IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<図1>
  • 特開-化粧シート、化粧材 図1
  • 特開-化粧シート、化粧材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014716
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20250123BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20250123BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20250123BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 101
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117494
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 奏瑛
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 真友子
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK15C
4F100AK25D
4F100AK51A
4F100AR00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA13A
4F100CB03B
4F100EJ55
4F100EJ65E
4F100HB31A
4F100JB13
4F100JJ07
4F100JK07
4F100JK08
4F100JK09
4F100JL12B
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出量を低減させることが可能な、化粧シートと化粧材を提供する。
【解決手段】化粧材10が、化粧シート1と基板7を備え、化粧シート1が、着色剤を含む絵柄層2と、絵柄層2の一方の面に積層され且つシーラー剤を含むシーラー層3と、シーラー層3の一方の面に積層され且つポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されたポリ塩化ビニル層4と、ポリ塩化ビニル層4の一方の面に積層された表面保護層5を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤を含む絵柄層と、
前記絵柄層の一方の面に積層され、且つシーラー剤を含むシーラー層と、
前記シーラー層の一方の面に積層され、且つポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されたポリ塩化ビニル層と、
前記ポリ塩化ビニル層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シート。
【請求項2】
引張弾性率が、100MPa以上1000MPa以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
引張破断伸度が、100%以上1500%以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項4】
引張弾性率が、100MPa以上1000MPa以下の範囲内であり、
引張破断伸度が、100%以上1500%以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記ポリ塩化ビニル層は、単層で形成されている請求項1に記載した化粧シート。
【請求項6】
前記絵柄層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1に記載した化粧シート。
【請求項7】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。
【請求項8】
前記基板は、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されている請求項7に記載した化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートと、化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出量を低減することを目的としたシート(化粧シート等)に関する技術としては、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。
特許文献1に開示されている技術では、二酸化炭素吸収剤と、ポリオレフィン系樹脂の結晶核剤とを内包するように超臨界逆相蒸発法によって形成されたリポソームを、ポリオレフィン系樹脂に添加して、樹脂組成物を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6060451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、ポリオレフィン系樹脂を用いて、化粧シートを形成している。このため、製造時に多くの二酸化炭素が発生し、二酸化炭素の排出量が増加するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、二酸化炭素の排出量を低減させることが可能な、化粧シートと化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、絵柄層と、シーラー層と、ポリ塩化ビニル層と、表面保護層を備える化粧シートである。絵柄層は、着色剤を含む層である。シーラー層は、絵柄層の一方の面に積層され、且つシーラー剤を含む層である。ポリ塩化ビニル層は、シーラー層の一方の面に積層され、且つポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成された層である。表面保護層が、ポリ塩化ビニル層の一方の面に積層された層である。
