(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014730
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】装具及び装具用保持部材
(51)【国際特許分類】
A61F 4/00 20060101AFI20250123BHJP
A47G 21/08 20060101ALI20250123BHJP
A47G 21/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61F4/00
A47G21/08
A47G21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117520
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】519246881
【氏名又は名称】社会医療法人蘇西厚生会
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小森 健司
【テーマコード(参考)】
3B115
4C097
【Fターム(参考)】
3B115AA22
3B115BA02
3B115BC05
4C097BB03
4C097BB09
4C097TA10
(57)【要約】
【課題】使用者が自身の母指と示指とで器具を把持して使用するといった一般的な把持動作を適切に補助することができる。
【解決手段】装具10は、使用者の手91及び手首に装着される装具本体11を備え、長尺部41を有する器具40の当該使用者による使用を補助する。装具本体11は、使用者の手91の母指92と示指93との間の股部94を覆う部分15を有する。部分15の外面には、長尺部41を着脱自在に保持する保持部21が固定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の手及び手首の少なくとも一方に装着される装具本体を備え、長尺部を有する器具の当該使用者による使用を補助する装具であって、
前記装具本体は、前記使用者の手の母指と示指との間の股部を覆う部分を有し、
前記部分の外面には、前記母指の指先と前記示指の指先との間に前記器具が位置するように前記長尺部を着脱自在に保持する保持部が固定されている、
装具。
【請求項2】
前記保持部を有する保持部材と、
前記保持部材と前記部分の外面との間に介在し、前記保持部材と前記部分の外面とを接合する接合部材と、を備える、
請求項1に記載の装具。
【請求項3】
前記保持部は、樹脂製であり、前記長尺部を自身の弾性復元力により着脱自在に保持するものである、
請求項1または請求項2に記載の装具。
【請求項4】
前記保持部は、前記長尺部の長手方向に沿って前記長尺部が嵌入される嵌入部を有する、
請求項3に記載の装具。
【請求項5】
使用者の手及び手首の少なくとも一方に装着される装具本体を有する装具であり、長尺部を有する器具の当該使用者による使用を補助する装具に適用され、前記装具本体に接合される装具用保持部材であって、
樹脂製であり、前記長尺部を自身の弾性復元力により着脱自在に保持する保持部を有し、
前記保持部により前記長尺部が保持された状態における前記器具の前側及び後側をそれぞれ前側及び後側とするとき、
前記保持部は、
前記長尺部を保持する前側保持部と、
前記前側保持部よりも後側において前記前側保持部とは離れて設けられ、前記長尺部を保持する後側保持部と、
前記前側保持部の外面と前記後側保持部の外面とを連結する連結部と、を有する、
装具用保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装具及び装具用保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麻痺などにより握力が低下することで各種の器具を把持する動作を安定して行うことが困難な使用者が用いる装具であって、当該使用者による当該器具の使用を補助する装具が開発されている。
【0003】
