(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025147249
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】マルチピースソリッドゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20250930BHJP
【FI】
A63B37/00 626
A63B37/00 620
A63B37/00 656
A63B37/00 654
A63B37/00 640
A63B37/00 650
A63B37/00 648
A63B37/00 666
A63B37/00 136
A63B37/00 644
A63B37/00 538
A63B37/00 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047427
(22)【出願日】2024-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英郎
(57)【要約】
【課題】新たな標準総合距離(ODS)ルールへの適合を図るために、アマチュアユーザーがフルショットした時の飛距離は落ちることなく良好に維持でき、アマチュアユーザーがアプローチ時のボールを上げやすく、ソフト感と弾き感のある打感を付与するゴルフボールを提供する。
【解決手段】コア、包囲層、中間層及びカバーを具備し、該カバーの外表面には多数のディンプルが形成され、各球体の表面硬度の関係を特定し、ボールの初速を75.0~77.724m/sに設定すると共に、レイノルズ数218000,スピンレート2800rpmにおける揚力係数/抗力係数、レイノルズ数184000,スピンレート2900rpmにおける揚力係数/抗力係数、及び、レイノルズ数158000,スピンレート3100rpmにおける揚力係数/抗力係数に対する比の関係を特定することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、単層又は複数層の包囲層、単層の中間層及び単層のカバーを具備し、該カバーの外表面には多数のディンプルが形成されるマルチピースソリッドゴルフボールであって、上記コアはゴム材料により形成され、上記の包囲層、中間層及びカバーは樹脂材料により形成され、ボール,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係について下記式(1-a)及び下記式(1-b)
(ボールの表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-a)
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-b)
(但し、硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たし、コア,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係について下記式(2-a)または下記式(2-b)
(包囲層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-a)
(中間層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-b)
(但し、硬度はショアC硬度を意味する。)
の少なくともどちらか一方の式を満たし、ボールの初速が75.0~77.724m/sであると共に、レイノルズ数218000,スピンレート2800rpmにおける揚力係数CL1の抗力係数CD1に対する比CL1/CD1をA1、レイノルズ数184000,スピンレート2900rpmにおける揚力係数CL2の抗力係数CD2に対する比CL2/CD2をA2、レイノルズ数158000,スピンレート3100rpmにおける揚力係数CL3の抗力係数CD3に対する比CL3/CD3をA3としたとき、下記の2式
0.590≦A1≦0.655、及び
(A2+A3)/2≧0.670
を満たし、且つ、上記ディンプルの体積占有率VRが0.75~0.89%であり、上記ディンプルの総体積をD(mm3)、ボールに対して初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、下記式
95≦D/B≦140
を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】
上記A1の値が0.590~0.613、上記A2の値が0.635~0.668、上記A3の値が0.695~0.734である請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】
上記A1の値が0.614~0.655、上記A2の値が0.669~0.750、上記A3の値が0.735~0.815である請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項4】
上記の(A2+A3)/2の値が、0.670~0.783である請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項5】
上記カバーがアイオノマー樹脂を主材として形成される請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項6】
各球体の表面硬度の関係が、下記式
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度)
(但し、硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項7】
上記コアの硬度分布において、コアの中心のショアC硬度をCc、コアの中心と表面との中点MのショアC硬度をCm、中点Mから内側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm-2、Cm-4、Cm-6、中点Mから外側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm+2、Cm+4、Cm+6、コアの表面のショアC硬度をCsとしたとき、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
について、下記式
{(面積D+面積E)-(面積A+面積B)}≧4.0
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項8】
上記コアの硬度分布において、下記の式
(Cs-Cc)≧20
を満たす請求項7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項9】
上記コアの硬度分布において、下記の式
(Cs-Cc)/(Cm-Cc)≧4.0
を満たす請求項7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項10】
上記コアの硬度分布において、下記式
面積E>面積D>面積C
を満たす請求項7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項11】
上記コアが、下記(A)~(D)成分
(A)基材ゴム
(B)有機過酸化物
(C)水またはモノカルボン酸金属塩
(D)硫黄
を含有するゴム組成物により形成される請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2028年1月以降に適用される、新たな標準総合距離(ODS)ルールへの適合を図りながら、アマチュアユーザーにとっては、飛びが良好であると共に、アプローチした時に上げやすく、ゴルフゲームの易しさを追求したマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
2022年3月にR&AとUSGAとからゴルフボールの製造業者に対して、将来的にゴルフボールの標準総合距離(ODS)のテスト条件を変更することにより、ロンゲストヒッターの飛距離を抑制する研究を開始するとの通知があった。そして、更に、2023年12月には、R&AとUSGAから具体的に以下の発表があった。
“ルール適合のための標準総合距離(ODS)でのクラブヘッドスピードを現行の54m/sから56m/sに引き上げる。即ち、ロンゲストヒッターの打撃条件で13~15yard(11.9~13.7m)の影響が予測されている。”
このテスト変更の施行は2028年1月からとなるが、競技志向でないレクリエーショナルゴルフに関しては2030年1月1日までは使用できるとされている。
【0003】
したがって、ヘッドスピードの高いロンゲストヒッターの打撃条件においては、現在のボールよりも上記のように飛距離が抑制されるボールが必要となる時期が近づいている。一方、アマチュアユーザー向けのゴルフボールとしては、上記の飛距離が抑制されるボールであっても、アマチュアユーザーのヘッドスピードにおける打撃条件において、飛距離はできるだけ大きいことが望まれる。また、競技志向でないアマチュアユーザーにとっては、アプローチ時にボールを上げることが難しいことから、アプローチ時に上げやすいこと、即ち、打出角が高くなることが“アプローチが易しいボール”と捉えられやすい。更には、アマチュアユーザーはソフトでありながら、弾き感があり飛びそうな打感を好む。これらの全ての特性をアマチュアユーザーが同時に満足できるようなボールを開発することが望まれる。
【0004】
また、過去において、ボール初速を通常のゲームボールより低く設定したゴルフボールがいくつか提案されている。このような技術文献としては、例えば、下記の特許文献1~5が挙げられる。
【0005】
しかしながら、上記提案のゴルフボールについては、いずれも、単にゲームボールより飛距離が出ないように設計された練習場向けの練習ボールである。従って、上記の各特許文献には、アマチュアユーザーが打撃した時の良好な飛距離性能やアプローチしたときのボールの上げやすさ及び打感については何ら検討されていない。
【0006】
また、ボール表面に形成されるディンプルについて、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球容積、即ち、ディンプル体積占有率VRを所定範囲に特定して、高ヘッドスピード(HS)領域における飛距離を抑制しながら、低HS領域において優位な飛距離を得ることのできるゴルフボールとして、下記の特許文献6~14が挙げられる。
【0007】
しかしながら、上記提案のゴルフボールについては、高ヘッドスピード領域における飛距離低下が大きすぎると共に、アマチュアユーザーのフルショットしたときの飛距離も満足できるものではなかった。また、上記の各特許文献には、アプローチした時のボールの上げやすさ及び打感については何ら考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-228470号公報
【特許文献2】特開2014-069045号公報
【特許文献3】特開2013-138857号公報
【特許文献4】特開2013-138839号公報
【特許文献5】特開2013-138840号公報
【特許文献6】特開2011-218160号公報
【特許文献7】特開2011-218161号公報
【特許文献8】特開2011-218162号公報
【特許文献9】特開2011-240122号公報
【特許文献10】特開2011-240123号公報
【特許文献11】特開2011-240124号公報
【特許文献12】特開2011-240125号公報
【特許文献13】特開2011-240126号公報
【特許文献14】特開2011-240127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、2028年1月以降に適用される、新たな標準総合距離(ODS)ルールへの適合を図るためのゴルフボールであって、ロンゲストヒッターが打撃した時の飛距離の抑制が特定のレベル以上に生ずるだけではなく、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)及びアイアンでフルショットしたときの飛距離は落ちることなく良好に維持でき、そのうえ、アマチュアユーザーがアプローチしたときの打出角は高くなり、ボールを上げやすく、且つ、弾き感があり飛びそうな打感を有するマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、包囲層、中間層及びカバーを具備し、該カバーの外表面には多数のディンプルが形成されるマルチピースソリッドゴルフボールについて、上記コアをゴム材料により形成し、上記の包囲層、中間層及びカバーを樹脂材料により形成し、ボール,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係については、下記式(1-a)及び下記式(1-b)
(ボールの表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-a)
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-b)
を満たし、コア,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係については、下記式(2-a)または下記式(2-b)
(包囲層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-a)
