(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001472
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】昆布保持装置及びおぼろ昆布を提供する演出方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20241225BHJP
【FI】
A23L17/60 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101087
(22)【出願日】2023-06-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和5年3月21日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=MdTMGnT1oG0
(71)【出願人】
【識別番号】506076112
【氏名又は名称】株式会社いつつじ
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】久世 章斗
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LE01
4B019LP03
4B019LP17
4B019LP19
(57)【要約】
【課題】 削りたての昆布の味、風味を、より気軽に楽しむための、おぼろ昆布を提供する演出方法及びそのために使用する演出具としても使用可能な昆布保持装置を提供する。
【解決手段】
おぼろ昆布を提供するために使用される演出具である昆布保持装置は、上部筐体部2と下部筐体部3とレバー4とベースブロック12と支柱5を備え、支柱5は、ベースブロック12に固定され、上部筐体部2及び下部筐体部3を上下に移動可能に支持し、レバー4は操作部41とカムブロック42とを有し、支柱5によって回動可能に支持され、上部筐体部2は、カムブロック42と接触するカム受け部8に固定され、レバー4の位置に応じて上下に移動可能であり、下部筐体部3は、ベースブロック12に対して上下に移動可能に支持され、ベースブロック12から上向き方向の付勢力が加えられ、上部筐体部2と下部筐体部3とにより昆布を把持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おぼろ昆布を提供するために使用される昆布保持装置であり、
上部筐体部(2)と下部筐体部(3)とレバー(4)とベースブロック(12)と支柱(5)を備え、
前記支柱(5)は、前記ベースブロック(12)に固定され、前記上部筐体部(2)及び前記下部筐体部(3)を上下に移動可能に支持し、
前記レバー(4)は操作部(41)とカムブロック(42)とを有し、前記支柱(5)によって回動可能に支持され、
前記上部筐体部(2)は、前記カムブロック(42)と接触するカム受け部(8)に固定され、前記レバー(4)の位置に応じて上下に移動可能であり、
前記下部筐体部(3)は、前記ベースブロック(12)に対して上下に移動可能に支持され、前記ベースブロック(12)から上向き方向の付勢力が加えられ、
前記上部筐体部(2)と前記下部筐体部(3)とにより昆布を把持することを特徴とする昆布保持装置。
【請求項2】
前記支柱(5)に固定された上部支持板(9)を有し、
前記カム受け部(8)は、前記上部支持板(9)から上向き方向の付勢力が加えられていることを特徴とする請求項1記載の昆布保持装置。
【請求項3】
前記レバー(4)は、前記操作部(41)が上方に伸びた第1の位置と、
前記操作部(41)が倒された第2の位置とを選択的に保持されることを特徴とする請求項1記載の昆布保持装置。
【請求項4】
前記ベースブロック(12)は食卓に固定されていることを特徴とする請求項1記載の昆布保持装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の昆布保持装置の前記レバー(4)を上方に立ち上げ、昆布の一端部を受け入れ可能とする第1のステップと、
前記昆布の一端部を前記上部筐体部(2)と前記下部筐体部(3)との間隙(G)に挿入し、前記レバー(4)を倒し、前記上部筐体部(2)と前記下部筐体部(3)とにより前記昆布を把持する第2のステップと、
昆布包丁(CK)を用いて前記昆布を削り、おぼろ昆布を作る第3のステップと、
前記おぼろ昆布を料理とともに提供する第4のステップと、
