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特開2025-147360堆肥化診断装置、堆肥化診断システム、堆肥化診断方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025147360
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】堆肥化診断装置、堆肥化診断システム、堆肥化診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/993 20200101AFI20250930BHJP
   C05F 3/06 20060101ALI20250930BHJP
   C05F 9/02 20060101ALI20250930BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20250930BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20250930BHJP
【FI】
C05F17/993
C05F3/06 C ZAB
C05F9/02 C
B09B3/60
C02F11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047576
(22)【出願日】2024-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】503255936
【氏名又は名称】有限会社 岡本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】宮竹 史仁
(72)【発明者】
【氏名】岡本 壮一
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA03
4D004AA04
4D004AA12
4D004CA19
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA06
4D004DA16
4D004DA17
4D004DA20
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA07
4D059BA03
4D059BA44
4D059CC01
4D059EA06
4D059EA16
4D059EB20
4H061AA02
4H061AA03
4H061CC36
4H061CC55
4H061GG49
4H061GG67
4H061GG70
4H061LL02
(57)【要約】
【課題】堆肥材料における初期発酵の良否を判定することが可能な堆肥化診断装置、堆肥化診断システム、堆肥化診断方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】診断装置100は、堆肥材料の温度を周期的に取得する取得部151と、取得された堆肥材料の温度に基づいて、堆肥材料が第1の温度領域を通過するのに要する時間と第1の温度領域よりも高温側に設定された第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントする計時部152と、カウントされた第1の温度領域を通過するのに要する時間が第1の監視時間以下であり、かつカウントされた第2の温度領域を通過するのに要する時間が第2の監視時間以下である場合に、堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する判定部154と、を備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥材料の温度を周期的に取得する取得部と、
取得された前記堆肥材料の温度に基づいて、前記堆肥材料が第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第1の温度領域よりも高温側に設定された第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントする計時部と、
カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間が第1の監視時間以下であり、かつカウントされた前記第2の温度領域を通過するのに要する時間が第2の監視時間以下である場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する判定部と、
を備える堆肥化診断装置。
【請求項2】
前記堆肥化診断装置は、カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第2の温度領域を通過するのに要する時間とに基づいて、前記第1の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度と前記第2の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度とを演算する演算部をさらに備え、
前記判定部は、演算された前記第1の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度が第1の設定角度以上であり、かつ演算された前記第2の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度が第2の設定角度以上であると判定された場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する、
請求項1に記載の堆肥化診断装置。
【請求項3】
前記第1の温度領域は、前記堆肥材料に存在する中温菌が活性化する中温帯域であり、
前記第2の温度領域は、前記堆肥材料に存在する高温菌が活性化する高温帯域である、
