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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014704
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】防水装置および防水装置の生産方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/06 20060101AFI20250123BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H02G9/06
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117473
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000123549
【氏名又は名称】化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間 篤
【テーマコード(参考)】
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
5G352CG01
5G369AA05
5G369BA04
5G369DC14
(57)【要約】
【課題】防水装置の生産における工数を削減することが可能な、防水装置および防水装置の生産方法を提供すること。
【解決手段】地下ケーブルC10が挿入される管路P10の管路口P11に栓をして封止する防水装置100であって、地下ケーブルC10の外周面C11を取り巻いた取巻状態で管路口P11に挿入されるとともに、充填材F10が充填口133から充填されることで管路口P11の径方向に膨張するパッキン101を備え、パッキン101は、弾性体110Eからなる本体110と、本体110の中にインサートされた中子135とを備えるインサート成形品であり、充填口133が、本体110と、中子135との間の境界部に連通されているものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下ケーブルが挿入される管路の管路口に栓をして封止する防水装置であって、
前記地下ケーブルの外周面を取り巻いた取巻状態で前記管路口に挿入されるとともに、充填材が充填口から充填されることで前記管路口の径方向に膨張するパッキンを備え、
前記パッキンは、弾性体からなる本体と、前記本体の中にインサートされた中子とを備えるインサート成形品であり、
前記充填口が、前記本体と、前記中子との間の境界部に連通されている、
防水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防水装置であって、
前記境界部には前記充填材が入り込む隙間が存在する、
防水装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の防水装置であって、
前記中子が前記充填材に対して化学的に安定で、かつ、外力に対してしなやかにたわむ性質を有する板である、
防水装置。
【請求項4】
請求項3に記載の防水装置であって、
前記本体が、
前記取巻状態において前記地下ケーブルの側を向くウラ面と、
前記取巻状態において前記地下ケーブルの側とは反対側を向くオモテ面とを有し、
前記板は、一方の板面が前記オモテ面に沿って広がり、かつ他方の板面が前記ウラ面に沿って広がった状態に配設される、
防水装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の防水装置であって、
前記パッキンは、前記本体の中にインサートされた支持体を備え、
前記支持体は、前記中子と係合して前記本体に対する前記中子の位置を規制する、
防水装置。
【請求項6】
請求項2に記載の防水装置であって、
前記本体が、
前記取巻状態において前記地下ケーブルの側を向くウラ面と、
前記取巻状態において前記地下ケーブルの側とは反対側を向くオモテ面とを有し、
前記隙間は、
前記中子に対して前記オモテ面の側となる外方側隙間と、
前記中子に対して前記ウラ面の側となる内方側隙間とを含み、
前記充填口は、前記外方側隙間と、前記内方側隙間との双方に連通されている、
防水装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の防水装置を生産する方法であって、
前記中子を前記弾性体でインサート成形することで前記パッキンを形成するステップを有する、