(中間層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-b)
の少なくともどちらか一方の式を満たすように設定し、ボールの初速を75.0~77.724m/sの範囲に設定すると共に、レイノルズ数218000,スピンレート2800rpmにおける揚力係数CL1の抗力係数CD1に対する比CL1/CD1をA1、レイノルズ数184000,スピンレート2900rpmにおける揚力係数CL2の抗力係数CD2に対する比CL2/CD2をA2、レイノルズ数158000,スピンレート3100rpmにおける揚力係数CL3の抗力係数CD3に対する比CL3/CD3をA3としたとき、下記の2式
0.590≦A1≦0.655、及び
(A2+A3)/2≧0.670
を満たし、且つ、上記ディンプルの体積占有率VRが0.75~0.89%となり、上記ディンプルの総体積をD(mm3)、ボールに対して初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、下記式
95≦D/B≦140
を満たすようにマルチピースソリッドゴルフボールを設計することにより、新たな標準総合距離(ODS)ルールの適合を図ることができること、即ち、ロンゲストヒッターが打撃した時の飛距離の抑制が特定のレベル以上に生ずると共に、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)及びアイアンでフルショットしたときの飛距離は落ちずに、逆に飛距離が出るようになることを知見した。また、上記の設計されたマルチピースソリッドゴルフボールにおいては、アマチュアユーザーがアプローチした時のボールの打出角は高くなり、ボールを上げやすくなり、“アプローチが易しい”ボールとなり、更には、アマチュアユーザーがフルショットした時に、軟らかさと弾き感のある飛びそうな感じを併せ持つ打感を有することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
なお、上記の「ロンゲストヒッター」とは、ドライバー(W#1)打撃時のヘッドスピードが50m/s以上のゴルファーであり、上記の「競技志向でないアマチュアゴルファー」とは、ドライバー(W#1)のヘッドスピードが45m/s以下で、ハンディキャップを有する場合は凡そ30以上のゴルファーを意味する。
【0012】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
1.コア、単層又は複数層の包囲層、単層の中間層及び単層のカバーを具備し、該カバーの外表面には多数のディンプルが形成されるマルチピースソリッドゴルフボールであって、上記コアはゴム材料により形成され、上記の包囲層、中間層及びカバーは樹脂材料により形成され、ボール,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係について下記式(1-a)及び下記式(1-b)
(ボールの表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-a)
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-b)
(但し、硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たし、コア,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係について下記式(2-a)または下記式(2-b)
(包囲層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-a)
(中間層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-b)
(但し、硬度はショアC硬度を意味する。)
の少なくともどちらか一方の式を満たし、ボールの初速が75.0~77.724m/sであると共に、レイノルズ数218000,スピンレート2800rpmにおける揚力係数CL1の抗力係数CD1に対する比CL1/CD1をA1、レイノルズ数184000,スピンレート2900rpmにおける揚力係数CL2の抗力係数CD2に対する比CL2/CD2をA2、レイノルズ数158000,スピンレート3100rpmにおける揚力係数CL3の抗力係数CD3に対する比CL3/CD3をA3としたとき、下記の2式
0.590≦A1≦0.655、及び
(A2+A3)/2≧0.670
を満たし、且つ、上記ディンプルの体積占有率VRが0.75~0.89%であり、上記ディンプルの総体積をD(mm3)、ボールに対して初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、下記式
95≦D/B≦140
を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.上記A1の値が0.590~0.613、上記A2の値が0.635~0.668、上記A3の値が0.695~0.734である上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
3.上記A1の値が0.614~0.655、上記A2の値が0.669~0.750、上記A3の値が0.735~0.815である上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.上記の(A2+A3)/2の値が、0.670~0.783である上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
5.上記カバーがアイオノマー樹脂を主材として形成される上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
6.各球体の表面硬度の関係が、下記式
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度)
(但し、硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.上記コアの硬度分布において、コアの中心のショアC硬度をCc、コアの中心と表面との中点MのショアC硬度をCm、中点Mから内側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm-2、Cm-4、Cm-6、中点Mから外側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm+2、Cm+4、Cm+6、コアの表面のショアC硬度をCsとしたとき、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
について、下記式
{(面積D+面積E)-(面積A+面積B)}≧4.0
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
8.上記コアの硬度分布において、下記の式
(Cs-Cc)≧20
を満たす上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.上記コアの硬度分布において、下記の式
(Cs-Cc)/(Cm-Cc)≧4.0
を満たす上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10.上記コアの硬度分布において、下記式
面積E>面積D>面積C
を満たす上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
11.上記コアが、下記(A)~(D)成分
(A)基材ゴム
(B)有機過酸化物
(C)水またはモノカルボン酸金属塩
(D)硫黄
を含有するゴム組成物により形成される上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールによれば、2028年1月以降に適用される、新たな標準総合距離(ODS)ルールへの適合を図るゴルフボールであり、ロンゲストヒッターのドライバー打撃時に対して飛距離を落としつつも、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)及びアイアンでフルショットしたときの飛距離は落ちずに、逆に飛距離を伸ばすことができる。また、本発明のゴルフボールは、アマチュアユーザーがアプローチした時のボールの打出角は高くなり、ボールを上げやすくなり、アプローチ時に易しさを感じられる。更に、本発明のゴルフボールは、アマチュアユーザーがフルショットした時に、軟らかさと飛びそうな感じを併せ持つ打感を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のマルチピースソリッドゴルフボール(4層構造)の概略断面図である。
【
図2】コア硬度分布の面積A~Fを説明するために、実施例1のコア硬度分布データを用いて説明した概略図である。
【
図3】実施例1~4及び比較例1~5のコア硬度分布を示すグラフである。
【
図4】比較例6~15のコア硬度分布を示すグラフである。
【
図5】実施例1~4及び比較例1~15で用いたディンプル(1)~(5)の配列態様(模様)であり、(A)は、ディンプルの平面図を示し、(B)は、その側面図を示す。
【0015】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、コア、包囲層、中間層及びカバーを有し、
図1にその一例を示す。
図1に示したゴルフボールGは、単層コア1と、該コアを被覆する単層の包囲層2と、該包囲層を被覆する単層の中間層3と、該中間層を被覆する単層のカバー4を有している。このカバー4は、塗料層を除き、ゴルフボールの層構造での最外層に位置するものである。コア及び包囲層の各層は、
図1に示すような単層のほか、複数層に形成することができる。なお、上記カバー(最外層)4の表面には、空力特性を本発明の狙いの特性にするために、ディンプルDが多数形成される。また、カバー2の表面には、特に図示してはいないが、通常、塗料層が形成される。以下、上記の各層について詳述する。
【0016】
上記コアは、ゴム材を主材とするゴム組成物を加硫することにより得られる。コア材料がゴム組成物ではないとコアの反発性が低くなり、ロンゲストヒッターが打撃した場合だけでなく、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)及びアイアンの打撃時に所望の飛距離が得られなくなることがある。このゴム組成物としては、通常、基材ゴムを主体とし、これに、共架橋剤、架橋開始剤、不活性充填材、有機硫黄化合物等を配合させてゴム組成物を得るものである。
【0017】
上記コアとしては、特に、下記(A)~(D)成分
(A)基材ゴム
(B)有機過酸化物
(C)水またはモノカルボン酸金属塩
(D)硫黄
を含有するゴム組成物により形成されることが好適である。
【0018】
(A)基材ゴムとしては、ジエン系ゴムを含むことができる。このジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0019】
(B)有機過酸化物としては、熱分解温度が比較的高温な有機過酸化物を使用することが好適であり、具体的には、1分間半減期温度が約165~185℃の高温な有機過酸化物を使用するものであり、例えば、ジアルキルパーオキサイド類を挙げることができる。ジアルキルパーオキサイド類として、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。半減期は、有機過酸化物の分解速度の程度を表す指標の一つであり、もとの有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が1/2になるまでに要する時間によって示される。コア用ゴム組成物における加硫温度は、通常、120~190℃の範囲内であり、その範囲内では、1分間半減期温度が約165℃~185℃と高温な有機過酸化物は比較的遅く熱分解する。本発明で用いられるゴム組成物によれば、加硫時間の経過とともに増加する遊離ラジカルの生成量を調整することにより、後述する特定の内部硬度形状を有するゴム架橋物であるコアを得ることができる。
【0020】
(C)水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上であり、上限としては、好ましくは2質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
【0021】
コア材料に直接的に(C)成分として水または水を含む材料を配合することにより、コア配合中の有機過酸化物の分解を促進することができる。また、コア用ゴム組成物中の有機過酸化物は、温度によって分解効率が変化することが知られており、ある温度よりも高温になるほど分解効率が上がる。温度が高すぎると、分解したラジカル量が多くなりすぎてしまい、ラジカル同士で再結合や不活性化してしまうことになる。その結果、架橋に有効に働くラジカルが減ることになる。ここで、コア加硫の際に有機過酸化物が分解することで分解熱が発生するとき、コア表面付近は加硫モールドの温度とほぼ同程度を維持しているが、コア中心付近は外側から分解していった有機過酸化物の分解熱が蓄積されるため、モールド温度よりもかなり高温になる。コアに直接的に水または水を含む材料を配合した場合、水は有機過酸化物の分解を助長する働きがあるため、上述したようなラジカル反応をコア中心とコア表面において変化させることができる。即ち、コア中心付近では有機過酸化物の分解が更に助長され、ラジカルの不活性化がより促されることで有効ラジカル量が更に減少するため、コア中心とコア表面との架橋密度が大きく異なるコアを得ることができ、且つ、コア中心部の動的粘弾性特性の異なるコアを得ることができる。