請求項1に記載の堆肥化診断装置。
【請求項4】
前記第1の温度領域の上限値及び下限値は、いずれも35℃~50℃の範囲内に設定され、
前記第2の温度領域の上限値及び下限値は、いずれも50℃~65℃の範囲内に設定されている、
請求項1に記載の堆肥化診断装置。
【請求項5】
前記計時部は、取得された前記堆肥材料の温度が堆肥化開始時点から判定時間内に前記第1の温度領域の下限値よりも低くなるように設定された目標温度に到達した場合に、前記第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントする、
請求項1に記載の堆肥化診断装置。
【請求項6】
前記堆肥材料の温度を計測する温度計と、
前記温度計と通信可能に接続され、前記温度計により計測された前記堆肥材料の温度を周期的に取得する請求項1から5のいずれか1項に記載の堆肥化診断装置と、
を備える堆肥化診断システム。
【請求項7】
堆肥材料の温度を周期的に取得するステップと、
取得された前記堆肥材料の温度に基づいて、前記堆肥材料が第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第1の温度領域よりも高温側に設定された第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントするステップと、
カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間が第1の監視時間以下であり、かつカウントされた前記第2の温度領域を通過するのに要する時間が第2の監視時間以下である場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定するステップと、
を含む堆肥化診断方法。
【請求項8】
コンピュータを、
堆肥材料の温度を周期的に取得する取得手段、
取得された前記堆肥材料の温度に基づいて、前記堆肥材料が第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第1の温度領域よりも高温側に設定された第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントする計時手段、
カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間が第1の監視時間以下であり、かつカウントされた前記第2の温度領域を通過するのに要する時間が第2の監視時間以下である場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する判定手段、
として機能させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥化診断装置、堆肥化診断システム、堆肥化診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
家畜糞尿、生ごみ、汚泥といった生物系廃棄物に由来する堆肥材料を好気性微生物の働きによって分解した堆肥が広く用いられている。堆肥材料の堆肥化では、堆肥材料中の微生物を活性化できなければ、堆肥の品質が低下したり堆肥化完了に時間を要したりするが、発酵の進行具合の良否を判断することは容易でない。そこで、堆肥化が順調に進行しているかどうかを判定する手法が開発されている。例えば、特許文献1には、計測温度分布パターンと基準温度分布パターンとを比較し、両者の特徴的形態に基づいて発酵の異常原因を判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-145775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らが鋭意検討した結果、堆肥材料の初期段階における発酵(初期発酵)の進行具合が、その後の発酵の進行具合に大きく影響することが判明した。具体的には、堆肥化開始時点から3日以内の初期発酵が順調に進行すれば、その後の発酵も順調に進行し、良質な堆肥を得ることができるのに対し、初期発酵が不良であれば、その後の発酵も順調に進行せず、品質の低い堆肥しか得られない。特許文献1のシステムでは、予め試験を行って発酵が理想的に進行した堆肥材料の温度分布に基づいて対象となる堆肥材料の発酵の良否を判定しているため、堆肥材料における初期発酵の良否については判定できない。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、堆肥材料における初期発酵の良否を判定することが可能な堆肥化診断装置、堆肥化診断システム、堆肥化診断方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る堆肥化診断装置は、
堆肥材料の温度を周期的に取得する取得部と、
取得された前記堆肥材料の温度に基づいて、前記堆肥材料が第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第1の温度領域よりも高温側に設定された第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントする計時部と、
カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間が第1の監視時間以下であり、かつカウントされた前記第2の温度領域を通過するのに要する時間が第2の監視時間以下である場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する判定部と、
を備える。
【0007】