こうした装具としては、例えば特許文献1に開示の筆記補助具がある。特許文献1に記載の筆記補助具は、使用者による筆記具の使用を補助するものである。この筆記補助具は、手指の示指と中指とに装着される基体と、手指の先端方向に基体から延設された突き当て部と、筆記具を保持する長尺状のペンホルダー部とを備える。基体は、示指と中指とのMP関節の背面近傍に接する第一支持部と、示指と中指とのPIP関節の掌面に接する関節支持部と、示指と中指とのDIP関節の背面近傍に接する第二支持部とを備える。ペンホルダー部は、基部の外周面のうち使用者の示指の先端側の部分に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の筆記補助具の場合、ペンホルダー部によって筆記具が使用者の示指から離れた状態で保持される。このため、使用者は、自身の母指と示指とで筆記具を把持することができない。したがって、筆記具の使用を適切に補助する上では改善の余地がある。
【0006】
なお、こうした課題は、筆記具の使用を補助する補助具に限定されず、スプーンなどのカトラリーを含む長尺部を有する器具の使用を補助する装具において同様にして生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための装具の各態様を記載する。
[態様1]
使用者の手及び手首の少なくとも一方に装着される装具本体を備え、長尺部を有する器具の当該使用者による使用を補助する装具であって、
前記装具本体は、前記使用者の手の母指と示指との間の股部を覆う部分を有し、
前記部分の外面には、前記母指の指先と前記示指の指先との間に前記器具が位置するように前記長尺部を着脱自在に保持する保持部が固定されている、
装具。
【0008】
同構成によれば、装具本体が使用者の手及び手首の少なくとも一方に装着され、且つ保持部によって器具の長尺部が保持された状態において、保持部が使用者の手の母指と示指との間の股部を覆う部分の外面に位置する。また、母指の指先と示指の指先との間に器具が位置する。このため、使用者は、自身の母指と示指とで器具を把持しやすくなる。したがって、使用者が自身の母指と示指とで器具を把持して使用するといった一般的な把持動作を適切に補助することができる。
【0009】
[態様2]
前記保持部を有する保持部材と、
前記保持部材と前記部分の外面との間に介在し、前記保持部材と前記部分の外面とを接合する接合部材と、を備える、
態様1に記載の装具。
【0010】
同構成によれば、装具本体の上記部分の外面に対して接合部材を介して保持部材を接合することで装具が構成される。このため、保持部材が装具本体とは別体として形成されるので、装具本体に対して保持部材を固定する位置や向きを、使用者毎に適宜設定することが可能となる。また、保持部材が装具本体とは別体として形成されるので、装具本体を使用者毎に3Dプリンタや手作業によりオーダーメイドで作製しつつ、保持部材については金型などを用いて量産することが可能となる。これにより、装具本体及び保持部材の双方をオーダーメイドで作製する場合に比べて、装具全体の作製にかかるコストを低減することができる。また、装具本体及び保持部材の双方を、金型などを用いて量産する場合に比べて、使用者に適した装具を提供することができる。
【0011】
[態様3]
前記保持部は、樹脂製であり、前記長尺部を自身の弾性復元力により着脱自在に保持するものである、
態様1または態様2に記載の装具。
【0012】
同構成によれば、保持部の構成を簡単にすることができる。
[態様4]
前記保持部は、前記長尺部の長手方向に沿って前記長尺部が嵌入される嵌入部を有する、
態様3に記載の装具。
【0013】
同構成によれば、保持部の嵌入部に対して器具の長尺部を長手方向に沿って嵌入することで長尺部が保持部に保持される。したがって、保持部に対して器具を容易に装着できる。
【0014】
[態様5]
使用者の手及び手首の少なくとも一方に装着される装具本体を有する装具であり、長尺部を有する器具の当該使用者による使用を補助する装具に適用され、前記装具本体に接合される装具用保持部材であって、
樹脂製であり、前記長尺部を自身の弾性復元力により着脱自在に保持する保持部を有し、
前記保持部により前記長尺部が保持された状態における前記器具の前側及び後側をそれぞれ前側及び後側とするとき、
前記保持部は、
前記長尺部を保持する前側保持部と、
前記前側保持部よりも後側において前記前側保持部とは離れて設けられ、前記長尺部を保持する後側保持部と、
前記前側保持部の外面と前記後側保持部の外面とを連結する連結部と、を有する、
装具用保持部材。
【0015】
