(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025146730
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】弾性フィルム、不織布要素および衛生用品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250926BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20250926BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
A61F13/49 311A
B32B27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025039387
(22)【出願日】2025-03-12
(31)【優先権主張番号】24165661
(32)【優先日】2024-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522484607
【氏名又は名称】ニットウ・アドヴァンスト・フィルム・グローナウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヘンナー・ゾルマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ザントマン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン・ブローム
【テーマコード(参考)】
3B200
4F100
【Fターム(参考)】
3B200BA12
3B200BB11
3B200CA05
3B200CA06
3B200CA07
3B200DA01
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK03B
4F100AK03C
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4F100DG15A
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4F100GB66
4F100GB71
4F100JK07C
4F100JK08
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された弾性挙動ならびに低コストで資源節約的な設計を特徴とする弾性フィルムを提供する。
【解決手段】弾性フィルム層(6)と、前記弾性フィルム層と共押出された少なくとも1つの第1の非弾性カバー層(4,5)とを有する弾性フィルム(3)であって、前記弾性フィルム層(6)は第1のポリマー成分Aおよび第2のポリマー成分Bを含むポリマー混合物から形成され、前記第1のポリマー成分がポリオレフィンまたはポリオレフィン混合物である弾性フィルム(3)に関する。本発明において、前記第2のポリマー成分Bは、前記ポリマー混合物中に28重量%~60重量%の量で存在するスチレンブロックコポリマーであり、前記ポリマー混合物は、1重量%未満の無機残部成分および5重量%未満の有機残部成分を含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性フィルム層(6)と、前記弾性フィルム層と共押出された少なくとも1つの第1の非弾性カバー層(4,5)とを有する弾性フィルム(3)であって、前記弾性フィルム層(6)は第1のポリマー成分Aおよび第2のポリマー成分Bを含むポリマー混合物から形成され、前記第1のポリマー成分はポリオレフィンまたはポリオレフィン混合物である弾性フィルム(3)において、
前記第2のポリマー成分Bは、前記ポリマー混合物中に28重量%~60重量%の量で存在するスチレンブロックコポリマーであり、前記ポリマー混合物は、1重量%未満の無機残部成分および5重量%未満の有機残部成分を含有することを特徴とする、前記弾性フィルム(3)。
【請求項2】
前記第2のポリマー成分が、前記ポリマー混合物中に30重量%~55重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項3】
前記第2のポリマー成分Bが、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項4】
前記第1のポリマー成分Aが、第1のポリオレフィンと第2のポリオレフィンとのポリオレフィン混合物であり、前記第1のポリオレフィンの重量割合と前記第2のポリオレフィンの重量割合との間の比が1:3~2:3であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項5】
前記第1のポリマー成分Aが、ポリオレフィンエラストマーを含むか、またはポリオレフィンエラストマーから構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項6】
第2の非弾性カバー層(4,5)が前記弾性フィルム層(6)と共押出され、前記弾性フィルム層(6)が前記第1および第2のカバー層(4,5)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項7】
前記弾性フィルム層(6)の厚さと、それぞれ前記第1および/または第2のカバー層(4,5)の厚さとの比が、6:1~15:1であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項8】
前記第1および/または第2のカバー層(4,5)が、主成分としてのポリオレフィンから形成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項9】
前記第1および/または第2のカバー層(4,5)がそれぞれ、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、その割合が少なくとも40重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項10】
前記第1および/または第2のカバー層(4,5)がフィラーを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項11】
