(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025146800
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】異なるサイズを有する凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を含む医薬組成物、その調製方法及び気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/19 20150101AFI20250926BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250926BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20250926BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
A61K35/19
A61P11/00
A61K9/19
A61K9/72
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025046196
(22)【出願日】2025-03-21
(31)【優先権主張番号】63/568,461
(32)【優先日】2024-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】114109931
(32)【優先日】2025-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522240623
【氏名又は名称】スピリット サイエンティフィック カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522242339
【氏名又は名称】ダオ ルン スティーブン リン
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダオ ルン スティーブン リン
(72)【発明者】
【氏名】チン-ホ チェン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076CC04
4C076CC15
4C076FF68
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB38
4C087DA21
4C087MA13
4C087MA44
4C087NA10
4C087NA14
4C087ZA59
(57)【要約】 (修正有)
【課題】天然、非合成、使用簡便かつ保存容易な吸入製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】異なるサイズを有する凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を含む医薬組成物、その調製方法及び気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための使用を提供する。凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する、医薬組成物である。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を含み、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、70~1000nmのサイズを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、35~400nmのサイズを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、20~100nmのサイズを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに凍結乾燥処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに霧化処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項1または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記吸入剤は、噴霧式吸入剤、ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)またはネブライザー(nebulizer)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の医薬組成物を調製するための方法であって、
(a)ヒト全血のサンプルを遠心分離し、血漿層を分離して白血球と赤血球を除去し、高濃度の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)を得る工程と、
(b)前記高濃度の多血小板血漿を遠心分離し、沈殿物を収集して溶媒で沈殿物における血小板を懸濁し、血小板溶液を得る工程と、
(c)前記血小板溶液に繰り返し凍結解凍の処理を行い、凍結解凍による活性化の血小板溶液(freeze and thaw activated platelet solution)を得る工程と、
(d)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液を遠心分離し、上清を取り出し、凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を得る工程と、
(e)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を濾過処理し、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を得る工程と、を含み、
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する、方法。
【請求項9】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、70~1000nmのサイズを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、35~400nmのサイズを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、20~100nmのサイズを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに凍結乾燥処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに霧化処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項8または12に記載の方法。
【請求項14】
前記吸入剤は、噴霧式吸入剤、ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)またはネブライザー(nebulizer)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための医薬品を調製するように用いられる、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
前記医薬組成物は、細胞遊走と細胞増殖を促進して炎症を緩和することにより、気道に関連する組織の創傷治癒を促進する、請求項15に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるサイズを有する凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を含む医薬組成物、その調製方法及び気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器系を介する薬剤投与法は「吸入療法」と称され、主に気道及び肺疾患の治療に適用される。一般的な吸入製剤の既知特徴は、非侵襲的療法であること、薬効発現が迅速であること、副作用が少ないこと、投薬量が少ないことなどを含む。
【0003】
現在使用されている吸入製剤の種類は、以下のように分けられている:1.定量噴霧式吸入剤(metered-dose inhaler、MDI)、これは最も一般的な吸入剤タイプであり、投薬ボタンを押すと加圧方式により薬剤が噴射される。2.ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)、これは「速くかつ深い」吸気が必要であり、吸気により薬品を気管に吸入し、余った薬品の残留を回避する。3.ネブライザー(nebulizer)、これは吸入液(inhalation solution)タイプの液体薬品を霧化して気体にすることができ、手と口の協調が悪いまたは呼吸力が不足している使用者に便利で、効果的に薬品を吸入させる。
【0004】
しかしながら、製剤自体は化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤であり、特殊な保存条件が必要であり、使用上にも不便であり、副作用がよくある。また、化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用方法は、注射方式で使用されることが多く、侵襲的治療である。生物学的製剤または細胞製剤などの投薬は高価である。一部の薬物は使用上に薬剤耐性の問題があり、病状を制御するためにより高い用量を使用することになる。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤は、開発時間が長くてコストが高い。
【0005】
上述の問題を解決するために、当業者は、天然、非合成、使用簡便かつ保存容易な吸入製剤及びその製造方法を早急に開発する必要があり、このニーズのある広範な群れに利益をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
これに鑑み、本発明の目的は、凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を含む医薬組成物を提供ことであり、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する。
【0007】
本発明の他の目的は、前記医薬組成物を調製するための方法を提供ことであり、前記方法は、(a)ヒト全血のサンプルを遠心分離し、血漿層を分離して白血球と赤血球を除去し、高濃度の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)を得る工程と、(b)前記高濃度の多血小板血漿を遠心分離し、沈殿物を収集して溶媒で沈殿物における血小板を懸濁し、血小板溶液を得る工程と、(c)前記血小板溶液に繰り返し凍結解凍の処理を行い、凍結解凍による活性化の血小板溶液(freeze and thaw activated platelet solution)を得る工程と、(d)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液を遠心分離し、上清を取り出し、凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を得る工程と、(e)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を濾過処理し、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を得る工程と、を含み、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する。
【0008】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、70~1000nmのサイズを有する。
【0009】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、35~400nmのサイズを有する。
【0010】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、20~100nmのサイズを有する。
【0011】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに凍結乾燥処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする。
【0012】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに霧化処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする。
【0013】
本発明の一実施例では、前記吸入剤は、噴霧式吸入剤、ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)またはネブライザー(nebulizer)である。
【0014】
本発明の他の目的は、気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための医薬品を調製するように用いられる前記医薬組成物の使用を提供することである。
【0015】