【0007】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基板と、基板の少なくとも一方の面に積層された化粧シートとを備える化粧材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、二酸化炭素の排出量を低減させることが可能な、化粧シートと化粧材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態における化粧シートの構成を示す断面図である。
図2】第一実施形態における化粧材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(第一実施形態)
以下、図1を参照して、第一実施形態における化粧シート1の構成について説明する。
化粧シート1は、図1に示すように、絵柄層2と、シーラー層3と、ポリ塩化ビニル層4と、表面保護層5と、プライマー層6を備える。
【0012】
<絵柄層>
絵柄層2は、化粧シート1に意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。
また、絵柄層2は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層2を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
【0013】
絵柄層2を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
絵柄層2の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下の範囲内、より好ましくは0.5[g/m]以上8[g/m]以下の範囲内である。
【0014】
絵柄層2の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いることが可能である。
【0015】
また、絵柄層2は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄層とを有する構成としてもよい。
絵柄層2の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは0.7[μm]以上3[μm]以下の範囲内に設定する。これは、絵柄層2の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層2の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
【0016】
なお、絵柄層2には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層2は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色原反層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄層とを有する構成としてもよい。
【0017】
<シーラー層>
シーラー層3は、絵柄層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、シーラー剤を含む層である。
シーラー層3におけるシーラー剤の含有量は、例えば、固形物換算で5[g/m]以下とする。
【0018】
<ポリ塩化ビニル層>
ポリ塩化ビニル層4は、単層で構成され(単層構造)、シーラー層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層された層であり、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されている。
また、ポリ塩化ビニル層4は、例えば、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層2の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0019】
ポリ塩化ビニル層4の厚さは、例えば、10[μm]以上200[μm]以下の範囲内、好ましくは30[μm]以上150[μm]以下の範囲内とする。
これは、ポリ塩化ビニル層4の厚さが10[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、ポリ塩化ビニル層4の厚さが150[μm]以下である場合、ポリ塩化ビニル層4を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0020】
ポリ塩化ビニル層4を製造する方法は、特に限定されず、従来から公知の方法を用いることが可能である。第一実施形態では、ポリ塩化ビニル層4を押出成形で形成する場合について説明する。また、押出成形は、Tダイ法又はインフレーション法により行われることが好ましい。
【0021】
<表面保護層>
表面保護層5は、ポリ塩化ビニル層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
また、表面保護層5は、曲げ加工性、耐候性、耐傷付性や清掃性に関して、優劣を左右する重要な役割を有する。表面保護層5は、硬化型樹脂(硬化性樹脂)を主成分とする。すなわち、樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば、樹脂全体を100質量部とした場合に、80質量部以上を示す。
【0022】
