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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014670
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】車輪ガード装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 5/18 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
E01B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117424
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】504158881
【氏名又は名称】東京地下鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502316913
【氏名又は名称】大和軌道製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 光晴
(72)【発明者】
【氏名】新井 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】曽田 祥信
(72)【発明者】
【氏名】森 敏博
(72)【発明者】
【氏名】岡本 啓
(57)【要約】
【課題】 狭軌の軌道において採用できる車輪ガード装置を提供する。
【解決手段】 まくらぎに固定される固定部材と、固定部材に設けた支持軸に支持され、支持軸を中心に軌道中心方向へ回動させることが可能な可動部材と、可動部材に固定され、支持軸から離間した位置で本線レールと平行に配置されるガードレールとを備え、固定部材は、まくらぎに固定する固定穴と、固定穴から軌間方向にずれた位置でまくらぎの上面から上方に所定距離離れた高さ位置で支持軸を支持する支持部とを有し、可動部材は、支持部に支持軸で支持されて支持軸を中心に軌道中心方向に向けて回動するガードレール保持部と、ガードレール保持部に前記ガードレールを固定する取付部材とを有し、ガードレールは、ガードレール保持部に固定された状態で、本線レールの上面から所定距離上方位置で、且つ軌道外方向の所定距離離れた位置に係止部が位置するように配置される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ軌道又はまくらぎに固定される固定部材と、
前記固定部材に水平方向に設けた支持軸に支持され、当該支持軸を中心に軌道中心方向へ回動させることが可能な可動部材と、
前記可動部材に固定され、前記支持軸から離間した位置で本線レールと平行に配置されるガードレールと、を備え、
前記固定部材は、前記スラブ軌道又は前記まくらぎに固定する固定穴と、当該固定穴から軌間方向にずれた位置で前記スラブ軌道又は前記まくらぎの上面から上方に所定距離離れた高さ位置で前記支持軸を支持する支持部と、を有し、
前記可動部材は、前記支持部に前記支持軸で支持されて当該支持軸を中心に前記軌道中心方向に向けて回動するガードレール保持部と、前記ガードレール保持部に前記ガードレールを固定する取付部材と、を有し、
前記ガードレールは、前記ガードレール保持部に固定された状態で、前記本線レールの上面から所定距離上方位置で、且つ軌道外方向の所定距離離れた位置に車輪の脱線を防止する係止部が位置するように配置される、車輪ガード装置。
【請求項2】
前記支持軸は、前記固定部材を軌道内方でスラブ軌道又は前記まくらぎに固定する固定穴に対して前記本線レールの方向へ水平方向にずれて配置されている、請求項1に記載の車輪ガード装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記可動部材を支持する前記支持部が前記ガードレールの固定位置と同等の前記高さ位置となっている、請求項1又は2に記載の車輪ガード装置。
【請求項4】
前記固定部材は、前記スラブ軌道又は前記まくらぎに下面が接する下部固定部材と、前記下部固定部材の上部に配置され下面が前記下部固定部材の上面と接する上部固定部材と、を有し、
前記支持部は前記上部固定部材と一体的に形成されており、
前記下部固定部材は、当該下部固定部材の上面が水平状態で前記スラブ軌道又は前記まくらぎの上面に接する下面を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の車輪ガード装置。