本発明の一実施例では、前記医薬組成物は、細胞遊走と細胞増殖を促進して炎症を緩和することにより、気道に関連する組織の創傷治癒を促進する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明は以下の実施例に例示される結果により、以下の技術的効果を達成する:保存条件及び環境問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤による副作用の問題を改善する;侵襲的療法の問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用上の制限及び規制の問題を改善する;生物学的製剤や細胞製剤の費用が高いという問題を改善することができる;及び細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤の生体耐性の問題を改善することができる。
【0017】
本発明が問題を解決できる手段、改良点は以下の通りである。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは、特殊な貯蔵条件を必要とし、本発明は特殊な保存条件及び環境を必要としない。化学合成された薬物、生物学的製剤の多くは合成であり、副作用の疑いがあり、本発明は細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、副作用がない。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは侵襲的治療であり、本発明は、吸入の方式で治療を行い、非侵襲的療法である。
【0018】
化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用は容易ではなく、操作に失敗するリスクもあり、本発明の使用は簡便であり、操作に失敗する問題はない。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、大量生産することができ、コストを下げることになる。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、生体耐性の問題がない。本発明は、他の細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤と併用し、治療の効果を強化することができる。
【0019】
以下、本発明の実施形態をさらに説明し、以下に列挙する実施例は、本発明を明確に説明するために用いられるものであり、本発明の範囲を限定するために用いられるものではなく、当業者は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、若干の変更と修飾をすることができるため、本発明の保護範囲は後に添付される特許請求の範囲に規定されているものを基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、異なるサイズの血小板由来細胞外小胞の霧化前後の濃度の比較を示す。
【
図2A】
図2Aは、霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図2B】
図2Bは、霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図2C】
図2Cは、霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力を示し、Controlは対照群を示す。
【
図2D】
図2Dは、霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図3】
図3は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化前後の炎症指数(IL-6)の比較を示す。
【
図4】
図4は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞遊走を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図5】
図5は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞増殖を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図6】
図6は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による炎症指数(IL-6)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書で使用される数値は近似値であり、全ての実験データは±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内で表される。
【0022】
本明細書で(特に後述する特許請求の範囲において)使用される「一」、「前記」及び類似用語は、文中に別段の説明がない限り、単数及び複数の形式を含むものと理解されるべきである。
【0023】
本発明によれば、細胞外小胞(extracellular vesicle、EV)は、細胞から分泌される小さな膜結合粒子であり、直径が約30nm~1000nmであり、その機能は細胞間のメッセージ伝達の媒体であり、ほとんど全ての細胞が放出され、かつ複製できない脂質二層粒子である。細胞外小胞は原細胞由来のタンパク質、核酸、脂質、代謝物、さらには細胞小器官などを大量に運ぶことができる。その源は、人間の器官細胞、動物細胞、植物、または微生物を含む。人体内では、様々な細胞はエクソソームを生成することができ、エクソソームは様々な体液(biofluid)内に充満し、例えば血液、唾液、羊水、血液、胎盤、関節嚢液、腫瘍細胞、精液、汗腺、尿、リンパ液、脳脊髄液などである。
【0024】
異なるサイズのエアロゾル粒子は、気道の異なる場所に堆積し、小型スプレーは薬物を0.5~5μmに霧化し、気管及び気管支に堆積することができ、より大きな粒子は口鼻咽喉部に堆積する可能性があり、小さすぎる粒子は肺胞に堆積し、さらには呼気時に吐き出す可能性がある。
【0025】
また、湿気によりエアロゾル粒子が大きくなり、さらに気管及び気管支に堆積するエアロゾル粒子が少なくなる。従って、本発明は血小板を源として、異なるサイズの血小板由来細胞外小胞を調製し、かつ細胞外小胞の膜構造が不安定で破壊されやすいという問題を克服し、それを霧化することで、天然、非合成、使用簡便かつ保存容易というニーズを効果的に満たす。
【0026】
本発明によれば、気道に関連する組織は、鼻粘膜、気管及び気管支を含むが、これらに限定されない。
【0027】
下記の実施例をさらに例示して本発明を説明する。これらの実施例は、説明として提供されるだけであり、本発明の保護範囲を制限するためのものではない。本発明の保護範囲は、後に添付される特許請求の範囲に示されている。
【0028】
実施例1.異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)が霧化前後の濃度の比較
本実施例の目的は、異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)を調製して霧化し、膜構造が霧化過程を安定に通過できることを確認することである。
【0029】
本実施例の実験ステップ:抗凝固剤を含む血液バッグに250mLのヒト全血(whole blood)を入れて、遠心機を利用して前記ヒト全血を遠心分離(500~1200g、5~8分間、これは1回目の遠心分離)して、ヒト全血を3層に分け、上から下へ順に血漿層(plasma layer)、白血球が位置するバフィーコート層(buffy coat layer)、及び赤血球層(red blood cells layer)である。遠心分離後の血球の層に分かれる状況は、当分野の当業者に周知され、かつ前記1回目の遠心分離の遠心分離条件は300~1500g、3~10分間に拡大することができる。遠心分離後の血小板(platelet)は血漿層の中に分布し、かつバフィーコート層の位置に隣接する。無菌操作で血漿層を吸引し、白血球と赤血球を完全に除去し、これは高濃度の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)であり、血漿層溶液(plasma layer solution)とも呼ばれる。
【0030】
高濃度の多血小板血漿(PRP)を一つ取り、遠心機を利用して血漿層溶液を遠心分離(1000~2500g、5分間、これは2回目の遠心分離)して、血小板を沈降させて沈殿物(pellet)を形成し、この沈殿物は血小板層であり、上清は血漿及び血漿蛋白層である。上清を完全に除去し、血漿(plasma)及び血漿における蛋白質を完全に除去し、そして生理食塩水注射液(isotonic sodium chloride solution injection、ブランド:信東、Taiwan Biotech Co., Ltd.)で血小板層における血小板を懸濁し(血小板の濃度を1×109/mLにし、計10~20mL)、血小板溶液(pure platelet solution)を得る。血小板溶液を-80℃で凍結(24時間)し、37℃で解凍(15分間)し、凍結解凍の循環を3回繰り返し、凍結解凍による活性化の血小板溶液(freeze and thaw activated platelet solution)を得る。
【0031】
遠心機を利用して凍結解凍による活性化の血小板溶液を遠心分離(10000~15000g、5~10分間、これは3回目の遠心分離)し、上清を取り出し、凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清(freeze and thaw activated platelet supernatant)を得る。凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を0.45μmのシリンジフィルター(PES材質、25mm、型番C0000296、ブランドLabfil(R)、血小板と大部分の不純物を濾過除去し、凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived EV)を得る。
【0032】
凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を一部取り、異なるサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)カラム(ブランド:IZON、qEV10カラム)で血小板由来細胞外小胞のサイズ排除を行い、それぞれ大サイズ(70~1000nm)、中サイズ(35~400nm)、及び小サイズ(20~100nm)の3種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を調製する。サイズ排除クロマトグラフィーを行わない凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズに分けない凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞である。
【0033】
エアゾール発生装置(aerosol generator)(型番Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して各サイズの血小板由来細胞外小胞とサイズ排除を行わない血小板由来細胞外小胞にそれぞれ霧化(nebulize)プロセスを行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。エアゾール発生装置は、「医療器材品質管理システム準則(QMS)」に適合するか、または各国の衛生主管機関(例えばFDA)の承認を得て発売されたエアゾール発生装置であってもよく、例えば:医療用Pulmogine霧化器(ブランドHCmed)、医療用NEB 800霧化器(ブランドMicrolife)または医療用TD-7001霧化器(ブランドClever Check)である。
【0034】
本実施例で使用されるエアゾール発生装置は、孔径が5μmであり、主に2つの部分の本体から構成され、上半部の本体はリザーバ(reservior)であり、下半部の本体は主要ユニット(the main unit)である。凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived EV solution)をリザーバに注ぎ、リザーバキャップ(reservior cap)をかぶせ、リザーバと下半部の本体を接続し、遠心管とリザーバを接続し、霧化後の回収液を収集する。本体の起動ボタンを押すと、凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を全てエアゾール(aerosols)に霧化することができる。
【0035】
収集された霧化後の回収液を、調整可能抵抗パルスセンシング(tunable resistive pulse sensing(TRPS)、型番Exoid、ブランドIZON Science)でナノ粒子定量分析を行い、霧化程度(霧化後濃度÷霧化前濃度×100%)を計算する。
【0036】
【0037】
【0038】
表1及び
図1から分かるように、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化程度は、大サイズ、中サイズ、小サイズより大きい。
【0039】
実施例2.異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)により、治癒試験を行う