を有することを特徴とするおぼろ昆布を提供する演出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おぼろ昆布を提供する演出方法及びそのための演出具としての昆布保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昆布を薄く削った「おぼろ昆布」は口当たりも良く柔らかで豊かな風味を与える食品として重宝されている。一般に、「昆布」から「おぼろ昆布」を作るためには、職人が、酢につけ柔らかくした昆布の一端を右足で押さえ、他端を左手で引っ張りながら、右手で昆布包丁を動かして薄く削るという熟練した職人技を必要とする。工業用のおぼろ昆布製造装置は存在するが(特許文献1)、家庭用の鰹節削り器のような、誰もが簡単に使用できる昆布削り器は普及していない。昆布職人による体験教室等において、削りたての昆布を味を知る機会が僅かに設けられているが(非特許文献1)、一般の人は、通常は食料品店において既に削られたおぼろ昆布を購入するのみであり、日本料理店において調理人自らが昆布を削ることも皆無と思われる。
そのため、昆布の生産に携わる一部の関係者を除き、削りたてのおぼろ昆布の味を知る者は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-98748号公報
【非特許文献1】公益社団法人 伊勢市観光協会 おぼろ昆布削り体験 https://ise-kanko.jp/iseguide/oborokonbukezuritaiken/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、削りたての昆布の味、風味を、より気軽に楽しむための、おぼろ昆布を提供する演出方法及びそのために使用する演出具としても使用可能な昆布保持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る昆布保持装置は、
おぼろ昆布を提供するために使用される昆布保持装置であり、
上部筐体部(2)と下部筐体部(3)とレバー(4)とベースブロック(12)と支柱(5)を備え、
前記支柱(5)は、前記ベースブロック(12)に固定され、前記上部筐体部(2)及び前記下部筐体部(3)を上下に移動可能に支持し、
前記レバー(4)は操作部(41)とカムブロック(42)とを有し、前記支柱(5)によって回動可能に支持され、
前記上部筐体部(2)は、前記カムブロック(42)と接触するカム受け部(8)に固定され、前記レバー(4)の位置に応じて上下に移動可能であり、
前記下部筐体部(3)は、前記ベースブロック(12)に対して上下に移動可能に支持され、前記ベースブロック(12)から上向き方向の付勢力が加えられ、
前記上部筐体部(2)と前記下部筐体部(3)とにより昆布を把持することを特徴とする。
【0006】
このような構成の昆布保持装置とすることで、様々な厚みの昆布を把持し、昆布を削りおぼろ昆布を提供することが可能となる。その結果、客の目の前で昆布を削り、削りたてのおぼろ昆布を提供することも可能となる。料理とともに削りたてのおぼろ昆布を提供することも可能となる。
【0007】
また、本発明にかかる昆布保持装置は、
前記支柱(5)に固定された上部支持板(9)を有し、
前記カム受け部(8)は、前記上部支持板(9)から上向き方向の付勢力が加えられてもよい。
【0008】
また、本発明にかかる昆布保持装置は、
前記レバー(4)は、前記操作部(41)が上方に伸びた第1の位置と、
前記操作部(41)が倒された第2の位置とを選択的に保持されてもよい。
【0009】
このような構成の昆布保持装置とすることで、素早く昆布を固定することが可能となり、また、昆布を削る一連の流れるような動作を中断することがない。
【0010】
また、本発明にかかる昆布保持装置は、
前記ベースブロック(12)は食卓に固定されてもよい。
【0011】
このような構成の昆布保持装置とすることで、実際に食事をするカウンターテーブル等で昆布削りを実演することができる。
【0012】
本発明に係るおぼろ昆布を提供する演出方法は、
昆布保持装置の前記レバー(4)を上方に立ち上げ、昆布の一端部を受け入れ可能とする第1のステップと、
前記昆布の一端部を前記上部筐体部(2)と前記下部筐体部(3)との間隙(G)に挿入し、前記レバー(4)を倒し、前記上部筐体部(2)と前記下部筐体部(3)とにより前記昆布を把持する第2のステップと、
昆布包丁(CK)を用いて前記昆布を削り、おぼろ昆布を作る第3のステップと、
前記おぼろ昆布を料理とともに提供する第4のステップと、
を有することを特徴とする。
【0013】