弾性フィルム層(6)と、前記弾性フィルム層と共押出された少なくとも1つの第1の非弾性カバー層(4,5)とを有する弾性フィルム(3)、特に請求項1~10のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)であって、特に前記弾性フィルム層(6)は、第1のポリマー成分Aおよび第2のポリマー成分Bを含むポリマー混合物から形成され、前記第1のポリマー成分はポリオレフィンまたはポリオレフィン混合物である弾性フィルム(3)において、
300%の活性化後の弾性回復値(ERV)が0.4超であることを特徴とする、前記弾性フィルム(3)、特に請求項1~10のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項12】
弾性フィルム層(6)と、前記弾性フィルム層と共押出された少なくとも1つの第1の非弾性カバー層(4,5)とを有する弾性フィルム(3)、特に請求項1~11のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)であって、特に前記弾性フィルム層(6)は、第1のポリマー成分Aおよび第2のポリマー成分Bを含むポリマー混合物から形成され、前記第1のポリマー成分はポリオレフィンまたはポリオレフィン混合物である弾性フィルム(3)において、
前記第2のポリマー成分Bはスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)であり、300%の活性化後の永久ひずみは40%未満であることを特徴とする、前記弾性フィルム(3)、特に請求項1~11のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項13】
300%の活性化後の120%の延伸での負荷曲線(L)の下側の面積と除荷曲線(U)の下側の面積との間の差分面積(9)が、90N/インチ%未満であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)。
【請求項15】
不織布でできた少なくとも1つのカバーレイヤー(1,2)と、それと接合された請求項1~14のいずれか一項に記載の弾性フィルム(3)とを含む、弾性積層体。
【請求項16】
前記弾性フィルム(3)が、不織布でできた2つのカバーレイヤー(1,2)の間に配置され、それらと接合されていることを特徴とする、請求項15に記載の弾性積層体。
【請求項17】
前記弾性フィルム(3)が、超音波溶着によって前記少なくとも1つのカバーレイヤー(1,2)と接合されていることを特徴とする、請求項15または16に記載の弾性積層体。
【請求項18】
活性化状態の前記弾性フィルム(3)が、前記少なくとも1つのカバーレイヤー(1,2)と接合されていることを特徴とする、請求項15~17のいずれか一項に記載の弾性積層体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の弾性積層体でできた衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性フィルム層と、前記弾性フィルム層と共押出された少なくとも1つの第1の非弾性カバー層とを有する弾性フィルムに関する。
【0002】
このような弾性フィルムは、通常、弾性積層体を製造するために使用される。そのような積層体は特に、例えば使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、または成人用の使い捨て失禁用品等の衛生分野の使い捨て用品に適している。これらの製品では、一方では、単純で、低コストで、資源節約的な構造が必要であり、他方では、良好で、信頼できるフィット性が必要である。前記弾性積層体を用いることにより、弾性領域、例えばおむつの耳、ウエストバンドなどを形成することができる。包帯またはヒーティングベルトなどの特定の医療用途に使用することもできる。以下でおむつについて特に言及する場合、この用途は、単に例示的なものとしてみなされるべきである。
【背景技術】
【0003】
おむつ(特に乳幼児用のおむつ)は、使い捨ての大量生産品として製造され、その結果、効率的な材料利用および低い製造コストに対して特に高い要求が生じる。
【0004】
しかしながら、さらに同時に、全ての使用条件下で、おむつを着用する人のための高いレベルの安全性及び確実な保護を担保できるために、高度な機能性も必要である。例えば、一晩にわたって、大量の排泄物を収容し、確実に留めておかなければならず、使用者の腰部および脚部での密閉のために、使い捨ておむつは、弾性の要素およびセクションを備える。
【0005】
弾性の側面部分、特に側面でのおむつの閉鎖を形成するために、弾性積層体であって、それらの向かい合った外側に不織布の層を有し、その間にコアとして弾性フィルムを有する弾性積層体が知られている。この弾性コアは、従来技術では、例えば、完全に一体化された弾性フィルムによって又は弾性ストランドによって形成することができる。
【0006】
従って、この弾性フィルムは、積層体の弾性挙動にとって重要であり、当該弾性フィルムは、共押出多層複合体として公知の方法で形成される。従って、弾性フィルムは、非弾性材料でできた少なくとも1つのカバー層を有し、ここで、前記フィルムの弾性は、それに隣接する弾性フィルム層を介して達成される。非弾性カバー層によって、共押出された材料が製造中に互いにブロッキングしないことを担保し、それによって、弾性フィルムの取り扱いがはるかに容易になる。
【0007】
さらに、非弾性カバー層は、ウェブ張力を維持するのにも寄与する。フィルムは、通常、製造および加工プロセス中に機械方向(MD)に沿って搬送されるが、弾性フィルムを機械方向に搬送するためには、ウェブ張力が加えられなければならないことに留意すべきである。弾性フィルムが弾性フィルム層にわたってのみ形成された場合、このウェブ張力により、材料が少なくとも部分的に長くなり、加工がより困難になる。それでもなお弾性フィルム層の弾性を利用できるためには、フィルム全体をとりわけ機械方向に延伸しなければならない。これにより、カバー層が薄くなり、戻されたときにはしわが寄る。カバー層の脆性または伸展性に応じて、これらはまた、代替的にまたは追加的に破裂し得る。従って、フィルムを延伸することにより、弾性フィルム層の弾性挙動があらわになる。このようなステップは、通常、延伸により弾性フィルムの弾性挙動が活性化されるので、活性化とも呼ばれる。
【0008】
