(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014715
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250123BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B32B27/00 E
E04F15/02 A
E04F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117493
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA33
2E220AA45
2E220BB02
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(57)【要約】
【課題】優れた意匠性及び防滑性を発現できる化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】絵柄層12の絵柄の第一の絵柄部と平面視で重なる透明樹脂層13の第一領域Aにおいて、凸部10aが平面視で正方形状をなしてランダムに配列されると共に、絵柄層12の絵柄の第一の絵柄部と異なる第二の絵柄部と平面視で重なる透明樹脂層13の第二領域Bにおいて、凸部10bが平面視で十字形状をなして規則的に配列され、さらに、透明樹脂層13に形成されている凸部10a,10bに対して、第二領域Bにおいて平面視で十字形状をなして規則的に配列されている凸部10bの占める面積割合が、10%以上50%以下である化粧シート10とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層上に設けられた絵柄層と、
前記絵柄層上に設けられた透明樹脂層と
を備え、
前記透明樹脂層に凸部及び凹部の少なくとも一方からなる立体部が形成された化粧シートであって、
前記透明樹脂層に形成されている前記立体部は、前記絵柄層の絵柄の第一の絵柄部と平面視で重なる第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されると共に、前記絵柄層の前記第一の絵柄部と異なる前記絵柄の第二の絵柄部と平面視で重なる第二の領域において平面視で十字形状をなして規則的に配列され、
さらに、前記透明樹脂層に形成されている前記立体部に対して、前記第二の領域において平面視で十字形状をなして規則的に配列されている前記立体部が占める面積割合は、10%以上50%以下である
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記面積割合は、30%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されている前記立体部は、外径が25μm以上60μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されている前記立体部は、1mm2当たり70個以上160個以下の範囲内で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されている前記立体部は、乱数計算によって算出された情報に基づいて形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記透明樹脂層上に表面保護層が設けられ、
前記表面保護層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のうちの少なくとも1種を含有するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧シートと、
前記化粧シートを表面に貼り付けられた基板と
を有することを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅やマンションやアパート等の床材の表面を化粧する化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅やマンションやアパート等の床材には、表面に凹凸形状を形成した化粧シートを木質合板等の基材に貼り付けることにより、滑り難くして転倒等を抑制する防滑性能を発現できるようにした化粧材が広く利用されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-135482号公報
【特許文献2】特開2013-217066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような化粧シートにおいては、天然木材の木目や導管を模倣した意匠が印刷されていても、表面に形成された凹凸形状によって、天然木材の絵柄としての意匠性が低下してしまっていた。
【0005】
このようなことから、本発明は、優れた意匠性及び防滑性を発現できる化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧シートは、基材層と、前記基材層上に設けられた絵柄層と、前記絵柄層上に設けられた透明樹脂層とを備え、前記透明樹脂層に凸部及び凹部の少なくとも一方からなる立体部が形成された化粧シートであって、前記透明樹脂層に形成されている前記立体部が、前記絵柄層の絵柄の第一の絵柄部と平面視で重なる第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されると共に、前記絵柄層の前記第一の絵柄部と異なる前記絵柄の第二の絵柄部と平面視で重なる第二の領域において平面視で十字形状をなして規則的に配列され、さらに、前記透明樹脂層に形成されている前記立体部に対して、前記第二の領域において平面視で十字形状をなして規則的に配列されている前記立体部が占める面積割合が、10%以上50%以下であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記面積割合が、30%以下であると好ましい。
【0008】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されている前記立体部が、外径25μm以上60μm以下であると好ましい。
