IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バリア性積層体 図1
  • 特開-バリア性積層体 図2
  • 特開-バリア性積層体 図3
  • 特開-バリア性積層体 図4
  • 特開-バリア性積層体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014665
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】バリア性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117411
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】八木 健介
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA12B
4F100AA15B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AH06E
4F100AH08E
4F100AK01E
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK07D
4F100AK09A
4F100AK21C
4F100AK21E
4F100AK24E
4F100AK51G
4F100AK69C
4F100AK80A
4F100AR00B
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CB00G
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ61
4F100EJ86
4F100GB15
4F100HB00E
4F100JB09E
4F100JB13E
4F100JB14E
4F100JB16E
4F100JD02B
4F100JK06
4F100JL12D
(57)【要約】
【課題】ガスバリア層が形成されていない面の密着性が良好であってモノマテリアル化がしやすく、かつジッピングを生じにくいガスバリア性積層体を提供する。
【解決手段】バリア性積層体101は、ポリプロピレンを主成分とする基材層10と、基材層の第一面10a側に形成されたガスバリア層20と、ガスバリア層側に形成されたポリプロピレンを主成分とする表層60と、基材層の第二面10b側に形成されたポリプロピレンを主成分とするヒートシール層40と、を備える。基材層を含む第一層群を装置の可動部にチャックし、ヒートシール層を含む第二層群を装置の固定部にチャックした状態で、剥離試験を実施して第一層群と第二層群とを剥離した際の、基材層とヒートシール層との剥離強度が、1N/15mm以上である。第一層群の曲率半径が、T型剥離試験において300μm以下、かつ、180度剥離試験において400μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを主成分とする基材層、および、前記基材層の第一面側に形成されたガスバリア層を含むガスバリアフィルムと、
前記ガスバリアフィルムのうち前記ガスバリア層側に形成されたポリプロピレンを主成分とする表層と、
前記ガスバリアフィルムのうち前記第一面と反対側に位置する前記基材層の第二面側に形成されたポリプロピレンを主成分とするヒートシール層と、
を備え、
前記基材層を含む第一層群を剥離試験装置の可動部にチャックし、前記ヒートシール層を含む第二層群を前記剥離試験装置の固定部にチャックした状態で、T型剥離試験および180度剥離試験を実施して前記第一層群と前記第二層群とを剥離した際の、前記基材層と前記ヒートシール層との剥離強度が、1N/15mm以上であり、
前記第一層群の曲率半径が、前記T型剥離試験において300μm以下、かつ、前記180度剥離試験において400μm以下であるバリア性積層体。
【請求項2】
ポリプロピレンを主成分とする基材層、および、前記基材層の第一面側に形成されたガスバリア層を含むガスバリアフィルムと、
前記ガスバリアフィルムのうち前記ガスバリア層側に形成されたポリプロピレンを主成分とするヒートシール層と、
前記ガスバリアフィルムのうち前記第一面と反対側に位置する前記基材層の第二面側に形成されたポリプロピレンを主成分とする表層と、
を備え、
前記基材層を含む第一層群を剥離試験装置の可動部にチャックし、前記表層を含む第二層群を前記剥離試験装置の固定部にチャックした状態で、T型剥離試験および180度剥離試験を実施して前記第一層群と前記第二層群とを剥離した際の、前記基材層と前記表層との剥離強度が、1N/15mm以上であり、
前記第一層群の曲率半径が、前記T型剥離試験において300μm以下、かつ、前記180度剥離試験において400μm以下であるバリア性積層体。
【請求項3】
前記第二面が、プロピレンホモポリマーからなる請求項1または請求項2に記載のバリア性積層体。
【請求項4】
前記ガスバリア層は、酸化珪素、炭素を含む酸化珪素、窒化珪素、および酸化アルミニウムの少なくとも一つを含有する、
請求項1または請求項2に記載のバリア性積層体。
【請求項5】
前記第一面が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンとポリエチレンの複合体、ポリプロピレンとポリエチレンとα-オレフィンとの複合体、ポリビニルアルコール、およびエチレンビニルアルコール共重合体のいずれかからなる、
請求項1または請求項2に記載のバリア性積層体。
【請求項6】
前記ガスバリアフィルムは、前記ガスバリア層上に形成された被覆層をさらに備え、
前記被覆層は、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、水溶性高分子、ポリカルボン酸系重合体、多価金属化合物、およびポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩、のいずれかを含有する、
請求項1または請求項2に記載のバリア性積層体。
【請求項7】
前記ガスバリアフィルムは、前記第一面と前記ガスバリア層との間に設けられたアンダーコート層をさらに備え、
前記アンダーコート層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、および電子線硬化性樹脂の少なくとも1つを含む、
請求項1または請求項2に記載のバリア性積層体。
【請求項8】
前記ヒートシール層および前記表層が、接着剤により前記ガスバリアフィルムに接合されている、
請求項1または請求項2に記載のバリア性積層体。
【請求項9】
前記表層は、少なくとも一方の面に印刷層を有する、
請求項1または請求項2に記載のバリア性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基材を用いたガスバリアフィルムを含むバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリアフィルムとは、酸素や水蒸気などを透通させない性質(ガスバリア性)を備えているフィルムである。内容物の変質を抑制し、それらの機能や性質を保持する観点から、精密電子部品類やエレクトロニクス部材、食品や医薬品等の包装など、各種ガスの遮断を必要とする様々な分野に広く用いられている。
【0003】
近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、プラスチック材料の分別回収と再資源化のさらなる高効率化が求められつつある。これまで様々な異種材料を組み合わせることで高性能化を図ってきたガスバリアフィルムにおいても例外でなく、モノマテリアル化が求められつつある。
【0004】