弾性挙動は本質的に、使用されるエラストマー材料によって決まり、従来技術ではポリオレフィンエラストマー(POE)を使用することが知られている。そのようなエラストマーは、積層体の製造プロセス中に、外側層への、特に不織布でできた外側層への、特に良好な結合を可能にするという利点を有する。今日実際には、この結合は多くの場合に、超音波溶着法によって行われ、当該方法では、超音波エネルギーを加えることによって、不織布層が、弾性フィルムの上に、または弾性フィルムを通って、互いに接合される。ここで、ポリオレフィンエラストマーは延伸された状態で非常に良好な固有強度を有し、それによって、弾性フィルムは、例えば、延伸された状態での超音波接合中の引裂に対して、特に抵抗性となる。
【0009】
あるいは、スチレンブロックコポリマー(SBC)でできた弾性フィルム層も実際に特に好適であることが示されており、スチレンブロックコポリマーをベースとする弾性フィルム層は、ポリオレフィンエラストマーをベースとする弾性フィルム層よりも優れた弾性特性を有する。しかしながら、同時に固有強度も低下する。この背景に対して、弾性フィルムであって、弾性フィルム層が第1のポリマー成分Aおよび第2のポリマー成分Bを有するポリマー混合物から形成され、第1のポリマー成分がポリオレフィン、特にエラストマーポリオレフィン、またはポリオレフィン混合物である弾性フィルムが、実際に特に有利であることが示されている。
【0010】
例えば、EP3126140B1(特許文献1)は、エラストマーフィルム層が2つの非弾性カバー層の間に配置されている多層弾性フィルムを提案している。ここで、弾性フィルム層は、本質的にエラストマーポリオレフィンからなり、30%までの第2のポリマー成分Bを含むことができ、それは主にスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)である。さらに、ある量の無機粒子、例えば、粘土もまた含まれ得る。それによって、弾性フィルム層の強度が改善される。それによって特に、より低い破断点伸びでより高い破断強度がもたらされる。
【0011】
また、EP4032703A1(特許文献2)から、非弾性外側層および弾性コア層からできた多層接合体が知られており、当該弾性コア層は、ポリオレフィンおよびスチレンブロックコポリマーを含む。さらに、20%までの割合の軟化剤も許容される。ここでは特に油が挙げられる。そのような軟化剤は、フィルムをより柔軟にし、よりフレキシブルにする。
【0012】
これまでに知られている弾性フィルムは、基本的にそれらの有用性が示されているが、例えば、一方では良好な弾性挙動と他方では良好な加工性とを折衷すると、それらから形成されるフィルムおよび形成される弾性積層体は、特に動的負荷下で不利な弾性挙動を有してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】EP3126140B1
【特許文献2】EP4032703A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この背景に対して、本発明は、改善された弾性挙動ならびに低コストで資源節約的な設計を特徴とする弾性フィルムを示すという課題に基づくものである。同時に、製造中のフィルムのプロセス挙動も改善されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
対象およびこの課題の解決は、請求項1に従う弾性フィルムである。従って、ポリオレフィン、特にポリオレフィンエラストマーである第1のポリマー成分Aに加えて、第2のポリマー成分Bを備える。この第2のポリマー成分Bは、ポリマー混合物中に28重量%~60重量%の量で存在するスチレンブロックコポリマーであり、当該ポリマー混合物は、1重量%未満の無機および5重量%未満の有機残部成分を含有する。
【0016】
ここで、本発明は、スチレンブロックコポリマーを比較的高い割合とし、同時に残部成分を減少させることによって、特に良好な弾性挙動を達成できるという知見に基づく。従って、第2のポリマー成分を増加させることによって、有機および無機の残部成分を本質的に省くことができ、その結果、第2のポリマー混合物は、本質的に、もっぱらポリオレフィンからおよびスチレンブロックコポリマーから形成される。これにより、特にクラック傾向が低いことを特徴とする弾性フィルムを形成することができる。この特性は特に、例えば積層体への、フィルムのさらなる加工のために非常に重要である。特に超音波溶着の場合、フィルムは特定の点で溶融、薄化または破断され、接合点を起点として弾性フィルムにクラックが形成されるリスクがあり、従って、フィルムのクラックの傾向が低いことは有利である。さらに、前記フィルムはまた、さらなる加工の前に、明らかにより激しく、予備延伸または活性化され得る。
【0017】
代替的または追加的な解決ではさらに、弾性フィルム層と、弾性フィルム層と共押出された少なくとも1つの第1の非弾性カバー層とから出発して、特に機械方向において、300%の活性化後の弾性回復値(ERV:Rueckstellwert)が0.4を超える。
【0018】
この弾性回復値は、フィルムのヒステリシス測定に基づいて決定することができる。測定は通常、いわゆる3サイクルヒステリシスによって行われ、サンプル幅25.4mmおよびつかみ具間距離(Einspannlaenge)25.4mmを有する弾性フィルムのサンプルが、第1の過延伸サイクルで300%まで予備延伸される。この最初の過伸張は、本発明の範囲内において活性化とも呼び、なぜなら、これによって、非弾性カバー層が薄化されるかまたはしわが寄り、その結果、弾性フィルム層の弾性挙動が露出するからである。基本的に、この第1のサイクルの直後、フィルムは、少なくとも0.4の弾性回復値を有し得る。しかしながら、好ましくは、2つのさらなるサイクルが続いて実行され、第3のサイクルの後にのみ、ヒステリシスに基づいて弾性回復値が決定される。これらの第2および第3のサイクルために、弾性フィルムの今予備延伸されたサンプルを再度装着し直し、その際、第1のサイクルの枠内でサンプルの塑性変形およびそれによる伸張が生じていることが考慮される。サンプルを装着し直した後、これを第2および第3のサイクルで120%延伸し、その都度各サイクルの間にフィルムを60秒間緩和状態に保つ。それに対して、延伸状態では、フィルムは30秒間保持される。試験速度は500mm/分である。各サイクルの後、延伸に対して延伸に必要な力がプロットされるヒステリシス曲線を決定することができ、ここで、延伸は通常パーセントで表され、サンプルの元の長さを基準とする。ここで、100%の延伸は、サンプルの元の長さの2倍に相当する。0%の延伸では、サンプルは再びその元の長さに戻り、その結果、弾性挙動のみが観察され得る。