表面保護層5の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下の範囲内、より好ましくは3[g/m]以上10[g/m]以下の範囲内、さらに好ましくは6[g/m]以上9[g/m]以下の範囲内である。
表面保護層5の厚さは、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは3[μm]以上10[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは6[μm]以上9[μm]以下の範囲内である。
【0023】
また、表面保護層5には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層5には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
なお、表面保護層5は単層で構成しても、複数の層を重ねて構成してもよい。
【0024】
第一実施形態では、図1に示すように、表面保護層5の構成を、第一表面保護層5aと、第二表面保護層5bの二つの層から構成される構造(複層構造)とした場合について説明する。
第一表面保護層5aと第二表面保護層5bを有する表面保護層5を形成する際には、第一表面保護層5aの主成分として用いる硬化型樹脂の種類に応じ、既知の装置である、コーティング装置、熱乾燥装置、紫外線照射装置等を用いて、塗布及び塗膜の硬化を行う。
【0025】
[第一表面保護層]
第一表面保護層5aは、表面保護層5を構成する層のうち、最表面(最外面)に位置する層(最表層)である。すなわち、第一表面保護層5aは、化粧シート1の表面を形成する層である。
JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した第一表面保護層5aの硬度は、4B以上2H以下の範囲内であり、より好ましくは、3B以上H以下の範囲内である。
【0026】
これは、第一表面保護層5aの硬度が4B以上2H以下の範囲内であれば、後述するエンボス7を表面保護層5に形成した際に、表面保護層5の塗膜割れや、エンボス7を形成した際に表面保護層5の塗膜に発生するクラックを抑制することが可能であることに起因する。
また、第一表面保護層5aは、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一つとを含む。なお、以降の説明では、電子線硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂とを、まとめて、電離放射線硬化型樹脂と記載する場合がある。
【0027】
第一表面保護層5aは、一般的に、反応性樹脂を塗工することにより塗膜を形成した後に、加熱や電離放射線照射により塗膜を硬化させる方法で形成することが可能である。
第一表面保護層5aの厚さは、3[μm]以上15[μm]以下の範囲内が望ましい。
これは、第一表面保護層5aの厚さが3[μm]以上であれば、耐傷性、耐摩耗性、耐候性等、各種耐性が向上することに起因する。これに加え、第一表面保護層5aの厚さが15[μm]以下であれば、必要以上に多くの量の樹脂材料を使用する必要がなくコストを低減することが可能であることに起因する。
【0028】
また、第一表面保護層5aにおいては、硬化方法の違いによる特性差もある。例えば、一般的に、電離放射線硬化型樹脂で形成された第一表面保護層5aは、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷性に優れる傾向にある。一方で、熱硬化型樹脂で形成された第一表面保護層5aは、比較的架橋度が低いために硬度が低く、折り曲げや基材への追従等の柔軟性に優れる傾向にある。
なお、第一表面保護層5aは、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のいずれか1種を主成分としてもよい。つまり、第一表面保護層5aの主成分は、熱硬化型樹脂単体であってもよいし、紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂単体であってもよい。
【0029】
例えば、化粧シート1を、部材として複雑な形状が多い建具に用いる場合は、柔軟性(例えば、加工適正)が要求されることが多い。このため、例えば、建具に用いる化粧シート1において、第一表面保護層5aの主成分には、熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。また、化粧シート1において柔軟性よりも耐傷性が求められる場合、第一表面保護層5aの主成分には、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
また、第一表面保護層5aの主成分は、熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂との混合物であってもよい。混合物を主成分とする場合、化粧シート1を使用する用途によって、第一表面保護層5aにおける、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の比率をコントロールすることで、化粧シート1を、各種用途の要求に応じて使い分けることが可能となる。
【0030】
[第二表面保護層]
第二表面保護層5bは、表面保護層5を構成する層(第一表面保護層5a、第二表面保護層5b)のうち、第一表面保護層5aと絵柄層2との間に形成された層(内側層)である。
第二表面保護層5bは、例えば、第一表面保護層5aと同様、熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方を含む。なお、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂については、第一表面保護層5aが含む硬化型樹脂と同様であるため、説明を省略する。
【0031】
