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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025147588
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】バッテリの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/10 20190101AFI20250930BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20250930BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250930BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250930BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250930BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20250930BHJP
【FI】
B60L58/10
B60L3/00 S
B60L50/60
H01M10/48 P
H02J7/00 P
H02J7/10 H
H02J7/00 B
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047909
(22)【出願日】2024-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】金石 純司
(72)【発明者】
【氏名】前川 耕太
(72)【発明者】
【氏名】楢原 和晃
(72)【発明者】
【氏名】大住 敏彦
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA07
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC01
5H125EE22
5H125EE52
5H125EE53
(57)【要約】
【課題】ハイレート充放電に起因するバッテリの劣化の抑制と、ハイレート充放電によるエネルギー効率及びドライバビリティの向上とを、高次元で両立する。
【解決手段】動力源としてモータ(4)を備える車両(1)に搭載されたバッテリの制御装置は、バッテリ(B)の充放電電流を測定する電流センサ(SN3)と、測定された充放電電流に基づき、バッテリの充放電が許容される上限電流値を決定するコントローラ(14)とを備え、コントローラは、車両の運転状態に基づき、車両における単位時間当たりのエネルギー損失を算出し、上限電流値より小さい制限電流値であって、制限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失と、上限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失との差が、所定の損失閾値以下となる制限電流値を算出し、バッテリの充放電電流が制限電流値となるように、バッテリの充放電を制御するように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてモータを備える車両に搭載されたバッテリの制御装置であって、
前記バッテリの充放電電流を測定する電流センサと、
測定された前記充放電電流に基づき、前記バッテリの充放電が許容される上限電流値を決定するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記車両の運転状態に基づき、前記車両における単位時間当たりのエネルギー損失を算出し、
前記上限電流値より小さい制限電流値であって、前記制限電流値で前記バッテリの充放電を行った場合の前記エネルギー損失と、前記上限電流値で前記バッテリの充放電を行った場合の前記エネルギー損失との差が、所定の損失閾値以下となる前記制限電流値を算出し、
前記バッテリの充放電電流が前記制限電流値となるように、前記バッテリの充放電を制御するように構成されている、
バッテリの制御装置。
【請求項2】
前記バッテリの充電時の前記損失閾値は、放電時の前記損失閾値より小さい、
請求項1に記載のバッテリの制御装置。
【請求項3】
前記車両の車速が高いほど、前記バッテリの放電時の前記損失閾値は大きい、
請求項1に記載のバッテリの制御装置。
【請求項4】
前記車両の車速が高いほど、前記バッテリの充電時の前記損失閾値は小さい、
請求項1に記載のバッテリの制御装置。
【請求項5】
直近の所定時間において、前記車両の減速量が大きいほど、前記バッテリの放電時の前記損失閾値は大きい、
請求項1に記載のバッテリの制御装置。
【請求項6】
直近の所定時間において、前記車両の減速量が大きいほど、前記バッテリの充電時の前記損失閾値は小さい、
請求項1に記載のバッテリの制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記上限電流値を前記制限電流値の初期値とし、前記制限電流値で前記バッテリの充放電を行った場合の前記エネルギー損失と、前記上限電流値で前記バッテリの充放電を行った場合の前記エネルギー損失との差が、前記損失閾値に達するまで前記制限電流値を減少させることにより、最小の前記制限電流値を探索するように構成されている、