本実施例の目的は、ヒト鼻粘膜の上皮細胞で培養し、それぞれ異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(最終濃度5%)を添加し、治癒試験(細胞遊走、細胞増殖)を行い、かつ霧化の影響の有無を観察することである。
【0040】
2-1.霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製する。
【0041】
ヒト鼻粘膜の上皮細胞(ブランド:Promocell、品番:C-12620)を、2%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(dulbecco’s modified eagle medium、DMEM、コーニング10-013CV)に培養し、新鮮な培養液を交換して予備とする。
【0042】
細胞培養インサート(cell culture insert)を含む24ウェルプレートを、未処理のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide、CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0043】
旧培養液(used medium、使用された培地)及び各群の細胞培養インサートを除去し、顕微鏡で撮影して記録する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0044】
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0045】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0046】
大サイズの血小板由来細胞外小胞群:大サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0047】
中サイズの血小板由来細胞外小胞群:中サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0048】
小サイズの血小板由来細胞外小胞群:小サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0049】
顕微鏡で撮影して記録し、各群の細胞遊走の被覆面積を計算する。
実験の結果は表2及び
図2Aに示している。
【0050】
【0051】
表2及び
図2Aから分かるように、霧化過程を経ていない細胞遊走の面積の差について、中サイズの血小板由来細胞外小胞の効果が最も優れている。
【0052】
2-2.霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製する。
【0053】
それぞれ4種類の血小板由来細胞外小胞を取り、エアゾール発生装置(Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾールを得る。本実験は,遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0054】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0055】
細胞培養インサートを含む24ウェルプレートを、未処理のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0056】
旧培養液及び各群の細胞培養インサートを除去し、顕微鏡で撮影して記録する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0057】
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0058】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0059】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0060】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0061】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide、CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0062】
顕微鏡で撮影して記録し、各群の細胞遊走の被覆面積を計算する。
実験の結果は表3及び
図2Bに示している。
【0063】
【0064】
表3及び
図2Bから分かるように、霧化過程を経った細胞遊走の面積の差について、小サイズの血小板由来細胞外小胞の効果が最も優れている。
【0065】
2-3.霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製する。
【0066】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて、血小板由来細胞外小胞とともに実験を行う。
【0067】
24ウェルプレートを、未処理のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0068】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を未処理のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0069】
大サイズの血小板由来細胞外小胞群:大サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0070】
中サイズの血小板由来細胞外小胞群:中サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0071】
小サイズの血小板由来細胞外小胞群:小サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0072】
各群の旧培養液を除去する。各ウェルに90μLのDMEM培養液及び10μLのCCK-8緩衝液(buffer)(DOJINDO、品番:CK04)を添加する。37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで3時間培養を続ける。
【0073】
マルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。CCK-8緩衝液(buffer)の製品説明書により吸光度と細胞数の回帰曲線を確立し、吸光度を生存細胞数に換算する。
【0074】
【0075】
【0076】
表4及び
図2Cから分かるように、霧化過程を経ていない細胞増殖の状況について、小サイズの血小板由来細胞外小胞の細胞増殖の効果が最も優れていることが明らかになる。
【0077】
2-4.霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、霧化する。
【0078】
それぞれ4種類の血小板由来細胞外小胞を取り、エアゾール発生装置(Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対して霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾールを得る。本実験は,遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0079】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて、血小板由来細胞外小胞とともに実験を行う。
【0080】
24ウェルプレートを、未処理のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0081】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を未処理のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0082】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0083】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0084】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0085】
各群の旧培養液を除去する。各孔に90μLのDMEM培養液及び10μLのCCK-8緩衝液(buffer)(DOJINDO、品番:CK04)を添加する。37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで3時間培養を続ける。
【0086】
マルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。CCK-8緩衝液(buffer)の製品説明書により吸光度と細胞数の回帰曲線を確立し、吸光度を生存細胞数に換算する。
【0087】
【0088】
【0089】
表5及び
図2Dから分かるように、霧化された小サイズの血小板由来細胞外小胞(20~100nm)は、細胞増殖における効果が最も優れている。
【0090】
実施例3.血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)の霧化の有無による炎症を緩和する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞溶液を調製し、2分に分け、そのうちの一部を霧化する。
【0091】
それぞれ4種類の血小板由来細胞外小胞を取り、エアゾール発生装置(Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾールを得る。本実験は,遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0092】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0093】
96ウェルプレートを、未処理(Original)のウェル、LPS対照のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0094】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去する。5μg/mLのLPSを含むDMEN培養液(2%FBS含有)でLPS対照のウェル、及び実験群のウェルにおける細胞をそれぞれ懸濁し、LPSを含まないDMEM培養液(2%FBS含有)で未処理のウェルにおける細胞を懸濁する。37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで1時間培養する。
【0095】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理(Original)のウェルとLPS対照のウェルに、DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0096】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0097】
大サイズの血小板由来細胞外小胞群:大サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0098】
中サイズの血小板由来細胞外小胞群:中サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液(medium size EV medium)を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液(medium size EV medium)を中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0099】
小サイズの血小板由来細胞外小胞群:小サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液(small size EV medium)を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0100】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0101】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0102】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0103】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0104】
各ウェルの細胞培養液をそれぞれ微量遠心管に移す。インターロイキン(IL-6は、炎症因子である)ELISAキット(Human IL-6 ELISA Kit)(品番:ab178013、ブランド:Abcam)を利用して細胞培養液におけるヒトインターロイキン(Human IL-6)の濃度を検出する。さらにマルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。インターロイキン(IL-6)ELISAキットの製品説明書により吸光度と炎症因子IL-6の濃度の回帰曲線を確立し、吸光度を炎症因子IL-6の濃度に換算する。
【0105】
【0106】
【0107】
表6及び
