(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014711
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ウィービング動作の再生情報生成装置、溶接システム、およびウィービング動作の再生情報生成方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
B23K9/12 350D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117482
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】田辺 祥大
(57)【要約】
【課題】所定条件によるウィービング動作を溶接トーチに自動で再生させるための情報を、簡易な操作により高い精度で生成することが可能な、ウィービング動作の再生情報生成装置、溶接システム、およびウィービング動作の再生情報生成方法を提供する。
【解決手段】ウィービング動作の再生情報生成装置としてのエッジコンピュータ40は、動作情報取得部411と、再生情報生成部412とを備える。動作情報取得部411は、所定条件によるウィービング動作を実行しているときの溶接トーチの動作に関する情報を取得する。再生情報生成部412は、動作情報取得部411が取得した情報に基づいて、所定条件によるウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定条件によるウィービング動作を実行しているときの溶接トーチの動作に関する情報を取得する動作情報取得部と、
前記動作情報取得部が取得した情報に基づいて、前記所定条件によるウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する再生情報生成部と、を備えたウィービング動作の再生情報生成装置。
【請求項2】
前記動作情報取得部は、前記溶接トーチを制御する溶接制御装置による制御情報、または、前記溶接トーチの動作状況を計測するセンサによる計測情報を、前記溶接トーチの動作に関する情報として取得する、請求項1に記載のウィービング動作の再生情報生成装置。
【請求項3】
前記再生情報生成部が生成した再生情報を記憶する再生情報記憶部をさらに備え、
前記動作情報取得部は、前記溶接トーチの動作に関する情報として、異なる複数の時刻ごとの3次元空間内における前記溶接トーチの位置情報を取得し、
前記再生情報生成部は、取得した前記溶接トーチの位置情報を含めて前記再生情報を生成し、前記再生情報記憶部に記憶させる、請求項1に記載のウィービング動作の再生情報生成装置。
【請求項4】
前記動作情報取得部は、前記溶接トーチの動作に関する情報として、異なる複数の時刻ごとの3次元空間内における前記溶接トーチの位置情報を取得するとともに、それぞれの位置情報を計測した時刻情報を取得し、
前記再生情報生成部は、取得した各位置情報に対応する時刻情報を付加して、前記再生情報を生成し、前記再生情報記憶部に記憶させる、請求項3に記載のウィービング動作の再生情報生成装置。
【請求項5】
前記再生情報生成部は、前記再生情報として、前記動作情報取得部が取得した情報に基づいてウィービング動作に関するパラメータを生成する、請求項1に記載のウィービング動作の再生情報生成装置。
【請求項6】
前記再生情報生成部は、前記動作情報取得部が取得した1周期以上の振幅を含むウィービング動作の情報から振幅1周期分を切り出した情報、または、2周期以上の振幅を含むウィービング動作の情報から算出した振幅1周期分の情報を用いて、前記再生情報を生成する、請求項1に記載のウィービング動作の再生情報生成装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のウィービング動作の再生情報生成装置と、動作計測装置と、溶接制御装置とを備え、
前記動作計測装置は、
ユーザが行う振幅動作に対応して変位する機構と、
前記機構の変位内容を計測し、計測した計測情報を前記溶接制御装置に送信する動作計測部と、を有し、
前記溶接制御装置は、
前記溶接トーチに実行させるウィービング動作を、前記動作計測装置が計測した計測情報に基づいて実行させる手動ウィービング動作と、前記再生情報生成装置で生成される再生情報に基づいて実行させる自動ウィービング動作とで切り替える切替部を有し、
前記再生情報生成装置の動作情報取得部は、前記手動ウィービング動作を実行しているときの前記溶接トーチの動作に関する情報を取得し、
前記再生情報生成部は、前記動作情報取得部が取得した情報に基づいて、前記手動ウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する、溶接システム。
【請求項8】
前記動作計測装置の動作計測部は、前記計測情報を、前記溶接トーチに実行させる回転運動または並進運動を指示する情報として取得し、前記溶接制御装置に送信する、請求項7に記載の溶接システム。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の再生情報生成装置により、