請求項1から6の何れか1項に記載のバッテリの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてモータを備える車両に搭載されたバッテリの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド自動車など動力源としてモータを備える車両において、モータに電力を供給するためにリチウムイオンバッテリ等の二次電池が使用されている。
【0003】
電気自動車やハイブリッド自動車においては、所望の運動性能を得ると共に良好なエネルギー効率を実現するために、モータを用いた加速時や回生ブレーキ時に大電流の充放電(ハイレート充放電)を行えることが望ましい。しかしながら、ハイレート充放電を繰り返すと、電解液中のイオン濃度分布に偏りが生じることに起因して、バッテリの内部抵抗が一時的に増大する。さらに、イオン濃度分布に偏りが生じた状態が続いた場合、イオン濃度分布が偏ったままとなり、バッテリ性能の永続的な劣化を招く。
【0004】
そこで、ハイレート充放電によるバッテリの永続的な劣化を抑制するために、ハイレート充電または放電が継続して行われた場合に、充電または放電における電流制限を設けることによって、イオン濃度分布の不均一を回避するようにした技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際出願公開第2020-079595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているような技術において、放電における電流制限を実施した場合、ハイレート放電によりバッテリからモータに十分な電力を供給することができないので、ドライバの要求する加速度を実現できなかったり、内燃エンジンも使用することによって燃費が悪化したりする可能性がある。また、充電における電流制限を実施した場合には、回生ブレーキによりバッテリをハイレート充電することができないために回生ブレーキのみでは十分な減速度を得ることができないので、必要な減速度を得るために摩擦ブレーキを使用せざるを得ず、エネルギー効率の低下や、減速度の変動を招く可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ハイレート充放電に起因するバッテリの劣化の抑制と、ハイレート充放電によるエネルギー効率及びドライバビリティの向上とを、高次元で両立可能なバッテリの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、動力源としてモータを備える車両に搭載されたバッテリの制御装置であって、バッテリの充放電電流を測定する電流センサと、測定された充放電電流に基づき、バッテリの充放電が許容される上限電流値を決定するコントローラと、を備え、コントローラは、車両の運転状態に基づき、車両における単位時間当たりのエネルギー損失を算出し、上限電流値より小さい制限電流値あって、制限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失と、上限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失との差が、所定の損失閾値以下となる制限電流値を算出し、バッテリの充放電電流が制限電流値となるように、バッテリの充放電を制御するように構成されている。
このように構成された本発明では、コントローラは、上限電流値より小さい制限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失と、上限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失との差が、所定の損失閾値以下となる制限電流値を算出し、バッテリの充放電電流が制限電流値となるように、バッテリの充放電を制御することにより、エネルギー損失の増加を許容できる範囲内で、上限電流値よりもさらに小さい値まで充放電電流を制限する。これにより、エネルギー損失の増加を最小限に抑えつつ充放電電流の制限を強化して、ハイレート充放電によるバッテリの劣化が生じるまでの余裕を確保することができ、ハイレート充放電が必要となる状況に備えることができる。したがって、ハイレート充放電に起因するバッテリの劣化の抑制と、必要なときにハイレート充放電を行えることによるエネルギー効率及びドライバビリティの向上とを両立することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、バッテリの充電時の損失閾値は、放電時の損失閾値より小さい。
このように構成された本発明においては、充電時の損失閾値が放電時よりも小さいので、充電時の制限電流値を放電時と比べて大きくすることができる。したがって、回生ブレーキの使用時に、できる限り大きい電流値でバッテリの充電を行うことができ、所望の減速力を得ると共に良好なエネルギー効率を実現することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、車両の車速が高いほど、バッテリの放電時の損失閾値は大きい。
このように構成された本発明においては、車速が高いほど、バッテリの放電時の損失閾値が大きいので、車速が高いほど放電時の制限電流値を小さくすることができる。したがって、車速が高く減速時の回生エネルギーが大きいときほど、回生ブレーキを使用していない放電時には放電電流の制限を強化して、バッテリの劣化が生じるまでの余裕を確保することができ、その後の減速回生時にハイレート充電が必要となる状況に備えることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、車両の車速が高いほど、バッテリの充電時の損失閾値は小さい。