前記堆肥化診断装置は、カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第2の温度領域を通過するのに要する時間とに基づいて、前記第1の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度と前記第2の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度とを演算する演算部をさらに備え、
前記判定部は、演算された前記第1の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度が第1の設定角度以上であり、かつ演算された前記第2の温度領域における前記堆肥材料の温度上昇角度が第2の設定角度以上であると判定された場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定してもよい。
【0008】
前記第1の温度領域は、前記堆肥材料に存在する中温菌が活性化する中温帯域であり、
前記第2の温度領域は、前記堆肥材料に存在する高温菌が活性化する高温帯域であってもよい。
【0009】
前記第1の温度領域の上限値及び下限値は、いずれも35℃~50℃の範囲内に設定され、
前記第2の温度領域の上限値及び下限値は、いずれも50℃~65℃の範囲内に設定されてもよい。
【0010】
前記計時部は、取得された前記堆肥材料の温度が堆肥化開始時点から判定時間内に前記第1の温度領域の下限値よりも低くなるように設定された目標温度に到達した場合に、前記第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントしてもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る堆肥化診断システムは、
前記堆肥材料の温度を計測する温度計と、
前記温度計と通信可能に接続され、前記温度計により計測された前記堆肥材料の温度を周期的に取得する前記堆肥化診断装置と、
を備える。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る堆肥化診断方法は、
堆肥材料の温度を周期的に取得するステップと、
取得された前記堆肥材料の温度に基づいて、前記堆肥材料が第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第1の温度領域よりも高温側に設定された第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントするステップと、
カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間が第1の監視時間以下であり、かつカウントされた前記第2の温度領域を通過するのに要する時間が第2の監視時間以下である場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定するステップと、
を含む。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第4の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
堆肥材料の温度を周期的に取得する取得手段、
取得された前記堆肥材料の温度に基づいて、前記堆肥材料が第1の温度領域を通過するのに要する時間と前記第1の温度領域よりも高温側に設定された第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントする計時手段、
カウントされた前記第1の温度領域を通過するのに要する時間が第1の監視時間以下であり、かつカウントされた前記第2の温度領域を通過するのに要する時間が第2の監視時間以下である場合に、前記堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する判定手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、堆肥材料における初期発酵の良否を判定することが可能な堆肥化診断装置、堆肥化診断システム、堆肥化診断方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る堆肥舎の構成を示す正面図である。
図2】縦軸を堆肥材料温度、横軸を時間として堆肥材料の温度上昇角度を表現したグラフである。
図3】本発明の実施の形態に係る診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】(a)は、本発明の実施の形態に係るパラメータ記憶部のデータテーブルの一例を示す図であり、(b)は、本発明の実施の形態に係る温度データ記憶部のデータテーブルの一例を示す図である。
図5】堆肥材料温度と時間との関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態に係る診断処理の流れを示すフローチャートである。
図7】40℃~45℃及び55℃~60℃の各温度領域における平均熱発生速度の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る堆肥化診断装置、堆肥化診断システム、堆肥化診断方法及びプログラムを、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0017】
実施の形態に係る堆肥化診断システムは、堆肥舎に設置され、堆肥材料の温度に基づき堆肥材料の初期発酵の良否を判定するシステムである。堆肥材料の初期発酵は、例えば、堆肥化開始から6日以内、好ましくは3日以内の発酵であり、その時点での進行具合は、その後の発酵が順調に進行するかどうかを大きく左右する。ユーザは、実施の形態に係る堆肥化診断システムにより判定された初期発酵の良否に基づき、初期発酵を促進するために堆肥材料に対して切り返し、通気、加温、水分調整といった人為的な介入を行うかどうかを判断する。