同構成によれば、保持部材を装具本体に接合することで装具が構成される。そして、装具本体を使用者の手及び手首の少なくとも一方に装着するとともに、保持部により器具の長尺部を保持させることで、障害などによって器具を把持することが困難な使用者による器具の使用を補助することができる。詳しくは、前側保持部と後側保持部とが前後に離れて設けられ、且つ前側保持部の外面と後側保持部の外面とが連結部により連結されている。このため、後側保持部を装具本体に接合する一方、前側保持部を装具本体に対して接合しないようにすれば、器具の使用時に器具を介して前側保持部に対して荷重が作用した際に、当該荷重によって連結部が撓み変形することで当該荷重が吸収されやすくなる。これにより、上記荷重が装具本体から使用者に伝達されることが抑制されるので、使用者に対して不快感を与えることを抑制できる。
【0016】
また、上記構成によれば、保持部材が装具本体とは別体として形成されるので、装具本体に対して保持部材を接合する位置や向きを、使用者毎に適宜設定できる。これにより、手に麻痺などの障害を有する使用者が、仮に障害を有していなかった場合に器具の長尺部を把持する際の器具の姿勢に即した姿勢で当該器具を使用することができる。
【0017】
また、上記構成によれば、保持部材が装具本体とは別体として形成されるので、装具本体を使用者毎に3Dプリンタや手作業によりオーダーメイドで作製しつつ、保持部材については金型などを用いて量産することが可能となる。これにより、装具本体及び保持部材の双方をオーダーメイドで作製する場合に比べて、装具全体の作製にかかるコストを低減することができる。また、装具本体及び保持部材の双方を、金型などを用いて量産する場合に比べて、使用者に適した装具を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用者が自身の母指と示指とで器具を把持して使用するといった一般的な把持動作を適切に補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態の装具の平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の装具の下面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の保持部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の装具の使用状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の装具の使用状態を示す他の斜視図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の装具の正面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の装具の平面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の装具の使用状態を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の装具の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図6を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態では、器具40としてのスプーンの使用を補助する右利き用の装具10について例示する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、装具10は、使用者の手91及び手首90に装着される装具本体11と、器具40を保持する装具用保持部材(以下、保持部材20という)と、保持部材20と装具本体11とを接合する接合部材30とを備える。
【0022】
次に、装具10の各構成について詳細に説明する。
<装具本体11>
図1、
図2、
図5及び
図6に示すように、装具本体11は、カフ12と、延設部材14と、バンド19とを備える。
【0023】
カフ12は、使用者の手首90を含む部位を手91の甲側から覆うものであり、掌側に開放された開放部12aを有する断面C字状である。
カフ12は、熱可塑性の樹脂材料により形成されている。上記樹脂材料としては、65℃~75℃のお湯で軟化し、常温で硬化する低温熱可塑性の樹脂材料が好ましい。
【0024】
延設部材14は、第1延設部14a、第2延設部14b、及び支持部14cを有する。
第1延設部14a及び第2延設部14bは、カフ12の外周面において周方向(
図1の左右方向)に互いに間隔をあけてそれぞれ接合された基端部を有するとともに、手91の指先方向(
図1及び
図2の上方)に延設されている。延設部材14のうち基端部以外の部分は、断面略円形状である。第1延設部14a及び第2延設部14bの基端部は、カフ12の外周面に対して押し潰された扁平状である。