図3から分かるように、霧化された小サイズの血小板由来細胞外小胞(20~100nm)は、炎症を緩和する能力が最も優れている。
【0108】
実施例4.凍結乾燥の有無の血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)により治癒試験を行う
4-1.血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞遊走を促進する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、それぞれ2分に分ける。
【0109】
上記4種類の血小板由来細胞外小胞を各々一部取り、1mLの体積で凍結乾燥プロセスを行い、4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を調製する。
【0110】
4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を各々一部取り、それぞれ1mLの生理食塩水で再溶解し、4組の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末の再溶解液を調製する。
【0111】
エアゾール発生装置(aerosol generator、Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。本実験は,遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0112】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0113】
細胞培養インサート(cell culture insert)を含む24ウェルプレートを、対照群(未処理)のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0114】
旧培養液(used medium、使用された培地)及び各群の細胞培養インサートを除去し、顕微鏡で撮影して記録する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0115】
対照群(無処理)のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0116】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0117】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0118】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0119】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0120】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0121】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0122】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0123】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0124】
顕微鏡で撮影して記録し、各群の細胞遊走(Cell migration)の被覆面積を計算する。
【0125】
【0126】
【0127】
表7及び
図4から分かるように、凍結乾燥かつ霧化された小サイズの血小板由来細胞外小胞は、細胞遊走を促進する能力が最も優れている。
【0128】
4-2.血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞増殖を促進する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、それぞれ2分に分ける。
【0129】
上記4種類の血小板由来細胞外小胞を各々一部取り、1mLの体積で凍結乾燥プロセスを行い、4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を調製する。
【0130】
4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を各々一部取り、それぞれ1mLの生理食塩水で再溶解し、4組の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末の再溶解液を調製する。
【0131】
エアゾール発生装置(aerosol generator、Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。本実験は,遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0132】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0133】
24ウェルプレートを、対照群(未処理)のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0134】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
対照群(未処理)のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0135】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0136】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0137】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0138】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0139】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0140】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0141】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0142】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0143】
各群の旧培養液を除去する。各ウェルに90μLのDMEM培養液及び10μLのCCK-8緩衝液(buffer)(DOJINDO、品番:CK04)を添加する。37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで3時間培養を続ける。
【0144】
マルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。CCK-8緩衝液(buffer)の製品説明書により吸光度と細胞数の回帰曲線を確立し、吸光度を生存細胞数に換算する。
【0145】
実験の結果は表8及び
図5に示している。その結果から分かるように、霧化処理のみと比較して、凍結乾燥かつ霧化処理された血小板由来細胞外小胞は、細胞増殖を促進する能力が向上している。
【0146】
【0147】
実施例5.血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による炎症を緩和する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、それぞれ2分に分ける。
【0148】
上記4種類の血小板由来細胞外小胞を各々一部取り、1mLの体積で凍結乾燥プロセスを行い、4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を調製する。
【0149】
4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を各々一部取り、それぞれ1mLの生理食塩水で再溶解し、4組の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末の再溶解液を調製する。
【0150】
エアゾール発生装置(aerosol generator、Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。本実験は,遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0151】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0152】
96ウェルプレートを、未処理(Original)のウェル、LPS対照のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養する。
【0153】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去する。5μg/mLのLPSを含むDMEM培養液(2%FBS含有)でLPS対照のウェル、及び実験群のウェルにおける細胞をそれぞれ懸濁し、LPSを含まないDMEM培養液(2%FBS含有)で未処理のウェルにおける細胞を懸濁する。37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで1時間培養する。
【0154】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理(Original)のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0155】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0156】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0157】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0158】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0159】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0160】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0161】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0162】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0163】
各ウェルの細胞培養液をそれぞれ微量遠心管に移す。インターロイキン(IL-6は、炎症因子である)ELISAキット(Human IL-6 ELISA Kit)(品番:ab178013、ブランドAbcam)を利用して細胞培養液におけるヒトインターロイキン(Human IL-6)の濃度を検出する。さらにマルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。インターロイキン(IL-6)ELISAキットの製品説明書により吸光度と炎症因子IL-6の濃度の回帰曲線を確立し、吸光度を炎症因子IL-6の濃度に換算する。
【0164】
【0165】
【0166】
以上より、本発明は上記実施例に例示される結果により、以下の技術的効果を達成する:保存条件及び環境問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤による副作用の問題を改善する;侵襲的療法の問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用上の制限及び規制の問題を改善する;生物学的製剤や細胞製剤の費用が高いという問題を改善することができる;及び細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤の生体耐性の問題を改善することができる。
【0167】
本発明が問題を解決できる手段、改良点は以下の通りである。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは、特殊な貯蔵条件を必要とし、本発明は特殊な保存条件及び環境を必要としない。化学合成された薬物、生物学的製剤の多くは合成であり、副作用の疑いがあり、本発明は細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、副作用がない。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは侵襲的治療である;本発明は、吸入の方式で治療を行い、非侵襲的療法である。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用は容易ではなく、操作に失敗するリスクもあり、本発明の使用は簡便であり、操作に失敗する問題はない。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、大量生産することができ、コストを下げることになる。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、生体耐性の問題がない。本発明は、他の細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤と併用し、治療の効果を強化することができる。