第一表面保護層5aの厚さと、第二表面保護層5bの厚さとの合計値は、例えば、3[μm]以上15[μm]以下の範囲内である。
【0032】
<プライマー層>
プライマー層6は、プライマー(下塗り剤)を絵柄層2の他方の面(図1では、下側の面)に塗布することで、絵柄層2の他方の面に積層して形成されている層である。
【0033】
<化粧シートの引張弾性率と引張破断伸度>
化粧シート1の引張弾性率は、100[MPa]以上1000[MPa]以下の範囲内である。
化粧シート1の引張破断伸度は、100[%]以上1500[%]以下の範囲内である。
【0034】
なお、化粧シート1の引張弾性率と引張破断伸度は、例えば、JIS K 7161に準じて測定した値である。
また、引張弾性率と引張破断伸度の測定条件としては、例えば、温度が20[℃]、引張速度が50[mm/min]又は1000[mm/min]、チャック間の距離が70[mm]、標準間の距離が40[mm]である。これに加え、試験片の厚さが130[μm]、試験片の幅が100[mm]である。
【0035】
また、化粧シート1の引張弾性率と引張破断伸度を、上述した範囲内とするためには、例えば、ポリ塩化ビニル層4を、ポリ塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加して形成している。
また、可塑剤としては、例えば、主に、フタル酸エステル系を用いる。
可塑剤の添加量は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂100[%]に対して、10[%]以上60[%]以下の範囲内である。
【0036】
<化粧材>
図1を参照しつつ、図2を用いて、化粧材10の構成を説明する。
図2に表すように、化粧材10は、例えば、板状に形成されており、化粧シート1と、基板7と、接着剤層8を備える。
【0037】
<基板>
基板7は、化粧シート1のうち、接着剤層8を間に挟んで、プライマー層6の他方の面(図2では、下側の面)の側に配置されている。
また、基板7は、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されている。すなわち、基板7は、化粧シート1が備えるポリ塩化ビニル層4と同様の材料を用いて形成されている。
【0038】
なお、基板7は、ポリ塩化ビニル樹脂以外にも、例えば、木質系材料、又は、金属系材料を用いて形成してもよい。この場合、木質系材料としては、木材単板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板等を用いることが可能である。また、金属系材料としては、鋼板、真鍮板、アルミニウム板、ジュラルミン板、ステンレス板等を用いることが可能である。
【0039】
また、基板7は、折り曲げ加工が施されている構造、又は、三次元の構造を有している。
基板7に化粧シート1を積層する際には、必要に応じて適宜選択した接着剤を介して積層しても良いし、接着剤等を介さずに直接積層しても良い。
【0040】
化粧シート1を基板7に積層して接着する方法としては、金属板を接触させて平圧プレスする方法や、円圧式の連続ラミネート方式を用いることが可能である。特に、金属製の無端ベルトを使用した連続ラミネート方式を用いると、表面の反りや波打ち等が無く、さらに、層間の密着性が良く、稠密に硬化一体化された高品質の化粧材10を、高速で連続的に製造することが可能となる。
【0041】
<接着剤層>
接着剤層8は、例えば、プライマー(下塗り剤)を基板7の一方の面(図2では、上側の面)に塗布することで、基板7の一方の面に積層されている。
接着剤層8の一方の面(図2では、上側の面)には、プライマー層6が積層されている。
【0042】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0043】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色剤を含む絵柄層2と、絵柄層2の一方の面に積層され、且つシーラー剤を含むシーラー層3と、シーラー層3の一方の面に積層され、且つポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されたポリ塩化ビニル層4を備える。これに加え、ポリ塩化ビニル層4の一方の面に積層された表面保護層5を備える。
ここで、ポリ塩化ビニル樹脂は、原料の約六割が工業塩により形成されており、ポリオレフィン等のプラスチックと比較して、石油等の化石燃料への依存度が低い材料である。
【0044】
このため、化粧シート1の構成を、製造時に発生する二酸化炭素の排出量が少ないポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成された、ポリ塩化ビニル層4を備える構成とすることが可能となる。
その結果、シーラー層3と表面保護層5との間に形成する層を、ポリオレフィンやポリプロピレンを用いて形成した構成の化粧シートと比較して、二酸化炭素の排出量を低減させることが可能な、化粧シート1を提供することが可能となる。
【0045】
なお、第一実施形態の化粧シート1は、例えば、住宅等の建築物に対し、表面の化粧に用いる。
室内に使用される化粧シートは、建具(室内ドア、玄関収納)・造作材(見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠)等の表面に貼られている。化粧シートとしては、一般的に、着色したオレフィンシートに、表面の摩耗等から絵柄を守るために、透明のオレフィンシートを貼り合わせた複層構造のシート(複層シート)が広く使われている。このため、化粧シートの製造には、印刷工程とラミネート工程が必要となる。
これに対し、第一実施形態の化粧シート1であれば、ポリ塩化ビニル層4に絵柄層2を形成した単層フィルムの化粧シート(単層シート)であるため、製造にラミネート工程が不必要である。そのため、化粧シート1の製造工程を、1工程のインラインで行うことが可能となる。