【0009】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されている前記立体部が、1mm2当たり70個以上160個以下の範囲内で形成されていると好ましい。
【0010】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第一の領域において平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されている前記立体部が、乱数計算によって算出された情報に基づいて形成されていると好ましい。
【0011】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記透明樹脂層上に表面保護層が設けられ、前記表面保護層が、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のうちの少なくとも1種を含有するものであると好ましい。
【0012】
他方、前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧材は、上述した本発明に係る化粧シートと、前記化粧シートを表面に貼り付けられた基材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る化粧シート及び化粧材によれば、第一の領域の立体部が平面視で円形状又は多角形状をなしてランダムに配列されると共に、第二の領域の立体部が平面視で十字形状をなして規則的に配列され、さらに、透明樹脂層に形成されている立体部に対して、第二の領域において平面視で十字形状をなして規則的に配列されている立体部の占める面積割合が、10%以上50%以下となっていることから、優れた意匠性と防滑性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る化粧シートの主な実施形態の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の化粧シートの平面視抽出拡大図である。
【
図5】本発明に係る化粧シートの他の実施形態の第一の領域の抽出拡大図である。
【
図6】本発明に係る化粧シートのさらに他の実施形態の第一の領域の抽出拡大図である。
【
図7】本発明に係る化粧材の主な実施形態の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る化粧シート及び化粧材の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態で説明する種々の技術的事項を必要に応じて組み合わせることや置き換えることが適宜可能なものである。
【0016】
[化粧シート/主な実施形態]
本発明に係る化粧シートの主な実施形態を
図1~4に基づいて説明する。
【0017】
〈化粧シートの全体構成〉
図1に示すように、着色された樹脂からなる基材層11の表面(
図1中、上面)上には、意匠性を付与する絵柄を印刷された絵柄層12が設けられている。絵柄層12の表面(
図1中、上面)上には、絵柄を視認できる透明な樹脂からなる透明樹脂層13が設けられている。透明樹脂層13の表面(
図1中、上面)上には、最表面の保護や艶を調整する表面保護層14が設けられている。
【0018】
透明樹脂層13の表面(
図1中、上面)側には、立体部である凸部10a,10bが複数形成されている。表面保護層14は、透明樹脂層13の表面に沿うように凸部10a,10bの形状に倣って設けられている。これら凸部10a,10bは、立体的な意匠感を付与するため、絵柄層12の絵柄(例えば、木目の表面部と導管部)に同調するように設けられている。このような本実施形態に係る化粧シート10の各層11~14について、より具体的に説明する。
【0019】
〈基材層11〉
基材層11は、熱可塑性樹脂に酸化チタン等の顔料を混合したフィルムが適用される。基材層11を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来の化粧シートで基材層等として利用されている熱可塑性樹脂を適用することができる。
【0020】
具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を挙げることができる。
【0021】
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましく、更には、ポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0022】
基材層11は、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、熱安定化剤、耐候剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤等の各種の添加剤をさらに含有することも可能である。
【0023】
〈絵柄層12〉
絵柄層12は、主として意匠性を付与する目的で設けられ、例えば、印刷法等によりウレタン系樹脂等のインキで絵柄を印刷したものである。印刷法としては、グラビア印刷法を始めとして、例えば、オフセット印刷法、凸版印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種印刷法を適用することが可能である。
【0024】
インキとしては、ウレタン系樹脂を始めとして、例えば、塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)や、有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を適用することや、充填剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の各種の添加剤を、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものを適用することが可能である。
【0025】
絵柄層12の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば、木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的であるが、これらの種類に限定されない。