【0168】
上記は単なる例示であり、制限的なものではない。本発明の精神と範囲を逸脱しておらず、それに対する同等のいかなる修正または変更は、後に添付される特許請求の範囲に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2025-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を含み、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、70~1,000nmのサイズを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、35~400nmのサイズを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、20~100nmのサイズを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに凍結乾燥処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに霧化処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項1または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記吸入剤は、噴霧式吸入剤、ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)またはネブライザー(nebulizer)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の医薬組成物を調製するための方法であって、
(a)ヒト全血のサンプルを遠心分離し、血漿層を分離して白血球と赤血球を除去し、高濃度の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)を得る工程と、
(b)前記高濃度の多血小板血漿を遠心分離し、沈殿物を収集して溶媒で沈殿物における血小板を懸濁し、血小板溶液を得る工程と、
(c)前記血小板溶液に繰り返し凍結解凍の処理を行い、凍結解凍による活性化の血小板溶液(freeze and thaw activated platelet solution)を得る工程と、
(d)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液を遠心分離し、上清を取り出し、凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を得る工程と、
(e)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を濾過処理し、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を得る工程と、を含み、
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する、方法。
【請求項9】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、70~1,000nmのサイズを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、35~400nmのサイズを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、20~100nmのサイズを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに凍結乾燥処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに霧化処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする、請求項8または12に記載の方法。
【請求項14】
前記吸入剤は、噴霧式吸入剤、ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)またはネブライザー(nebulizer)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための医薬品を調製するように用いられる、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
前記医薬組成物は、細胞遊走と細胞増殖を促進して炎症を緩和することにより、気道に関連する組織の創傷治癒を促進する、請求項15に記載の医薬組成物の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるサイズを有する凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を含む医薬組成物、その調製方法及び気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器系を介する薬剤投与法は「吸入療法」と称され、主に気道及び肺疾患の治療に適用される。一般的な吸入製剤の既知特徴は、非侵襲的療法であること、薬効発現が迅速であること、副作用が少ないこと、投薬量が少ないことなどを含む。
【0003】
現在使用されている吸入製剤の種類は、以下のように分けられている:1.定量噴霧式吸入剤(metered-dose inhaler、MDI)、これは最も一般的な吸入剤タイプであり、投薬ボタンを押すと加圧方式により薬剤が噴射される。2.ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)、これは「速くかつ深い」吸気が必要であり、吸気により薬品を気管に吸入し、余った薬品の残留を回避する。3.ネブライザー(nebulizer)、これは吸入液(inhalation solution)タイプの液体薬品を霧化して気体にすることができ、手と口の協調が悪いまたは呼吸力が不足している使用者に便利で、効果的に薬品を吸入させる。
【0004】
しかしながら、製剤自体は化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤であり、特殊な保存条件が必要であり、使用上にも不便であり、副作用がよくある。また、化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用方法は、注射方式で使用されることが多く、侵襲的治療である。生物学的製剤または細胞製剤などの投薬は高価である。一部の薬物は使用上に薬剤耐性の問題があり、病状を制御するためにより高い用量を使用することになる。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤は、開発時間が長くてコストが高い。
【0005】
上述の問題を解決するために、当業者は、天然、非合成、使用簡便かつ保存容易な吸入製剤及びその製造方法を早急に開発する必要があり、このニーズのある広範な群れに利益をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
これに鑑み、本発明の目的は、凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を含む医薬組成物を提供ことであり、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する。
【0007】
本発明の他の目的は、前記医薬組成物を調製するための方法を提供ことであり、前記方法は、(a)ヒト全血のサンプルを遠心分離し、血漿層を分離して白血球と赤血球を除去し、高濃度の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)を得る工程と、(b)前記高濃度の多血小板血漿を遠心分離し、沈殿物を収集して溶媒で沈殿物における血小板を懸濁し、血小板溶液を得る工程と、(c)前記血小板溶液に繰り返し凍結解凍の処理を行い、凍結解凍による活性化の血小板溶液(freeze and thaw activated platelet solution)を得る工程と、(d)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液を遠心分離し、上清を取り出し、凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を得る工程と、(e)前記凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を濾過処理し、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)を得る工程と、を含み、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により処理されて異なるサイズを有する。
【0008】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、70~1,000nmのサイズを有する。
【0009】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、35~400nmのサイズを有する。
【0010】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、20~100nmのサイズを有する。
【0011】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに凍結乾燥処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする。
【0012】
本発明の一実施例では、前記凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、さらに霧化処理され、前記医薬組成物を吸入剤の剤形にする。
【0013】
本発明の一実施例では、前記吸入剤は、噴霧式吸入剤、ドライパウダー吸入剤(dry powder inhaler、DPI)またはネブライザー(nebulizer)である。
【0014】
本発明の他の目的は、気道に関連する組織の創傷治癒の促進と炎症反応の緩和のための医薬品を調製するように用いられる前記医薬組成物の使用を提供することである。
【0015】
本発明の一実施例では、前記医薬組成物は、細胞遊走と細胞増殖を促進して炎症を緩和することにより、気道に関連する組織の創傷治癒を促進する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明は以下の実施例に例示される結果により、以下の技術的効果を達成する:保存条件及び環境問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤による副作用の問題を改善する;侵襲的療法の問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用上の制限及び規制の問題を改善する;生物学的製剤や細胞製剤の費用が高いという問題を改善することができる;及び細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤の生体耐性の問題を改善することができる。
【0017】
本発明が問題を解決できる手段、改良点は以下の通りである。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは、特殊な貯蔵条件を必要とし、本発明は特殊な保存条件及び環境を必要としない。化学合成された薬物、生物学的製剤の多くは合成であり、副作用の疑いがあり、本発明は細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、副作用がない。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは侵襲的治療であり、本発明は、吸入の方式で治療を行い、非侵襲的療法である。
【0018】
化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用は容易ではなく、操作に失敗するリスクもあり、本発明の使用は簡便であり、操作に失敗する問題はない。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、大量生産することができ、コストを下げることになる。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、生体耐性の問題がない。本発明は、他の細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤と併用し、治療の効果を強化することができる。
【0019】
以下、本発明の実施形態をさらに説明し、以下に列挙する実施例は、本発明を明確に説明するために用いられるものであり、本発明の範囲を限定するために用いられるものではなく、当業者は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、若干の変更と修飾をすることができるため、本発明の保護範囲は後に添付される特許請求の範囲に規定されているものを基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、異なるサイズの血小板由来細胞外小胞の霧化前後の濃度の比較を示す。
【
図2A】