所定条件によるウィービング動作を実行中の溶接トーチの動作に関する情報を取得し、
取得した情報に基づいて、前記所定条件によるウィービング動作を溶接トーチに再生させるための再生情報を生成する、ウィービング動作の再生情報生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウィービング動作の再生情報生成装置、溶接システム、およびウィービング動作の再生情報生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接作業の現場では、溶接ロボットまたは自走式の溶接台車を用いて溶接作業を行う場合がある。溶接ロボットまたは自走式の溶接台車を用いて溶接作業を行う際には、作業の動作に関する各種パラメータを事前に設定する。特許文献1によれば、操作者が自由にウィービングパターンを定義し、ウィービングパターンの任意の位置で溶接条件を変更することができるロボットシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接ロボット等に自動でウィービングを実行させる際には、ウィービングに関する多数のパラメータを設定する必要があるため、ウィービング経路の生成に時間がかかるという問題が発生する。このため、実務的には、ウィービングに関する多数のパラメータのうち、1つか2つ程度のごく一部の調整に専念して対応することが多く、精度の高い調整を行うことができない場合があるという問題があった。
【0005】
そこで本開示は、所定条件によるウィービング動作を溶接トーチに自動で再生させるための情報を、簡易な操作により高い精度で生成することが可能な、ウィービング動作の再生情報生成装置、溶接システム、およびウィービング動作の再生情報生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るウィービング動作の再生情報生成装置は、所定条件によるウィービング動作を実行しているときの溶接トーチの動作に関する情報を取得する動作情報取得部と、前記動作情報取得部が取得した情報に基づいて、前記所定条件によるウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する再生情報生成部と、を備える。
【0007】
前記動作情報取得部は、前記溶接トーチを制御する溶接制御装置による制御情報、または、前記溶接トーチの動作状況を計測するセンサによる計測情報を、前記溶接トーチの動作に関する情報として取得してもよい。
【0008】
前記再生情報生成部が生成した再生情報を記憶する再生情報記憶部をさらに備え、前記動作情報取得部は、前記溶接トーチの動作に関する情報として、異なる複数の時刻ごとの3次元空間内における前記溶接トーチの位置情報を取得し、前記再生情報生成部は、取得した前記溶接トーチの位置情報を含めて前記再生情報を生成し、前記再生情報記憶部に記憶させてもよい。
【0009】
前記動作情報取得部は、前記溶接トーチの動作に関する情報として、異なる複数の時刻ごとの3次元空間内における前記溶接トーチの位置情報を取得するとともに、それぞれの位置情報を計測した時刻情報を取得し、前記再生情報生成部は、取得した各位置情報に対応する時刻情報を付加して、前記再生情報を生成し、前記再生情報記憶部に記憶させてもよい。
【0010】
前記再生情報生成部は、前記再生情報として、前記動作情報取得部が取得した情報に基づいてウィービング動作に関するパラメータを生成してもよい。
【0011】
前記再生情報生成部は、前記動作情報取得部が取得した1周期以上の振幅を含むウィービング動作の情報から振幅1周期分を切り出した情報、または、2周期以上の振幅を含むウィービング動作の情報から算出した振幅1周期分の情報を用いて、前記再生情報を生成してもよい。
【0012】
本開示の一態様に係る溶接システムは、上記いずれかのウィービング動作の再生情報生成装置と、動作計測装置と、溶接制御装置とを備え、前記動作計測装置は、ユーザが行う振幅動作に対応して変位する機構と、前記機構の変位内容を計測し、計測した計測情報を前記溶接制御装置に送信する動作計測部と、を有し、前記溶接制御装置は、前記溶接トーチに実行させるウィービング動作を、前記動作計測装置が計測した計測情報に基づいて実行させる手動ウィービング動作と、前記再生情報生成装置で生成される再生情報に基づいて実行させる自動ウィービング動作とで切り替える切替部を有し、前記再生情報生成装置の動作情報取得部は、前記手動ウィービング動作を実行しているときの前記溶接トーチの動作に関する情報を取得し、前記再生情報生成部は、前記動作情報取得部が取得した情報に基づいて、前記手動ウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する。
【0013】
前記動作計測装置の動作計測部は、前記計測情報を、前記溶接トーチに実行させる回転運動または並進運動を指示する情報として取得し、前記溶接制御装置に送信してもよい。