【請求項5】
前記上部固定部材の下面と前記下部固定部材の上面とは、凸状部と凹状部とが互いに係合する位置決め段部を有している、請求項4に記載の車輪ガード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道上の本線レールに沿って配設される脱線防止用の車輪ガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両(以下、単に「車両」ともいう)が走行する本線レールに沿って、車輪の脱線を防止する車輪ガード装置を設ける場合がある。例えば、この種の先行技術として、まくらぎに固定する固定部に水平方向の回動軸で可動部を支持し、可動部にガードレールを固定した車輪ガード装置がある(例えば、特許文献1参照)。以下、まくらぎを例に説明する。この車輪ガード装置では、ガードレールに、本線レールの内側に向けて車輪が脱線するのを防止する外側係止部と、脱線した車両が軌道外方に向けて逸脱するのを防止する内側係止部とを具備させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-138405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記先行技術の車輪ガード装置は、ガードレールを固定した可動部が軌道中心側へ大きく回動するため、狭軌の軌道への採用が難しい。例えば、上記車輪ガード装置を狭軌の本線レールに沿って設けた場合、一対のガードレールを軌道中心に向けて転換させるとガードレールが当接してしまう。また、本線レールの点検、まくらぎの周囲のバラストを突き固める作業を行う場合の空間を確保することが難しい。
【0005】
さらに、在来線の軌道では、路線によって異なった形状のまくらぎを使用することがあり、異なる形状のまくらぎにおいて採用できる車輪ガード装置も望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、狭軌の軌道において採用できる車輪ガード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る車輪ガード装置は、スラブ軌道又はまくらぎに固定される固定部材と、前記固定部材に設けた水平方向の軸線の支持軸に支持され、当該支持軸を中心に軌道中心方向へ回動させることが可能な可動部材と、前記可動部材に固定され、前記支持軸から離間した位置で本線レールと平行に配置されるガードレールと、を備え、前記固定部材は、前記スラブ軌道又は前記まくらぎに固定する固定穴と、当該固定穴から軌間方向にずれた位置で前記スラブ軌道又は前記まくらぎの上面から上方に所定距離離れた高さ位置で前記支持軸を支持する支持部と、を有し、前記可動部材は、前記支持部に前記支持軸で支持されて当該支持軸を中心に前記軌道中心方向に向けて回動するガードレール保持部と、前記ガードレール保持部に前記ガードレールを固定する取付部材と、を有し、前記ガードレールは、前記ガードレール保持部に固定された状態で、前記本線レールの上面から所定距離上方位置で、且つ軌道外方向の所定距離離れた位置に車輪の脱線を防止する係止部が位置するように配置される。
【0008】
この構成により、スラブ軌道又はまくらぎに固定部材を固定し、固定部材に可動部材を支持して可動部材にガードレールを固定することで、本線レールに沿ってガードレールを配置することができる。ガードレールに車輪が脱線しようとする水平方向の大きな横力が作用したとしても、可動部材を介して固定部材で支持することができる。可動部材を、固定部材の軌道又はまくらぎの上面から上方に所定距離離れた高さ位置の支持部で支持しているのでコンパクトな車輪ガード装置を構成することができ、狭軌の軌道においても車輪ガード装置を提供することができる。この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、「水平方向の横力」を単に「横力」ともいう。
【0009】
また、前記支持軸は、前記固定部材を軌道内方でスラブ軌道又は前記まくらぎに固定する固定穴に対して前記本線レールの方向へ水平方向にずれて配置されていてもよい。このように構成すれば、可動部材を支持する支持軸が固定穴に対して軌間方向にずれて配置されるので、ガードレールを適切な位置に配置した状態で固定部材を固定しているボルト等の固定手段を上方から点検することが容易にできる。
【0010】