【0025】
図5及び
図6に示すように、第1延設部14aは、手91の母指92と示指93との股部94に向かって延設されている。第1延設部14aは、股部94を覆う部分15を有する。
【0026】
第2延設部14bは、手91の小指球95に向かって延設されている。
支持部14cは、第1延設部14a及び第2延設部14bの先端同士を連結するとともに使用者の掌を支持する。
【0027】
第1延設部14a及び第2延設部14bの基端部の外面には、円盤状の押さえ部16が接合されている。
延設部材14及び押さえ部16は、カフ12と同一の樹脂材料により形成されている。
【0028】
図1に示すように、カフ12の基端部(
図1の下部)の外周面には、一対のフックシート13が接着されている。フックシート13の外面には、多数のフック(図示略)が設けられている。一対のフックシート13は、カフ12の周方向の両端部に設けられている。
【0029】
図5及び
図6に示すように、バンド19には、多数のループ(図示略)が設けられている。フックシート13のフックと、バンド19のループとにより面ファスナーが構成される。バンド19は、一対のフックシート13に対して着脱自在に取り付けられる。
【0030】
<保持部材20>
図3及び
図4に示すように、保持部材20は、樹脂製であり、器具40の長尺部41を自身の弾性復元力により着脱自在に保持する保持部21を有する。本実施形態においては、スプーンの柄が長尺部41に相当する。
【0031】
以降において、保持部21により長尺部41が保持された状態における器具40の前側及び後側をそれぞれ前側及び後側とし、前後方向を単に前後方向Lとする。また、前後方向Lにそれぞれ直交する方向であり、互いに直交する2つの方向を、幅方向W及び高さ方向Hとする。
【0032】
保持部21は、長尺部41を保持する前側保持部22と、前側保持部22よりも後側において前側保持部22とは離れて設けられ、長尺部41を保持する後側保持部23と、前側保持部22の外面と後側保持部23の外面とを連結する連結部24とを有する。
【0033】
前側保持部22及び後側保持部23は、いずれも幅方向Wの寸法に対して高さ方向Hの寸法が小さい略長方形の断面形状を有する。
前側保持部22は、前後方向Lに貫通する前側嵌入孔22aを有する。
【0034】
後側保持部23は、前方に開口する後側嵌入穴23aを有する。後側嵌入穴23aは、後側保持部23を前後方向Lに貫通していない。
前側嵌入孔22a及び後側嵌入穴23aは、いずれも幅方向Wの寸法に対して高さ方向Hの寸法が小さい略長方形の断面形状を有する。前側嵌入孔22a及び後側嵌入穴23aの高さ方向Hの寸法は、長尺部41の厚みよりも僅かに小さい。前側嵌入孔22a及び後側嵌入穴23aの幅方向Wの寸法は、長尺部41の幅よりも僅かに大きい。
【0035】
連結部24は、前側保持部22の外面及び後側保持部23の外面から高さ方向Hに突出するとともに前側保持部22及び後側保持部23に跨がって設けられている。連結部24の高さ方向Hの厚みは、連結部24の幅方向Wの厚みよりも大きい。本実施形態の連結部24は、側面視略二等辺三角形状であり、前後方向Lにおける前側保持部22と後側保持部23との間の位置において高さ方向Hの寸法が最も大きい。
【0036】
図3~
図6に示すように、器具40の長尺部41が、長尺部41の長手方向に沿って前側嵌入孔22aに前方から嵌入されるとともに後側嵌入穴23aに嵌入されることで、保持部21により器具40が保持される。なお、本実施形態の前側嵌入孔22a及び後側嵌入穴23aが、[課題を解決するための手段]欄における嵌入部に相当する。
【0037】
<接合部材30>
図1、
図2、
図5及び
図6に示すように、接合部材30は、保持部材20の後側保持部23と装具本体11のうち第1延設部14aの部分15の外面とを接合している。詳しくは、後側保持部23のうち連結部24が突出している外面とは反対側の外面と上記部分15の外面とが接合部材30によって接合されている。接合部材30は、保持部材20の前側保持部22と装具本体11とは接合していない。
【0038】
保持部材20は、上記部分に母指92の指先と示指93の指先との間に器具40が位置するように長尺部41を着脱自在に保持する。
接合部材30は、カフ12と同一の樹脂材料により形成されている。