【0026】
〈透明樹脂層13〉
透明樹脂層13は、透明な樹脂材料からなり、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンや、各種αオレフィンコポリマ(プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの共重合体)等のポリオレフィンを挙げることができる。なかでも、ポリプロピレンであると好ましく、特に、高結晶性ポリプロピレン樹脂であるとより好ましい。
【0027】
透明樹脂層13は、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤等の耐候剤、熱安定化剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、そして、本実施形態の特徴を損なわない範囲で、例えば、着色剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種の添加剤を含有することも可能である。
【0028】
熱安定化剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等を挙げることができる。難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等を挙げることができる。光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系等を挙げることができる。これら各種の添加剤は、必要に応じて適宜組み合わせられて利用される。
【0029】
透明樹脂層13は、製膜によって成形されたシートや、既に成形したシートを積層することにより、設けることが可能である。透明樹脂層13は、その作製方法が特に限定されるものではないが、例えば、カレンダ成膜や押出成膜等のような一般的な製膜方法を適用することができる。
【0030】
透明樹脂層13は、意匠性や防滑性等を付与するために、表面に立体部である凸部10a,10bが設けられている。この立体部である凸部10a,10bは、例えば、透明樹脂層13を押出成形した後に熱エンボス加工を施すことや、透明樹脂層13の押出成形時に、周面に凹凸を形成した冷却ロールにより押出成形と併せてエンボス加工を施すことにより、設けることができる。
【0031】
例えば、表面に凹形状を有するエンボス版を利用して、ポリプロピレンシートに熱及び圧力を加えて凸形状を直接付与することにより凸部10a,10bを形成した透明樹脂層を得ることができる。また、表面に凹形状を有する冷却ロールを利用して、押出機でポリプロピレンシートを製膜する際に冷却と同時に圧力を加えて凸形状を付与することにより凸部10a,10bを形成した透明樹脂層13を得ることができる。なお、凸部10a,10bについては、後程詳しく説明する。
【0032】
このような透明樹脂層13は、印刷作業性やコスト等を考慮すると、厚さが20μm以上200μm以下の範囲内であると好ましく、70μm以上100μm以下の範囲内であるとより好ましい。
【0033】
〈表面保護層14〉
表面保護層14は、耐磨耗性や耐水性、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能(表面物性)を付与する目的で設けられ、例えば、コーティング法等を用いて形成される。表面保護層14は、例えば、裏面側に位置する各種層を透視可能な程度の透明性(例えば、無色透明、有色透明、半透明等)を有している。
【0034】
表面保護層14は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のうちの少なくとも一種の架橋型の樹脂を含有すると、耐候性、耐傷性、耐汚染性等を向上させることができるので好ましい。これらの樹脂は、単独又は混合して用いることができる。例えば、表面保護層14として、上記樹脂のうち複数の樹脂を混合して用いることや、上記樹脂のうちの一つの樹脂と上記以外の他の樹脂とを混合して用いることも可能である。
【0035】
表面保護層14は、耐候性の処方を行うため、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤を含有しているとさらに好ましい。また、表面保護層14は、有害なラジカルを補足し、樹脂自体の光,熱,水等による劣化を防止するため、ヒンダードアミン系の光ラジカル捕捉剤(ヒンダードアミン系の光安定化剤)を含有していると好ましい。
【0036】
表面保護層14は、上述した樹脂を既知のコーティング手段により塗布することで設けることができ、架橋の種類に応じて、熱、紫外線、電子線の照射が行われることで硬化されて形成される。このとき、表面保護層14は、透明樹脂層13の表面の凸部10a,10bの形状に沿って設けられ、その表面にも凸形状が反映されて形成される。
【0037】
表面保護層14は、厚さが特に限定されるものではないが、厚過ぎたり薄過ぎたりすると、効果に乏しく、また、厚すぎると可撓性が低下して割れ易くなってしまうため、2μm以上20μm以下であると好ましく、4μm以上10μm以下であるとより好ましい。
【0038】
〈凸部10a,10b〉
図2に示すように、透明樹脂層13の、絵柄層12の絵柄(例えば、木目柄)の第一の絵柄部(例えば、木目表面部等のような、色が薄い又はインキが印刷されていない部分)と平面視で重なる第一の領域(以下「第一領域A」という。)には、複数の凸部10aがランダムに配列されている。他方、透明樹脂層13の、絵柄層12の絵柄(例えば、木目柄)の第二の絵柄部(例えば、木目導管部のような、色が濃い又はインキが印刷された部分)と平面視で重なる第二の領域(以下「第二領域B」という。)には、複数の凸部10bが規則的に配列されている。つまり、第一領域Aには、ランダムに配列された複数の凸部10aが設けられ、第二領域Bには、規則的に配列された複数の凸部10bが設けられているのである。
【0039】
第一領域Aに形成されている複数の凸部10aは、平面視による形状(以下「平面形状」という。)が、例えば、