【0014】
本開示の一態様に係るウィービング動作の再生情報生成方法は、上述の再生情報生成装置が、所定条件によるウィービング動作を実行中の溶接トーチの動作に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記所定条件によるウィービング動作を溶接トーチに再生させるための再生情報を生成する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、所定条件によるウィービング動作を溶接トーチに自動で再生させるための情報を、簡易な操作により高い精度で生成することが可能な、ウィービング動作の再生情報生成装置、溶接システム、およびウィービング動作の再生情報生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る溶接システムの構成を示すブロック図である。
【
図2A】一実施形態に係る溶接システムにおいて、ウィービング動作に関する再生情報を生成する際の処理を示すシーケンス図である。
【
図2B】一実施形態に係る溶接システムにおいて、生成された再生情報に基づいて溶接トーチに自動ウィービング動作を実行させる処理、およびウィービング動作の内容を調整する処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、溶接作業のウィービング動作を再生させるための再生情報を生成するウィービング動作の再生情報生成装置、ウィービング動作の再生情報生成方法、および、生成した再生情報に基づいて溶接トーチに自動でウィービング動作を実行させる溶接システムの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ウィービングとは、トーチを溶接進行方向に対してほぼ直角である左右方向を主として振幅動作させながら溶接する手法である。
【0018】
ウィービング動作に関するパラメータとして、A 溶接トーチの並進または回転による振幅運動で実行されるウィービングの幅、B ウィービングの速度、C ウィービング基準の中央位置、D 左右の止端における停止時間、E ウィービング中央の停止時間、F ウィービング中に溶接速度を0にするか否か、G 止端停止中の溶接速度を0にするか否か、などが挙げられる。
【0019】
また、ウィービング動作に関するパラメータとして、H 溶接速度方向のウィービングパラメータである幅、速度、中央位置、止端停止時間、中央停止時間、I 溶接トーチ軸方向または被溶接材表面に垂直な方向のウィービングパラメータである幅、速度、中央位置、止端停止時間、中央停止時間、J 溶接トーチ軸まわりの回転角度等も挙げられる。パラメータJは、溶接トーチに溶接材料送給機構などが取り付けられている場合に有効なパラメータである。
【0020】
〈一実施形態による溶接システムの構成〉
図1は、一実施形態に係る溶接システム1の構成を示すブロック図である。溶接システム1は、動作計測装置としてのコントローラ10と、溶接制御装置としてのマニピュレータ20と、溶接トーチ30と、ウィービング動作の再生情報生成装置としてのエッジコンピュータ40とを備える。
【0021】
コントローラ10は、操作部11と、同期ボタン12と、切替スイッチ13と、第1CPU14とを有する。
【0022】
操作部11は、ユーザが加える変位または力に応じて所定方向に所定量、変位する機構、例えばスティック型、ダイヤル型、ボール型、ボタン型、またはモーションセンサ型の機構で構成される。
【0023】
同期ボタン12は、ユーザが操作部11を用いて行った振幅動作に同期した動作である手動ウィービング動作を、溶接トーチ30に実行させるように切り替えるための操作ボタンである。
【0024】
切替スイッチ13は、例えばトグルスイッチで構成され、マニピュレータ20の動作モードを、再生モードと、生成モードと、標準モードとで切り替える操作スイッチである。
【0025】
再生モードは、溶接トーチ30に、所定の再生情報に従って自動でウィービング動作を実行させるモードである。再生情報の詳細については、後述する。以降、再生モードで溶接トーチ30に実行させるウィービング動作を、自動ウィービング動作と称する。
【0026】
生成モードは、自動ウィービング動作で用いる再生情報を生成するモードである。標準モードは、自動ウィービング動作の実行および再生情報の生成のいずれも実行しない、ニュートラルな状態を保つモードである。
【0027】
第1CPU14(制御部または処理部の一例)は、演算装置、メモリ、及び入出力部を備える汎用のコンピュータである。第1CPU14には、コントローラ10の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(信号入力用プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、第1CPU14は、コントローラ10が備える複数の情報処理回路(141、142)として機能する。
【0028】