モノマテリアル化を実現するためには、ガスバリアフィルムにおいて最も多く用いられる樹脂の比率を高める必要がある。そのような構成の一例として、特許文献1には、基材としてポリエチレンを用い、酸化アルミニウム蒸着膜を形成したバリアフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/087960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスバリアフィルムが、多層ラミネートフィルムの中間層として使用される場合、ガスバリア層が形成されていない面において、接着剤やインキ層との密着性が求められる。特許文献1では、基材と酸化アルミニウム蒸着膜との密着性に着目しているものの、蒸着膜が形成されていない側の面については、注意が払われていない。
【0007】
多層ラミネートフィルムにおける密着性の評価法として、T型剥離試験、180度剥離試験が広く利用されている。これらの剥離試験において、剥離が滑らかに進まず、剥離の進展と停止を交互に繰り返す「ジッピング」と言われる現象が生じることがある。ピール試験においてジッピングが生じると、多層ラミネートフィルムの密着性を正しく評価できない。その結果、製造したフィルムが求められる特性を満足しているか否かの判断が難しくなる。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、ガスバリア層が形成されていない面の密着性が良好であってモノマテリアル化がしやすく、かつジッピングを生じにくいバリア性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、ポリプロピレンを主成分とする基材層、および、基材層の第一面側に形成されたガスバリア層を含むガスバリアフィルムと、ガスバリアフィルムのうちガスバリア層側に形成されたポリプロピレンを主成分とする表層と、ガスバリアフィルムのうち第一面と反対側に位置する基材層の第二面側に形成されたポリプロピレンを主成分とするヒートシール層と、を備えるバリア性積層体である。
このバリア性積層体において、基材層を含む第一層群を剥離試験装置の可動部にチャックし、ヒートシール層を含む第二層群を剥離試験装置の固定部にチャックした状態で、T型剥離試験および180度剥離試験を実施して第一層群と第二層群とを剥離した際の、基材層とヒートシール層との剥離強度が、1N/15mm以上である。第一層群の曲率半径が、T型剥離試験において300μm以下、かつ、180度剥離試験において400μm以下である。
【0010】
本発明の第二の態様は、ポリプロピレンを主成分とする基材層、および、基材層の第一面側に形成されたガスバリア層を含むガスバリアフィルムと、ガスバリアフィルムのうちガスバリア層側に形成されたポリプロピレンを主成分とするヒートシール層と、ガスバリアフィルムのうち第一面と反対側に位置する基材層の第二面側に形成されたポリプロピレンを主成分とする表層と、を備えるバリア性積層体である。
このバリア性積層体において、基材層を含む第一層群を剥離試験装置の可動部にチャックし、表層を含む第二層群を剥離試験装置の固定部にチャックした状態で、T型剥離試験および180度剥離試験を実施して第一層群と第二層群とを剥離した際の、基材層と表層との剥離強度が、1N/15mm以上である。第一層群の曲率半径が、T型剥離試験において300μm以下、かつ、180度剥離試験において400μm以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガスバリア層が形成されていない面の密着性が良好であってモノマテリアル化がしやすく、かつジッピングを生じにくいバリア性積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るバリア性積層体の第一例を示す模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るバリア性積層体の第二例を示す模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るバリア性積層体の第三例を示す模式断面図である。
図4】バリア性積層体のT型剥離試験を示す模式図である。
図5】比較例1における180度剥離試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る第一例のバリア性積層体101の模式断面図である。図1に示すように、バリア性積層体101は、基材層10と、基材層10の第一面10aに形成されたガスバリア層20と、ガスバリア層20を覆う被覆層30と、を含むガスバリアフィルム1を備えている。
【0014】
基材層10は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂フィルムである。基材層10は、未延伸フィルム、延伸フィルムのいずれでもよい。延伸フィルムを用いる場合、延伸倍率に特に制限はない。また、基材層10の厚さに特に制限はない。基材層10は、包装材料の用途等を考慮して単層フィルムや、異なる性質のフィルムを積層した多層フィルムとできる。基材層10にガスバリア層20、被覆層30などを形成する場合の加工性を考慮すると、基材層10の厚さは、実用的には3~200μmの範囲が好ましく、特に6~50μmの範囲が好ましい。また、基材層10の形態は、長尺材であってもよいし枚葉材であってもよいが、長尺の基材を好ましく用いることができる。長尺の基材層10の長手方向の長さは特に限定されないが、例えば10m以上の長尺フィルムが好ましく用いられる。なお、長さの上限は限定されないため、例えば10km程度のものであってもよく、この場合は、ロール状に巻くことで、輸送や保管を効率よく行える。
【0015】
本発明において、「主成分」とは、基材層10を構成する物質の中でも質量が最も大きいものを意味する。
基材層10の主成分はポリプロピレンであるが、プロピレン以外の樹脂を使用することができる。例えば、プロピレンに対して0.1~数十%の割合でHDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)などのポリエチレンを共重合させたコプロピレンホモポリマーや、プロピレンやエチレンに対して、0.1~数十%の割合で1-ブテンなどのα-オレフィン系の樹脂または/およびエラストマーなどのゴム成分等を共重合した多量体等も使用できる。さらに、共重合ではなく、複数種類の樹脂が混合分散された層とすることもできる。
【0016】
基材層10を多層とする場合、基材層10の第一面10aと、当該第一面10aと反対側に位置する基材層10の第二面10bと、が異なる性質の材料からなっていてもよい。また、基材層10を多層とする場合、主成分を含まない層があってもよい。例えば、第一面10aを構成する層が、PVA(ポリビニルアルコール)やEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)のみからなる層であると、ガスバリアフィルム1のバリア性を向上できる。
多層基材は、接着剤を用いた複数のフィルムの貼り合わせや、複数のスクリューを使用した共押出等で形成できる。共押出で形成された多層基材は、光学顕微鏡で観察しても各層の境界を明確に確認できないが、適宜染色した上で、断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察することにより、各層の境界を確認できる。
【0017】
基材層10は、樹脂成分でない添加剤を含んでもよい。添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、アンチブロッキング剤(AB剤)、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。AB剤は、有機、無機のいずれでもよい。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のうち滑剤、スリップ剤は、加工適性の観点から好ましい。基材層10における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
【0018】