防水装置の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防水装置および防水装置の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電ケーブルや通信ケーブル等のケーブルを地下に配設する構造として、複数のハンドホール室の間を中空の管路で繋ぎ、この管路にケーブルを通した構造が知られている。ここで、管路は、地下への配設時やその他の地下工事の際に傷つくこともあり、そのときに生じる亀裂は地下水の管路内への浸入口となることがある。また、管路を繋げる継手の口であるエンドベルと、管路との間における隙間が地下水の管路内への浸入口となることもある。これらの場合、浸入した水が管路口を通ってハンドホール室内に入るおそれがある。これを防ぐため、管路においてハンドホール室に面する管路口には防水装置が取り付けられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、管路における管路口を密封するため、ケーブルと管路口の内周面との隙間に筒状の防水装置を嵌め込む技術が開示されている。ここで、防水装置は、ケーブルの外周側方から組付け可能なスリットを有するパッキン本体を備えている。そして、このパッキン本体には内部に中空室が設けられている。中空室に充填材が充填されると、パッキン本体の周壁が径方向に膨張されるため、管路口が密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-035421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、その中空室が設けられたパッキン本体を形成するために複数種類のゴム材を貼り合わせる必要がある。これに対し、防水装置用のパッキンを一体成形することで、防水装置の生産における工数を削減したいというニーズがあった。
【0006】
本開示は、防水装置の生産における工数を削減することが可能な、防水装置および防水装置の生産方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、第1の開示に係る防水装置は、地下ケーブルが挿入される管路の管路口に栓をして封止する防水装置であって、前記地下ケーブルの外周面を取り巻いた取巻状態で前記管路口に挿入されるとともに、充填材が充填口から充填されることで前記管路口の径方向に膨張するパッキンを備え、前記パッキンは、弾性体からなる本体と、前記本体の中にインサートされた中子とを備えるインサート成形品であり、前記充填口が、前記本体と、前記中子との間の境界部に連通されているものである。
【0008】
第1の開示に係る防水装置によれば、パッキンは、本体と中子との間にある境界部への充填材の充填により膨張することができる。これにより、防水装置の生産においてパッキンに中空構造を設ける必要をなくして、その分の工数を削減することが可能な防水装置を提供することができる。
【0009】
ここで、第1の開示に係る防水装置は、後述する第2の開示に係る防水装置であっても良い。第2の開示に係る防水装置において、前記境界部には前記充填材が入り込む隙間が存在するものである。
【0010】
第2の開示に係る防水装置によれば、境界部の隙間に充填材が入り込んだ際の圧力により、本体と、中子とが剥離され易くなり、もって本体と、中子との間に充填材を充填させ易くすることができる。
【0011】
ここで、第1の開示または第2の開示に係る防水装置は、後述する第3の開示に係る防水装置であっても良い。第3の開示に係る防水装置は、前記中子が前記充填材に対して化学的に安定で、かつ、外力に対してしなやかにたわむ性質を有する板であるものである。
【0012】
第3の開示に係る防水装置によれば、中子が充填材に対して化学的に変化しにくい。このため、中子や充填材の変質を抑えて防水装置を長期間使用することができる。
【0013】
ここで、第3の開示に係る防水装置は、後述する第4の開示に係る防水装置であっても良い。第4の開示に係る防水装置は、前記本体が、前記取巻状態において前記地下ケーブルの側を向くウラ面と、前記取巻状態において前記地下ケーブルの側とは反対側を向くオモテ面とを有し、前記板は、一方の板面が前記オモテ面に沿って広がり、かつ他方の板面が前記ウラ面に沿って広がった状態に配設されるものである。
【0014】
第4の開示に係る防水装置によれば、本体にインサートされた中子が撓むことで、パッキンを容易に取巻状態にすることができる。
【0015】
ここで、第1の開示または第2の開示に係る防水装置は、後述する第5の開示に係る防水装置であっても良い。第5の開示に係る防水装置において、前記パッキンは、前記本体の中にインサートされた支持体を備え、前記支持体は、前記中子と係合して前記本体に対する前記中子の位置を規制するものである。
【0016】
第5の開示に係る防水装置によれば、中子は支持体を介して本体に支持されるため、本体に対して位置ズレしにくくなる。
【0017】
ここで、第2の開示に係る防水装置は、後述する第6の開示に係る防水装置であっても良い。第6の開示に係る防水装置において、前記本体が、前記取巻状態において前記地下ケーブルの側を向くウラ面と、前記取巻状態において前記地下ケーブルの側とは反対側を向くオモテ面とを有し、前記隙間は、前記中子に対して前記オモテ面の側となる外方側隙間と、前記中子に対して前記ウラ面の側となる内方側隙間とを含み、前記充填口は、前記外方側隙間と、前記内方側隙間との双方に連通されているものである。