このように構成された本発明においては、車速が高いほど、バッテリの充電時の損失閾値が小さいので、車速が高いほど充電時の制限電流値を大きくすることができる。したがって、車速が高く減速時の回生エネルギーが大きいときほど、回生ブレーキを使用している充電時には充電電流の制限を抑えて、充電電流をできる限り大きくし、エネルギー効率を高めることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、直近の所定時間において、車両の減速量が大きいほど、バッテリの放電時の損失閾値は大きい。
このように構成された本発明においては、直近の車両の減速量が大きいほど、バッテリの放電時の損失閾値が大きいので、直近の車両の減速量が大きいほど放電時の制限電流値を小さくすることができる。したがって、直近の車両の減速量が大きく減速が必要な状況であるときほど、回生ブレーキを使用していない放電時には放電電流の制限を強化して、バッテリの劣化が生じるまでの余裕を確保することができ、その後の減速回生時にハイレート充電が必要となる状況に備えることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、直近の所定時間において、車両の減速量が大きいほど、バッテリの充電時の損失閾値は小さい。
このように構成された本発明においては、直近の車両の減速量が大きいほど、バッテリの充電時の損失閾値が小さいので、直近の車両の減速量が大きいほど、充電時の制限電流値を大きくすることができる。したがって、直近の車両の減速量が大きく減速が必要な状況であるときほど、回生ブレーキを使用している充電時には充電電流の制限を抑えて、充電電流をできる限り大きくし、エネルギー効率を高めることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、コントローラは、上限電流値を制限電流値の初期値とし、制限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失と、上限電流値でバッテリの充放電を行った場合のエネルギー損失との差が、損失閾値に達するまで制限電流値を減少させることにより、最小の制限電流値を探索するように構成されている。
このように構成された本発明においては、エネルギー損失の増加を許容できる範囲内でできる限り小さい制限電流値を、適切に求めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバッテリの制御装置によれば、ハイレート充放電に起因するバッテリの劣化の抑制と、ハイレート充放電によるエネルギー効率及びドライバビリティの向上とを、高次元で両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態によるバッテリの制御装置が適用された車両の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態によるバッテリの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態によるリチウムイオンバッテリの構造を簡略化して示す図である。
図4】リチウムイオンバッテリの劣化の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態によるバッテリ制御処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態による制限電流値算出処理を示すフローチャートである。
図7】ロスパワーに対する電流制限の影響が小さい場合の電流値とロスパワーとの関係を例示する図である。
図8】ロスパワーに対する電流制限の影響が大きい場合の電流値とロスパワーとの関係を例示する図である。
図9】車速と損失閾値との関係を例示する図である。
図10】過去の減速量と損失閾値との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるバッテリの制御装置について説明する。
【0018】
<システム構成>
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態によるバッテリの制御装置の構成を説明する。図1は、本実施形態によるバッテリの制御装置が適用された車両の概略構成を示す平面図であり、図2は、本実施形態によるバッテリの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車両1を動力源として内燃エンジン2とモータ4とを搭載する、ハイブリッド自動車である。内燃エンジン2及びモータ4は、例えば車両1の車体前部に搭載されている。内燃エンジン2は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。内燃エンジン2及びモータ4から出力されたトルクは、クラッチ(図示せず)を介してトランスミッション6に伝達される。トランスミッション6は、入力されたトルクを所定の減速比で一対のドライブシャフト8に出力する。これにより、各ドライブシャフト8の車幅方向外側端部に取り付けられた一対の駆動輪10(図1の例では左右の前輪)が駆動される。また、モータ4は、車両1の減速時には回生電力を出力するジェネレータとして機能する。
【0020】