ガスバリア層20は、酸化珪素、炭素を含む酸化珪素、窒化珪素、金属アルミニウム、および酸化アルミニウムのいずれかを主成分とする単体または混合物の層であり、酸素、水蒸気等の、所定の気体に対してバリア性を発揮する。ガスバリア層20は、透明、不透明のいずれでもよい。
【0019】
ガスバリア層20の厚さは、用いられる成分の種類・構成・成膜方法により異なるが、一般的には3~300nmの範囲内で適宜設定できる。ガスバリア層20の厚さが3nm未満であると、均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア層としての機能を十分に発揮しない場合がある。ガスバリア層20の厚さが300nmを越えると、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、ガスバリア層20に亀裂を生じてバリア性を失う可能性がある。ガスバリア層20の厚さは、6~150nmの範囲内がより好ましい。
【0020】
ガスバリア層20の形成方法に制限はなく、例えば真空蒸着法、プラズマ活性化蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを使用できる。プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法などを組み合わせると、ガスバリア層20を緻密に形成してバリア性や密着性を向上できる。
【0021】
被覆層30はガスバリア層20を覆って保護するとともに、ガスバリアフィルム1のバリア性をさらに高める。被覆層30は任意の構成であり、省略することもできる。
被覆層30は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、金属アルコキシドまたはその加水分解物、水溶性高分子、ポリカルボン酸系重合体、多価金属化合物、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩などのコーティング層を用いることができる。特に酸素バリア性に優れる金属アルコキシドと水溶性高分子が好ましい。これは水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合してコーティング剤を調製する。このコーティング剤をガスバリア層20上に塗布した後、乾燥することで、被覆層30を形成できる。
【0022】
被覆層30を形成するためのコーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。コーティング剤に用いられる水溶性高分子として、PVA、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を例示できる。特に、PVAを用いると、優れたガスバリア性が得られるため好ましい。PVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化することで得られる。PVAとして、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVA、酢酸基が数%しか残存していない完全PVAのいずれも用いることができる。両者の中間のPVAを用いてもよい。
【0023】
コーティング剤に用いられる金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si、Alの金属、R:CH、C等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウムAl[OCH(CHなどを例示できる。シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するもの、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどを例示できる。
【0024】
ポリカルボン酸系重合体は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これらのポリカルボン酸系重合体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
ガスバリア性の観点からは、上述した成分のうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸及びクロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が好ましく、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が特に好ましい。上記重合体において、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位の割合は、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい(ただし重合体を構成する全構成単位の合計を100mol%とする)。この重合体は、単独重合体でも、共重合体でもよい。重合体が、上記構成単位以外の他の構成単位を含む共重合体である場合、他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位などが挙げられる。
【0026】
ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、2,000~10,000,000の範囲内が好ましく、5,000~1,000,000がより好ましい。数平均分子量が2,000未満では、用途によってはガスバリアフィルムの耐水性が充分でなく、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。他方、数平均分子量が10,000,000を超えると、コーティング剤の粘度が高くなり、塗工性が損なわれる場合がある。本実施形態において、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0027】
ポリカルボン酸系重合体を主成分とするコーティング剤には各種添加剤を加えることができ、バリア性能を損なわない範囲で架橋剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、アンチブロッキング剤、静電防止剤、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤などが挙げられる。
【0028】
ポリカルボン酸系重合体を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒は水性媒体が好ましい。水性媒体としては、水、水溶性または親水性有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。水性媒体は通常、水または水を主成分として含むものである。水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。水溶性または親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリル類の二トリル類等が挙げられる。
【0029】
多価金属化合物は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と反応してポリカルボン酸の多価金属塩を形成する化合物であれば特に限定されず、酸化亜鉛粒子、酸化マグネシウム粒子、マグネシウムメトキシド、酸化銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらを単独或いは複数を混合して用いてもよい。酸素バリア性皮膜の酸素バリア性の観点からは、上記のうち酸化亜鉛粒子が好ましい。酸化亜鉛は紫外線吸収能を有する無機材料である。酸化亜鉛粒子の平均粒子径は特に限定されないが、ガスバリア性、透明性、コーティング適性の観点から、平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0030】
