルを構築するステップと、を含む。
【0039】
最適化変数は、内側シールドコイル02の半径rin、同じ側のシールドコイルの間隔d及びシールドコイルと一次コイル01との間的垂直距離hである。前記最適化目的は、WPTシステム伝送効率の変化量Δη及び観測面A1の磁束最大値であり、最適化されたWPTシステムの観測面での漏洩磁界は最小限に抑えられ、伝送効率への影響も最小限に抑えられるようにする。
【0040】
構築された多項式カオス代理モデルを非優越ソート遺伝的アルゴリズム(Non-dominated Sorting Genetic Algorithms-II,NSGA-II)の目的関数として、アクティブシールドコイルの多目的最適化設計を実現する。
【0041】
本発明の実施形態において、図3を参照すると、WPTシステムの送信コイル及び送信コイルに直列接続された送信側アクティブシールドコイルは、直径3.7mmの撚り線で巻かれ、送信コイルの巻き数が14回巻きで、外径が198mmである。
【0042】
受信コイル及び受信コイルに直列接続された受信側アクティブシールドコイルは、直径2.9mm撚り線で巻かれ、受信コイルの巻き数が18回巻きで、外径が148mmである。
【0043】
シミュレーションモデルでは、送信コイルと受信コイルとの間の動作距離は、40mm、共振回路は直列補償回路、動作周波数は70kHz、負荷抵抗の抵抗値は2.8Ω、出力電力は300Wである。
【0044】
一側にアクティブシールドコイルを有するWPTシステムシミュレーションモデルを例にとると、ここでrinは内側シールドコイル02の半径、dは同じ側のシールドコイルの間隔、hはシールドコイルと一次コイル01間の垂直距離、コイルの材料は銅で、一次コイル01の下にフェライトからなる磁気シールドを有する。
【0045】
アクティブシールドで囲まれたコイルのシールド効果を検証するため、シミュレーションモデル内に2つの観測面A1及びA2を設け、A1は一次コイル01がある平面に垂直で、A2は一次コイル01がある平面に平行であり、WPT一次コイル01の中心までの距離は500mm(dm=500mm)、サイズはいずれも500mm×200mm(Sx=200mm,Sy=500mm,Sz=200mm)であり、点Oは観測面A1上の測定点である。
【0046】
図4を参照すると、アクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法の設計フローチャートである。
【0047】
本発明は、NSGA-IIアルゴリズムを用いてアクティブシールドコイルの多目的最適化設計を行い、まず母集団を初期化し、次に目的関数の適応度を計算する。注意すべき点は、本発明がデータ駆動型の多項式カオスを通じてアクティブシールドコイルを備えたWPTシステム伝送効率の変化量Δη及び観測面の最大磁気誘導強度Bmaxの代理モデルを構築し、該代理モデルをNSGA-IIアルゴリズムの目的関数として使用する。
【0048】
目的関数の適応度に従い高速優越ソートを実行し、混雑度を計算して新しい親母集団を生成する。アルゴリズムの反復サイクルに入り、母集団に対し選択、交叉、突然変異を実行し、目的関数の適応度を再度計算し、適応度の結果に対し高速非優越ソートを実行し、混雑度を計算して一時的な子孫母集団を生成し、一時的な子母集団と親母集団を組み合わせ、新しい子母集団を選択して生成し、この時の反復回数がデフォルト値に達したかどうかを判断し、デフォルト値に達した場合、反復サイクルを終了し、アクティブシールドコイル構造の最適化結果が得られる。
【0049】
アクティブシールドコイルの最適化変数及び最適化範囲を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の好ましい実施形態として、前記多項式カオス代理モデルには、Δη及びBmaxの代理モデルが含まれる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態として、前記方法の具体的なステップは、次の通りであり、
有限要素シミュレーションモデルをオリジナルモデルy(ξ)として、PCE法を使用してオリジナルモデルを展開して、次の式1を得るステップ。
【0053】
【数9】
式中、
は、多項式カオス展開項の係数、dはモデル入力変数の次元、ξはd次元の入力変数