また、前記固定部材は、前記可動部材を支持する前記支持部が前記ガードレールの固定位置と同等の前記高さ位置となっていてもよい。このように構成すれば、ガードレールに作用する水平方向の横力を、可動部材を支持する支持軸を介して固定部材の支持部で支持することができる。よって、ガードレールに作用する大きな水平方向の横力を固定部材で適切に受けることができる。
【0011】
また、前記固定部材は、前記スラブ軌道又は前記まくらぎに下面が接する下部固定部材と、前記下部固定部材の上部に配置され下面が前記下部固定部材の上面と接する上部固定部材と、を有し、前記支持部は前記上部固定部材と一体的に形成されており、前記下部固定部材は、当該下部固定部材の上面が水平状態で前記スラブ軌道又は前記まくらぎの上面に接する下面を有していてもよい。このように構成すれば、まくらぎの上面形状が異なるまくらぎに対しても、下部固定部材をまくらぎに応じた下面を有するものに交換することで対応できる。よって、まくらぎに応じた下部固定部材を準備すれば、上部固定部材よりも上方の構成は流用でき、異なるまくらぎが使用されている路線などへの適用も容易に可能となる。
【0012】
また、前記上部固定部材の下面と前記下部固定部材の上面とは、凸状部と凹状部とが互いに係合する位置決め段部を有していてもよい。このように構成すれば、下部固定部材の上面に上部固定部材の下面を重ねることで凹状部と凸状部とからなる位置決め段部が係合し、下部固定部材と上部固定部材の位置決めができる。よって、下部固定部材と上部固定部材との間のずれ防止が適切にできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、狭軌の軌道において採用できる車輪ガード装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る車輪ガード装置を示す正面図である。
図2図2は、図1に示す車輪ガード装置の左側のみを示す正面図である。
図3図3は、図2に示す車輪ガード装置の平面図である。
図4図4は、図2に示す車輪ガード装置の斜視図である。
図5図5は、図2に示す下部固定部材を示す斜視図である。
図6図6は、図2に示す取付部材の斜視図である。
図7図7は、図1に示すまくらぎとは異なる上面形状のまくらぎとその下部固定部材の一例を示す正面図である。
図8図8は、図7に示す下部固定部材の斜視図である。
図9図9は、図2に示す車輪ガード装置のガードレールに作用した横力を受ける力の関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、プレストレスト・コンクリート(Prestressed Concrete)まくらぎ100(以下、単に「まくらぎ」という)の軌道110に車輪ガード装置1を備えさせる例を説明する。また、ガードレール10が軌道内方に向けて転換可能となった車輪ガード装置1を例に説明する。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における方向の概念は、図1に示す軌道110と直交する断面において、本線レール120の間の内側を「内方」、本線レール120の外側を「外方」とする。図1の紙面と直交する本線レール120が延びる方向を「軌道方向」という。
【0016】
(一実施形態に係る車輪ガード装置を備えた軌道)
図1は、一実施形態に係る車輪ガード装置1を示す正面図である。図示するように、本線レール120は、軌道110と直交する方向に所定間隔で配設されたまくらぎ100に固定されている。本線レール120は、軌道110の延びる方向に一対が設けられている。本線レール120は、それぞれ一対の押え金具121をボルト122でまくらぎ100に固定することで固定されている。
【0017】
そして、これらの本線レール120の内方に、本線レール120に沿って延びるようにガードレール10をそれぞれ配設する車輪ガード装置1が備えられている。車輪ガード装置1は、まくらぎ100の複数本間隔に設けられたガード締結装置20によって本線レール120の間に備えられている。
【0018】
この実施形態の車輪ガード装置1は、ガード締結装置20をまくらぎ100に固定する固定部材21と、固定部材21に支持軸26で支持されて取り付けられる可動部材25とを備えている。これにより、この実施形態の車輪ガード装置1は、ガードレール10が固定された可動部材25を固定部材21に固定された配置状態と、ガードレール10とともに可動部材25を軌道110の内方の軌道中心方向に回動させた退避状態(図示する二点鎖線の状態)にできる転換機能を備えている。この転換機能でガードレール10を本線レール120から離れた位置に退避させれば、本線レール120の真下付近のバラストを図示しないタイタンパーやマルチプルタイタンパー等の突き固め機で密に突き固める作業や、レール削正作業等を効率良く行うことができる。