多価金属化合物を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥して皮膜を形成する場合は、必要に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、酸化亜鉛粒子のほかに、各種添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な樹脂、該溶媒に可溶又は分散可能な分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤等を含有してもよい。上記の中でも、コーティング剤に用いる溶媒に可溶または分散可能な樹脂を含有することが好ましい。これにより、コーティング剤の塗工性、製膜性が向上する。このような樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。また、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な分散剤を含有することが好ましい。これにより、多価金属化合物の分散性が向上する。該分散剤としては、アニオン系界面活性剤や、ノニオン系界面活性剤を用いることができる。該界面活性剤としては、(ポリ)カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルフォコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、芳香族リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ソルビタンアルキルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の各種界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。多価金属化合物を主成分とするコーティング剤に添加剤が含まれている場合には、多価金属化合物と添加剤との質量比(多価金属化合物:添加剤)は、30:70~99:1の範囲内であることが好ましく、50:50~98:2の範囲内であることが好ましい。
【0031】
多価金属化合物を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。また、これらの溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また製造性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0032】
ポリカルボン酸系重合体を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥して皮膜を形成した後に多価金属化合物の皮膜を形成する場合、ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシ基の一部が予め塩基性化合物で中和されていてもよい。ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシ基の一部を予め中和することにより、ポリカルボン酸系重合体からなる皮膜の耐水性や耐熱性をさらに向上させることができる。塩基性化合物としては、上述した多価金属化合物、一価金属化合物およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。一価金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0033】
ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物を混合したコーティング剤を塗布、乾燥して皮膜を形成する場合には、ポリカルボン酸系重合体と、多価金属化合物と、水またはアルコール類を溶媒として、溶媒に溶解或いは分散可能な樹脂や分散剤、および必要に応じて添加剤を混合してコーティング剤を調整する。このようなコーティング剤を公知のコーティング方法にて塗布、乾燥することでも、被覆層30を形成することができる。
【0034】
被覆層30のコート法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法、有機蒸着法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射、電子線照射等熱をかける方法を1種類もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、上記形成方法で別の樹脂基材にあらかじめコーティングされた膜を、粘着材転写、熱転写、UV転写等の転写法を用いてガスバリア層20に転写してもよい。
【0035】
被覆層30の厚さは、使用するコーティング剤の組成や塗工条件等によって異なり、特に制限はない。ただし、被覆層30の乾燥後膜厚が0.01μm未満の場合は、均一な塗膜にならず十分なガスバリア性を得られない場合がある。乾燥後膜厚が50μmを超える場合は被覆層30にクラックが生じ易くなる。したがって、被覆層30の好適な厚さは、例えば0.01~50μmの範囲であり、被覆層30の最適な厚さは、例えば0.1~10μmの範囲である。
【0036】
上記の構成を有するガスバリアフィルム1は、高いガスバリア性を発揮する。さらに、ポリプロピレンを主成分としており、ガスバリアフィルム1に占めるポリプロピレンの比率を90質量%以上とすることも容易であり、リサイクル性の高いモノマテリアルとしやすく、環境対応を簡便に行える。
【0037】
図示しないが、ガスバリアフィルム1は、アンダーコート層をさらに備えてもよい。アンダーコート層は、基材層10の第一面10aとガスバリア層20の間に設けられる。アンダーコート層により、基材層10とガスバリア層20との密着性を高めてガスバリア層20の剥離(デラミネーション)の発生を防止したり、ガスバリア層20形成前の搬送工程等において引っ掻き傷や擦り傷などの機械的外傷から基材層10の第一面10aを保護したりすることができる。アンダーコート層の材質は特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを例示できる。
【0038】
アンダーコート層を形成する熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。中でも、OH基を含有するアクリルポリオールと、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート系化合物との複合物で形成されたアンダーコート層は、基材層10とガスバリア層20との密着性を著しく高めることができる。
【0039】
アクリルポリオールとは、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、又は(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物等のうち、末端と側鎖とにOH基を有するもので、イソシアネート系化合物のNCO基と反応するものである。(メタ)アクリル酸誘導体モノマーは、末端と側鎖とにOH基を有する。(メタ)アクリル酸誘導体モノマーの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等がある。
【0040】