【0018】
第6の開示に係る防水装置によれば、充填材は、中子に対して管路口の径方向外方側となる外方側隙間と、中子に対して管路口の径方向内方側となる内方側隙間とに充填される。そうすると、パッキンは、中子に対して管路口の径方向の両側で膨張する。これにより、弾性体からなる本体は、オモテ面の側およびウラ面の側のそれぞれで限度まで変形することができる。従って、第6の開示に係る防水装置によれば、パッキン全体において、上記径方向の膨張の最大量をより大きくすることができる。
【0019】
次に、第7の開示は、第1の開示または第2の開示に係る防水装置を生産する方法であって、前記中子を前記弾性体でインサート成形することで前記パッキンを形成するステップを有するものである。
【0020】
第7の開示に係る防水装置の生産方法によれば、中子を弾性体でインサート成形することでパッキンを形成することができる。これにより、防水装置の生産における工数を削減することが可能な防水装置の生産方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示は上記各構成をもつことにより、防水装置の生産における工数を削減することが可能な、防水装置および防水装置の生産方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る防水装置100の斜視図である。
図2図1の防水装置100の正面図である。
図3図2のIII-III線断面矢視図である。
図4図2のIV-IV線断面矢視図である。
図5図3のV部拡大図である。
図6図3のVI-VI線断面矢視図である。
図7】パッキン101を形成するステップを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の第1の実施形態に係る防水装置100は、図1に示すように、3本の地下ケーブルC10が纏められた状態で挿入される管路P10の管路口P11に栓をして封止するものである。以下、図面を用いて本開示に係る防水装置100の詳細を管路P10および地下ケーブルC10とともに説明する。
【0024】
<管路の構成>
管路P10は、送電ケーブルや通信ケーブル等の地下ケーブルC10を地下に配設する場合に使用する地下ケーブル保護管P20である。ここで、地下ケーブル保護管P20は、中空の筒となる形状を呈するとともに、その筒の軸方向における両側の端部P21がそれぞれのハンドホール室(図示せず)に繋がっている。そして、管路P10の筒の形状については、内周面P12が、防水装置100に設けられるパッキン101の外周部分111に密接するものである。なお、管路P10には、地下配設用の素材(本実施形態では、例えばFRP等のプラスチック)が用いられる。
【0025】
<ケーブルの構成>
地下ケーブルC10は、図2および図6に示すように、3本存在する。そして、3本の地下ケーブルC10で囲まれるコア空間部G12には、3本の地下ケーブルC10のそれぞれに押圧されて変形し、かつ、粘着性を有する第二シール体102が密着している。ここで、3本の地下ケーブルC10のそれぞれは、図1および図3に示すように、管路P10における軸方向(図3参照)と平行に直線状に延びるように配設されている。しかしながら、3本の地下ケーブルC10は、互いに捩(ね)じられて、つるまき線をなすようにされた状態(図示せず)で配設されても良い。なお、本実施形態において第二シール体102は、吸水膨潤ゴム(例えば粘着性が大きいブチルゴム)により形成されている。
【0026】
<防水装置の構成>
防水装置100は、図1に示すように、管路P10の他方側(図3参照)となる管路口P11の内周面P12と、3本の地下ケーブルC10の外周面C11との空隙G10を封止する止水材として機能する。ここで、他方側とは、管路P10における軸方向(図3参照)の手前側となる側をいう。
【0027】
防水装置100は、パッキン101と、第一シール体101Bとを備えている。ここで、パッキン101は、3本の地下ケーブルC10の外周面C11を取り巻いた取巻状態で管路口P11に挿入される帯状の部材である。このパッキン101には、その帯における片側の側面に、充填材F10(図3参照)の充填口133が突設されている。本実施形態においては、パッキン101は、充填口133を手前側(図3参照)に向けた状態で、管路口P11に挿入される。この状態で充填材F10(図3参照)が充填口133から充填されると、パッキン101は、管路口P11の径方向に膨張する。また、第一シール体101Bは、図2および図6に示すように、パッキン101の内周部分112と、3本の地下ケーブルC10のそれぞれとの間を封止する。以下にパッキン101と、第一シール体101Bとを説明する。
【0028】
<パッキンの構成>