【0019】
そのようなヒステリシス曲線に基づいて、緩和の間に放出される力よりも延伸に必要な力が大きいことを確認することができる。従って、いわゆる負荷曲線(Ladungskurve)が、緩和曲線(Entspannungskurve)の上にある。この挙動はまた粘弾性挙動とも呼ばれ、なぜなら延伸に必要なエネルギーの一部が、フィルム内の内部プロセスによって消散されて緩和のために使用できないためである。負荷曲線と緩和曲線との間のこれらの差は損失エネルギーとも呼ばれ、いわゆるERV値(elastic recovery value)または弾性回復値によって表すことができる。ここで、弾性回復値は、負荷曲線より下の面積に対する緩和曲線より下の面積の比を表し、従って、最大1のERV値が達成され得るが、そのような値は理論的にしか達成することができず、理想の弾性挙動を表すものである。
【0020】
今回本発明の範囲内では、少なくとも0.4、特にとりわけ0.45の弾性回復値を達成することが可能であり、従って、延伸のために導入されたエネルギーの少なくとも40%を緩和の間に使用することもできる。これにより、例えばおむつの場合、動的負荷下で材料は一方ではできるだけ迅速にその元の状態に戻ることができ、その結果、例えば乳児における動きをより迅速に補うことができる。同時に、動いているときであっても、材料が隣接する身体部分にできるだけ迅速に十分な力を加えることが担保され、その結果、特に良好な密閉を保証することができる。
【0021】
28~60重量%という第2のポリマー成分Bの量で十分であり得るが、好ましい実施形態では、第2のポリマー成分Bは、30~55重量%、特に好ましくは32~50重量%の量で存在する。
【0022】
本発明は、特に、第1および第2のポリマー成分を有するポリマー混合物であって、第2のポリマー成分がスチレンブロックコポリマーであるポリマー混合物が提供されることを特徴とする。このスチレンブロックコポリマーは、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、またはスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)であり得る。スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)が、スチレンブロックコポリマーとして特に好ましい。ここで、SEEPSは、第1のポリマー成分A(これは特にポリオレフィンまたはポリオレフィン混合物である)と特に良好に混合することができ、その結果、相溶性を達成するためのさらなる補助物質は必要とされない。この背景に対して、前記の両主成分は、押出において直接混合することができ、それによって、残部成分、特に有機残部成分の使用を著しく低減させることができる。SEEPSは、例えば、クラレ(Kuraray)によってSeptonの商品名で販売されている。
【0023】
本発明のさらなる形態では、第1のポリマー成分Aがポリオレフィンエラストマー(POE)を含有するか、またはポリオレフィンエラストマーから構成される。スチレンブロックコポリマーと同様に、これらのエラストマーも熱可塑性エラストマーに属しており、これは一方では熱を加えることによって塑性変形させることができ、これにより、例えば押出成形中での製造が可能になる。同時に、それらは常に2つの相を含有し、それらのうちの硬質相は溶融に関与し、軟質相はエラストマー様特性に関与する。対応するポリオレフィンエラストマーは、例えば、商品名VistamaxxでExxonにより、または商品名InfuseでDow Chemicalによっても販売されている。
【0024】
本発明のさらなる態様ではさらに、第1のポリマー成分Aが、第1のポリオレフィンと第2のポリオレフィンとのポリオレフィン混合物であり、第1のポリオレフィンの重量割合と第2のポリオレフィンの重量割合との比は1:3~2:3の間である。特に、前記ポリオレフィン混合物は、第1および第2のポリオレフィンのみからなる。さらに、少なくとも、前記第1および/または第2のポリオレフィンは、ポリオレフィンエラストマーとして形成される。
【0025】
本発明のさらなる態様ではさらに、第2の非弾性カバー層が弾性フィルム層と共押出され、当該弾性フィルム層が第1のカバー層と第2のカバー層との間に配置される。従って、弾性フィルム層がコア層として2つの非弾性カバー層によって包囲された一種のサンドイッチ複合体が形成される。ここで、2つの非弾性カバー層は、基本的に、異なる方法で生成することができるが、好ましくは、2つのカバー層は、実質的に同一の構成を有する。特に、両カバー層は、同一の厚さおよび/または一致した材料組成を有することができる。
【0026】
特に好ましい実施形態では、この文脈において、弾性フィルム層の厚さと、それぞれ第1および/または第2のカバー層の厚さとの比が、6:1~15:1、特に7:1~12:1である。従って、本発明は、非常に薄いカバー層を特徴とする。各場合において、フィルムの弾性挙動は実質的に、非弾性カバー層に対する弾性フィルム層の比で決まることに留意されたい。比が増加するにつれて、得られる弾性フィルムの全体的な弾性性能も増加する。従って、比較的薄い非弾性カバー層は、フィルムの特に良好な弾性挙動をもたらす。
【0027】
特に、第1および/または第2のカバー層は、1μm~5μm、好ましくは1.5μm~4μm、特に好ましくは2μm~3.5μmの厚さを有する。対照的に、弾性フィルム層は、特に15~43μm、好ましくは17~30μm、特に好ましくは20~26μmの厚さを有する。弾性フィルムの総厚は、好ましくは17~45μm、特に好ましくは20~36μm、極めて好ましくは24~33μmである。
【0028】