【0022】
また、上記の水の代わりに、モノカルボン酸金属塩を採用することができる。モノカルボン酸金属塩は、カルボン酸が金属塩に対して配位結合していると推定され、化学式で〔CH2=CHCOO〕2Znで表わされるジアクリル酸亜鉛のようなジカルボン酸金属塩とは区別される。モノカルボン酸金属塩は、脱水縮合反応をすることによりゴム組成物中に水をもたらすため、上記水と同様の効果を得ることができる。また、モノカルボン酸金属塩は、粉体としてゴム組成物に配合することができるため、作業工程を簡略化することができると共に、ゴム組成物中に均一に分散させることが容易である。なお、上記の反応を効果的に行うためには、モノ塩であることが必要である。モノカルボン酸金属塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは3質量部以上である。上限としては、モノカルボン酸金属塩の配合量は、60質量部以下配合することが好ましく、より好ましくは50質量部以下である。上記モノカルボン酸金属塩の配合量が少なすぎると、適切な架橋密度を得ることが困難となり、十分にゴルフボールの低スピン効果を得ることができないことがある。また、配合量が多すぎる場合には、コアが硬くなりすぎるため、適切な打感を保つことが困難になる場合がある。
【0023】
上記のカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ステアリン酸等を使用することができる。置換金属としては、Na、K、Li、Zn、Cu、Mg、Ca、Co、Ni、Pb等が挙げられるが、好ましくはZnが好適に用いられる。具体例としては、モノアクリル酸亜鉛、モノメタクリル酸亜鉛等が挙げられ、特に、モノアクリル酸亜鉛を用いることが好ましい。
【0024】
(D)硫黄としては、具体的には、商品名「サンミックスS-80N」(三新化学工業社製)、「サルファックス-5」(鶴見化学工業社製)等が例示される。硫黄の配合量は、0超とすることができ、好ましくは上記基材ゴム100質量部に対して0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下、更に好ましくは0.03質量部以下とすることができる。硫黄の添加によりコアの硬度差を大きくすることができる。なお、硫黄の配合量が多すぎた場合、反発性が大きく低下したり、繰り返し打撃耐久性が低下することがある。
【0025】
上記ゴム組成物には上記(A)~(D)成分以外の成分として、共架橋剤、充填材、老化防止剤、有機硫黄化合物などを配合することができる。
【0026】
共架橋剤は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。不飽和カルボン酸として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0027】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、通常5質量部以上、好ましくは9質量部以上、更に好ましくは13質量部以上、上限として通常60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0028】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填材の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは4質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは11質量部以上とすることができる。また、この配合量の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下とすることができる。この配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0029】
老化防止剤としては、例えば、ノクラックNS-6、同NS-30、同200、同MB(大内新興化学工業(株)製)等の市販品を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0031】
有機硫黄化合物は、コアの反発性を上げる方向にコントロールするために配合することができる。有機硫黄化合物として具体的には、チオフェノール、チオナフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0032】
有機硫黄化合物の配合量は、上限値として、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下である。この配合量が多すぎると、コアの硬さが軟らかくなりすぎ、あるいはコアの反発が高くなりすぎてロンゲストヒッターのドライバー打撃時の飛距離が出すぎることがある。
【0033】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0034】
本発明では、上記コアは単層もしくは複数層に形成されるが、単層に形成されることが好適である。複数層のゴム製コアに作製すると、繰り返し打撃した時に界面から剥離が生じ、早期に割れてしまう場合がある。
【0035】
コアの直径は、32.7mm以上であることが好ましく、より好ましくは34.3mm以上、さらに好ましくは34.9mm以上である。この直径の上限値は、好ましくは36.5mm以下、より好ましくは36.1mm以下、さらに好ましくは35.7mm以下である。コアの直径が小さすぎると、ボール初速が低くなりすぎたり、あるいはボール全体のたわみ量が小さくなり、フルショット時のボールのスピン量が増えてしまい、アマチュアユーザーがフルショットした時の所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、コアの直径が大きすぎると、フルショット時のスピン量が増えてアマチュアユーザーの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0036】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは3.6mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは4.3mm以上であり、上限値として、好ましくは5.5mm以下、より好ましくは5.2mm以下、さらに好ましくは4.9mm以下である。上記コアのたわみ量が小さすぎる、即ち、コアが硬すぎると、フルショットした時のスピン量が増えすぎてアマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃およびアイアン打撃時の飛距離が出なくなりすぎたり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記コアのたわみ量が大きすぎる、即ち、コアが軟らかすぎると、実打初速が低くなりすぎて、ロンゲストヒッターおよびアマチュアユーザーがドライバー(W#1)打撃したときの飛距離が落ちすぎたり、打感において弾き感がなくなり飛びそうな感じがしなくなったり、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなりすぎることがある。
【0037】
次に、上記コアの硬度分布については説明する。なお、以下に説明するコアの硬度はショアC硬度を意味する。このショアC硬度は、ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計にて計測した硬度値である。
【0038】
上記コアの中心硬度(Cc)は、好ましくは50以上、より好ましくは52以上、さらに好ましくは54以上であり、その上限値は、好ましくは62以下、より好ましくは59以下、さらに好ましくは56以下である。この値が大きすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記の値が小さすぎると、反発性が低くなりアマチュアユーザーの所望の飛距離が得られなくなり、打感において弾き感がなくなり飛びそうな感じがしなくなったり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0039】
上記コアの中心と表面の中間の位置M(以下「中間位置M」ともいう。)から内側に6mmの位置硬度(Cm-6)は、特に制限されるものではないが、好ましくは51以上、より好ましくは53以上、更に好ましくは55以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは63以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは57以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0040】
上記コアの中心と表面の中間の位置M(以下「中間位置M」ともいう。)から内側に4mmの位置硬度(Cm-4)は、特に制限されるものではないが、好ましくは51以上、より好ましくは53以上、更に好ましくは55以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは63以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは57以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0041】
上記コアの中間位置Mから内側に2mmの位置硬度(Cm-2)は、特に制限されるものではないが、好ましくは53以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは57以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは64以下、より好ましくは61以下、更に好ましくは59以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0042】
上記コアの中間位置Mの断面硬度(Cm)は、特に制限されるものではないが、好ましくは54以上、より好ましくは56以上、更に好ましくは58以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは66以下、より好ましくは63以下、更に好ましくは60以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0043】
上記コアの表面硬度(Cs)は、好ましくは70以上、より好ましくは72以上、さらに好ましくは74以上であり、その上限値は、好ましくは82以下、より好ましくは79以下、さらに好ましくは77以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記の値が小さすぎると、反発性が低くなり、あるいはフルショット時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0044】
上記コアの中間位置Mからコア表面に向けて外側(以下、単に「外側」という。)に2mmの位置硬度(Cm+2)は、特に制限されるものではないが、好ましくは59以上、より好ましくは61以上、更に好ましくは63以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは70以下、より好ましくは67以下、更に好ましくは65以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの表面硬度(Cs)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0045】
上記コアの中間位置Mから外側に4mmの位置硬度(Cm+4)は、特に制限されるものではないが、好ましくは63以上、より好ましくは65以上、更に好ましくは67以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは74以下、より好ましくは72以下、更に好ましくは70以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの表面硬度(Cs)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0046】
上記コアの中間位置Mから外側に6mmの位置硬度(Cm+6)は、特に制限されるものではないが、好ましくは64以上、より好ましくは66以上、更に好ましくは68以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは75以下、より好ましくは73以下、更に好ましくは71以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの表面硬度(Cs)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0047】