パッキン101は、図1に示すように、弾性体110Eからなる本体110に、中子135、充填口133、取手131および4本の支持体132を一体成形したインサート成形品である。ここで、中子135は、その全体が本体110に埋め込まれるインサートである。中子135と本体110との間の境界部120Aには、図5に示すように、充填材F10が入り込む隙間120Bが存在する。充填口133には、境界部120Aに向けて、流動性を有する充填材F10が注入される。この際、注入された充填材F10は、その圧力により隙間120Bを押し広げて充填空間120を形成し、この充填空間120に充填される。取手131は、図1に示すように、防水装置100を管路口P11に嵌め外す際、充填口133とともに略均等の把持力で把持されるものである。4本の支持体132は、図1に示すように、中子135と係合して本体110に対する中子135の位置を規制するものである。以下に本体110と、中子135と、充填口133と、充填材F10と、取手131と、支持体132とを説明する。
【0029】
<本体の構成>
本体110は、図2および図6に示すように、上記取巻状態において、3本の地下ケーブルC10の外周面C11を取り巻いた筒形状(例えば円筒形状)を呈する。また、本体110は、図3に示すように、その筒の軸方向が管路P10の軸方向と一致した状態で、管路口P11に嵌め込まれる。
【0030】
ここで、本体110の帯における2つの端縁部121は、図2および図6に示すように、上記取巻状態において互いに対向する。これにより、2つの端縁部121の間には、3本の地下ケーブルC10を本体110の筒の中に入れることを可能とするスリット121Bが設けられる。
【0031】
互いに対向する2つの端縁部121の対向面121Aには、押圧されて密着状態となる接合層103が設けられている。そして、端縁部121の外周側となる部分には、柔軟性および密着性を備えたシール材111E(図1参照)が配設されている。そのため、管路P10の管路口P11(図3参照)における内周面P12と、第一シール体101Bとの間で、取巻状態のパッキン101が周方向に膨張するとき、接合層103は押圧されて密着状態となる。同じく、シール材111Eも、管路P10の管路口P11における内周面P12に押圧されて密着状態となる。なお、接合層103の接着面には、吸水膨潤ゴム(本実施形態では、例えば押圧されて密着状態となる粘着性を有するブチルゴム)が用いられている。同じく、シール材111Eには、例えば、押圧されて密着状態となる粘着性を有するブチルゴムが用いられる。
【0032】
また、本体110における弾性体110Eは、中子135に対して離型性を備える構成である。すなわち、弾性体110Eは、充填口133(図2参照)から注入圧力を受けた際に中子135より変形し易かったり、中子135から剥離し易かったりする素材である。これにより、剥離された本体110の弾性体110Eと、中子135との隙間120B(図6参照)に充填材F10が充填され易くなる。なお、本実施形態において弾性体110Eには、例えば、硬度55°前後のクロロプレンゴムが用いられる。
【0033】
充填空間120は、図6に示すように、充填口133(図2参照)から注入圧力を受けた弾性体110Eが中子135から剥離して変形することで形成される空間である。そうすると、充填材F10は、弾性体110Eを押圧し、パッキン101を管路口P11の径方向および周方向に膨張させる。
【0034】
筒状の本体110には、図4および図5に示すように、外周側となる外周部分111の全周を取り巻くように形成された4つの溝111Dが当該本体110の筒の軸方向において等間隔に並んだ状態で設けられている。そのため、取巻状態のパッキン101は、充填材F10が充填口133(図4参照)から充填されることで、4つの溝111Dが管路口P11の内周面P12側に向かうように変形される。
【0035】
<中子の構成>
中子135は、本体110の中に覆い囲まれるように設けられる。このため、本体110と、中子135との間の境界部120Aにおいて、中子135から離れる向きの力が本体110の弾性体110Eに掛かると、パッキン101は膨張する。
【0036】
本実施形態においては、中子135は、充填材F10に対して化学的に安定で、かつ、外力に対して「しなやかにたわむ」性質(すなわち「可撓性」)を有する金属の板(例えば所定の厚みをもつステンレス製の矩形板)である。この板は、弾性体110Eに対して離型性を有する。
【0037】
また、板である中子135は、図4から図6に示すように、筒状の本体110において一方の板面がオモテ面110Cに沿って広がり、かつ他方の板面がウラ面110Dに沿って広がった状態に配設される。ここで、ウラ面110Dは、図6に示すように、取巻状態において本体110が有する、3本の地下ケーブルC10の側を向く面である。同じく、オモテ面110Cは、取巻状態において本体110が有する、3本の地下ケーブルC10の側とは反対側を向く面である。
【0038】
<充填口の構成>
充填口133は、図4に示すように、本体110と、中子135との間の境界部120Aに連通されているものである。本実施形態において、充填口133は、その一部が本体110にインサートされて設けられ、パッキン101の外部から、本体110と、中子135との間の境界部120Aに当たる部分に連通する注入バルブである。この注入バルブは、本体110から手前側(パッキン101が管路口P11に挿入された状態において管路P10の他方側となる側。図3参照)に突出される。