図2Aは、霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図2B】
図2Bは、霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図2C】
図2Cは、霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力を示し、Controlは対照群を示す。
【
図2D】
図2Dは、霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図3】
図3は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化前後の炎症指数(IL-6)の比較を示す。
【
図4】
図4は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞遊走を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図5】
図5は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞増殖を促進する能力を示し、Controlは対照群を表す。
【
図6】
図6は、各サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による炎症指数(IL-6)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書で使用される数値は近似値であり、全ての実験データは±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内で表される。
【0022】
本明細書で(特に後述する特許請求の範囲において)使用される「一」、「前記」及び類似用語は、文中に別段の説明がない限り、単数及び複数の形式を含むものと理解されるべきである。
【0023】
本発明によれば、細胞外小胞(extracellular vesicle、EV)は、細胞から分泌される小さな膜結合粒子であり、直径が約30nm~1,000nmであり、その機能は細胞間のメッセージ伝達の媒体であり、ほとんど全ての細胞が放出され、かつ複製できない脂質二層粒子である。細胞外小胞は原細胞由来のタンパク質、核酸、脂質、代謝物、さらには細胞小器官などを大量に運ぶことができる。その源は、人間の器官細胞、動物細胞、植物、または微生物を含む。人体内では、様々な細胞はエクソソームを生成することができ、エクソソームは様々な体液(biofluid)内に充満し、例えば血液、唾液、羊水、血液、胎盤、関節嚢液、腫瘍細胞、精液、汗腺、尿、リンパ液、脳脊髄液などである。
【0024】
異なるサイズのエアロゾル粒子は、気道の異なる場所に堆積し、小型スプレーは薬物を0.5~5μmに霧化し、気管及び気管支に堆積することができ、より大きな粒子は口鼻咽喉部に堆積する可能性があり、小さすぎる粒子は肺胞に堆積し、さらには呼気時に吐き出す可能性がある。
【0025】
また、湿気によりエアロゾル粒子が大きくなり、さらに気管及び気管支に堆積するエアロゾル粒子が少なくなる。従って、本発明は血小板を源として、異なるサイズの血小板由来細胞外小胞を調製し、かつ細胞外小胞の膜構造が不安定で破壊されやすいという問題を克服し、それを霧化することで、天然、非合成、使用簡便かつ保存容易というニーズを効果的に満たす。
【0026】
本発明によれば、気道に関連する組織は、鼻粘膜、気管及び気管支を含むが、これらに限定されない。
【0027】
下記の実施例をさらに例示して本発明を説明する。これらの実施例は、説明として提供されるだけであり、本発明の保護範囲を制限するためのものではない。本発明の保護範囲は、後に添付される特許請求の範囲に示されている。
【0028】
実施例1.異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)が霧化前後の濃度の比較
本実施例の目的は、異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)を調製して霧化し、膜構造が霧化過程を安定に通過できることを確認することである。
【0029】
本実施例の実験ステップ:抗凝固剤を含む血液バッグに250mLのヒト全血(whole blood)を入れて、遠心機を利用して前記ヒト全血を遠心分離(500~1,200g、5~8分間、これは1回目の遠心分離)して、ヒト全血を3層に分け、上から下へ順に血漿層(plasma layer)、白血球が位置するバフィーコート層(buffy coat layer)、及び赤血球層(red blood cells layer)である。遠心分離後の血球の層に分かれる状況は、当分野の当業者に周知され、かつ前記1回目の遠心分離の遠心分離条件は300~1,500g、3~10分間に拡大することができる。遠心分離後の血小板(platelet)は血漿層の中に分布し、かつバフィーコート層の位置に隣接する。無菌操作で血漿層を吸引し、白血球と赤血球を完全に除去し、これは高濃度の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)であり、血漿層溶液(plasma layer solution)とも呼ばれる。
【0030】
高濃度の多血小板血漿(PRP)を一つ取り、遠心機を利用して血漿層溶液を遠心分離(1,000~2,500g、5分間、これは2回目の遠心分離)して、血小板を沈降させて沈殿物(pellet)を形成し、この沈殿物は血小板層であり、上清は血漿及び血漿蛋白層である。上清を完全に除去し、血漿(plasma)及び血漿における蛋白質を完全に除去し、そして生理食塩水注射液(isotonic sodium chloride solution injection、ブランド:信東、Taiwan Biotech Co., Ltd.)で血小板層における血小板を懸濁し(血小板の濃度を1×109/mLにし、計10~20mL)、血小板溶液(pure platelet solution)を得る。血小板溶液を-80℃で凍結(24時間)し、37℃で解凍(15分間)し、凍結解凍の循環を3回繰り返し、凍結解凍による活性化の血小板溶液(freeze and thaw activated platelet solution)を得る。
【0031】
遠心機を利用して凍結解凍による活性化の血小板溶液を遠心分離(10,000~15,000g、5~10分間、これは3回目の遠心分離)し、上清を取り出し、凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清(freeze and thaw activated platelet supernatant)を得る。凍結解凍による活性化の血小板溶液の上清を0.45μmのシリンジフィルター(PES材質、25mm、型番C0000296、ブランドLabfil(R)
)で濾過し、血小板と大部分の不純物を濾過除去し、凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived EV)を得る。
【0032】
凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を一部取り、異なるサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)カラム(ブランド:IZON、qEV10カラム)で血小板由来細胞外小胞のサイズ排除を行い、それぞれ大サイズ(70~1,000nm)、中サイズ(35~400nm)、及び小サイズ(20~100nm)の3種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を調製する。サイズ排除クロマトグラフィーを行わない凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞は、サイズに分けない凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞である。
【0033】
エアゾール発生装置(aerosol generator)(型番Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して各サイズの血小板由来細胞外小胞とサイズ排除を行わない血小板由来細胞外小胞にそれぞれ霧化(nebulize)プロセスを行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。エアゾール発生装置は、「医療器材品質管理システム準則(QMS)」に適合するか、または各国の衛生主管機関(例えばFDA)の承認を得て発売されたエアゾール発生装置であってもよく、例えば:医療用Pulmogine霧化器(ブランドHCmed)、医療用NEB 800霧化器(ブランドMicrolife)または医療用TD-7001霧化器(ブランドClever Check)である。
【0034】
本実施例で使用されるエアゾール発生装置は、孔径が5μmであり、主に2つの部分の本体から構成され、上半部の本体はリザーバ(reservior)であり、下半部の本体は主要ユニット(the main unit)である。凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived EV solution)をリザーバに注ぎ、リザーバキャップ(reservior cap)をかぶせ、リザーバと下半部の本体を接続し、遠心管とリザーバを接続し、霧化後の回収液を収集する。本体の起動ボタンを押すと、凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞を全てエアゾール(aerosols)に霧化することができる。
【0035】
収集された霧化後の回収液を、調整可能抵抗パルスセンシング(tunable resistive pulse sensing(TRPS)、型番Exoid、ブランドIZON Science)でナノ粒子定量分析を行い、霧化程度(霧化後濃度÷霧化前濃度×100%)を計算する。
【0036】
【0037】
【0038】
表1及び
図1から分かるように、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化程度は、大サイズ、中サイズ、小サイズより大きい。
【0039】
実施例2.異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)により、治癒試験を行う
本実施例の目的は、ヒト鼻粘膜の上皮細胞で培養し、それぞれ異なるサイズの血小板由来細胞外小胞(最終濃度5%)を添加し、治癒試験(細胞遊走、細胞増殖)を行い、かつ霧化の影響の有無を観察することである。
【0040】
2-1.霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製する。
【0041】
ヒト鼻粘膜の上皮細胞(ブランド:Promocell、品番:C-12620)を、2%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(dulbecco’s modified eagle medium、DMEM、コーニング10-013CV)に培養し、新鮮な培養液を交換して予備とする。
【0042】
細胞培養インサート(cell culture insert)を含む24ウェルプレートを、未処理のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide、CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0043】
旧培養液(used medium、使用された培地)及び各群の細胞培養インサートを除去し、顕微鏡で撮影して記録する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0044】
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0045】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0046】
大サイズの血小板由来細胞外小胞群:大サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0047】
中サイズの血小板由来細胞外小胞群:中サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0048】
小サイズの血小板由来細胞外小胞群:小サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0049】
顕微鏡で撮影して記録し、各群の細胞遊走の被覆面積を計算する。
実験の結果は表2及び
図2Aに示している。
【0050】
【0051】
表2及び
図2Aから分かるように、霧化過程を経ていない細胞遊走の面積の差について、中サイズの血小板由来細胞外小胞の効果が最も優れている。
【0052】
2-2.霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞遊走を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製する。
【0053】
それぞれ4種類の血小板由来細胞外小胞を取り、エアゾール発生装置(Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾールを得る。本実験は、遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0054】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0055】