好ましい実施形態によれば、第1および/または第2のカバー層は、主成分としてのポリオレフィンから形成される。ここで、主成分とは、ポリオレフィンが、対応する第1または第2のカバー層中に少なくとも30重量%の割合で存在することを意味する。特に好ましくは、ポリオレフィンは、それぞれの第1および/または第2のカバー層中に少なくとも45重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%存在する。特に好ましくは、45~70重量%の範囲である。残りの成分は、有機または無機の残部成分であることができる。特に、残りの成分は、添加剤、例えば安定剤、加工助剤、潤滑剤および/またはアンチブロッキング剤である。例えば、残りの成分はタルクを有していてもよく、またはタルクから構成されていてもよい。残部成分の割合は、各々のカバー層の組成物を基準として、6~18重量%であり得る。好ましくは、タルクの割合は、各々のカバー層の組成物を基準として、3~15重量%、特に好ましくは5~10重量%である。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、第1および/または第2のカバー層のポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。ポリエチレンの場合、これは特に低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。特に、LLDPEが特に有利であることが見出された。前記ポリプロピレンは、例えば、ホモポリマーまたはコポリマーであることができる。この文脈においてはまた、ポリエチレン、特に直鎖状低密度ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物も好ましく、ここで、ポリオレフィン成分を基準として、ポリプロピレンの割合は30~60重量%であることができ、および/またはポリエチレンの割合は30~60重量%であることができる。残部成分、特にタルクの割合は、ポリプロピレンの割合を基準として、15~25%であることができる。さらに、フィルムはまた、有利には、全体的に比較的薄く形成することができ、その結果、持続可能性の観点から、同等のソリューションと比較して材料を節約することができる。
【0030】
既に上で説明したように、本発明の発明実施形態では、300%の活性化後の弾性回復値(ERV)が0.4を超え、特に0.45を超える。ここで活性化は特に、非弾性カバー層を機械方向(MD)に過延伸させることによって行われ、前記弾性回復値は特に、弾性フィルム層中にポリオレフィンエラストマーとスチレンブロックコポリマー、特にSEEPSとのポリマー混合物を使用することによって達成することができる。高い弾性回復値により、弾性フィルムは、延伸後に特に迅速にかつ比較的大きな力で、その元の状態に戻ることができ、それにより特に高度に快適なフィット感がもたらされる。
【0031】
弾性回復値の評価に加えて、いわゆる永久ひずみ(Permanent-Set)も重要であり、これは、弾性フィルムが最初の活性化後にどのように持続的に伸長されるかに関する情報を提供する。このために、永久ひずみは通常、弾性フィルムをその都度装着し直すことなく300%延伸する、2つの連続するサイクルに基づいて決定される。第1のサイクルにおいて、延伸は、500mm/分の試験速度で300%まで行われる。次いで、フィルムを30秒間、延伸状態に保持し、次いで、解放し、さらにまた60秒間、緩和状態に保持する。引き続き、500mm/分の試験速度で300%の再度の延伸が行われる。測定に使用されるフィルムは、その寸法に関して、ヒステリシス測定にも使用したフィルムと一致する。従ってこれは、25.4mmのサンプル幅およびつかみ具間距離を有する。次いで、つかみ具間距離を、対応する延伸後のサンプルと比較し、元のつかみ具間距離を基準とする長さの差が、永久ひずみとして定義される。例えば、サンプルが対応する延伸の後に50.8mmの長さを有する場合、これは、100%の永久ひずみに相当する。
【0032】
このような測定に基づいて、300%の活性化後、特に300%の2回の活性化後の永久ひずみは、好ましくは40%未満、特に好ましくは35%未満、非常に特に好ましくは30%未満である。従って、一方では高い弾性回復値を有し、同時に低い永久ひずみを有する弾性フィルムが提供される。従って、公知のフィルムと比較して、同一の永久ひずみの場合に、より高い回復力を発生させることができるか、または必要な回復値を達成するのに、より低い永久ひずみが必要である。
【0033】
この文脈において、独立した本発明の意義を有する解決では、特に一般的なフィルムの場合、第2のポリマー成分Bはスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)であり、そして、300%活性化後の永久ひずみは40%未満、特に好ましくは35%未満、非常に特に好ましくは30%未満である。
【0034】
これにより、特に薄いカバー層で製造できる弾性フィルムを提供することができる。ここで、通常、層の厚さは押出技術によって制限され、従って薄いカバー層を任意に製造することはできないことに留意されるべきである。しかしながら今回本発明では、弾性フィルムを機械方向(MD)だけでなく横方向(CD)でも活性化できる。しかしながら、横方向におけるこの活性化は、まず第一には、横方向に延伸可能なフィルムを形成するためには利用されない。むしろ、この活性化によってカバー層の材料を薄化し、一方で、低い永久歪みが、この薄化が弾性フィルム層に実質的な影響を及ぼさないことを担保する。これにより、個々の層の厚さ間の比が、弾性フィルム層にさらに有利になるようにシフトし、それによってフィルムの弾性性能がさらに改善される。例えば、少なくとも部分的に1μm未満の厚さを有するカバー層を製造することさえ可能である。
【0035】
すでに上述した弾性回復値は、特に、ヒステリシス測定に基づく適切な材料選択および組成によって、300%活性化後120%の延伸での負荷曲線より下の面積と緩和曲線より下の面積との間の差を最小化することによって達成することができる。特に、差は、90N/インチ%未満、特に好ましくは80N/インチ%未満、非常に特に好ましくは70N/インチ%未満である。
【0036】
好ましい実施形態によれば、ISO8295による前記フィルムの摩擦係数は、0.2~0.6である。
【0037】