【0046】
また、従来の化粧シートは、複層構造であるために、化粧シートを薄膜化するためには、成膜上の限界と硬さ不足という問題点を有している。
これに対し、第一実施形態の化粧シート1であれば、単層構造であるため、薄膜化が容易である。また本発明の単層シートは、複層構造の化粧シートと比較して、樹脂の使用量や製造に要する工程数が少なく、且つ薄膜化が比較的容易であることため、従来の化粧シートと比較して、二酸化炭素排出量の削減が可能となる。
【0047】
ここで、樹脂材料の燃焼について説明する。
樹脂材料が燃焼する機構は、まず、発火源から樹脂材料に熱が伝達され、樹脂材料の温度が上がる。樹脂材料の温度が上がると、高分子が分解されて、ラジカルを持つ低分子のガスとなり大気中に拡散する。
これに対し、第一実施形態では、樹脂材料(ポリ塩化ビニル層4を形成するポリ塩化ビニル樹脂)が塩素を含むため、燃焼時に発生したラジカルを不活性化させることで、自己消化性を向上させることが可能となる。これにより、化粧シート1の難燃性を向上させることが可能となる。
【0048】
(2)引張弾性率が、100[MPa]以上1000[MPa]以下の範囲内である。
その結果、引張弾性率が100[MPa]未満である構成や、引張弾性率が1000[MPa]を超える構成と比較して、化粧シート1の加工適性を向上させることが可能となる。
なお、「加工適性」とは、例えば、化粧シート1を用いてラッピングした部品の角部における割れや白化のし難さ、化粧シート1のハネや浮きにくさ、切削し易さ、損傷しやすさ、生産時の取り扱い易さ等である。
【0049】
(3)引張破断伸度が、100[%]以上1500[%]以下の範囲内である。
その結果、引張破断伸度が100[%]未満である構成や、引張破断伸度が1500[%]を超える構成と比較して、化粧シート1の加工適性を向上させることが可能となる。
【0050】
(4)ポリ塩化ビニル層4は、単層で形成されている。
その結果、ポリ塩化ビニル層4を複層で形成した構成と比較して、二酸化炭素の排出量を低減させることが可能となる。
【0051】
また、第一実施形態における化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(5)基板7と、基板7の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、二酸化炭素の排出量を低減させることが可能な、化粧材10を提供することが可能となる。
【0052】
(6)基板7が、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されている。
このため、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されているポリ塩化ビニル層4と、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されている基板7により、基板7と化粧シート1とのモノマテリアル化が可能となる。
その結果、シーラー層3と表面保護層5との間に形成する層を、ポリオレフィンやポリプロピレンを用いて形成した構成と比較して、化粧材10のリサイクルが容易となる。
【0053】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、表面保護層5の構成を、複層構造としたが、これに限定するものではなく、表面保護層5の構成を、単層構造としてもよい。
【実施例0054】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から5の化粧シートと、比較例1から2の化粧シートについて説明する。
【0055】
(実施例1)
ポリ塩化ビニル層は、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて、厚さを50[μm]として形成した。
【0056】
絵柄層は、ポリ塩化ビニル層の他方の面にコロナ処理を施してシーラー層を形成した後、ウレタン系樹脂を用いて絵柄を印刷することで形成した。
第一表面保護層は、ポリ塩化ビニル層の一方の面にコロナ処理を施した後、艶の低いアクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製のアクリルウレタン樹脂)を、6[μm]の厚さとなるよう塗布して形成した。
【0057】
第二表面保護層は、第一表面保護層のポリ塩化ビニル層と対向する面と反対側の面に、第一表面保護層を形成するアクリル系二液硬化型樹脂よりも艶を高くしたアクリル系二液硬化型樹脂を、絵柄層と同調した絵柄で印刷して形成した。
プライマー層は、プライマーを絵柄層の他方の面に塗布して形成した。
【0058】
引張弾性率は、300[MPa]とし、引張破断伸度は、1200[%]とした。
以上により、実施例1の化粧シートを形成した。
【0059】
(実施例2)
引張弾性率を900[MPa]とし、引張破断伸度を500[%]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の化粧シートを形成した。
【0060】
(実施例3)
引張弾性率を600[MPa]とし、引張破断伸度を800[%]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の化粧シートを形成した。
【0061】
(実施例4)
引張弾性率を50[MPa]とし、引張破断伸度を2000[%]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例4の化粧シートを形成した。
【0062】
(実施例5)
引張弾性率を1300[MPa]とし、引張破断伸度を90[%]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例5の化粧シートを形成した。