モータ4に電力を供給するバッテリBは、リチウムイオンバッテリであり、例えば車両1の車体後部に搭載されている。バッテリBは、例えば出力電圧が48V、最大放電電流値が80A、容量が1kWhである。さらに、モータ4の近傍にインバータ12が配置されている。インバータ12は、バッテリBから供給された直流電力を交流電力に変換してモータ4に供給し、モータ4が発生させる回生電力を直流電力に変換してバッテリBに供給することによりバッテリBを充電する。また、インバータ12はコントローラ14と電気的に接続されており、コントローラ14との間で制御信号を入出力できるようになっている。
【0021】
また、車両1は、バッテリBの温度を検出する温度センサSN1、バッテリBの電圧を検出する電圧センサSN2、バッテリBの充放電電流値を検出する電流センサSN3、車速を検出する車速センサSN4、及び車両1の加速度を検出する加速度センサSN5を有する。これらの各センサは、直接的に又は間接的にコントローラ14と電気的に接続されており、それぞれの検出値に対応する検出信号をコントローラ14に出力する。
【0022】
この車両1においては、コントローラ14が各種の制御を行う。コントローラ14は、図2に示すように、プロセッサ16、及び、当該プロセッサ16上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)や各種のデータを記憶するためのメモリ18(ROMやRAM等)を有している。
【0023】
コントローラ14は、車両1のパワートレインシステムのコントローラとして機能する。即ち、コントローラ14は、ドライバによるアクセルペダルの操作に応じて、内燃エンジン2及びインバータ12を制御し、インバータ12を介してバッテリBからモータ4に電力を供給させ又はモータ4からバッテリBに回生電力を供給させることで、アクセル操作に応じた所望の出力トルク又は回生トルクが実現されるようにする。さらに、コントローラ14は、上述した各種センサSN1~SN5から入力された信号に基づき、バッテリBの充放電を制御するように構成されている。
【0024】
次に、図3から図5を参照して、本実施形態のバッテリBの構造について説明する。図3は、リチウムイオンバッテリの構造を簡略化して示す図、図4はリチウムイオンバッテリの劣化の一例を示す図、図5はリチウムイオンバッテリの限界積算電流量を求めるためのマップを例示する図である。
【0025】
本実施形態のバッテリBはリチウムイオンバッテリであり、図3に示すように、正極、負極及びこれらの正極と負極とを絶縁するセパレータを備え、支持電解質として主電解質と副電解質とを非水溶媒に溶解させた非水電解液を用いている。
【0026】
正極は、正極活物質及び助剤(結着剤及び導電助剤)を混合して集電体に塗布することにより形成される。好ましい集電体としては、例えばアルミニウム箔が挙げられる。
【0027】
好ましい正極活物質としては、コバルト、マンガン及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物、リン酸系リチウム化合物、ケイ酸系リチウム化合物がある。特に、リン酸系リチウムを採用することが好ましい。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
負極は、負極活物質及び助剤(結着剤及び導電助剤)を混合して集電体に塗布することにより形成される。好ましい集電体としては、例えば銅箔が挙げられる。
【0029】
負極活物質としては、黒鉛系炭素材料、すなわち、人造黒鉛や天然黒鉛を採用することが好ましい。黒鉛系炭素材料は、Liイオンの吸蔵及び放出能力の向上の観点から、黒鉛化度が低いものが好ましい。黒鉛化度が低い人造黒鉛やハードカーボンは負極活物質として好ましい。結晶性の高い天然黒鉛単独では劣化が早いため、表面処理を行った天然黒鉛や人造黒鉛と併用することが好ましい。
【0030】
セパレータについては、特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を採用することができる。
【0031】
非水電解液は、非水溶媒にリチウム塩(支持電解質)を溶解したものであり、必要に応じて添加剤が添加される。
【0032】
バッテリBには、バッテリBの加熱用のヒータ及び冷却用の熱交換器が設けられている。ヒータは、バッテリBの温度が例えば常温程度の低いときに、例えば45℃付近の温度となるようにバッテリBの温度を昇温させる。この昇温によって、後述するように、限界積算電流量を大きくすることができる。ヒータは、例えば電気ヒータを用いることができるが、これに限るものではない。例えば、内燃エンジン2の冷却水温度が所定温度以上の高温になっているときは、この冷却水を昇温用として利用することもできる。
【0033】
熱交換器は、バッテリBの温度が所定温度(例えば50℃)になると作動され、バッテリBの温度が許容上限温度(例えば60℃)以上になるのを防止する。熱交換器は、空冷式や水冷式など、適宜のものを使用できる。
【0034】
図4は、リチウムイオンバッテリの充放電電流の大きさと劣化との関係を示すグラフであり、横軸はリチウムイオンバッテリの使用時の充放電電流(実効電流)の大きさを示し、縦軸は10年後の抵抗劣化(内部抵抗の増大)の割合を示している。この図4において破線で示す通常劣化は、経年劣化とも呼ばれるもので、実効電流による影響はそれほど大きくない。即ち、実効電流が相対的に大きい場合でも、通常劣化に起因する抵抗劣化が大きく悪化することはない。
【0035】