【0019】
ガードレール10は、可動部材25に固定されて配置状体とすることで、本線レール120に向けて突出する係止部13と本線レール120の頭部側面と所定間隔Aを保つように配設される。また、ガードレール10は、フランジ部12の上面が本線レール120の上面よりも高さBだけ高い位置に配置される。これにより、車輪Wが脱線しようとするとガードレール10の係止部13に当接し、脱線を防止することができる。
【0020】
(一実施形態に係る車輪ガード装置の構成)
図2は、図1に示す車輪ガード装置1の左側のみを示す正面図である。図3は、図2に示す車輪ガード装置1の平面図である。図4は、図2に示す車輪ガード装置1の斜視図である。図5は、図2に示す下部固定部材22を示す斜視図である。図6は、図2に示す取付部材30の斜視図である。
【0021】
図2図3に示すように、この実施形態の車輪ガード装置1のガード締結装置20は、固定部材21が基礎ボルト36でまくらぎ100に固定されている。可動部材25は、固定部材21の支持部24に設けられた支持軸26(この実施形態では、ボルトを使用)に支持されている。固定部材21は、まくらぎ100の上面に接する下面を有する下部固定部材22と、下部固定部材22の上部に固定される上部固定部材23とを有している。上部固定部材23と下部固定部材22は、下部固定部材22の下面22aがまくらぎ100に接した状態で下部固定部材22の上面22bに上部固定部材23の下面が23aが接するように重ね、これらを一体的に基礎ボルト36でまくらぎ100に固定している。上部固定部材23の図示する右側は、傾斜座金35を介して基礎ボルト36で固定されている。まくらぎ100に固定された下部固定部材22は、上面22bが水平状態となっており、その上に上部固定部材23が固定されている。
【0022】
<下部固定部材>
図5に示すように、下部固定部材22の上面22bには、まくらぎ100の長手方向(軌間方向)に延びる凹状部41が設けられている。上部固定部材23の下面23aには、この凹状部41と係合する凸状部42(図4)がまくらぎ100の長手方向(軌間方向)に延びるように設けられている。これらの凹状部41と凸状部42とによって、下部固定部材22と上部固定部材23との間の位置決め段部40となっている。この実施形態では、下部固定部材22の上面22bに凹状部41が設けられ、上部固定部材23の下面23aに凸状部42が設けられているが、凹状部と凸状部は逆配置でもよく、また位置決め段部40の構成はこれらの構成に限定されない。
【0023】
このような位置決め段部40により、下部固定部材22の上面22bに上部固定部材23の下面23aを重ねることで凹状部41と凸状部42とが係合し、下部固定部材22に対する上部固定部材23の位置決めが容易にできる。これにより、下部固定部材22と上部固定部材23との間のずれを防止することができる。
【0024】
また、この実施形態の下部固定部材22の下面22aは、まくらぎ100の上面の中央水平面に接する第1下面22a1と、まくらぎ100の上面の傾斜面に接する第2下面22a2と、まくらぎ100の上面の中間水平面に接する第3下面22a3とを有している。下部固定部材22には、まくらぎ100に固定する基礎ボルト36が挿通される固定穴34と、連結ボルト27の頭部を回転させるための空間を形成する穴部39が設けられている。
【0025】
<可動部材>
図2図4に示すように、可動部材25は、上部固定部材23に設けられた支持部24に支持軸26で支持されている。支持部24は、まくらぎ100の上面から上方に所定距離離れた高さ位置Lに支持軸26を有している。この実施形態の高さ位置Lは、可動部材25にガードレール10を固定する位置(ガードレール10の凹条14と可動部材25の凸条33とが係合している位置付近)と同等の高さ位置Lとなっている。これにより、ガードレール10から可動部材25に作用する水平方向の横力F(図9)を、可動部材25を支持する支持軸26を介して固定部材21の支持部24で支持することができる。
【0026】
また、支持軸26は、固定部材21を軌道内方でまくらぎ100に固定する固定穴34に対して本線レール120の方向にずれて配置されている。これにより、ガードレール10を可動部材25に固定して配置状態にした状態で、固定部材21をまくらぎ100に固定している基礎ボルト36を上方から点検することができる。
【0027】