上記「その他のモノマー」は、末端と側鎖とにOH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーと共重合可能である。「その他のモノマー」の例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等の側鎖にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、(メタ)アクリル酸等の側鎖にCOOH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の側鎖に芳香環や環状構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー等が考えられる。(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外では、スチレンモノマー、シクロヘキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマー等が考えられる。「その他のモノマー」は、それ自身が末端と側鎖とに、OH基を有していてもよい。
【0041】
アクリルポリオールは、特に(メタ)アクリル酸等の側鎖にCOOH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。アンダーコート層を形成する際、COOH基を有するモノマーを重合させて得られるアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物を用いて形成することにより、より高い水蒸気バリア性を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
【0042】
アンダーコート層に使用可能な、OH基を含有するアクリルポリオールについて、特に限定しないが、OH基価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが望ましい。ここで、OH基価(mgKOH/g)とは、アクリルポリオール中の、OH基量の指標であり、アクリルポリオール1g中の、OH基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。また、アクリルポリオールの重量平均分子量は特に限定しないが、具体的には、3000以上200000以下であると好ましい。特に、5000以上100000以下であると好ましい。更に、5000以上40000以下であると、より好ましい。
【0043】
イソシアネート系化合物とは、その分子中に2個以上のNCO基を有するものである。モノマー系イソシアネートの例として、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)等の脂肪族系イソシアネート等が考えられる。また、これらのモノマー系イソシアネートの重合体若しくは誘導体も使用可能である。例えば、3量体のヌレート型、1,1,1-トリメチロールプロパン等と反応させたアダクト型、ビウレットと反応させたビウレット型等がある。
【0044】
イソシアネート系化合物は、上記のイソシアネート系化合物若しくはその重合体、誘導体から任意に選択してよく、1種類もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
アンダーコート層の一例としては、上記のアクリルポリオールと上記のイソシアネート系化合物との複合物と溶媒とからなる溶液を基材層10の第一面10aに塗工し、反応硬化させることにより形成される。アクリルポリオールのOH基に対するイソシアネート化合物のNCO基の当量比(NCO/OH)は、0.3以上、2.5以下であることが好ましい。ここで用いられる溶媒は、上記アクリルポリオール及びイソシアネート系化合物を溶解できるものであればよい。溶媒の例として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。なお、実際には、これらの溶媒を1種類もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
アンダーコート層を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、エポキシポリオール、などの、OH基を2個以上有するポリオールや、ポリ酢酸ビニルやポリ塩化ビニルなどのポリビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂などから適宜選択される。さらに、これらを任意の比率で混合してもよい。ポリオールのOH基価は、特に限定しないが、10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが望ましい。
【0047】
アンダーコート層を形成する紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂としては、有機高分子樹脂として、特に限定しないが、OH基価が10以上100mgKOH/g以下の範囲にある樹脂を少なくとも含むことが望ましい。また、有機高分子樹脂として、特に限定しないが、酸価が10以上100mgKOH/g以下の範囲にある樹脂を少なくとも含むことが望ましい。ここで、酸価(mgKOH/g)とは、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を示す。また、有機高分子樹脂として熱可塑性樹脂を少なくとも含むことが望ましい。OH基価又は酸価が10mgKOH/g未満であると、官能基とガスバリア層20の表面との化学的な結合力が弱くなり、ガスバリア層20との密着性が低くなる傾向がある。OH基価又は酸価が100mgKOH/gを超えると、耐湿熱試験などの耐久性試験でアンダーコート層の分解により生じたOH基を含む析出物がアンダーコート層とガスバリア層20との密着を阻害する傾向がある。
【0048】
アンダーコート層を形成する紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂に利用できるモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルプロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレートなどが使用できる。この紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂に利用できるオリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどがある。
【0049】
アンダーコート層を形成する有機高分子樹脂として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選択される2種以上を併用する場合、その配合比は特に限定されない。
【0050】
アンダーコート層は、有機高分子樹脂以外に必要に応じて添加物を更に含有してもよい。添加物としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0051】
アンダーコート層の厚さは、0.05μm以上7.0μm以下が好ましい。特に、0.05μm以上0.3μm以下であると好ましい。0.05μmよりも薄いと、基材層10の第一面10aとガスバリア層20との密着性が不十分となる。7.0μmよりも厚いと内部応力の影響が大きくなり、ガスバリア層20がきれいに積層されず、バリア性の発現が不十分となり、さらに、透明性、塗工精度も不十分となる。
【0052】
アンダーコート層の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法、有機蒸着法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射、電子線照射等の熱を加える方法を1種類若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、上記形成方法で別の樹脂基材にあらかじめコーティングされた膜を、粘着材転写、熱転写、UV転写等の転写法を用いて基材層10の第一面10a上に転写する方法でもよい。
【0053】
図1に示す第一例のバリア性積層体101は、上記したガスバリアフィルム1の他に、ヒートシール層40および表層60をさらに備えている。
【0054】
ヒートシール層40は、熱融着可能であり、ガスバリアフィルム1のうち基材層10の第二面10b側に形成されている。