このようなおぼろ昆布を提供する演出方法によれば、客は気軽に削りたてのおぼろ昆布の味、風味を楽しむことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、削りたての昆布の味をより気軽に知ってもらうことを可能にするおぼろ昆布を提供する演出方法及びその演出のために使用する演出具としての昆布保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、昆布保持装置1の主要構成を示す模式図であり、
図1(A)は昆布保持装置1の外観を示す斜視図、
図1(B)は昆布保持装置1の上面図、
図1(C)は昆布保持装置1のA-A断面を模式的に示す図である
【
図2】
図2は、昆布保持装置1の動作を説明するための拡大断面図であり、
図2(A)、(B)は、カムブロック42近傍の断面を模式的に示し、
図2(C)はベースブロック12近傍の断面の一部を模式的に示す。
【
図3】
図3は昆布保持装置1を用いて削りたてのおぼろ昆布を提供する工程を示す図である。
図3(A)は昆布削りを実演している状況を示し、
図3(B)は削りたてのおぼろ昆布を料理とともに提供する状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0017】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0018】
<装置構成>
以下、削りたてのおぼろ昆布の魅力を演出するために使用する演出具としての布保持装置1について説明する。
昆布保持装置1は、好適には、料理とともにおぼろ昆布を提供する提供者と客とが対面できるように設置された食卓、カウンターテーブル等に固定された状態で使用されるが、客が昆布削りを視認でき、素早くおぼろ昆布を提供できる範囲に設置されたテーブルに設置して使用することを排除しない。
【0019】
図1は、昆布保持装置1の主要構成を示す模式図であり、昆布保持装置1は、客の目の前で昆布削りを実演し、削りたてのおぼろ昆布を提供するために使用される演出具である。
図1(A)は昆布保持装置1の外観を示す斜視図、
図1(B)は昆布保持装置1の上面図、
図1(C)は昆布保持装置1のA-A断面を模式的に示す図である。
図1(C)の矢印yは鉛直上向き方向を示す。以下、「上下方向」とは、鉛直方向に平行な上向き及び下向き方向を意味する。
【0020】
昆布保持装置1は、上部筐体部2(上筒部)及び下部筐体部3(下筒部)、レバー4を有し、さらに、上部筐体部2及び下部筐体部3の内部に支柱5を有している。上部筐体部2及び下部筐体部3は、好適には、
図1に示されるように、円筒形状に構成される。
上部筐体部2は、下部筐体部3の上方に位置し、下部筐体部3と対向する側(上部)に、開口部であるスリット6が設けられている。レバー4の操作部41は、スリット6から、上部筐体部2の外部に突出している。レバー4は、スリット6に沿って移動可能である。
昆布保持装置1を構成するこれらの部品は、耐久性のある硬質な材料で構成され、例えば非限定的に金属で構成することができる。また、全ての部品を金属で構成してもよいが、一部の部品、例えば、上部筐体部2及び下部筐体部3を硬質な木材で構成し、他の構成部品を金属で構成してもよい。
【0021】
レバー4の操作部41の末端側には、カムブロック42が設けられている。カムブロック42は上部筐体部2の内部に位置する。支柱5の一端部側には回転軸7が設けられ、レバー4は回転軸7により、回動可能に支柱5に支持されている。
【0022】
上部筐体部2の内部には、上部支持板9が設けられており、上部支持板9は支柱5に固定されている。上部支持板9は、好適には、上部筐体部2の断面全体を覆う形状を有し、例えば上部筐体部2が円筒形の場合、上部筐体部2の内径と同じ外径を有する円板形状に構成する。
上部支持板9の外壁面9sは上部筐体部2の内壁面2sと対向している。上部筐体部2は、外壁面9sにガイドされながら、上下方向(長手方向)に沿って、スライドするように移動可能である。上部筐体部2は上部支持板9を介して、上下に移動可能に支柱5に支持されている。
【0023】
上部筐体部2の内部には、カム受け部8(カムフォロア)が設けられ、カム受け部8は上部筐体部2に固定されている。
上部支持板9上にはバネ10(上部バネ)が設けられ、バネ10の一端部は上部支持板9の上面に接し、バネ10の他端部はカム受け部8の底面に接している。バネ10は、カム受け部8を図中上向き方向(鉛直上向き方向)に、すなわち上部支持板9から遠ざかる方向に、付勢力を加え、カム受け部8の上面はカムブロック42と接触する。