一方、図4において実線で示す恒久劣化は、所定以上の大電流での充放電(ハイレート充放電)が継続して行われた場合に、電解液中のイオン濃度分布が偏ったままとなることに起因して生じるもので、ハイレート劣化とも呼ばれるものである。ハイレート充放電が短時間の場合には、リチウムイオンバッテリの内部抵抗が一時的に増大しても、充放電を休止すれば内部抵抗は低下し、元の状態に復帰させることができる。しかしながら、ハイレート劣化が生じた場合には、充放電を休止してもリチウムイオンバッテリの内部抵抗が元の状態に復帰することはない。したがって、ハイレート劣化を生じさせるような長時間のハイレート充放電は避ける必要がある。
【0036】
充放電電流を所定以下の小電流(例えば40A以下)に制限することにより、ハイレート劣化の発生を防止できる。しかしながら、そのような電流制限を実施すると、バッテリBからモータ4に十分な電力を供給することや回生ブレーキにより十分な減速力を得ることができない場合がある。したがって、ハイレート充放電に起因するバッテリBの劣化の抑制と、ハイレート充放電によるエネルギー効率及びドライバビリティの向上とを両立できるように、バッテリBの充放電を制御する必要がある。
【0037】
<バッテリの制御>
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態によるバッテリ制御処理について説明する。図5は、本実施形態によるバッテリ制御処理を示すフローチャートであり、図6は、本実施形態による制限電流値算出処理を示すフローチャートである。図5に示すバッテリ制御処理は、車両1の電源がONである場合に、コントローラ14によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0038】
バッテリ制御処理が開始されると、コントローラ14は、各センサSN1~SN5から信号を取得する(ステップS1)。各センサSN1~SN5からの信号の取得は、ステップS1以降の処理においてもバックグラウンドで常時実行されている。
【0039】
次に、コントローラ14は、要求電流値Ireqを算出する(ステップS2)。要求電流値Ireqは、ドライバの運転操作や車両1の動作状態に応じてバッテリBが充放電するように要求される充放電電流値である。要求電流値Ireqには、例えば、ドライバの運転操作に基づき設定された要求出力トルクや要求回生トルクをモータ4に発生させるために必要な充放電電流が含まれる。
【0040】
次に、コントローラ14は、ステップS1において電流センサSN3から取得した信号に基づき、バッテリBの実効電流値Irmsを算出する(ステップS3)。
【0041】
次に、コントローラ14は、ステップS3で算出した実効電流値Irmsに基づき、積算電流量を算出する(ステップS4)。積算電流量[Ah]とは、リチウムイオンバッテリの充放電時の実効電流値Irmsと充放電時間との積で表される値である。コントローラ14は、例えば、最後に積算電流量を算出した時刻から現在までの時間(例えばバッテリ制御処理の計算周期)と、ステップS3で算出した実効電流値Irmsとの積を、最後に算出した積算電流量に加算することにより、現時点までの積算電流量を算出する。また、ステップS3で算出した実効電流値Irmsが0の場合、即ちバッテリBの充放電が休止中の場合には、コントローラ14は、その休止時間に応じた値を、最後に算出した積算電流量から減算する。また、休止時間が所定時間以上の場合に、積算電流量を0にリセットするようにしてもよい。
【0042】
次に、コントローラ14は、ステップS4で算出した積算電流量に基づき、バッテリBのハイレート劣化を防止するために充放電電流の制限を実行するか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、コントローラ14は、ステップS4で算出した積算電流量が限界積算電流量以上である場合に、充放電電流の制限を実行すると判定する。ここで、限界積算電流量とは、ハイレート劣化を生じさせることなくハイレート充放電を行うことができる積算電流量の上限値である。即ち、積算電流量が限界積算電流量に達した場合には、ハイレート劣化の発生を防止するために、充放電電流を制限する必要がある。限界積算電流量は、例えば予め設定されメモリ18に記憶されている。また、限界積算電流量は、バッテリBの温度や実効電流値Irmsに応じて変化するので、それらのパラメータを反映した限界積算電流量をコントローラ14が随時算出するようにしてもよい。
【0043】
ステップS5において、バッテリBのハイレート劣化を防止するために充放電電流の制限を実行しないと判定した場合(ステップS5:NO)、即ちステップS4で算出した積算電流量が限界積算電流量に達しておらず、ハイレート劣化の発生にはまだ余裕がある場合、コントローラ14は、ステップS2で算出した要求電流値Ireqを、バッテリBの充放電に使用する電流値として決定する(ステップS6)。
【0044】
一方、ステップS5において、バッテリBのハイレート劣化を防止するために充放電電流の制限を実行すると判定した場合(ステップS5:YES)、即ちステップS4で算出した積算電流量が限界積算電流量に達しており、ハイレート劣化の発生を防止するために充放電電流を制限する必要がある場合、コントローラ14は、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrを算出する(ステップS7)。ハイレート劣化防止上限電流値Ihrは、ハイレート劣化が生じないようにするための充放電電流の上限値である。即ち、充放電電流の実効電流値Irmsをハイレート劣化防止上限電流値Ihr以下に制限すれば、ハイレート劣化を防止できるように設定されている。ハイレート劣化防止上限電流値Ihrは、例えば予め設定されてメモリ18に記憶されていてもよく、バッテリBの温度やSOC、車両1の状態等に応じた値を、予めメモリ18に格納されたマップから取得するようにしてもよい。