【0018】
堆肥材料は、例えば、家畜糞尿、生ごみ、下水の汚泥、食品の汚泥、わら及びおがくずの少なくとも1つを含み、好気性微生物の活動により自己発熱を引き起こす。家畜の排せつ物は、例えば、牛糞、豚糞、鶏糞、馬糞の少なくとも1つを含む。好気性微生物としては、最適温度帯が40℃前後の中温菌と60℃前後の高温菌とが存在する。これらの菌の働きにより堆肥材料に代謝熱が蓄積すると、堆肥材料の温度が70℃以上に上昇する。これにより堆肥材料中の有機物が分解されると共に、病原性微生物及び雑草種子が不活性化するため、品質の良い堆肥が得られる。
【0019】
図1に示すように、実施の形態に係る堆肥化診断システム1は、温度計2と、診断装置100と、を備える。温度計2と診断装置100とは、いずれも堆肥舎3に設置され、有線又は無線の通信回路を介して互いに通信可能に接続されている。
【0020】
堆肥舎3は、堆肥材料が堆積され、堆肥材料の堆肥化が実施される発酵槽3aを備える。発酵槽3aは、複数の区画に分けられ、それぞれの区画には、発酵の進行具合の異なる堆肥材料が堆積される。発酵槽3aは、例えば、鉄筋コンクリートで形成され、その上方は屋根3bで覆われている。屋根3bは、発酵槽3aに設置された複数の支柱3cにより支持されている。
【0021】
堆肥舎3には、例えば、堆肥材料の切り返しを実施する攪拌機4と、堆肥材料への通気を行う通気装置5とが設置されている。攪拌機4は、堆肥材料を把持して持ち上げ、他の区画に移動させることで、堆肥材料を空気に接触させる切り返しを実施する。切り返しでは、堆積された堆肥材料を複数回に分けて他の区画に移動させるとよい。
【0022】
通気装置5は、堆肥材料に空気を通気させる装置である。通気装置5は、発酵槽3aの各区画の床面に延びるように設置され、堆肥材料に向けて空気を放出する複数の通気管を備える。
【0023】
温度計2は、発酵槽3aに堆積された堆肥材料に挿入され、堆肥材料内部の温度を計測する。温度計2は、例えば、堆肥舎3の支柱3cに取り付けられたロボットアーム2aにより移動可能に支持されている。ロボットアーム2aは、温度計2を堆肥材料に挿入された位置と堆肥材料から取り外した位置とに移動させることができる。
【0024】
診断装置100は、温度計2により周期的に計測された温度データと、堆肥化を開始した時点からカウントを開始した経過時間とに基づいて、対象とする堆肥材料の初期発酵の良否を判定する。診断装置100は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(programmable logic controller:PLC)等の制御盤を備える。診断装置100は、発明者らが見いだした以下の初期発酵条件を堆肥材料が満たしているかどうかを判定する処理を実行する。
【0025】
発明者らが鋭意検討した結果、中温帯域及び高温帯域における平均熱発生速度を用いて、その後の発酵が順調に進行する初期発酵を見分けられることが判明した。中温帯域は、中温菌が活動する温度領域、例えば、40℃~45℃の温度領域である。高温帯域は、高温菌が活動する温度領域、例えば、55℃~60℃の温度領域である。ただ、熱発生速度の算出には、堆肥材料の含水率が必要であり、含水率の計測には、サンプルを乾燥させる必要があるため、実際の製造現場で繰り返し実施することは困難である。このため、堆肥材料の含水率を用いずに算出でき、平均熱発生速度と同等の傾向を示す他のパラメータを探索した。その結果、中温帯域及び高温帯域における温度上昇角度が好適なパラメータであることが判明した。
【0026】
温度上昇角度は、図2に示すように対象とする温度領域の上限値及び下限値の差ΔTと、堆肥材料温度が当該温度領域を通過するのに要する時間Δtを用いて直角三角形を設定した場合において、時間Δtを示す辺と斜辺とのなす角である。例えば、温度領域の下限値をT1=40℃、上限値をT2=45℃とすると、ΔT=5℃であり、Δtは堆肥材料温度が40℃から45℃に上昇するのに要する時間である。温度上昇角度θは、温度上昇の速度を示しているため、その角度が大きいほど堆肥材料温度が温度領域を短い時間で通過する。
【0027】
図2に図示した直角三角形から理解できるように、温度上昇角度θは、単位を「°」とすると、三角関数を用いて以下のように表すことができる。一例として温度Tの単位は℃、時間tの単位は時間である。
tanθ=ΔT/Δt …(1)
上記の式(1)を変形すると、以下の式(2)が得られる。
θ=arctan(ΔT/Δt)×(180/π) …(2)
【0028】
また、堆肥材料の堆肥化では、低い外気温の影響を受けて堆肥材料の温度上昇が遅延することが問題となっている。これまでに実施した堆肥化で計測したデータを分析した結果、堆肥材料が好気性微生物の働きにより自己発熱を開始する温度まで上昇するのに要する時間の長さが発酵の良否を左右することが判明した。このため、自己発熱を開始する温度に到達するかどうかを一次スクリーニングとして用いることとした。自己発熱を開始する温度は、例えば、35 ℃である。
【0029】
上記の初期発酵条件を考慮すると、実施の形態に係る診断装置100は以下の処理を行うように構成されるとよい。まず、堆肥材料温度が堆肥化開始時点の温度(初期温度)から自己発熱を開始する温度(目標温度)に到達するのに要する時間を用いて一次スクリーニングを行う。次に、堆肥材料温度が中温帯域を通過するのに要する時間と堆肥材料温度が高温帯域を通過するのに要する時間とを用いて堆肥材料の初期発酵の良否を判定する処理を行う。
【0030】
次に、図3を参照して、実施の形態に係る診断装置100のハードウェア構成を説明する。診断装置100は、操作部110と、表示部120と、通信部130と、記憶部140と、制御部150と、を備える。診断装置100の各部は、内部バス(図示せず)を介して互いに通信可能に接続されている。