カム受け部8はカムブロック42の運動を受け、カム受け部8及び上部筐体部2はカムブロック42の動きに応じて上下に運動する従動節となる。
【0024】
図1(C)に示されるように、レバー4の操作部41が上方に持ち上げられた位置にある場合、上部筐体部2と下部筐体部3との間に間隙G(ストローク)が設けられる。実際の昆布の厚みは数mmであり、間隙Gへの昆布の挿入が容易となるように、間隙Gの長さが決定され、非限定的に、例えば10-15mmと設定することができる。
【0025】
下部筐体部3の内部には、下部支持板11が設けられており、下部支持板11は支柱5に固定されている。下部支持板11は、好適には、下部筐体部3の断面全体を覆う形状を有し、例えば下部筐体部3が円筒形の場合、下部筐体部3の内径と同じ外径を有する円板形状に構成することができる。
下部支持板11の外壁面11sは下部筐体部3の内壁面3sと対向している。下部筐体部3は、外壁面11sにガイドされながら、スライド(摺動)するように上下方向(長手方向)に沿って、移動可能である。下部筐体部3は下部支持板11を介して、上下に移動可能に支柱5に支持されている。
【0026】
昆布保持装置1はベースブロック12(固定基礎部)を有し、ベースブロック12は下部筐体部3の下端部に配置される。支柱5はベースブロック12に、固定具13(ネジ)等により固定され、ベースブロック12は、食卓(例えば、カウンターテーブル)等に固定され、昆布保持装置1全体を支持するための基礎となる。
【0027】
昆布保持装置1は、下部筐体部3の下端内部にボトムブロック14(筐体底部)を有している。ボトムブロック14は、下部筐体部3の底部を構成し、中央部に支柱貫通孔140を有している。支柱5は支柱貫通孔140を貫通し、ボトムブロック14を上下移動可能に支持する。
ボトムブロック14の外壁は、下部筐体部3の下端部の内壁と接するように、連結(又は固定)されている。
また、ボトムブロック14とベースブロック12との間には、バネ19(底部バネ)が設けられ、バネ19はボトムブロック14に対して鉛直方向上方の付勢力を与えている。
【0028】
ボトムブロック14は、第1のガイド部15(第1のガイド孔)を有し、ベースブロック12は第2のガイド部16(第2のガイド孔)を有している。第1のガイド部15は、ボトムブロック14の上面部分に貫通孔として形成されている。
ガイドピン17は第1のガイド部15を貫通し、さらに、第2のガイド部16に挿入され、下部筐体部3とベースブロック12との位置関係(水平面内の位置関係)を確定するとともに、ボトムブロック14(及び下部筐体部3)をベースブロック12に対して上下に移動可能に支持する。
なお、ガイドピン17は第1のガイド部15に貫通させた状態で固定してもよいが、ガイドピン17は第2のガイド部16に対して、上下にスライド(摺動)可能に挿入される。例えば、ガイドピン17と第1のガイド部15とが対向する領域にのみネジを形成し、ガイドピン17を第1のガイド部15によってボトムブロック14にネジ止めし、ガイドピン17と第2のガイド部16とが対向する領域にはネジを形成しないように構成することができる。
【0029】
図2は、昆布保持装置1の動作を説明するための拡大断面図であり、
図2(A)、(B)は、カムブロック42近傍における、
図1(B)のA-A線断面を模式的に示し、
図2(C)はベースブロック12近傍における、
図1(B)のB-B線断面の一部を模式的に示す。
図2(A)は開状態の昆布保持装置1の部分断面、
図2(B)は閉状態の昆布保持装置1の部分断面図を示す。視認性のため支柱5等を透視図で示している。
【0030】
カムブロック42は、第1の当接面421と第2の当接面422を有している。カム受け部8の上面部81は、レバー4の位置に依存して、カムブロック42の第1の当接面421又は第2の当接面422と接触する。
【0031】
図2(A)に示すように、通常時、すなわち、レバー4の操作部41が上方に伸びた状態においては、上部筐体部2の底部2bと下部筐体部3の頭部3tとの間には間隙Gが存在し、上部筐体部2と下部筐体部3とが開いた状態(開状態)となり、カム受け部8の上面部81はカムブロック42の第1の当接面421と接触する。このときのレバー4(操作部41)の位置を第1の位置と称する。レバー4は、第1の位置で保持される。
【0032】
操作者が、バネ10の付勢力に抗して、手で操作部41を操作し、
図2(A)中矢印Aの方向に移動させると、レバー4が回転軸7の回りに回転し、カムブロック42によってカム受け部8(及び上部筐体部2)は
図2(A)中矢印Bに示す方向に押し下げられる。