【0045】
次に、コントローラ14は、制限電流値Iopeを算出する(ステップS8)。制限電流値Iopeは、充放電電流の制限に起因する車両1のエネルギー損失(ロスパワー)の増加が許容できる範囲内で、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrよりもさらに充放電電流を制限するための電流値であり、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrより小さい値となるように算出される。
【0046】
ここで、図6を参照して、制限電流値Iopeを算出する処理を詳細に説明する。制限電流値Iope算出処理が開始されると、コントローラ14は、車両1の運転状態に基づき、バッテリBの充放電電流をハイレート劣化防止上限電流値Ihrに制限したときのロスパワーLhrを算出する(ステップS21)。
【0047】
ロスパワー[W]は、単位時間当たりの車両1におけるエネルギー損失であり、内燃エンジン2、モータ4、バッテリB等の車両1に搭載された各装置の運転状態に応じた損失の合計値として算出される。バッテリBの充放電電流が大きいほどエネルギー効率は高くなる傾向にあるので、バッテリBの充放電電流が小さいほどロスパワーは大きくなる傾向にある。
【0048】
コントローラ14は、例えば、予め設定されメモリ18に格納されたマップやモデルを用いて、各センサSN1~SN5から取得した信号を含む車両1の各部の状態に応じた損失を算出し、それらを合計してロスパワーを算出する。このとき、バッテリBの充放電電流の上限値をハイレート劣化防止上限電流値Ihrに設定して計算を実行することにより、ロスパワーLhrを算出することができる。
【0049】
次に、コントローラ14は、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrを制限電流値Iopeの初期値として設定する(ステップS22)。
【0050】
次に、コントローラ14は、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrを、制限電流値Iopeを求めるために用いる探索値Itmpの初期値として設定する(ステップS23)。
【0051】
次に、コントローラ14は、バッテリBの充放電電流の上限値をItmpとしたときのロスパワーLtmpを算出する(ステップS24)。
【0052】
次に、コントローラ14は、ステップS24で算出したロスパワーLtmpと、ステップS21で算出したロスパワーLhrとの差Ldiffを算出する(ステップS25)。このLdiffは、電流値をハイレート劣化防止上限電流値IhrからItmpにさらに制限したときのロスパワーの増加量を表している。
【0053】
次に、コントローラ14は、ステップS25で算出したLdiffが、所定の損失閾値Lthより大きいか否かを判定する(ステップS26)。損失閾値Lthは、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrよりもさらに充放電電流を制限することによりロスパワーが増加するときの、許容できる最大の増加幅を表している。即ち、損失閾値Lthが大きいほど、制限電流値を小さくすることができる。この損失閾値Lthは、例えば予め設定されメモリ18に記憶されている。
【0054】
ステップS26の判定の結果、Ldiffが損失閾値Lthより大きくない(即ちLdiffが損失閾値Lth以下である)場合(ステップS26:NO)、コントローラ14は、現在の探索値Itmpを制限電流値Iopeとして記録する(ステップS27)。
【0055】
次に、コントローラ14は、現在の探索値Itmpから所定値ΔIを減算した値を、最新の探索値Itmpとして更新する(ステップS28)。以降、ステップS26においてLdiffが損失閾値Lthより大きいと判定されるまで、ステップS24からS28の処理を繰り返すことにより、制限電流値Iopeの探索を行う。
【0056】
ステップS26の判定の結果、Ldiffが損失閾値Lthより大きい場合(ステップS26:YES)、コントローラ14は制限電流値Iopeの算出処理を終了し、図5のバッテリ制御処理に戻る。即ち、最後にステップS27で記録された電流値が最小の制限電流値Iopeとして用いられる。
【0057】
ここで、図7及び図8を参照して、充放電電流の制限によるロスパワーへの影響が大きい場面と小さい場面とで、制限電流値Iopeがどのように異なるのかを説明する。図7は、ロスパワーに対する電流制限の影響が小さい場合の電流値とロスパワーとの関係を例示する図であり、図8は、ロスパワーに対する電流制限の影響が大きい場合の電流値とロスパワーとの関係を例示する図である。図7及び図8において、横軸は電流値を示し、縦軸はロスパワーを示している。
【0058】
ロスパワーに対する電流制限の影響が小さい場合には、図7に示すように、電流値をハイレート劣化防止上限電流値Ihrからさらに制限したときのロスパワーの増加度合いが緩やかである。したがって、制限電流値Iope(ロスパワーの増加量Ldiff=Ltmp-Lhrが損失閾値Lthを超える直前のItmp)を、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrよりも大幅に小さくすることができる。