はサイズdのマルチインデックス、
は各次元変数に対応する直交多項式基底から構築された直交多項式であり、一般的な確率駆動型の方法で構築する必要になる。
【0054】
確率駆動型の方法とは異なり、データ駆動型の方法は、変数の分布タイプにより制限されず、従来技術では一次元変数の有限データのモーメントを使用して、対応する直交多項式基底を構築する。
【0055】
が入力変数に対応する多項式であると仮定して次の式2を得るステップ。
【0056】
【数10】
[式中、
は、
の展開係数である]。
【0057】
各入力変数の次数のモーメントに従い対応する直交多項式基底を構築し、多項式の直交条件に基づき次の式3及び式4を得るステップ。
【0058】
【数11】
[式中、μは、重み関数である]。
【0059】
【数12】
任意のk次多項式
の全ての低次多項式の直交性に従い次の式5を得るステップ。
【0060】
【数13】
入力変数ξのk次モーメントを次の式6として定義するステップ。
【0061】
【数14】

式6に基づき式5を次の式7に並べ替えるステップ。
【0062】
【数15】
式7を行列として表現して次の式8を得るステップ。
【0063】
【数16】
【0064】
これにより、データ駆動型の任意の分布直交多項式基係数
を得た後、式1から代理モデルの構築を続け、式1を切り捨て、回帰法を用いて切り捨てられた多項式係数を計算することができる。
【0065】
(実施例1)
有限要素シミュレーションソフトウェアcomsolを用いてWPTシステム及びアクティブシールドコイルのシミュレーションモデルを構築し、インテル13900kプロセッサでシミュレーションモデルを実行して、対応するシミュレーション結果を得るのに5分かかった。データ駆動型の方法を用いて目的関数の代理モデル(Metamodel by Date Driven)を構築した。
【0066】
目的関数としての代理モデルの精度を検証するため、本発明はまずcomsolシミュレーションモデルを目的関数とし、NSGA-IIアルゴリズムの反復回数を30、母集団の数を30に設定させると共に、代理モデルを目的関数として多目的最適化計算を実施し、反復回数及び母集団の数はどちらも30で、2つの方法で計算されたパレートフロント図を図5に示し、最適化結果の統計的特性パラメータを表2に示し、2つの方法で計算された最適値は非常に近く、最適化結果の平均値と標準偏差は基本的に一致していることが分かり、代理モデルはシミュレーションモデルの代替として適していることが証明される。
【0067】
ただし、代理モデルを目的関数とした多目的最適化の計算時間は12秒であったが、シミュレーションモデルを目的関数とした場合の計算時間は75時間であった。
【0068】
代理モデルの計算速度のおかげで、本発明は比較のため、多目的人工ハチドリアルゴリズムと多目的灰色オオカミアルゴリズムを選択し、アルゴリズムの反復回数を400、母集団の数を50に設定させ、計算されたパレートフロントの比較結果を図6に示し、最適化結果のパラメータと計算コストを表3に示す。
【0069】
3つのアルゴリズムの最適な結果は、図6において丸で囲まれ、比較後、NSGA-IIアルゴリズムの結果が他のアルゴリズムよりも優れていることが分かるため、本発明はやはりNSGA-IIアルゴリズムを用いて最適化設計を実施した。アクティブシールドコイルのシールド効果及び伝送効率への影響を考慮して、図6のNSGA-IIアルゴリズムの結果を設計値として選択した。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
上記の最適化結果を参照して、図7に示すように、アクティブシールドコイルを備えたWPTシステムを構築した。図7(a)は作製されたアクティブシールドで囲まれたコイル及び受信コイル、図7(b)は作製されたアクティブシールドで囲まれたコイル及び送信コイルであり、実際の試験角度から試験や検証された。
【0073】
シールド効果試験:観測面を5×4の正方形マス目に分割し、アクティブシールドで囲まれたコイルがない場合とある場合、電磁放射アナライザで各正方形マス目の磁束密度値を測定し、比較結果を図8及び図9に示す。結果は、観測面位置でのアクティブシールドを備えたWPTシステムの磁束密度が著しく減少したことを示す。
【0074】