図2(B)に示すように、カム受け部8の上面部81はカムブロック42の第2の当接面422と接触し、レバー4が停止する。操作部41は、(例えば、水平又はさらに下方に)倒れた状態となる。このときのレバー4(操作部41)の位置を第2の位置と称する。レバー4は、第2の位置で保持される。
このように、レーバー4は、カムブロック42とカム受け部8との協働により、第1の位置と第2の位置とに、選択的に保持され得る。
【0033】
レバー4が第2の位置にあるとき、上部筐体部2の底部2bは下部筐体部3の頭部3tと接触し、間隙Gの長さは0(零)mmとなり、上部筐体部2と下部筐体部3とが閉じた状態(閉状態)となる。上部筐体部2(特に底部2b)及び下部筐体部3(特に頭部3t)は、昆布の端部を挟み込む昆布把持部を構成する。
このようなレバー4の簡単で素早い操作によって、開状態で昆布を準備し、閉状態で昆布を固定することができ、昆布を固定する動作が、おぼろ昆布を提供するための一連の流れるような動作を中断することがない。
【0034】
昆布保持装置1の間隙Gの食卓Tbの表面からの高さは、好適には、客が食事をする食卓Tbに着席した状態で、客の視線の高さ程度となるように設定する。このように間隙Gの高さを設定することで、客は昆布削りの技を気軽に観て、楽しむことができる。
【0035】
一方、耐久性のある硬質な材料で構成された上部筐体部2と下部筐体部3とが昆布を強い力で挟み込むと、昆布が切断される可能性がある。そのため、昆布を固定する把持力を維持しながら、昆布の切断を防止するため、上部筐体部2と下部筐体部3との間の適切な押圧力を維持する必要がある。
【0036】
図2(C)は下部筐体部3の下端部の拡大断面図である。
ベースブロック12は、食卓Tb(例えばカウンターテーブル)等に固定するためのネジ(又はボルト)を貫通させるための貫通孔20(固定用ネジ受け)を有している。ネジ溝を有する食卓Tb(例えばカウンターテーブル)等に、ボルト等によってベースブロック12を固定することができる。
なお、ベースブロック12を食卓Tbに固定する方法はネジ固定に限定するものではなく、公知の固定方法を採用することができる。
また、食卓Tbに、下部筐体部3の下端部を収容できる直径を有する開口部を設け、その開口部の底部にベースブロック12を固定し、その開口部の内部に下部筐体部3の下端部を収容し、下端部を視認不能としてもよい。
【0037】
ベースブロック12はバネ収容部18を有し、バネ収容部18内にはバネ19(底部バネ)が収容されている。バネ19の一端部はベースブロック12に接し、バネ19の他端部はボトムブロック14の底面に接する。下部筐体部3はボトムブロック14に固定されているため、下部筐体部3はボトムブロック14を介して、バネ19の付勢力が加えられる。
【0038】
ボトムブロック14の内壁とベースブロック12の外壁とは固定されていないため、下部筐体部3及びボトムブロック14は、上下方向にスライド移動可能にベースブロック12と連結されている。
バネ19の付勢力により、通常時(レバー4が第1の位置にあり、昆布を保持しない状態)においては、ボトムブロック14はベースブロック12上面から所定の距離D浮き上がり、例えば2-5mm、ベースブロック12上面から離れた位置に保持される。
【0039】
レバー4が第1の位置にある状態で、間隙Gに昆布の端部を挿入し、操作者が手でレバー4を倒し、レバー4が第2の位置に移行すると、昆布の端部は上部筐体部2の底部2bと下部筐体部3の頭部3tにより挟み込まれる。
自然物である昆布は波打ったような形状であるため、昆布の厚みは実際の昆布の厚み以上の大きさとなる。すなわち、昆布を挟み込んで固定するためには、実際の昆布の厚み以上の幅が必要になる。下部筐体部3(及びボトムブロック14)が、バネ19の付勢力に抗して下方にスライド移動し、底部2bと頭部3tとの間距離は、昆布の厚みに相当する長さとなる。このとき、バネ19の付勢力は、下部筐体部3及びボトムブロック14を鉛直上向き方向(上部筐体部2への方向)に押し上げる押圧力となるため、様々な厚みを有する昆布に柔軟に対応しながら、挟み込み、締結する力となる。
このように、下部筐体部3及びボトムブロック14が、ベースブロック12に対して上下に移動可能な状態で、バネ19からの上向きの付勢力(押圧力)が加えられる構成は、昆布の押圧機構を構成する。
上記のような押圧機構を用いることで、昆布を、所定の押圧力で、安定して、また切断することなく、軽い力で素早く固定し、強力に保持することができる。
また、この機構は外部から視認されることもなく、客は、昆布を固定する操作に気をとられることがなく、昆布削りの演出を楽しむことができる。