【0063】
(比較例1)
ポリ塩化ビニル層の代わりに、ナノ化処理した造核剤を添加した透明ポリプロピレン樹脂を用いて透明ポリプロピレン層を形成した点と、引張弾性率を300[MPa]とし、引張破断伸度を1200[%]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の化粧シートを形成した。
【0064】
(比較例2)
ポリ塩化ビニル層の代わりに、ナノ化処理した造核剤を添加した透明ポリプロピレン樹脂を用いて透明ポリプロピレン層を形成した点と、引張弾性率を50[MPa]とし、引張破断伸度を2000[%]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の化粧シートを形成した。
【0065】
(性能評価)
実施例1から5の化粧シートと、比較例1から2の化粧シートに対し、それぞれ、樹脂材料の製造時に必要なエネルギーと、リサイクル性と、自己消火性と、加工適正を評価した。
評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0066】
<樹脂材料の製造時に必要なエネルギー>
実施例の化粧シートと、比較例の化粧シートに対し、それぞれ、ポリ塩化ビニル層を形成する樹脂材料の製造時に必要なエネルギーと、透明ポリプロピレン層を形成する樹脂材料の製造時に必要なエネルギーを測定した。
【0067】
<リサイクル性>
実施例の化粧シートと、比較例の化粧シートに対し、廃棄時においてリサイクルに要する手間を考慮して、リサイクル性を評価した。
【0068】
<自己消火性>
実施例の化粧シートと、比較例の化粧シートに対し、引火させた後に消火されるか否かを測定して、自己消火性を評価した。
【0069】
<加工適正>
実施例の化粧シートと、比較例の化粧シートに対し、割れ・白化、浮き・ハネ、切削性、耐傷性をそれぞれ測定して、総合的な加工適正を評価した。
なお、総合的な加工適正を評価する基準として、「◎」と「○」は合格とし、一つの項目でも「×」が存在するものは不合格とした。
【0070】
<割れ・白化>
化粧シートを用いてラッピングした部品の角部において、化粧シートの割れや白化が生じていないものを「◎」と評価し、角部において、化粧シートの割れは生じていないが、やや白化しているものを「○」と評価した。また、角部において、化粧シートの割れや白化が生じているものを「×」と評価した。
【0071】
<浮き・ハネ>
化粧シートを用いてラッピングした部品において、化粧シートが基板から浮かず、化粧シートの端部がハネていないものを「◎」と評価し、化粧シートが基板から浮いていないが、化粧シートの端部がややハネているものを「○」と評価した。また、化粧シートが基板から浮き、化粧シートの端部がハネているものを「×」と評価した。
【0072】
<切削性>
化粧シートを用いて部品をラッピングする加工時において、化粧シートを容易に素早くカットすることが可能であるものを「◎」と評価し、化粧シートを素早くはないが、容易にカットすることが可能であるものを「○」と評価した。また、化粧シートが伸びてしまい、容易に素早くカットすることが不可能であるものを「×」と評価した。
【0073】
<耐傷性>
化粧シートを用いてラッピングした複数の部品に対し、部材同士が接触しても化粧シートに損傷が発生しないものを「◎」と評価し、部材同士が接触した際に、化粧シートに目立たない程度の小さな損傷が発生したものを「○」と評価した。また、部材同士が接触した際に、化粧シートに大きな目立つ損傷が発生したものを「×」と評価した。
【表1】
【0074】
(評価結果)
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から5の化粧シートは、樹脂材料の製造時に必要なエネルギーと、リサイクル性と、自己消火性に対して、優れた性能を示した。さらに、実施例1から3の化粧シートは、加工適正に対しても、優れた性能を示した。
一方、比較例1から2の化粧シートは、全ての評価試験に対して、優れた性能を示すことが不可能であった。
【0075】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
着色剤を含む絵柄層と、
前記絵柄層の一方の面に積層され、且つシーラー剤を含むシーラー層と、
前記シーラー層の一方の面に積層され、且つポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されたポリ塩化ビニル層と、
前記ポリ塩化ビニル層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シート。
(2)
引張弾性率が、100MPa以上1000MPa以下の範囲内である前記(1)に記載した化粧シート。
(3)
引張破断伸度が、100%以上1500%以下の範囲内である前記(1)又は(2)に記載した化粧シート。
(4)
前記ポリ塩化ビニル層は、単層で形成されている前記(1)~(3)のいずれかに記載した化粧シート。
(5)
前記絵柄層の他方の面に積層されたプライマー層を備える前記(1)~(4)のいずれかに記載した化粧シート。
(6)
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に積層された前記(1)~(5)のいずれかに記載した化粧シートと、を備える化粧材。
(7)
前記基板は、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて形成されている前記(6)に記載した化粧材。
【符号の説明】
【0076】
1…化粧シート、2…絵柄層、3…シーラー層、4…ポリ塩化ビニル層、5…表面保護層、5a…第一表面保護層、5b…第二表面保護層、6…プライマー層、7…基板、8…接着剤層、10…化粧材
図1
図2