【0031】
操作部110は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部150に供給する。表示部120は、制御部150から供給される画像データに基づいて、診断装置100を操作するユーザに向けて各種の画像を表示する。操作部110と表示部120とは、タッチパネルによって一体に構成されている。
【0032】
タッチパネルは、ユーザによる操作を受け付ける操作画面を表示すると共に、操作画面においてユーザが接触操作を行った位置に対応する操作信号を制御部150に供給する。例えば、タッチパネルは、例えば、各種パラメータを設定するユーザによる操作を受け付けると共に、堆肥化開始からの経過時間、リアルタイムの堆肥温度、診断結果を表示する。
【0033】
通信部130は、診断装置100が外部の機器と通信するための通信インタフェースである。通信部130は、例えば、インターネットのような通信ネットワークや入出力端子を介して外部の機器と通信する。入出力端子は、例えば、USB(Universal Serial Bus)である。
【0034】
記憶部140は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリを備える。記憶部140は、制御部150に実行されるプログラムや各種のデータ、例えば、目標温度、第1の温度領域及び第2の温度領域それぞれの上限値及び下限値を記憶する共に、各種の情報を一時的に記憶し、制御部150が処理を実行するためのワークメモリとしても機能する。
【0035】
目標温度は、初期発熱が順調に進行するかどうかを示す一次スクリーニングに用いる温度であり、例えば、30℃~40℃の範囲内に、好ましくは35℃に設定する。第2の温度領域は、第1の温度領域よりも高温側の温度領域である。第1の温度領域は、例えば、中温菌が活動する中温帯域を含むように設定され、第2の温度領域は、例えば、高温菌が活動する高温帯域を含むように設定されている。第1の温度領域では、上限値及び下限値がいずれも35℃~50℃の範囲内に設定され、第2の温度領域では、上限値及び下限値がいずれも50℃~65℃の範囲内に設定されるとよい。一例として第1の温度領域は、下限値40℃、上限値45℃であり、第2の温度領域は、下限値55℃、上限値60℃である。
【0036】
記憶部140は、パラメータ記憶部141と、温度データ記憶部142と、を備える。図4(a)に示すように、パラメータ記憶部141は、診断装置100による診断処理に用いる各種のパラメータを記憶する。パラメータは、例えば、判定時間、監視時間、第1の設定角度、第2の設定角度である。判定時間は、一次スクリーニングに用いるパラメータであり、例えば、堆肥化開始時点から72時間である。監視時間、第1の設定角度及び第2の設定角度は、温度上昇角度を用いた判定に用いるパラメータである。監視時間は、例えば、48時間であり、第1の設定角度及び第2の設定角度は、例えば、それぞれ40°、30°である。
【0037】
図4(b)に示すように、温度データ記憶部142は、堆肥化開始時点からの経過時間に対応する堆肥材料の温度に関するデータを順番に記憶する。
【0038】
図3に戻り、制御部150は、プロセッサを備え、診断装置100の各部の制御を行う。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部150は、内部タイマを備える。また、制御部150は、記憶部140に記憶されているプログラムを実行することにより、図6の診断処理を実行する。制御部150は、機能的には、取得部151と、計時部152と、演算部153と、判定部154と、出力部155と、を備える。
【0039】
取得部151は、ユーザが操作部110を操作して入力した各種のパラメータを取得し、図4(a)のパラメータ記憶部141に記憶させる。また、取得部151は、温度計2に堆肥材料温度の計測を開始させ、堆肥材料の温度データを周期的に取得すると共に、取得した温度データを堆肥化開始時点からの経過時間に対応付けて図4(b)の温度データ記憶部142に記憶させる。なお、取得部151によるデータの取得は、外部からデータを取得することに限られず、記憶部140に記憶されたデータをメモリ上に読み出すことも含まれる。
【0040】
計時部152は、制御部150の内部タイマの機能を用いて、取得部151により取得された堆肥材料の温度に基づいて、堆肥材料温度が堆肥化開始時点から目標温度に到達するまでの時間と、第1の温度領域を通過するのに要する時間と、第2の温度領域を通過するのに要する時間とをカウントする。第1の温度領域を通過するのに要する時間のカウントは、堆肥材料の温度が目標温度に到達した時点で開始される。第2の温度領域を通過するのに要する時間のカウントは、堆肥材料の温度が第1の温度領域の上限値に到達した時点で開始される。
【0041】
演算部153は、計時部152によりカウントされた第1の温度領域を通過するのに要する時間と第2の温度領域を通過するのに要する時間とに基づいて、第1の温度領域及び第2の温度領域における堆肥材料の温度上昇角度をそれぞれ演算する。
【0042】
以下、図5を参照して具体的な手順を説明する。まず、演算部153は、取得された堆肥材料の温度が目標温度に到達した時点から監視時間Δt2内に第1の温度領域の上限値(45℃)に到達した場合に、第1の温度領域における堆肥材料の温度上昇角度θ1を演算する。監視時間Δt2は、第1の監視時間の一例である。温度上昇角度θ1は以下の式(3)で表される。
θ1=arctan(ΔT1/Δt2)×(180/π) …(3)
ここで、第1の温度領域の上限値及び下限値をそれぞれ40℃、45℃とすると、ΔT1=5℃であり、Δt2は40℃から45℃に上昇するのに要する時間である。
【0043】