上記コアの表面硬度から中心硬度を引いた値、即ち、Cs-Ccの値は、好ましくは18以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは21以上であり、その上限値は、好ましくは30以下、より好ましくは27以下、さらに好ましくは24以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなることがあり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、この値が大きすぎると、反発性が低くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0048】
また、上記コアの硬度分布について、(Cs-Cc)/(Cm-Cc)の値を適正化することが好適である。(Cs-Cc)の値は、コアの中心と表面との硬度差を示し、(Cm-Cc)の値は、コア表面及びコア中心の中間点と、コア中心との硬度差を示すものであり、上記式は、これらの硬度差の比を表す。(Cs-Cc)/(Cm-Cc)の値は、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは4.0以上であり、その上限値は、好ましくは30.0以下、より好ましくは20.0以下、さらに好ましくは10.0以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られない場合がある。一方、上記の値が大きすぎると、反発性が低くなりアマチュアユーザーのドライバー(W#1)及びアイアン打撃時の狙いの飛距離が得られなくなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0049】
上記コア硬度分布においては、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
について、(面積D+面積E)-(面積A+面積B)の値が4.0以上であることが好ましく、より好ましくは4.5以上、より好ましくは5.0以上であり、上限値としては、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは8.0以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、この値が大きすぎると、反発性が低くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0050】
(面積D+面積E)-(面積B+面積C)の値が3.5以上であることが好ましく、より好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上あり、上限値としては、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、この値が大きすぎると、反発性が低くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0051】
{(面積D+面積E)-(面積A+面積B)}×(Cs-Cc)の値が80以上であることが好ましく、より好ましくは90以上、より好ましくは110以上であり、上限値としては、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、さらに好ましくは160以下である。また、{(面積D+面積E)-(面積B+面積C)}×(Cs-Cc)の値が70以上であることが好ましく、より好ましくは80以上、より好ましくは95以上であり、上限値としては、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、さらに好ましくは140以下である。また、これらの値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、これらの値が大きすぎると、反発性が低くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0052】
上記硬度分布から計算される各面積の関係は、好ましくは、面積E>面積C>面積Aであり、より好ましくは、(面積E+面積F)>面積D>面積C>面積Aであり、さらに好ましくは、(面積E+面積F)>面積D>(面積B+面積C)>面積Aである。これらの関係式を満たさないと、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0053】
なお、
図2には、実施例1のコア硬度分布データを用いて面積A~Fを説明した概略図を示す。このように面積A~Fは、各特定距離の差を底辺とし、各位置硬度の差を高さに持つ各三角形の面積である。
【0054】
次に、包囲層について説明する。
包囲層は、単層または複数層により形成される。包囲層が複数層の場合、包囲層の厚さについては総厚さが以下の厚さに該当し、包囲層の材料硬度(シート硬度)については平均の硬度を材料硬度とする。 包囲層が複数層の場合の表面硬度は、包囲層の最外側包囲層の被覆球体の表面硬度が、以下の表面硬度に該当する。
【0055】
包囲層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアC硬度で、好ましくは43以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは57以上であり、上限値として、好ましくは83以下、より好ましくは76以下、さらに好ましくは70以下である。ショアD硬度では、好ましくは25以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは35以上であり、上限値として、好ましくは55以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは45以下である。
【0056】
コアに包囲層を被覆した包囲層被覆球体の表面硬度は、ショアC硬度で、好ましくは51以上、より好ましくは58以上、さらに好ましくは65以上であり、上限値として、好ましくは91以下、より好ましくは84以下、さらに好ましくは78以下である。ショアD硬度では、好ましくは31以上、より好ましくは36以上、さらに好ましくは41以上であり、上限値として、好ましくは61以下、より好ましくは56以下、さらに好ましくは51以下である。
【0057】
これらの包囲層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショットでスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがある。また、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。一方、包囲層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲より硬すぎると、打感が硬くなりすぎソフト感が感じられなくなり、また、ロンゲストヒッターが打った時の飛距離が出過ぎてしまう場合がある。
【0058】
包囲層の厚さは、好ましくは0.8mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上である。一方、包囲層の厚さの上限値としては、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下である。上記包囲層が薄すぎると、アマチュアユーザーがフルショットした時のソフト感が感じられなくなったり、成形が難しくなり量産性が悪くなってしまうことがある。一方、包囲層が厚すぎると、反発性が低くなったりスピン量が増えたりして、アマチュアユーザーがフルショットした時の飛距離が出にくくなることがある。
【0059】
上記包囲層の材料としては、特に制限はなく公知の樹脂材料を用いることができ、具体的には、アイオノマー樹脂や、ウレタン系、アミド系、エステル系、オレフィン系、スチレン系の群から選ばれる熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上を使用することができる。本発明では、所望の硬度範囲において高い反発性が得られることから、エステル系熱可塑性エラストマー、特に熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーを好適に使用できる。
【0060】
次に、中間層について説明する。
中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアC硬度で、好ましくは71以上、より好ましくは78以上、さらに好ましくは84以上であり、上限値として、好ましくは95以下、より好ましくは92以下、さらに好ましくは90以下である。ショアD硬度では、好ましくは46以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは53以上であり、上限値として、好ましくは61以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは59以下である。
【0061】
コアに包囲層及び中間層を被覆した中間層被覆球体の表面硬度は、ショアC硬度で、好ましくは80以上、より好ましくは85以上、さらに好ましくは90以上であり、上限値として、好ましくは96以下、より好ましくは95以下、さらに好ましくは94以下である。ショアD硬度では、好ましくは52以上、より好ましくは56以上、さらに好ましくは59以上であり、上限値として、好ましくは67以下、より好ましくは65以下、さらに好ましくは63以下である。
【0062】
これらの中間層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショットでスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがある。また、アプローチしたときの打出角が低くなり、アマチュアユーザーにとって扱いが難しく感じるボールとなることがある。一方、中間層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲より硬すぎると、打感が硬くなりすぎたり、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなったり、ロンゲストヒッターが打った時の飛距離が出過ぎてしまう場合がある。
【0063】
中間層の厚さは、好ましくは0.8mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上である。一方、中間層の厚さの上限値としては、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.35mm以下である。上記中間層が薄すぎると、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなったり、成形が難しくなり量産性が悪くなってしまうことがある。一方、中間層が厚すぎると、打感が硬くなりすぎたり、反発性が低くなり、アマチュアユーザーが打撃した時に飛距離が出にくくなることがある。また、上記範囲を外れると、フルショットしたときのスピン量が多くなり、アマチュアユーザーが打撃した時に良好な飛距離が出なくなることがある。
【0064】
上記中間層の材料としては、アイオノマー樹脂を主材料とした樹脂材料が用いられ、特に、アイオノマー樹脂の中でも、高中和アイオノマー(Highly neutralized ionomer)が好適に用いられる。この高中和アイオノマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、商品名「HPF1000」、「HPF2000」、「HPF AD1035」、「HPF AD1040」(いずれもTHE DOW CHEMICAL COMPANY社製)を挙げることができる。上記の高中和アイオノマーを採用することにより、フルショットでのボールのスピン量を低減しつつボールの反発性は高くなり、アマチュアユーザーがフルショットした時に良好な飛距離を確実に得ることができる。なお、所望の中間層の材料硬度等を調整するために、高中和アイオノマーは、適宜、一般的なアイオノマーとブレンドすることができる。
【0065】
次に、カバーについて説明する。
カバーの材料硬度は、特に制限はないが、ショアC硬度で、好ましくは83以上、より好ましくは89以上、さらに好ましくは93以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは97以下、さらに好ましくは95以下である。ショアD硬度では、好ましくは55以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは63以上であり、上限値として、好ましくは75以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは68以下である。
【0066】
コア及びカバーを具備したボール(球体全体)の表面硬度は、ショアC硬度で、好ましくは90以上、より好ましくは93以上、さらに好ましくは95以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは99以下、さらに好ましくは98以下である。ショアD硬度では、好ましくは62以上、より好ましくは67以上、さらに好ましくは69以上であり、上限値として、好ましくは76以下、より好ましくは74以下、さらに好ましくは72以下である。
【0067】