本発明の対象はさらに、不織布でできた少なくとも1つのカバーレイヤーと、前記カバーレイヤーに接合された本発明の弾性フィルムとを有する弾性積層体である。通常、製造の間に、カバーレイヤーと弾性フィルムは、別個の不織布ウェブおよびフィルムウェブを介して提供され、対応する積層体の形成のために互いに接合される。特に、弾性フィルムは、不織布でできた2つのカバーレイヤーの間に配置され、それらと接合されている。従って、前記弾性フィルムは、弾性積層体の弾性コアを形成する。不織布でできたカバーレイヤーによって、柔らかく、心地よく、織物様の表面が形成され、同時に、積層体を低コストで製造することができる。前記弾性フィルムによって、それから作られた衛生用品の確実なフィット感および良好な密閉のための弾性回復特性が担保される。
【0038】
このような積層体を製造するために様々なアプローチが知られている。例えば、予め作製された弾性フィルムと、不織布でできた少なくとも1つの予め作製されたカバーレイヤーとを、ほぼ張力なしで、圧力および温度、接着剤を使用して、または超音波溶着によって、互いに接合することができ、とりわけ、接合された領域と接合されていない領域とでできたパターンがもたらされる。
【0039】
しかしながら多くの場合には、製造プロセス中に、弾性フィルムまたはそれから形成された積層体が活性化され、そのためにフィルムは、所望の延伸方向で積層体にわたって延伸される。特に、弾性フィルムは、少なくとも1つのカバーレイヤーに接合される前に、少なくとも機械方向(MD)に延伸される。これは例えば、速度を上昇させながら稼働される、相前後して配置された2つのローラー装置によって可能である。従って、これらの2つのローラー装置の間でより大きなウェブ張力が生成され、これがフィルムの所望の活性化をもたらす。次いで、弾性フィルムは、延伸状態で、上述の接合法によって、少なくとも1つのカバーレイヤーと接合することができる。このようなプロセスは、一般に、延伸接合とも呼ばれる。
【0040】
別の公知の方法では、弾性フィルムは最初に、例えばリングローラーによって、予備活性化され、2つのストリップに切断される。次いで、両方のストリップはそれぞれ、傾斜ディスク(スプレッダ)を備えた付随の延伸ユニットに導かれ、2つの互いに傾斜して配置されたディスクが最小の間隔を有するときに、この延伸ユニットに供される。引き続き、ディスクの傾斜により、弾性ストリップの横方向(CD)への延伸が起こり、弾性フィルムストリップは、それらの縁部で真空によって保持され、スプレッダによって導かれる。
【0041】
第1の不織布ウェブが中央ローラー上で導かれた後、引き続き第1の弾性ストリップがスプレッダから供され、さらに真空によって保持される。引き続き、第2の弾性ストリップを、同様に並行して移動させ、上に載せ、保持させる。両方の弾性ストリップが第1の不織布ウェブ上に平行に配置された後、引き続き、第2の不織布ウェブを上に載せることができる。次に、超音波を用いた溶着が引き続いて行われる。
【0042】
あるいは、弾性フィルムを、活性化されているが延伸されていない状態でカバーレイヤー(複数可)と接合することも可能である。さらに、その後引き続いて、積層体を活性化することもできる。これは例えば、機械方向に対して横方向に行われる。これに関して、積層体を例えば、リングローラーを用いて延伸することができる。噛み合うリングローラーのローラー間隙の波形またはジグザグ形状の経路により、導入された材料は横方向に伸長されるが、それによって、延伸可能であるが非弾性の、不織布でできたカバーレイヤーは、過延伸され、永久的に変形され、場合によっては部分的に破壊される。
【0043】
ここで、上記で説明される製造プロセスは単に例示的に示すものであり、弾性フィルムとカバーレイヤーとの積層体に関するさらに別の接合形態や製造プロセスももちろん可能である。
【0044】
さらにまた、弾性フィルムが少なくとも1つのカバーレイヤー(複数可)に対して全面にわたって隣接していることは、必ずしも必要ではない。特に外側に位置する2つのカバーレイヤーを有する実施形態の場合、弾性フィルムが部分的にのみ、不織布ウェブの間にセクションで配置されることも考えられる。例えば、これらのセクションは、横方向に互いに間隔を空けられた複数のストランドであることができ、各ストランドの間では、カバーレイヤーは、弾性フィルムを介してではなく、互いと直接接合されている。従って、このような実施形態によれば、弾性は、弾性積層体のセクションにおいてのみもたらされる。この場合にはまた、カバーレイヤーは、弾性フィルムも配置されている領域においてのみ活性化されていれば十分である。
【0045】
本発明の対象はさらに、本発明の弾性積層体を含む衛生用品である。この衛生用品は、特に、おむつの弾性ウエストバンド、弾性密閉用要素又は他の弾性要素である。
【0046】
以下において、例示的な例を用いて本発明をより詳細に説明する。図は以下を示す:
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、本発明による弾性フィルムの例示的な構造を示す
【
図2A】
図2A、2B、2C、2Dは、2つの例示的なフィルムに関する、および従来技術からの2つの比較例に関するヒステリシス曲線を示す
【
図2B】
図2A、2B、2C、2Dは、2つの例示的なフィルムに関する、および従来技術からの2つの比較例に関するヒステリシス曲線を示す
【
図2C】
図2A、2B、2C、2Dは、2つの例示的なフィルムに関する、および従来技術からの2つの比較例に関するヒステリシス曲線を示す
【
図2D】
図2A、2B、2C、2Dは、2つの例示的なフィルムに関する、および従来技術からの2つの比較例に関するヒステリシス曲線を示す
【
図3】
図3は、概略的に図示された、本発明の弾性積層体の製造方法を示す。
【0048】
図1は、不織布からできており、コア層として形成された弾性フィルム3を囲む、上部第1カバーレイヤー1および第2下部カバーレイヤー2を有する、本発明の弾性積層体を示す。このような弾性積層体は特に衛生用品で使用され、なぜなら外側カバーレイヤー1、2が心地よい柔らかい表面を形成し、一方で、内側にある弾性フィルム3が回復挙動を発現することができるためである。
【0049】
カバーレイヤー1、2は、様々な方法で弾性フィルム3と接合することができ、特に接着剤または超音波溶着による接合が考えられる。超音波溶着の場合、接合は、