図3に示すように、それぞれ正方形等の多角形状をなしている。これら凸部10aは、ランダム配列、すなわち、不規則な配列となっている。第一領域Aは、凸部10aがランダムに配列されることにより、靴下やストッキング等、室内を想定した防滑性を向上させることができると共に、擦れ等による不快な干渉音を軽減することができる。
【0040】
なお、凸部10aは、規則性を有することがないように配慮されて設けられていればよく、例えば、乱数計算によって算出された情報に基づいて、無作為(ランダム)に第一領域Aに配列される。ここで、「ランダムに配列」とは、1cm2当たりに形成された複数の凸部10aの隣り合う間の平均距離のばらつき(3σ:標準偏差σの3倍値)が0.1μm超となるように、凸部10aが配列されていることをいう。
【0041】
凸部10aは、高さHaが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHaが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHaが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。なお、凸部10aの高さHaは、透明樹脂層13の凸部10aの底部と頂部との間の最短距離である。この高さHaは、透明樹脂層13の表面の第一領域Aにおいて隣り合う凹凸間の高低差でもある。
【0042】
また、凸部10aは、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、凸部10aは、平面視における一辺の長さLa(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLaが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLaが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0043】
また、凸部10aは、面密度(平面視における単位面積当たりの凸部の占める割合)が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部10aの平面形状が正方形の場合、凸部10aの面密度は、(La2×n)/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に画定した正方形の内側に存在する凸部10aの数である。
【0044】
また、凸部10aは、1mm2当りの数が、70個以上160個以下の範囲内で形成されていると好ましく、90個以上140個以下の範囲内で形成されているとより好ましく、110個以上120個以下の範囲内で形成されているとさらに好ましい。1mm2当りの数が、70個未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。1mm2当りの数が、160個を超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0045】
他方、凸部10bは、
図4に示すように、平面形状が、それぞれ十字形状をなしている。これら凸部10bは、千鳥格子等のように平面視において等間隔で規則性のある配列となっている。第二領域Bは、凸部10bが規則的に配列されることにより、自然な絵柄(例えば、導管柄)を再現できる、即ち意匠性を向上させることができると共に、防滑性を向上させることができる。
【0046】
なお、凸部10bは、規則性を有するように配慮されて設けられていればよく、例えば、平面視で千鳥格子的に第二領域Bに規則的に配列される。ここで、「規則的に配列」とは、1cm2当たりに形成された複数の凸部10bの隣り合う間の平均距離のばらつき(3σ:標準偏差σの3倍値)が0.1μm以下となるように、凸部10bが配列されていることをいう。
【0047】
凸部10bは、凸部10aと同様に、高さHbが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHbが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHbが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。なお、凸部10bの高さHbは、凸部10aの高さHaと同様に、透明樹脂層13の凸部10bの底部と頂部との間の最短距離である。この高さHbは、透明樹脂層13の表面の第二領域Bにおいて隣り合う凹凸間の高低差でもある。
【0048】
また、凸部10bは、凸部10aと同様に、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、平面視における一辺の長さLb(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLbが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLbが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0049】
また、凸部10bは、凸部5aと同様に、面密度(平面視における単位面積当たりの凸部の占める割合)が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部10bの平面形状が正方形の場合、凸部10bの面密度は、(Lb2×n)/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に確定した正方形の内側に存在する凸部10bの数である。
【0050】
また、凸部10bは、凸部10aと同様に、1mm2当りの数が、70個以上160個以下の範囲内で形成されていると好ましく、90個以上140個以下の範囲内で形成されているとより好ましく、110個以上120個以下の範囲内で形成されているとさらに好ましい。1mm2当りの数が、70個未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。1mm2当りの数が、160個を超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0051】