【0039】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)装具10は、使用者の手91及び手首90に装着される装具本体11を備え、長尺部41を有する器具40の当該使用者による使用を補助する。装具本体11は、使用者の手91の母指92と示指93との間の股部94を覆う部分15を有する。部分15の外面には、母指92の指先と示指93の指先との間に器具40が位置するように長尺部41を着脱自在に保持する保持部21が固定されている。
【0040】
こうした構成によれば、装具本体11が使用者の手91及び手首90に装着され、且つ保持部21によって器具40の長尺部41が保持された状態において、保持部21が使用者の手91の母指92と示指93との間の股部94を覆う部分15の外面に位置する。また、母指92の指先と示指93の指先との間に器具40が位置する。このため、使用者は、自身の母指92と示指93とで器具40を把持しやすくなる。したがって、使用者が自身の母指92と示指93とで器具40を把持して使用するといった一般的な把持動作を適切に補助することができる。
【0041】
(2)装具10は、保持部21を有する保持部材20と、保持部材20と上記部分15の外面との間に介在し、保持部材20と上記部分15の外面とを接合する接合部材30とを備える。
【0042】
こうした構成によれば、装具本体11の上記部分15の外面に対して接合部材30を介して保持部材20を接合することで装具10が構成される。このため、保持部材20が装具本体11とは別体として形成されるので、装具本体11に対して保持部材20を固定する位置や向きを、使用者毎に適宜設定することが可能となる。また、保持部材20が装具本体11とは別体として形成されるので、装具本体11を使用者毎に3Dプリンタや手作業によりオーダーメイドで作製しつつ、保持部材20については金型などを用いて量産することが可能となる。これにより、装具本体11及び保持部材20の双方をオーダーメイドで作製する場合に比べて、装具10全体の作製にかかるコストを低減することができる。また、装具本体11及び保持部材20の双方を、金型などを用いて量産する場合に比べて、使用者に適した装具10を提供することができる。
【0043】
(3)保持部21は、樹脂製であり、長尺部41を自身の弾性復元力により着脱自在に保持するものである。
こうした構成によれば、保持部21が、自身の弾性復元力によって長尺部41を保持するものであるので、保持部21の構成を簡単にすることができる。
【0044】
(4)保持部21は、長尺部41の長手方向に沿って長尺部41が嵌入される前側嵌入孔22a及び後側嵌入穴23aを有する。
こうした構成によれば、保持部21の前側嵌入孔22a及び後側嵌入穴23aに対して器具40の長尺部41を長手方向に沿って嵌入することで長尺部41が保持部21に保持される。したがって、保持部21に対して器具40の長尺部41を容易に装着できる。
【0045】
(5)前側保持部22と後側保持部23とが前後に離れて設けられ、且つ前側保持部22の外面と後側保持部23の外面とが連結部24により連結されている。後側保持部23は接合部材30を介して装具本体11に接合される一方、前側保持部22は装具本体11に対して接合されていない。これにより、器具40の使用時に器具40を介して前側保持部22に対して荷重が作用した際に、当該荷重によって連結部24が撓み変形することで当該荷重が吸収されやすくなる。これにより、上記荷重が装具本体11から使用者に伝達されることが抑制されるので、使用者に対して不快感を与えることを抑制できる。したがって、使用者による器具40の使用を適切に補助することができる。
【0046】
(6)連結部24の高さ方向Hの厚みが、連結部24の幅方向Wの厚みよりも大きいので、連結部24が幅方向Wに比べて高さ方向Hにおいて撓み変形しにくくなる。これにより、連結部24の幅方向Wにおける撓み変形を許容しつつも、連結部24の高さ方向Hにおける撓み変形が抑制される。したがって、器具40の先端部42が使用者の意図に反して高さ方向Hにおいて変動することを抑制できる。
【0047】
(7)装具10のうちフックシート13に対して着脱自在に取り付けられるバンド19以外の構成が樹脂により形成されているので、水洗いなどの洗浄を容易に行うことができる。
【0048】
<第2実施形態>
以下、
図7~
図10を参照して、第2実施形態について第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0049】
本実施形態では、装具本体111の構成が第1実施形態と相違している。以降において、第1実施形態と同一または対応する構成については第1実施形態の符号「**」と同一の符号を付すことにより重複する説明を省略する。