細胞培養インサートを含む24ウェルプレートを、未処理のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0056】
旧培養液及び各群の細胞培養インサートを除去し、顕微鏡で撮影して記録する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0057】
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0058】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0059】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0060】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0061】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide、CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0062】
顕微鏡で撮影して記録し、各群の細胞遊走の被覆面積を計算する。
実験の結果は表3及び
図2Bに示している。
【0063】
【0064】
表3及び
図2Bから分かるように、霧化過程を経った細胞遊走の面積の差について、小サイズの血小板由来細胞外小胞の効果が最も優れている。
【0065】
2-3.霧化されていない血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製する。
【0066】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて、血小板由来細胞外小胞とともに実験を行う。
【0067】
24ウェルプレートを、未処理のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0068】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を未処理のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0069】
大サイズの血小板由来細胞外小胞群:大サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0070】
中サイズの血小板由来細胞外小胞群:中サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0071】
小サイズの血小板由来細胞外小胞群:小サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0072】
各群の旧培養液を除去する。各ウェルに90μLのDMEM培養液及び10μLのCCK-8緩衝液(buffer)(DOJINDO、品番:CK04)を添加する。37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで3時間培養を続ける。
【0073】
マルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。CCK-8緩衝液(buffer)の製品説明書により吸光度と細胞数の回帰曲線を確立し、吸光度を生存細胞数に換算する。
【0074】
【0075】
【0076】
表4及び
図2Cから分かるように、霧化過程を経ていない細胞増殖の状況について、小サイズの血小板由来細胞外小胞の細胞増殖の効果が最も優れていることが明らかになる。
【0077】
2-4.霧化された血小板由来細胞外小胞が細胞増殖を促進する能力
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、霧化する。
【0078】
それぞれ4種類の血小板由来細胞外小胞を取り、エアゾール発生装置(Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対して霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾールを得る。本実験は、遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0079】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて、血小板由来細胞外小胞とともに実験を行う。
【0080】
24ウェルプレートを、未処理のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及び小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0081】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を未処理のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0082】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0083】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0084】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0085】
各群の旧培養液を除去する。各孔に90μLのDMEM培養液及び10μLのCCK-8緩衝液(buffer)(DOJINDO、品番:CK04)を添加する。37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで3時間培養を続ける。
【0086】
マルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。CCK-8緩衝液(buffer)の製品説明書により吸光度と細胞数の回帰曲線を確立し、吸光度を生存細胞数に換算する。
【0087】
【0088】
【0089】
表5及び
図2Dから分かるように、霧化された小サイズの血小板由来細胞外小胞(20~100nm)は、細胞増殖における効果が最も優れている。
【0090】
実施例3.血小板由来細胞外小胞(freeze and thaw activated platelet-derived extracellular vesicle)の霧化の有無による炎症を緩和する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞溶液を調製し、2分に分け、そのうちの一部を霧化する。
【0091】
それぞれ4種類の血小板由来細胞外小胞を取り、エアゾール発生装置(Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾールを得る。本実験は、遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0092】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0093】
96ウェルプレートを、未処理(Original)のウェル、LPS対照のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0094】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去する。5μg/mLのLPSを含むDMEN培養液(2%FBS含有)でLPS対照のウェル、及び実験群のウェルにおける細胞をそれぞれ懸濁し、LPSを含まないDMEM培養液(2%FBS含有)で未処理のウェルにおける細胞を懸濁する。37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで1時間培養する。
【0095】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理(Original)のウェルとLPS対照のウェルに、DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0096】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0097】
大サイズの血小板由来細胞外小胞群:大サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0098】
中サイズの血小板由来細胞外小胞群:中サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液(medium size EV medium)を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液(medium size EV medium)を中サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0099】
小サイズの血小板由来細胞外小胞群:小サイズの血小板由来細胞外小胞とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液(small size EV medium)を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0100】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0101】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0102】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0103】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0104】
各ウェルの細胞培養液をそれぞれ微量遠心管に移す。インターロイキン(IL-6は、炎症因子である)ELISAキット(Human IL-6 ELISA Kit)(品番:ab178013、ブランド:Abcam)を利用して細胞培養液におけるヒトインターロイキン(Human IL-6)の濃度を検出する。さらにマルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。インターロイキン(IL-6)ELISAキットの製品説明書により吸光度と炎症因子IL-6の濃度の回帰曲線を確立し、吸光度を炎症因子IL-6の濃度に換算する。
【0105】
【0106】
【0107】
表6及び
図3から分かるように、霧化された小サイズの血小板由来細胞外小胞(20~100nm)は、炎症を緩和する能力が最も優れている。
【0108】
実施例4.凍結乾燥の有無の血小板由来細胞外小胞(platelet-derived extracellular vesicle)により治癒試験を行う
4-1.血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞遊走を促進する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、それぞれ2分に分ける。
【0109】
上記4種類の血小板由来細胞外小胞を各々一部取り、1mLの体積で凍結乾燥プロセスを行い、4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を調製する。
【0110】
4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を各々一部取り、それぞれ1mLの生理食塩水で再溶解し、4組の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末の再溶解液を調製する。
【0111】
エアゾール発生装置(aerosol generator、Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。本実験は、遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0112】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0113】
細胞培養インサート(cell culture insert)を含む24ウェルプレートを、対照群(未処理)のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。
【0114】
旧培養液(used medium、使用された培地)及び各群の細胞培養インサートを除去し、顕微鏡で撮影して記録する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0115】