そして、透明樹脂層13に形成されている凸部10a,10bに対して、第二領域Bにおいて平面視で十字形状をなして規則的に配列されている凸部10bが占める面積割合は、10%以上50%以下(好ましくは30%以下、最適には15%)となっている。この数値範囲であると、優れた意匠性と防滑性とを両立することができる(具体的には[実施例]参照)。
【0052】
〈化粧シート10の製造方法〉
上述したような本実施形態に係る化粧シート10の製造方法を次に説明する。顔料等を含有するポリオレフィン系樹脂フィルムからなる基材層11の片面又は両面にコロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等の活性化処理を必要に応じて施した後、基材層11上(表面)にグラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷等でインキを印刷して絵柄層12を設ける。
【0053】
そして、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料を押出機より絵柄層12上に押出成形しながら、凹形状を表面に有するエンボス版を押圧することにより、表面に凸部10a,10bを有する透明樹脂層13を設ける。続いて、透明樹脂層13上にコロナ処理等の活性化処理を施した後、熱硬化性樹脂や紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等を透明樹脂層13上に塗布して硬化させることにより、表面保護層14を形成する。これにより、化粧シート10を得ることができる。
【0054】
〈効果〉
このようにして製造される化粧シート10においては、第一領域Aの凸部10aが正方形状をなしてランダムに配列されると共に、第二領域Bの凸部10bが十字形状をなして規則的に配列されている。さらに、透明樹脂層13に形成されている凸部10a,10bに対して、第二領域Bにおいて十字形状をなして規則的に配列されている凸部10bの占める面積割合が、10%以上50%以下となっている。そのため、優れた意匠性と防滑性とを両立することができ、特に、30%以下であると、より優れた意匠性と防滑性とを両立することができる。さらに、床として必要な耐汚染性を発現することが確実にできる。
【0055】
また、第一領域Aにおいて正方形状をなしてランダムに配置された凸部10aの外径Lbが、25μm以上60μm以下とすることにより、さらに優れた意匠性と防滑性とを実現することができる。くわえて、床として必要な耐汚染性を容易に発現することが確実にできる。
【0056】
また、第一領域Aにおいて正方形状をなしてランダムに配置された凸部10aが、1mm2当り70個以上160個以下の範囲内で形成されることにより、さらに優れた意匠性と防滑性とを実現することができる。くわえて、床として必要な耐汚染性を容易に発現することが確実にできる。
【0057】
また、第一領域Aにおいて正方形状をなしてランダムに配置された凸部10aが、乱数計算によって算出された情報に基づいて形成されることにより、さらに優れた意匠性と防滑性とを実現することがより確実にできる。くわえて、床として必要な耐汚染性を容易に発現することがより確実にできる。
【0058】
また、表面保護層14が、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のうちの少なくとも一種を含有することにより、床として必要な硬度を発現することが確実にできる。
【0059】
[化粧シート/他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、凸部10aの平面形状が正方形である場合について説明した。しかしながら、本発明は、平面形状が正方形の凸部10aに限定されるものではない。第一領域Aにおいて形成される凸部は、平面形状が、例えば、長方形、四角以外の多角形(三角形、五角形、六角形等)とすることも可能である。
【0060】
例えば、
図5に示すように、平面形状が正三角形の凸部20aとすることも可能である。この凸部20aは、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、凸部20aは、平面視における一辺の長さLa(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLaが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLaが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0061】
上記凸部20aは、面密度が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部30aの平面形状が正三角形であるので、凸部20aの面密度は、{(√3/4)×La2×n}/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に画定した正方形の内側に存在する凸部20aの数である。
【0062】
上記凸部20aは、高さHaが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHaが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHaが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。
【0063】
さらに、凸部は、平面形状が円形(正円形,楕円形等)とすることも可能である。
例えば、
図6に示すように、平面形状が正円形の凸部30aとすることも可能である。
この凸部30aは、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、凸部30aは、直径La(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLaが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLaが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0064】