その他、信号入力用プログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体である。信号入力用プログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【0029】
なお、以下では、ソフトウェアによってコントローラ10が備える複数の情報処理回路(141、142)を実現する例を示す。ただし、以下に示す情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(141、142)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(141、142)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0030】
第1CPU14は、動作計測部141と、操作情報取得部142とを有する。動作計測部141は、ユーザが操作部11を用いて振幅動作を行ったときに、この振幅動作による操作部11の変位内容を、ユーザの振幅動作内容として計測する。動作計測部141は、この振幅動作内容を、溶接トーチ30に実行させるロール、ピッチ、ヨーの3軸の回転運動、または前方、側方、鉛直方向の3方向の並進運動を指示する情報として取得する。
【0031】
操作情報取得部142は、動作計測部141による計測情報、同期ボタン12の操作情報、切替スイッチ13の操作情報を取得する。操作情報取得部142は、同期ボタン12が操作されているときには、切替スイッチ13の操作状況に関わらず、動作計測部141による計測情報をマニピュレータ20に送信する。
【0032】
また操作情報取得部142は、同期ボタン12が操作されておらず、切替スイッチ13が再生モードの位置に操作されたことを認識すると、再生モード切替指示を生成し、マニピュレータ20に送信する。
【0033】
また操作情報取得部142は、同期ボタン12が操作されておらず、切替スイッチ13が標準モードの位置に操作されたことを認識すると、標準モード切替指示を生成し、マニピュレータ20に送信する。
【0034】
また操作情報取得部142は、同期ボタン12が操作されている状態で切替スイッチ13が生成モードの位置に操作されたことを認識すると、生成モード切替指示を生成し、マニピュレータ20に送信する。
【0035】
マニピュレータ20は、コントローラ10に有線または無線で通信可能に接続され、停止ボタン21と、第2CPU22とを有する。停止ボタン21は、溶接トーチ30の動作停止を指示するための操作ボタンである。
【0036】
第2CPU22(制御部または処理部の一例)は、演算装置、メモリ、及び入出力部を備える汎用のコンピュータである。第2CPU22には、マニピュレータ20の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(トーチ制御用プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、第2CPU22は、マニピュレータ20が備える複数の情報処理回路(221、222、223)として機能する。
【0037】
その他、トーチ制御用プログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体である。トーチ制御用プログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【0038】
なお、以下では、ソフトウェアによってマニピュレータ20が備える複数の情報処理回路(221、222、223)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(221、222、223)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(221、222、223)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0039】
第2CPU22は、再生情報取得部221と、切替部222と、トーチ制御部223とを有する。再生情報取得部221は、後述するようにエッジコンピュータ40に記憶されるウィービング動作に関する再生情報を取得する。
【0040】
切替部222は、溶接トーチ30に実行させるウィービング動作を、コントローラ10が計測した計測情報に基づいて実行させる手動ウィービング動作と、再生モード下で、エッジコンピュータ40が生成する再生情報に基づいて実行させる自動ウィービング動作とで切り替える。
【0041】
具体的には、切替部222は、コントローラ10から取得する情報に基づいて動作モードを切り替え、切り替え後の動作モードに応じてトーチ制御部223に送出する情報を切り替える。例えば、切替部222は、コントローラ10から動作計測部141による計測情報を取得したときには、動作モードに関わらず、この計測情報をトーチ制御部223に送出する。
【0042】