【0040】
<演出方法>
以下、昆布保持装置1を用いて昆布削りを実演し、削りたてのおぼろ昆布を客に提供する方法(演出方法)について説明する。
なお、昆布を削り、おぼろ昆布を提供する者を提供者と称する。
図3は昆布保持装置1を用いて削りたてのおぼろ昆布を提供する工程を示す図である。
図3(A)は、職人技を有する提供者が昆布を削り、おぼろ昆布作りを実演している状況を示し、
図3(B)は削りたてのおぼろ昆布を料理とともに提供する状況を示す。
【0041】
おぼろ昆布を提供するフローは以下の通りである。
#ステップ1:準備
提供者は、食卓(例えばカウンターテーブル)に固定された昆布保持装置1のレバー4を上方に立ち上げ、第1の位置にセットする。
上部筐体部2の底部2bと下部筐体部3の頭部3tとの間に間隙Gが設けられ、昆布を受け入れることが可能な状態となる。(
図1(A)・(C)参照。)
#ステップ2:昆布の取り付け
客からの注文を受けた提供者は、食卓(テーブル)に着席した客に昆布を提示し、その後、昆布の一端部を下部筐体部3の底部2bと下部筐体部3の頭部3tとの間隙Gに挿入する(
図2(A)・(B))。その後、昆布保持装置1のレバー4を倒し、第2の位置にセットする。
昆布の一端部が下部筐体部3の底部2bと下部筐体部3の頭部3tとに挟まれ、バネ19により決まる押圧力により、切断することなく、安定して保持される。
#ステップ3:昆布削りの実演
提供者は、客の目の前で、昆布KLの他端部を一方の手で握り、他方の手に持つ昆布包丁CKを用いて、昆布保持装置1に保持された昆布KLを手削りし、おぼろ昆布OKを作る。(
図3(A)参照。)
#ステップ4:料理の提供
提供者は、削りたてのおぼろ昆布OKを取り上げ、別途準備された料理とともに客に提供する。例えば、提供者は、おぼろ昆布OKを、料理MD(例えばラーメン等)にトッピングし、おぼろ昆布OKがトッピングされた料理MDを客に提供する。(
図3(B)参照。)
なお、提供者は、料理にトッピングせず、ステップ4において別途準備した皿におぼろ昆布OKを載せ、客におぼろ昆布OKを載せた皿と料理とを提供してもよい。
また、ステップ4において、他の昆布を用いた総菜SD等を添えてもよい。
また、料理を客に差し出す者は、おぼろ昆布OKを削り提供する者と同一でなくてもよく、提供者は、適宜作業分担する複数の者から構成されてもよい。
【0042】
なお、ステップ2の前に、提供者は、使用する昆布について説明するステップを加えてもよい。
例えば、口頭で昆布の種類等について説明し、客が昆布の味比べ(テイスティング)ができるように、複数の水だし昆布水を、それぞれのグラスGLに注いで提供してもよい。(
図3(B)参照。)
【0043】
以上の一連のフローにより、注文された料理とともに削りたてのおぼろ昆布が提供されるため、客は、おぼろ昆布作りの工房ではなく、料理店において、削りたてのおぼろ昆布の味、風味を、気軽に楽しむことができる。
【0044】
なお、上記実施形態の「昆布保持装置」は、料理店等で昆布削りの実演に用いる演出具を念頭にその構成及び使用方法について説明したが、業務用の演出具に限られず、家庭用或いは屋外に携帯して昆布を削るために使用する簡易的な昆布保持装置のような使用態様も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、容易に削りたてのおぼろ昆布を料理とともに提供することができる。昆布保持装置は、カウンターテーブルに取り付けることが可能である。提供者は客の目の前で昆布削りを実演することが可能であり、客は削りたてのおぼろ昆布の食感や香り、風味を気軽に楽しむことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 昆布保持装置
2 上部筐体部(上筒部)
2s 内壁面
3 下部筐体部(下筒部)
3s 内壁面
4 レバー
41 操作部
42 カムブロック
421 第1の当接面
422 第2の当接面
5 支柱
6 スリット
7 回転軸
8 カム受け部(カムフォロア)
81 上面部
9 上部支持板
9s 外壁面
10 バネ(上部バネ)
G 間隙(ストローク)
11 下部支持板
11s 外壁面
12 ベースブロック(固定基礎部)
13 固定具(ネジ)
14 筐体底部(ボトムブロック)
140 支柱貫通孔
15 第1のガイド部(第1のガイド孔)
16 第2のガイド部(第2のガイド孔)
17 ガイドピン
18 バネ収容部
19 バネ(底部バネ)
OK おぼろ昆布
CK 昆布包丁
KL 昆布