上記凸部30aは、面密度が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部30aの平面形状が正円形であるので、凸部30aの面密度は、{(π/4)×La2×n}/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に画定した正方形の内側に存在する凸部30aの数である。
【0065】
上記凸部30aは、高さHaが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHaが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHaが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。
【0066】
また、前述した実施形態においては、断面視による形状(以下「断面形状」という。)が矩形、すなわち、底部と頂部との間の全長にわたって幅が一定の柱形状をなす凸部の場合について説明した。しかしながら、本発明は、断面形状が矩形の凸部に限定されるものではない。凸部は、断面形状が、例えば、台形や錐形等のように、底部から頂部に向かって、幅が徐々に小さくなる柱形状とすることも可能である。
【0067】
また、前述した実施形態においては、突起形状の凸部の場合について説明した。しかしながら、本発明は、突起形状の凸部に限定されるものではない。突起形状の凸部に代えて、例えば、窪形状の凹部とすることも可能である。
【0068】
具体的には、例えば、第一領域Aに円形状や多角形状の凹部及び凸部の両方をランダムに配列し、第二領域Bに十字形状の凹部及び凸部の両方を規則的に配列することも可能である。また、第一領域Aに円形状や多角形状の凸部をランダムに配列し、第二領域Bに十字形状の凹部を規則的に配列することも可能である。また、第一領域Aに円形状や多角形状の凹部をランダムに配列し、第二領域Bに十字形状の凸部を規則的に配列することも可能である。つまり、凸部及び凹部の少なくとも一方からなる立体部とすることが可能である。
【0069】
[化粧材/主な実施形態]
本発明に係る化粧材の主な実施形態を
図7に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0070】
〈化粧材の全体構成〉
図7に示すように、化粧材100は、化粧シート10と、化粧シート10を表面に貼り付けられた基板101と、を有している。化粧材100は、化粧シート10の基材層11が接着剤層102を介して基板101に貼り付けられている。つまり、本実施形態に係る化粧材100は、先の実施形態に係る化粧シート10を基板101に貼り合わせたものである。
【0071】
〈基板101〉
基板101は、木質合板等の木質基材、木粉とプラスチックとを混合した複合基材、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンや塩化ビニル(PVC)等の樹脂基材等の硬質性材料からなる。木質基材としては、例えば、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。また、アルミ等の金属やプラスチック等の樹脂、又は、それらの複合材料を適用することも可能である。基板101は、厚さが3~25mm程度であると好ましい。基板101を設けることにより、傷の発生を抑制可能な化粧材100を提供することができる。
【0072】
〈接着剤層102〉
接着剤層102は、化粧シート10と基板101とを貼り付けるために基板101の表面に設けられる。基板101が、例えば、木質系材料からなる場合、接着剤層102は、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等が一般的に適用される。
【0073】
〈効果〉
このような本実施形態に係る化粧材100においては、前述した実施形態の化粧シート10の場合と同様な効果を得ることができる。
【0074】
[化粧材/他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、化粧シート10の基材層11に接着剤層102を介して基板101を貼り付けた化粧材100の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、化粧シート10の基材層11に下地層を設け、下地層に接着剤層102を介して基板101を貼り付けた化粧材とすることも可能である。
【0075】
また、前述した実施形態においては、基板101と化粧シート10とを貼り合わせた化粧材100の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、基板101と、前述した他の実施形態の化粧シートとを貼り合わせて化粧材とすることも当然にして可能である。
【実施例0076】
本発明に係る化粧シート及び化粧材の実施例を具体的に説明するが、本発明は、具体的に説明する以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
[試験体及び比較体の作製]
〈試験体1〉
リケンテクノス株式会社製顔料含有ランダムポリプロピレンフィルム(厚さ60μm)を用意して基材層とした。この基材層の表面に、東洋インキ株式会社製ウレタンインキ「ラミスター(登録商標)」を使用してグラビア印刷によって木目柄を印刷して絵柄層を設けた。続いて、絵柄層の表面に、株式会社プライムポリマー製ホモポリプロピレン樹脂を押出機から押し出して透明樹脂層を成形すると同時に、この透明樹脂層の表面に、凹形状を有するエンボス版を押圧して凸部(高さ50μm)を形成した。
【0078】
ここで、エンボス版は、絵柄層の絵柄の第一の絵柄部となる木目表面部と平面視で重なる透明樹脂層の第一領域A(面積割合85%)において、上記凸部を正方形状(一辺の長さ(外径)60μm)でランダムに配列(1mm2当たり100個)するように、凹部が形成されている。他方、絵柄層の絵柄の第二の絵柄部となる木目導管部と平面視で重なる透明樹脂層の第二領域B(面積割合15%)において、上記凸部を十字形状(長さ(外径)60μm)で規則的に配列(1mm2当たり100個)するように、凹部が形成されている。