次に、演算部153は、堆肥材料の温度が第1の温度領域の上限値(45℃)に到達した時点から監視時間Δt2内に第2の温度領域の上限値(60℃)に到達した場合に、第2の温度領域における堆肥材料の温度上昇角度θ2を演算する。監視時間Δt2は、第2の監視時間の一例である。温度上昇角度θ2は以下の式(4)で表される。
θ2=arctan(ΔT2/Δt2)×(180/π) …(4)
ここで、第2の温度領域の上限値及び下限値をそれぞれ55℃、60℃とすると、Δt1は55℃から60℃に上昇するのに要する時間である。
【0044】
図3に戻り、判定部154は、取得部151により取得された堆肥材料温度が判定時間内に目標温度に到達し、演算部153により演算された第1の温度領域における堆肥材料の温度上昇角度が第1の設定角度以上であり、かつ演算された第2の温度領域における堆肥材料の温度上昇角度が第2の設定角度以上であると判定された場合に、堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する。他方、上記3つの条件のいずれかを満たさない場合に、堆肥材料の初期発酵が不良であると判定する。
【0045】
以下、図5を参照して具体的な手順を説明する。まず、判定部154は、取得部151により取得された堆肥材料温度が判定時間Δt1内に目標温度(35℃)に到達したかどうかを判定する。具体的には、堆肥化処理の開始時点で計時部152に時間のカウントを開始させ、堆肥材料温度が目標温度(35℃)に到達するか、それともカウントした時間が判定時間Δt1以上になるかを判定する。
【0046】
次に、判定部154は、取得部151により取得された堆肥材料温度が目標温度(35℃)に到達した時点から監視時間Δt2内に第1の温度領域の上限値(45℃)に到達したかどうかを判定する。具体的には、堆肥材料温度が目標温度(35℃)に到達した時点で計時部152に時間のカウントを開始させ、カウント開始時点から監視時間Δt2内に堆肥材料温度が第1の温度領域の上限値(45℃)に到達するか、それともカウントした時間が監視時間Δt2以上になるかを判定する。
【0047】
次に、判定部154は、演算部153により演算された第1の温度領域における温度上昇角度が第1の設定角度以上であるかどうかを判定する。
【0048】
次に、判定部154は、取得部151により取得された堆肥材料温度が第1の温度領域の上限値(45℃)に到達した時点から監視時間Δt2内に第2の温度領域の上限値(60℃)に到達したかどうかを判定する。具体的には、堆肥材料温度が第1の温度領域の上限値(45℃)に到達した時点で計時部152に時間のカウントを開始させ、カウント開始時点から監視時間Δt2内に堆肥材料温度が第2の温度領域の上限値(60℃)に到達するか、それともカウントした時間が監視時間Δt2以上になるかを判定する。
【0049】
次に、判定部154は、演算部153により演算された第2の温度領域における温度上昇角度が第2の設定角度以上であるかどうかを判定する。
【0050】
図3に戻り、出力部155は、判定部154による判定結果を外部に出力する。出力部155は、例えば、判定部154による判定結果を表示部120に表示させる。
【0051】
具体的には、出力部155は、判定部154により堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定された場合に、初期発酵が順調である旨を表示部120に表示させる。他方、出力部155は、判定部154により堆肥材料の初期発酵が不良であると判定された場合に、初期発酵が不良である旨を表示部120に表示させる。
以上が、診断装置100のハードウェア構成である。
【0052】
(診断処理)
次に、図6のフローチャートを参照して、実施の形態に係る診断装置100が実行する診断処理を説明する。診断処理は、堆肥化が開始された堆肥材料の初期発酵の良否を判定する処理である。診断処理は、診断装置100の操作部110を操作してプログラムを起動した時点で開始される。
【0053】
ユーザは、診断装置100が診断処理を実行する前に堆肥舎3の発酵槽3aに堆肥材料を堆積させ、堆肥材料内に温度計2が挿入されるようにセットする。次に、ユーザが操作部110を操作して判定時間、監視時間、第1の設定角度及び第2の設定角度に関する設定値を入力すると、取得部151は、判定時間、監視時間、第1の設定角度及び第2の設定角度に関する設定値を取得する(ステップS1)。取得部151は、取得したパラメータの設定値を図4(a)のパラメータ記憶部141に記憶させる。
【0054】
次に、ユーザが診断装置100の操作部110を操作して温度計測の開始を指示すると、取得部151は、温度計2から堆肥材料の温度データの周期的な取得を開始する(ステップS2)。取得部151は、診断処理が終了するまで、取得した温度データをその都度、温度計測開始時点からの経過時間に対応付けて図4(b)の温度データ記憶部142に記憶させる。
【0055】
次に、判定部154は、ステップS2の処理で取得された堆肥材料温度が判定時間経過時点で目標温度に到達しているかどうかを判定する(ステップS3)。具体的には、堆肥化処理の開始時点から温度計2による温度の計測を開始すると共に、図4(a)のパラメータ記憶部141に記憶された判定時間を読み出し、堆肥材料温度が判定時間経過時点で目標温度に到達するかどうかを判定する。
【0056】
堆肥材料温度が判定時間経過時点で目標温度に到達していると判定された場合(ステップS3;Yes)、ステップS4に処理を移動する。他方、堆肥材料温度が判定時間経過時点で目標温度に到達してないと判定された場合(ステップS3;No)、ステップS11の処理に移動する。
【0057】
ステップS3の処理でYesの場合、判定部154は、堆肥材料温度が監視時間経過時点で第1の温度領域の上限値に到達しているかどうかを判定する(ステップS4)。具体的には、堆肥材料温度が目標温度に到達した時点から時間のカウントを開始すると共に、図4(a)のパラメータ記憶部141に記憶された監視時間を読み出し、カウント開始時点から監視時間経過時点で堆肥材料温度が第1の温度領域の上限値に到達するかどうかを判定する。