また切替部222は、コントローラ10から再生モード切替指示を取得したときには再生モードに切り替え、再生情報取得部221を介してエッジコンピュータ40から再生情報を取得し、トーチ制御部223に送出する。
【0043】
また切替部222は、コントローラ10から標準モード切替指示を取得したときには標準モードに切り替え、トーチ制御部223には、いずれの情報も送出しない。
【0044】
また切替部222は、コントローラ10から生成モード切替指示を取得したときには生成モードに切り替え、制御情報をエッジコンピュータ40に送信することを指示する制御情報送信指示を生成し、トーチ制御部223に送出する。
【0045】
トーチ制御部223は、切替部222を介して取得する情報に基づいて、溶接トーチ30を制御する。具体的には、トーチ制御部223は、切替部222を介して動作計測部141による計測情報を取得したときには、取得した情報に基づいて溶接トーチ30に手動ウィービング動作を実行させる。
【0046】
またトーチ制御部223は、切替部222を介してエッジコンピュータ40から取得する再生情報を取得したときには、取得した情報に基づいて溶接トーチ30に自動ウィービング動作を実行させる。
【0047】
またトーチ制御部223は、溶接トーチ30に手動ウィービング動作を実行させているときに、コントローラ10から制御情報送信指示を取得すると、手動ウィービング動作実行中の溶接トーチ30の制御情報をエッジコンピュータ40に送信する。
【0048】
溶接トーチ30は、マニピュレータ20の制御により、ウィービングを含む溶接動作を行う。
【0049】
エッジコンピュータ40は、第3CPU41と、再生情報記憶部42とを有する。第3CPU41(制御部または処理部の一例)は、演算装置、メモリ、及び入出力部を備える汎用のコンピュータである。第3CPU41には、エッジコンピュータ40の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(再生情報生成用プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、第3CPU41は、エッジコンピュータ40が備える複数の情報処理回路(411、412)として機能する。
【0050】
その他、再生情報生成用プログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体である。再生情報生成用プログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【0051】
なお、以下では、ソフトウェアによってエッジコンピュータ40が備える複数の情報処理回路(411、412)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(411、412)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(411、412)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0052】
第3CPU41は、動作情報取得部411と、再生情報生成部412とを有する。動作情報取得部411は、溶接トーチ30が所定条件によるウィービング動作、例えば手動ウィービング動作を実行しているときに、マニピュレータ20のトーチ制御部223から送信された溶接トーチ30の制御情報を取得する。ここで所定条件とは、例えば所定のウィービングの幅、速度、ウィービング基準の中央位置、左右の止端における停止時間、ウィービング中央の停止時間等である。再生情報生成部412は、動作情報取得部411が取得した制御情報に基づいて、実行中の手動ウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する。再生情報記憶部42は、再生情報生成部412が生成した再生情報を記憶する。
【0053】
〈一実施形態による溶接システムの動作〉
図2Aは、本実施形態による溶接システム1において、ウィービング動作に関する再生情報を生成する際の処理を示すシーケンス図である。
【0054】
まず、ユーザが、同期ボタン12を操作していない状態で切替スイッチ13を標準モードの位置に操作すると、操作情報取得部142が、標準モード切替指示を生成してマニピュレータ20に送信する(S1)。マニピュレータ20では、コントローラ10から送信された標準モード切替指示を切替部222が取得し、動作モードを標準モードに設定する(S2)。
【0055】
切替部222は、動作モードを標準モードに設定したときには、トーチ制御部223に溶接トーチ30に対する手動ウィービング動作も自動ウィービング動作も実行させない。
【0056】
ユーザが、同期ボタン12を操作しつつ、操作部11を振幅させる動作を行うと、動作計測部141が、この振幅動作内容として、操作部11内の所定箇所に関する変位内容を計測する。この操作部11の変位内容は、例えば変位方向、変位速度、および変位量である。動作計測部141が計測した操作部11の変位内容は、溶接トーチ30に実行させるロール、ピッチ、ヨーの3軸の回転運動または前方、側方、鉛直方向の3方向の並進運動を指示するための情報である。ユーザは、以降の再生情報の生成処理を実行する間、同期ボタン12を操作し続ける。