ヒートシール層40の材質としてはポリプロピレンを使用でき、単層もしくは多層とすることができる。ヒートシール層40の主成分を基材層10と同一とすることで、バリア性積層体101をモノマテリアルとすることができる。この場合、基材層10と同一のフィルムをヒートシール層40として用いることもできる。
【0055】
ヒートシール層40の厚さは目的に応じて決められるが、例えば15~200μm程度とできる。
図1において、ヒートシール層40は、ドライラミネーションにより接着剤50Bを介して基材層10の第二面10bに接合されている。なお、ヒートシール層40は、例えば、ヒートシール層40となる流体状の樹脂を用いた押出ラミネーションにより、基材層10の第二面10b上に設けられてもよい。
【0056】
表層60は、ガスバリアフィルム1のうちガスバリア層20側に形成されている。具体的に、表層60は、ドライラミネーションにより接着剤50Aを介して、ガスバリア層20上に設けられた被覆層30に接合されている。
表層60の材質としてはポリプロピレンを使用できる。表層60の主成分を基材層10と同一とすることで、バリア性積層体101をモノマテリアルとすることができる。この場合、基材層10と同一のフィルムを表層60として用いることもできる。
【0057】
ドライラミネーションに使用する接着剤50Aおよび接着剤50Bとしては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。接着剤50Aおよび接着剤50Bの厚みについては、特に指定はないが、0.1~10μmの範囲であることが好ましい。
【0058】
以上のように構成される第一例のバリア性積層体101では、2枚あるいは折り返した1枚のバリア性積層体101を、ヒートシール層40を対向させつつ周縁部を熱融着すると、バリア性積層体101からなるパウチ等の包装材料を形成でき、収容した内容物が密封された包装体とできる。
第一例のバリア性積層体101を用いて形成した包装材料においては、ガスバリア層20側に設けられた表層60が包装材料の外面を構成する。このため、表層60の材質を適宜設定することで、包装材料の外観や耐傷性等の各種特性を、用途等に適した所望の内容とすることができる。
【0059】
図2は、本実施形態に係る第二例のバリア性積層体102の模式断面図である。図2に示すように、第二例のバリア性積層体102は、第一例と同様のガスバリアフィルム1、ヒートシール層40および表層60を備えている。
【0060】
ただし、第二例のバリア性積層体102では、ヒートシール層40がガスバリアフィルム1のうちガスバリア層20側に形成されている。具体的に、ヒートシール層40は、ドライラミネーションにより接着剤50Aを介して、ガスバリア層20上に設けられた被覆層30に接合されている。なお、ヒートシール層40は、例えば、ヒートシール層40となる流体状の樹脂を用いた押出ラミネーションにより、被覆層30上(ガスバリア層20上)に設けられてもよい。
【0061】
一方、表層60は、ガスバリアフィルム1のうち基材層10の第二面10b側に形成されている。具体的に、表層60は、ドライラミネーションにより接着剤50Bを介して基材層10の第二面10bに接合されている。
【0062】
第二例のバリア性積層体102を用いて包装材料を形成する場合には、基材層10の第二面10b側に設けられた表層60が包装材料の外面を構成する。
【0063】
図3は、本実施形態に係る第三例のバリア性積層体103の模式断面図である。図3に示すように、第三例のバリア性積層体103は、第一例と同様のガスバリアフィルム1、ヒートシール層40および表層60を備えている。第三例のバリア性積層体103では、第一例と同様に、ヒートシール層40が基材層10の第二面10b側に形成され、表層60がガスバリア層20側に形成されている。
【0064】
ただし、第三例のバリア性積層体103において、表層60は、一方の面に印刷層61を有し、印刷層61をガスバリア層20に対向させた状態で接合されている。具体的に、印刷層61はガスバリア層20上に設けられた被覆層30に対向する。なお、表層60が印刷層61を有する構成は、例えば第二例のバリア性積層体102に適用されてもよい。
【0065】
第三例のバリア性積層体103を用いて形成した包装材料においては、第一例と同様に、ガスバリア層20側に設けられた表層60が包装材料の外面を構成する。このため、表層60の材質を適宜設定することで、包装材料の外観や耐傷性等の各種特性を、用途等に適した所望の内容とすることができる。また、印刷層61により、所望の外観や表示等を容易に付与することができる。さらに、印刷層61をガスバリア層20に対向させた状態で接合することにより、包装材料の使用者が印刷層61に触れることがなくなり、包装材料の使用に伴う印刷層61の劣化を抑制できる。
【0066】
ガスバリアフィルム1を用いたバリア性積層体の構成は、上述した第一例~第三例のバリア性積層体101,102,103に限られない。例えば、バリア性積層体をさらに多層とする等の場合は、ガスバリアフィルム1の両面にヒートシール層40が設けられてもよい。
【0067】
発明者は、バリア性積層体において、基材層10と基材層10の第二面10b上に設けられる層(図1図3におけるヒートシール層40、図2における表層60)との密着性を良好にするべく種々検討を行った。その結果、T型剥離試験において基材層10を含む第一層群80Aの曲率半径を300μm以下とし、かつ、180度剥離試験において基材層10を含む第一層群80Aの曲率半径を400μm以下とすることで、高い密着性と、剥離試験におけるジッピングの発生抑制との両立を実現することに成功した。
【0068】
なお、図4に示すように、T型剥離試験では、基材層10を含む第一層群80Aを剥離試験装置の可動部にチャックし、基材層10を含まない第二層群80Bを剥離試験装置の固定部にチャックした状態で第一層群80Aと第二層群80Bとを剥離する。T型剥離試験では、剥離後の第一層群80Aが、剥離前のバリア性積層体101,102,103に対して概ね90度の角度をなすように剥離試験が行われる。
図示しないが、180度剥離試験では、T型剥離試験と同様に、基材層10を含む第一層群80Aを剥離試験装置の可動部にチャックし、基材層10を含まない第二層群80Bを剥離試験装置の固定部にチャックした状態で第一層群80Aと第二層群80Bとを剥離する。180度剥離試験では、剥離後の第一層群80Aが、剥離前のバリア性積層体101,102,103に対して概ね180度の角度をなすように剥離試験が行われる。
【0069】
上記した第一層群80Aは、図1,3に示すバリア性積層体101,103において基材層10、ガスバリア層20、被覆層30および表層60を含み、図2に示すバリア性積層体102において基材層10、ガスバリア層20、被覆層30およびヒートシール層40を含む。一方、第二層群80Bは、図1,3に示すバリア性積層体101,103においてヒートシール層40を含み、図2に示すバリア性積層体102において表層60を含む。
【0070】
上記した曲率半径とは、曲線を局所的に円の弧とみなした時の円の半径である。図4に示すように、剥離試験においては、剥離点DPを含む円の中で、剥離するサンプル(第一層群80A)の弧の一部を含む円の半径を、曲率半径としている。本来、例えば180度剥離試験では、剥離角度が180°になっており、曲率半径は0であるはずだが、実際にミクロなスケールで観察すると、サンプル(第一層群80A)の厚みや剛性によって、剥離角度180°より小さい角度となっていることで、曲率半径が存在し、サンプル(第一層群80A)の構成によって異なることが確認されている。サンプル(第一層群80A)の厚み、剛性が大きくなるほど曲率半径は大きくなる傾向にある。
発明者は剥離試験における第一層群80Aの曲率半径を抑えたことで、剥離界面が異なることによって、剥離強度が向上したと予測している。
【0071】