これらのカバーの材料硬度及び表面硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショットでスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがある。また、アプローチしたときの打出角が低くなり、アマチュアユーザーにとって扱いが難しく感じるボールとなることがある。一方、カバーの材料硬度及び表面硬度が上記範囲より硬すぎると、打感が硬くなりすぎたり、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなったり、ロンゲストヒッターが打った時の飛距離が出過ぎてしまう場合がある。
【0068】
カバーの厚さは、好ましくは0.8mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上である。一方、カバーの厚さの上限値としては、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.35mm以下である。上記カバーが薄すぎると、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなったり、カバー成形が難しくなり量産性が悪くなってしまうことがある。 一方、カバーが厚すぎると、打感が硬くなりすぎたり、反発性が低くなり、アマチュアユーザーが打撃した時に飛距離が出にくくなることがある。また、上記範囲を外れると、フルショットしたときのスピン量が多くなり、アマチュアユーザーが打撃した時に良好な飛距離が出なくなることがある。
【0069】
上記カバーの材料としては、アイオノマー樹脂を主材料とした樹脂材料が用いられる。カバー材料としてウレタン材料を使用すると、硬い材料ではなくアプローチしたときの打出角が低くなり、アマチュアユーザーにとっては扱いが難しく感じられる場合がある。また、ウレタン材料の種類の中で最も硬いグレードの材料を選択しても、同一硬度のアイオノマー材料に比べて反発性が低くなり、アマチュアユーザーが打撃した時の飛距離が目標に達することができない。また、カバーを形成する際は、量産性の観点から、射出成形により中間被覆球体にカバーを被覆する方法を採用することが好ましい。
【0070】
アイオノマー樹脂を主材料とした樹脂材料を用いるが、その際に、亜鉛中和型アイオノマー樹脂とナトリウム中和型アイオノマー樹脂とを混合して主材として用いる態様が望ましい。その配合比率は、亜鉛中和型/ナトリウム中和型(質量比)で5/95~95/5、好ましくは20/80~90/10、更に好ましくは25/75~75/25である。この比率内にZn中和アイオノマーとNa中和アイオノマーを含めないと、反発性が低くなりすぎて所望の飛びが得られなかったり、常温での繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、更に低温(零下)での割れ耐久性が悪くなることがある。
【0071】
上記カバー材料には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0072】
上述したコア,包囲層、中間層及びカバー(最外層)の各層を積層して形成されたマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法については、公知の射出成形法等の常法により行なうことができる。例えば、コアの周囲に包囲層材料、中間層材料を順次、射出成形用金型で射出して包囲層被覆球体、中間層被覆球体を得、最後に、最外層であるカバーの材料を射出成形することによりマルチピースのゴルフボールを得ることができる。また、半殻球状に成形した2枚のハーフカップを予め用意し、これでコアや中間層被覆球体を包み加熱加圧成形することによりゴルフボールを作製することもできる。
【0073】
ゴルフボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、2.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.8mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上である。一方、上記たわみ量の上限値としては、好ましくは3.8mm以下、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.3mm以下である。ゴルフボールのたわみ量が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が増えすぎてしまい、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがあり、または打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記のたわみ量が大きすぎると、実打初速が低くなりすぎて、ロンゲストヒッター及びアマチュアユーザーがドライバー(W#1)打撃したときの飛距離が落ちすぎたり、打感が軟らかくなりすぎたり、または、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなりすぎることがある。
【0074】
ボールの初速は、好ましくは75.0m/s以上、より好ましくは76.5m/s以上、さらに好ましくは77.0m/s以上であり、上限値としては、77.724m/s以下である。この初速値が高すぎると、R&A及びUSGAの公認ルールを満たさなくなる。一方、この初速が低すぎると、フルショットした時の全ての打撃条件において、実打初速が低くなり、所望の飛距離が得られなくなることがある。この場合における上記の初速の値は、R&Aと同型のCOR型初速計にて計測した数値である。具体的には、米国のHye Precision製のCOR型初速装置を用いる。条件としては、測定の際は、エアの圧力を4段階に変更して測定し、入射速度とCORとの関係式を構築し、この関係式から、入射速度43.83m/s時の初速を求めるものである。なお、上記のCOR型初速装置の測定環境については、23.9±1℃に調整された恒温槽で3時間以上温調したボールを使用し、計測するときは、23.9±2℃の室温下で計測される。また、バレル径は、計測物の外径との間の片側のクリアランスが0.2~2.0mmの間で選択される。
【0075】
上記ボールの初速を上記ボールのたわみ量で割った値は、好ましくは19以上、より好ましくは21以上、さらに好ましくは23以上であり、上限値は、好ましくは30以下、より好ましくは28以下、さらに好ましくは26以下である。この値は、ボールの実打初速の大小を計る意義を有する。この値が大きすぎると、ロンゲストヒッターが打撃した時の飛距離が出すぎてしまい新たな標準総合距離(ODS)ルールへの適合ができなくなることがある。一方、この値が小さすぎると、フルショットでのボールのスピン量が増え、あるいは実打初速が低くなり、全ての打撃条件において所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0076】
カバーと中間層との総厚は、好ましくは2.0mm以上であり、より好ましくは2.2mm以上、さらに好ましくは2.4mm以上である。一方、この総厚の上限値としては、好ましくは3.8mm以下、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.7mm以下である。この総厚が薄すぎると、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなったり、中間層やカバーの成形が難しくなり、結果としてボールの量産性が悪くなってしまうことがある。一方、この総厚が厚すぎると、打感が硬くなりすぎたり、反発性が低くなり、アマチュアユーザーが打撃した時に飛距離が出にくくなることがある。また、上記範囲を外れると、フルショットしたときのスピン量が多くなり、アマチュアユーザーが打撃した時に良好な飛距離が出なくなることがある。
【0077】
カバーと中間層と包囲層との総厚は、好ましくは3.1mm以上であり、より好ましくは3.3mm以上、さらに好ましくは3.5mm以上である。一方、この総厚の上限値としては、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.2mm以下、さらに好ましくは3.9mm以下である。この総厚が上記範囲を逸脱した場合、上記のカバーと中間層との総厚について説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0078】
〔各球体の表面硬度の関係について〕
本発明は、ボール,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係については、下記式(1-a)及び下記式(1-b)
(ボールの表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-a)
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度) ・・・(1-b)
を満たし、コア,包囲層被覆球体,中間層被覆球体の各球体の表面硬度の関係については、下記式(2-a)または下記式(2-b)
(包囲層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-a)
(中間層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度) ・・・(2-b)
の少なくともどちらか一方の式を満たすことを要する。なお、上記式中の硬度は、いずれもショアC硬度を意味する。ボール表面硬度が、それより内層の表面硬度よりも硬くないと、アマチュアユーザーがアプローチした時の打出角が低くなり、アマチュアユーザーには難しいボールとなってしまう場合がある。また、中間層被覆球体の表面硬度及び包囲層被覆球体の表面硬度のうち軟らかい方の表面硬度は、コア表面硬度よりも低いことを要する。この硬度関係を満たさないと、フルショットした時のソフトな打感と弾き感のある飛びそうな打感との両立が難しくなることがある。
【0079】
上記硬度関係のより好ましい態様としては、下記式
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度)
を満たすことである。この硬度関係を満たさないと、アマチュアユーザーがアプローチした時の上げやすさと良好な打感と、さらには良好な繰り返し打撃耐久性との両立ができなくなることがある。
【0080】
本発明において最も好適な硬度関係は、下記式
(ボールの表面硬度)>(中間層被覆球体の表面硬度)>(包囲層被覆球体の表面硬度)<(コアの表面硬度)
を満たすことである。
【0081】
ボールの表面硬度から中間層被覆球体の表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で、好ましくは0より大きく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上であり、上限値としては、好ましくは25以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。上記値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)及びアイアンフルショットした時に狙いの飛距離が得られなくなり、あるいは、アプローチした時の打出角が低くなりアマチュアユーザーにとってアプローチが難しく感じられる場合がある。上記値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなり、全てのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が所望の距離よりも低くなることがある。
【0082】
中間層被覆球体の表面硬度から包囲層被覆球体の表面硬度を引いた値は、好ましくは0より大きく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、上限値としては、好ましくは40以下、より好ましくは32以下、さらに好ましくは25以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなったり、フルショットしたときにスピン量が多くなったり実打初速が低くなり、全てのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が所望の距離よりも低くなることがある。
【0083】
コアの表面硬度から包囲層被覆球体の表面硬度を引いた値は、好ましくは0より大きくなり、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限値としては、好ましくは12以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは6以下である。また、包囲層被覆球体の表面硬度からコアの中心硬度を引いた値は、ショアC硬度で、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは15以上であり、上限値としては、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。これらの値が大きすぎると、フルショットした時のソフト感が感じられなくなることがある。一方、これらの値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)及びアイアンフルショットした時に狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0084】