【0058】
堆肥材料温度が監視時間経過時点で第1の温度領域の上限値に到達していると判定された場合(ステップS4;Yes)、ステップS5に処理を移動する。他方堆肥材料温度が監視時間経過時点で第1の温度領域の上限値に到達していないと判定された場合(ステップS4;No)、ステップS11の処理に移動する。
【0059】
ステップS4の処理でYesの場合、演算部153は、第1の温度領域の下限値及び上限値の差分と第1の温度領域の下限値から上限値に到達するまでの時間とに基づいて第1の温度領域における温度上昇角度を演算する(ステップS5)。
【0060】
次に、判定部154は、ステップS5の処理で演算された第1の温度範囲における温度上昇角度が第1の設定角度以上であるかどうかを判定する(ステップS6)。具体的には、図4(a)のパラメータ記憶部141に記憶された第1の設定角度を読み出し、ステップS5の処理で演算された温度上昇角度と比較する。
【0061】
第1の温度範囲における温度上昇角度が第1の設定角度以上であると判定された場合(ステップS6;Yes)、ステップS7に処理を移動する。他方、第1の温度範囲における温度上昇角度が第1の設定角度以上でないと判定された場合(ステップS6;No)、ステップS11の処理に移動する。
【0062】
ステップS6の処理でYesの場合、判定部154は、堆肥材料温度が監視時間経過時点で第2の温度領域の上限値に到達しているかどうかを判定する(ステップS7)。具体的には、堆肥材料温度が第1の温度領域の上限値に到達した時点から時間のカウントを開始すると共に、図4(a)のパラメータ記憶部141に記憶された監視時間を読み出し、カウント開始時点から監視時間経過時点で堆肥材料温度が第2の温度領域の上限値に到達するかどうかを判定する。
【0063】
堆肥材料温度が監視時間経過時点で第2の温度領域の上限値に到達していると判定された場合(ステップS7;Yes)、ステップS8に処理を移動する。他方、堆肥材料温度が監視時間経過時点で第2の温度領域の上限値に到達していないと判定された場合(ステップS7;No)、ステップS11の処理に移動する。
【0064】
ステップS7の処理でYesの場合、演算部153は、第2の温度領域の下限値及び上限値の差分と第2の温度領域の下限値から上限値に到達するまでの時間とに基づいて第2の温度領域における温度上昇角度を演算する(ステップS8)。
【0065】
次に、判定部154は、ステップS7の処理で演算された第2の温度範囲における温度上昇角度が第2の設定角度以上であるかどうかを判定する(ステップS9)。具体的には、図4(a)のパラメータ記憶部141に記憶された第2の設定角度を読み出し、ステップS7の処理で演算された温度上昇角度と比較する。
【0066】
第2の温度範囲における温度上昇角度が第2の設定角度以上であると判定された場合(ステップS9;Yes)、ステップS10に処理を移動する。他方、第2の温度範囲における温度上昇角度が第1の設定角度以上でないと判定された場合(ステップS9;No)、ステップS11の処理に移動する。
【0067】
ステップS9の処理でYesの場合、出力部155は、初期発酵が「順調」である旨を表示部120に表示させ(ステップS10)、処理を終了する。他方、ステップS3、S4、S6、S7、S9の処理でNoの場合、出力部155は、初期発酵が「不良」である旨を表示部120に表示させ(ステップS11)、処理を終了する。
以上が、診断処理の流れである。
【0068】
初期発酵が「順調」と判定された場合には、そのままの条件で堆肥化を継続すればよい。他方、初期発酵が「不良」と判定された場合には、堆肥材料に人為的な介入を実施すればよい。例えば、適時のタイミングで攪拌機4を用いて堆肥材料の切り返しを実施してもよく、通気装置5を用いて堆肥材料に供給する空気の流量を調整してもよい。これにより堆肥材料に存在する好気性微生物による自己発熱が生じやすい環境を整え、初期発酵が順調に進行するように促すことができる。
【0069】
以上説明したように、実施の形態に係る診断装置100は、演算部153により演算された第1の温度領域における堆肥材料の温度上昇角度が第1の設定角度以上であり、かつ演算された第2の温度領域における堆肥材料の温度上昇角度が第2の設定角度以上であると判定された場合に、堆肥材料の初期発酵が順調に進行していると判定する判定部154を備える。このため、不慣れな作業者であっても堆肥材料における初期発酵の良否を簡単かつ正確に判定できる。
【0070】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0071】
(変形例)
上記実施の形態では、温度計2がロボットアーム2aにより支持され、ロボットアーム2aで移動することで温度計2が堆肥材料にセットされていたが、本発明はこれに限られない。例えば、ユーザが堆肥材料に温度計2を挿入してもよい。また、上記実施の形態では、発酵槽3a毎に1つの温度計2を用いていたが、本発明はこれに限られない。複数の温度計2を堆肥材料にセットし、各温度計2により測定された温度の平均値を堆肥材料の温度を示すデータとして用いてもよい。
【0072】
上記実施の形態では、堆肥材料に対する加温を行っていなかったが、本発明はこれに限られない。診断結果が不良である場合に堆肥材料の内部に温風を供給して加温する加温装置を堆肥舎3に設けてもよい。加温装置は、例えば、堆肥舎3の屋根3bを支持する梁に吊されたチェーンブロックにより支持され、温風を放出するパイプが堆肥材料に差し込まれるように構成されている。
【0073】