本実施形態のバリア性積層体について、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明の技術的範囲は、実施例および比較例の具体的内容のみを根拠として限定されることはない。
【0072】
(実施例1)
基材層10として、第一面10a側がプロピレンとエチレンと1-ブテンのターポリマーからなる厚さ1μmの共重合層であり、第二面10b側が厚さ19μmのポリプロピレンホモポリマー層である二層構造のポリプロピレンフィルム(総厚20μm)を用いた。この基材層10の主成分はポリプロピレンである。
【0073】
真空装置内においてSiOを昇華させ、基材層10の第一面10a上に電子ビーム蒸着法により酸化珪素(SiOx)からなる厚さ30nmのガスバリア層20を形成した。
さらに、真空状態を維持し、RIE(Reactive Ion Etching)処理装置を用いて、基材層10の第二面10bにプラズマ処理強度83W・sec/mでOガスを用いたプラズマ処理を行った。
なお、プラズマ処理強度は以下の式で算出した。
・プラズマ処理強度=電力密度[W/m]×処理時間[sec]
・電力密度[W/m]=投入電力[W]/カソード面積[m
・処理時間[sec]=電極MD幅[m]/処理速度[m/sec]
【0074】
続いて、ガスバリア層20上に、下記A液とB液とを質量比6:4で混合したコーティング剤をグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚さ0.4μmの被覆層30を形成した。
A液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液
B液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比 90:10)
以上により、ガスバリアフィルム1を作製した。
【0075】
上記ガスバリアフィルム1における基材層10の第二面10bに、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いたドライラミネーションにより厚さ100μm、引張剛性0.79N/mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製 ZK207)を貼り合わせてヒートシール層40を設けた。さらに、被覆層30上に、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いたドライラミネーションにより厚さ50μm、引張剛性0.28N/mmの延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製 U1)を貼り合わせて表層60を設けた。
以上により、実施例1に係るバリア性積層体を作製した。
【0076】
実施例1のバリア性積層体について、試験片を幅15mmに切り出し、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC-1250を用いて基材層10と基材層10の第二面10bに接する層(ヒートシール層40)との剥離強度を測定した。このとき、基材層10を含む第一層群80Aを剥離試験装置の上部に配置された可動部に、基材層10を含まない第二層群80Bを剥離試験装置の下部に配置された固定部にチャックした。剥離強度の測定は、T型剥離試験および180度剥離試験の2種類について、剥離速度100mm/minで行った。T型剥離試験および180度剥離試験のいずれにおいても剥離強度が1N/15mm以上であれば、基材層10と基材層10の第二面10b上に設けられる層(ヒートシール層40)との密着性が十分であると言える。
【0077】
剥離強度は、T型剥離試験において3.3N/15mm、180度剥離試験において8.5N/15mmであった。
曲率半径の測定には、光学顕微鏡とステージが一体化しており、ステージに貼り付けた剥離端によってサンプルが剥離速度に従って剥離されていく装置を使用した。剥離時の断面の写真(幅750μm、640ピクセル、高さ1002μm、480ピクセル)を撮影し、撮影された写真に基づいて曲率半径を算出した。写真に基づく曲率半径の算出方法について図4を参照して説明する。まず、撮影された写真に基づいて、図4に示す剥離点DPの位置を決める。次いで、剥離点DPから剥離前の第一層群80Aと第二層群80Bとの界面に対して垂直に延びる方向を径方向とした円の中で、剥離した後の基材層10を含む第一層群80Aの円弧にできるだけ従うような円の半径を求める。基材層10を含む第一層群80Aの厚みを考慮し、外円の半径R1と内円の半径R2との平均を、曲率半径とした。曲率半径は、T型剥離試験において175μm、180度剥離試験において93μmであった。
また、T型剥離試験および180度剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面は、基材層10の内部に位置していた。
【0078】
(実施例2)
被覆層30上に、厚さ40μm、引張剛性0.14N/mmの延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製 U1)を貼り合わせて表層60を設けた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2に係るバリア性積層体を作製した。
剥離強度は、T型剥離試験において2.8N/15mm、180度剥離試験において6.0N/15mmであった。また、曲率半径は、T型剥離試験において67μm、180度剥離試験において51μmであった。また、T型剥離試験および180度剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面は、基材層10の内部に位置していた。
【0079】
(実施例3)
ガスバリアフィルム1における基材層10の第二面10bに、厚さ110μm、引張剛性1.06N/mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製 ZK207)を貼り合わせてヒートシール層40を設けた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例3に係るバリア性積層体を作製した。
剥離強度は、T型剥離試験において3.3N/15mm、180度剥離試験において7.5N/15mmであった。また、曲率半径は、T型剥離試験において125μm、180度剥離試験において74μmであった。また、T型剥離試験および180度剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面は、基材層10の内部に位置していた。
【0080】
(実施例4)
実施例1と同様のガスバリアフィルム1における基材層10の第二面10bに、厚さ70μm、引張剛性0.77N/mmの延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製 U1)を貼り合わせて表層60を設け、被覆層30上に、厚さ70μm、引張剛性0.27N/mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製 ZK207)を貼り合わせてヒートシール層40を設けた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例4に係るバリア性積層体を作製した。
剥離強度は、T型剥離試験において2.5N/15mm、180度剥離試験において4.0N/15mmであった。また、曲率半径は、T型剥離試験において174μm、180度剥離試験において93μmであった。また、T型剥離試験および180度剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面は、基材層10の内部に位置していた。
【0081】
(実施例5)