【0059】
一方、ロスパワーに対する電流制限の影響が大きい場合には、図8に示すように、電流値をハイレート劣化防止上限電流値Ihrからさらに制限したときのロスパワーの増加度合いが図7と比較して急になっている。したがって、制限電流値Iope(ロスパワーの増加量Ldiff=Ltmp-Lhrが損失閾値Lthを超える直前のItmp)は、図7の場合と比較してハイレート劣化防止上限電流値Ihrに近い値になっている。
【0060】
図5に戻り、コントローラ14は、ステップS2で算出した要求電流値IreqとステップS8で算出した制限電流値Iopeとの小さい方を、バッテリBの充放電に使用する電流値として決定する(ステップS9)。ステップS6又はS9の処理の後、コントローラ14はバッテリ制御処理を終了する。
【0061】
このように、コントローラ14は、ロスパワーの増加を許容できる範囲内で、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrよりもさらに小さい値まで充放電電流を制限するようにバッテリBの制御を行う。これにより、ロスパワーの増加を最小限に抑えつつ充放電電流の制限を強化して、積算電流量の増加抑制や減少促進を行うことができ、ハイレート充放電が必要となる状況に備えて限界積算電流量に対する積算電流量の余裕を確保することができる。したがって、ハイレート充放電に起因するバッテリBの劣化の抑制と、ハイレート充放電によるエネルギー効率及びドライバビリティの向上とを両立することができる。
【0062】
<変形例>
次に、本発明の実施形態の変形例を説明する。
【0063】
上述した実施形態では、損失閾値Lthは、例えば予め設定されメモリ18に記憶されていると説明したが、車両1の状態に応じて損失閾値Lthが異なるようにしてもよい。ここで、図9及び図10を参照して、車両1の状態に応じて損失閾値Lthが異なる例を説明する。図9は、車速と損失閾値Lthとの関係を例示する図であり、図10は、過去の減速量と損失閾値Lthとの関係を例示する図である。
【0064】
例えば、図9及び図10に示すように、破線で示す非回生時(放電時)と実線で示す回生時(充電時)とで、損失閾値Lthが異なるようにしてもよい。具体的には、回生時の方が、非回生時よりも損失閾値Lthが小さいように設定されていてもよい。
【0065】
回生時には、所望の減速力を得ると共に良好なエネルギー効率を実現するために、できる限り大きい電流値でバッテリBの充電を行えることが望ましい。そこで、回生時の充電電流をできる限り大きくできるように、損失閾値Lthを非回生時と比較して小さくする(即ち、制限電流値Iopeがハイレート劣化防止上限電流値Ihrに近づく)。
【0066】
また、車速が高いほど車両1の減速時に発生する回生エネルギーが大きくなるので、できる限り大きい電流値でバッテリBの充電を行えることがエネルギー効率上望ましい。そこで、車速が高いほど回生時の充電電流をできる限り大きくできるように、図9に示すように車速が高いほど回生時の損失閾値Lthが小さくなるようにしてもよい。
【0067】
また、非回生時には、その後の減速に備えて積算電流量に余裕を持たせておくことが望ましい。そこで、車速が高いほど非回生時の電流制限を強化する(即ち充電電流を小さくする)ことができるように、図9に示すように車速が高いほど非回生時の損失閾値Lthが大きくなるようにしてもよい。
【0068】
また、車速に応じた損失閾値Lthの変化率(図9に示すグラフにおける傾き)が、低車速域(図9の「低」の範囲)よりも中車速域のとき(図9の「中」の範囲)に大きく、中車速域より高車速域のとき(図9の「高」の範囲)にさらに大きくなるようにしてもよい。
【0069】
また、直近の所定時間(例えば10分間)における車両1の減速量(例えば減速回数や減速による速度変化量)が大きいほど、減速時に発生する回生エネルギーが大きくなるので、できる限り大きい電流値でバッテリBの充電を行えることがエネルギー効率上望ましい。そこで、直近の減速量が大きいほど回生時の充電電流をできる限り大きくできるように、図10に示すように、直近の減速量が大きいほど回生時の損失閾値Lthが小さくなるようにしてもよい。
【0070】
また、非回生時には、その後の減速に備えて積算電流量に余裕を持たせておくことが望ましい。そこで、直近の減速量が大きいほど非回生時の電流制限を強化する(即ち充電電流を小さくする)ことができるように、図10に示すように、直近の減速量が大きいほど非回生時の損失閾値Lthが大きくなるようにしてもよい。
【0071】
また、直近の減速量に応じた損失閾値Lthの変化率(図10に示すグラフにおける傾き)が、直近の減速量が小さいとき(図10の「少」の範囲)よりも中程度のとき(図10の「中」の範囲)に大きく、中程度のときよりさらに減速量が大きいとき(図10の「多」の範囲)にさらに大きくなるようにしてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、探索値Itmpを徐々に小さくしていくことにより制限電流値Iopeを求めたが、多点的な評価により選択的にIopeを決定してもよい。
【0073】