【0079】
そして、透明樹脂層の表面に、DICグラフィックス株式会社製紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を塗布して、メタルハライドランプから紫外線を照射して硬化さて表面保護層(厚さ10μm)を設けた。これにより、試験体1の化粧シートを得た。
【0080】
次に、広葉樹の中密度繊維板(MDF)を用意して基板(厚さ3mm)とし、その表面に、ジャパンコーティングレジン株式会社製2液混合硬化型水性エマルジョン接着剤「リカボンド(登録商標)」(重量比/BA-10L:BA-11B=100:2.5)をウェット状態で100g/m2となるように塗工して接着剤層を設けた。この接着剤層に化粧シートの基材層を貼り合わせて養生(24時間)することにより、化粧材の試験体1を作製した。
【0081】
〈試験体2〉
第一領域Aの面積割合が90%、すなわち、第二領域Bの面積割合が10%となるように、絵柄層を印刷すると共に、正方形状の凸部及び十字形状の凸部を透明樹脂層に形成する以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の試験体2を作製した。
【0082】
〈試験体3〉
第一領域Aの面積割合が70%、すなわち、第二領域Bの面積割合が30%となるように、絵柄層を印刷すると共に、正方形状の凸部及び十字形状の凸部を透明樹脂層に形成する以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の試験体3を作製した。
【0083】
〈試験体4〉
第一領域Aの面積割合が50%、すなわち、第二領域Bの面積割合が50%となるように、絵柄層を印刷すると共に、正方形状の凸部及び十字形状の凸部を透明樹脂層に形成する以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の試験体4を作製した。
【0084】
〈試験体5〉
正方形状の凸部の一辺の長さ(外径)及び十字形状の凸部の長さ(外径)を25μmとした以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の試験体5を作製した。
【0085】
〈試験体6〉
正方形状及び十字形状の凸部を1mm2当たり70個とした以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の試験体6を作製した。
【0086】
〈試験体7〉
正方形状及び十字形状の凸部を1mm2当たり160個とした以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の試験体7を作製した。
【0087】
〈比較体1〉
第一領域Aの面積割合が100%、すなわち、第二領域Bの面積割合が0%となるように、絵柄層を印刷すると共に、十字形状の凸部を省略して正方形状の凸部のみを透明樹脂層に形成する以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の比較体1を作製した。
【0088】
〈比較体2〉
第一領域Aの面積割合が0%、すなわち、第二領域Bの面積割合が100%となるように、絵柄層を印刷すると共に、正方形状の凸部を省略して十字形状の凸部のみを透明樹脂層に形成する以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧材の比較体2を作製した。
【0089】
[試験内容]
〈意匠性〉
試験体1~7及び比較体1,2に対して、試験員16名が目視観察し、そのときの見た目(意匠性)が良いと判定した人数を集計した。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、見た目が良いと判定した人が0~3人の場合には「×」で示し、見た目が良いと判定した人が4~8人の場合には「△」で示し、見た目が良いと判定した人が9~16人の場合には「○」で示した。
【0090】
〈防滑性〉
試験体1~7及び比較体1,2に対して、日本工業規格(JIS)A1454に準拠して防滑性試験を行って、滑り抵抗係数(CSR)を求めた。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、CSRが0.36以上であったときは「○」で示し、CSRが0.34以上0.36未満であったときは「△」で示し、CSRが0.34未満であったときは「×」で示した。
【0091】
〈足触り性〉
試験体1~7及び比較体1,2に対して、試験員16名が素足で触って、そのときの足触り感(滑り具合)が程良いと判定した人数を集計した。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、程良いと判定した人が0~3人の場合には「×」で示し、程良いと判定した人が4~8人の場合には「△」で示し、心地良いと判定した人が9~16人の場合には「○」で示した。
【0092】
〈耐汚染性〉
試験体1~7及び比較体1,2に対して、日本農林規格(JAS)の「汚染A試験」に準拠して耐汚染性試験を行った。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、着色残りを肉眼で確認できたときは「×」で示し、着色残りを肉眼で確認することは難しかったがルーペでは確認できたときは「△」で示し、着色残りをルーペでも確認できなかったときは「○」で示した。
【0093】
[試験結果]
試験体1~7及び比較体1,2の試験結果を下記表1に示す。
【0094】
【0095】
表1からわかるように、比較体1(十字形状なし)では、意匠性がNGとなってしまい、比較体2(十字形状のみ)では、意匠性だけでなく、防滑性や足触り性もNGとなってしまった。
【0096】
これに対し、試験体1~7においては、意匠性、防滑性、足触り性、耐汚染性のすべてでOKとなった。特に、試験体1~3,5~7においては、意匠性、防滑性、足触り性、耐汚染性のすべてで優秀な結果となった。したがって、本発明によれば、優れた防滑性及び意匠性を発現できることが確認できた。
本発明に係る化粧シート及び化粧材は、優れた意匠性と防滑性とを両立することができるので、建設産業を始めとして、各種産業において極めて有益に利用することができる。