【0039】
本実施形態においては、充填口133は、上記手前側から見た(図2参照)ときに、スリット121Bに対して本体110の筒の周方向に略130°だけ時計回りに離れた場所に設けられる。また、充填口133の先端には、この充填口133を保護するバルブキャップ133Bが組付けられている。
【0040】
また、隙間120Bは、図4および図5に示すように、中子135に対してオモテ面110Cの側となる外方側隙間120Cと、中子135に対してウラ面110Dの側となる内方側隙間120Dとを含む。充填口133(図4参照)は、外方側隙間120Cと、内方側隙間120Dとの双方に連通されている。そのため、充填材F10は、中子135に対して管路口P11の径方向外方側となる外方側隙間120Cと、中子135に対して管路口P11の径方向内方側となる内方側隙間120Dとに充填される。そうすると、パッキン101は、中子135に対して管路口P11の径方向の両側で膨張する。
【0041】
<充填材の構成>
充填材F10は、図4に示すように、充填口133を通して境界部120Aの隙間120Bに充填するものである。本実施形態において充填材F10には、流動性を有するもの(例えばシリコン液)が用いられる。
【0042】
<取手の構成>
取手131は、上記手前側から見た(図2参照)ときに、スリット121Bに対して本体110の筒の周方向に略130°だけ反時計回りに離れた場所に設けられる。また、取手131は、本体110から、充填口133と同じ側(すなわち手前側。図3参照)に突出される。本実施形態において、取手131は、その外径が充填口133と略同じとなる金属製の円柱である。また、取手131は、図1に示すように、その本体110からの突出長さが、充填口133における本体110からの突出長さと略同じとなるように配設されている。また、取手131は、本体110の中に埋め込まれた状態の根元部分131Aが中子135の板のコバ面135Aを噛み込む構成となっている。
【0043】
<支持体の構成>
4本の支持体132は、2本が1組となって、各組が中子135の板をその幅方向両側(図5参照)から挟み込む。本実施形態においては、支持体132の組は、本体110の対向面121A(図2参照)のそれぞれに対して本体110の筒の周方向に略20°ずつ離れた場所(図2参照)に1組ずつ設けられる。また、各支持体132は、図5に示すように、本体110に埋め込まれた状態の根元部分132Aが、中子135のコバ面135Aを噛み込む構成となっている。この構成により、4本の支持体132は、中子135と係合して本体110に対する中子135の位置を規制する。なお、本実施形態において、支持体132は、金属製の円柱である。
【0044】
<第一シール体の構成>
第一シール体101Bは、図2および図6から見て、パッキン101の内周部分112と、3本の地下ケーブルC10のそれぞれとが丸に三つ星紋様を呈するように形成されて取り付けられている。そして、第一シール体101Bは、3本の地下ケーブルC10の外周面C11に密着する円弧状のシール面101Cを有するとともに、内周部分112の上に一体となって設けられている。さらに、第一シール体101Bは、この第一シール体101Bを周方向にて分割して互いに対向する面である接合面101Dの対と、これらの面が互いに接合する接合層103と、を有する。ここで、接合面101Dの対は、2本の地下ケーブルC10が互いに接する接触面C11Aから端縁部121まで広がるそれぞれの面を構成する。
【0045】
また、第一シール体101Bは、様々な形状のケーブルに密着可能で、かつ形状変更が容易な液状ゴム(本実施形態では、例えば、柔軟性および密着性を有するポリブタジエンゴム)から構成される。第一シール体101Bは、本体110の膨張による圧力を受けて適当に変形される。
【0046】
<パッキンの形成>
上述した第1の実施形態に係る防水装置100のパッキン101を形成する場合、図7に示すように、作業者(図示せず)は以下のステップを有する方法によって、中子135をインサート成形する。
【0047】
まず、作業者は、板である中子135に充填口133、取手131、および4本の支持体132を取り付ける取付工程を行う。
【0048】
次に、作業者は、充填口133、取手131、および、それぞれの支持体132が取り付けられた中子135(以下、「アッセンブリ」とも称する。)を金型(図示せず)に配置する配置工程を行う。ここで、金型としては、板状のキャビティーを有するものを使用する。また、配置工程においては、アッセンブリを、その中子135の全体が金型のキャビティーに収納された状態となるように配置する。
【0049】
次に、作業者は、金型の型締工程を行う。
【0050】
次に、作業者は、型締された金型のキャビティーに、弾性体110Eの原料を射出充填する射出工程を行う。
【0051】