図1ではより詳細に示されていない複数の接合点で起こり、これらの接合点において、カバーレイヤー1、2は、弾性フィルム3を貫いて直接、または弾性フィルム3を介して、互いに接合される。弾性フィルム3は通常、張力下でカバーレイヤー1,2と接合されるので、超音波溶着の過程において接合点で弾性フィルム3に孔が形成され、これによって、積層体を通り抜ける特に良好な通気性が達成され得る。しかしながら、これらの孔はまた、フィルム3内での弱い点でもあり、なぜならこれらの孔を起点にフィルム3においてクラックが形成され得るからである。ここで、本発明の弾性積層体の範囲内において使用される弾性フィルム3は、非常に低いクラック傾向を有し、特に高い張力下で、カバーレイヤー1、2と接合することができる。
【0050】
弾性フィルム3は、多層共押出フィルムであり、その個々の層は特に、詳細な図において、断面でより明確に示されている。そこに示されるように、弾性フィルム3は、コア層としての弾性フィルム層6を囲む、第1および第2の非弾性カバー層4、5を有する。従って、弾性フィルム3のおよび弾性積層体全体の弾性挙動は、弾性フィルム層6によって決まり、
図1に基づいて既に、弾性フィルム3が比較的薄い非弾性カバー層4、5を備えるため、弾性フィルム3全体の弾性挙動は、弾性フィルム層6によって決定的に決まることが明らかである。
【0051】
本発明による積層体は、とりわけ例えばおむつなどの衛生用品において使用されることが意図されるので、ここでは、積層体および従ってまた使用される弾性フィルム3が良好な回復挙動を有することが非常に重要である。ここで、このような積層体が動的負荷下にあっても常に、例えば排泄物の漏れを避けるために、当該積層体から作られる衛生用品が透き間をふさぎ、同時に、対応する身体部位において高い着用快適性で密着していることが担保されなければならないことに留意されるべきである。しかしながら、実際に知られている弾性フィルム3は多くの場合に、強く際立った粘弾性挙動を示す。これは、延伸に必要なエネルギーが、多くの場合に、緩和の際に放出されるエネルギーよりも著しく高いことを意味する。このエネルギー損失は、弾性特性の減衰をもたらし、その結果、例えば、対応する衛生用品が負荷を受けると、材料は変形するが、除荷の際に十分に迅速にかつ十分なシール力(Dichtkraft)で対応する身体部位に密着しない。
【0052】
ここで本発明による弾性フィルム3では、弾性フィルム3が、300%の活性化後に0.4超、好ましくは0.45超の弾性回復値(ERV)を有する。この弾性回復値は、放出されたエネルギーを、120%の延伸での延伸に必要なエネルギーと比較する。1という弾性回復値が理想的なゴムを表すが、現実には散逸効果がエネルギー損失をもたらし、従ってこの値はもちろん、実際には達成できない。ここで、本発明による弾性フィルム3は、延伸に必要なエネルギーの少なくとも40%以上を回復のために利用でき、その結果、先行技術から既に知られている解決と比較して、著しい改善が達成される。
【0053】
そのような高い弾性回復値を達成するために、弾性フィルム層6は、第1のポリマー成分Aおよび第2のポリマー成分Bを有するポリマー混合物から形成することができ、第1のポリマー成分Aは、ポリオレフィン、特にポリオレフィンエラストマーであり、第2のポリマー成分Bは、スチレンブロックコポリマーであり、ここで、特にスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)が特に有利であることが見出され、ポリマー成分Bは、とりわけ、ポリマー混合物中に32重量%~55重量%の量で存在する。さらに、本発明ではまた、弾性フィルム層6が、とりわけ、第1および第2のポリマー成分のみから形成され、その結果、弾性フィルム層6中には残部成分が存在しないか、またはわずかにしか存在しない。特に、無機残部成分は、ポリマー混合物内で1重量%未満を構成し、有機残部成分は5重量%未満を構成する。ここで、SEEPSは第2のポリマー成分Bとして特に重要であり、なぜなら、ポリオレフィンエラストマーと非常に良好に混和性であり、その結果、さらなる加工助剤が必要ないためである。残部成分の減少により、弾性成分のみから形成されるポリマー混合物が提供され、それによって、弾性フィルム層6ならびにフィルム3および積層体は、特に良好な回復挙動を有する。
【0054】
表1は、4つの異なる弾性フィルム3を示し、ここで、フィルム1および2は、公知の方法で、弾性フィルム層6中のポリオレフィンエラストマーのみから形成され、一方、フィルム3は、弾性フィルム層6中に、41重量%の割合のスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)および59重量%の割合のポリオレフィンエラストマーを有する。フィルム4は、弾性フィルム層6中に、45重量%の割合のスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)および55重量%の割合のポリオレフィンエラストマーを有する。さらに、フィルム4を横方向(CD)に活性化し、それによって非弾性カバー層4、5を薄化した。その結果、フィルムの厚さの82%が弾性フィルム層6によって画定されるが、その一方で、フィルム1~3では、弾性フィルム層6は、フィルム3の厚さの80%を占めるに過ぎない。
【0055】
【0056】
フィルム1および2の正確な構成を表2および3に、フィルム3および4の構成を表4および5に示し、ここで、弾性フィルム層6に本質的な相違が生じるように、カバー層4の組成はフィルム3および4に関して同一である。さらに、フィルム4ではまた、カバー層4、5がフィルム1~3よりも僅かに薄くなっている。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
表2~5から明らかなように、非弾性カバー層4、5は、実質的にポリオレフィンからなり、表4および5のとおり、フィルム3および4は、55%の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と35重量%のポリプロピレンとのポリオレフィン混合物である。表2および3のとおり、フィルム1および2では、わずかに低い割合の直鎖状低密度ポリエチレンが使用される。これに関して、外側層は、10%の低密度ポリエチレンを含む。ここで、より高い割合の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が、薄い外側層の伸展性に関して有利であることが見出された。フィルム3および4のLLDPEは、より高い分子分岐度を有することも有利であると考えられ、なぜなら、引き続きフィルムを活性化するために、良好に延伸可能な均一に薄い外側層を、押出プロセスにおいて形成できるからである。