また、ハイレート劣化を防止するために充放電電流の制限を行うことにより積算電流量に余裕を持たせるだけではなく、充電電流と放電電流とのレートバランスに余裕を持たせてもよい。例えば、車両1の車速が高いときには、車速が低いときに比べて、レートバランスを放電側に寄せる(即ち放電時の制限電流値を、充電時の制限電流値よりも大きくする)ことにより、その後の減速回生によるハイレート充電に備えて、予め放電による積算電流量を高めておくようにしてもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、車両1が、ハイブリッド自動車である場合を例として説明したが、内燃エンジン2を搭載しない電気自動車にも本発明を適用することができる。
【0075】
<作用効果>
次に、上述した実施形態及び変形例によるバッテリの制御装置の作用効果について説明する。
【0076】
まず、コントローラ14は、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrより小さい制限電流値でバッテリBの充放電を行った場合のエネルギー損失と、ハイレート劣化防止上限電流値IhrでバッテリBの充放電を行った場合のエネルギー損失との差が、所定の損失閾値Lth以下となる制限電流値Iopeを算出し、バッテリBの充放電電流が制限電流値Iopeとなるように、バッテリBの充放電を制御することにより、エネルギー損失の増加を許容できる範囲内で、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrよりもさらに小さい値まで充放電電流を制限する。これにより、エネルギー損失の増加を最小限に抑えつつ充放電電流の制限を強化して、ハイレート充放電によるバッテリBの劣化が生じるまでの余裕を確保することができ、ハイレート充放電が必要となる状況に備えることができる。したがって、ハイレート充放電に起因するバッテリBの劣化の抑制と、必要なときにハイレート充放電を行えることによるエネルギー効率及びドライバビリティの向上とを両立することができる。
【0077】
また、バッテリBの充電時の損失閾値Lthは、放電時の損失閾値Lthより小さい。
したがって、充電時の損失閾値Lthが放電時よりも小さいので、充電時の制限電流値Iopeを放電時と比べて大きくすることができる。したがって、回生ブレーキの使用時に、できる限り大きい電流値でバッテリBの充電を行うことができ、所望の減速力を得ると共に良好なエネルギー効率を実現することができる。
【0078】
また、車両1の車速が高いほど、バッテリBの放電時の損失閾値Lthは大きい。
したがって、車速が高いほど、バッテリBの放電時の損失閾値Lthが大きいので、車速が高いほど放電時の制限電流値Iopeを小さくすることができる。したがって、車速が高く減速時の回生エネルギーが大きいときほど、回生ブレーキを使用していない放電時には放電電流の制限を強化して、バッテリBの劣化が生じるまでの余裕を確保することができ、その後の減速回生時にハイレート充電が必要となる状況に備えることができる。
【0079】
また、車両1の車速が高いほど、バッテリBの充電時の損失閾値Lthは小さい。
したがって、車速が高いほど、バッテリBの充電時の損失閾値Lthが小さいので、車速が高いほど充電時の制限電流値Iopeを大きくすることができる。したがって、車速が高く減速時の回生エネルギーが大きいときほど、回生ブレーキを使用している充電時には充電電流の制限を抑えて、充電電流をできる限り大きくし、エネルギー効率を高めることができる。
【0080】
また、直近の所定時間において、車両1の減速量が大きいほど、バッテリBの放電時の損失閾値Lthは大きい。
したがって、直近の車両1の減速量が大きいほど、バッテリBの放電時の損失閾値Lthが大きいので、直近の車両1の減速量が大きいほど放電時の制限電流値Iopeを小さくすることができる。したがって、直近の車両1の減速量が大きく減速が必要な状況であるときほど、回生ブレーキを使用していない放電時には放電電流の制限を強化して、バッテリBの劣化が生じるまでの余裕を確保することができ、その後の減速回生時にハイレート充電が必要となる状況に備えることができる。
【0081】
また、直近の所定時間において、車両1の減速量が大きいほど、バッテリBの充電時の損失閾値Lthは小さい。
したがって、直近の車両1の減速量が大きいほど、バッテリBの充電時の損失閾値Lthが小さいので、直近の車両1の減速量が大きいほど、充電時の制限電流値Iopeを大きくすることができる。したがって、直近の車両1の減速量が大きく減速が必要な状況であるときほど、回生ブレーキを使用している充電時には充電電流の制限を抑えて、充電電流をできる限り大きくし、エネルギー効率を高めることができる。
【0082】
また、コントローラ14は、ハイレート劣化防止上限電流値Ihrを制限電流値の初期値とし、制限電流値でバッテリBの充放電を行った場合のエネルギー損失と、ハイレート劣化防止上限電流値IhrでバッテリBの充放電を行った場合のエネルギー損失との差が、損失閾値Lthに達するまで制限電流値を減少させることにより、最小の制限電流値Iopeを探索するように構成されている。
したがって、エネルギー損失の増加を許容できる範囲内でできる限り小さい制限電流値Iopeを、適切に求めることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 車両
2 内燃エンジン
4 モータ
6 トランスミッション
8 ドライブシャフト
10 駆動輪
B バッテリ
12 インバータ
14 コントローラ
16 プロセッサ
18 メモリ
SN1 温度センサ
SN2 電圧センサ
SN3 電流センサ
SN4 車速センサ
SN5 加速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10