次に、作業者は、金型を加熱することで、上記原料における加硫反応を進行させる加硫工程を行う。この加硫工程により、金型のキャビティー内において、上記原料が弾性体110Eとなり、パッキン101が成形される。
【0052】
次に、作業者は、金型を所定の温度になるまで冷却する冷却工程を行う。
【0053】
次に、作業者は、金型を型開きしてパッキン101を取り出す取出工程を行う。
【0054】
以上により、中子135が弾性体110Eでインサート成形されたパッキン101が生産される。このパッキン101は、その後、その本体110が上述した筒形状となるように屈曲される。
【0055】
<防水装置の組み付け>
上述した第1の実施形態に係る防水装置100を、管路口P11と、3本の地下ケーブルC10との間に組み付ける場合、作業者(図示せず)は以下の流れで組み付ける。
【0056】
まず、作業者は、図2に示すように、3本の地下ケーブルC10のコア空間部G12に第二シール体102を入れる。これにより、3本の地下ケーブルC10のそれぞれと、第二シール体102とが密着した状態となる。
【0057】
次に、作業者は、パッキン101のスリット121Bを拡開して、第二シール体102が密着した状態の3本の地下ケーブルC10をパッキン101の筒の中に挿入することで、パッキン101を取巻状態とする。この際、3本の地下ケーブルC10は、パッキン101と一体となった第一シール体101Bのシール面101Cに嵌め込まれる。そうすると、3本の地下ケーブルC10と、パッキン101とが密着する。
【0058】
次に、作業者は、図1および図3に示すように、防水装置100を管路口P11に嵌め込む。この作業においては、作業者は、防水装置100の充填口133と取手131とを略均等の把持力で把持したうえで、防水装置100を管路口P11に嵌め込む。この作業により、中子135は、充填口133および取手131を介して本体110に支持され、本体110に対して位置ズレしにくくなる。
【0059】
次に、作業者は、図3に示すように、充填口133のバルブキャップ133Bを外して充填材F10を充填する。ここで、充填口133の充填材F10は、境界部120Aの外方側隙間120Cおよび内方側隙間120Dに入り込み、本体110の弾性体110Eが中子135から離れるように圧力が掛けられる。そうすると、パッキン101は、中子135に対して管路口P11の径方向の両側で膨張する。これにより、弾性体110Eからなる本体110は、オモテ面110Cの側およびウラ面110Dの側のそれぞれで限度まで変形される。この際、第一シール体101Bは、パッキン101の膨張による圧力を受けて適当に変形する。そして、第一シール体101Bにおける接合面101Dの対は、適当に圧力を受けて密着する。また、パッキン101は、4つの溝111Dが管路口P11の内周面P12側に向かうように変形する。また、シール材111Eは、管路P10(図3参照)の管路口P11の内周面P12に密着する。
【0060】
充填材F10の充填が完了したら、作業者は、充填口133にバルブキャップ133Bを付け直す。以上により、管路口P11に対する防水装置100の組み付けが完了する。なお、パッキン101が膨張すると、図2および図6に示すように、第一シール体101Bの接合面101Dおよび端縁部121の対向面121Aが本体110に押圧される。
【0061】
<作用・効果>
上述した防水装置100によれば、パッキン101は、本体110と中子135との間にある境界部120Aへの充填材F10の充填により膨張することができる。これにより、防水装置100の生産においてパッキン101に中空構造を設ける必要をなくして、その分の工数を削減することが可能な防水装置100を提供することができる。
【0062】
上述した防水装置100によれば、パッキン101および第一シール体101Bは、3本の地下ケーブルC10と、管路口P11の内周面P12と、との間で栓をして封止することができる。
【0063】
上述した防水装置100によれば、境界部120Aの隙間120Bに充填材F10が入り込んだ際の圧力により、本体110と、中子135とが剥離され易くなり、もって本体110と、中子135との間に充填材F10を充填させ易くすることができる。
【0064】
上述した防水装置100によれば、中子135が充填材F10に対して化学的に変化しにくい。このため、中子135や充填材F10の変質を抑えて防水装置100を長期間使用することができる。
【0065】
上述した防水装置100によれば、本体110にインサートされた中子135が撓むことで、パッキン101を容易に取巻状態にすることができる。
【0066】
上述した防水装置100によれば、取手131と、充填口133とを略均等の把持力で把持することで、防水装置100を管路口P11により容易に嵌め外すことができる。
【0067】
上述した防水装置100によれば、取手131は、中子135と係合して本体110に対する中子135の位置を規制する。そうすると、中子135は、取手131を介して本体110に支持されるため、本体110に対して位置ズレしにくくなる。これにより、防水装置100を管路口P11に嵌め込む際、パッキン101における膨張箇所を所定の位置に規制することができる。