【0057】
操作情報取得部142は、同期ボタン12の操作中に動作計測部141が計測した振幅動作内容を取得し、マニピュレータ20に送信する(S3)。マニピュレータ20では、コントローラ10から送信された動作計測部141による計測情報を切替部222が取得する。切替部222は、動作計測部141による計測情報を取得すると、トーチ制御部223に送出する。
【0058】
トーチ制御部223は、切替部222を介して動作計測部141による計測情報を取得すると、取得した計測情報に基づいて手動ウィービング動作を実行させるように溶接トーチ30を制御する(S4)。
【0059】
具体的には、トーチ制御部223は、動作計測部141が計測した、操作部11の変位内容に追従するように、溶接トーチ30を動作させる。このように溶接トーチ30を制御することで、トーチ制御部223は、ユーザが行った振幅動作に同期させるように溶接トーチ30に手動ウィービングを実行させることができる。
【0060】
溶接トーチ30に対する手動ウィービング動作の実行中に、ユーザは溶接トーチ30の動作状況を確認しながら、適宜、振幅動作による操作部11の変位方向、変位速度、および変位量等を手動で調整する。つまりユーザは、溶接トーチ30に所定条件、例えば所定の幅および速度で所定方向のウィービング動作を実行させるように、操作部11を変位させる。ユーザが、溶接トーチ30により所望のウィービング動作が実行されている状態になったと判断すると、振幅動作を継続しながら切替スイッチ13を生成モードの位置に操作する。
【0061】
操作情報取得部142は、切替スイッチ13が生成モードの位置に操作されたことを検知すると、生成モード切替指示を生成し、マニピュレータ20に送信する(S5)。マニピュレータ20では、コントローラ10から送信された生成モード切替指示を切替部222が取得し、動作モードを生成モードに切り替える。
【0062】
切替部222は、動作モードを生成モードに切り替えると、制御情報をエッジコンピュータ40に送信することを指示する制御情報送信指示を生成し、トーチ制御部223に送出する。トーチ制御部223は、制御情報送信指示を取得すると、手動ウィービング動作実行中の溶接トーチ30の制御情報をエッジコンピュータ40に送信開始する(S6)。エッジコンピュータ40では、マニピュレータ20から順次送信される溶接トーチ30の制御情報を、動作情報取得部411が取得する。動作情報取得部411は、溶接トーチ30の制御情報から、3次元空間内における溶接トーチ30の位置情報を、計測した時刻情報とともに順次取得する。この溶接トーチ30の位置情報は、例えば溶接トーチ30の先端の位置情報である。溶接トーチ30の位置情報は、具体的には3次元空間内における座標である。
【0063】
ユーザは、切替スイッチ13を生成モードの位置に操作した後、溶接トーチ30のウィービング動作が所定周期実行されると、切替スイッチ13を標準モードの位置に戻し、同期ボタン12の操作を終了し、操作部11を振幅させる動作を終了する。
【0064】
操作情報取得部142は、切替スイッチ13が標準モードの位置に操作されたことを検知すると、標準モード切替指示を生成し、マニピュレータ20に送信する(S7)。また操作情報取得部142は、ユーザが同期ボタン12の操作を終了し、操作部11を振幅させる動作を終了したことを検知すると、マニピュレータ20への動作計測部141による計測情報の送信を終了する。マニピュレータ20では、コントローラ10から送信された標準モード切替指示を切替部222が取得し、動作モードを標準モードに切り替える。
【0065】
切替部222は、動作モードを生成モードに切り替えると、エッジコンピュータ40への制御情報の送信を終了することを指示する送信終了指示を生成し、トーチ制御部223に送出する。トーチ制御部223は、送信終了指示を取得すると、エッジコンピュータ40への溶接トーチ30の制御情報の送信を終了する。またトーチ制御部223は、動作計測部141による計測情報が取得されなくなったことにより、溶接トーチ30による手動ウィービング動作を停止させる(S8)。
【0066】
エッジコンピュータ40の再生情報生成部412は、動作情報取得部411が取得した情報に基づいて、手動ウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する。
【0067】
一例として、動作情報取得部411が、溶接トーチ30の手動ウィービング動作における振幅の左右方向両端の止端停止時間を含む、1周期以上のウィービング動作の制御情報を取得した場合に、再生情報生成部412が生成する再生情報について説明する。1周期とは、溶接トーチ30のウィービング動作において、溶接トーチ30の先端が所定位置から振幅の左右方向両端それぞれを1回ずつ経由して再度この所定位置に戻るまでの期間を指す。
【0068】