表4は、アクティブシールドで囲まれる前後のコイルの自己インダクタンスと伝送効率などのパラメータを示している。表の結果は、伝送効率の変化と最適化された計算結果とが基本的に一致していることを示している。シミュレーションモデルの観測点の位置に従い測定したところ、漏洩磁界は87.02%減少し、本発明により提案されたアクティブシールドで囲まれたコイル構造及び最適化設計方法は効果的であることが実証された。
【0075】
【表4】
【0076】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎないが、当業者であれば、本発明の技術的思想から逸脱することなく、いくつかの変形及び改良を加えることができ、かかる変形や改良も本発明の保護範囲に含まれるとみなされるべきであり、本発明の実施の効果及び特許の実用性にも影響を与えるものではないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0077】
01 一次コイル
02 内側シールドコイル
03 外側シールドコイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2025-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法であって、
前記方法は、アクティブシールドで囲まれたコイル構造に基づいており、前記アクティブシールドで囲まれたコイル構造は一次コイル、を備え、
前記一次コイルの外側で内側シールドコイルと外側シールドコイルと、を逆直列接続
前記内側シールドコイルの電流の向きは、前記一次コイルの電流の向きと同じで、WPTシステムの伝送効率を補償するための内側シールドコイルと、
前記外側シールドコイル電流の向きは、前記一次コイルの電流の向きと逆で、コイル構造領域の周囲の磁気誘導強度を弱めるための外側シールドコイルと、を含むアクティブシールドコイルをさらに備え、
前記方法は、
前記アクティブシールドで囲まれたコイル構造に基づき前記アクティブシールドコイルと前記WPTシステムの有限要素シミュレーションモデルを構築するステップと、
最適化変数及び最適化区間に基づきデータ駆動型の方法で最適化目的の多項式カオス代理モデルを構築するステップと、
構築された前記多項式カオス代理モデルをNSGA-IIアルゴリズムの目的関数として、前記アクティブシールドコイルの多目的最適化設計を実現するステップとを含み、
前記最適化変数は、内側シールドコイルの半径rin、同じ側のシールドコイルの間隔d及びシールドコイルと前記一次コイルとの間的垂直距離hであり、
前記最適化目的は、前記WPTシステムの伝送効率の変化量Δη及び観測面A1の磁束最大値であり、
前記多項式カオス代理モデルには、Δη及び観測面A1の最大磁気誘導強度Bmaxの代理モデルが含まれる、
アクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法。
【請求項2】
具体的なステップとしては、
有限要素シミュレーションモデルをオリジナルモデルy(ξ)として、PCE法を使用してオリジナルモデルを展開して、次の式1を得るステップ、
【数1】
[式中、
は、多項式カオス展開項の係数、dはモデル入力変数の次元、ξはd次元の入力変数
はサイズdのマルチインデックス、
は各次元変数に対応する直交多項式基底から構築された直交多項式である]、
が入力変数に対応する多項式であると仮定して次の式2を得るステップ、
【数2】
[式中、
は、
の展開係数である]、
各入力変数の次数のモーメントに従い対応する直交多項式基底を構築し、多項式の直交条件に基づき次の式3及び式4を得るステップ、
【数3】
[式中、μは、重み関数である]、
【数4】
任意のk次多項式
の全ての低次多項式の直交性に従い次の式5を得るステップ、
【数5】
入力変数ξのk次モーメントを次の式6として定義するステップ、
【数6】
式6に基づき式5を次の式7に並べ替えるステップ、
【数7】
式7を行列として表現して次の式8を得るステップ、
【数8】
データ駆動型の任意の分布直交多項式基係数
を得た後、式1から代理モデルの構築を続け、式1を切り捨て、回帰法を用いて切り捨てられた多項式係数を計算する、
請求項1に記載のアクティブシールドで囲まれたコイル構造の多目的最適化方法。