【0050】
図7~
図10に示すように、装具110は、装具本体111と、保持部材20と、接合部材30とを備える。保持部材20及び接合部材30の構成は、第1実施形態と同一である。
【0051】
装具本体111は、使用者の手91に装着されるものであり、第1支持部112、第2支持部113、第3支持部114、及び受け部118を有する。
第1支持部112は、使用者の示指93、中指96、環指97、及び小指98の並び方向に沿って延設されるとともに、示指93、中指96、環指97、及び小指98のMP関節とPIP関節との間の部分の背面を支持する。第1支持部112は、股部94を覆う部分115を有する。第1支持部112の第1端は、示指93の基端部の前面に位置している。第1支持部112の第2端は、示指93の基端部の前面に位置している。
【0052】
上記部分115には、接合部材30を介して保持部材20が接合されている。詳しくは、後側保持部23のうち連結部24が突出している外面とは反対側の外面と上記部分115の外面とが、第1実施形態と同様に、接合部材30によって接合されている。
【0053】
第2支持部113は、使用者の示指93、中指96、環指97、及び小指98の並び方向に沿って延在するとともに、手91の甲を支持する。第2支持部113の第1端は、第1支持部112の第1端に連結されている。第2支持部113の第2端は、第1支持部112の第2端に連結されている。
【0054】
第3支持部114は、第1延設部14a及び第2延設部14bの第1端同士の連結部116と、第1延設部14a及び第2延設部14bの端同士の連結部117とを連結するとともに使用者の掌を支持する。
【0055】
受け部118は、連結部116から突出するとともに、保持部材20の前方において長尺部41を下方から支持する。
装具本体111は、第1実施形態のカフ12と同一の樹脂材料により形成されている。
【0056】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果(1)~(7)と同様な作用効果を奏することができる。
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・保持部21は、長尺部41の長手方向に沿って長尺部41が嵌入される前側嵌入孔22a及び後側嵌入穴23aに限定されない。保持部21は、長尺部41の長手方向に直交する方向に沿って長尺部41が嵌め込まれるものであってもよい。この場合、前側保持部22及び後側保持部23を例えば断面C字状をなすものにすればよい。
【0058】
・連結部24の形状は、上記実施形態において例示したものに限定されない。例えば、連結部24の幅方向Wの厚みと高さ方向Hの厚みとを同一にすることもできる。また、連結部24の幅方向Wの厚みを高さ方向Hの厚みよりも大きくすることもできる。
【0059】
・保持部21は、前側保持部22及び後側保持部23を備えるものに限定されない。例えば、前側保持部22を省略することもできる。また、後側保持部23を省略することもできる。なお、後側保持部23を省略する場合には、前側保持部22を、接合部材30を介して装具本体11に固定すればよい。
【0060】
・装具10は、接合部材30を備えるものに限定されない。例えば、装具本体11と保持部21とを一体成形することもできる。
・装具本体11は、使用者の手91及び手首90の双方に装着されるものに限定されない。装具本体11は、手91のみに装着されるものであってもよいし、手首90のみに装着されるものであってもよい。
【0061】
・器具40は、スプーンに限定されず、フォークなどの他のカトラリーであってもよい。また、器具40は、ペンなどの筆記具であってもよいし、孫の手であってもよい。要するに、器具40は、長尺部41を有するものであればよい。
【符号の説明】
【0062】
10,110…装具
11,111…装具本体
12…カフ
12a…開放部
13…フックシート
14,54…延設部材
14…第1延設部
14…第2延設部
14…支持部
15…部分
16…押さえ部
19…バンド
20…保持部材
21…保持部
22…前側保持部
22a…前側嵌入孔
23…後側保持部
23a…後側嵌入穴
24…連結部
30…接合部材
40…器具
41…長尺部
42…先端部
90…手首
91…手
92…母指
93…示指
94…股部
95…小指球
96…中指
97…環指
98…小指
112…第1支持部
113…第2支持部
114…第3支持部
115…部分
116,117…連結部
118…受け部