対照群(無処理)のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0116】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0117】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0118】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0119】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0120】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0121】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0122】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0123】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで6時間培養を続ける。
【0124】
顕微鏡で撮影して記録し、各群の細胞遊走(Cell migration)の被覆面積を計算する。
【0125】
【0126】
【0127】
表7及び
図4から分かるように、凍結乾燥かつ霧化された小サイズの血小板由来細胞外小胞は、細胞遊走を促進する能力が最も優れている。
【0128】
4-2.血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による細胞増殖を促進する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、それぞれ2分に分ける。
【0129】
上記4種類の血小板由来細胞外小胞を各々一部取り、1mLの体積で凍結乾燥プロセスを行い、4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を調製する。
【0130】
4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を各々一部取り、それぞれ1mLの生理食塩水で再溶解し、4組の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末の再溶解液を調製する。
【0131】
エアゾール発生装置(aerosol generator、Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。本実験は、遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0132】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0133】
24ウェルプレートを、対照群(未処理)のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素(CO2)のインキュベーターで24時間培養する。そして、各群はそれぞれ次のステップを実行する。
【0134】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
対照群(未処理)のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0135】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0136】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0137】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0138】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0139】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0140】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0141】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0142】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで18時間培養を続ける。
【0143】
各群の旧培養液を除去する。各ウェルに90μLのDMEM培養液及び10μLのCCK-8緩衝液(buffer)(DOJINDO、品番:CK04)を添加する。37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで3時間培養を続ける。
【0144】
マルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。CCK-8緩衝液(buffer)の製品説明書により吸光度と細胞数の回帰曲線を確立し、吸光度を生存細胞数に換算する。
【0145】
実験の結果は表8及び
図5に示している。その結果から分かるように、霧化処理のみと比較して、凍結乾燥かつ霧化処理された血小板由来細胞外小胞は、細胞増殖を促進する能力が向上している。
【0146】
【0147】
実施例5.血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥の有無による炎症を緩和する能力の比較
実験ステップ:実施例1の調製方法のように、4種類の血小板由来細胞外小胞を調製し、それぞれ2分に分ける。
【0148】
上記4種類の血小板由来細胞外小胞を各々一部取り、1mLの体積で凍結乾燥プロセスを行い、4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を調製する。
【0149】
4種類の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を各々一部取り、それぞれ1mLの生理食塩水で再溶解し、4組の凍結解凍による活性化の血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末の再溶解液を調製する。
【0150】
エアゾール発生装置(aerosol generator、Pulmogine、ブランドHCmed)を利用して群ごとに血小板由来細胞外小胞に対してそれぞれ霧化プロセス(実施例1に記載のように)を行い、それぞれ複数のエアゾール(aerosols)を得る。本実験は、遠心管を利用して霧化後のエアゾールを収集し、エアゾールを遠心管の中で集めさせて回収液になり、その後の実験を行う。
【0151】
実施例2-1と同じヒト鼻粘膜の上皮細胞を用いて実験を行う。
【0152】
96ウェルプレートを、未処理(Original)のウェル、LPS対照のウェル、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェル、及びサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェル、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに分け、ウェルごとに3回ずつ繰り返す。ヒト鼻粘膜の上皮細胞を各群のウェルにそれぞれ添加し、ウェルごとに同じ数の細胞を含有させ、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養する。
【0153】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去する。5μg/mLのLPSを含むDMEM培養液(2%FBS含有)でLPS対照のウェル、及び実験群のウェルにおける細胞をそれぞれ懸濁し、LPSを含まないDMEM培養液(2%FBS含有)で未処理のウェルにおける細胞を懸濁する。37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで1時間培養する。
【0154】
旧培養液(used medium、使用された培地)を除去し、以下のステップを実行する:
未処理(Original)のウェル:DMEM培養液(2%FBS含有)を添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0155】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0156】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0157】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0158】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0159】
サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、サイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液をサイズに分けない血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0160】
大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:大サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を大サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0161】
中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:中サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を中サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0162】
小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群:小サイズの血小板由来細胞外小胞の乾燥粉末を再溶解した後の霧化回収液とDMEM培養液(2%FBS含有)を混合(体積比1:19)し、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を調製する。そして、小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化培養液を小サイズの血小板由来細胞外小胞の凍結乾燥霧化群のウェルに添加し、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーターで24時間培養を続ける。
【0163】
各ウェルの細胞培養液をそれぞれ微量遠心管に移す。インターロイキン(IL-6は、炎症因子である)ELISAキット(Human IL-6 ELISA Kit)(品番:ab178013、ブランドAbcam)を利用して細胞培養液におけるヒトインターロイキン(Human IL-6)の濃度を検出する。さらにマルチモードマイクロプレート分光光度計(型番Varioskan LUXTM、ブランドThermo ScientificTM)を用いて分析を行い、吸光度を450nmに設定する。インターロイキン(IL-6)ELISAキットの製品説明書により吸光度と炎症因子IL-6の濃度の回帰曲線を確立し、吸光度を炎症因子IL-6の濃度に換算する。
【0164】
【0165】
【0166】
以上より、本発明は上記実施例に例示される結果により、以下の技術的効果を達成する:保存条件及び環境問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤による副作用の問題を改善する;侵襲的療法の問題を改善する;化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用上の制限及び規制の問題を改善する;生物学的製剤や細胞製剤の費用が高いという問題を改善することができる;及び細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤の生体耐性の問題を改善することができる。
【0167】
本発明が問題を解決できる手段、改良点は以下の通りである。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは、特殊な貯蔵条件を必要とし、本発明は特殊な保存条件及び環境を必要としない。化学合成された薬物、生物学的製剤の多くは合成であり、副作用の疑いがあり、本発明は細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、副作用がない。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の多くは侵襲的治療である;本発明は、吸入の方式で治療を行い、非侵襲的療法である。化学合成された薬物、生物学的製剤または細胞製剤の使用は容易ではなく、操作に失敗するリスクもあり、本発明の使用は簡便であり、操作に失敗する問題はない。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、大量生産することができ、コストを下げることになる。本発明は、細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤であり、生体耐性の問題がない。本発明は、他の細胞及び血液誘導体が産生する天然生物学的製剤と併用し、治療の効果を強化することができる。
【0168】
上記は単なる例示であり、制限的なものではない。本発明の精神と範囲を逸脱しておらず、それに対する同等のいかなる修正または変更は、後に添付される特許請求の範囲に含まれるべきである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】