ボールの表面硬度からコアの表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で、好ましくは10以上、より好ましくは13以上、さらに好ましくは18以上であり、上限値としては、好ましくは35以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。また、ボールの表面硬度からコアの中心硬度を引いた値は、ショアC硬度で、好ましくは30以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、上限値としては、好ましくは55以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは45以下である。これらの値が大きすぎると、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなり、全てのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が所望の距離より低くなる場合がある。一方、これらの値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0085】
〔コア及びボールのたわみ量の関係について〕
コア及びボールの各球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)をそれぞれC(mm)、B(mm)としたとき、C-Bの値は、好ましくは1.00mm以上、より好ましくは1.20mm以上、さらに好ましくは1.40mm以上であり、上限値は、好ましくは2.00mm以下、より好ましくは1.80mm以下、さらに好ましくは1.60mm以下である。また、上記のC/Bの値は、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.30以上、さらに好ましくは1.40以上であり、上限値は、好ましくは1.60以下、より好ましくは1.55以下、さらに好ましくは1.50以下である。これらの値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなって、全てドライバー(W#1)打撃時の飛距離が所望の距離より低く場合がある。または、フルショットしたときに芯が感じられずに飛びそうな感じがしなくなることがある。一方、これらの値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時及びアイアン打撃時の所望の飛距離が得られなくなり、あるいは、軟らかい打感が感じられなくなることがある。
【0086】
〔コア直径とボールの直径について〕
コア直径とボール直径との関係、即ち、(コア直径)/(ボール直径)の値が、0.766以上であることが好ましく、より好ましくは0.803以上、さらに好ましくは0.817以上である。一方、上限値としては、好ましくは0.855以下、より好ましくは0.845以下、さらに好ましくは0.836以下である。この値が小さすぎると、ボール初速が低くなり、あるいはボール全体のたわみ量が小さくなりボールが硬くなってしまい、フルショット時のボールのスピン量が増えて、アマチュアユーザーがフルショットした時の所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、上記値が大きすぎると、フルショット時のボールのスピン量が増えて、アマチュアユーザーがフルショットしたときの所望の飛距離が得られなくなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0087】
カバーの外表面には多数のディンプルを形成することができる。カバー表面に配置されるディンプルについては、特に制限はないが、好ましくは280個以上、好ましくは300個以上、より好ましくは310個以上であり、上限として、好ましくは450個以下、より好ましくは400個以下、さらに好ましくは350個以下具備することができる。ディンプルの個数が上記範囲を逸脱すると、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が低くなることがある。
【0088】
ディンプルの形状については、円形、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.08mm以上0.30mm以下とすることができる。
【0089】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、具体的には、ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(SR値)については、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは84%以上であり、上限値としては、90%以下、より好ましくは88%以下、さらに好ましくは86%以下である。このSR値が上記範囲を逸脱すると、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が低くなることがある。
【0090】
ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は0.75%以上であり、好ましくは0.78%以上、より好ましくは0.80%以上であり、上限値としては、0.89%以下、より好ましくは0.88%以下、より好ましくは0.86%以下である。このVR値が上記範囲より大きいと、ロンゲストヒッターのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が落ちすぎ、または、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時の飛距離について狙いの飛距離が得られない場合がある。また、この場合、弾道が低くなり、キャリーが出にくくなり、谷や池を越え難くなることがある。一方、上記の値が小さすぎると、ロンゲストヒッターのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が落ちずに、新たな標準総合距離(ODS)ルールの上限の距離よりも飛びすぎるおそれがある。
【0091】
ディンプルの総体積は、ボール1個に形成される全ディンプルにおいて、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成される各ディンプル容積の合計を意味する。このディンプル総体積は、特に制限はないが、好ましくは306mm3以上、より好ましくは318mm3、さらに好ましくは326mm3以上であり、上限値としては、好ましくは363mm3以下、より好ましくは359mm3以下、さらに好ましくは351mm3以下である。このディンプル総体積の値が上記範囲より大きいと、ロンゲストヒッターのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が落ちすぎ、または、アマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時の飛距離について狙いの飛距離が得られない場合がある。また、この場合、弾道が低くなり、キャリーが出にくくなり、谷や池を越え難くなることがある。一方、上記の値が小さすぎると、ロンゲストヒッターのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が落ちずに、新たな標準総合距離(ODS)ルールの上限の距離よりも飛びすぎるおそれがある。
【0092】
各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V0は、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.38以上、さらに好ましくは0.40以上であり、上限値としては、0.80以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.60以下である。このV0値が上記範囲を逸脱すると、ロンゲストヒッター及びアマチュアユーザーのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が狙いより低くなることがある。
【0093】
本発明のゴルフボールについては、レイノルズ数218000,スピンレート2800rpmにおける揚力係数CL1の抗力係数CD1に対する比(CL1/CD1)をA1、レイノルズ数184000,スピンレート2900rpmにおける揚力係数CL2の抗力係数CD2に対する比(CL2/CD2)をA2、レイノルズ数158000,スピンレート3100rpmにおける揚力係数CL3の抗力係数CD3に対する比(CL3/CD3)をA3としたとき、下記の2式
0.590≦A1≦0.655、及び
(A2+A3)/2≧0.670
を満たすようにディンプルは適宜設計されるものである。
【0094】
本明細書において、「揚力係数(CL1、CL2、CL3)、抗力係数(CD1、CD2、CD3)」は、USGA(United States Golf Association、全米ゴルフ協会)が定めるITR(Indoor Test Range)に準拠して測定される。揚力係数及び抗力係数は、ゴルフボールのディンプルの構成(配列、直径、深さ、体積、数、形状等)の調整により、調整することができる。揚力係数及び抗力係数は、ゴルフボールの内部構成には依存しないものである。レイノルズ数(Re)は、流体力学の分野にて用いられる無次元数である。レイノルズ数(Re)は、下記の式(1)によって算出される。
Re = ρvL/μ (1)
上記式(1)において、ρは流体の密度を表し、vは物体の流体の流れに対する相対的な平均速度を表し、Lは特性長さを表し、μは流体の粘性係数を表す。
【0095】
本発明では、レイノルズ数218000,スピンレート2800rpmにおける揚力係数CL1の抗力係数CD1に対する比CL1/CD1をA1、レイノルズ数184000,スピンレート2900rpmにおける揚力係数CL2の抗力係数CD2に対する比CL2/CD2をA2、レイノルズ数158000,スピンレート3100rpmにおける揚力係数CL3の抗力係数CD3に対する比CL3/CD3をA3と定義する。
【0096】
上記揚力係数CL1、抗力係数CD1が測定される条件であるレイノルズ数218000及びスピンレート2800rpmについて説明すると、この高速条件は、ロンゲストヒッターがドライバー(W#1)で打ち出す条件に相当し、このレイノルズ数はゴルフボールをヘッドスピード(HS)54m/sで打ち出した時のボールスピードに相当し、スピンレート2800rpmはヘッドスピード(HS)54m/sのプレーヤーの平均的なスピン条件である。
【0097】
上記揚力係数CL2、抗力係数CD2が測定される条件であるレイノルズ数184000及びスピンレート2900rpmについて説明すると、この中速条件は、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)45m/sで打ち出す条件に相当し、このレイノルズ数はゴルフボールをヘッドスピード(HS)45m/sで打ち出した時のボールスピードに相当し、スピンレート2900rpmはヘッドスピード(HS)45m/sのプレーヤーの平均的なスピン条件である。
【0098】
上記揚力係数CL3、抗力係数CD3が測定される条件であるレイノルズ数158000及びスピンレート3100rpmについて説明すると、この低速条件は、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)40m/sで打ち出す条件に相当し、このレイノルズ数はゴルフボールをヘッドスピード(HS)40m/sで打ち出した時のボールスピードに相当し、スピンレート3100rpmはヘッドスピード(HS)40m/sのプレーヤーの平均的なスピン条件である。
【0099】
上記の揚力係数CL1と抗力係数CD1との比、即ち、CL1/CD1=A1の値は、0.590以上であり、好ましくは0.595以上、より好ましくは0.600以上であり、上限値は、0.655以下、好ましくは0.640以下、より好ましくは0.627以下である。この値が大きすぎると、ロンゲストヒッターがドライバー(W#1)で打撃した時の飛距離が落ちずに、新たな標準総合距離(ODS)ルールの上限の距離よりも飛びすぎるおそれがある。 一方、上記の値が小さすぎると、全ての打撃条件において、狙いよりも飛距離が低くなりすぎることがある。
【0100】
上記A1の値が0.590~0.613のとき、上記の揚力係数CL2と抗力係数CD2との比、即ち、CL2/CD2=A2の値は、0.635以上であることが好ましく、より好ましくは0.645以上、さらに好ましくは0.655以上であり、上限値は、好ましくは0.668以下、より好ましくは0.666以下、さらに好ましくは0.664以下である。また、上記A1の値が0.614~0.655のとき、A2の値は、0.669以上であることが好ましく、より好ましくは0.671以上、さらに好ましくは0.673以上であり、上限値は、好ましくは0.750以下、より好ましくは0.725以下、さらに好ましくは0.700以下である。上記値が上記範囲を逸脱すると、全ての打撃条件において、ボールが吹け上がったり伸びがなくなったりして、キャリーが出ない弾道となり、狙いのトータル距離が得られなくなることがある。
【0101】