この場合、再生情報生成部412は、取得した1周期以上のウィービング動作の制御情報から、溶接トーチ30のウィービング動作における振幅の左右方向両端の止端停止時間と、両端間の移動動作の情報とを含めて振幅1周期分切り出す。再生情報生成部412は、切り出した情報を繰り返すウィービングループの情報を再生情報として生成する。再生情報生成部412は、1周期以上のウィービング動作の制御情報から切り出した振幅1周期分の制御情報を用いることで、少ない処理負荷でウィービングループの再生情報を生成することができる。
【0069】
また他の例として、動作情報取得部411が、溶接トーチ30のウィービング動作における振幅の左右方向両端の止端停止時間を含む、2周期以上のウィービング動作の制御情報を取得した場合に、再生情報生成部412が生成する再生情報について説明する。
【0070】
この場合、再生情報生成部412は、取得した2周期以上のウィービング動作の制御情報から、左右方向両端の止端停止時間の平均値と、両端間の移動に関する振幅1周期分の平均的な軌跡の情報とを算出する。再生情報生成部412は、算出した情報を足し合わせた振幅1周期分のウィービング動作の情報を生成し、生成した動作の情報を繰り返すウィービングループの情報を、再生情報として生成する。再生情報生成部412は、2周期以上のウィービング動作の制御情報から算出した振幅1周期分の制御情報を用いることで、高い精度でユーザの意向に合った再生情報を生成することができる。
【0071】
再生情報生成部412は、取得したウィービング動作の制御情報から、異なる複数の時刻ごと、例えば所定時間ごとの3次元空間内における溶接トーチ30の位置情報を取得し、各位置情報に対応する時刻情報を付加して再生情報に含める。
【0072】
このように溶接トーチ30の制御情報に基づいて、時刻情報を含めて再生情報を生成することで、直前に実行された手動ウィービング動作に対応した精度の高い再生情報を生成することができる。
【0073】
再生情報生成部412は、生成した再生情報を、再生情報記憶部42に記憶させる。生成した再生情報を記憶させることで、以降に実行する自動ウィービング動作でこの再生情報を用いることができる。
【0074】
図2Bは、本実施形態による溶接システム1において、生成された再生情報に基づいて溶接トーチ30に自動ウィービング動作を実行させる処理、およびウィービング動作の内容を調整する処理を示すシーケンス図である。
【0075】
ユーザが切替スイッチ13を再生モードの位置に操作すると、操作情報取得部142は、切替スイッチ13が再生モード切替指示を生成し、マニピュレータ20に送信する(S10)。マニピュレータ20では、コントローラ10から送信された再生モード切替指示を切替部222が取得し、動作モードを再生モードに切り替える。
【0076】
切替部222は、動作モードを再生モードに切り替えると、再生情報取得部221を介してエッジコンピュータ40の再生情報記憶部42から再生情報を取得し、取得した再生情報をトーチ制御部223に送出する。
【0077】
トーチ制御部223は、切替部222を介して再生情報を取得すると、取得した再生情報に基づいて溶接トーチ30に自動ウィービング動作を実行させる(S11)。自動ウィービング動作の実行中に、ユーザがウィービング動作を緊急停止させたいときには、停止ボタン21を操作する。トーチ制御部223は、停止ボタン21が操作されると、自動ウィービング動作を停止させる。
【0078】
自動ウィービング動作の実行中に、ユーザがウィービング動作状態を調整する必要があると判断すると、再度、同期ボタン12を操作しつつ、操作部11を振幅させる動作を行う。操作情報取得部142は、同期ボタン12の操作中に動作計測部141が計測した振幅動作に関する計測情報を取得すると、取得した計測情報をマニピュレータ20に送信する(S12)。
【0079】
マニピュレータ20では、コントローラ10から送信された動作計測部141による計測情報を切替部222が取得する。切替部222は、動作計測部141による計測情報を取得すると、動作モードに関わらず、取得した計測情報をトーチ制御部223に送出する。
【0080】
トーチ制御部223は、切替部222を介して動作計測部141による計測情報を取得したときには、自動ウィービング動作を停止させ、取得した計測情報に基づいて溶接トーチ30に手動ウィービング動作を実行させるように切り替える(S13)。
【0081】
以降、コントローラ10、マニピュレータ20、およびエッジコンピュータ40で実行されるステップS14~S18の処理は、上述したステップS5~S9の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。ステップS14~S18の処理が実行されることにより、ユーザが手動で調整した新たなウィービング動作に対応する再生情報が生成され記憶される。
【0082】
ステップS18において再生情報が生成され記憶されると、処理対象のウィービング動作による作業が終了するまで、適宜ステップS10~S18の処理が繰り返される。
【0083】