支持軸26に支持された可動部材25は、支持軸26を中心に、軌道110内方に向けて回動可能となっている(図1)。可動部材25は、固定部材21に連結ボルト27とナット28で固定されている。連結ボルト27は、頭部が可動部材25の上方から挿入穴37を介して上部固定部材23の連結穴38に挿入され、90°回転させることで頭部を上部固定部材23に係止して、その状態でナット28によって固定される。可動部材25を連結ボルト27で固定部材21に固定することで、可動部材25は固定部材21と一体的な構造物となる。
【0028】
可動部材25には、ガードレール10を取り付ける位置に、ガードレール10を一時的に保持するガードレール保持部29と、ガードレール10のウエブ部11に設けられた凹条14と係合する凸条33が設けられている。ガードレール保持部29は、ガードレール10の延びる方向に一対が設けられている。ガードレール保持部29の間には、取付部材30を挿入する空間が設けられている。
【0029】
<ガードレール>
図4に示すように、ガードレール10は、可動部材25に取付部材30で挟持されるウエブ部11と、このウエブ部11の上端に設けられて水平方向に延びるフランジ部12とを有する略T字状の断面で形成されている。ガードレール10は、軌道110の延びる方向に設けられた複数のガード締結装置20に固定される長さを有している。ガードレール10は、フランジ部12の外方端部が係止部13となっている。係止部13は、車輪Wが当接する部分で、脱線を防止する部分となる。また、ガードレール10には、可動部材25に設けられた凸条33と係合する凹条14が長手方向に設けられている。
【0030】
<取付部材>
図3図6に示すように、取付部材30は、可動部材25に設けられた一対のガードレール保持部29の間に挿入される大きさに形成されている。取付部材30は、ガードレール10と接する面と反対方向の左右位置に一対の補強部30aが設けられている。補強部30aの間には、ボルト穴30bが設けられている。
【0031】
<ガードレールの取り付け>
図2図3に示すように、ガードレール10は、軌道110の延びる方向に所定の長さを有しており大重量物である。このため、可動部材25に取付ける時には、軌道110の延びる方向に設けられた複数のガード締結装置20の可動部材25の本体部分とガードレール保持部29との間に形成された空間にウエブ部11を入れて仮支持する。ウエブ部11が仮支持されたガードレール10は、取付部材30を可動部材25に固定ボルト31とナット32とで固定することで可動部材25に固定される。これにより、ガードレール10のフランジ部12に備えられた係止部13が、本線レール120の上面から所定距離上方位置の高さBで、且つ軌道外方向の所定距離離れた位置の所定間隔Aとなった適切な位置に配設される。
【0032】
また、ガードレール10は、可動部材25に固定されることで凹条14が凸条33と係合して、可動部材25に固定された状態が保たれる。ガードレール10は、仮に、複数のガード締結装置20の一部で固定ボルト31が緩んだとしても、可動部材25の凸条33とガードレール10の凹条14との係合により、ガードレール10が上方へ移動することが制限される。すなわち、ガードレール10は、固定ボルト31が緩んだとしても可動部材25から外れることが防止される。よって、ガードレール10を可動部材25に保持した状態を安定して保つことができる。
【0033】
<支持点>
また、この実施形態の車輪ガード装置1は、可動部材25を回動可能に支持する支持軸26が、ガードレール10のウエブ部11を支持する位置と同等の高さ位置Lに設けられている。可動部材25は、固定部材21の支持部24に支持軸26で支持されている。このように、可動部材25を転換(回動)させる軸を上方に配置し、可動部材25を小さくすることで、可動部材25の転換半径を小さくしている。よって、この実施形態の車輪ガード装置1は、狭軌の軌道110においても適切に転換させることができる。
【0034】
(下部固定部材の変形例)
図7は、図1に示すまくらぎ100とは異なる上面形状のまくらぎ101とその下部固定部材50の一例を示す正面図である。図8は、図7に示す下部固定部材50の斜視図である。なお、図7では、上部固定部材23より上方の構成は上述した例と同一の構成を使用できるため、それらの図示と説明は省略する。
【0035】