実施例1と同様のガスバリアフィルム1における基材層10の第二面10bに、厚さ70μm、引張剛性0.77N/mmの延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製 U1)を貼り合わせて表層60を設け、被覆層30上に、厚さ60μm、引張剛性0.17N/mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製 ZK207)を貼り合わせてヒートシール層40を設けた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例5に係るバリア性積層体を作製した。
剥離強度は、T型剥離試験において2.3N/15mm、180度剥離試験において3.6N/15mmであった。また、曲率半径は、T型剥離試験において99μm、180度剥離試験において63μmであった。また、T型剥離試験および180度剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面は、基材層10の内部に位置していた。
【0082】
(実施例6)
実施例1と同様のガスバリアフィルム1における基材層10の第二面10bに、厚さ80μm、引張剛性1.16N/mmの延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製 U1)を貼り合わせて表層60を設け、被覆層30上に、厚さ70μm、引張剛性0.27N/mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製 ZK207)を貼り合わせてヒートシール層40を設けた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例6に係るバリア性積層体を作製した。
剥離強度はT型剥離試験において2.4N/15mm、180度剥離試験において3.0N/15mmであった。また、曲率半径は、T型剥離試験において103μm、180度剥離試験において65μmであった。また、T型剥離試験および180度剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面は、基材層10の内部に位置していた。
【0083】
(比較例1)
実施例1と同様のガスバリアフィルム1における基材層10の第二面10bに、厚さ20μm、引張剛性0.02N/mmの延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製 U1)を貼り合わせて表層60を設け、被覆層30上に、厚さ100μm、引張剛性0.81N/mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製 ZK207)を貼り合わせてヒートシール層40を設けた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1に係るバリア性積層体を作製した。
剥離強度は、T型剥離試験において0.4N/15mmであった、また、剥離強度は、180度剥離試験において0.6~1.6N/15mmであり、ジッピングが生じていた。また、曲率半径は、T型剥離試験において997μm、180度剥離試験において416μmであった。また、T型剥離試験および180度剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面は、基材層10と接着剤50Bとの界面に位置していた。
【0084】
図5は、比較例1の180度剥離試験における剥離長さと剥離強度との関係を示すグラフである。図5のグラフでは、剥離試験中に剥離強度の低値と高値とが繰り返されていることが示されている。これにより、比較例1の180度剥離試験では、当該剥離試験中に剥離の進展と停止を繰り返すジッピングが生じていたことが分かる。
【0085】
(比較例2)
実施例1と同様のガスバリアフィルム1における基材層10の第二面10bに、厚さ30μm、引張剛性0.03N/mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ製 ZK207)を貼り合わせてヒートシール層40を設け、被覆層30上に、厚さ50μm、引張剛性0.28N/mmの延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製 U1)を貼り合わせて表層60を設けた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1に係るバリア性積層体を作製した。
剥離強度は、T型剥離試験において0~4.5N/15mmであり、ジッピングが生じていた。また、剥離強度は、180度剥離試験において4.1N/15mmであった。また、曲率半径は、T型剥離試験において777μm、180度剥離試験において329μmであった。また、T型剥離試験の後におけるバリア性積層体の剥離界面は、基材層10と接着剤50Bとの界面に位置していた。また、180度剥離試験の後におけるバリア性積層体の剥離界面は、基材層10の内部に位置していた。
【0086】
上記した実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1においては、T型剥離試験、180度剥離試験の各剥離試験の後における、バリア性積層体の剥離界面を、「A」と「B」で示している。「A」は、剥離界面が基材層10の内部に位置していたことを示す。「B」は、剥離界面が基材層10と接着剤50Bとの界面に位置していたことを示す。
【0089】
表1に示すように、すべての実施例1~6においては、基材層10側(第一層群80A)の曲率半径が、T型剥離試験において300μm以下、かつ、180度剥離試験において400μm以下となっている。これら実施例1~6においては、基材層10と基材層10の第二面10bに接する層との剥離強度は、T型剥離試験および180度剥離試験のいずれにおいても1N/15mm以上であり、十分に基材層10の第二面10b側で密着していることが確認できた。
なお、実施例1~6においては、いずれも剥離界面が基材層10の内部に位置していた。当該結果も、基材層10と基材層10の第二面10bに接する層との密着性が高いことを示している。このように密着性が高いという結果は、基材層10側の曲率半径が小さく抑えられていることに起因する、と考えられる。
【0090】
一方、比較例1~2においては、基材層10側(第一層群80A)の曲率半径が、T型剥離試験において300μmよりも大きく、かつ、180度剥離試験において400μmよりも大きくなっている。これら比較例1~2では、T型剥離試験および180度剥離試験の少なくとも一方において、基材層10と基材層10の第二面10bに接する層との剥離強度の値が1N/15mm未満であり低い、あるいは、剥離強度の低値と高値とを繰り返すジッピングが認められ、基材層10とその第二面10bに接する層との密着が不十分であった。また、剥離強度の値が1N/15mm未満である場合、あるいは、剥離強度の低値と高値とを繰り返すジッピングが認められた場合には、剥離試験の後におけるバリア性積層体の剥離界面が、基材層10と接着剤50Bとの界面に位置することも確認された。当該結果も、基材層10と基材層10の第二面10bに接する層との密着性が低いことを示している。このように密着性が低いという結果は、基材層10側の曲率半径が大きいことに起因する、と考えられる。
【0091】
なお、実施例1~6については、90度、180度の角度での剥離試験(T型剥離試験、180度剥離試験に限らず、60度以上180度以下の任意の角度での剥離試験においても、剥離強度が1N/15mm以上となる。
【0092】
以上、本発明の一実施形態、および実施例について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 ガスバリアフィルム
10 基材層
10a 第一面
10b 第二面
20 ガスバリア層
30 被覆層
50 接着剤
40 ヒートシール層
60 表層
80A 第一層群
80B 第二層群
101,102,103 バリア性積層体
図1
図2
図3
図4
図5