上記実施の形態では、第1の温度領域及び第2の温度領域における上限値及び下限値をそれぞれ記憶部140に予め記憶していたが、本発明はこれに限られない。診断処理を行う時点でユーザが操作部110を操作して、第1の温度領域及び第2の温度領域における上限値及び下限値を入力して記憶部140に記憶させてもよい。
【0074】
上記実施の形態では、第1の監視時間及び第2の監視時間として同一の監視時間Δt2を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、第1の監視時間と第2の監視時間とを異なる長さであってもよい。
【0075】
上記実施の形態では、第1の温度領域及び第2の温度領域における温度上昇角度を演算していたが、本発明はこれに限られない。例えば、第1の設定角度及び第2の設定角度に基づいて設定した第1の判定時間及び第2の判定時間を記憶部140に記憶させておき、堆肥材料温度が目標温度から第1の温度領域の上限値に到達するまでの時間が第1の設定時間以下であるかを判定し、次に、堆肥材料温度が第1の温度領域の上限値から第2の温度領域の上限値に到達するまでの時間が第2の設定時間以下である場合に、初期発酵が順調に進行していると判定してもよい。
【0076】
上記実施の形態では、堆肥材料温度の計測を行いながら初期発酵が順調に進行しているかどうかをリアルタイムで判定していたが、本発明はこれに限られない。堆肥材料温度が第2の温度領域の上限値に到達するまで堆肥材料温度の計測を継続し、その後、初期発酵が順調に進行しているかどうかを判定してもよい。この場合、堆肥材料温度が目標温度以上かどうか、第1の温度領域及び第2の温度領域をそれぞれ通過したかどうかを判定する処理の順番を適宜変更してもよい。
【0077】
上記実施の形態では、診断装置100による診断結果をユーザに報知するために診断結果を表示部120に表示していたが、本発明はこれに限られない。診断装置100による診断結果をスピーカから音声により報知してもよい。例えば、診断装置100による診断結果が不良である場合には、スピーカから警告音を出力させればよい。
【0078】
上記実施の形態では、出力部155が判定部154による最終的な診断結果を表示部120に表示させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、出力部155は、堆肥化開始時点から判定時間内に堆肥材料温度が目標温度に到達したかどうかを判定した時点、堆肥材料温度が目標温度から監視期間内に第1の温度領域の上限値に到達すると共に、第1の温度領域において温度上昇角度が第1の設定角度以上であるかどうかを判定した時点、堆肥材料温度が目標温度から監視期間内に第2の温度領域の上限値に到達すると共に、第2の温度領域において温度上昇角度が第2の設定角度以上であると判定した時点のそれぞれにおいて、判定結果が順調であるか不良であるかを表示部120に表示させてもよい。
【0079】
上記実施の形態では、診断装置100の記憶部140に各種データが記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各種データは、その全部又は一部が通信ネットワークを介して外部のサーバやコンピュータに記憶されていてもよい。
【0080】
上記実施の形態では、診断装置100は、それぞれ記憶部140に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
【0081】
上記実施の形態では、診断装置100は、例えば、汎用コンピュータであったが、本発明はこれに限られない。例えば、診断装置100は、クラウド上に設けられたコンピュータで実現してもよい。
【0082】
上記実施の形態では、診断装置100が実行する処理は、上述の物理的な構成を備える装置が記憶部140に記憶されたプログラムを実行することによって実現されていたが、本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
【0083】
また、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical Disk)といったコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理動作を実行する装置を構成してもよい。
【0084】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
(実施例)
実施例では、堆肥材料の初期発酵の良否を判断するのに好適なパラメータを特定するためにデータ分析を実施した。実験室規模の堆肥舎で乳牛糞を用いた堆肥化を合計72回実施し、それぞれにおいて堆肥材料の温度、含水量及び通気量の時間変化を計測した。計測データを用いて相関分析を実施した。
【0087】
その結果、図7に示すように40℃~45℃、55℃~60℃の温度領域における平均熱発生速度が堆肥材料の初期発酵の良否を判断するのに好適であることが判明した。熱発生速度は、堆肥温度から分析される微生物活性を示す指標であり、熱発生速度の数値が高いほど堆肥化微生物の活性が高いことを意味する。初期発酵が順調に進行する適正条件では、40℃~45℃、55℃~60℃の温度領域における平均熱発生速度を示すプロットが図7の右上に集中し、初期発酵が不良となる不適条件では、同じプロットが図7の左下に集中していた。
【符号の説明】
【0088】
1 堆肥化診断システム
2 温度計
3 堆肥舎
3a 発酵槽
3b 屋根
3c 支柱
4 攪拌機
5 通気装置
100 診断装置
110 操作部
120 表示部
130 通信部
140 記憶部
141 パラメータ記憶部
142 温度データ記憶部
150 制御部
151 取得部
152 計時部
153 演算部
154 判定部
155 出力部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7