図7に示すように、この例のまくらぎ101は、本線レール120を固定する押え金具123の形状が上記した例とは異なり、ばね付きボルト124でまくらぎ101に固定されている。この例の下部固定部材50は、下面50aが、まくらぎ100の上面の中央水平面に接する第1下面50a1と、まくらぎ100の上面の傾斜面に接する第2下面50a2とを有している。この例の下部固定部材50は、上部固定部材23の下面23aの一部がまくらぎ101の上面の中間水平面に接する場合の例である。
【0036】
図8に示すように、この実施形態の下部固定部材50も、上面50bに位置決め段部40である凹状部41有しており、上記上部固定部材23の凸状部42を係合させることで、下部固定部材50と上部固定部材23の位置決めができる。また、下部固定部材50にも、基礎ボルト36(図2)が挿通される固定穴34と、連結ボルト27の頭部を回転させるための空間を形成する穴部39が設けられている。この下部固定部材50は、上部固定部材23から上方の構成は上記した実施形態の固定部材21と同一であるため、それらの説明は省略する。
【0037】
このように、固定部材21を下部固定部材50と上部固定部材23とで構成し、これらを一体的に固定して固定部材21を構成することで、まくらぎ101に応じて下部固定部材50のみを交換して他の構成は共通で使用できる車輪ガード装置1を構成することができる。下部固定部材50は、この例に限定されるものではなく、まくらぎ101に応じて下面形状などを変更すればよく、この実施形態に限定されない。
【0038】
(車輪ガード装置による横力の支持)
図9は、図2に示す車輪ガード装置1のガードレール10に作用した横力Fを受ける力の関係を示す正面図である。図示するように、上記車輪ガード装置1を備えた軌道110において、鉄道車両が脱線しそうになると車輪Wがガードレール10の係止部13に当接する。これにより、ガードレール10には大きな横力Fが作用する。この横力Fは、ガードレール10を取り付けている可動部材25に作用し、この可動部材25を固定している固定部材21に作用する。この時、この実施形態では可動部材25を支持する支持軸26がガードレール10を可動部材25に固定している固定位置と同等の高さ位置Lにあるため、横力Fを、支持軸26を介して上部固定部材23の支持部24で対抗する力Hとして受ける。また、可動部材25を固定部材21に固定している連結ボルト27でも、横力Fによって可動部材25が浮き上がるのを防ぐ力Vとして受ける。
【0039】
よって、ガードレール10に作用する車輪Wからの大きな水平方向の横力Fを、可動部材25を支持する支持軸26を介して固定部材21の支持部24で支持するとともに、連結ボルト27を介して固定部材21で適切に支持することができる。
【0040】
(まとめ)
以上のように、上記車輪ガード装置1によれば、まくらぎ100,101に固定部材21を固定し、固定部材21に可動部材25を支持して、可動部材25にガードレール10を固定することで、本線レール120に沿ってガードレール10を適切に配置することが可能となる。そして、ガードレール10に車輪Wが脱線しようとする大きな横力Fが作用したとしても、可動部材25を介して固定部材21で支持することができる。しかも、可動部材25を、まくらぎ100,101の上面から上方に所定距離離れた高さ位置Lで固定部材21の支持部24に支持しているので、水平方向の横力Fを適切に受けることができるコンパクトな車輪ガード装置1を構成することができる。
【0041】
よって、上記車輪ガード装置1によれば、狭軌の軌道110であっても、本線レール120に沿ってガードレール10を配置して車輪Wの脱線を適切に防止することが可能となる。
【0042】
なお、上記した実施形態では、まくらぎ100、101を例に説明したが、スラブ軌道の場合でも上面形状に応じた下部固定部材を用いれば同様の作用効果を得ることができ、上記車輪ガード装置1はまくらぎ100、101に限定されるものではない。
【0043】
また、上記した実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0044】
1 車輪ガード装置
10 ガードレール
13 係止部
14 凹条
20 ガード締結装置
21 固定部材
22 下部固定部材
23 上部固定部材
24 支持部
25 可動部材
26 支持軸
27 連結ボルト
29 ガードレール保持部
30 取付部材
33 凸条
34 固定穴
36 基礎ボルト
40 段部
41 凹状部
42 凸状部
50 下部固定部材
50a 下面
50b 上面
100 まくらぎ
101 まくらぎ
110 軌道
120 本線レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9