上記A1の値が0.590~0.613のとき、上記の揚力係数CL3と抗力係数CD3との比、即ち、CL3/CD3=A3の値は、0.695以上であることが好ましく、より好ましくは0.705以上、さらに好ましくは0.715以上であり、上限値は、好ましくは0.734以下、より好ましくは0.731以下、さらに好ましくは0.728以下である。また、上記A1の値が0.614~0.655のとき、A3の値は、0.735以上であることが好ましく、より好ましくは0.738以上、さらに好ましくは0.741以上であり、上限値は、好ましくは0.815以下、より好ましくは0.780以下、さらに好ましくは0.760以下である。上記値が上記範囲を逸脱すると、全ての打撃条件において、ボールが吹け上がったり、伸びがなくなったりしてキャリーが出ない弾道となり、狙いのトータル距離が得られなくなることがある。
【0102】
上記のA2とA3との値の平均値、即ち、(A2+A3)/2の値は、0.670以上であり、好ましくは0.680以上、より好ましくは0.690以上であり、上限値としては、好ましくは0.783以下、より好ましくは0.775以下、さらに好ましくは0.765以下である。この値が低すぎると、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)で打撃した時にキャリーが出ずに、狙いのトータル飛距離が得られない場合がある。一方、上記の値が高すぎると、アマチュアユーザーがドライバー(W#1)で打撃した時に吹けあがる弾道となり、狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0103】
上記ディンプルの総体積をD(mm3)、ボールに対して初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、D/Bの値は、好ましくは140以下、より好ましくは130以下、さらに好ましくは120以下である。一方、この下限値は、好ましくは95以上、より好ましくは97以上、さらに好ましくは100以上である。このD/Bは、ドライバー(W#1)打撃時においてロンゲストヒッターが打撃した時には適正な飛距離抑制効果が生じ、アマチュアユーザーが打撃した際には良好な飛距離が得られやすくなる指標を意味する。この値が上記範囲を逸脱すると、ロンゲストヒッター及びアマチュアユーザーがドライバー(W#1)で打撃した時に狙った飛距離が得られなくなることがある。
【0104】
なお、本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径は42.672mm内径のリングを通過しない大きさであり、質量は好ましくは45.0~45.93gに形成することができる。
【実施例0105】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0106】
〔実施例1~4、比較例1~15〕
コアの形成
比較例8、10、12~14については、表1に示した各例のゴム組成物を調製した後、表1に示す各例の加硫条件により加硫成形することによりソリッドコアを作製した。
【0107】
実施例1~4及び比較例1~7、9,11,15については、上記と同様に、表1の配合に基づいてコアを作製する。
【0108】
【0109】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエン A:商品名「BR01」(ENEOSマテリアル社製)
・ポリブタジエン B:商品名「Diene645」(FIRESTONE POLYMERS社)
・ポリブタジエン C:商品名「BUDENE 1224G」(Goodyear Tire & Rubber Company社)
・イソプレンゴム:商品名「IR2200」(ENEOSマテリアル社製)
・スチレン・ブタジエンゴム:商品名「SBR1507」(ENEOSマテリアル社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・メタクリル酸亜鉛:商品名「ZDA-90」(浅田化学工業社製)
・ステアリン酸亜鉛:商品名「BR-3T」(Akrochem社製)
・有機過酸化物A:ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・有機過酸化物B:1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカとの混合物、商品名「パーヘキサC-40」(日油社製)
・硫黄:商品名「サンミックスS-80N」(三新化学工業社製、ゴム用粉末硫黄を80wt%含有したもの)
・水:純水(正起薬品工業社製)
・老化防止剤:2,2-メチレンビス(4-メチル-6-ブチルフェノール)、商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学工業社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:富士フィルム和光純薬社製
【0110】
包囲層、中間層及びカバー(最外層)の形成
次に、比較例8,10,12~14については、射出成形用金型を用いて、コア表面の周囲に、表2に示す中間層の樹脂材料No.4またはNo.5により射出成形し、中間層を形成した。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、表2に示すカバー(最外層)の樹脂材料No.10により射出成形し、カバーを形成した。この際、カバー表面には、下記に記載する所定の多数のディンプルを形成した。
【0111】
実施例1~4及び比較例1~3については、射出成形用金型を用いて、コア表面の周囲に、表2に示す包囲層の樹脂材料No.1により射出成形し、包囲層を形成する。次いで、別の射出成形用金型を用いて、この包囲層被覆球体の周囲に、同表に示す中間層の樹脂材料No.2により射出成形し、中間層を形成する。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、同表に示すカバー(最外層)の樹脂材料No.6により射出成形し、カバーを形成する。比較例4,5,9,11については、射出成形用金型を用いて、コア表面の周囲に、表2に示す樹脂材料No.2,No.3またはNo.4により射出成形し、中間層を形成し、次いで、同表に示すカバー(最外層)の樹脂材料No.7~No.10により射出成形し、カバーを形成する。比較例6,7,15については、射出成形用金型を用いて、コア表面の周囲に、表2に示す樹脂材料No.8,No.9またはNo.11により射出成形し、カバーを形成する。この際、カバー表面には、下記に記載する所定の多数のディンプルを形成する。
【0112】
【0113】
表2の配合成分の詳細は下記のとおりである。
「ハイトレル4047N」東レ・セラニーズ社製のポリエステル・エラストマー
「HPF1000」THE DOW CHEMICAL COMPANY社製の高中和アイオノマー
「ハイミラン1605」「ハイミラン1601」「ハイミラン1557」「ハイミラン1706」「AM7329」「AM7327」及び「AM7318」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー
「AN4319」三井・ダウポリケミカル社製のニュクレル
「硫酸バリウム」堺化学工業社製の商品名「沈降性硫酸バリウム300」
「ステアリン酸マグネシウム」日脂社製の商品名「マグネシウムステアレートG」
「トリメチロールプロパン」(TMP)東京化成工業社製
「TPU(1)」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン、材料硬度(ショアD)「50」
「TPU(2)」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン、材料硬度(ショアD)「47」
【0114】
各実施例及び比較例のディンプルについては、下記のディンプル(1)~(5)をそれぞれ用いた。各ディンプル態様には、直径及び深さが異なるNo.1~No.8の8種類の円形ディンプルが含まれる。その詳細について下記の表3に示す。また、ディンプル(1)~(5)の配列態様(模様)を
図5に示す。
図5(A)は、ディンプルの平面図を示し、
図5(B)は、その側面図である。
【0115】
【0116】
ディンプルの定義
縁:ディンプル中心を通る断面において最も高いところ
直径:ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
深さ:ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
SR:ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率
ディンプル体積:ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプル体積
円柱体積比:ディンプルと同直径の深さの円柱の体積に対する、ディンプル体積の比
VR:ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球容積
【0117】
また、上記ディンプル(1)~(5)をカバー表面に形成するボールのレイノルズ数218000,スピンレート2800rpmにおける揚力係数CL1,抗力係数CD1,比CL1/CD1=A1、レイノルズ数184000,スピンレート2900rpmにおける揚力係数CL2,抗力係数CD2,比CL2/CD2=A2、及び、レイノルズ数158000,スピンレート3100rpmにおける揚力係数CL3,抗力係数CD3,比CL3/CD3=A3を以下の表に示す。これらの揚力係数及び抗力係数は、USGAが定めるITR(Indoor Test Range)に準拠して測定される。
【0118】
【0119】
得られた各ゴルフボールにつき、コアの各位置における内部硬度、コアや各被覆球体の外径、各層の厚さ及び材料硬度、各被覆球体の表面硬度、ボール初速などの諸物性を下記の方法で評価し、表5~8に示す。
【0120】
コア硬度分布
コアの表面は球面であるが、その球面に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、ASTM D2240に従ってショアC硬度で表面硬度を計測する。コアの中心及び所定位置については、コアを半球状にカットして断面を平面にして、中心部分及び表5,6に示した所定位置に硬度計の針を垂直に押し当てて測定し、中心及び各位置の硬度をショアC硬度の値で示す。硬度の測定には、ショアC型硬度計を備えた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。測定は、全て、23±2℃の環境下でなされる。なお、表中の数値はショアC硬度の値である。
また、コアの硬度分布において、コアの中心のショアC硬度Cc、コアの中心と表面との中点MのショアC硬度Cm、中点Mから内側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度Cm-2、Cm-4、Cm-6、中点Mから外側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度Cm+2、Cm+4、Cm+6、コアの表面のショアC硬度Csについては、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
を計算し、下記の9個の数式の値を求める。
(1)面積A+面積B
(2)面積B+面積C
(3)面積C+面積D
(4)面積D+面積E
(5)面積E+面積F
(6)(面積D+面積E)-(面積A+面積B)
(7)(面積D+面積E)-(面積B+面積C)
(8){(面積D+面積E)-(面積A+面積B)}×(Cs-Cc)
(9){(面積D+面積E)-(面積B+面積C)}×(Cs-Cc)
【0121】
コア硬度分布の面積A~Fの説明として、実施例1のコア硬度分布データを用いて面積A~Fを表した概略図を
図2に示す。
また、実施例1~4及び比較例1~15のコア硬度分布のグラフを
図3、
図4に示す。
【0122】
コア、包囲層被覆球体及び中間層被覆球体の各球体の外径
恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調節し、23.9±2℃の室内にて、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個の各球体の測定値とし、測定個数10個での平均値を求める。
【0123】
ボールの直径
恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調節し、23.9±2℃の室内にて、任意のディンプルのない部分を15箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数10個のボールの平均値を求める。
【0124】
コア及びボールのたわみ量
コアまたはボールの各対象被覆球体を硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときのたわみ量を計測する。なお、上記のたわみ量は、恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調節し、23.9±2℃の室内にて計測した測定値である。測定器はミュー精器社製の高荷重コンプレッションテスターを使用し、コアまたはボールを圧縮する加圧ヘッドのダウン速度は10mm/sとする。
【0125】
包囲層、中間層及びカバーの材料硬度(ショアC硬度,ショアD硬度)