【0068】
上述した防水装置100によれば、中子135は支持体132を介して本体110に支持されるため、本体110に対して位置ズレしにくくなる。
【0069】
上述した防水装置100によれば、充填口133は、本体110と、中子135との間の境界部120Aに充填材F10を注入することで充填空間120を形成するとともに、この充填空間120を充填材F10で充填することができる。
【0070】
上述した防水装置100によれば、パッキン101の外部から充填材F10(図4参照)を注入してパッキン101を管路口P11の径方向に膨張させることができる。
【0071】
上述した防水装置100によれば、充填材F10は、中子135に対して管路口P11の径方向外方側となる外方側隙間120Cと、中子135に対して管路口P11の径方向内方側となる内方側隙間120Dとに充填される。そうすると、パッキン101は、中子135に対して管路口P11の径方向の両側で膨張する。これにより、弾性体110Eからなる本体110は、オモテ面110Cの側およびウラ面110Dの側のそれぞれで限度まで変形することができる。従って、上述した防水装置100によれば、パッキン101全体において、上記径方向の膨張の最大量をより大きくすることができる。
【0072】
上述した防水装置100によれば、取巻状態のパッキン101は、外周部分111の4つの溝111Dが管路口P11の内周面P12側に向かうように変形することにより、管路口P11の軸方向における応力の偏りを分散することができる。
【0073】
上述した防水装置100によれば、第一シール体101Bは、パッキン101の内周部分112と、3本の地下ケーブルC10のそれぞれとの間に密着して封止することができる。
【0074】
上述した防水装置100によれば、本体110が膨張するとき、接合面101Dの対は、取巻状態のパッキン101の周方向において端縁部121の変形度合いが小さくても、適当に圧力を受けることができる。
【0075】
上述した防水装置100によれば、径方向に膨張したパッキン101は管路口P11の内周面P12や第一シール体101Bを押圧して密着させ、同じく周方向に膨張したパッキン101は端縁部121の対向面121Aを押圧して密着させることができる。
【0076】
上述した防水装置100によれば、接合面101Dおよび対向面121Aは、接合層103により密着状態とすることができる。
【0077】
上述した防水装置100によれば、中子135を弾性体110Eでインサート成形することでパッキン101を形成することができる。これにより、防水装置100の生産における工数を削減することが可能な防水装置100の生産方法を提供することができる。
【0078】
本開示は、上記の各構成をもつことにより、防水装置100の生産における工数を削減することが可能な、防水装置100および防水装置100の生産方法を提供することができる。
【0079】
<他の実施形態>
以上、本発明を実施するための形態について、上述した実施形態によって説明した。しかしながら、当業者であれば、本発明の目的を逸脱することなく種々の代用、手直し、変更が可能であることは明らかである。すなわち、本発明の目的を実施するための形態は、本明細書に添付した請求の範囲の精神および目的を逸脱しない全ての代用、手直し、変更を含みうるものである。例えば、本発明を実施するための形態として、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0080】
本開示に係る防水装置であって、中子の表面には、本体の弾性体に対して離型性を備えた被膜が施されても良い。係る場合、中子に用いられる素材の選択の幅を広げることができる。
【0081】
本開示に係る防水装置であって、パッキンは、本体と、この本体の中にインサートされた、中子、充填口、および2本の支持体のみを備えたインサート成形品であっても良い。係る場合、中子は、充填口、および2本の支持体を介して本体に支持されることとなる。
【符号の説明】
【0082】
100 防水装置
101 パッキン
101B 第一シール体
101C シール面
101D 接合面
102 第二シール体
103 接合層
110 本体
110C オモテ面
110D ウラ面
110E 弾性体
111 外周部分
111D 溝
111E シール材
112 内周部分
120 充填空間
120A 境界部
120B 隙間
120C 外方側隙間
120D 内方側隙間
121 端縁部
121A 対向面
121B スリット
131 取手
131A 根元部分
132 支持体
132A 根元部分
133 充填口
133B バルブキャップ
135 中子
135A コバ面
C10 地下ケーブル
C11 外周面
C11A 接触面
F10 充填材
G10 空隙
G12 コア空間部
P10 管路
P11 管路口
P12 内周面
P20 地下ケーブル保護管
P21 端部
P22 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7