以上の実施形態によれば、ユーザの所望の条件によるウィービング動作を溶接トーチに自動で再生させるための再生情報を簡易な操作により高い精度で生成することができる。また、生成した再生情報を用いて溶接トーチに自動ウィービング動作を実行させているときに、ユーザがウィービング動作状態の調整が必要と判断すると、簡易な操作により高い精度で調整を行って新たな再生情報を生成することができる。
【0084】
上述した実施形態において、溶接システム1のマニピュレータ20は、溶接トーチ30に実行させるウィービング動作を、コントローラ10が計測した計測情報に基づいて実行させる手動ウィービング動作と、エッジコンピュータ40で生成される再生情報に基づいて実行させる自動ウィービング動作とで切り替える切替部222を有している。また、エッジコンピュータ40の動作情報取得部411は、手動ウィービング動作を実行しているときの溶接トーチ30の動作に関する情報を取得し、再生情報生成部412は、動作情報取得部411が取得した情報に基づいて、手動ウィービング動作に対応するウィービング動作を再生させるための再生情報を生成する。このように溶接システム1を構成することで、簡易な操作で、ユーザが直感的に行った振幅動作に対応したウィービング動作の再生情報を生成し、生成した再生情報によるウィービング動作を溶接トーチ30に自動で実行させることができる。
【0085】
また、溶接システム1のコントローラ10の動作計測部141は、ユーザが行った振幅動作に対する計測情報を、溶接トーチ30に実行させる回転運動または並進運動を指示する情報として取得し、マニピュレータ20に送信する。このように動作計測部141が処理を行うことにより、ユーザが直感的に行った振幅動作に対応するウィービング動作を溶接トーチ30に実行させるための指示情報を、精度良く取得してマニピュレータ20に提供することができる。
【0086】
上述した実施形態において、コントローラ10の操作部11を、コントローラ10が傾いたときに、この傾きの方向および角度を検知する加速度センサを用いて構成してもよい。この場合、動作計測部141は、加速度センサで計測された所定時間間隔ごとの3次元空間内におけるコントローラ10のロール、ピッチ、ヨーの3軸の回転運動、または前方、側方、鉛直の3方向の並進運動の内容を、操作部11の変位内容として計測する。また、コントローラ10の傾きの方向および角度を検知する操作部11を、エンコーダ、地磁気センサ、またはジャイロセンサを用いて構成してもよい。
【0087】
また上述した実施形態において、エッジコンピュータ40の再生情報生成部412は、異なる複数の時刻ごとの溶接トーチ30の位置情報およびこれらの位置情報を計測した時刻情報に基づいてウィービングの幅、速度、ウィービング基準の中央位置、左右の止端における停止時間、ウィービング中央の停止時間等を算出し、これらを含むウィービングに関する各種パラメータを生成してもよい。このように再生情報として各種パラメータを生成することにより、マニピュレータ20が再生情報を用いて溶接トーチ30に自動ウィービング動作を実行させる際の処理負荷を軽減できる場合がある。
【0088】
また上述した実施形態において、溶接トーチ30の動作状況を計測する動作計測センサ(図示せず)を設置し、エッジコンピュータ40の動作情報取得部411が、トーチ制御部223の制御情報に替えて、動作計測センサの計測情報を取得してもよい。この場合、動作情報計測センサは、溶接トーチ30の回転運動または並進運動による溶接トーチ30の位置情報および対応する時刻情報を順次取得し、エッジコンピュータ40に送信する。エッジコンピュータ40の再生情報生成部412は、動作情報取得部411が取得した情報に基づいて再生情報を生成し、再生情報記憶部42に記憶させる。このように構成することにより、手動ウィービング動作時の実際の溶接トーチ30の動きに応じた再生情報を生成することができる。
【0089】
また上述した実施形態では、エッジコンピュータの再生情報生成部412が、取得したウィービング動作の制御情報から、異なる複数の時刻ごとの溶接トーチ30の位置情報を取得し、各位置情報を計測した時刻情報を付加して再生情報に含める場合について説明した。しかしこれには限定されず、例えばウィービングの速度等の時刻に関連する条件を固定とする場合には、時刻情報を付加せずに異なる複数の時刻ごとの溶接トーチ30の位置情報のみを再生情報に含めてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。上記の実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 溶接システム
10 コントローラ
11 操作部
12 同期ボタン
13 切替スイッチ
14 第1CPU
20 マニピュレータ
21 停止ボタン
22 第2CPU
30 溶接トーチ
40 エッジコンピュータ
41 第3CPU
42 再生情報記憶部
141 動作計測部
142 操作情報取得部
221 再生情報取得部
222 切替部
223 トーチ制御部
411 動作情報取得部
412 再生情報生成部