【0062】
例では、直鎖状低密度ポリエチレンとして、Exxonからのポリマーを使用した。この材料は、0.936g/cm3の密度および5.0g/10Nのメルトインデックス(MFI)(190℃/2.16kg)を有する。これは、融点125℃、曲げ弾性率470MPaのエチレン-ブテンコポリマーである。
【0063】
ポリプロピレンとして、0.910g/cm3の密度および26g/10nのメルトフローレート(MFR)(230℃/2.16kg)を有するポリプロピレンを使用した。ポリプロピレンの融点は161℃であった。
【0064】
フィルム1および2のための低密度ポリエチレン(LDPE)として、0.919g/cm3の密度および6g/10nのメルトインデックス(MFI)(230℃/2.16kg)を有するエチレン-オクテンコポリマーを使用した。
【0065】
2つのポリオレフィン成分に加えてさらに、タルクおよび加工添加剤をポリマー混合物に使用した。両方のカバー層4、5は、同じように形成されている。
【0066】
弾性フィルム層6については、Vistamaxx6102を、4つ全てのフィルム中におけるポリオレフィンエラストマーとして使用した。当該材料は、0.862g/cm3の密度および1.4g/10nのメルトインデックス(MFI)(190℃/2.16kg)および3.0g/10bのメルトインデックス(MFI)(230℃/2.16kg)を有する。硬度は、ショアAにより67である。エチレン含有率は16%であり、曲げ弾性率は14MPaである。
【0067】
KurarayからのポリマーSepton F4902を、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)として使用した。これは、スチレン、イソプレンおよびブタジエンを含む水素化トリブロックコポリマーである。当該材料は、0.9g/cm3の密度、2.9g/10nのメルトインデックス(MFI)(200℃/5kg)およびショアA硬度56を有する。
【0068】
フィルムは全てキャスト共押出によって製造された。もちろん、本発明の範囲内において、インフレーションフィルム法によってフィルムを製造することも可能である。
【0069】
4つのフィルムを、製造後、3サイクルヒステリシスによるヒステリシス測定、並びに永久歪みの測定に供した。ヒステリシス測定では、サンプル幅25.4mm、つかみ具間距離25.4mmを試験速度500mm/分で300%延伸し、延伸状態で30秒間保持した。次いで、フィルムを緩和させ、60秒間緩和状態に保持した。サンプルを装着し直した後、それを120%まで延伸し、次いで30秒間延伸状態に保持した。緩和およびさらなる60秒間の保持時間の後、120%のさらなる延伸、およびそれに続く緩和を行った。
【0070】
図2A、2B、2C、2Dは、列挙された4つのフィルム全てについて、対応するサンプルの伸長の間の力の経過を示し、ここで、
図2Aは、フィルム1についてのヒステリシス曲線を示し、
図2Bは、フィルム2についてのヒステリシス曲線を示し、
図2Cは、フィルム3についてのヒステリシス曲線を示し、
図2Dは、フィルム4についてのヒステリシス曲線を示す。全てのヒステリシス曲線は、ヒステリシス測定中の第3サイクル中に記録された。
【0071】
図2A、2B、2C、2Dからわかるように、全ての測定に関して上側の負荷曲線Lと下側の除荷曲線(Entlastungskurve)Uが与えられ、ここで、負荷曲線Lは、サンプルを120°延伸するために必要な力を表し、除荷曲線Uは、サンプルの除荷過程で放出される力を示す。従って、ヒステリシス曲線は、引張と緩和との間での散逸効果によって、最初に導入されたエネルギーを除荷の間に完全に利用することはできないことを示す。この損失エネルギーは特に、いわゆる弾性回復値(ERV)によって定量化することができる。これは、例示的に
図2Aに基づいて、負荷曲線Lおよび除荷曲線Uの下の面積を比較することによって行われる。
【0072】
除荷曲線の下の面積7および除荷曲線の下の面積8が
図2Aに表されているが、これはもちろん、他の全てのフィルムについても表すことができる。さらに、除荷曲線8の下の面積が、負荷曲線7の下の面積で除され、その結果、理論的には、1の最大値が達成される。
【0073】
さらに、弾性回復値を表6に示す。全体として、先行技術から公知のフィルム1および2と比較して、本発明の弾性フィルム3を用いると、0.4を超える著しくより高い弾性回復値が達成可能なことが明らかである。特に、フィルム4は、0.49の弾性回復値をもたらし、従って、延伸に必要なエネルギーのほぼ半分が、除荷過程において再び放出され、利用され得る。
【0074】
【0075】
この正の効果は、ヒステリシス曲線の視覚的比較でも明らかであり、特に負荷曲線Lと除荷曲線Uとの間の差分面積9は、
図2C、2Dによる本発明のフィルム3において、
図2Aおよび2Bによる比較例におけるよりも著しく小さい。これらの差は、表7に定量的に記載されており、負荷曲線Lと除荷曲線Uが明らかに互いにより近くにあり、特にフィルム4の場合には49.5N/インチ%の値が可能であるが、一方で、比較例の値は実質的に約100N/インチであることが明らかである。
【0076】
【0077】
弾性回復値(ERV)に加えて、永久歪みが、本発明のフィルム3によって著しく改善される。永久歪みの値を、以下の表8に示す。ここで、300%の2回延伸後の永久歪みは、フィルム4では22.6%であり、比較例の場合、永久歪みは2倍を超える。
【0078】
【0079】
さらに、以下の表9は、異なるフィルムの機械的特性を示し、改善された弾性特性にもかかわらず、機械的特性の悪化が見込まれないことは明らかである。
【0080】
【0081】
図3は、
図1に示される構造を有する積層体ウェブ10を製造するための製造方法を例示的に示す。このために、一方では、カバーレイヤー1、2ならびに弾性フィルム3が、機械方向(MD)に沿ってウェブの形態で導かれ、弾性フィルム3は、カバーレイヤー1、2と接合される前に、活性化ユニット11で機械方向(MD)に活性化される。これは、異なる回転速度で回転する2つのローラー装置12、13を介して行われ、ローラー装置13は、ローラー装置12よりも高い回転速度を有し、その結果、弾性フィルム3が適切に、これらのローラー装置12、13の間で延伸される。次に、超音波溶着装置13において、カバーレイヤー1、2との接合が延伸状態で行われる。
【外国語明細書】