各層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、23±2℃の温度下にて2週間放置する。測定時には3枚のシートが重ね合わされる。ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアD硬度計にて、それぞれショアC硬度及びショアD硬度を計測する。硬度の測定には、ショアC型硬度計もしくはショアD型硬度計を取り付けた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。計測方法はASTM D2240規格に従う。
【0126】
包囲層被覆球体、中間層被覆球体及びボールの各球体の表面硬度
各球体の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測する。なお、ボール(カバー)の表面硬度は、ボール表面においてディンプルが形成されていない陸部における測定値である。ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアD硬度計にて、それぞれショアC硬度及びショアD硬度を計測する。硬度の測定には、ショアC型硬度計もしくはショアD型硬度計を取り付けた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。計測方法はASTM D2240規格に従う。
【0127】
ボールの初速
R&Aと同型のHye Precision Products製のCOR型初速計を用いて、各球体の初速を23.9±2℃で計測する。その測定原理は以下のとおりである。
エアの圧力を35.5、36.5、39.5、40.5psiの4段階に変更して、ボールを、それぞれの空気圧により、4段階の入射速度で発射し、バリアに衝突させて、そのCOR(反発係数)を測定する。即ち、エアの圧力を4段階に変更して入射速度とCORとの相関式を作る。同様に入射速度と接触時間との相関式を作る。
そして、これらの相関式から、入射速度43.83m/s時のCOR(反発係数)及び接触時間(μs)を求め、下記の初速換算式に代入し、各球体の初速を算出する。
IV=136.8+136.3e+0.019tc
〔ここで、eは反発係数、tcは衝突速度143.8ft/s(43.83m/s)での接触時間(μs)である。〕
全例のボールの初速の計測において、43.18mmのバレル径を選択する。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
各ゴルフボールの飛び(W#1)(I#6)及びアプローチ時のコントロール性について下記の方法で評価する。その結果を表9に示す。
【0133】
飛び評価(W#1,HS54m/s)
ゴルフ打撃ロボットにドライバーのクラブをつけて、ヘッドスピード(HS)54m/sにて打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourB XD-5 ドライバー(2017年モデル)」(ロフト角8.5°)を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例10対比のトータルが-10m以下、-14m以上である。
△ ・・・ 比較例10対比のトータルが-14m未満である。
× ・・・ 比較例10対比のトータルが-10mより大きい。
【0134】
飛び評価(W#1,HS40m/s)
ゴルフ打撃ロボットにドライバーのクラブをつけて、ヘッドスピード(HS)40m/sにて打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「J015 ドライバー(2016年モデル)」(ロフト角9.5°)を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例10対比のトータルが0m以上である。
△ ・・・ 比較例10対比のトータルが-5m以上、0m未満である。
× ・・・ 比較例10対比のトータルが-5m未満である。
【0135】
飛び評価(I#6,HS42m/s)
ゴルフ打撃ロボットに6番アイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード(HS)42m/sで打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「JGR Forged I#6(2016年モデル)」を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例10対比のトータルが5m以上である。
△ ・・・ 比較例10対比のトータルが0m以上、5m未満である。
× ・・・ 比較例10対比のトータルが0m未満である。
【0136】
飛び評価(I#6,HS35m/s)
ゴルフ打撃ロボットに6番アイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード(HS)35m/sで打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「JGR Forged I#6(2016年モデル)」を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準/トータル〕
○ ・・・ 比較例10対比のトータルが3m以上である。
△ ・・・ 比較例10対比のトータルが-3m以上、3m未満である。
× ・・・ 比較例10対比のトータルが-3m未満である。
【0137】
アプローチ時の打出角の評価
ゴルフ打撃ロボットにサンドウエッジをつけてヘッドスピード(HS)15m/sにて打撃した時の打出角で判断する。打出角は打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定する。サンドウエッジは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage TW-03(ロフト角57°)2002年モデル」を使用する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 打出角が35.0°以上
× ・・・ 打出角が35.0°未満
【0138】
打感の評価
ドライバー(W#1)のヘッドスピードが30~40m/sのハンディキャップ25以上のアマチュアゴルファーにより打感の官能評価を行う。下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ ソフト感と弾き感を持つ良い打感である。
△ ・・・ ソフト感と弾き感のどちらかが、今一つ良い打感とはいえない。
× ・・・ ソフト感と弾き感の両方とも今一つ良い打感ではない。または、ソフト感と弾き感のどちらかが明らかに良くない。
【0139】
【0140】
表9の結果に示されるように、比較例1~15のゴルフボールは、本発明品(実施例)に比べて以下の点で劣る。
比較例1は、ディンプルVRが0.75%より小さく、A1が0.655より大きい。また、ボール初速が75.0m/sより低い。更に、ディンプルの総体積D(mm3)を、ボールの10-130kgf負荷した時のたわみ量B(mm)で割った値(以下、「D/B値」と言う。)が95より小さい。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)40m/sで打撃時の飛距離が劣ると共に、6番アイアン(I#6)打撃時の飛距離が劣る。また、打感については、明らかに弾き感が十分でない。
比較例2は、ディンプルVRが0.75%より小さく、A1が0.655より大きい。また、D/B値が95より小さい。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/sで打撃時の飛距離が大きくなり、新たなODSルールに適合しない。
比較例3は、ディンプルVRが0.89%より大きい。また、A1が0.590より小さく、(A2+A3)/2が0.670より小さい。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/s及び40m/sの両方で打撃時の打撃条件で飛距離が劣る。
比較例4は、包囲層の無いスリーピース構造のゴルフボールであり、中間層被覆球体の表面硬度がコアの表面硬度より大きい。その結果、打感について、各実施例に比べるとソフト感が劣る。
比較例5は、包囲層の無いスリーピース構造のゴルフボールであり、中間層被覆球体の表面硬度がコアの表面硬度より大きい。その結果、打感について、各実施例に比べるとソフト感が劣る。
比較例6は、コア及びカバーのみからなるツーピース構造のゴルフボールである。その結果、打感について、各実施例に比べるとソフト感が劣った。
比較例7は、コア及びカバーのみからなるツーピース構造のゴルフボールである。また、D/B値が95より小さい。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/sでの打撃時の飛距離が落ちすぎると共に、ドライバー(W#1)、ヘッドスピード(HS)40m/sでの打撃時の飛距離がやや劣り、打感においては弾き感が十分ではない。
比較例8は、中間層被覆球体の表面硬度よりボール表面硬度が軟らかいスリーピース構造からなる。また、D/B値が140より大きいと共に、中間層被覆球体の表面硬度がコア表面硬度より硬い。その結果、アイアン(I#6)打撃時の飛距離が劣ると共に、アプローチした時の打出角が低すぎてしまい、アマチュアには難しいボールとなった。また、ソフト感が劣った。
比較例9は、中間層被覆球体の表面硬度よりボール表面硬度が軟らかいスリーピース構造からなる。また、D/B値が140より大きいと共に、中間層被覆球体の表面硬度がコア表面硬度より硬い。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/sで打撃時の飛距離が大きくなり、新たなODSルールに適合しない。また、アイアン(I#6)打撃時の飛距離が劣ると共に、アプローチした時の打出角が低すぎてしまい、アマチュアには難しいボールとなる。更に、ソフト感が劣る。
比較例10は、現在、男子プロが使用する実施形態の一つとなる。ボール表面硬度が中間層被覆球体の表面硬度より小さいスリーピース構造からなる。また、ディンプルVRが0.75%より小さく、A1が0.655より大きい。更には、中間層被覆球体の表面硬度がコア表面硬度より硬い。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/sで打撃時の飛距離が大きく、新たなODSルールに適合しなかった。また、ドライバー(W#1)HS40m/sで打撃時及びアイアン(I#6)の打撃時の飛距離が劣ると共に、アプローチ時の打出角が低すぎてアマチュアには難しいボールとなった。更に、ソフト感が劣った。
比較例11は、中間層被覆球体の表面硬度よりボール表面硬度が軟らかいスリーピース構造からなる。また、ディンプルVRが0.89%より大きく、A1が0.590より小さく、(A2+A3)/2が0.670より小さい。更には、D/B値が140より大きく、中間層被覆球体の表面硬度がコア表面硬度より硬い。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/sでの打撃時の飛距離が落ちすぎると共に、ドライバー(W#1)、ヘッドスピード(HS)40m/s及びアイアン(I#6)、ヘッドスピード(HS)42m/sの両方で打撃時の飛距離が劣った。また、アプローチ時の打出角が低すぎてアマチュアには難しいボールとなり、ソフト感も劣った。
比較例12は、中間層被覆球体の表面硬度よりボール表面硬度が軟らかいスリーピース構造からなる。また、ディンプルVRが0.75%より小さく、A1が0.655より大きい。また、D/Bの値95より小さく、中間層被覆球体の表面硬度がコア表面硬度より硬い。その結果、ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/sで打撃時の飛距離が落ちすぎると共に、アプローチ時の打出角が低すぎてアマチュアには難しいボールとなり、ソフト感も十分ではなかった。
比較例13は、中間層被覆球体の表面硬度よりボール表面硬度が軟らかいスリーピース構造からなる。また、中間層被覆球体の表面硬度がコア表面硬度より硬い。その結果、アプローチ時の打出角が低すぎてアマチュアには難しいボールとなり、ソフト感も劣る。
比較例14は、中間層被覆球体の表面硬度よりボール表面硬度が軟らかいスリーピース構造からなる。また、ディンプルVRが0.75%より小さく、A1が0.655より大きい。更には、ボール初速が75.0m/sより低く、コア表面硬度より中間層被覆球体の表面硬度の方が硬い。その結果、ドライバー(W#1)、ヘッドスピード(HS)40m/s及びアイアン(I#6)で打撃時の飛距離が劣ると共に、アプローチ時の打出角が低すぎてアマチュアには難しいボールとなる。また、打感については、硬めで弾き感が良くない。
比較例15は、練習場向けのツーピース構造のゴルフボールであり、ボール初速が75.0m/sより小さい。その結果、全ての打撃条件で実打初速が低くなる。ドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)54m/sで打撃時の飛距離は低くなりすぎると共に、その他の打撃条件においても飛距離が落ちてしまう。また、ラウンドで使用するゲーム用ボールとしてはアプローチ時の打出角が低すぎてアマチュアには難しいボールとなる。また、打感については、弾き感が良くない。